(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
水平方向に伸びるように配置されたガス流路管と、当該ガス流路管の管軸に沿って配置された棒状の紫外線ランプと、当該紫外線ランプに給電する給電装置とを備え、当該ガス流路管内を流通するアンモニアガスに当該紫外線ランプからの光を照射することによって活性化ガスを得るガス活性化装置において、
前記ガス流路管の下方に熱源が配置されていることを特徴とするガス活性化装置。
前記熱拡散板は、前記紫外線ランプの管軸方向に伸び、当該熱拡散板における紫外線ランプの管軸方向の長さが、紫外線ランプの発光長よりも大きいことを特徴とする請求項3に記載のガス活性化装置。
請求項1〜請求項4のいずれかに記載のガス活性化装置を備え、当該ガス活性化装置からの活性化ガスが窒素酸化物を含む被処理ガスに混合されて当該被処理ガス中の窒素酸化物が還元処理される反応器が設けられていることを特徴とする窒素酸化物処理装置。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明のガス活性化装置および窒素酸化物処理装置の実施の形態について説明する。
図1は、本発明の窒素酸化物処理装置の一例における構成の概略を示す説明用模式図であり、
図2は、
図1の窒素酸化物処理装置を構成するガス活性化装置におけるガス活性化ユニットの構成の一例を示す説明図である。
窒素酸化物処置装置は、窒素酸化物を含む被処理ガス中の窒素酸化物を還元処理するたための装置であり、アンモニアガスに紫外線を照射することによって活性化ガスを得るガス活性化装置30を備えている。この窒素酸化物処理装置には、ガス活性化装置30と共に、ガス活性化装置30からの活性化ガスが被処理ガスに混合されて当該被処理ガス中の窒素酸化物が還元処理される反応器20と、ガス活性化装置30にアンモニアガスを供給するためのガス供給手段10とが設けられている。
反応器20は、一端(
図1における下端)に例えば焼却炉、燃焼炉または内部機関などの被処理ガス発生源が接続される被処理ガス導入口(図示せず)が形成され、他端(
図1における上端)に被処理ガス排出口(図示せず)が形成されており、導管22を介してガス活性化装置30に接続されたガス流路管よりなるものである。
また、ガス供給手段10は、アンモニアガス供給源11およびキャリアガス供給源12の各々に導管13,14を介して接続されたガス混合部15を有しており、このガス混合部15において混合されたアンモニアガスとキャリアガスとの混合ガス(以下、「被活性化ガス」ともいう。)を、導管16を介してガス活性化装置30に供給するものである。
このガス供給手段10には、アンモニア供給源11とガス混合部15とを接続する導管13によって形成されるアンモニアガス流路に、アンモニアガス用流量計18が設けられている。また、キャリアガス供給源12とガス混合部15とを接続する導管14によって形成されるキャリアガス流路には、キャリアガス用流量計19が設けられている。
【0014】
ガス活性化装置30は、複数のガス活性化ユニット40と、複数のガス活性化ユニット40の各々にガス供給手段10からの被活性化ガスを分岐管33を介して分配するためのガス分配部32と、複数のガス活性化ユニット40からの活性化ガスを分岐管35を介して集気するための集気部34とを備えている。
複数のガス活性化ユニット40は、各々、水平方向に直線状に伸びるように配置された、円筒状のガス流路管(以下、「アンモニアガス流路管」ともう。)41と、アンモニアガス流路管41の内部に管軸に沿って配置された円柱棒状の紫外線ランプ50とを備えてなるものである。また、複数のガス活性化ユニット40は、アンモニアガス流路管41の管軸が互いに平行になるように等間隔で並列に配置されている。
また、ガス分配部32は、導管16を介してガス供給手段10に接続されており、集気部34は、導管22を介して反応器20に接続されている。
このガス活性化装置30においては、ガス活性化ユニット40とガス分配部32とを接続する分岐管33によって形成される被活性化ガス流路に、各々、被活性化ガス用流量計38が設けられている。
【0015】
ガス活性化ユニット40において、アンモニアガス流路管41は、例えばステンレスなどの高い熱伝導性を有する金属よりなるものであり、両端が閉塞部材42によって閉塞されている。このアンモニアガス流路管41の内部には、両端が閉塞部材45によって閉塞された円筒状のランプ配置管44が配設されており、このランプ配置管44は、アンモニアガス流路管41の内径より小さい外径を有すると共に閉塞部材42,42間の離間距離よりも小さな全長を有している。また、ランプ配置管44は、アンモニアガス流路管41内において、当該ランプ配置管44の管軸がアンモニアガス流路管41の管軸と一致するように支持部材(図示せず)によって支持されている。
また、アンモニアガス流路管41には、一方(
図1および
図2における左方)の閉塞部材42の中央部に、ガス導入口43Aが形成され、他方(
図1および
図2における右方)の閉塞部材42の中央部に、ガス排出口43Bが形成されており、このアンモニアガス流路管41とランプ配置管44との間によってガス流路が形成されている。
【0016】
ランプ配置管44には、紫外線を透過する、例えば円管状の石英ガラス管よりなる紫外線透過窓46が設けられている。また、ランプ配置管44の内部には、紫外線透過窓46を構成する石英ガラス管内に、発光領域が位置するようにして紫外線ランプ50が配設されている。
この紫外線ランプ50は、ランプ配置管44の内径よりも小さい外径を有すると共に閉塞部材45,45間の離間距離よりも小さな全長を有しており、ランプ配置管44の内部において、当該紫外線ランプ50の管軸(ランプ中心軸)がランプ配置管44の管軸と一致するように支持部材(図示せず)によって支持されている。すなわち、紫外線ランプ50は、管軸(ランプ中心軸)がアンモニアガス流路管41の管軸と一致し、アンモニアガス流路管41において形成されるガス流路に囲まれるように配設されている。
【0017】
そして、ガス活性化ユニット40においては、アンモニアガス流路管41の下方(
図2における下方)、すなわち水平方向に伸びるアンモニアガス流路管41の重力方向の下方に、当該アンモニアガス流路管41と離間して、紫外線ランプ50に給電する給電装置60が配置されている。この給電装置60は、紫外線透過窓46およびアンモニアガス流路管41の管壁を介して、紫外線ランプ50の発光領域と対向するように配置されている。
給電装置60としては、紫外線ランプ50に対する給電動作中に発熱する部材(以下、「発熱部材」ともいう。)を有する電源回路を備えてなるものが用いられ、この給電装置60における発熱部材により、熱源が構成されている。このように、給電装置60における発熱部材は、熱源として兼用されている。
この図の例において、給電装置60は、ガス活性化装置30を構成する複数の紫外線ランプ50に共通のものである。また、この給電装置60において、発熱部材は、複数のガス活性化ユニット40の並列する方向(
図1における上下方向であって
図2における紙面に垂直な方向であり、以下「ユニット並列方向」ともいう。)の長さが、複数のガス活性化ユニット40が並列されている領域におけるユニット並列方向の長さよりも大きく、また、紫外線ランプ50の管軸方向の長さ(
図2における左右方向の長さ)が、紫外線ランプ50の発光長よりも小さいものである。そして、ガス活性化装置30を構成するすべてのガス活性化ユニット40の直下に発熱部材が位置されるように配置されている。すなわち、給電装置60を構成する発熱部材は、紫外線ランプ50の管軸方向には短尺であるものの、ユニット並列方向に長尺なものであり、複数のガス活性化ユニット40に共通の熱源とされている。
なお、
図1においては、説明の便宜上、給電装置60をアンモニアガス流路管41の下方に示していない。
【0018】
給電装置60の電気回路において、熱源を構成する発熱部材としては、例えば電源トランス、降圧チョッパ、フルブリッジインバータなどが挙げられる。
【0019】
紫外線ランプ50としては、アンモニアにおけるN−H結合を切断し得るエネルギーを有する紫外線を放射するものであればよいが、アンモニアの光吸収波長が220nm以下であることから、波長が220nm以下の紫外線を放射するものであることが好ましい。
波長が220nm以下の紫外線を放射するランプとしては、例えばキセノンエキシマランプ(波長172nm,波長146nm)、低圧水銀ランプ(波長185nm)およびエキシマ蛍光ランプなどが挙げられる。
ここに、エキシマ蛍光ランプの具体例としては、発光ガスとしてキセノンガスが封入された発光管の内面に、一般式(La
1-x ,Pr
x )PO
4 (但し、xは0.02〜0.04である)で表される蛍光体を含有する蛍光体層が形成されたもの(波長200〜260nm)が挙げられる。
【0020】
紫外線ランプ50の好ましい具体例としてはキセノンエキシマランプが挙げられる。
キセノンエキシマランプとしては、例えば
図3に示すような構成のものがある。
図3のキセノンエキシマランプは、例えば石英ガラスなどの紫外線を透過する材料によって構成され、両端が封止された円筒状の発光管51を備えている。この発光管51の内部には、他端(
図3における右端)が封止され、一端(
図3における左端)が発光管51の金属箔56が埋設されている封止部(以下、「金属箔埋設封止部」ともいう。)52に溶着された内側管54が、発光管51の管軸に沿って設けられている。また、この内側管54と発光管51の間に形成された空間にキセノンガスが封入されている。そして、内側管54の内部には、コイル状の内部電極55が、内側管54の内周面に沿って管軸方向に伸びるように配設されており、その内部電極55は金属箔56に電気的に接続されている。この金属箔56には、金属箔埋設封止部52の外端面から外方に突出する外部リード57が電気的に接続されている。また、発光管51の外周面には、網状の外部電極58が設けられている。そして、内部電極55と外部電極58とが、内側管54の管壁、内側管54の外周面と発光管51の内周面との間の空間および発光管51の管壁を介して対向する領域において、発光領域が形成されている。
このエキシマランプは、内部電極55が金属箔56および外部リード57を介して高周波電源(図示せず)に接続され、外部電極58が接地されており、給電によって生じるエキシマ放電によって波長172nmの紫外線を得るものである。
【0021】
また、ガス活性化ユニット40においては、
図2に示されているように、アンモニアガス流路管41と給電装置60における発熱部材(熱源)との間に、熱拡散板65が設けられていることが好ましい。
この図の例において、熱拡散板65は、上方(
図2における上方)に開口を有する箱状の支持部材66により、当該支持部材66の開口縁部に、熱拡散板65の周縁部が係合されることによって支持されており、アンモニアガス流路管41と離間して固定されている。また、支持部材66と熱拡散板65とによって区画された空間には、給電装置60が配置されており、この給電装置60と熱拡散板65とは離間した状態とされている。
【0022】
また、熱拡散板65は、紫外線ランプ50の管軸方向に伸び、当該熱拡散板60における紫外線ランプ50の管軸方向の長さ(以下、「ランプ管軸方向長さ」ともいう。)が、紫外線ランプ50の発光長よりも大きいことが好ましい。
この図の例においては、熱拡散板65は、複数のガス活性化ユニット40に共通の矩形状平板よりなり、ランプ管軸方向長さが、アンモニアガス流路管41の管軸方向の長さよりも大きいものである。また、この熱拡散板65におけるユニット並列方向の長さは、複数のガス活性化ユニット40が並列されている領域におけるユニット並列方向の長さよりも大きいものである。
【0023】
熱拡散板65の材質の具体例としては、例えばステンレスなどの高い熱伝導性を有する金属が挙げられる。
【0024】
ガス供給手段10を構成するアンモニアガス供給源11においては、当該アンモニア供給源11からアンモニアガスを供給することができれば、アンモニアの貯蔵状態は、気体状態(アンモニアガス)であってもよく、液体状態(液体アンモニア)であってもよい。
また、キャリアガス供給源12から供給されるキャリアガスとしては、紫外線ランプ50から放射される光の吸収が小さくて不活性であるものであれば、種々のガスを用いることができる。具体的には、例えばアルゴンガス、ネオンガス、キセノンガスおよびクリプトンガス等の希ガス、窒素ガスなどの不活性ガスなどを用いることができるが、安価に入手することができる点で、窒素ガスを用いることが好ましい。
【0025】
このような構成の窒素酸化物処理装置においては、焼却炉、燃焼炉または内燃機関などの被処理ガス発生源から排出された被処理ガス(
図1において矢印G1で示す。)が、被処理ガス導入口を介して反応器20内に供給される。
一方、アンモニア供給源11から導管13を介してアンモニアガスが供給されると共に、キャリアガス供給源12から導管14を介してキャリアガスが供給されることにより、ガス混合部15においてアンモニアガスとキャリアガスとが混合される。更に、ガス混合部15から導管16を介してアンモニアガスとキャリアガスとの混合ガスよりなる被活性化ガスがガス活性化装置30に供給される。
そして、ガス活性化装置30においては、ガス分配部32および分岐管33を介して複数のガス活性化ユニット40の各々に被活性化ガスが供給され、これらの複数のガス活性化ユニット40の各々において、紫外線放射ランプ50からの光(紫外線)が、紫外線透過窓46を介してアンモニアガス流路管41内に供給された被活性化ガスに照射されることにより、被活性化ガスを構成するアンモニアガスから、例えばNH
2 ラジカル、NHラジカル、Nラジカルなどのラジカルや、N
+ イオン、NH
+ イオン、NH
2 + イオン、NH
3 + イオンなどのイオンを含む活性化ガスが生成される。このようにして、複数のガス活性化ユニット40の各々において得られた活性化ガスが、分岐管35を介して集気部34に導入される。
そして、反応器20に、集気部34から導管22を介して活性化ガスが供給され、当該反応器20内において、被処理ガスに活性化ガスが混合されることにより、被処理ガス中の窒素酸化物が活性化ガスによって還元処理される。その後、処理済ガス(
図1において矢印G2で示す)が被処理ガス排出口から反応器20の外部に排出される。
【0026】
而して、この窒素酸化物処理装置のガス活性化装置30においては、アンモニアガス流路管41の下方に、給電装置60における発熱部材(熱源)が配置されていることから、アンモニアガス流路管41におけるランプ光照射領域を流通する被活性化ガスは、紫外線ランプ50が点灯することによって生じる熱によって加熱されるだけでなく、給電装置60の給電動作によって発熱部材において生じる熱によっても加熱される。
そして、ランプ光照射領域において、被活性化ガスが、紫外線ランプ50からの熱と、給電装置60における発熱部材からの熱によって加熱されることによれば、紫外線ランプ50からの熱が主として重力方向上方側(
図2における上方側)に対流熱伝達される。一方、発熱部材からの熱は、熱拡散板65に対流熱伝達され、この熱拡散板65から、熱拡散板65とアンモニアガス流路管41との間に存在する大気およびアンモニアガス流路管41の管壁を介して、当該ランプ光照射領域の重力方向下方側(
図2における下方側)に伝達される。従って、後述の実験例からも明らかなように、ランプ光照射領域においては、重力方向の上方側と下方側とに大きな温度差が生じることがなく、よって管断面内における径方向の温度分布に高い均一性が得られることから、アンモニアガスを高い効率で活性化することができる。
仮に、ランプ光照射領域において、被活性化ガスが、紫外線ランプ50からの熱のみによって加熱される場合においては、後述の実験例から明らかなように、紫外線ランプ50からの熱が主として重力方向上方側に対流熱伝達されることから、重力方向上方側の温度が重力方向下方側の温度に比して高くなって大きな温度差が生じてしまい、それに起因してアンモニアガスを高い効率で活性化することができない。
【0027】
このように、窒素酸化物処理装置においては、ガス活性化装置30がアンモニアガスを高い効率で活性化することのできるものであるため、このガス活性化装置30から得られる活性化ガスを還元剤として用い、反応器20内において被処理ガス中の窒素酸化物を還元処理することにより、被処理ガス中の窒素酸化物を高い効率で処理することができる。
【0028】
また、ガス活性化装置30においては、アンモニアガス流路管41と給電装置60における発熱部材(熱源)との間に熱拡散板65が設けられており、しかもその熱拡散板65のランプ管軸方向長さが、紫外線ランプ50の発光長よりも大きいことから、当該発熱部材のランプ管軸方向の長さが紫外線ランプ50の発光長よりも小さくても、この発熱部材からの熱を、アンモニアガス流路管41におけるランプ光照射領域の管軸方向全域に、均一に伝達することができる。従って、アンモニアガス流路管41におけるランプ光照射領域の管軸方向全域において、重力方向の上方側と下方側とにおいて大きな温度差が生じることが抑制されることから、一層高い効率でアンモニアガスを活性化することができる。
【0029】
以上、本発明について、具体的には本発明のガス活性化装置および窒素酸化物処理装置について具体的に説明したが、本発明は以上の例に限定されるものではなく、種々の変更を加えることができる。
例えば、ガス活性化装置は、簡素化および小型化を図る観点からは、熱源が給電装置における発熱部材からなることが好ましいが、熱源が給電装置とは別途に設けられている構成(
図5および
図6参照)のものであってもよい。
また、ガス活性化装置は、熱拡散板が設けられていない構成(
図6参照)を有するのものであってもよい。
【0030】
また、ガス活性化装置においては、紫外線ランプは、ガス流路管の管軸に沿って配置、すなわち当該紫外線ランプの管軸(ランプ中心軸)がガス流路管の管軸と一致または略一致し、当該ガス流路管によって形成されるガス流路に囲まれるように配置されていればよく、例えば、ガス活性化装置がアンモニアガス流路管の内部にランプ配置管が設けられておらず、紫外線ランプが被活性化ガスと接触する構成(
図4〜
図6参照)のものであってもよい。また、ガス流路管が、外側管と内側管とが同軸上に配置され、両端部において接合されてなる構成の二重管状のものであり、当該二重管状のガス流路管における例えば石英ガラスなどよりなる内側管内に、ガス流路管の管軸(外側管および内側管の管軸)に沿って紫外線ランプが配置された構成のものであってもよい。
更に、ガス活性化装置は、ガス活性化ユニットを1つのみ有する構成のものであってもよい。
【0031】
本発明のガス活性化装置の他の実施の形態の具体例としては、
図4〜
図6に示すようなガス活性化装置が挙げられる。
これらの
図4〜
図6に係るガス活性化装置においても、
図1および
図2に係るガス活性化装置30と同様に、アンモニアガスを高い効率で活性化することができる。
【0032】
図4のガス活性化装置70は、アンモニアガス流路管41内においてランプ配置管が設けられておらず、紫外線ランプ50が被活性化ガスと接触する構成であること以外は、
図1および
図2に係るガス活性化装置30と同様の構成を有するものである。
このガス活性化装置70のアンモニアガス流路管41の内部において、紫外線ランプ50は、当該紫外線ランプ50の管軸(ランプ中心軸)がアンモニアガス流路管41の管軸と一致するように支持部材(図示せず)によって支持されており、アンモニアガス流路管41と紫外線ランプ50との間にガス流路が形成されている。
【0033】
図5のガス活性化装置75は、熱源が給電装置60とは別途に設けられていると共に、アンモニアガス流通管41内にランプ配置管が設けられていないこと以外は、
図1および
図2に係るガス活性化装置30と同様の構成を有するものである。すなわち、
図5のガス活性化装置75は、
図4に係るガス活性化装置70において、支持部材66と熱拡散板65とによって区画された空間に、給電装置60に代えて熱源専用部材76が設けられており、また、給電装置60がアンモニアガス流路管41の下方以外の位置に配置されていること以外は、
図4に係るガス活性化装置70と同様の構成を有するものである。
このガス活性化装置75において、熱源専用部材76としては、例えばヒーター、あるいは焼却炉からの排熱を利用したヒートパイプなどが用いられる。
【0034】
このガス活性化装置75においては、熱源専用部材76は、当該熱源専用部材76におけるランプ管軸方向長さが紫外線ランプ50の発光長よりも小さいものである。しかしながら、熱源専用部材76とアンモニアガス流路管41との間に、熱拡散板65が設けられており、しかも熱拡散板65のランプ管軸方向長さが紫外線ランプ50の発光長よりも大きいことから、熱源専用部材76からの熱を、アンモニアガス流路管41におけるランプ光照射領域の管軸方向全域に、均一に伝達することができる。従って、アンモニアガス流路管41におけるランプ光照射領域の管軸方向全域において、重力方向の上方側と下方側とにおいて大きな温度差が生じることが抑制される。
【0035】
図6のガス活性化装置80は、熱源が給電装置60とは別途に設けられていること、アンモニアガス流路管41内にランプ配置管が設けられていないこと、および熱拡散板が設けられていないこと以外は、
図1および
図2に係るガス活性化装置30と同様の構成を有するものである。すなわち、ガス活性化装置80は、熱拡散板および当該熱拡散板を支持するための支持部材が設けられておらず、また熱源専用部材81が、当該熱源専用部材81におけるランプ管軸方向長さが紫外線ランプ50のランプ長さよりも大きいものであること以外は、
図5のガス活性化装置75と同様の構成を有するものである。
【0036】
このガス活性化装置80においては、熱源専用部材81におけるランプ管軸方向長さが紫外線ランプ50の発光長よりも大きいことから、熱拡散板が設けられていなくとも、熱源専用部材81からの熱を、アンモニアガス流路管41におけるランプ光照射領域の管軸方向全域に、均一に伝達することができる。従って、アンモニアガス流路管41におけるランプ光照射領域の管軸方向全域において、重力方向の上方側と下方側とにおいて大きな温度差が生じることが抑制される。
【0037】
以下、本発明の実験例について説明する。
【0038】
〔実験例1〕
(本発明に係る窒素酸化物処理装置による窒素酸化物の還元処理)
図7に示すような構成のガス活性化装置(以下、「ガス活性化装置(1)」ともいう。)を備え、ガス活性化装置(1)にアンモニアガスとキャリアガスとの混合ガスよりなる被処理ガスを供給するためのガス供給手段と、ガス活性化装置(1)からの活性化ガスを被処理ガスに混合することによって当該被処理ガス中の窒素酸化物を還元処理するための反応器とが設けられなる窒素酸化物処理装置(以下、「処理装置(1)ともいう。」を作製した。
【0039】
処理装置(1)を構成するガス活性化装置(1)は、一端(
図7における左端)にガス導入口43Aを有し、他端(
図7における右端)にガス排出口43Bを有する円筒状のアンモニアガス流路管41と、このアンモニアガス流路管41の内部に、当該アンモニアガス流路管41の管軸に沿って設けられた円柱棒状の紫外線ランプ50と、紫外線ランプ50に給電するための給電装置60とを備えてなるものである。なお、給電装置60は、アンモニアガス流路管41の下方以外の場所に配置されている。
また、アンモニアガス流路管41の下方(
図7における下方)には、ステンレス製の矩形状平板よりなる熱拡散板91が、箱状の支持部材92に支持されてアンモニアガス流路管41と離間して設けられている。また、支持部材92と熱拡散板91とによって区画された空間には、ヒーターよりなる長尺な熱源専用部材93が、熱拡散板91およびアンモニアガス流路管41の管壁を介して紫外線ランプ50と対向するようにして当該熱拡散板91と離間して配設されている。
このガス活性化装置(1)においては、紫外線ランプ50は、アンモニアガス流路管41の内部において、当該紫外線ランプ50の管軸(ランプ中心軸)がアンモニアガス流路管41の管軸と一致するように支持部材(図示せず)によって支持されて配設されている。
また、ガス活性化装置(1)には、
図8に示すように、アンモニアガス流路管41におけるランプ光照射領域(紫外線ランプ50)を包囲する部分の外周面上の管軸方向中心部に係る上部A(以下、「温度測定点A」ともいう。)、側部B(以下、「温度測定点B」ともいう。)、下部C(以下、「温度測定点C」ともいう。)、側部D(以下、「温度測定点D」ともいう。)と、アンモニアガス流路管41内における紫外線ランプ50に近接する領域の管軸方向中心部に係る紫外線ランプ50の上方部E(以下、「温度測定点E」ともいう。)とに、各々、熱電対が配置されている。
なお、温度測定点A、温度測定点B、温度測定点Cおよび温度測定点Dは、アンモニアガス流路管41の外周面上において等間隔で配置されている。
【0040】
ここに、ガス活性化装置(1)において、アンモニアガス流路管41は、全長が1100mmであって、内径が55mmのステンレス製のものである。
紫外線ランプ50は、キセノンエキシマランプであり、石英ガラス製の発光管を備え、ランプの長さが1000mmであって発光長が800mmであり、ランプ直径が20mmのものである。
熱源を構成する熱源専用部材93は、紫外線ランプ50の管軸方向の長さ(
図7における左右方向の長さ)が900mmであって、紫外線ランプ50の管軸に垂直な方向の長さ(
図7における紙面に垂直な方向の長さ)が800mmであるのものである。
また、熱拡散板91は、紫外線ランプ50の管軸方向の長さ(
図7における左右方向の長さ)が1200mmであって、紫外線ランプ50の管軸に垂直な方向の長さ(
図7における紙面に垂直な方向の長さ)が850mmであって、厚みが3mmのステンレス製のものである。
また、ガス活性化装置(1)においては、紫外線ランプ50が、出力100%の条件で点灯されることにより、アンモニアガス流路管41の内周面における照度が50mW/cm
2 とされる。
【0041】
処理装置(1)において、ガス供給手段は、アンモニアガス供給源およびキャリアガス供給源の各々が導管を介して接続されたガス混合部を有しており、このガス混合部に接続された導管94を介してガス活性化装置(1)に接続されている。
また、反応器は、導管95を介してガス活性化装置(1)に接続された、一端に被処理ガス導入口を有すると共に、他端に被処理ガス排出口を有する被処理ガス流路管よりなるものである。この反応器における被処理ガス排出口には、排出される処理済みガスにおける窒素酸化物濃度を測定するための濃度測定装置が設けられている。
【0042】
作製した処理装置(1)において、キャリアガスとして窒素ガスを用い、この窒素ガスとアンモニアガスとを、アンモニアガス濃度が3体積%であって窒素ガス濃度が97体積%となるように混合した混合ガスをガス活性化装置(1)に供給する被活性化ガスとした。
また、窒素酸化物濃度が500ppmのガスを被処理ガスとした。
そして、処理装置(1)を動作させ、反応器から排出される処理済みガスにおける窒素酸化物濃度を測定すると共に、温度測定点A、温度測定点B、温度測定点C、温度測定点Dおよび温度測定点Eにおける温度を測定した。
ここに、処置装置(1)の動作中、ガス活性化装置(1)においては、紫外線ランプ50を出力100%の条件で点灯し、被活性化ガスを、アンモニアガス流路管41内における流量が15L/minとなるように流速7.3m/minで供給すると共に、温度測定点Aの温度と温度測定点Cの温度との差(以下、「上下温度差」ともいう。)が、20℃、15℃および5℃となるように、熱源専用部材93の設定温度を調整した。また、反応器には、被処理ガスを流量85,000L/minで供給した。
【0043】
また、得られた反応器からの処理済みガス中の窒素酸化物濃度の測定値から、下記の数式(1)に基づいて脱硝率を算出した。
算出された脱硝率の値を、各温度測定点において測定された温度測定値と共に表1に示す。
【0045】
(比較用窒素酸化物処理装置によるによる窒素酸化物の還元処理)
処理装置(1)において、ガス活性化装置(1)に代えて、
図9に示すような熱源専用部材および当該熱源専用部材を支持するための支持部材が設けられていない構成を有するガス活性化装置(以下、「比較用ガス活性化装置(1)」ともいう。)を備えてなること以外は当該処理装置(1)と同様の構成を有する窒素酸化物処理装置(以下、「比較用処理装置(1)」ともいう。)を作製した。
比較用処理装置(1)において、比較用ガス活性化装置(1)は、熱源専用部材および当該熱源専用部材を支持するための支持部材が設けられていないこと以外は、ガス活性化装置(1)と同様の構成を有するものである。
【0046】
作製した比較用処理装置(1)を窒素酸化物処理装置(1)と同様の条件、具体的には、比較用ガス活性化装置(1)において紫外線ランプ50を出力100%の条件で点灯すると共にアンモニアガス濃度が3体積%であって窒素ガス濃度が97体積%である被活性化ガスを流速7.3m/minで供給し、また、反応器に窒素酸化物濃度が500ppmである被処理ガスを流量85,000L/minで供給する処理条件(以下、「実験用処理条件」ともいう。)によって動作させ、反応器から排出される処理済みガスにおける窒素酸化物濃度を測定すると共に、温度測定点A、温度測定点B、温度測定点C、温度測定点Dおよび温度測定点Eにおける温度を測定した。また、得られた反応器からの処理済みガス中の窒素酸化物濃度の測定値から脱硝率を算出した。
算出された脱硝率の値を、各温度測定点において測定された温度測定値と共に表1に示す。
【0048】
表1において、「Δ(A−C)」は、温度測定点Aの温度と温度測定点Cの温度との差(上下温度差)を示す。
また、「条件(1)」とは、上下温度差が20℃となるように熱源専用部材93の設定温度を調整した場合を示し、「条件(2)」とは、上下温度差が15℃となるように熱源専用部材93の設定温度を調整した場合を示し、「条件(3)」とは、上下温度差が5℃となるように熱源専用部材93の設定温度を調整した場合を示す。
【0049】
また、表1の結果に基づいて、上下温度差と、脱硝率との関係を確認した。結果を
図10に示す。
【0050】
(実験例2)
実験例1において作製した比較用処理装置(1)を、温度測定点Eの温度が220℃となるように紫外線ランプ50の点灯条件を調整したこと以外は実験例1に係る実験用処理条件と同様の条件で動作させ、反応器から排出される処理済みガスにおける窒素酸化物濃度を測定すると共に、温度測定点A、温度測定点B、温度測定点C、温度測定点Dおよび温度測定点Eにおける温度を測定し、また、得られた反応器からの処理済みガス中の窒素酸化物濃度の測定値から脱硝率を算出した。
脱硝率は85%であり、温度測定点Aの温度は137℃であって上下温度差は37℃であった。
ここに、比較用処理装置(1)において、温度測定点Eの温度が220℃となる紫外線ランプ50の点灯条件によれば、実験用処理条件に係る紫外線ランプ50の点灯条件に比してランプ出力が10%高くなった。
【0051】
以上の実験例1および実験例2の結果から、本発明に係るガス活性化装置(1)においては、アンモニアガス流路管41の下方に熱源専用部材93(熱源)が配置されていることから、アンモニアガス流路管41において、上下温度差が小さくなってランプ光照射領域の管断面における径方向の温度分布の均一化が図られ、また、アンモニアガス流路管41内の温度が高くなることが明らかとなった。そして、ガス活性化装置(1)に係る上下温度差が小さくなるに従って、脱硝率が大きくなることが明らかとなった。
一方、比較用処理装置(1)においては、比較用ガス活性化装置(1)の紫外線ランプ50の出力を大きくすることによってアンモニアガス流路管41内の温度を高くすることができるものの、上下温度差を小さくすることはできず、むしろ上下温度差が大きくなり、アンモニアガス流路管41のランプ光照射領域の管断面内における径方向の温度分布の均一化を図ることができないことが明らかとなった。
また、比較用ガス活性化装置(1)の紫外線ランプ50の出力を大きくすることによって脱硝率を大きくすることができるものの、その脱硝率は、紫外線ランプからの光量(紫外線放射量)が大きくなっているにも拘わらず、本発明に係る処理装置(1)に比して小さいことから明らかとなった。この結果から、アンモニアガス流路管内の温度が高くなることによる脱硝率の向上効果は、温度分布の均一化を図ることによる脱硝率の向上効果よりも極めて小さいものであることが理解される。
従って、紫外線ランプがアンモニアガス流路管の管軸に沿って配置されてなる構成のガス活性化装置においては、アンモニアガス流路管の下方に熱源を配置し、アンモニアガス流路管におけるランプ光照射領域の管断面における径方向の温度分布の均一化を図ることにより、アンモニアガスの活性化効率を効果的に向上させることができ、その結果、このような構成のガス活性化装置を備えた窒素酸化物処理装置において、高い脱硝率が得られることが確認された。
【0052】
ここに、アンモニアガス流路管の下方に熱源を配置し、アンモニアガス流路管におけるランプ光照射領域の管断面における径方向の温度分布の均一化を図ることによってアンモニアガスの活性化効率を向上することができる理由は、以下のように推測される。
アンモニアガスに紫外線を照射することによれば、アンモニアが紫外線を吸収することによってアンモニアラジカルが生成されて活性化が図られる。そして、アンモニアによる紫外線(光)の吸収は、ランベルト・ベールの法則によれば、アンモニア密度が高くなるに従って吸収される紫外線の量が指数関数的に増加する、すなわちアンモニア密度が低くなるに従って吸収される紫外線の量が指数関数的に減少する。
そして、このランベルト・ベールの法則を前提に考えれば、アンモニアガス流路管の下方に熱源を配置することにより、アンモニアガス流路管41のランプ光照射領域のアンモニア密度が高くなると共に均一化が図られるため、アンモニアに吸収される紫外線の量が大きくなる。
従って、アンモニアに吸収される紫外線の量が大きくなるため、アンモニアガスから生成されるアンモニアラジカルが増加すると推測される。