(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5904080
(24)【登録日】2016年3月25日
(45)【発行日】2016年4月13日
(54)【発明の名称】車線情報データの表示システム
(51)【国際特許分類】
G08G 1/01 20060101AFI20160331BHJP
G09B 29/00 20060101ALI20160331BHJP
G09B 29/10 20060101ALI20160331BHJP
【FI】
G08G1/01 A
G09B29/00 A
G09B29/10 A
【請求項の数】1
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2012-222858(P2012-222858)
(22)【出願日】2012年10月5日
(65)【公開番号】特開2014-75070(P2014-75070A)
(43)【公開日】2014年4月24日
【審査請求日】2015年4月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000121844
【氏名又は名称】応用地質株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096862
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 千春
(72)【発明者】
【氏名】吉兼 理説
【審査官】
高田 基史
(56)【参考文献】
【文献】
特開2010−102575(JP,A)
【文献】
特開2012−063469(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C 21/00−21/36
23/00−25/00
G08G 1/00−99/00
G09B 23/00−29/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
デジタル道路地図データと、時刻と位置の情報を有するプローブデータを解析することによって得られた車線情報データと、これらデジタル道路地図データおよび車線情報データを互いの位置情報に基づいて重ね合わせ、かつ上記車線情報データを対応する上記デジタル道路地図データの道路に沿って表示するとともに、上記デジタル道路地図データの表示が複数段階の縮尺に切り換え可能な表示手段とを備えた車線情報データの表示システムにおいて、
上記車線情報データは、上記道路の交差点付近を含む特定箇所において1本の道路に対して車線の数に対応した複数本の車線情報データを有するとともに、
上記表示手段は、上記縮尺を大きな縮尺に切り換えるのに伴って、上記複数本の車線情報データの間隔を当該切り換え前よりも漸次狭く表示するとともに、上記縮尺を小さな縮尺に切り換えるのに伴って、上記複数本の車線情報データの間隔を当該切り換え前よりも漸次広く表示する機能を備えていることを特徴とする車線情報データの表示システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プローブデータを解析することによって得られた自動車類の平均速度等の車線情報データを、デジタル道路地図データ上に表示させるための車線情報データの表示システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
GPSが搭載されたカーナビゲーションシステムを備えた自動車等の車両においては、当該車両の走行に伴って、時刻情報と位置(緯度・経度)情報からなる走向履歴情報(プローブデータ)を得ることができる。
【0003】
このようなプローブデータ自体は、単に時刻と位置の組み合わせデータであるものの、上記プローブデータとデジタル道路地図データにおける道路や交差点の位置情報とを組み合わせることにより、当該車両の通行経路を知ることができる。また、走行距離と時間から、ある地点における速度を算出することができ、さらに当該速度の変化(加速度)から、急ブレーキをかけたと推定される地点を特定することもできる。
【0004】
また、1台の車両のプローブデータからは、単に当該車両の走行経路や、特定区間の速度あるいは加速度等が判るのみであるものの、多くの車両のプローブデータを集めて解析すれば、道路ネットワーク上の渋滞状況等も把握することが可能になる。そこで、近年、自動車メーカー等では上記プローブデータを収集し、道路の渋滞の有無等の道路交通情報をフィードバックするサービスが実用化されている。
【0005】
さらに、自動車メーカー等に蓄積されたプローブデータを集めて解析すれば、道路の慢性的な渋滞状況や、多くの車両が急ブレーキをかける危険箇所等を、空間的、時間的(一日での変化、曜日による変化、季節やイベントによる変化)な推移データとして得ることが可能になる。
【0006】
このため、近年、多くの車から収集して解析したプローブデータに基づいて、危険地点を特定してその原因を推定し、事故防止に役立てたり、渋滞箇所を特定して、交通を円滑化するための道路計画の策定や、道路事業の効果分析に役立てたりするなど、様々な活用方法が考えられている。
なお、下記特許文献1、2においても、このようなプローブデータを活用するための装置やプログラムが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−85511号公報
【特許文献2】特開2009−9443号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、蓄積された多数のプローブデータを解析して、
図6に示すように、例えば平均速度の車線情報データとしてデジタル道路地図データと重ね合わせ、かつ平均速度の大きさを色分け(図では、濃淡)して表示させて、道路や交差点の渋滞多発箇所を検討する際に、交差点以外の道路においては、上下車線1a、1bに沿って各々直進の車線情報データ2a、2bを表示させれば十分であるが、右折および左折が可能な交差点においては、車線1aに対して、直進車線、右折車線および左折車線に分けて、各々直進の車線情報データ2a、右折の車線情報データ3aおよび左折の車線情報データ4aを表示させる必要が生じる。
【0009】
この結果、四方向からの道路が交わる交差点においては、最大合計12本の車線情報データを表示させることになる。このため、従来の車線情報データの表示システムにおいては、通常、
図6に示すように、これら3本の車線情報データ2a、3a、4aの道路中心からのオフセット量を、予め異なる値に設定しておくことにより、3本の車線情報データ2a、3a、4aが道路に沿って所定の間隔をおいて互いに並列するように表示させている。
【0010】
一方、平均速度の大きさに色分けした車線情報データとデジタル道路地図データとを重ね合わせて、道路や交差点の渋滞多発箇所を検討するに際して、一般に作業者は、まずデジタル道路地図データの表示の縮尺を小さく(例えば1/20,000)して、広い範囲における傾向を目視することにより、検討すべき場所を確認した後に、上記縮尺を切り換えて大きく(例えば、1/5,000)して検討すべき場所を拡大することにより、当該場所の詳細な情報を把握する方法を採っている。
【0011】
ところが、上記従来の車線情報データの表示システムにあっては、デジタル道路地図データと車線情報データとを重ね合わせる際に、車線情報データ2a、3a、4aの道路中心からのオフセット量を一定値に固定しているために、
図7(a)に示すように、3本の車線情報データが並列的に表示されている場合に、
図7(b)に示すように、縮尺を小さくすると、3本の車線情報データが重なって1本の車線情報データのように表示されてしまう。
【0012】
また、逆に
図7(a)に示す縮尺から、さらに縮尺を大きくして交差点部分を拡大表示させようとすると、3本の車線情報データのうちの外側に位置する車線情報データが、表示画面の外側に外れて目視することが出来なくなってしまう。
このように、従来の車線情報データの表示システムにあっては、縮尺を所定値よりも大きく、または小さくした場合に、複数本の車線毎の車線情報データの全てを、個別に確認することが出来なくなってしまうという問題点があった。
【0013】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、デジタル道路地図データの表示の縮尺を切り換えても、常に複数本の車線情報データを並列的に表示させることができ、よって当該車線情報データに基づく検討が容易になる車線情報データの表示システムを提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、デジタル道路地図データと、時刻と位置の情報を有するプローブデータを解析することによって得られた車線情報データと、これらデジタル道路地図データおよび車線情報データを互いの位置情報に基づいて重ね合わせ、かつ上記車線情報データを対応する上記デジタル道路地図データの道路に沿って表示するとともに、上記デジタル道路地図データの表示が複数段階の縮尺に切り換え可能な表示手段とを備えた車線情報データの表示システムにおいて、上記車線情報データは、上記道路の交差点付近を含む特定箇所において1本の道路に対して車線の数に対応した複数本の車線情報データを有するとともに、上記表示手段は、上記縮尺を大き
な縮尺に切り換えるのに伴って、上記複数本の車線情報データの間隔を
当該切り換え前よりも漸次狭く表示するとともに、上記縮尺を小さ
な縮尺に切り換えるのに伴って、上記複数本の車線情報データの間隔を
当該切り換え前よりも漸次広く表示する機能を備えていることを特徴とするものである。
【0015】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、上記車線情報データは、上記特定箇所において、当該複数本の車線情報データの間隔を複数段階に変化させた複数の表示データを有しているとともに、上記表示手段は、予め上記複数段階に対応させた複数段階の上記縮尺の範囲が設定され、上記縮尺の切り換え時に、選択された縮尺に対応する上記表示データを抽出して、選択された上記縮尺の上記デジタル道路地図データに重ね合わせて表示することを特徴とするものである。
【0016】
さらに、請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の発明において、上記車線情報データは、少なくとも自動車類の平均旅行速度を有することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0017】
請求項1〜3のいずれかに記載の発明によれば、デジタル道路地図データとプローブデータを解析することによって得られた車線情報データとを重ね合わせて表示させる際に、上記デジタル道路地図データの表示の縮尺を大きくして表示箇所を拡大した場合には、上記複数本の車線情報データの間隔が漸次狭く表示されるために、当該車線情報データの一部が表示画面から外れることがない。
【0018】
また、逆に上記デジタル道路地図データの表示の縮尺を小さくして、広い範囲を表示させる場合には、縮尺を小さくするのに伴って、上記複数本の車線情報データの間隔が漸次広く表示されるために、これら複数本の車線情報データが重なり合って1本のように表示されることを防ぐことができる。
【0019】
この結果、デジタル道路地図データの表示の縮尺を切り換えても、常に複数本の車線情報データを並列的に表示させることができ、よってこれら複数本の車線情報データに基づく検討が容易になる。
【0020】
ところで、請求項1に記載の発明において、縮尺を大きくするのに伴って複数本の車線情報データの間隔を漸次狭く表示するとともに、縮尺を小さくするのに伴って複数本の車線情報データの間隔を漸次広く表示する機能としては、例えば、選択された縮尺から、当該縮尺において複数本の車線情報データを並列的に表示させるのに好適な各々の車線情報データの道路中心からのオフセット量を計算して表示させる機能を採用することもできる。
【0021】
但し、このように複数本の車線情報データのオフセット量を、縮尺の切り換えに対してリアルタイムで計算する方法にあっては、例えば上記表示手段の一部を構成するコンピュータのCPUにおける演算の負担が大きくなり、表示までにタイムラグが発生するおそれがある。
【0022】
この点、請求項2に記載の発明によれば、予め交差点のような複数本の車線情報データを並列的に表示する特定箇所について、当該複数本の車線情報データの間隔を複数段階に変化させた複数の表示データを準備しておくとともに、各々の表示データに対応させた複数段階の縮尺の範囲を設定しておき、デジタル道路地図データの縮尺を切り換えた時に、当該縮尺に対応する上記表示データを抽出して表示させているために、上記縮尺の切り換えに対して瞬時に最適な間隔に設定された複数本の車線情報データを表示させることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明に係る車線情報データの表示システムの一実施形態における表示手段の機能を示すフローチャートである。
【
図2】上記表示手段に設定された車線情報データのオフセット値と縮尺範囲との対照表である。
【
図3】
図2の対照表に基づいて縮尺に対応したオフセット値の表示データを選択する状態を示す模式図である。
【
図4】
図3の縮尺から小さい縮尺に切り換えた際における表示データの選択状態を示す模式図である。
【
図5】縮尺を切り換えても常に複数本の車線情報データが並列的に表示されることを示す図である。
【
図6】従来の一般的な車線情報データの表示形態を示す図である。
【
図7】
図6の表示形態において縮尺を小さな値に切り換えた場合の状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、
図1〜
図5に基づいて、本発明に係る車線情報データの表示システムの一実施形態について説明する。
この車線情報データの表示システムにおいて、デジタル道路地図データおよび車線情報データを重ね合わせて表示する表示手段は、全体を統括制御するCPUにインターフェイスを介してRAMおよびハードディスク等の記憶装置、入出力制御部を介したキーボードやマウス等の入力装置、入出力データを表示するモニタ、実行プログラムを記録したDVDやCD−ROMの駆動装置、およびプリンタ等の出力装置が接続された周知のパーソナルコンピュータであり、上記記憶装置に、デジタル道路地図データ、車線情報データおよびこれらを重ね合わせてモニタ上に表示させるための実行プログラムが上記コンピュータによって実行可能に格納されている。
【0025】
ここで、デジタル道路地図データ、車線情報データおよびその実行プログラムは、市販されている汎用のデータベースおよびソフトウエアを用いることができ、実行プログラムは、
図6および
図7(a)に示したように、デジタル道路地図データおよび車線情報データを互いの位置情報に基づいて重ね合わせてモニタ上に表示させる機能を有している。また、当該実行プログラムは、入力装置からの操作によって、デジタル道路地図データを表示する縮尺を段階的に切り換え可能になっている。
【0026】
さらに、上記車線情報データには、デジタル道路地図データにおける道路の交差点付近を含む特定箇所に対応する箇所において、1本の道路に対して直進、左折および/または右折の車線の数に対応した複数本の車線情報データが収納されている。そして、これら特定箇所に対応する複数本の車線情報データについては、予め
図3および
図4の右欄に示すように、道路中心からのオフセット量を複数段階(図では4段階)に変えた複数(図では4つ)の表示オブジェクト(表示データ)のファイルが用意されている。
【0027】
なお、上記車線情報データは、位置情報が対応する道路における平均旅行速度の他、昼間12時間の自動車類の平均旅行速度の他、混雑時の平均旅行速度、昼間非混雑時の平均旅行速度、平均旅行時間、小型車および大型車別の12時間または24時間自動車類交通量や、これらの合計の自動車類交通量等の様々な車線データが含まれており、所望の情報を選択することにより、その量の大小を色分けによって表示可能になっている。
【0028】
他方、実行プログラムにおいては、予め
図2に示すような、デジタル道路地図データを表示する際の縮尺の範囲と、当該範囲に対応する車線情報データの4つの上記表示オブジェクトとの対照表が設定されており、デジタル道路地図データの表示の縮尺の範囲に対応した表示オブジェクトを選択して、デジタル道路地図データと重ね合わせてモニタ上に表示させるように設定されている。
【0029】
次に、
図1〜
図5に基づいて、上記構成からなる車線情報データの表示システムの作用効果について説明する。
先ず、コンピュータによって、実行プログラムを起動することにより、モニタにデジタル道路地図データおよび車線情報データを互いの位置情報に基づいて重ね合わせてモニタ上に表示させる。但し、
図2の対照表に示すように、デジタル道路地図データの表示尺度が、1/1000以下のような広域表示の場合には、車線情報データは表示させない。
【0030】
次いで、操作者が、入力手段からデジタル道路地図データの表示の縮尺を、例えば
図4に示す縮尺に切り換えた際に、実行プログラムは、
図2に示す対照表を参照し、当該縮尺に対応した表示オブジェクト(Kousaten-05m)を選択する。そして、当該表示オブジェクトが、切り換え前の縮尺における表示オブジェクトと同じ場合には、切り換えられた縮尺においても、そのまま以前の表示オブジェクトを重ね合わせてモニタに表示する。
【0031】
次いで、操作者が、
図4に示す縮尺よりも大きな縮尺によって、表示されている交差点の詳細を確認するために、例えば
図3に示す縮尺に切り換えた場合には、実行プログラムは、同様に
図2に示す対照表を参照し、当該縮尺に対応した表示オブジェクト(Kousaten-02m)を選択する。そして、切り換え前の表示オブジェクト(Kousaten-05m)をOFFにするとともに、表示オブジェクト(Kousaten-02m)を切り換えられた縮尺のデジタル道路地図データ上へ重ね合わせてモニタに表示する。
【0032】
以上のように、上記構成からなる車線情報データの表示システムによれば、デジタル道路地図データと車線情報データとを重ね合わせて表示させる際に、上記デジタル道路地図データの表示の縮尺を大きくして表示箇所を拡大した場合には、複数本の車線情報データの間隔が漸次狭く表示されるために、当該車線情報データの一部が表示画面から外れることがない。
【0033】
また、逆に
図5(a)に示すデジタル道路地図データの表示の縮尺を小さくして、広い範囲を表示させる場合には、縮尺を小さくするのに伴って、上記複数本の車線情報データの間隔が漸次広く表示されるために、
図5(b)に示すように、これら複数本の車線情報データが重なり合って1本のように表示されることを防ぐことができる。
【0034】
この結果、デジタル道路地図データの表示の縮尺を切り換えても、常に複数本の車線情報データを並列的に表示させることができ、よって当該車線情報データに基づく検討が容易になる。
【0035】
加えて、予め交差点のような複数本の車線情報データを並列的に表示する特定箇所について、
図2の対照表に示すように、当該複数本の車線情報データの間隔を複数段階(本実施形態においては4段階)に変化させた複数(4つ)の表示オブジェクトを準備しておくとともに、各々の表示オブジェクトに対応させた複数段階(同、4段階)の縮尺の範囲を設定しておき、デジタル道路地図データの縮尺を切り換えた時に、当該縮尺に対応する上記表示オブジェクトを抽出して表示させているために、上記縮尺の切り換えに対して瞬時に最適な間隔に設定された複数本の車線情報データを表示させることができる。