【文献】
Teanpaisan R.et al.,Inhibitory effect of oral Lactobacillus against oral pathogens.,Lett Appl Microbiol. ,2011年10月,53(4),p.452-9.
【文献】
Oral Microbiol Immunol. 2005 Dec;20(6):354-61.
【文献】
Arch Oral Biol. 2006 Sep;51(9):784-93. Epub 2006 Jul 25.
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
Lactobacillus paracasei(ラクトバチルス パラカゼイ,受託番号:NITE P−1177)、Lactobacillus pentosus(ラクトバチルス ペントーサス,受託番号:NITE P−1178)、Lactobacillus plantarum(ラクトバチルス プランタラム,受託番号:NITE P−1180)、Lactobacillus sakei(ラクトバチルス サケイ,受託番号:NITE P−1183)、Enterococcus avium(エンテロコッカス アビウム,受託番号:NITE P−1182)、Enterococcus durans(エンテロコッカス デュランス,受託番号:NITE P−1179)及びEnterococcus durans(エンテロコッカス デュランス,受託番号:NITE P−1181)の菌株から選ばれる乳酸菌であって、う蝕、歯周病又は口臭の原因となる口腔細菌との糖不含培地での共培養において、上記口腔細菌の生育及び/又は上記口腔細菌によって形成されたバイオフィルムの形成を抑制する性質を有する乳酸菌。
上記乳酸菌が、Lactobacillus pentosus(ラクトバチルス ペントーサス,受託番号:NITE P−1178)、Lactobacillus sakei(ラクトバチルス サケイ,受託番号:NITE P−1183)及びEnterococcus avium(エンテロコッカス アビウム,受託番号:NITE P−1182)の菌株から選ばれる乳酸菌である請求項1記載の乳酸菌。
請求項1もしくは2記載の乳酸菌、又は請求項3記載の培養由来物を有効成分とする、ストレプトコッカス・ミュータンス、ポルフィロモナス・ジンジバリス、プレボテラ・インターメディア又はフゾバクテリウム・ヌクレアタムの生育抑制剤。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
乳酸菌等の有用菌株を投与することにより、体にとって良くない菌、いわゆる悪玉菌の生育や活性を抑制して疾患予防をするプロバイオティクスの技術については、元来消化管を主対象として検討されていた。一方、細菌にとって口腔内の環境は、宿主の食物摂取時には細菌の栄養源ともなる食物由来の糖分が豊富にあるが、摂取が終了すると唾液で洗浄を受け急速に通常の状態に戻る。この通常の状態(摂食時以外)は糖が豊富に存在する環境ではなく、プロバイオティクスとして投与される菌にとって豊富な栄養源が長時間周囲に存在するわけではない。この点において、口腔内は、食物成分がある程度長時間滞留する消化管内とは環境が異なる。乳酸菌は、糖類を栄養源として活発に増殖する環境においては、主に乳酸を産生して他菌を抑制することは一般的に知られているが、上述したように、摂食時以外の口腔内は糖分が豊富にあるわけではなく、乳酸菌は常時活発に増殖、生育できる環境ではない。乳酸の産生も少なく口腔細菌に対する抑制作用も弱くなる。実生活を考えると一日のうちで食物を摂取している時間、即ち口腔内で細菌に対しても糖類が供給される時間は限定的であり、大半は供給されていない状況である。このような状況、すなわち乳酸菌の他菌に対する抑制効果が出にくい状況において、口腔内の病原菌に対して抑制的に働く乳酸菌に着目した。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みなされたもので、通常時(摂食時以外)の口腔内で、う蝕予防、歯周病予防・治療、口臭改善・予防、口腔内のバイオフィルム形成抑制に有用な乳酸菌、又はこの乳酸菌の培養物、培養上清、これらの中和物(以下、培養由来物)、及びこれらを含有する組成物等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討した結果、う蝕、歯周病又は口臭の原因となる口腔細菌との糖不含培地での共培養において、上記口腔細菌の生育及びバイオフィルムの形成を抑制する、口腔細菌抑制乳酸菌株を見出し、さらに、乳酸菌の培養由来物にも同様に上記口腔細菌の生育及びバイオフィルムの形成抑制効果があることを見出したものである。
【0008】
従って、本発明は下記発明を提供する。
[1].Lactobacillus paracasei(ラクトバチルス パラカゼイ,受託番号:NITE P−1177)、Lactobacillus pentosus(ラクトバチルス ペントーサス,受託番号:NITE P−1178)、Lactobacillus plantarum(ラクトバチルス プランタラム,受託番号:NITE P−1180)、Lactobacillus sakei(ラクトバチルス サケイ,受託番号:NITE P−1183)、Enterococcus avium(エンテロコッカス アビウム,受託番号:NITE P−1182)、Enterococcus durans(エンテロコッカス デュランス,受託番号:NITE P−1179)及びEnterococcus durans(エンテロコッカス デュランス,受託番号:NITE P−1181)の菌株から選ばれる乳酸菌であって、う蝕、歯周病又は口臭の原因となる口腔細菌との糖不含培地での共培養において、上記口腔細菌の生育及び/又は上記口腔細菌によって形成されたバイオフィルムの形成を抑制する性質を有する乳酸菌。
[2].上記乳酸菌が、Lactobacillus pentosus(ラクトバチルス ペントーサス,受託番号:NITE P−1178)、Lactobacillus sakei(ラクトバチルス サケイ,受託番号:NITE P−1183)及びEnterococcus avium(エンテロコッカス アビウム,受託番号:NITE P−1182)の菌株から選ばれる乳酸菌である[1]記載の乳酸菌。
[3].[1]又は[2]記載の乳酸菌の培養物、培養上清及びこれらの中和物から選ばれる培養由来物。
[4].[1]もしくは[2]記載の乳酸菌、又は[3]記載の培養由来物を含有する口腔用組成物。
[5].う蝕予防用、歯周病予防・治療用、口臭改善・防止用、又はバイオフィルム形成抑制用である[4]記載の口腔用組成物。
[6].[1]もしくは[2]記載の乳酸菌、又は[3]記載の培養由来物を含有する食品。
[7].う蝕予防用、歯周病予防・治療用、口臭改善・防止用、又はバイオフィルム形成抑制用である[6]記載の食品。
[8].[1]もしくは[2]記載の乳酸菌、又は[3]記載の培養由来物を有効成分とする、ストレプトコッカス・ミュータンス、ポルフィロモナス・ジンジバリス、プレボテラ・インターメディア又はフゾバクテリウム・ヌクレアタムの生育抑制剤。
[9].[1]もしくは[2]記載の乳酸菌、又は[3]記載の培養由来物を有効成分とするう蝕予防剤。
[10].[1]もしくは[2]記載の乳酸菌、又は[3]記載の培養由来物を有効成分とする歯周病予防・治療剤。
[11].[1]もしくは[2]記載の乳酸菌、又は[3]記載の培養由来物を有効成分とする口臭改善・予防剤。
[12].[1]もしくは[2]記載の乳酸菌、又は[3]記載の培養由来物を有効成分とするバイオフィルム形成抑制剤。
【発明の効果】
【0009】
本発明の乳酸菌、その培養由来物は、う蝕、歯周病又は口臭の原因となる口腔細菌の生育抑制作用を有し、また、これら口腔内細菌によるバイオフィルムの形成を抑制する作用を有することにより、う蝕、歯周病、口臭等の口腔疾患・不快を予防、治療、改善することができ、これらを配合した口腔用組成物等に応用できる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の乳酸菌は、Lactobacillus paracasei(ラクトバチルス パラカゼイ)、Lactobacillus pentosus(ラクトバチルス ペントーサス)、Lactobacillus plantarum(ラクトバチルス プランタラム)、Lactobacillus sakei(ラクトバチルス サケイ)、Enterococcus avium(エンテロコッカス アビウム)、及びEnterococcus durans(エンテロコッカス デュランス)の菌株から選ばれる乳酸菌であって、う蝕、歯周病又は口臭の原因となる口腔細菌との糖不含培地での共培養において、上記口腔細菌の生育及び/又は上記口腔細菌によって形成されたバイオフィルムの形成を抑制する性質を有する乳酸菌である。
【0011】
う蝕の原因菌としては、ストレプトコッカス・ミュータンス、ストレプトコッカス・ソブライナスをはじめとするミュータンスレンサ球菌、歯周病や口臭の原因菌としては、グラム陰性嫌気性桿菌、特に歯周病では、ポルフィロモナス・ジンジバリス、プレボテラ・インターメディア、プレボテラ・ニグレセンス、トレポネマ・デンティコラ、タネレラ・フォーサイセンシス、アグリゲイチバクター・アクチノマイセテムコミタンス、フゾバクテリウム・ヌクレアタム等が挙げられる。口臭の原因菌としては、ポルフィロモナス・ジンジバリス、プレボテラ・インターメディア、プレボテラ・ニグレセンス、トレポネマ・デンティコラ、フゾバクテリウム・ヌクレアタム等が挙げられる。
【0012】
これらの菌の生育や代謝の抑制、バイオフィルムとして固着して口腔内に定着するのを抑制することが口腔疾患・不快の予防策として有用である。上記原因菌として列挙した菌もバイオフィルムを構成する菌であることに加え、ストレプトコッカス・オラリス、ストレプトコッカス・サングイニス、ストレプトコッカス・ゴルドニアイ、ストレプトコッカス・ミティス、アクチノマイセス・ビスコーサス、アクチノマイセス・ナエスランディー、ベイヨネラ・アティピカ、ベイヨネラ・パーブラ等の菌が、個々の強い病原性は指摘されてはいないがバイオフィルムを構成する菌として挙げられる。
【0013】
本発明の乳酸菌は、う蝕、歯周病又は口臭の原因となる口腔細菌との糖不含培地での共培養において、上記口腔細菌の生育を抑制する菌株を選択することによって得ることができ、例えば、下記のものが挙げられる。
(1)Lactobacillus paracasei(ラクトバチルス パラカゼイ,受託番号:NITE P−1177)
(2)Lactobacillus pentosus(ラクトバチルス ペントーサス,受託番号:NITE P−1178)
(3)Lactobacillus plantarum(ラクトバチルス プランタラム,受託番号:NITE P−1180)
(4)Lactobacillus sakei(ラクトバチルス サケイ,受託番号:NITE P−1183)
(5)Enterococcus avium(エンテロコッカス アビウム,受託番号:NITE P−1182)
(6)Enterococcus durans(エンテロコッカス デュランス,受託番号:NITE P−1179)
(7)Enterococcus durans(エンテロコッカス デュランス,受託番号:NITE P−1181)
【0014】
上記(1)〜(7)の乳酸菌の菌株の菌学的性質を下記に示す。一般的菌学的性質を表1に、主な糖の資化性について表2に示す。菌学的性質及び分類方法はヴァージズ マニュアル オブ システマチック バクテリオロジー(Bergey’s Manual of Systematic Bacteriology)(1984)を参考とした。糖類資化性の判定は、主に糖類資化性を指標とする乳酸菌同定キットAPI50CHL(シメックス・ビオメリュー(株))を用いた。
【0017】
本発明の(1)〜(7)の乳酸菌の菌株は、後述する実施例で示されたように、下記特徴的な性質(i)〜(iv)を有する。このことから、新規の菌株であることが判明した。
(i)口腔細菌であるストレプトコッカス・ミュータンス(う蝕の原因菌)、ポルフィロモナス・ジンジバリス(歯周病及び口臭の原因菌)、プレボテラ・インターメディア(歯周病及び口臭の原因菌)、フゾバクテリウム・ヌクレアタム(歯周病及び口臭の原因菌)との糖不含培地での共培養において、上記口腔細菌の生育を抑制する。
(ii)ストレプトコッカス・ミュータンス、アクチノマイセス・ビスコーサス、ポルフィロモナス・ジンジバリス及びフゾバクテリウム・ヌクレアタムによる、バイオフィルム形成を、糖不含培地での共培養により抑制する。
(iii)ストレプトコッカス・ミュータンス、ポルフィロモナス・ジンジバリス、プレボテラ・インターメディア、フゾバクテリウム・ヌクレアタムの生育を糖不含培地での培養阻止円法で抑制する。
(iv)培養上清の中和物が、ポルフィロモナス・ジンジバリス、プレボテラ・インターメディアに対して、抗菌性を有する。
【0018】
本発明の乳酸菌の培養物とは、乳酸菌を糖含有又は不含の培地や栄養源を用いて培養の常法に従って任意の条件で培養した培養物そのものを使用することができる。さらに培養物から遠心分離やろ過等の分離手段によって集菌したものをそのまま、または生理食塩水や滅菌水等で洗浄し使用することができる。また、菌を凍結乾燥やスプレードライ等で乾燥したものも使用することができる。
【0019】
本発明の乳酸菌の培養上清とは、乳酸菌を糖含有又は不含の培地を用いて培養の常法に従って任意の条件で培養し、培養物から遠心分離やろ過等の分離手段によって菌を除去したものを使用することができる。また、減圧濃縮、凍結乾燥、スプレードライ等の方法で濃縮又は乾燥させたものを使用することもできる。
【0020】
中和物は、培養物又は培養上清を水酸化ナトリウム等のアルカリ剤を用いてpHを中性域(5.6〜8.5(温度10〜30℃))にしたものを使用することができる。中和することで、酸による歯牙を脱灰するう蝕のリスクが軽減される。
【0021】
本発明の乳酸菌、その培養由来物は、う蝕、歯周病、口臭等の口腔疾患・不快の原因菌の生育やバイオフィルムの形成を抑制する性質を有し、これらを有効成分とするう蝕予防剤、歯周病予防・治療剤、口臭改善・予防剤、バイオフィルム形成抑制剤として用いることができる。う蝕原因菌としてはストレプトコッカス・ミュータンス(Streptococcus mutans)、ストレプトコッカス・ソブライナス(Streptococcus sobrinus)等のミュータンス連鎖球菌が、歯周病の原因菌としてはポルフィロモナス・ジンジバリス、プレボテラ・インターメディア、プレボテラ・ニグレセンス、トレポネマ・デンティコラ、タネレラ・フォーサイセンシス、アグリゲイチバクター・アクチノマイセテムコミタンス、フゾバクテリウム・ヌクレアタム等、口臭の原因菌としてはポルフィロモナス・ジンジバリス、プレボテラ・インターメディア、プレボテラ・ニグレセンス、トレポネマ・デンティコラ、フゾバクテリウム・ヌクレアタム等が挙げられる。さらに、バイオフィルム形成菌としては上記原因菌に加えてストレプトコッカス・オラリス、ストレプトコッカス・サングイニス、ストレプトコッカス・ゴルドニアイ、ストレプトコッカス・ミティス、アクチノマイセス・ビスコーサス、アクチノマイセス・ナエスランディー、ベイヨネラ・アティピカ、ベイヨネラ・パーブラ等の菌が挙げられる。また、これらの菌を糖不含培地中で共培養する際に用いる培地としては、ハートインフュージョンブロス(日本ベクトンディッキンソン)、トリプティックソイブロス ウィズアウト デキストロース(日本ベクトンディッキンソン)等が挙げられ、必要に応じてヘミン、メナジオンを添加してもよい。
【0022】
う蝕予防剤、歯周病予防・治療剤及び口臭改善・予防剤等の製剤化の形態についても特に制限はなく、所望により凍結乾燥粉末、噴霧乾燥粉末、液体への懸濁等、使用目的に応じて適宜決定すればよい。
【0023】
口腔用組成物
本発明の乳酸菌、その培養由来物は、口腔用組成物に配合することができる。剤型として、歯磨(練り歯磨、粉歯磨、液状歯磨)、洗口剤、口中清涼剤、義歯洗浄剤、うがい用錠剤、歯肉マッサージクリームが挙げられる。その配合量は、組成物全量に対して0.01〜100質量%が好ましい。
【0024】
食品
上記(1)〜(7)の乳酸菌、その培養物、培養上清は、食品に配合することができる。剤型として、トローチ、タブレット、ガム、ヨーグルト、ドリンク、発酵品等の形態で口腔用組成物等が挙げられる。その配合量は、組成物全量に対して0.01〜100質量%が好ましい。
【0025】
本発明の乳酸菌、その培養由来物を配合した口腔用組成物、食品は、う蝕予防、歯周病予防・治療、口臭改善・防止効果を示すことから、う蝕予防用、歯周病予防・治療用、口臭改善・防止用の口腔用組成物、う蝕予防用、歯周病予防・治療用、口臭改善・防止用の食品とすることができる。
【0026】
口腔用組成物の任意成分としては、口腔用組成物の種類に応じた適宣な成分が用いられる。例えば、研磨剤、界面活性剤、粘結剤、粘稠剤、甘味料、防腐剤、香料、着色剤、pH調整剤、賦形剤、各種薬効成分等が挙げられる。これらは1種単独で又は2種以上を、適宜組み合わせて、適量配合することができる。
【0027】
食品の任意成分としては、食品として通常用いられる原料を適宜用いることができる。
【0028】
界面活性剤としては、レシチン類(レシチン、水添レシチン、水酸化レシチン等)、サポニン類(キラヤ抽出物、ユッカ抽出物等)、モノ、ジ、トリ脂肪酸エステルであり、脂肪酸の炭素数が12〜22の糖又は糖アルコールの脂肪酸エステルであるショ糖脂肪酸エステル、マルトース脂肪酸エステル、マルチトール脂肪酸エステル、マルトトリイトール脂肪酸エステル、マルトテトレイトール脂肪酸エステル、マルトペンタイトール脂肪酸エステル、マルトヘキサイトール脂肪酸エステル、マルトヘプタイトール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ラクトース脂肪酸エステル、ラクチトール脂肪酸エステル等や、グリセリン又はポリグリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル及びポリオキシエチレン硬化ヒマシ油等が使用できる。また、アルキル鎖の炭素数が14〜18でエチレンオキサイドの平均付加モル数が15〜30のポリオキシエチレンアルキルエーテル、エチレンオキサイドの平均付加モル数が10〜100のポリオキシエチレン硬化ヒマシ油等も使用できる。更に、脂肪酸の炭素数が16〜18でエチレンオキサイドの平均付加モル数が10〜40のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル等も使用できる。
【0029】
本発明の口腔用組成物に適用される剤型は、可食性フィルム、錠菓、キャンディ等の食品類や、歯磨剤、洗口剤、スプレー剤等口腔に適用されるものであれば特に限定されない。
【0030】
本発明において、可食性フィルムとは、可溶性のフィルムであり、舌上に置いて溶かして使用したり、口蓋や歯肉等の口腔粘膜に貼りつけてゆっくりと溶かして使用することができる。該可食性フィルムは、水溶性高分子化合物を主原料とした成分を水又は含水エタノールに溶解又は分散させ、これを剥離用フィルムにキャスティングし、乾燥する方法を採用し得るが、これに限定されない。
【0031】
ここで、水溶性高分子化合物としては、アラビアガム、アルギン酸ナトリウム、カラギーナン、カラヤガム、キサンタンガム、ジェランガム、大豆多糖類、トラガントガム、ペクチン、カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC−Na)、カルボキシビニルポリマー、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸塩(Na,K等の一価塩)、カードラン、寒天、グアーガム、グルコマンナン、タマリンドシードガム、タラガム、澱粉、プルラン、ローカストビーンガム、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン(PVP)、メチルセルロース(MC)、ヒアルロン酸ナトリウム、カチオン化ヒアルロン酸ナトリウム等が挙げられ、1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
【0032】
本発明において、錠菓とは、糖質を主原料とし、打錠機等で圧縮成型したものであり、糖衣されていてもよい。錠菓の製造方法は特に限定されず、常法で製造でき、例えば各成分を混合し、打錠機等で圧縮することにより製造できる。
【0033】
また、キャンディとしては、キャラメル、ヌガー等のソフトキャンディ、ドロップ、タフィ等のハードキャンディ等が挙げられる。
【0034】
錠菓及びキャンディの主原料は、賦形剤、甘味剤等である。
賦形剤としては、スクロース、グルコース、デキストロース、転化糖、フラクトース、デキストリン等の糖類、キシリトール、エリスリトール、ソルビトール、マンニトール、マルチトール、ラクチトール、還元パラチノース、還元水飴等の糖アルコール、パラチノース、トレハロース、オリゴ糖等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を配合できる。中でも、非う蝕性である点から糖アルコールが好ましい。特に、錠菓では、成型性、風味の点からソルビトール、マルチトール、エリスリトール、キシリトール、還元パラチノースから選ばれる少なくとも1種を含有するのが好ましい。
【0035】
甘味剤としては、ステビア、スクラロース、サッカリン、サッカリンナトリウム、アスパルテーム、アセスルファムカリウム等が挙げられる。
【0036】
また、可食性フィルム、錠菓及びキャンディ等として用いられる本発明の口腔用組成物には、更に必要により香料や後述する各種成分等を添加することができる。
【0037】
香料としては、天然香料、合成香料等の油脂香料や粉末香料を1種又は2種以上使用することができる。例えば、天然香料として、マスティック油、パセリ油、アニス油、ユーカリ油、ウィンターグリーン油、カシア油、メントール油、スペアミント油、ペパーミント油、和種ハッカ油、レモン油、コリアンダー油、オレンジ油、マンダリン油、ライム油、グレープフルーツ油、スウィーティー油、柚油、セージ油、バジル油、ローズマリー油、ラベンダー油、ローレル油、カモミール油、カルダモン油、キャラウェイ油、ベイ油、レモングラス油、パインニードル油、ネロリ油、ローズ油、ジャスミン油、ティーツリー油、イリスコンクリート、アブソリュートペパーミント、アブソリュートローズ、オレンジフラワー、シトラス油、ミックスフルーツ油、ストロベリー油、シナモン油、クローブ油、グレープ油等が挙げられる。
【0038】
単品香料としては、カルボン、アネトール、サリチル酸メチル、シンナミックアルデヒド、リナロール、リナリールアセテート、リモネン、メントン、メンチルアセテート、ピネン、オクチルアルデヒド、シトラール、プレゴン、カルビールアセテート、アニスアルデヒド、エチルアセテート、エチルブチレート、アリルシクロヘキサンプロピオネート、メチルアンスラニレート、エチルメチルアンスラニレート、バニリン、ウンデカラクトン、ヘキサナール、エチノンアルコール、プロピルアルコール、ブタノール、イソアミルアルコール、ヘキセノール、ジメチルサルフェイド、シクロテン、フルフラールトリメチルピラジン、エチルラクテート、エチルリオアセテート等が挙げられる。単品香料及び/又は天然香料も含む調合香料として、ストロベリーフレーバー、アップルフレーバー、バナナフレーバー、パイナップルフレーバー、グレープフレーバー、マンゴーフレーバー、トロピカルフルーツフレーバー、バターフレーバー、ミルクフレーバー、ヨーグルトフレーバー、フルーツミックスフレーバー、ハーブミントフレーバー、ウメフレーバー等が挙げられる。また、香料の形態は、精油、抽出物、固形物、又はこれらを噴霧乾燥した粉体でも構わない。
【0039】
本発明の口腔用組成物には、必要に応じて、その他の添加剤、例えば、高分子化合物、上記成分以外の機能成分(有効成分)、酸味料、光沢剤、滑沢剤、pH調整剤、着色剤、保存料、除電剤、流動化剤等を、更に可食性フィルムには粘稠剤等を、錠菓には崩壊剤、結合剤等を、歯磨剤等には研磨剤や清掃剤、湿潤剤、発泡剤、アルコール等の公知の添加剤を、本発明の効果を損なわない範囲で適宜添加してもよい。
【0040】
高分子化合物としては、上述した水溶性高分子化合物と同様のもの、またセルロース、結晶セルロース、デンプン、ポリエチレン末、エステルガム、セラック等を配合することができる。
【0041】
機能成分(有効成分)としては、デキストラナーゼ、ムタナーゼ、アミラーゼ等の酵素類フッ化ナトリウム、グルコン酸銅、グルコン酸亜鉛、銅クロロフィリンナトリウム等を配合することが可能である。酸味料としては、クエン酸、リンゴ酸、コハク酸、酒石酸等の有機酸を配合できる。
【0042】
着色剤としては、ベニバナ赤色素、クチナシ黄色素、クチナシ青色素、シソ色素、紅麹色素、赤キャベツ色素、ニンジン色素、ハイビスカス色素、カカオ色素、スピルリナ青色素、クマリンド色素等の天然色素や赤色3号、赤色104号、赤色105号、赤色106号、黄色4号、黄色5号、緑色3号、青色1号等の法定色素、リボフラビン等が挙げられる。
【0043】
pH調整剤としては、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、コハク酸等の有機酸とそのナトリウム塩やカリウム塩、リン酸ナトリウム、リン酸水素ナトリウム等のリン酸塩、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム等の炭酸塩等が挙げられる。
保存料としては、ソルビン酸及びその塩、プロタミン及びプロタミンの酵素分解物、ペクチン分解物等が挙げられる。
光沢剤としては、シェラック、カルナウバロウ、キャンデリラロウ等のワックス類及びステアリン酸カルシウム等が挙げられ、更に、除電剤、流動化剤として微粒子二酸化ケイ素等を配合することができる。滑沢剤としては、ケイ酸マグネシウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、セラック、カルナウバロウ等のワックス類、セタノール、ステアリルアルコール等の高級アルコール類等を配合できる。
【0044】
また、可食性フィルムにおいては、粘稠剤として、ソルビット、グリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、キシリット、マルチット、ラクチット等の1種又は2種以上を配合し得る。
【0045】
更に錠菓においては、崩壊剤として、アルファー化デンプン、アルギン酸ナトリウム、クロスポピドン等、結合剤としてヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、カラヤガム等を配合することができる。
【0046】
歯磨剤等においては、研磨剤や清掃剤として、沈降性シリカ、シリカゲル、アルミノシリケート、ゼオライト、ジルコノシリケート、第2リン酸カルシウム・2水和物及び無水物、ピロリン酸カルシウム、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、アルミナ、無水ケイ酸、炭酸マグネシウム、第3リン酸マグネシウム、不溶性メタリン酸ナトリウム、不溶性メタリン酸カリウム、酸化チタン、ハイドロキシアパタイト、合成樹脂系研磨剤等を配合することができ、また粘結剤として、カルボキシメチルセルロースナトリウム、キサンタンガム、カラギーナン等を配合することができ、湿潤剤として、グリセリン、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、1,3−ブチレングリコール等の多価アルコール等を配合することができる。発泡剤としては、アニオン界面活性剤のラウリル硫酸ナトリウム等のアルキル硫酸塩等が挙げられ、アルコールとしては、一価アルコール、特にエタノール等の炭素数3以下の低級アルコールを配合し得る。
【実施例】
【0047】
以下、調製例、試験例、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。なお、下記の例において特に明記のない場合は、組成の「%」は容量%、比率は容量比を示す。
【0048】
[調製例]
菌株は下記操作により獲得した。家庭の漬物、漬物周囲の液及び付着物をサンプルとし、白金耳でサンプルの一部を採取してラクトバシライMRS寒天培地(日本ベクトンディッキンソン)に塗抹した。37℃で1〜2日、嫌気又は好気条件下で培養し、生えてきた菌のコロニーを形態等で区別して複数の菌を単離した。単離した菌のうち、本発明に記載した菌株についてはDNAを抽出して16s rDNAの配列を元に菌種同定を行った。DNA抽出にはnexttec バクテリアDNA抽出キットを用い、16s rDNAによる同定には、細菌同定用のデータベースソフトであるMicroSeq IDソフトウエア(アプライドバイオシステムズ社)を用いた。
以上の通り単離した各菌について、下記試験例に示す口腔細菌の病原性や生育の抑制作用を検討し、作用を有した菌株を本発明の菌とした。
また、う蝕、歯周病、口臭等の口腔疾患・不快の原因菌としては前述したとおり多くの菌が挙げられるが、今回はう蝕の原因菌としてストレプトコッカス・ミュータンス ATCC25175株、歯周病や口臭の原因菌としてはポルフィロモナス・ジンジバリス ATCC33277株、プレボテラ・インターメディア ATCC49046株、フゾバクテリウム・ヌクレアタム ATCC10953株、バイオフィルム形成菌としてはアクチノマイセス・ビスコーサス ATCC15987株を用いた。
【0049】
[試験例1:共培養による口腔細菌生育抑制]
上記調製例で得られた単離菌株を、ラクトバシライMRSブロス(日本ベクトンディッキンソン)で、口腔細菌以下4菌株、すなわちストレプトコッカス・ミュータンス ATCC25175株、ポルフィロモナス・ジンジバリス ATCC33277株、プレボテラ・インターメディア ATCC49046株、及びフゾバクテリウム・ヌクレアタム ATCC10953株を、ヘミン(和光純薬、500μg/mL)、メナジオン(和光純薬、100μg/mL)を添加したトッド・ヒューイット・ブロス(日本ベクトンディッキンソン)で嫌気的に前培養した。各単離菌一株と各口腔細菌一株をそれぞれ1×10
7となるようにハート・インフュージョン・ブロス(糖不含培地)で混合し、37℃で1日嫌気培養した。培養液をリン酸緩衝生理食塩水にて適宜希釈し、各口腔細菌が選択的に生育し乳酸菌の生育は抑制される選択培地に塗抹して嫌気培養し、生えてくる細菌コロニー数を計測することにより、培養液中の口腔細菌の生菌数を求めた。上記選択培地としてはストレプトコッカス・ミュータンスにはスクロース(和光純薬、20%)及びバシトラシン(シグマ、0.2U/mL)を添加したミティス・サリバリウス寒天(日本ベクトンディッキンソン)を、ポルフィロモナス・ジンジバリス及びプレボテラ・インターメディアには下記に示すカナマイシン血液寒天を、フゾバクテリウム・ヌクレアタムには下記に示すCVE寒天を用いた。なお、以後、試験例を示す表において、ストレプトコッカス・ミュータンスをSm、ポルフィロモナス・ジンジバリスをPg、プレボテラ・インターメディアをPi、フゾバクテリウム・ヌクレアタムをFnと表記する。
【0050】
[カナマイシン血液寒天]
1リットル中組成
トリプチティック・ソイ 寒天(日本ベクトンディッキンソン) 40g
ヘミン(和光純薬)50μg/mL、メナジオン(和光純薬)100μg/mL混液
10mL
ヒツジ脱繊血 50mL
カナマイシン(シグマ) 0.2g
【0051】
[CVE寒天]
1リットル中組成
トリプティケース ペプトン(日本ベクトンディッキンソン) 10g
酵母エキス(日本ベクトンディッキンソン) 5g
塩化ナトリウム(和光純薬) 5g
グルコース(和光純薬) 2g
L−トリプトファン(和光純薬) 0.2g
寒天(和光純薬) 15g
ヒツジ脱繊血 50mL
エリスロマイシン(シグマ) 4mg/mL 1mL
クリスタルバイオレット(和光純薬)5mg/mL 1mL
【0052】
培養してコロニーを計測した結果、口腔細菌単独培養した際の細菌数を100%として、各単離菌株と共培養した際の同種の口腔細菌数をパーセンテージから、下記基準に基づき生育抑制効果を示す。
(基準)
◎:口腔細菌を10%未満に抑制するもの
○:10%以上30%未満
△:30%以上70%未満
×:70%以上
【0053】
【表3】
表のとおり、各単離菌株は糖不含培地での共培養において、各口腔細菌の生育を抑制した。
【0054】
[試験例2:バイオフィルム形成抑制効果]
上記調製例で得られた単離菌株を、ラクトバシライMRSブロス(日本ベクトンディッキンソン)で、口腔細菌4菌種、すなわちストレプトコッカス・ミュータンス ATCC25175株、アクチノマイセス・ビスコーサス ATCC15987株、ポルフィロモナス・ジンジバリス ATCC33277株及びフゾバクテリウム・ヌクレアタム ATCC10953株を、ヘミン(和光純薬、500μg/mL)、メナジオン(和光純薬、100μg/mL)を添加したトッド・ヒューイット・ブロス(日本ベクトンディッキンソン)で前培養した。これら口腔細菌を、糖不含培地であるハートインフュージョンブロスにヘミン、メナジオンを添加した培地に各10
6/mLとなるように添加し、96ウェルマルチプレート(スミロン MS8096F)各ウェルに100μLずつ分注した。さらに前培養した各単離菌株を遠心分離後、ヘミン、メナジオン添加ハートインフュージョンブロスに10
7/mLとなるように再懸濁し、口腔細菌を分注したウェルに25μLずつ添加し、嫌気培養を2日間行いバイオフィルム形成を行った。培養後、ウェルを生理食塩水100μLで2回洗浄しても残存する底面付着物をバイオフィルムとして、クリスタルバイオレットで染色した。これを30%酢酸で色素溶出し、550nmの吸光度を測定することによりバイオフィルム量を測定した。単離菌を添加せず口腔細菌のみで形成されたバイオフィルム量を100とし、単離菌を添加した際のバイオフィルム量相対値を求めた。結果を表4に示す。
【0055】
【表4】
(基準)
◎:30%未満
○:30%以上60%未満
△:60%以上80%未満
×:80%以上
【0056】
表のとおり、単離菌株は糖不含培地での培養で形成される口腔細菌のバイオフィルム形成を抑制した。また、単離菌株の菌体を含む培養物の沈降性成分は糖不含培地での培養で形成される口腔細菌のバイオフィルム形成を抑制した。
【0057】
[試験例3:生育抑制(通常糖含有培地及び糖不含培地)]
上記調製例で得られた菌株の単離菌をヘミン(和光純薬、500μg/mL)、メナジオン(和光純薬、100μg/mL)を添加したトッド・ヒューイット・ブロス(糖含有培地)又はハート・インフュージョン・ブロス(糖不含培地)に0.9%の寒天(細菌培養用:和光純薬)を添加して作製した軟寒天平板培地に穿刺し、37℃・1日嫌気条件で培養した。
別にストレプトコッカス・ミュータンス ATCC25175、ポルフィロモナス・ジンジバリス ATCC33277株、プレボテラ・インターメディア ATCC49046株、及びフゾバクテリウム・ヌクレアタム ATCC10953株を、ヘミン(和光純薬、500μg/mL)、メナジオン(和光純薬、100μg/mL)を添加したトッド・ヒューイット・ブロス(日本ベクトンディッキンソン)で培養した。
上記同様に作製した軟寒天培地二種類をオートクレーブ後47℃で保温したもの5mLに、上記ストレプトコッカス・ミュータンス、ポルフィロモナス・ジンジバリス、プレボテラ・インターメディア、又はフゾバクテリウム・ヌクレアタムの培養液0.1mLを添加して泡立たないように速やかに攪拌し菌を懸濁した。これらの菌を懸濁した二種の培地はそれぞれ、単離菌を穿刺培養したものと同一の培地種の平板に重層した。さらに37℃・嫌気条件で1日培養した後に、単離菌を穿刺した周囲の重層菌の生育阻止円の有無を観察し、ノギスにより直径を計測した。
【0058】
阻止円直径から、下記基準に基づき生育抑制効果を示す。
(基準)
◎:7mm以上
○:4mm以上7mm未満
△:4未満
×:認められず
【0059】
【表5】
【0060】
【表6】
【0061】
表のとおり、各単離菌を先行培養することにより、糖含有培地及び糖不含培地において口腔細菌の生育阻止円が生じた。この結果により、単離菌は、糖含有培地、糖不含培地両方での培養において菌体外に口腔細菌生育抑制物質を分泌していることが確認された。これは、試験例1に示した菌そのものだけでなく、培養液等の培養物も口腔細菌の生育抑制作用を持つことを示すものである。
【0062】
[試験例4:上清抗菌性]
試験例1で得られた各菌株をトリプティックソイブロス(日本ベクトンディッキンソン)10mLで37℃、1日、嫌気培養した。培養液を遠心分離後、上清を0.45ミクロンのフィルター(日本PALL)でろ過して完全に除菌した。5mLをそのまま、残り5mLは4mol/L 水酸化ナトリウム溶液でpH6.8〜7.4となるように中和した。未中和及び中和した上清を凍結乾燥後、1.25mLの蒸留水に再溶解し4倍濃縮物とした。別に、ヘミン、メナジオンを添加したトリプティックソイブロス10mLに0.9%の寒天(細菌培養用)を添加して作成した軟寒天培地(トリプティックソイ軟寒天培地)をオートクレーブ滅菌後47℃で保温したものに、上記ポルフィロモナス・ジンジバリス又はプレボテラ・インターメディアの前培養液0.1mLを添加して泡立たないように速やかに攪拌して、シャーレに注ぎ放冷し固化させた。固化後に直径2.5mmのサンプル添加用の穴をサンプル数に応じてあけ、各菌の培養上清濃縮物又は同中和濃縮物を各穴に5μL添加した。サンプルを培地中に拡散するため1時間放置した後、別途47℃で保温しておいたオートクレーブ済みトリプティックソイ軟寒天培地10mLを重層し、37℃で1日ないし2日嫌気培養を行った。培養後、穴周囲の菌生育阻止円の大きさをノギスで計測した。
阻止円直径から、下記基準に基づき生育抑制効果を示す。
(基準)
◎:5mm以上
○:3mm以上、5mm未満
△:3mm未満
×:認められず
【0063】
【表7】
【0064】
表のとおり、単離菌の培養上清及び培養上清中和物により、口腔細菌の生育阻止円を形成したことから、これらに口腔細菌生育抑制作用があることが確認された。
【0065】
上記結果からも明らかであるように、本発明の菌株はう蝕予防の指標であるストレプトコッカス・ミュータンス、歯周病予防・治療及び口臭改善・予防の指標であるポルフィロモナス・ジンジバリス、プレボテラ・インターメディア及フゾバクテリウム・ヌクレアタムの生育抑制において、良好な結果を示した。さらに、口腔細菌によるバイオフィルム形成の抑制をすることからう蝕、歯周病、口臭の原因となる歯垢の形成を抑制することを示した。また、単離菌を糖含有培地、糖不含培地において培養した培養物が口腔細菌の生育を抑制すること、単離菌の培養上清や培養上清の中和物が口腔細菌の生育を抑制することも示した。
【0066】
以下、本発明の菌株を配合した口腔用組成物、食品の例を示す。
[実施例1]洗口剤
ラクトバチルス パラカゼイ,受託番号:NITE P−1177 0.1
プロピレングリコール 3
ポリオキシエチレン(100)硬化ヒマシ油 0.5
クエン酸 0.03
クエン酸ナトリウム 0.25
グリセリン 4.5
サッカリンナトリウム 0.004
キシリトール 3
ラウロイルサルコシンナトリウム 0.104
香料 0.3
精製水 バランス
合計 100.0%
【0067】
[実施例2]洗口剤
ラクトバチルス サケイ,受託番号:NITE P−1183 1
エンテロコッカス アビウム,受託番号:NITE P−1182 0.1
プロピレングリコール 3
ポリオキシエチレン(60)硬化ヒマシ油 0.6
クエン酸 0.02
クエン酸ナトリウム 0.3
グリセリン 3
サッカリンナトリウム 0.002
香料 0.3
精製水 バランス
合計 100.0%
【0068】
[実施例3]洗口剤
エンテロコッカス デュランス,受託番号:NITE P−1179培養上清
0.5
プロピレングリコール 3
ポリオキシエチレン(100)硬化ヒマシ油 0.5
パラオキシ安息香酸メチル 0.1
クエン酸 0.05
クエン酸ナトリウム 0.3
グリセリン 7
キシリトール 7
ラウロイルサルコシンナトリウム 0.104
香料 0.3
精製水 バランス
合計 100.0%
【0069】
[実施例4]洗口剤
ラクトバチルス ペントーサス,受託番号:NITE P−1178培養上清中和物
1.5
プロピレングリコール 3
ポリオキシエチレン(100)硬化ヒマシ油 0.5
パラオキシ安息香酸メチル 0.1
パラオキシ安息香酸エチル 0.1
クエン酸 0.01
クエン酸ナトリウム 0.5
グリセリン 6
キシリトール 6
香料 0.3
精製水 バランス
合計 100.0%
【0070】
[実施例5]練歯磨
ラクトバチルス プランタラム,受託番号:NITE P−1180凍結乾燥菌体
3
ポリオキシエチレン(60)硬化ヒマシ油 1
カルボキシメチルセルロース 1.2
ポリアクリル酸ナトリウム 0.2
70%ソルビット液 20
プロピレングリコール 4
ポリエチレングリコール4000 0.5
リン酸水素カルシウム・2水塩 35
無水ケイ酸 5
サッカリンナトリウム 0.15
香料 1.1
精製水 バランス
合計 100.0%
【0071】
[実施例6]タブレット
ラクトバチルス パラカゼイ,受託番号:NITE P−1177 0.5
ショ糖脂肪酸エステル 1
微粒子二酸化ケイ素 0.5
スクラロース 0.1
メントール 1
粉末香料 1
ソルビトール バランス
合計 100.0%
【0072】
[実施例7]タブレット
ラクトバチルス ペントーサス,受託番号:NITE P−1178 2
ショ糖脂肪酸エステル 1
微粒子二酸化ケイ素 0.5
スクラロース 0.1
メントール 1
粉末香料 1
ソルビトール バランス
合計 100.0%
【0073】
[実施例8]タブレット
ラクトバチルス プランタラム,受託番号:NITE P−1180 培養上清乾燥物
0.5
ショ糖脂肪酸エステル 1
微粒子二酸化ケイ素 0.5
スクラロース 0.1
メントール 1
粉末香料 1
ソルビトール バランス
合計 100.0%
【0074】
[実施例9]タブレット
ラクトバチルス サケイ,受託番号:NITE P−1183 中和培養上清乾燥物
5
ショ糖脂肪酸エステル 1
微粒子二酸化ケイ素 0.5
スクラロース 0.1
メントール 1
粉末香料 1
ソルビトール バランス
合計 100.0%
【0075】
[実施例10]タブレット
エンテロコッカス アビウム,受託番号:NITE P−1182 5
ショ糖脂肪酸エステル 1
微粒子二酸化ケイ素 0.5
スクラロース 0.1
メントール 1
粉末香料 1
ソルビトール バランス
合計 100.0%
【0076】
[実施例11]タブレット
エンテロコッカス デュランス,受託番号:NITE P−1179 培養上清
1
ショ糖脂肪酸エステル 1
微粒子二酸化ケイ素 0.5
スクラロース 0.1
メントール 1
粉末香料 1
ソルビトール バランス
合計 100.0%