(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、具体的な実施形態について、半導体装置を例に挙げて図を参照しつつ説明する。しかし、これらの実施形態に限定されるものではない。また、後述する各半導体装置の各層の積層構造および電極構造は、例示である。実施形態とは異なる積層構造であってももちろん構わない。そして、それぞれの図における各層の厚みは、概念的に示したものであり、実際の厚みを示しているわけではない。また、各図の凹凸形状については、理解しやすいように大きく描いてある。しかし、実際には、これらの凹凸形状は非常に微細な形状である。
【0021】
(第1の実施形態)
1.縦型構造の半導体装置
本実施形態に係るパワーデバイス100を
図1に示す。パワーデバイス100は、npnトランジスタ型の縦型構造の半導体装置である。パワーデバイス100には、
図1中の下側に示すように、ドレイン電極D1が形成されている。そして、ドレイン電極D1の形成面の反対側の面に、
図1中の上側に示すように、ゲート電極G1と、ソース電極S1とが形成されている。
【0022】
パワーデバイス100は、III 族窒化物系化合物半導体から成る複数の半導体層を有する。パワーデバイス100は、上記の電極の他に、
図1に示すように、基板110と、n型層120と、p型層130と、n型層140と、絶縁膜150と、を有している。n型層120は、基板110の側から順に、n
+ GaN層121と、n
- GaN層122と、を有している。
【0023】
基板110は、パワーデバイス100を支持して強度を高いものとするためのものである。また、パワーデバイス100を成長させるための成長基板をも兼ねている。基板110として、例えば、導電性のGaN基板を用いることができる。また、その他に、Si基板やSiC基板等の導電性基板を用いることができる。
【0024】
ソース電極S1は、n型層140とオーミック接触をしている。ソース電極S1は、n型層140の側からTi層、Al層、Ni層、Au層の順に形成されたものである。また、Ti層の代わりに、V層を形成してもよい。詳細については、後述する。
【0025】
ドレイン電極D1は、基板110とオーミック接触をしている。ドレイン電極D1は、基板110の側からTi層と、そのTi層の上にAl層を形成したものである。また、上記したソース電極S1に用いたその他の金属および化合物を用いてもよい。
【0026】
ゲート電極G1は、絶縁膜150の上であって、トレンチ160の箇所に形成されている。トレンチ160は、V字形状ではなく、矩形形状である。そのため、ゲート電極G1の断面形状も、矩形形状である。ゲート電極G1は、絶縁膜150の側からNi層と、そのNi層の上にAu層を形成したものである。また、Pd層、Au層の順に形成することとしてもよい。また、その他の金属および化合物を用いることができる。また、Auの代わりにAlを用いることもできる。
【0027】
n
+ GaN層121のn型不純物濃度は、n
- GaN層122のn型不純物濃度よりも高い。n
+ GaN層121のn型不純物濃度は、1×10
18cm
-3〜1×10
20cm
-3程度である。n
- GaN層122のn型不純物濃度は、1×10
16cm
-3〜1×10
17cm
-3程度である。
【0028】
p型層130は、p型GaNから成る層である。p型層130のキャリア濃度は、1×10
18cm
-3〜1×10
20cm
-3程度である。n型層140は、n型GaNから成る層である。n型層140のキャリア濃度は、1×10
16cm
-3以上1×10
20cm
-3以下の範囲内である。
【0029】
絶縁膜150は、ゲート絶縁膜と保護膜とを兼ねているものである。絶縁膜150の材質はSiO
2 である。また、SiN
X 、Al
2 O
3 、HfO
2 、ZrO
2 、AlNなどを用いてもよい。
【0030】
2.半導体装置の電極
本実施形態のパワーデバイス100は、ソース電極S1の構造およびその製造方法に特徴を有している。
図2に示すように、ソース電極S1は、第1金属層S11と、第2金属層S12と、第3金属層S13と、第4金属層S14と、を有している。各層の形成順序は、n型層140から順に、第1金属層S11、第2金属層S12、第3金属層S13、第4金属層S14である。
【0031】
第1金属層S11は、半導体層と好適に密着する第1の電極層である。第1金属層S11の材質は、Tiである。または、Vであってもよい。また、これら以外の材質のものであってもよい。第1金属層S11の厚みは、10nm以上100nm以下の範囲内である。
【0032】
第2金属層S12は、第1金属層S11の上に形成された第2の電極層である。第2金属層S12の材質は、Alである。また、これ以外の材質のものであってもよい。第2金属層S12の厚みは、250nm以上5000nm以下の範囲内である。また、第2金属層S12の厚みは、300nm以上1000nm以下であるとよい。
【0033】
第3金属層S13は、第2金属層S12の上に形成された第3の電極層である。第3金属層S13の材質は、Niである。また、これ以外の材質のものであってもよい。第3金属層S13の厚みは、10nm以上100nm以下の範囲内である。
【0034】
第4金属層S14は、第3金属層S13の上に形成された第4の電極層である。第4金属層S14の材質は、Auである。また、これ以外の材質のものであってもよい。第4金属層S14の厚みは、10nm以上100nm以下の範囲内である。
【0035】
第4金属層S14は、第2金属層S12をエッチングされないよう保護するためのものである。第3金属層S13は、第2金属層S12と、第4金属層S14との間に配置されたバリアメタルである。表1に、各金属層と、それらの材質の一例を示す。
【0036】
[表1]
金属層 材質 厚み
第4金属層 Au 10nm以上 100nm以下
第3金属層 Ni 10nm以上 100nm以下
第2金属層 Al 250nm以上 5000nm以下
第1金属層 Ti 10nm以上 100nm以下
n型層 n型GaN
【0037】
3.電極の形成方法
続いて、電極の形成方法について説明する。この電極の形成方法は、前述した電極を形成するのに用いられる方法である。そして、後述する電極形成工程で実際に用いられることとなる。
【0038】
3−1.電極形成工程
続いて、電極の形成方法について説明する。まず、露出しているn型層140の上に第1金属層S11を形成する。次に、第1金属層S11の上に第2金属層S12を形成する。そして、第2金属層S12の上に第3金属層S13を形成する。第3金属層S13の上に第4金属層S14を形成する。これにより、
図2に示した電極構造が形成される。
【0039】
3−2.熱処理工程
次に、熱処理工程を行う。この熱処理工程は、ソース電極S1とn型層140との間の接触抵抗を小さくするためのオーミックアロイ工程である。熱処理工程での熱処理温度は、500℃以上650℃以下の範囲内である。この熱処理工程は、電極を形成した後であれば、いつ行ってもよい。熱処理温度が、それほど高くないため、その後の他の工程と入れ換えてもよい。
【0040】
この熱処理の条件を表2に示す。供給するガスとして、窒素ガスを用いる。そして、処理時間は、5秒以上1000秒以下の範囲内である。これらは例示であり、これ以外の範囲の値を用いてもよい。
【0041】
[表2]
供給ガスの種類 窒素ガス
基板温度 500℃以上650℃以下
処理時間 5秒以上1000秒以下
【0042】
4.半導体装置の製造方法
ここで、半導体装置の製造方法について説明する。
【0043】
4−1.半導体層形成工程
まず、有機金属気相成長法(MOCVD法)により、各半導体層の結晶をエピタキシャル成長させる半導体層形成工程を行う。具体的には、基板110に、n型層120と、p型層130と、n型層140とを、この順序で形成する。これにより、基板110に各半導体層の形成された積層体が形成される。
【0044】
4−2.凹凸形状形成工程
次に、エッチングにより、半導体層に凹凸形状を形成する。これにより、
図1に示した台形形状およびトレンチ160がストライプ状に形成される。このエッチングには、例えば、Cl
2 を用いることができる。その他のドライエッチングもしくはウェットエッチングを用いてもよい。
【0045】
4−3.電極形成工程(ソース電極)
続いて、電極形成工程を行う。この工程において、前述した電極の形成方法を用いればよい。n型層140の上にソース電極S1を形成する。
【0046】
4−4.絶縁膜形成工程
次に、絶縁膜150を形成する。その形成箇所は、
図1の上側の面である。ドレイン電極D1を形成する側の面には、絶縁膜を形成しない。ただし、ドレイン電極D1の側にも絶縁膜を形成してもよい。
【0047】
4−5.導電部形成工程
そして、Cl
2 を用いてエッチングを行う。エッチング対象箇所を除いてマスクで覆い、凹部15を形成する箇所にCl
2 ガスが供給されるようにする。これにより、絶縁膜150および第3金属層S13および第4金属層S14の一部が除去されて、第2金属層S12の一部が露出される。その結果、凹部S15が形成される。そして、凹部S15に金属の層を形成し、
図2に示したような導電部S16を形成する。
【0048】
4−6.電極形成工程(ゲート電極、ドレイン電極)
次に、ゲート電極G1およびドレイン電極D1を形成する。
【0049】
4−7.ウェットエッチング工程
そして、最後にBHF溶液(NH
4 F/HF/H
2 0)により、パワーデバイス100の表面を洗浄する。これにより、パワーデバイス100の電極表面上に残留している絶縁膜を取り除く。
【0050】
5.製造されたパワーデバイス
5−1.接触抵抗率等
上記の製造方法により製造されたパワーデバイス100におけるn型層140と、ソース電極S1との間の接触抵抗率は、1×10
-6Ωcm
2 以下であった。また、オーミックアロイ工程での熱処理温度がそれほど高くないため、半導体層の結晶性はよい。
【0051】
5−2.従来例との比較
従来におけるパワーデバイスの電極構造の一例を表3に示す。表3に示すように、Al層の厚みが、本実施形態のパワーデバイス100に比べて薄い。そのため、オーミックアロイ工程により、半導体層と電極との間のオーミック接触を実現するためには、熱処理温度を850℃程度の高い温度とする必要があった。そのため、オーミックアロイ工程により、半導体の結晶性が劣化することがあった。
【0052】
また、本実施形態では、第2金属層S12(Al層)の厚みが十分に厚い。そのため、熱処理を行うことにより、第3金属層S13(Ni層)や第4金属層S14(Au層)の金属が、第2金属層S12(Al層)等を透過して、半導体層に拡散するおそれもほとんどないと考えられる。
【0053】
[表3]
金属層 厚み
Au層 50nm
Ni層 35nm
Al層 60nm
Ti層 17.5nm
半導体層
【0054】
6.実験
ここで、次の実施例および比較例の積層体について行った実験について説明する。積層体とは、基板に半導体層および電極を形成したものである。そして、後述する実施例の積層体と、比較例の積層体とで、次の実験を行った。
【0055】
6−1.実施例
実施例では、半導体層の側から、Ti層、Al層、Ni層、Au層の順で形成した。これらの層の厚みは、次のとおりである。
金属層 厚み
Au層 50nm
Ni層 35nm
Al層 300nm
Ti層 17.5nm
半導体層
【0056】
実施例では、Au層があるため、この電極はエッチング耐性を備える。そのため、導電部を形成するためのエッチングを行うことにより、Al層が除去されるおそれがほとんどない。つまり、オーミック接触が悪化するおそれがほとんどない。また、オーミックアロイ工程での熱処理温度を550℃とした。その熱処理時間は30秒であった。実施例における接触抵抗率は1×10
-6Ωcm
2 以下であった。
【0057】
6−2.比較例1
比較例1では、半導体層の側から、Ti層、Al層の順で形成した。これらの層の厚みは、次のとおりである。
金属層 厚み
Al層 60nm
Ti層 17.5nm
半導体層
【0058】
比較例1では、Au層もしくはPt層がないため、この電極はエッチング耐性を備えていない。そのため、導電部を形成するためのエッチングを行うことにより、Al層が除去されて、オーミック接触がとれなくなる場合がある。また、オーミックアロイ工程での熱処理温度を550℃とした。その熱処理時間は30秒であった。比較例1における接触抵抗率は1×10
-6Ωcm
2 以下であった。
【0059】
6−3.比較例2
比較例2では、半導体層の側から、Ti層、Al層、Ni層、Au層の順で形成した。これらの層の厚みは、次のとおりである。
金属層 厚み
Au層 50nm
Ni層 35nm
Al層 60nm
Ti層 17.5nm
半導体層
【0060】
比較例2では、Ni層およびAu層があるため、この電極はエッチング耐性を備える。また、オーミックアロイ工程での熱処理温度を850℃とした。この熱処理温度は、本実施形態における熱処理温度より300℃程度高い。その熱処理時間は30秒であった。比較例2における接触抵抗率は1×10
-5Ωcm
2 以下であった。つまり、実施例と比較すると、接触抵抗率が1桁程度高い。
【0061】
以上をまとめると表4のようになる。エッチング耐性を備えるとともに、熱処理温度を550℃で30秒だけ実施して、接触抵抗率が1×10
-6Ωcm
2 以下となるのは、実施例の場合のみである。
【0062】
[表4]
接触抵抗率 熱処理温度 エッチング耐性
実施例 ○ ○ ○
比較例1 ○ ○ ×
比較例2 ○ × ○
【0063】
7.変形例
7−1.III 族窒化物系化合物半導体層
本実施形態では、半導体層は、GaNから成るものとした。しかし、AlGaNやInGaN、AlInGaN等、その他のIII 族窒化物系化合物半導体から成る層であってもよい。もちろん、これらのIII 族窒化物系化合物半導体から成る層が一部に含まれていてもよい。
【0064】
7−2.ドレイン電極およびゲート電極
本実施形態の電極の形成方法を、ソース電極S1に適用することとした。しかし、素子の構造により、
図2に示したような導電部を形成する場合には、ドレイン電極やゲート電極にも適用することができる。
【0065】
7−3.p型半導体層
本実施形態では、ソース電極S1をn型半導体層であるn型層140の上に形成することとした。しかし、p型半導体層の上に電極を形成する場合にも、もちろん適用することができる。
【0066】
8.まとめ
以上詳細に説明したように、本実施形態のパワーデバイス100の製造方法では、n型層140に第1金属層S11、第2金属層S12、第3金属層S13、第4金属層S14をこの順序で形成する。ここで、第2金属層S12(Al層)の厚みは、250nm以上である。そのため、オーミックアロイ工程での熱処理温度を550℃程度とすることができる。したがって、半導体の結晶性を悪化させるおそれがほとんどない。
【0067】
なお、本実施形態は単なる例示にすぎない。したがって当然に、その要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変形が可能である。本実施形態では、エピタキシャル成長の方法として、有機金属気相成長法(MOCVD)を用いることとした。しかし、ハイドライド気相エピタキシー法(HVPE)などの気相成長法や、分子線エピタキシー法(MBE)、パルスドスパッタデポジション法(PSD)、そして、液相エピタキシー法などを用いてもよい。
【0068】
(第2の実施形態)
第2の実施形態について説明する。本実施形態の半導体装置は、横型構造のパワーデバイス200である。電極構造および電極の形成方法については、第1の実施形態と同様である。したがって、異なる箇所のみについて説明する。
【0069】
1.横型構造の半導体装置
パワーデバイス200を
図3に示す。パワーデバイス200は、HFETである。パワーデバイス200は、基板210と、バッファ層220と、第1キャリア走行層230と、第2キャリア走行層240と、キャリア供給層250と、絶縁膜260と、ドレイン電極D2と、ソース電極S2と、ゲート電極G2と、を有している。
【0070】
基板210は、Si基板の他に、サファイア基板、SiC基板、ZnO基板、スピネル基板、GaN基板を用いることができる。バッファ層220として、AlNまたはGaNから成る層を形成する。また、バッファ層220は、必ずしも形成しなくともよい。
【0071】
第1キャリア走行層230は、ノンドープのGaNから成る層である。第2キャリア走行層240は、例えば、GaNから成る層である。キャリア供給層250は、例えば、AlGaNから成る層である。キャリア供給層250のキャリア濃度は、1×10
16cm
-3以上1×10
20cm
-3以下の範囲内である。
【0072】
第2キャリア走行層240と、キャリア供給層250とは、ヘテロ結合である。そして、キャリア供給層250のバンドギャップは、第2キャリア走行層240のバンドギャップよりも大きい。これらの条件を満たしていれば、その他のIII 族窒化物系化合物半導体を用いてもよい。
【0073】
例えば、第2キャリア走行層240にInGaNを用い、キャリア供給層250にGaNもしくはAlGaNを用いることができる。また、キャリア供給層250として、Siなどの不純物をドープしたn型層を用いてもよい。また、キャリア供給層250の上に、キャップ層を設けてもよい。また、第2キャリア走行層240の組成を、第1キャリア走行層230の組成と、同一組成としてもよい。もちろん、これらの組成が異なっていてもよい。
【0074】
電極構造は、
図2に示したとおりである。ただし、本実施形態では、キャリア供給層250の上に、ソース電極S2およびドレイン電極D2が形成されている。そして、ゲート電極G2は、凹部261に対面する箇所であって絶縁膜260の上に形成されている。
【0075】
2.半導体装置の製造方法
パワーデバイス200を製造する場合にも、基板210の上に半導体層を形成する(半導体層形成工程)。そして、マスクを用いて、凹部261を形成し、絶縁膜260を形成する。そして、ソース電極S2およびドレイン電極D2を、キャリア供給層250の上に形成する。そして、ゲート電極G2を、絶縁膜260の上に形成する(電極形成工程)。つまり、第1の実施形態と同様に、半導体層形成工程および電極形成工程を有する。
【0076】
3.変形例
第2の実施形態においても、第1の実施形態で説明した全ての変形例を適用することができる。
【0077】
4.まとめ
以上詳細に説明したように、本実施形態のパワーデバイス200の製造方法では、キャリア供給層250に第1金属層S11、第2金属層S12、第3金属層S13、第4金属層S14をこの順序で形成する。ここで、第2金属層S12(Al層)の厚みは、250nm以上である。そのため、オーミックアロイ工程での熱処理温度を550℃程度とすることができる。したがって、半導体の結晶性を悪化させるおそれがほとんどない。
【0078】
なお、本実施形態は単なる例示にすぎない。したがって当然に、その要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変形が可能である。本実施形態では、エピタキシャル成長の方法として、有機金属気相成長法(MOCVD)を用いることとした。しかし、ハイドライド気相エピタキシー法(HVPE)などの気相成長法や、分子線エピタキシー法(MBE)、パルスドスパッタデポジション法(PSD)、そして、液相エピタキシー法などを用いてもよい。
【0079】
(第3の実施形態)
第3の実施形態について説明する。本実施形態の半導体装置は、発光素子300である。電極構造および電極の形成方法については、第1の実施形態と同様である。したがって、異なる箇所のみについて説明する。
【0080】
1.発光素子
発光素子300を
図4により説明する。発光素子300は、フェイスアップ型の半導体発光素子である。発光素子300は、
図4に示すように、発光素子300は、基板310に、低温バッファ層320と、n型コンタクト層330と、n型ESD層340と、n型SL層350と、発光層360と、p型クラッド層370と、p型コンタクト層380とを有している。また、n型コンタクト層330には、n電極N3が形成されている。p型コンタクト層380には、p電極P3が形成されている。
【0081】
基板310として、サファイア、SiC、ZnO、Si、GaNなどを用いることができる。低温バッファ層320の材質は、例えばAlNやGaNである。
【0082】
n型コンタクト層330は、n型GaNから成る層である。n型コンタクト層330のキャリア濃度は、1×10
16cm
-3以上1×10
20cm
-3以下の範囲内である。
【0083】
n型ESD層340は、各半導体層の静電破壊を防止するための静電耐圧層である。n型ESD層40の構造は、ノンドープのGaNとSiドープのn型GaNの積層構造である。
【0084】
n型SL層350は、発光層360に加わる応力を緩和するための歪緩和層である。より具体的には、n型SL層350は、超格子構造を有するn型超格子層である。n型SL層350は、InGaNと、GaNと、n型GaNとを積層した単位積層体を繰り返し積層したものである。
【0085】
発光層360は、電子と正孔とが再結合することで、光を発する発光層である。そのために、発光層360は、バンドギャップの小さい井戸層と、バンドギャップの大きい障壁層とが交互に形成されている多重量子井戸構造となっている。ここで、井戸層としてInGaNを用いるとともに、障壁層としてAlGaNを用いることができる。このように井戸層は、Inを含んでいる。また、障壁層としてAlInGaNを用いてもよい。
【0086】
p型クラッド層370は、p型InGaNから成る層と、p型AlGaNから成る層とを単位構造として、その単位構造を繰り返して形成した層である。もちろん、これ以外のものを用いてもよい。
【0087】
p型コンタクト層380は、Mgをドープしたp型GaNから成る層である。p型コンタクト層380の材質として、その他に、InGaNと、AlGaNと、AlInGaNとのうちのいずれか1つを用いてもよい。
【0088】
そして、p電極P3の材質は、例えば、ITOである。もちろん、これ以外の材質であってもよい。また、p電極P3の上に、パッド電極が形成されていてもよい。
【0089】
n電極N3は、
図2に示したように、n型コンタクト層330の上に、第1金属層S11、第2金属層S12、第3金属層S13、第4金属層S14をこの順序で形成したものである。
【0090】
2.半導体装置の製造方法
発光素子300を製造する場合にも、基板310の上に半導体層を形成する(半導体層形成工程)。そして、p電極P3を形成し、n型コンタクト層330を露出させてn電極N3を形成する(電極形成工程)。つまり、第1の実施形態と同様に、半導体層形成工程および電極形成工程を有する。
【0091】
3.変形例
第3の実施形態においても、第1の実施形態で説明した全ての変形例を適用することができる。
【0092】
4.まとめ
以上詳細に説明したように、本実施形態の発光素子300の製造方法では、n型コンタクト層330に第1金属層S11、第2金属層S12、第3金属層S13、第4金属層S14をこの順序で形成する。ここで、第2金属層S12(Al層)の厚みは、250nm以上である。そのため、オーミックアロイ工程での熱処理温度を550℃程度とすることができる。したがって、半導体の結晶性を悪化させるおそれがほとんどない。
【0093】
なお、本実施形態は単なる例示にすぎない。したがって当然に、その要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変形が可能である。本実施形態では、エピタキシャル成長の方法として、有機金属気相成長法(MOCVD)を用いることとした。しかし、ハイドライド気相エピタキシー法(HVPE)などの気相成長法や、分子線エピタキシー法(MBE)、パルスドスパッタデポジション法(PSD)、そして、液相エピタキシー法などを用いてもよい。
【0094】
以上、第1の実施形態から第3の実施形態までにおいて、パワーデバイス100、200および発光素子300について説明した。しかし、パワーデバイスや発光素子に限らず、その他の半導体装置に適用することができる。