(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
仮割当作成手段は、カゴの現在階及び運転方向と同一な階及び方向を指し示す未割当乗場呼びが検出されると、全ての未割当乗場呼びをカゴ群に仮割当した仮割当組合せを作成する、請求項2に記載のエレベータ群管理制御装置。
乗場呼び割当手段は、前記最適割当組合せの中で、要確定乗場呼びを仮割当したカゴに対してはそのカゴに仮割当した全ての未割当乗場呼びを割り当て、その他のカゴに対しては未割当乗場呼びを割り当てない、請求項2又は請求項3に記載のエレベータ群管理制御装置。
仮割当作成ステップは、カゴの現在階及び運転方向と同一な階及び方向を指し示す未割当乗場呼びが検出されると、全ての未割当乗場呼びをカゴ群に仮割当した仮割当組合せを作成する、請求項12に記載のエレベータ群管理制御方法。
乗場呼び割当ステップは、前記最適割当組合せの中で、要確定乗場呼びを仮割当したカゴに対してはそのカゴに仮割当した全ての未割当乗場呼びを割り当て、その他のカゴに対しては未割当乗場呼びを割り当てない、請求項12又は請求項13に記載のエレベータ群管理制御方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
例えば、2台のカゴが運行しているエレベータシステムについて考える。ここで、
図13(a)のダイアグラムに示すように、一方のカゴ(「第1カゴ(60)」と称する)は空カゴで7階に停止しており、他方のカゴ(「第2カゴ(61)」と称する)が空カゴで1階に停止している状況で、7階に下降方向の新規の乗場呼び(「先乗場呼び」と称する)が入力されたと仮定する(利用者の行先階は1階とする)。
【0008】
この先乗場呼びは、即時割当方式の採用により、即時に第1カゴ(60)又は第2カゴ(61)に割り当てられる。このとき、各カゴがその乗場呼びに応答するまでの待ち時間を考慮して、先乗場呼びは、7階に停止している第1カゴ(60)に割り当てられることとなる。その結果、第1カゴ(60)は、7階で利用者を乗車させ、運転方向を下向きとする運行を開始し、行先階である1階まで走行する。
【0009】
第1カゴ(60)に先乗場呼びが割り当てられた直後に、8階で下降方向の新規の乗場呼び(「後乗場呼び」と称する)が入力された場合(利用者の行先階は1階とする)、第1カゴ(60)は、既に運転方向を下向きとする運行を開始しているから、後乗場呼びは、即時に1階に停止している第2カゴ(61)に割り当てられ、第2カゴ(61)は、1階から8階まで走行し、利用者を乗車させた後、1階まで走行する。
【0010】
各カゴ(60)(61)の運行に要する走行距離を評価したときに、隣接階床間の走行距離を「1」とすると、第1カゴ(60)は、7階から1階まで6階床分走行するから、走行距離は「6」となる。一方、第2カゴ(61)は、1階から8階まで7階床分走行し、8階で利用者を乗車させた後1階まで7階床分走行する。即ち、走行距離は「14」となる。
従って、これら2つの乗場呼びに応答するために必要な総走行距離は「20」となる。
【0011】
発明者は、上記第1カゴ(60)に先乗場呼びと後乗場呼びの両方を応答させることができれば、これらの乗場呼びに応答するために必要な総走行距離、ひいては総消費電力量が大幅に削減できるのではないかと考え、本発明に至った。
【0012】
すなわち、
図13(b)のダイアグラムに示すように、カゴ(60) またはカゴ(61)に先乗場呼びを即時に割り当てて応答させるのではなく、先乗場呼びを受け付けた後、所定時間、先乗場呼びを保留させた後、カゴ(60)(61)の総走行距離が最小となるように、先乗場呼びと後乗場呼びをカゴ(60)(61)に割り当てることで、図示の例のように第1カゴ(60)に両乗場呼びを応答させることができ、総走行距離を短縮できる。より具体的には、第1カゴ(60)に両乗場呼びを応答させた場合、第1カゴ(60)の走行距離は、7階で先乗場呼びに応答せず、後乗場呼びに応答するために7階から8階まで1階床分上昇して8階で後乗場呼びの利用者を乗車させた後、7階まで1階床分走行して先乗場呼びの利用者を乗車させ、1階まで6階床分走行させる。これにより、カゴ(60)(61)の総走行距離は、「8」で済む。
【0013】
このように、先乗場呼びを保留させ、後乗場呼びと纏めてセットで考えることによって、それぞれの呼びをどちらのカゴに割り当てるのかについての選択の幅が広がる。したがって、カゴの運行ルートを柔軟に制御できるようになり、総走行距離が短くなるような運行ルートを効果的に探り当てることができる。
【0014】
上記したような、効果的に節電を図ることのできる割当方式を踏まえ、本発明の目的は、利用者の利便性の低下を抑えつつ効果的に節電を図ることのできるエレベータ群管理制御装置及び群管理制御方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明に係るエレベータ群管理制御装置は、
複数の階床にサービス可能なカゴ群を制御し、乗場呼びをカゴ群に属する何れかのカゴに割り当てるエレベータ群管理制御装置であって、
乗場呼びを受け付ける乗場呼び登録手段と、
該乗場呼び登録手段で受け付けられた乗場呼びを保留する乗場呼び保留手段と、
該乗場呼び保留手段に保留された未割当乗場呼びの中で、受付時点からの経過時間が予め設定された最大保留時間に達した乗場呼びである要確定乗場呼びの有無を検出する要確定乗場呼び検出手段と、
を具え、前記要確定乗場呼び検出手段に
て前記要確定乗場呼びが検出されると
、少なくとも前記要確定乗場呼びを含む未割当乗場呼びをカゴ群に割り当てるものである。
【0016】
望ましくは、
前記要確定乗場呼びが検出されると、全ての未割当乗場呼びをカゴ群に仮割当した仮割当組合せを作成する仮割当作成手段と、
前記仮割当組合せに沿ってカゴ群を全ての未割当乗場呼びにサービスさせたと想定して演算した仮割当評価値に基づいて仮割当組合せを最適割当組合せとして選択する最適割当選択手段と、
該最適割当組合せに沿って、少なくとも前記要確定乗場呼びを含む未割当乗場呼びをカゴ群に割り当てる乗場呼び割当手段と、
を具える。
【0017】
また、本発明に係るエレベータの群管理制御方法は、
複数の階床にサービス可能なカゴ群を制御し、乗場呼びをカゴ群に属する何れかのカゴに割り当てるエレベータ群管理制御方法であって、
乗場呼びを受け付ける乗場呼び登録ステップ、
受け付けられた乗場呼びを保留する乗場呼び保留ステップ、
保留された未割当乗場呼びの中で、受付時点からの経過時間が予め設定された最大保留時間に達した乗場呼びである要確定乗場呼びの有無を検出する要確定乗場呼び検出ステップ、
を有し、前記要確定乗場呼び検出ステップに
て前記要確定乗場呼びが検出されると
、少なくとも前記要確定乗場呼びを含む未割当乗場呼びをカゴ群に割り当てる。
【0018】
望ましくは、
前記要確定乗場呼び検出ステップにて要確定乗場呼びが検出されると、全ての未割当乗場呼びをカゴ群に仮割当した仮割当組合せを作成する仮割当作成ステップ、
前記仮割当組合せに沿ってカゴ群を全ての未割当乗場呼びにサービスさせたと想定して演算した仮割当評価値に基づいて仮割当組合せを最適割当組合せとして選択する最適割当選択ステップ、及び、
該最適割当組合せに沿って、少なくとも前記要確定乗場呼びを含む未割当乗場呼びをカゴ群に割り当てる乗場呼び割当ステップ、
を含む。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係るエレベータの群管理制御装置及び群管理制御方法によれば、受け付けられた乗場呼びを即時に割り当てずに一旦保留するようにしている。これにより、複数の乗場呼びをまとめることができ、まとめられた複数の乗場呼びをカゴ群へ割り当てることで、カゴの運行ルートを柔軟に制御して、エレベータシステムの効率的な運行を行なうことができる。
【0020】
保留された乗場呼びは、最初に保留された乗場呼びが最大保留時間経過した後に、保留されている複数の乗場呼びを、総消費電力量などの仮割当評価値が例えば最小となる最適割当組合せに基づいて、カゴ群に割り当てることができる。最大保留時間は、その値の大きさを抑えることによって、乗場呼びを入力した利用者の待ち時間が容認限度を超えて延びてしまうことを防ぐことができる。これにより、利用者の利便性の低下を抑えつつ、カゴの運行ルートを柔軟に制御して効果的に必要な総消費電力量等を削減でき、エレベータシステムの効率的な運行を行なうことができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明は、利用者が乗場呼びを入力した後、一旦その乗場呼びを保留し、所定時間経過後に当該乗場呼びを含む保留するものであり、望ましくは、保留されたすべての乗場呼びを、消費電力量などの仮割当評価値が例えば最小となるようにカゴ群に割り当てることで、節電等を図ることのできるエレベータの群管理制御装置及び群管理制御方法に関するものである。
【0023】
以下、本発明の一実施例について、図面を用いて説明を行なう。
【0024】
図1は、本発明の一実施例に係るエレベータシステム(10)の全体構成の概略図である。
エレベータ(20)は、建物内に設置されたシャフト内に、利用者が乗車するカゴ(30)を昇降可能に配置して構成される。図示の実施例では、各カゴ(30)は、階上に配置されたシーブ及び巻上機(22)に、一端にカウンターウェイト(23)を取り付けたロープ(24)で吊下されている。なお、カウンターウェイト(23)の重量として「カゴ自重+定格積載重量の50%」である場合を一例として以降の記述を行う。
【0025】
図示の実施例では、1号機から3号機の3基のエレベータ(20)(20)(20)に属するカゴ(30)(30)(30)を一群のカゴ群として管理、制御する例について説明するが、エレベータの基数やカゴの台数はこれに限定されるものではない。
【0026】
なお、以下の説明では、一実施例として、カゴ(30)の運行評価を、直接的に消費電力量によって行なう代りに、エレベータシステム(10)中のカゴ(30)の走行距離の総和により行なうものとする。
【0027】
ここで、「カゴ(30)の走行距離」は、説明を判り易くするため、簡易的に以下のとおり定義する。
「カゴ(30)の走行距離」は、
図2に示すように、カゴ(30)が現在階から上昇又は下降することで、走行する階床数とする。即ち、2階から4階まで走行した場合には、カゴ(30)の走行距離は「2」となる。
また、乗場呼びについては、乗場呼び入力時に行先階が分らない場合(乗場行先階釦で入力するのではない場合)は、行先階を行先方向の最以遠階として演算を行なうものとする。
【0028】
このような前提の下、例えば、
図2(a)に示すように、1階から5階までの階床を有する建物において、2階を現在階とする上昇中のカゴ(30)が、登録された4階へのカゴ呼びに応答して4階まで走行し、利用者を降車させた後反転(図中「第1反転階」)し、3階にて当該カゴ(30)に割り当てられた下向きの乗場呼びに応答する場合、該乗場呼びの最以遠階は1階であるため、カゴ(30)の走行距離は、(4−2)+(4−1)=5となる。
【0029】
同様に、
図2(b)に示すように、3階を現在階とする上昇中のカゴ(30)が、入力された4階へのカゴ呼びに応答して4階まで走行し、利用者を降車させた後反転(第1反転階)、2階にて当該カゴに割り当てられた上向きの乗場呼びに応答し、2階に到着した後、上向きに反転する(第2反転階)。この場合、乗場呼びの最以遠階は5階であるから、カゴ(30)の走行距離は、(4−3)+(4−2)+(5−2)=6となる。
【0030】
なお、上記カゴ(30)の走行距離は、説明を簡易的に行なうために、走行した階床数を走行距離と見なしているが、実際の階床間の距離データを考慮して走行距離を演算できることは勿論である。
【0031】
上述した
図1のエレベータシステム(10)において、各カゴ(30)の扉の開閉の制御や、カゴ(30)内に設けられた操作盤(図示せず)によるカゴ呼びの受付、巻上機(22)の制御などは、夫々シャフト上部の機械室に設けられたカゴ制御装置(35)によって行なわれる。図示を省略したが、カゴ(30)とカゴ制御装置(35)は有線接続されている。
【0032】
エレベータシステム(10)は、エレベータ群管理制御装置(40)により統括的に制御される。エレベータ群管理制御装置(40)は、一般的にシャフト上部の機械室などに設けられ、基板にマイコン、メモリ、チップ、スイッチなどを実装して構成される。エレベータ群管理制御装置(40)は、上記した各カゴ制御装置(35)に有線接続されて、各カゴの現在階、運転方向、扉状態などの各種情報を受信すると共に、後述する乗場呼び釦(25)にて入力された乗場呼びの各カゴ制御装置(35)への割当てを行なう。
【0033】
カゴ(30)の操作は、各階床に設けられた乗場呼び釦(25)と、カゴ(30)内に設けられた操作盤によって行なうことができる。一般的に、乗場呼び釦(25)は、行先方向が上か下かを入力する操作釦であり、又は行先階を入力する操作釦(乗場行先階釦)である。後者では、行先階と入力階の関係から行先方向も判明するので、行先方向も同時入力しているに等しい。操作盤は、カゴ呼びの際の行先階の階数釦や扉の開閉釦である。
乗場呼び釦(25)は、有線接続によりエレベータ群管理制御装置(40)に接続され、入力された乗場呼びをエレベータ群管理制御装置(40)に送信する。
【0034】
より詳細には、前述したエレベータ群管理制御装置(40)は、
図1に示すように、乗場呼びを受け付ける乗場呼び登録手段(41)と、該乗場呼び登録手段(41)で受け付けられた乗場呼びを保留する乗場呼び保留手段(42)と、該乗場呼び保留手段(42)に保留された未割当乗場呼びの中で、受付時点からの経過時間が予め設定された最大保留時間に達した乗場呼びである要確定乗場呼びの有無を検出する要確定乗場呼び検出手段(43)とを具える。
【0035】
さらに、本発明のエレベータ群管理制御装置(40)は、前記要確定乗場呼びが検出されると、全ての未割当乗場呼びをカゴ(30)群に仮割当した仮割当組合せを作成する仮割当作成手段(44)と、前記仮割当組合せに沿ってカゴ(30)群を全ての未割当乗場呼びにサービスさせたと想定して演算した仮割当評価値が最小となる仮割当組合せを最適割当組合せとして選択する最適割当選択手段(45)と、該最適割当組合せに沿って未割当乗場呼びをカゴ(30)群に割り当てる乗場呼び割当手段(46)と、を具える。
【0036】
前述の乗場呼び釦(25)で入力された乗場呼びは、乗場呼び登録手段(41)に受け付けられ、該乗場呼び登録手段(41)は、受け付けられた乗場呼びを乗場呼び保留手段(42)に送る。
【0037】
乗場呼び登録手段(41)から送られた乗場呼びは、乗場呼び保留手段(42)にて記憶される。例えば、乗場呼び保留手段(42)は、受け付けられた乗場呼びのうち、未だカゴ(30)に割り当てられていない「未割当乗場呼び」のリストを作成する。
本発明では、受け付けられた乗場呼びをカゴ(30)に即時割当するのではなく、未割当の状態で乗場呼び保留手段(42)に一旦保留することで、複数の乗場呼びをまとめた後、割当を実行するようにしている。しかしながら、下記するとおり、運行状態によっては、乗場呼び保留手段(42)に保留することなく、即時に割当を実行することもできる。
【0038】
なお、上記乗場呼び登録手段(41)では、乗場呼び釦(25)で入力された乗場呼びの受付時刻情報を、当該乗場呼びに関連付けて記憶する。
【0039】
乗場呼び保留手段(42)に保留された未割当乗場呼びは、その保留時間を要確定乗場呼び検出手段(43)にて監視される。要確定乗場呼び検出手段(43)は、上記乗場呼び保留手段(42)に保留された未割当の乗場呼びが、所定時間以上、何れのカゴ(30)にも割り当てられることなく、長期に亘り保留されてしまうことを防ぐために、上記乗場呼び保留手段(42)に保留された未割当の乗場呼びについて、各乗場呼びの時刻情報に基づいて、受付時点からの経過時間(保留時間)が、予め設定された最大保留時間(T)に達していないかどうかを検出する。
【0040】
乗場呼び保留手段(42)に保留された未割当乗場呼びの内、最大保留時間(T)に達した未割当乗場呼びを「要確定乗場呼び」と称する。
【0041】
最大保留時間(T)が長い程、エレベータシステム(10)の節電効果を高めることができるが、最大保留時間(T)が長くなる程、利用者の待ち時間が長くなってしまい、利便性が低下する。従って、最大保留時間(T)の上限(Tmax)は、0秒を超えて30秒、望ましくは、5〜20秒であり、ビル側の要望に合わせて適宜設定することができる。最大保留時間(T)は、通常は上限値(Tmax)を設定しておくが、カゴ(30)の運行状況や混雑状況、時間帯などの状況に応じて上限値(Tmax)以外の設定をして、自動的に制御パラメータとして変化させることもできる。
【0042】
要確定乗場呼び検出手段(43)が、上記要確定乗場呼びを検出すると、乗場呼び保留手段(42)に保留されている全ての未割当乗場呼びをカゴ(30)群へ仮割当したパターン(以下、個々のパターンを「仮割当組合せ」と称する)を全パターン作成する。仮割当組合せは、仮割当作成手段(44)にて作成される。
【0043】
例えば、
図3に示す3台のカゴ(#1)〜(#3)に対し、3個の未割当乗場呼びA、B及びCが発生している状況下において、何れかの乗場呼びが、要確定乗場呼びとなったときに、仮割当作成手段(44)にて作成される仮割当組合せは、
図4及び
図5に示すように、3×3×3の27パターンとなる。
【0044】
最適割当選択手段(45)は、前記により作成された仮割当組合せに沿って各カゴ(30)に乗場呼びをサービスさせたと想定し、各仮割当組合せの仮割当評価値を演算する。仮割当評価値は、総消費電力量、カゴ(30)群の走行距離の総和、カゴ(30)群の走行時間の総和などとすることができ、最適割当選択手段(45)は、全ての仮割当組合せに対して仮割当評価値に基づく演算を行ない、最も仮割当評価値の小さい仮割当組合せを選択し、最適割当組合せとする。なお、全ての仮割当組合せに対して仮割当評価値に基づく演算を行なって最適割当組合せを求めるようにはせず、分枝限定法などの組合せ最適化手法を用いることにより効率的に最適割当組合せを求めるようにしてもよい。
【0045】
例えば、仮割当評価値として、カゴ(30)群の走行距離の総和を採用した場合について説明する。
【0046】
まず、状況として、
図3に示すように、9階床の3基のエレベータ(20)のカゴ(#1)(#2)(#3)について、
・カゴ(#1):1階で停止中。
・カゴ(#2):5階を上方向に走行中で、9階に既に乗場呼びが割当て済み。
・カゴ(#3):3階を行先階とするカゴ呼びを既に受け付けており、8階を下方向に走行中。
とする。
【0047】
このとき、乗場呼び保留手段(42)(
図1参照)に、以下の未割当乗場呼びA、B及びCが保留されているものとする。
・未割当乗場呼びA:3階における上方向の呼び。
・未割当乗場呼びB:要確定乗場呼びであって、5階における下方向の呼び。
・未割当乗場呼びC:7階における下方向の呼び。
【0048】
仮割当作成手段(44)にて作成される仮割当組合せは、前述の
図4及び
図5に示すように27通りである。
作成された
図4及び
図5の仮割当組合せについて、最適割当選択手段(45)にて各々の走行距離の総和を演算する。なお、乗場呼びの時点では、利用者の行先階の階数が判らない場合(乗場行先階釦がない場合)を考え、走行距離は、乗場呼び入力階から行先方向の最以遠階(上方向では9階、下方向では1階)で演算する。
【0049】
上記条件で演算を行なうと、カゴ(#2)に未割当乗場呼びBとC、カゴ(#3)に未割当乗場呼びAを割り当てた仮割当組合せ23(
図5)の走行距離の総和が最小となる。
仮割当組合せ23の走行パターンは、具体的には、
図6に示すように、
・カゴ(#1):乗場呼びに応答せず、停止したまま。走行距離は0である。
・カゴ(#2):5階(現在位置)→9階(既割当乗場呼びに対応)→7階(下向きの乗場呼びCに対応)→5階(下向きの乗場呼びBに対応)→1階(下向きの最以遠階)の経路で移行する。走行距離は4+2+2+4=12である。
・カゴ(#3):8階(現在位置)→3階(カゴ呼びの行先階且つ上向きの乗場呼びAに対応)→9階(上向きの最以遠階)の経路で移行する。走行距離は5+6=11である。
【0050】
つまり、エレベータシステム(10)に属するカゴ(30)群の総走行距離は、0+12+11=23となる。
【0051】
上記の要領で選択された最適割当組合せに沿って、未割当乗場呼びが乗場呼び割当手段(46)によって各カゴ(30)に割り当てられ、カゴ(30)の運行が行なわれる。なお、カウンターウェイトの重量は、一般にカゴが50%積載の場合に吊り合うように設定される。したがって、空カゴを上昇走行させると下げ荷となりほとんど電力を消費しないが、逆に下降走行させると上げ荷となり電力を消費する。このように、カゴの消費電力量はカゴの積載や運転方向に依存するため、必ずしも走行距離には比例しない。しかしながら、エレベータは一本の昇降路を走行しなければならない制約のある乗り物である。上昇走行すれば、いずれは必ず同じ距離を下降走行しなければならない。したがって、長期的に見れば、上げ荷方向と下げ荷方向の差が相殺されて運転方向に対する依存性が無視可能となり、カゴの消費電力量は概ね走行距離に比例すると考えられる。つまり、カゴの走行距離が少なくなるように乗場呼びを割り当てることで、エレベータシステム(10)の節電を図ることができる。
【0052】
なお、上記では、乗場呼び割当手段(46)は、全ての未割当乗場呼びをカゴ(30)群に割り当てるようにしているが、少なくとも保留時間の一番長い要確定乗場呼びを仮割当したカゴ(30)に仮割当したすべての未割当乗場呼びを割り当てて、その他のカゴに仮割当した未割当乗場呼びは、乗場呼び保留手段(42)にて保留するようにしてもよい。つまり、カゴ(#2)には「5階における下方向の呼び」(要確定乗場呼び)と「7階における下方向の呼び」を割り当て、カゴ(#3)には「3階における上方向の呼び」を割り当てないようにしてもよい。
少なくとも要確定乗場呼びを割り当てるのは、当該乗場呼びを入力した利用者の待ち時間が容認限度を超えて延びてしまうことを防ぐためである。その他のカゴに仮割当した未割当乗場呼び(例えばカゴ(#3)に対する「3階における上方向の呼び」)は、予め付された時刻情報に基づいて、上記の要領で再度仮割当を行なうこととなる。
【0053】
また、上記に基づく運行を行なっている途上で、移動したカゴ(30)の現在階、運転方向と同一な階、方向の乗場呼びが乗場呼び保留手段(42)に保留されている場合や、新規乗場呼びが発生し、その階、方向と同一な現在階、運転方向のカゴがあった場合には、これら乗場呼びを、当該カゴ(30)に即時に割り当てることを考慮するのが望ましい。なぜなら、当該カゴ(30)がそれらの乗場呼びに応答した方が走行距離が短くなる可能性が高く、その場合、当該カゴがそれらの乗場呼びを通過する前に割当を決定する必要があるからである。
【0054】
上記構成のエレベータ群管理制御装置(40)に係るエレベータの節電型群管理制御について、その処理手順を
図7乃至
図11のフローチャート図に基づいて説明する。
【0055】
図7は、本発明のエレベータの節電型群管理制御における乗場呼び割当処理のフローチャート図である。
【0056】
ステップS101の乗場呼び割当処理は、所定時間(例えば1秒)毎にコールされて、必要に応じて乗場呼び割当処理を実行する。
乗場呼び登録手段(41)にて受け付けられた乗場呼びは、一旦、乗場呼び保留手段(42)に保留され、該乗場呼び保留手段(42)にて時刻情報が付与される。
【0057】
乗場呼び保留手段(42)に保留された未割当乗場呼びの数が、予め設定された所定数以上となった場合には(ステップS102のYes)、それ以上保留させると、群管理制御装置の演算処理能力の限界を超える可能性があるため、以下で説明するステップS103とステップS104を飛ばしてステップS105へ移行する。
【0058】
乗場呼び保留手段(42)に保留された未割当乗場呼びの数が、所定数未満である場合には(ステップS102のNo)、乗場呼び保留手段(42)に乗場呼びが受け付けられてから保留することのできる乗場呼び最大保留時間(T)を算定する(ステップS103)。
【0059】
ステップS103では、サブルーチン
図8がコールされ(ステップS201)、ピーク時間帯かどうか、さらには、過去の所定時間内の積載荷重等に基づいて、節電を図りつつ効率よく運行させるための乗場呼び最大保留時間(T)を算定する。
【0060】
ここで、エレベータシステム(10)について、過去の所定時間の呼びの発生状況やカゴの積載荷重から、アップピーク時間帯における交通状況(アップピーク交通)であると判断された場合には(ステップS202のYes)、カゴ(30)の混雑を解消するために、過去の所定時間における基準階出発時の積載荷重(%)を「load」とし(ステップS203)、「load」が50%未満であれば(ステップS204のNo)、最大保留時間の上限値(Tmax)に(50−load)/50を乗じて、最大保留時間(T)とする(ステップS205)。
一方、「load」が50%以上であれば(ステップS204のYes)、エレベータシステムの輸送能力が不足する懸念があるため、乗場呼びの保留を行なうことなく運行することが求められる。従って、最大保留時間(T)を0としている(ステップS206)。
【0061】
ステップS202において、アップピーク交通でないと判断された場合には(ステップS202のNo)、上限値(Tmax)を最大保留時間(T)とする(ステップS207)。
【0062】
上記サブルーチン
図8において最大保留時間(T)が算定されると、再びフローチャート
図7に戻る。要確定乗場呼び検出手段(43)は、乗場呼び保留手段(42)に保留された後、最大保留時間(T)を経過した未割当乗場呼び(要確定乗場呼び)の有無を検出し(ステップS104)、要確定乗場呼びがある場合には(ステップS104のYes)、要確定乗場呼びを割り当てるために、受け付けられてからの経過時間が最大の未割当乗場呼びを「target」とする(ステップS105)。
【0063】
次に、割当対象である「target」となった未割当乗場呼びを含む全ての未割当乗場呼びのカゴ(30)への割当処理を行なう。
【0064】
まず、全ての未割当乗場呼びをカゴ(30)群へ仮割当したパターン(仮割当組合せ)を全パターン作成する(ステップS106)。これらの仮割当組合せには夫々、仮割当組合せ番号(1〜最大番号)を付けておく。最大番号とは、仮割当組合せの全個数である。例えば3台のカゴ(#1)〜(#3)に対し、3個の未割当乗場呼びA、B及びCが発生している状況下においては、
図4及び
図5に示すような仮割当組合せ1〜27となる。
【0065】
次に、作成した仮割当組合せの全ての中から、最適な仮割当組合せ(最適割当組合せ)を決定する(ステップS107)。
【0066】
ステップS107では、サブルーチン
図9がコールされ(ステップS301)、最適割当組合せの決定処理が実行される。本サブルーチンでは、最適割当選択手段(45)は、仮割当組合せ夫々の仮割当評価値(eval)を算出し、最小の仮割当評価値(min_eval)となる最適割当組合せを導出するものである。
なお、本サブルーチンでは、仮割当評価値は、カゴ(30)群の総走行距離と、利用者の乗場呼び待ち時間の2乗和の重み付け和としているが、これに限定されるものではない。
【0067】
サブルーチン
図9に示すように、まず、最小の仮割当評価値(min_eval)を初期化して最大の整数値(INT_MAX)とし(ステップS302)、各カゴ(30)の予測待ち時間テーブルを更新する(ステップS303)。予測待ち時間テーブルには、(階と方向で区別される)各乗場呼びに各カゴ(30)が応答すると仮定した場合の応答時間の予測値がセットされる。
【0068】
次に、仮割当組合せの1番から最大番号まで、夫々の番号(N)毎に、以下に述べるステップS305〜ステップS310を実施する。このようなループ処理の開始、終了をステップS304、ステップS311として図示している。
【0069】
仮割当に基づく全カゴ(30)の総走行距離を演算して「sumdist」とする(ステップS305)。また、上記仮割当に基づく利用者の乗場呼び待ち時間についても考慮するために、乗場呼び待ち時間の2乗和を算出して「sumwt」とし(ステップS306)、これら総走行距離(sumdist)と待ち時間の2乗和(sumwt)の和を仮割当評価値(eval)とする(ステップS307)。なお、このとき、待ち時間の2乗和については、係数αを乗じて重み付けすることができる。係数αを大きくするほど、待ち時間が重み付けされて、待ち時間の短縮を重視した評価となり、係数αを小さくするほど、走行距離を重視した評価となる。
【0070】
演算された仮割当評価値(eval)が、先に求められた最小の仮割当評価値(min_eval)よりも小さければ(ステップ308のYes)、最小の仮割当評価値(min_eval)を仮割当評価値(eval)で置き換えて(ステップS309)、仮割当組合せ番号(N)を最適割当組合せ番号(Nbest)とする(ステップS310)。
【0071】
仮割当組合せの最大番号までループ処理(ステップS304〜ステップS311)を終了すると、本サブルーチン
図9は終了して再びフローチャート
図7に戻る。
得られた最小仮割当評価値(min_eval)となる最適割当組合せ(仮割当組合せ番号Nbest)について、乗場呼び割当手段(46)は、前記ステップS105にて対象とされた未割当乗場呼び(target)が割り当てられた仮割当カゴを「acar」として(ステップS108)、該カゴ(acar)に仮割当された全ての乗場呼びを割り当てる(ステップS109)。ただし、他の各カゴに仮割当された乗場呼びは、各カゴに割り当てない。
【0072】
上記割り当てられた乗場呼びに基づいて、カゴ(acar)を運行させることで、対象となる乗場呼び(target)をサービスしながら、仮割当評価値(eval)を最小(min_eval)とすることができる。
【0073】
上記のように、本発明のエレベータ群管理制御装置(40)及び群管理制御方法によれば、乗場呼びを一旦保留することで、エレベータシステム(10)の節電を図ることができる。また、最大保留時間(T)の設定にカゴ(30)の積載荷重などを考慮することで、利用者の利便性の低下を防ぎつつ、効率のよいカゴ(30)の運行を行なうことができる。
【0074】
なお、
図7に基づく運行を行なっている途上で、カゴ(30)の現在階、運転方向と同一な階、方向の乗場呼びが乗場呼び保留手段(42)に保留されている場合や、新規乗場呼びが発生し、その階、方向と同一な現在階、運転方向のカゴがあった場合に、これらの乗場呼びを即時割当とすることにしたフローチャート
図10と
図11について以下説明する。
【0075】
図10の同一階割当処理は、いずれかのカゴ(30)の現在階又は運転方向が変化したときにコールされ(ステップS401)、そのカゴの現在階、運転方向と同一な階、方向の乗場呼びが乗場呼び保留手段(42)に保留されている場合に、乗場呼びを即時割当する処理である。
【0076】
カゴ(30)の現在階、運転方向が変化すると、そのカゴの情報、即ち、号機番号を「car」、現在階を「fl」、現在方向を「dir」としてセットする(ステップS402)。
【0077】
上記「fl」「dir」と同一な階、方向の未割当乗場呼びの有無が有るかどうかを検出し(ステップS403)、そのような未割当乗場呼びがある場合には(ステップS403のYes)、その未割当乗場呼びを「target」とし(ステップS404)、割当対象である「target」となった未割当乗場呼びを含む全ての未割当乗場呼びのカゴ(30)への割当処理を行なう(ステップS405〜ステップS407)。なお、この処理は、フローチャート
図7のステップS106〜ステップ108と同様の要領で行なうことができる。
【0078】
ステップS406で得られた最小仮割当評価値(min_eval)となる最適割当組合せ(仮割当組合せ番号Nbest)について、前記未割当乗場呼び(target)が割り当てられた仮割当カゴを「acar」とする(ステップS407)。このとき、該カゴ(acar)が、前記した現在階又は運転方向が変化した号機番号の「car」であれば(ステップS408のYes)、最適割当組合せ(Nbest)の中から「acar」に仮割当されている前記未割当乗場呼び(target)を含む全ての乗場呼びを割り当てる(ステップS409)。
【0079】
前記未割当乗場呼び(target)が割り当てられた仮割当カゴ(acar)が、前記した現在階又は運転方向が変化した号機番号の「car」と一致しないのであれば(ステップS408のNo)、この未割当乗場呼びは、保留されて他の最適なカゴに割当されることとなり、前述の乗場呼び割当処理(
図7)に沿って処理されることとなる。
【0080】
図11の新規乗場呼び割当処理は、新規乗場呼びが受け付けられ、その階、方向と同一な現在階、運転方向のカゴがあった場合にコールされ(ステップS501)、その新規な乗場呼びを即時割当する処理である。
【0081】
新規の乗場呼びが登録されると、その新規乗場呼びの入力階と行先方向を、夫々「fl」、「dir」としてセットする(ステップS502)。
【0082】
次に、現在階が「fl」、運転方向が「dir」(又は方向なし)であるカゴの有無を判定し(ステップS503)、該当するカゴが有る場合には(ステップS503のYes)、該当する階「fl」と方向「dir」の新規な未割当乗場呼びを「target」とする(ステップS504)。
【0083】
続いて、フローチャート
図7のステップS106〜ステップS108と同様の要領で、上記した未割当乗場呼びを含む仮割当組合せを作成して、乗場呼びの割当を実行する(ステップS505〜ステップS507)。
【0084】
ステップS507で、最適割当組合せにおいて新規の未割当乗場呼び(target)が仮割当されているカゴ(acar)の現在階が「fl」、かつ運転方向が「dir」(又は方向なし)であれば(ステップS508のYes)、最適割当組合せ(Nbest)の中から「acar」に仮割当されている前記新規の未割当乗場呼び(target)を含む全ての乗場呼びを割り当てる(ステップS509)。
【0085】
最適割当組合せにおいて新規の未登録割当乗場呼び(target)が仮割当されているカゴ(acar)の現在階が「fl」でないか、又は運転方向が「dir」(又は方向なし)ではない場合には(ステップS508のNo)、この未割当乗場呼びは、保留されて他の最適なカゴに割当されることとなり、前述の乗場呼び割当処理(
図7)に沿って処理されることとなる。
【実施例】
【0086】
表1に示す条件で、本発明のエレベータ群管理制御装置(40)を採用したエレベータシステム(10)と、従来の即時割当による群管理制御を採用したエレベータシステムについて、消費電力量と利用者の平均待ち時間のシミュレーションを実施した。
【0087】
【表1】
【0088】
・シミュレーション方法
表1のエレベータの群管理システムには、呼びの発生やエレベータの運行状況などが日々記録・蓄積されている。この蓄積された交通データを基に、シミュレーション装置において、実際のビルの1日の交通流を再現してシミュレーションを実施した。
シミュレーションに組み込まれている消費電力量の評価式により、シミュレーション上のエレベータ動作に伴う消費電力量を算出した。また、平均待ち時間についても算出した。
【0089】
図12に、本シミュレーションの結果を示す。なお、縦軸は1日の消費電力量(kWh/日)、横軸は利用者一人当たりの平均待ち時間(秒)である。
発明例のエレベータシステムについては、最大保留時間の上限値(Tmax)を0秒としたシミュレーション、5秒としたシミュレーション等、0秒から90秒の間で5秒刻みで変化させ、19個のシミュレーション結果を得た(「Tmax=0sec.」〜「Tmax=90sec.」の各点)。
このうちTmaxを0秒としたシミュレーションは、従来のエレベータシステム(即時割当方式)に相当するものである。これについては、4台のカゴを全部運行させた場合(「Tmax=0sec.」=「4 cars」の点)以外に、間引き運転ということで1台を休止させた場合(「3 cars」の点)や、2台を休止させた場合(「2 cars」の点)についてもシミュレーションを実施した。
【0090】
図12で「Tmax=0sec.」の点を見て、平均待ち時間と消費電力量が「22秒、60kWh/日」であるのに対し、「Tmax=25sec.」の点(「Tmax=20sec.」と「Tmax=30sec.」の間にある点)を見ると「31秒、46kWh/日」である。両者を比較すると、後者では平均待ち時間が9秒増加するけれども、消費電力量は14kWh/日削減する。この比較を一つの基準にすると、「平均待ち時間が9秒も増加するのは不満なので、Tmaxが25sec.よりも小さい点を選択する」とすることもできるし、「消費電力量は14kWh/日よりもっと削減したく、平均待ち時間が9秒よりも増加する点は我慢するので、Tmaxが25sec.よりも大きい点を選択する」とすることもできる。
【0091】
上記のように、本発明によれば、未割当乗場呼び最大保留時間の上限値(Tmax)の制御パラメータを調整することで、消費電力量の削減と輸送性能のバランスをきめ細かく調整することができる。
【0092】
ちなみに以下では、従来のエレベータシステム(即時割当方式)のままで運行台数を削減した場合と、本発明のエレベータシステムを採用した場合とを比較してみることにする。
図12を参照すると、従来のエレベータシステムについて、4台のカゴのうち、1台を休止させると、消費電力量は1日当たり約8kWh削減できることがわかる(4 carsと3 carsの比較)。一方、1台を休止させると、平均待ち時間は約10秒増加する。一方、「Tmax=25sec.」の点を見ると、平均待ち時間は3 carsとほぼ同等で、消費電力量は4 carsよりも約15kWh低い。
【0093】
従って、1台を休止させた場合のサービス水準低下、すなわち平均待ち時間10秒増加を許容できるのであれば、本発明のエレベータシステム(10)を採用することで、1日当たりの消費電力量を約7kWh削減できることがわかる。
【0094】
また、1台休止させた場合の消費電力量の削減、すなわち約8kWhの消費電力量削減を目標にするのであれば、本発明のエレベータシステム(10)を採用することで(「Tmax=10sec.」と「Tmax=20sec.」の間にある点)、平均待ち時間の増加は従来の4台運行に比して約6秒程度に抑えられることがわかる(4 carsの22秒に対し、28秒。3 carsでは32秒)。
【0095】
上記のように、本発明によれば、カゴの運行台数を単に削減する方法に比べて、エレベータ輸送サービス水準の低下を抑えながら、より多くの消費電力量削減効果を得ることができる。