特許第5904118号(P5904118)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5904118
(24)【登録日】2016年3月25日
(45)【発行日】2016年4月13日
(54)【発明の名称】積層シート及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/34 20060101AFI20160331BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20160331BHJP
   B32B 27/36 20060101ALI20160331BHJP
   B32B 27/08 20060101ALI20160331BHJP
   B29C 47/06 20060101ALI20160331BHJP
   B29C 47/92 20060101ALI20160331BHJP
   C08L 77/00 20060101ALI20160331BHJP
   B29K 71/00 20060101ALN20160331BHJP
   B29K 77/00 20060101ALN20160331BHJP
   B29K 81/00 20060101ALN20160331BHJP
   B29L 7/00 20060101ALN20160331BHJP
【FI】
   B32B27/34
   B32B27/00 A
   B32B27/36
   B32B27/00 103
   B32B27/08
   B29C47/06
   B29C47/92
   C08L77/00
   B29K71:00
   B29K77:00
   B29K81:00
   B29L7:00
【請求項の数】8
【全頁数】35
(21)【出願番号】特願2012-504941(P2012-504941)
(86)(22)【出願日】2011年12月8日
(86)【国際出願番号】JP2011078430
(87)【国際公開番号】WO2012081495
(87)【国際公開日】20120621
【審査請求日】2014年12月3日
(31)【優先権主張番号】特願2010-276743(P2010-276743)
(32)【優先日】2010年12月13日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】巽 規行
(72)【発明者】
【氏名】青山 滋
(72)【発明者】
【氏名】高橋 弘造
【審査官】 北澤 健一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−302918(JP,A)
【文献】 特開平09−059511(JP,A)
【文献】 特開平08−132553(JP,A)
【文献】 特開2010−111098(JP,A)
【文献】 特開平06−032876(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00−43/00
C08L 67/03
71/12
77/00
79/08
81/02
81/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
結晶性ポリアミド樹脂である樹脂(A)と、ガラス転移温度TgB(℃)が160℃以上250℃以下であって、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂およびポリアリレート樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種類からなる樹脂(B)とを、樹脂(A)と樹脂(B)との質量比WA1:Wを95:5〜45:55の範囲で含み、かつ、樹脂(A)が連続相である相分離構造を有するP1層と、結晶性ポリアミド樹脂である樹脂(A)を樹脂中に98質量%以上100質量%以下の範囲で含むP2層とが積層されてなることを特徴とする積層シート。
【請求項2】
前記P1層において樹脂(B)が分散相である請求項1に記載の積層シート。
【請求項3】
前記P1層に成分(C)としてポリオレフィン樹脂をP1層の総質量に対して5質量%以上30質量%以下含む請求項1または2のいずれかに記載の積層シート。
【請求項4】
前記P1層に含まれる樹脂(B)の含有量をM質量%、成分(C)の含有量をM質量%としたとき、MおよびMの関係が下記式(X)を満たす請求項3に記載の積層シート。
≦−0.14M+30.5 ・・・(X)
【請求項5】
前記P2層に含まれる樹脂(A)が樹脂(A)と同一である請求項1〜4いずれかに記載の積層シート。
【請求項6】
前記P2層が粒子を含有する請求項1〜5いずれかに記載の積層シート。
【請求項7】
結晶性ポリアミド樹脂である樹脂(A)と、ガラス転移温度TgB(℃)が160℃以上250℃以下であって、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂およびポリアリレート樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種類からなる樹脂(B)とを質量比95:5〜45:55の範囲で含む樹脂混合物を溶融混練したP1層形成用組成物と、結晶性ポリアミド樹脂である樹脂(A)を樹脂中に98質量%以上100質量%以下の範囲で含む樹脂混合物を溶融混練したP2層形成用組成物とを溶融共押出して成形することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の積層シートを製造する製造方法。
【請求項8】
前記樹脂(A)の融点をTmA(℃)、前記樹脂(B)のガラス転移点温度をTgB(℃)としたとき、TmAとTgBの関係が下記式(1)の関係を満たす樹脂(A)と樹脂(B)を用い、下記式(2)(3)の関係を満たす押出温度Tp(℃)で前記P1層形成用組成物を溶融押出して成形することを特徴とする請求項7に記載の積層シートを製造する製造方法。
0≦TmA−TgB≦20 ・・・(1)
40≦Tp−TmA≦50 ・・・(2)
50≦Tp−TgB≦60 ・・・(3)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸湿による物性の低下が小さく、太陽電池バックシートのような、難燃性が要求され、紫外線及び高温環境下に長期間曝されるような用途で好適に使用することができるポリアミド樹脂を含む積層シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ポリアミド樹脂を含むシートは剛性、耐衝撃性、耐摩耗性などの機械的性質がすぐれ、耐湿熱性、成形加工性、耐薬品性も良好なために、自動車部品、電気部品、一般機械部品など種々の用途に使用されている。しかしポリアミド樹脂は吸湿によりシートの寸法変化が大きい、電気絶縁性が低い、機械的強度が低いといった欠点がある。
【0003】
前記のようなポリアミド樹脂シートの欠点を改良することを目的として、ポリアミド樹脂に他の樹脂を添加する検討が行われており、例えばポリプロピレンの添加による吸湿性の改善(特許文献1、2)、ポリフェニレンエーテル樹脂の添加による吸湿性の改善と高温での成形加工時に要求される耐熱性の向上(特許文献3)などの検討が行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平1−103662号公報
【特許文献2】特開2010−111841号公報
【特許文献3】特開2009−235282号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1、2記載の方法では吸湿性は改善されるものの、難燃性が低下し、紫外線により機械的強度が低下するといった問題がある。また、特許文献3記載の方法では耐熱性に優れるものの、難燃性が低下するという問題があった。
【0006】
そこで本発明は、吸湿による物性(特に電気絶縁性)の低下が小さく、紫外線による機械的強度(特に破断伸度)の低下を抑制(以下、これを「耐紫外線性(伸度劣化の抑制性)」と称する場合がある)し、かつ難燃性に優れたシートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために、本発明では以下の構成をとる。すなわち、
結晶性ポリアミド樹脂である樹脂(A)と、ガラス転移温度TgB(℃)が160℃以上250℃以下であって、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂およびポリアリレート樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種類からなる樹脂(B)とを、樹脂(A)と樹脂(B)との質量比WA1:Wを95:5〜45:55の範囲で含み、かつ、樹脂(A)が連続相である相分離構造を有するP1層と、結晶性ポリアミド樹脂である樹脂(A)を樹脂中に98質量%以上100質量%以下の範囲で含むP2層とが積層されてなることを本旨とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、電気絶縁性、耐紫外線性(伸度劣化の抑制性)、難燃性に優れた積層シートを提供することができる。かかる積層シートは前記特徴を生かして、フラットケーブルなどの電気絶縁材料用途や屋外で紫外線に長期間曝されるような用途(例えば太陽電池バックシート用や、自動車や建物などの外装材用など)で好適に使用される。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の積層シートは、結晶性ポリアミド樹脂である樹脂(A)と、ガラス転移温度TgB(℃)が160℃以上250℃以下であって、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂およびポリアリレート樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種類からなる樹脂(B)とを、樹脂(A)と樹脂(B)との質量比WA1:Wを95:5〜45:55の範囲で含み、かつ、樹脂(A)が連続相である相分離構造を有するP1層と、結晶性ポリアミド樹脂である樹脂(A)を樹脂中に98質量%以上100質量%以下の範囲で含むP2層とが積層されてなることを特徴とする。かかる構成とすることにより、電気絶縁性、耐紫外線性(伸度劣化の抑制性)、難燃性に優れたシートとすることができる。以下メカニズムについて述べる。
【0010】
一般に結晶性ポリアミド樹脂は、吸湿によるシートの寸法変化が大きい、電気絶縁性が低い、機械的強度が低いといった欠点がある。また、紫外線によりシートの機械的強度の低下も起こりやすい樹脂であることが知られている。本願発明では、結晶性ポリアミド樹脂である樹脂(A)に樹脂(B)としてポリフェニレンエーテル樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリアリレート樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種類を前記範囲となるように含ませる(分散させる)ことによって、1)吸湿性が低い樹脂(B)が含有することにより吸湿率を低下させることができる結果、シートの電気絶縁性を向上させることができる、2)結晶性ポリアミド樹脂である樹脂(A)に分散している樹脂(B)を紫外線により劣化し、樹脂(A)の内部への紫外線の入射を抑え紫外線による機械的強度(特に破断伸度)の低下を抑制できるといった効果を有する。さらには、前記P1層の少なくとも片側の表面に結晶性ポリアミド樹脂である樹脂(A)を主たる成分とする樹脂層であるP2層を積層する事によって、3)着火源が近づいたときの前記P1層への着火を防止する、4)着火した場合でも、前記P1層の燃焼継続を前記P2層が抑制する効果を付与することが可能となるものである。以上の理由から、本発明の積層シートは従来のポリアミド樹脂からなるシートに比べて高い電気絶縁性、耐紫外線性(伸度劣化の抑制性)、難燃性を兼ね備えることが可能となったものと考えられる。
【0011】
以下、本発明について、以下に具体例を挙げつつ詳細に説明する。
【0012】
本発明の積層シートの前記P1層に用いられる樹脂(A)は結晶性ポリアミド樹脂である。ここでいう結晶性とは、具体的には、JIS K7122(1987)に準じて、昇温速度20℃/分で樹脂(A)を25℃から樹脂(A)の融点TmA(℃)+40℃まで20℃/分の昇温速度で加熱後、その状態で5分間保持し、次いで25℃以下まで急冷し、再度25℃から20℃/分の昇温速度で樹脂(A)の融点TmA(℃)+40℃まで加熱(2ndRUN)を行い、得られた2ndRUNの示差走査熱量測定チャートにおける融解ピークのピーク面積が、5J/g以上であることをいう。かかる方法により得られる融解ピークのピーク面積は、結晶性の度合に対応しており、本発明において用いられる結晶性ポリアミド樹脂である樹脂(A)としては、融解ピークの面積が8J/g以上であるものが好ましく、10J/g以上であるものがより好ましい。
【0013】
本発明の積層シートの前記P1層に含まれる樹脂(A)として用いられる結晶性ポリアミド樹脂は、1)ラクタム骨格を有する化合物を開環重合したもの、2)一分子中にアミノ基とカルボキシル基を有するアミノ酸成分を重縮合したもの、3)ジアミン成分とジカルボン酸成分を重縮合したもの、および1)〜3)を共重合したものおよび/または混合したもの等が挙げられる。
1)に用いられるラクタム骨格を有する化合物の例としてはε−カプロラクタム(開環重合によりナイロン6が得られる)、ω−ウンデカンラクタム(開環重合によりナイロン11が得られる)、ω−ラウロラクタム(開環重合によりナイロン12が得られる)などのラクタム化合物が挙げられる。また2)に用いられるアミノ酸成分の例としては、ε−アミノカプロン酸、11−アミノウンデカン酸、12−アミノドデカン酸などのアミノ酸が挙げられる。また3)に用いられるジアミン成分、ジカルボン酸成分の例としては、ジアミン成分としてはテトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、1,2,2,4−テトラメチルへキサメチレンジアミン、2,4,4−トリメチルへキサメチレンジアミン、5−メチルノナメチレンジアミン、m−キシリレンジアミン、p−キシリレンジアミン、1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン、1,4−ビスアミノメチルシクロヘキサン、ビス−p−アミノシクロヘキシルメタン、2,2−ビス−p−アミノシクロへキシルプロパン、イソホロンジアミンなどが挙げられ、また、ジカルボン酸成分としては、アジピン酸、スペリン酸、アゼライン酸、セパシン酸、ドデカン二酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ダイマー酸などのジカルボン酸が挙げられる。これらの成分について1)ラクタム骨格を有する化合物、2)アミノ酸成分、について単独または混合物、あるいは3)ジアミンとジカルボン酸の混合物、等の形で重合に供され、そうして得られるポリアミド樹脂は単独の重合体、共重合体いずれも本発明で用いることができる。これらの中でも、ポリカプロアミド(ナイロン6)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ナイロン66)、ポリへキサメチレンセバカミド(ナイロン610)、ポリヘキサメチレンドデカミド(ナイロン612)、ポリへキサメチレンテレフタルアミド(ナイロン6T)、ポリヘキサメチレンイソフタルアミド(ナイロン6I)、ポリウンデカンアミド(ナイロン11)、ポリドデカンアミド(ナイロン12)、が主たる成分であることが好ましい。さらには、結晶性の高さや強度、耐熱性、剛性面で、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン11及びナイロン12が主たる成分であることがより好ましい。(なお、「主たる成分」の「主たる」は特にことわらない限り50質量%超をいう。)
また、本発明の積層シートの前記P1層に含まれる樹脂(B)は、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂およびポリアリレート樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種類を含む樹脂が用いられる。かかる樹脂をP1層に含ませることによって、耐紫外線性(伸度劣化の抑制性)に優れた積層シートとすることができる。
【0014】
本発明に用いられるポリフェニレンエーテル樹脂とは、下記化1の構造単位を有する、重合体あるいは共重合体である。
【0015】
【化1】
【0016】
(Oは酸素原子、R1、R2、R3、R4は、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、1〜10個の炭素原子を有する第一級もしくは第二級のアルキル、フェニル、ハロゲン化アルキル、アミノアルキル、炭化水素オキシ、又はハロ炭化水素オキシ(但し、少なくとも2個の炭素原子がハロゲン原子と酸素原子を隔てている)である。)
本発明に用いられるポリフェニレンエーテル樹脂の具体的な例としては、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)、ポリ(2−メチル−6−エチル−1,4−フェニレンエーテル)、ポリ(2−メチル−6−フェニル−1,4−フェニレンエーテル)、ポリ(2,6−ジクロロ−1,4−フェニレンエーテル)等が挙げられ、共重合体としては、2,6−ジメチルフェノールと2,3,6−トリメチルフェノール等の他のフェノール類との共重合体が挙げられる。ポリフェニレンエーテル樹脂として2,6−ジメチルフェノールと2,3,6−トリメチルフェノールとの共重合体を使用する場合の各単量体ユニットの比率は、60モル%以上90モル%以下の2,6−ジメチルフェノールと、10モル%以上40モル%以下の2,3,6−トリメチルフェノールであることが好ましい。2,3,6−トリメチルフェノールの割合は耐熱性の観点から10モル%以上が好ましく、重合度の観点から40モル%以下が好ましい。かかる観点から、60モル%以上85モル%以下の2,6−ジメチルフェノールと、15モル%以上40モル%以下の2,3,6−トリメチルフェノールからなる共重合体であることがより好ましく、70モル%以上85モル%以下の2,6−ジメチルフェノールと、15モル%以上30モル%以下の2,3,6−トリメチルフェノールからなる共重合体であることがさらに好ましい。
【0017】
また、本発明に用いられるポリフェニレンエーテル樹脂は、全部又は一部が変性されたポリフェニレンエーテル樹脂(以下変性ポリフェニレンエーテル樹脂と略す場合がある)であっても構わない。ここでいう変性ポリフェニレンエーテル樹脂とは、分子内に少なくとも1個の炭素−炭素二重結合または三重結合を有し、かつ、カルボン酸基、酸無水物基、アミノ基、水酸基、および、グリシジル基からなる群より選ばれる少なくとも1個の官能基を有する化合物の1種または2種以上により変性されたポリフェニレンエーテル樹脂を指す。前記の変性ポリフェニレンエーテル樹脂は、それぞれ単独で用いても良いし、2種以上を組み合わせて用いても良い。
【0018】
本発明に用いられるポリエーテルイミド樹脂とは、下記化2の構造単位を有する、重合体あるいは共重合体である。
【0019】
【化2】
【0020】
(R5は、6〜30個の炭素原子を有するフェニレンまたはアルキレン、R6は6〜30個の炭素原子を有するフェニレン、2〜20個の炭素原子を有するアルキレン、2〜20個の炭素原子を有するシクロアルキレン、および、2〜8個の炭素原子を有するアルキレンを端部に有するポリジオルガノシロキサンからなる群より選ばれる二価の有機基である。)
本発明に用いられるポリスルホン樹脂とは、下記化3の構造単位を有する、重合体あるいは共重合体である。
【0021】
【化3】
【0022】
(R7、R8は、それぞれ独立して、水素、1〜6個の炭素原子を有する、アルキル、フェニルである)
本発明に用いられるポリエーテルスルホン樹脂とは、下記化4で例示するような、芳香族環が1つのスルホニル基と、1つまたは2つのエーテル基とで結合された構造単位を有する、重合体あるいは共重合体である。
【0023】
【化4】
【0024】
本発明に用いられるポリアリレート樹脂とは,下記化5の通り芳香族ジカルボン酸またはその誘導体と二価フェノール成分、またはその誘導体から得られる構造単位を有する、重合体あるいは共重合体である。
【0025】
【化5】
【0026】
(Arは二価の芳香族基,R9は、水素、アルキル、アルコキシ、ハロゲンからなる群から選ばれる一価の置換基。)
好ましい芳香族ジカルボン酸成分として、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸が挙げられる。またこれらの混合物であってもよい。
【0027】
二価フェノール成分の具体例としては、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジブロモフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)プロパン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4’−ジヒドロキシジフェニルケトン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルメタン、2,2’−ビス(4ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、ハイドロキノン、2,2−ビス{(4−ヒドロキシ−3−メチル)フェニル}プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3−メチルブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3−ジメチルブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−メチルペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンおよびα,α’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−m−ジイソプロピルベンゼンなどが挙げられる。これら二価フェノール成分はパラ置換体であるが、他の異性体を使用してもよく、さらに二価フェノール成分に加えてエチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコールなどを共重合してもよい。
【0028】
更に本発明で用いるポリアリレート樹脂は、前記芳香族ジカルボン酸および二価フェノールと共に芳香族ヒドロキシカルボン酸を共重合成分として含んでもよく、また芳香族ヒドロキシカルボン酸を主たる成分とし、副成分として芳香族ジカルボン酸および二価フェノールを含むものであってもよい。
【0029】
本発明の積層シートの前記P1層は、樹脂(A)と樹脂(B)の質量比WA1:Wが95:5〜45:55の範囲であり、樹脂(A)が連続相である相分離構造を有することが、優れた電気絶縁性と耐紫外線性(伸度劣化の抑制性)を両立したシートとするために必要である。樹脂(A)と樹脂(B)の質量比WA1:Wはより好ましくは90:10〜48:52の範囲、更に好ましくは70:30〜50:50の範囲である。本発明の積層シートの前記P1層に含まれる樹脂(A)と樹脂(B)の質量比WA1:Wが95:5より樹脂(B)の割合が小さくなると、樹脂(B)の含有量が少なく、シートの吸水率が高くなり、電気絶縁性が低下したり、耐紫外線性(伸度劣化の抑制性)が低下する。また、樹脂(A)と樹脂(B)の質量比WA1:Wが45:55より樹脂(B)の割合が大きくなると、樹脂(B)の含有量が多すぎて、シートの機械的強度や耐紫外線性(伸度劣化の抑制性)が低下したり、難燃性が低下する場合がある。また、前記P2層との積層界面が剥離する場合がある。また、前記P1層は樹脂(A)が連続相である相分離構造を有しない場合、樹脂(B)による耐紫外線性(伸度劣化の抑制性)の向上効果が得られない。相分離構造の形態としては、樹脂(A)が連続相を形成し、樹脂(B)が分散相となる形態がより好ましい。本発明の積層シートにおいて前記P1層は樹脂(A)が連続相で、かつ樹脂(B)が分散相となる相分離構造の形態をとることで、耐紫外線性(伸度劣化の抑制性)に優れた積層シートとすることができる。尚、ここでいう連続相や分散相とは、一般的な海島構造の海のように連続して存在する相を連続相、海島構造の島のような連続せずに独立して存在している相を分散相といい、本発明の積層シートをリンタングステン酸で樹脂(A)を染色した後、ミクロトームを用いて、前記P1層断面を厚み方向に潰すことなく、薄膜切片状の観察サンプルを作製し、得られた断面薄膜切片を、電界放射走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて前記P1層内を5000倍に拡大観察した画像から判断する。
【0030】
本発明の積層シートにおいて、前記P1層に含まれる樹脂(B)のガラス転移点温度TgB(℃)は160℃以上250℃以下であることが重要である。ここでいうガラス転移温度TgB(℃)とは、JIS K7122(1987)に準じて、樹脂(B)を20℃/分の昇温速度で25℃から350℃まで加熱(1stRUN)し、その状態で5分間保持し、次いで25℃以下まで急冷し、再度25℃から20℃/分の昇温速度で350℃まで加熱(2ndRUN)を行っとき、得られた示差走査熱量測定チャートの2ndRUNのガラス転移点における変曲点での接線とベースラインの交点の温度である。好ましくはガラス転移温度TgB(℃)が190℃以上240℃以下、より好ましくは210℃以上230℃以下である。樹脂(B)のガラス転移点温度TgB(℃)が160℃に満たないと、シートの熱寸法安定性が低下する場合がある。またTgB(℃)が250℃を超えると、樹脂(B)の溶融粘度が大きくなりすぎて、樹脂(A1)中への樹脂(B)の分散性が低下したり、押出機に負荷を加えてしまう場合がある。樹脂(B)のガラス転移点温度TgB(℃)を160℃以上250℃以下とすることで、優れた熱寸法安定性と耐紫外線性(伸度劣化の抑制性)を両立したシートとすることができる。
【0031】
また、本発明の積層シートの前記P1層に含まれる樹脂(A)と樹脂(B)の質量比が前記の範囲を満たしていれば、本発明の効果を損なわない範囲でその他の成分(C)を含んでいてもよい。その他の成分(C)としては、有機成分及び無機成分いずれも好ましく用いることができ、またこれらを併用して用いることもできる。有機成分としては、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、エチレン−プロピレンコポリマー、エチレン−プロピレン−ブテンコポリマー、ポリメチルペンテンなどの鎖状ポリオレフィンや、シクロオレフィンポリマー、シクロオレフィンコポリマーなどの環状ポリオレフィンが挙げられ、これらのポリオレフィン樹脂を添加することによってシートの吸湿率をより低減し電気絶縁性をより向上させることができる。
【0032】
また、無機成分としては、例えば、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化アルミニウム 等の金属酸化物、リン酸カルシウム等の金属リン酸塩、炭酸カルシウム等の炭酸塩、硫酸バリウム等の硫酸塩、その他タルクおよびカオリンなどを挙げることができる、これにより優れた反射率、隠蔽性、難燃性を両立させることができる。
【0033】
本発明の積層シートのP1層に含まれる成分(C)が有機成分であるポリオレフィン樹脂の場合、安価で加工が容易な点からポリプロピレンやポリエチレン、エチレン−プロピレンコポリマーが好ましく用いられ、中でも耐熱性に優れる点からポリプロピレンが最も好ましく用いられる。また、前記のポリオレフィン樹脂の含有量MはP1層の総質量に対して5質量%以上30質量%以下含まれていることが好ましく、より好ましくは10質量%以上25質量%以下、更に好ましくは15質量%以上20質量%以下である。本発明の積層シートにおいて、P1層に成分(C)として含まれるポリオレフィン樹脂の含有量Mが、P1層の総質量に対して5質量%未満の場合、成分(C)としてポリオレフィン樹脂を含むことによる電気絶縁性の向上効果を十分に得られない場合がある。また、P1層に成分(C)として含まれるポリオレフィン樹脂の含有量Mが、P1層の総質量に対して30質量%よりも多い場合、本発明の積層シートの電気絶縁性の向上効果を十分に得られる一方で、耐紫外線性(伸度劣化の抑制性)や難燃性、機械的強度が低下する場合がある。本発明の積層シートにおいて、P1層に成分(C)として含まれるポリオレフィン樹脂の含有量をP1層の総質量に対して5質量%以上30質量%以下とすることで、本発明の積層シートの電気絶縁性を更に向上させることができる。
【0034】
更に、本発明の積層シートのP1層に成分(C)としてポリオレフィン樹脂を含む場合、樹脂(B)の含有量をM質量%としたとき、成分(C)の含有量Mは下記式(X)を満たす関係であることが好ましく、更には下記式(Y)を満たすことがより好ましい。
≦−0.14M+30.5 ・・・(X)
≦−0.34M+31 ・・・(Y)
本発明の積層シートにおいて、P1層に成分(C)としてポリオレフィン樹脂を含む場合、樹脂(B)の含有量Mと成分(C)の含有量Mが式(X)を満たさない場合、樹脂(B)による耐紫外線性(伸度劣化の抑制性)の向上効果が不十分になることや、連続相を形成する樹脂(A)の割合が小さくなり、シートの難燃性や機械的強度が低下する場合がある。本発明の積層シートにおいて、P1層に成分(C)としてポリオレフィン樹脂を含む場合、樹脂(B)の含有量Mと成分(C)の含有量Mが式(X)を満たす関係とすることで、本発明の積層シートの電気絶縁性の向上効果に加えて、耐紫外線性(伸度劣化の抑制性)や難燃性、機械的強度を両立させることができる。
【0035】
また、本発明の積層シートにおいて、前記P1層に含まれる樹脂(B)の分散径は1.2μm以下であることが好ましい。ここでいう分散径とは、本発明の積層シートをリンタングステン酸で樹脂(A)を染色した後、ミクロトームを用いて、前記P1層断面を厚み方向に潰すことなく、薄膜切片状の観察サンプルを作製し、得られた断面薄膜切片を、電界放射走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて前記P1層内を5000倍に拡大観察した画像から、樹脂(A)中に分散する樹脂(B)の面積から面積相当径を算出し、その面積相当径の粒径分布を前記P1層内の無作為に定めた5箇所について求めた数平均値である。より好ましくは樹脂(B)の分散径が1μm以下、更に好ましくは0.7μm以下である。樹脂(B)の分散径が1.2μmより大きい場合、シートの機械的強度が低下したり、紫外線による樹脂(A)の劣化が内部まで起こり、耐紫外線性(伸度劣化の抑制性)が低下する場合がある。本発明の積層シートにおいて、前記P1層に含まれる樹脂(B)の分散径を1.2μm以下とすることで、優れた機械的強度と耐紫外線性(伸度劣化の抑制性)を両立したシートとすることができる。なお、樹脂(B)の分散径は、樹脂(A)の融点TmA(℃)、樹脂(B)のガラス転移点温度TgB(℃)及び、本発明の積層シートの製造方法における押出温度Tp(℃)の関係によって制御できる。詳細は後述する。
【0036】
本発明の積層シートは前記P1層と、結晶性ポリアミド樹脂である樹脂(A)を樹脂中に98質量%以上100質量%以下含むP2層とが積層されている。本発明の積層シートの前記P1層に前記樹脂(A)を98質量%以上100質量%以下含む樹脂層であるP2層が積層されていない場合、シートに着火源が近づいた時に前記P1層への着火を防止することや、前記P1層の燃焼継続を抑制することができず、シートの難燃性が低下する。本発明の積層シートにおいて、前記P1層と、結晶性ポリアミド樹脂である樹脂(A)を98質量%以上100質量%以下含む樹脂層であるP2層とが積層することによって、優れた難燃性と電気絶縁性、耐紫外線性(伸度劣化の抑制性)を両立したシートとすることができる。
【0037】
また、前記P2層の主たる成分である結晶性ポリアミド樹脂(A)を99質量%以上100質量%以下とすることが好ましい。本発明の積層シートの前記P2層に含まれる前記樹脂(A)以外の樹脂として前記P2層に含まれる樹脂(B)が含まれる場合、2質量%より樹脂(B)の含有量が大きくなると、前記P2層を設けることによって得られる難燃性や耐紫外線性(色調変化の抑制性)が低下する。かかる観点から、本発明の積層シートの前記樹脂(A)以外の樹脂として樹脂(B)がP2層に含まれる場合、樹脂(A)の含有量を98質量%以上100質量%以下とすることで優れた難燃性と共に紫外線照射後の色調変化の抑制(以下、これを「耐紫外線性(色調変化の抑制性)」と称する場合がある)とを両立したシートとすることができるが、前記P2層には結晶性ポリアミド樹脂(A)以外の樹脂として、樹脂(B)を含まないことがより好ましい。
【0038】
また、前記P2層に特定の前記樹脂(A)を用いることや、前記P2層に好適な無機粒子を添加することで、シートに様々な特性を付与できる点で好ましい。
【0039】
例えば、本発明の積層シートにおいて、前記P2層の主たる成分である前記樹脂(A)は前述の樹脂(A)に記載の樹脂から選ぶことができる。さらには前記P2層の主たる成分である前記樹脂(A)を前記P1層の樹脂(A)と同じものとすることによって、優れた層間密着性を有するシートとすることができる。
【0040】
また、本発明の積層シートおいて、前記P2層には粒子を含有していることが好ましい。この粒子はその目的に応じて必要な機能をシートに付与するために用いられる。本発明に好適に用いうる粒子としては紫外線吸収能のある粒子や前記樹脂(A)との屈折率差が大きな粒子、導電性を持つ粒子、顔料といったものが例示され、これにより耐候性、反射性、光学特性、帯電防止性、色調などを改善することができる。なお、粒子とは平均一次粒径として5nm以上のものをいう。なお、特に断らない限り、本発明において粒子は一次粒子を意味し、粒径は面積相当径の数平均値を平均一次粒径とする。
【0041】
さらに詳細に粒子について説明すると、本発明においては無機粒子および有機粒子のいずれも好ましく用いることができ、またこれらを併用して用いることもできる。無機粒子としては、例えば、金、銀、銅、白金、パラジウム、レニウム、バナジウム、オスミウム、コバルト、鉄、亜鉛、ルテニウム、プラセオジウム、クロム、ニッケル、アルミニウム、スズ、亜鉛、チタン、タンタル、ジルコニウム、アンチモン、インジウム、イットリウム、ランタニウム等の金属、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化セシウム、酸化アンチモン、酸化スズ 、インジウム・スズ酸化物、酸化イットリウム 、酸化ランタニウム 、酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム 、酸化ケイ素等の金属酸化物、フッ化リチウム、フッ化マグネシウム 、フッ化アルミニウム 、氷晶石等の金属フッ化物、リン酸カルシウム等の金属リン酸塩、炭酸カルシウム等の炭酸塩、硫酸バリウム等の硫酸塩、その他タルクおよびカオリンなどを挙げることができる。また、有機粒子としては、例えば、シリコーン系化合物、架橋スチレンや架橋アクリル、架橋メラミンなどの架橋粒子の他、カーボンブラック、フラーレン、チョップドまたはミルドカーボンファイバー、カーボンナノチューブなどの炭素系材料等が挙げられ、さらには前記樹脂(A)と非相溶で、かつこれら樹脂中に島状に分散する樹脂(但し、上述の樹脂(B)は除く)も粒子とみなすことができる。本発明においては、特に無機粒子を用いた場合に発明の効果が顕著である。また、屋外で使用される用途においては、紫外線吸収能を有する粒子、例えば、無機粒子では酸化チタン、酸化亜鉛、酸化セリウム、などの金属酸化物、有機粒子ではカーボンブラック、フラーレン、チョップドまたはミルドカーボンファイバー、カーボンナノチューブなどの炭素系材料等を用いた場合に粒子による紫外線吸収能を活かして、長期に亘って機械的強度を維持するという本発明の効果を顕著に発揮することができると共に、紫外線照射後の色調変化を抑制し、優れた耐紫外線性(色調変化の抑制性)も兼ね備えたシートとすることができる。
【0042】
また、本発明の積層シートおいて、前記P2層に含有される粒子が無機粒子の場合、その含有量は前記P2層の総質量に対して1質量%以上25質量%以下が好ましい。より好ましくは5質量%以上23質量%以下、更に好ましくは8質量%以上20質量%以下、特に好ましくは10質量%以上15質量%以下である。前記P2層の無機粒子の含有量が前記P2層の総質量に対して1質量%未満の場合、耐紫外線性(色調変化の抑制性)が低下する場合がある。また、無機粒子の含有量が25質量%を超える場合、耐紫外線性(色調変化の抑制性)や反射性向上の点では好ましいが、シートの機械的強度が低下したり、本発明の積層シートを他のシート材料と貼り合わせて用いた時、前記P2層内でへき開が起こり、他のシート材料との密着性が低下する場合がある。本発明の積層シートにおいて前記P2層に前記P2層の総質量に対して1質量%以上25質量%以下の範囲で無機粒子を含有させることで、優れた耐紫外線性(色調変化の抑制性)と反射性、機械的強度、他のシート材料との密着性を両立したシートとすることができる。
【0043】
また、本発明の積層シートおいて、前記P2層に含有される粒子が無機粒子の場合、積層シートの両表面側にP2層が積層されている構成が好ましい。本発明の積層シートにおいて無機粒子を含有するP2層を両表面側に積層させることで、P2層に無機粒子を含有させることによる効果である優れた耐紫外線性(色調変化の抑制性)と反射性向上を両表面側においても両立させることが可能となり、例えば太陽電池バックシートの様な耐紫外線性(色調変化の抑制性)と反射性の両方の特性をシートの両表面側に求められるような用途に好適に使用することができる。
【0044】
さらに、P1層、P2層が複数層積層されていてもよく、本発明の積層シートにおいて、前記P1層の厚みの和T1と前記P2層の厚みの和T2の比T1:T2が3:2〜6:1の範囲であることが好ましく、より好ましくはT1:T2が3:1〜4:1の範囲である。本発明における前記P2層の厚みが前記P1層の厚みの和T1と前記P2層の厚みの和T2の比T1:T2において6:1よりも小さい場合、前記P2層を設けることによって得られる優れた難燃性、耐紫外線性(色調変化の抑制性)が低下する場合がある。また、本発明における前記P2層の厚みが前記P1層の厚みの和T1と前記P2層の厚みの和T2の比T1:T2において3:2よりも大きい場合、電気絶縁性、耐紫外線性(伸度劣化の抑制性)、熱寸法安定性が低下する場合がある。本発明の積層シートにおいて、前記P1層の厚みの和T1と前記P2層の厚みの和T2の比T1:T2を3:2〜6:1の範囲とすることで、優れた電気絶縁性、耐紫外線性(伸度劣化の抑制性、色調変化の抑制性)、難燃性を両立したシートとすることができる。
【0045】
本発明の積層シートの前記P2層において、本発明の効果が損なわれない範囲であれば必要に応じ、耐熱安定剤、耐酸化安定剤、帯電防止剤、易滑剤、充填剤、核剤、染料、分散剤、カップリング剤等の添加剤や、気泡等を配合することによって、各種機能を付与することができる。
【0046】
本発明の積層シートの厚みは、特に限定されず、用途により適当な厚みを選択することができるものであるが、一般的には50μm以上2000μm以下とすることが好ましい。例えば、本発明の積層シートを例えば太陽電池バックシートに用いた場合、積層シートの厚みは50μm以上500μm以下が好ましく、より好ましくは100μm以上300μm以下である。積層シートの厚みが50μm未満の場合、バックシートの平坦性を確保することが困難となる場合がある。一方、500μmより厚い場合、太陽電池に搭載した場合、太陽電池全体の厚みが大きくなりすぎることがある。また本発明の積層シートを例えばフラットケーブルなどの電気絶縁材料として用いた場合、積層シートの厚みは500μm以上2000μm以下が好ましく、より好ましくは1000μm以上1500μm以下である。積層シートの厚みが500μm未満の場合、電気絶縁性や難燃性が不足する場合がある。一方、2000μmより厚い場合、シートの加工性、巻き取り性などが低下する場合がある。
【0047】
本発明の積層シートにおいて、厚み300μm当たりの部分放電電圧が700V以上であるのが好ましい。ここでいう部分放電電圧とは、シートに電圧を印加した時に、シートが絶縁破壊する前に表面欠点や、内部の空隙(ボイド)などの絶縁欠陥で起こる微小な放電現象である部分放電が発生または消滅する電圧であり、シートの電気絶縁性の指標となる値である。より好ましくは厚み300μm当たりの部分放電電圧が800V以上であり、更に好ましくは900V以上である。本発明の積層シートにおいて、厚み300μm当たりの部分放電電圧が700Vに満たないと、本発明の積層シートを例えばフラットケーブルなどの電気絶縁材料や太陽電池バックシートなどに用いた場合、電気絶縁性が不足してしまう場合がある。本発明の積層シートにおいて、厚み300μm当たりの部分放電電圧が700V以上とすることで、本発明の積層シートを例えばフラットケーブルなどの電気絶縁材料や太陽電池バックシートなどの電気絶縁性が要求される用途で好適に使用することができる。
【0048】
また、本発明の積層シートにおいて、紫外線照射後の破断伸度が20%以上であるのが好ましく、より好ましくは破断伸度が30%以上、特に好ましくは40%以上である。ここでいう紫外線照射後の破断伸度とは、本発明に積層シートに温度60℃、相対湿度60%の雰囲気下、強度100mW/cmのメタルハライドランプ(波長範囲:295〜450nm、ピーク波長:365nm)を96時間照射する紫外線照射試験を行った後、ASTM−D882(1997)に基づいて、シートを1cm×20cmの大きさに切り出し、チャック間5cm、引っ張り速度300mm/分にて引っ張ったときの破断伸度であり、シートを長手方向、幅方向のそれぞれについてサンプル数n=5で測定した後、それらの平均値を算出する。
【0049】
本発明の積層シートにおいて、紫外線照射後の伸度保持率が20%に満たないと、本発明の積層シートを例えば太陽電池バックシートのような紫外線に長期間曝されるような用途で使用した際、シートの劣化が進行しやすいため、機械的強度の低下によってバックシートが破断してしまうことがある。本発明の積層シートにおいて、紫外線照射後の伸度保持率を20%以上とすることで、紫外線による機械的強度の低下が小さいシートとすることが可能となり、例えば太陽電池バックシートのような紫外線に長期間曝されるような用途においても好適に使用することができる。
【0050】
また、本発明の積層シートにおいて、紫外線照射後の色調変化(Δb値)が5以下であることが好ましく、より好ましくは1以下、更に好ましくは0.5以下である。ここでいう紫外線照射後の色調変化(Δb)とは、本発明の積層シートに温度60℃、相対湿度60%の雰囲気下、強度100mW/cmのメタルハライドランプ(波長範囲:295〜450nm、ピーク波長:365nm)を96時間照射する紫外線照射試験を行った前後のシートの色調(b値)をJIS−Z−8722(2000)に基づき、分光式色差計(日本電色工業製SE−2000、光源 ハロゲンランプ 12V4A、0°〜−45°後分光方式)を用いて反射法により測定し、紫外線照射前の色調(b値)をb0、紫外線照射後の色調(b値)をb1とした時に、次の(α)式により、得られた値である。
【0051】
紫外線照射後の色調変化(Δb)=b1−b0 (α)式
尚、本発明の積層シートの前記P2層が前記P1層の片側にのみ設けられている場合、紫外線照射は前記P2層が設けられている側の面に行う。
【0052】
本発明の積層シートにおいて、紫外線照射後の色調変化(Δb値)が5を超えると、例えば、本発明のシートを、太陽電池バックシートのような紫外線に長期間曝されるような用途で使用した際、劣化によってシートが変色し外観を損ねてしまう場合がある。本発明の積層シートにおいて、紫外線照射後の色調変化(Δb値)を5以下とすることで、紫外線による色調変化の小さい、太陽電池バックシートのような紫外線に長期間曝されるような用途で好適に使用することができる。
【0053】
また、本発明の積層シートにおいて、温度150℃雰囲気下で30分放置した後のシート長手及び幅方向それぞれの熱収縮率の絶対値は1.2%以下であることが好ましく、より好ましくは0.8%以下、更に好ましくは0.4%以下である。ここでいう熱収縮率の絶対値とは、JIS−C2318(1966)に規定された方法に従って、幅10mm、標線間隙約100mmに切り出したシートを、温度150℃、荷重0.5gで30分間熱処理し、処理前のシートの長さをL0、温度150℃の雰囲気下で30分放置した後の長さをL1とした時に、次の(β)式により得られた値である。
【0054】
熱収縮率(%)=|(L0―L1)/L0×100| (β)式
本発明の積層シートにおいて、温度150℃の雰囲気下で30分放置した後の熱収縮率の絶対値が1.2%を超えると、本発明の積層シートを例えば太陽電池バックシートのような、高温環境下に長期間曝されるような用途で使用した場合、熱によるシートの寸法変化が進行し、例えば太陽電池バックシートと封止材との接着部分で剥離が起こる場合がある。本発明の積層シートにおいて、温度150℃雰囲気下で30分放置した後のシート長手及び幅方向の熱収縮率の絶対値を1.2%以下とすることで、例えば太陽電池バックシートのような、高温環境下に長期間曝されるような用途で好適に使用することができる。
【0055】
また、本発明の積層シートにおいて、厚み300μmにおける燃焼速度が200mm/分以下であることが好ましい。より好ましくは150mm/分以下であり、更に好ましくは75mm/分以下である。ここでいう厚み300μmにおける燃焼速度とは、UL94HB試験に基づいて、厚み300μmのシートを13mm×125mmの大きさに切り出し、水平に保持して燃焼試験を行った時の101.6mmの標線間での燃焼速度である。なお、測定はシートの幅方向及び長手方向についてそれぞれN=3で行いその平均値でもって燃焼速度とする。本発明の積層シートにおいて、厚み300μmにおける燃焼速度が200mm/分を超えると、本発明の積層シートを例えば太陽電池バックシートに用いた場合、回路の漏電などで問題が生じる懸念がある。本発明の積層シートにおいて、厚み300μmにおける燃焼速度を200mm/分以下とすることで、太陽電池バックシートのような、難燃性が要求される用途で好適に使用することができる。
【0056】
本発明の積層シートにおいて、厚み300μm当たりの部分放電電圧が700V以上でかつ、温度60℃、相対湿度50%の雰囲気下、強度100mW/cmのメタルハライドランプ(波長範囲:295〜450nm、ピーク波長:365nm)を96時間照射した後の破断伸度が20%以上でかつ、厚み300μmにおける燃焼速度が200mm/分以下とすることがより好ましい。それにより、優れた電気絶縁性、耐紫外線性(伸度劣化の抑制性)、難燃性を両立したシートとすることができ、例えばフラットケーブルなどの電気絶縁材料や太陽電池バックシートのような、電気絶縁性、難燃性が重視され、紫外線に長期間曝されるような用途に好適に使用することができる。
【0057】
本発明の積層シートにおいて、波長450〜700nmの範囲の平均分光反射率が80%以上であることが好ましく、より好ましくは90%以上であり、更に好ましくは99%以上である。ここでいう波長450〜700nmの範囲の平均分光反射率とは、シートを分光光度計U−3410(日立製作所(株)製)を用いて、波長450〜700nmの範囲の分光反射率を10nm間隔で測定した平均値である。本発明の積層シートにおいて、平均分光反射率が80%に満たない場合、本発明の積層シートを例えば太陽電池バックシートに用いた場合、発電セルに太陽光が当たった時、バックシートの反射性が劣り反射光による発電効率が低下する場合がある。本発明の積層シートにおいて、波長450〜700nmの範囲の平均分光反射率を80%以上とすることで、優れた反射性を有するシートとすることができ、本発明の積層シートを例えば太陽電池バックシートに用いた場合、搭載する太陽電池セルの発電効率を高めることができる。
【0058】
次に、本発明の積層シートの製造方法について例を挙げて説明する。
【0059】
本発明において、樹脂(A)として用いられる結晶性ポリアミド樹脂は、公知の方法により、得たものを使用することができる。すなわち、1)ラクタム骨格を有する化合物を開環重合したもの、2)一分子中にアミノ基とカルボキシル基を有するアミノ酸成分を重縮合したもの、3)ジアミン成分とジカルボン酸成分を重縮合したもの、1)〜3)を共重合したものおよび/または混合したもの等が挙げられる。また、市販のポリアミド樹脂を使用してもよい。
【0060】
本発明において、樹脂(B)として用いられるポリフェニレンエーテル樹脂は、公知の方法により、フェノール性化合物の酸化重合反応をさせることにより得ることができる。また、変性ポリフェニレンエーテル樹脂は、公知の方法により、ラジカル開始剤で変性化合物と反応させることによって得ることができる。また、市販のポリフェニレンエーテル樹脂、変性ポリフェニレンエーテル樹脂を使用してもよい。
【0061】
本発明において、樹脂(B)として用いられるポリエーテルイミド樹脂は、公知の方法により、芳香族ビス(エーテル無水物)と有機ジアミンの反応をさせることにより得ることができる。また、市販のポリエーテルイミド樹脂を使用してもよい。
【0062】
本発明において、樹脂(B)として用いられるポリスルホン樹脂は、公知の方法により、二価フェノールのアルカリ金属塩とジハロゲノジフェニルスルホンの重縮合反応により得ることができる。また、市販のポリスルホン樹脂を使用してもよい。
【0063】
本発明において、樹脂(B)として用いられるポリエーテルスルホン樹脂は、公知の方法により、二価フェノールのアルカリ金属塩とジハロゲノジフェニルスルホンの重縮合反応により得ることができる。また、市販のポリエーテルスルホン樹脂を使用してもよい。
【0064】
本発明において、樹脂(B)として用いられるポリアリレート樹脂は、公知の方法により、二価フェノール化合物と芳香族ジカルボン酸の重合反応により得ることができる。また、市販のポリアリレート樹脂を使用してもよい。
【0065】
本発明の積層シートの製造方法において、樹脂(A)と樹脂(B)を混合する方法としては、1)シートの製膜時に樹脂(A)と樹脂(B)を混合する方法、2)樹脂(B)を予め樹脂(A)と混合した原料(マスターチップ)としておく方法、などが挙げられる。2)樹脂(B)を予め樹脂(A)と混合した原料(マスターチップ)としておく方法としては、例えば、樹脂(A)の製造工程に樹脂(B)を加える方法や、樹脂(A)と樹脂(B)を押出機に投入して加熱溶融/混練させたのち、口金から吐出させたものを細かく切断し、ペレットにしたものを用いても良い。またこの際、必要に応じて樹脂(A)及び樹脂(B)を乾燥しておくことが好ましい。樹脂(A)及び樹脂(B)が水分を含んでいると、加熱溶融/混練中に分解反応が進行してしまうことがある。なお、予め樹脂(A)と樹脂(B)とをマスターチップ化させておく場合の樹脂(A)と樹脂(B)の合計に対する樹脂(B)の含有量は特に限定されないが、溶融混練時の押出性やペレットの取扱い性の点で5質量%以上70質量%以下とすることが好ましい。なお、シートの製膜時に樹脂(A)と樹脂(B)の投入比は、かかるマスターを用いた場合でも最終的なP1の含有量は、前述の比率となるようにすることは言うまでもない。
【0066】
次に、本発明の積層シートを作製する方法としては、(1)2台の押出機にて前記P1層に用いる結晶性ポリアミド樹脂である樹脂(A)及び、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂およびポリアリレート樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種類からなる樹脂(B)、または、予めマスターチップ化した原料を必要に応じて乾燥させて溶融押出したP1層形成用組成物と、前記P2層に用いる前記樹脂(A)を必要に応じて乾燥させて溶融押出したP2層形成用組成物を、溶融流路内で前記P1層形成組成物と前記P2層形成組成物を積層出来る装置(合流装置)を通して溶融シートをTダイに導き、溶融共押出によって積層シートを製造する方法(溶融共押出法)、または、(2)単独の押出機で樹脂(A)及び樹脂(B)、または、予めマスターチップ化した原料を必要に応じて乾燥させ押出機にて溶融押出し、それをダイから吐出して得られた前記P1層からなる単層シートに前記P2層に用いる前記樹脂(A)を必要に応じて乾燥させて押出機に投入して溶融押出して口金から押出しながらラミネートする方法(溶融ラミネート法)、さらには、(3)前記P1層及び前記P2層なるシートをそれぞれ別々に作製し、加熱されたロール群などにより熱圧着する方法(熱ラミネート法)、または、接着剤を介して貼り合わせる方法(接着法)、およびこれらを組み合わせた方法等などが挙げられる。本発明の積層シートの製造方法としては、溶融共押出法によって積層シートを製造する方法がより好ましく用いれ、本発明の積層シートを溶融共押出法によって製造することで、前記P1層と前記P2層の層間密着性を高めることや、製造工程の短縮が可能となる。
【0067】
また、本発明の積層シートの製造方法の前記P1層形成用組成物の溶融押出において樹脂(A)の融点をTmA(℃)、樹脂(B)のガラス転移点温度をTgB(℃)としたとき、TmA(℃)とTgB(℃)の関係が下記式(I)の関係を満たす樹脂(A)と樹脂(B)を用い、下記式(II)(III)の関係を満たす押出温度Tp(℃)で溶融押出して成形することがより好ましく、本発明の積層シートの製造方法の前記P1層形成用組成物の溶融押出を下記式(I)の関係を満たす樹脂(A)及び樹脂(B)を用いて、下記式(II)(III)の関係を満たす押出温度Tp(℃)で溶融押出して成形することで、押出温度Tp(℃)での樹脂(A)と樹脂(B)の溶融粘度比がより小さくなり、本発明の積層シートにおいて前記P1層に含まれる樹脂(A)中に分散する樹脂(B)の分散径を小さくすることが可能となる。
【0068】
0≦TmA−TgB≦20・・・(I)
40≦Tp−TmA≦50 ・・・(II)
50≦Tp−TgB≦60 ・・・(III)
前記の方法によってダイから吐出した積層シートを、キャスティングドラム等の冷却体上に押出、冷却固化することにより、本発明の積層シートを得ることができる。この際、ワイヤー状、テープ状、針状あるいはナイフ状等の電極を用いて、静電気力によりキャスティングドラム等の冷却体に密着させ、急冷固化させることが好ましい。
【0069】
前記の製造方法で得られた、本発明の積層シートを本発明の効果が損なわれない範囲で、必要に応じて熱処理などの加工処理を加えてもよい。熱処理の方法としては、樹脂(A)の結晶化温度TccA(℃)+30℃以上、より好ましくは+50℃以上、更に好ましくは+70℃以上で、かつ樹脂(A)の融点TmA(℃)−40℃以下の温度に設定した熱風オーブンで、本発明の積層シートを必要に応じて金枠に固定、または一部を金枠に固定し、0.5分〜30分程度熱処理する方法が好ましい。本発明の積層シートを加工処理することで、シートの熱寸法安定性を向上することができる。
【0070】
本発明の積層シートは前記の製造方法によって製造することができる。得られた積層シートは優れた電気絶縁性、耐紫外線性(伸度劣化の抑制性)、難燃性を有するものである。本発明の積層シートはその特長を生かして銅貼り積層板、太陽電池バックシート、粘着テープ、フレキシブルプリント基板、メンブレンスイッチ、面状発熱体、もしくはフラットケーブルなどの電気絶縁材料、コンデンサ用材料、自動車用材料、建築材料を初めとした電気絶縁性、難燃性が重視され、紫外線に長期間曝されるような用途に好適に使用することができる。
【実施例】
【0071】
[特性の評価方法]
(1)ガラス転移点温度TgA(TgB)、融点TmA(TmB)、結晶化温度TccA
JIS K7122(1987)に準じて、セイコー電子工業(株)製示差走査熱量測定装置”ロボットDSC−RDC220”を、データ解析にはディスクセッション”SSC/5200”を用い、樹脂(A)及び樹脂(B)のガラス転移点温度TgA(TgB)、融点TmA(TmB)、結晶化温度TccAを測定した。測定は、樹脂(A)あるいは樹脂(B)をサンプルパンに5mg秤量し、20℃/分の昇温速度で樹脂を25℃から350℃まで加熱(1stRUN)し、その状態で5分間保持し、次いで25℃以下まで急冷し、再度25℃から20℃/分の昇温速度で350℃まで加熱(2ndRUN)を行い得られた示差走査熱量測定チャートの2ndRunのガラス転移点における変曲点での接線とベースラインの交点の温度をガラス転移点温度TgA(TgB)、結晶化ピークにおけるピークトップの温度を結晶化温度TccA、結晶融解ピークにおけるピークトップの温度を融点TmA(TmB)とした。
【0072】
(2)電界放射走査型電子顕微鏡(SEM)による断面観察
試料を必要に応じて染色した後、ミクロトームを用いて、シート断面を厚み方向に潰すことなく、薄膜切片状の観察サンプルを作製した。次に、得られた断面薄膜切片を、電界放射走査型電子顕微鏡(SEM)(日本電子(株)電界放射走査型電子顕微鏡“JSM−6700F”)を用いて拡大観察を行った。
【0073】
(3)部分放電電圧
菊水電子(株)製部分放電電圧試験装置“KPD2050”を用いて、下記の条件で50mm×50mmの大きさに切り出した、シートの部分放電電圧試験をn=5で行った。尚、前記試験で求められた消滅電圧(V)を部分放電電圧(V)とした。
最大電圧:1.6KV
周波数:50Hz
試験時間:22.0s
テストパターン:Ramp(昇圧10.0s、最大電圧保持2.0s、降圧10.0s)
パルス検出方法・レベル:+50%
消滅電圧測定電荷:50pC
得られた部分放電電圧について以下のように判定を行った。
部分放電電圧が900V以上の場合:S
部分放電電圧が850V以上900V未満の場合:A
部分放電電圧が800V以上850V未満の場合:B
部分放電電圧が750V以上800V未満の場合:C
部分放電電圧が700V以上750V未満の場合:D
部分放電電圧が700V未満の場合:E
電気絶縁性はS〜Dが良好であり、その中でSが最も優れている。
【0074】
(4)耐紫外線性(伸度劣化の抑制性)
(4−1)紫外線照射前の破断伸度
ASTM−D882(1999)に基づいて、シートを1cm×20cmの大きさに切り出し、チャック間1cm、引っ張り速度300mm/minにて引っ張ったときの破断伸度を測定した。なお、サンプル数はn=5とし、また、フィルムの縦方向、横方向のそれぞれについて測定した後、それらの平均値として求めた。
(4−2)紫外線照射後の破断伸度
シートを岩崎電気(株)製アイスーパー紫外線テスターS−W131にて、温度60℃、相対湿度60%、照度100mW/cm(光源:メタルハライドランプ、波長範囲:295〜450nm、ピーク波長:365nm)の条件下で96時間照射し、その後前記(4)項に従って破断伸度を測定した。なお、測定はn=5とし、フィルムの縦方向、横方向のそれぞれについて測定した後、その平均値を紫外線照射後の破断伸度とした。
(4−3)耐紫外線性(伸度劣化の抑制性)の判定
得られた結果について以下のように判定を行った。
紫外線照射後の破断伸度が照射前の150%以上の場合:A
紫外線照射後の破断伸度が照射前の100%以上150%未満の場合:B
紫外線照射後の破断伸度が照射前の50%以上100%未満の場合:C
紫外線照射後の破断伸度が照射前の10%以上50%未満の場合:D
紫外線照射後の破断伸度が照射前の10%未満の場合:E
耐紫外線性(伸度劣化の抑制性)はA〜Dが良好であり、その中で最もAが優れている。
【0075】
(5)耐紫外線性(色調変化の抑制性)
(5−1)紫外線照射前の色調(b値)
JIS−Z−8722(2000)に基づき、分光式色差計(日本電色工業製SE−2000、光源 ハロゲンランプ 12V4A、0°〜−45°後分光方式)を用いて反射法によりシートの色調(b値)をn=3で測定した。
(5−2)紫外線照射後の色調変化(Δb)
シートを岩崎電気(株)製アイスーパー紫外線テスターS−W131にて、温度60℃、相対湿度60%、照度100mW/cm(光源:メタルハライドランプ、波長範囲:295〜450nm、ピーク波長:365nm)の条件下で96時間照射した前後の色調(b値)を前記(5−1)項に従い測定し、次の(α)式より紫外線照射後の色調変化(Δb)を算出した。
紫外線照射後の色調変化(Δb)=b1−b0 (α)式
b0:紫外線照射前の色調(b値)
b1:紫外線照射後の色調(b値)
(5−3)耐紫外線性(色調変化の抑制性)の判定
得られた紫外線照射後の色調変化(Δb)について、以下のように判定を行った。
紫外線照射後の色調変化(Δb)が0.5未満の場合:A
紫外線照射後の色調変化(Δb)が0.5以上1未満の場合:B
紫外線照射後の色調変化(Δb)が1以上5未満の場合:C
紫外線照射後の色調変化(Δb)が5以上の場合:E
耐紫外線性(色調変化の抑制性)はA〜Cが良好であり、その中で最もAが優れている。
【0076】
(6)熱収縮率
JIS−C2318(1966)に規定された方法に従って、幅10mm、標線間隙約100mmに切り出したシートを、温度150℃、荷重0.5gで30分間熱処理した。その熱処理前後の標線間隙をn=3で測定し、次の(β)式より熱収縮率の絶対値を算出した。
熱収縮率の絶対値(%)=|(L0―L1)/L0×100| (β)式
L0:加熱処理前の標線間隙
L1:加熱処理後の標線間隙
得られた熱収縮率について、長手方向、幅方向の平均値を算出し以下のように判定を行った。
熱収縮率の絶対値が0.5%未満の場合:A
熱収縮率の絶対値が0.5%以上0.8%未満の場合:B
熱収縮率の絶対値が0.8%以上1.0%未満の場合:C
熱収縮率の絶対値が1.0%以上1.5%未満の場合:D
熱収縮率の絶対値1.5%以上の場合:E
熱寸法安定性はA〜Dが良好であり、その中でもAが最も優れている。
【0077】
(7)難燃性試験
UL94HB試験に基づいて、シートを0.5インチ×6インチ(12.7mm×152.4mm)の大きさに切り出し、水平に保持して燃焼試験をn=3で行った時の4インチ(101.6mm)の標線間での燃焼速度で以下のように判定を行った。
燃焼速度が75mm/分未満の場合:A
燃焼速度が75mm/分以上100mm/分未満の場合:B
燃焼速度が100mm/分以上150mm/分未満の場合:C
燃焼速度が150mm/分以上200mm/分未満の場合:D
燃焼速度が200mm/分以上の場合:E
難燃性はA〜Dが良好であり、その中でAが最も優れている。
【0078】
(8)分光反射率
分光光度計U−3410(日立製作所(株)製)を用いて、波長450〜700nmの範囲の分光反射率を10nm間隔で測定し、その平均値を平均分光反射率とした。サンプル数はn=5とし、それぞれの平均分光反射率を測定して、その平均値を算出した。測定ユニットはφ60mmの積分球(型番130−0632)を使用し、10°傾斜スペーサーを取り付けた。また、標準白色板には酸化アルミニウム(型番210−0740)を使用した。
【0079】
得られた平均分光反射率について、以下のように判定した。
平均分光反射率が90%以上の場合:A
平均分光反射率が80%以上90%未満の場合:B
平均分光反射率が80%未満の場合:E
反射性はA、Bが良好であり、その中でもAが最も優れている。
【0080】
以下、本発明について実施例を挙げて説明するが、本発明は必ずしもこれらに限定されるものではない。
【0081】
(実施例1)
樹脂(A)としてナイロン6樹脂“アミラン”(登録商標)CM1041−LO(東レ(株)製、TmA225℃)、樹脂(B)としてポリフェニレンエーテル樹脂“ノリル”(登録商標)PPO640(SABICイノベーティブプラスチック製、TgB215℃)を用いて、前記樹脂(A)100質量部と前記樹脂(B)100質量部を減圧した280℃のベント式二軸押出機内で溶融混練し、溶融押出してストランド状に吐出し、温度25℃の水で冷却した後、直ちにカッティングして混合原料A(ナイロン6/ポリフェニレンエーテル=50/50(質量比))を作製した。
【0082】
次いで、P1層形成用組成物として、得られた混合原料Aを90℃で5時間減圧乾燥し、100質量部を280℃の押出機1で、P2層形成用樹脂組成物として前記樹脂(A)を260℃の押出機2でそれぞれ溶融混練し、溶融共押出法にてP2層/P1層/P2層なる積層構造を有し、厚み比が1/6/1となるように押出機1及び2の吐出量を調整した溶融シートをTダイから押し出し、25℃に保った冷却ドラムに静電印加密着してキャストし、厚み300μmの積層シートを得た。
得られた積層シートについて、電界放射走査型電子顕微鏡(SEM)による断面観察を行った結果、樹脂(A)が連続相である相分離構造を有することがわかった。
【0083】
また、得られた積層シートについて、部分放電電圧試験、紫外線照射後の破断伸度、難燃性試験の各評価を行った。その結果、表1に示す通り、非常に優れた電気絶縁性(部分放電電圧)、優れた耐紫外線性(伸度劣化の抑制性)、良好な難燃性を有することがわかった。
【0084】
また、得られた積層シートについて熱収縮率の評価を行ったところ、非常に優れた熱寸法安定性を有することがわかった。
【0085】
(実施例2)
P2層の主たる成分の樹脂(A)としてナイロン610樹脂“アミラン”(登録商標)CM2021(東レ(株)製、TmA220℃)を用いたこと以外は実施例1と同様に積層シートを得た。
得られた積層シートについて、実施例1と同様に断面観察を行った結果、樹脂(A)が連続相である相分離構造を有することがわかった。
【0086】
また、得られた積層シートについて、実施例1と同様の評価を行った。その結果、表1に示す通り、非常に優れた電気絶縁性(部分放電電圧)、優れた耐紫外線性(伸度劣化の抑制性)、良好な難燃性を有することがわかった。
【0087】
また、得られた積層シートについて実施例1と同様に熱収縮率の評価を行ったところ、非常に優れた熱寸法安定性を有することがわかった。
【0088】
(実施例3〜6)
P1層形成用組成物として、実施例1で用いた混合原料Aを樹脂(A)と樹脂(B)の質量比WA1:Wが表1の通りとなるように、樹脂(A)で希釈して用いた以外は、実施例1と同様に積層シートを得た。
【0089】
得られた積層シートについて、実施例1と同様に断面観察を行った結果、樹脂(A)が連続相である相分離構造を有することがわかった。
【0090】
また、得られた積層シートについて、実施例1と同様の評価を行った。その結果、表1に示す通り、樹脂(B)の質量比が大きくなるほど、非常に優れた電気絶縁性を有すること、実施例4、5は実施例3、6に比べ非常に優れた耐紫外線性(伸度劣化の抑制性)を有することがわかった。また、最も樹脂(B)の質量比が小さい実施例3は実施例4〜6に比べて電気絶縁性(部分放電電圧)に劣るが問題ない範囲であり、良好な難燃性を有するがことがわかった。
【0091】
また、得られた積層シートについて実施例1と同様に熱収縮率の評価を行ったところ、樹脂(B)の質量比が大きくなるほど、非常に優れた熱寸法安定性を有することがわかった。
【0092】
(実施例7)
樹脂(A)100質量部と樹脂(B)122質量部を減圧した280℃のベント式二軸押出機内で溶融混練し、溶融押出してストランド状に吐出し、温度25℃の水で冷却した後、直ちにカッティングして混合原料B(N6/ポリフェニレンエーテル樹脂=45/55(質量比))を作製した以外は、実施例1と同様に積層シートを得た。
【0093】
得られた積層シートについて、実施例1と同様に断面観察を行った結果、樹脂(A)が連続相である相分離構造を有することがわかった。
【0094】
また、得られた積層シートについて、実施例1と同様の評価を行った。その結果、表1に示す通り、非常に優れた電気絶縁性(部分放電電圧)、良好な耐紫外線性(伸度劣化の抑制性)、難燃性を有することがわかった。
【0095】
また、得られた積層シートについて実施例1と同様に熱収縮率の評価を行ったところ、非常に優れた熱寸法安定性を有することがわかった。
【0096】
(実施例8〜10)
表1の通り、押出機1の温度(℃)を変更した以外は実施例1と同様に積層シートを得た。
【0097】
得られた積層シートについて、実施例1と同様に断面観察を行った結果、樹脂(A)が連続相である相分離構造を有することがわかった。
【0098】
また、得られた積層シートについて、実施例1と同様の評価を行った。その結果、表1に示す通り、押出機1の温度(℃)をそれぞれ275℃、265℃とした実施例8、9は実施例1に比べて非常に優れた耐紫外線性(伸度劣化の抑制性)を有することがわかった。
【0099】
また、得られた積層シートについて実施例1と同様に熱収縮率の評価を行ったところ、押出機1の温度(℃)を変更しても、実施例1と同等の非常に優れた熱寸法安定性を有することがわかった。
【0100】
【表1】
【0101】
(実施例11)
P1層に成分(C)として、ポリプロピレン樹脂“プライムポリプロ”(登録商標)F−300SP((株)プライムポリマー製)をP1層の総質量に対して5質量%含む樹脂層とした以外は実施例1と同様に積層シートを得た。尚、P1層に含まれる樹脂(B)の含有量Mと成分(C)の含有量Mは下記式(X)を満たす関係である。
≦−0.14M+30.5 ・・・(X)
得られた積層シートについて、実施例1と同様に断面観察を行った結果、樹脂(A)が連続相である相分離構造を有することがわかった。
【0102】
また、得られた積層シートについて、実施例1と同様の評価を行った。その結果、表2に示す通り、非常に優れた電気絶縁性(部分放電電圧)、優れた耐紫外線性(伸度劣化の抑制性)、良好な難燃性を有することがわかった。
【0103】
また、得られた積層シートについて実施例1と同様に熱収縮率の評価を行ったところ、非常に優れた熱寸法安定性を有することがわかった。
【0104】
(実施例12〜14)
P1層に含まれる成分(C)の含有量を表1の通りとなるように調整した以外は、実施例11と同様に積層シートを得た。尚、実施例12、13については、P1層に含まれる樹脂(B)の含有量Mと成分(C)の含有量Mは下記式(X)を満たす関係である。
≦−0.14M+30.5 ・・・(X)
得られた積層シートについて、実施例1と同様に断面観察を行った結果、樹脂(A)が連続相である相分離構造を有することがわかった。
【0105】
また、得られた積層シートについて、実施例1と同様の評価を行った。その結果、表2に示す通り、実施例11に比べて、更に優れた電気絶縁性を有することがわかった。また、実施例13、14は実施例12に比べて耐紫外線性(伸度劣化の抑制性)に劣るが問題ない範囲であった。
【0106】
また、得られた積層シートについて実施例1と同様に熱収縮率の評価を行ったところ、非常に優れた熱寸法安定性を有することがわかった。
【0107】
(実施例15)
P1層に用いた樹脂(A)樹脂100質量部と、平均粒子径200nmのルチル型二酸化チタン粒子43質量部を、減圧した260℃のベント式二軸押出機内で溶融混練し、酸化チタン原料(MB−TiO(30質量%))を作製し、P2層形成用樹脂組成物として該酸化チタン原料(MB−TiO(30質量%))100質量部と前記樹脂(A)114質量部を用いて、表2の通り、P2層に二酸化チタン粒子をP2層の総質量に対して14質量%含む樹脂層とした以外は実施例1と同様に積層シートを得た。
【0108】
得られた積層シートについて、実施例1と同様の評価を行った。その結果、表2に示す通り、非常に優れた電気絶縁性(部分放電電圧)、優れた耐紫外線性(伸度劣化の抑制性)、良好な難燃性を有することがわかった。
【0109】
また、得られた積層シートについて紫外線照射前後の色調変化、熱収縮率、分光反射率の各評価を行ったところ、非常に優れた耐紫外線性(色調変化の抑制性)、熱寸法安定性(熱収縮率)、反射性(分光反射率)を有することがわかった。
【0110】
(実施例16)
P2層/P1層/P2層の厚み比を1/12/1とした以外は実施例15と同様に積層シート得た。
【0111】
得られた積層シートについて、実施例1と同様の評価を行った。その結果、表2に示す通り非常に優れた電気絶縁性(部分放電電圧)、優れた耐紫外線性(伸度劣化の抑制性)を有することがわかった。また、実施例15に比べて難燃性が劣るが問題ない範囲であった。
【0112】
また、得られた積層シートについて実施例15と同様の評価を行ったところ、非常に優れた熱寸法安定性(熱収縮率)、優れた耐紫外線性(色調変化の抑制性)、反射性(分光反射率)を有することがわかった。
【0113】
(実施例17)
積層構成をP1層/P2層とした以外は実施例15と同様に積層シートを得た。
【0114】
得られた積層シートについて、実施例1と同様の評価を行った。その結果、表2に示す通り非常に優れた電気絶縁性(部分放電電圧)、優れた耐紫外線性(伸度劣化の抑制性)を有することがわかった。また、実施例15に比べて難燃性が劣るが問題ない範囲であった。
【0115】
また、得られた積層シートについて実施例15と同様の評価を行ったところ、非常に優れた耐紫外線性(色調変化の抑制性)、熱寸法安定性(熱収縮率)、反射性(分光反射率)を有することがわかった。
【0116】
(実施例18)
P2層に含まれる二酸化チタン粒子濃度をP2層に対して4質量%とした以外は実施例15と同様に積層シートを得た。
【0117】
得られた積層シートについて、実施例1と同様の評価を行った。その結果、表2に示す通り非常に優れた電気絶縁性(部分放電電圧)、優れた耐紫外線性(伸度劣化の抑制性)、良好な難燃性を有することがわかった。
【0118】
また、得られた積層シートについて実施例15と同様の評価を行ったところ、非常に優れた熱寸法安定性(熱収縮率)、優れた反射性(分光反射率)、良好な耐紫外線性(色調変化の抑制性)を有することがわかった。
【0119】
(実施例19)
P2層に含まれる粒子として硫酸バリウム粒子を用いた以外は実施例15と同様に積層シートを得た。
【0120】
得られた積層シートについて、実施例1と同様の評価を行った。その結果、表2に示す通り非常に優れた電気絶縁性(部分放電電圧)、優れた耐紫外線性(伸度劣化の抑制性)、良好な難燃性を有することがわかった。
【0121】
また、得られた積層シートについて実施例15と同様の評価を行ったところ、非常に優れた熱寸法安定性(熱収縮率)、反射性(分光反射率)、優れた耐紫外線性(色調変化の抑制性)を有することがわかった。
【0122】
(実施例20)
P1層に用いた樹脂(A)樹脂100質量部と、カーボンブラック粒子25質量部を、減圧した260℃のベント式二軸押出機内で溶融混練し、カーボンブラック原料(MB−CB(20質量%))を作製し、P2層形成用樹脂組成物として該カーボンブラック原料(MB−CB(20質量%))100質量部と前記樹脂(A)900質量部を用いて、表2の通り、P2層にカーボンブラック粒子をP2層の総質量に対して2質量%含む樹脂層とした以外は実施例15と同様に積層シートを得た。
【0123】
得られた積層シートについて、実施例1と同様の評価を行った。その結果、表2に示す通り非常に優れた電気絶縁性(部分放電電圧)、優れた耐紫外線性(伸度劣化の抑制性)、良好な難燃性を有することがわかった。
【0124】
また、得られた積層シートについて実施例15と同様の評価を行ったところ、非常に優れた耐紫外線性(色調変化の抑制性)、熱寸法安定性(熱収縮率)を有することがわかった。
【0125】
(実施例21)
表2の通り、実施例11と同様にP1層に成分(C)として、ポリプロピレン樹脂をP1層の総質量に対して15質量%含む樹脂層とし、押出機1の温度を270℃に変更した以外は、実施例15と同様に積層シートを得た。尚、P1層に含まれる樹脂(B)の含有量Mと成分(C)の含有量Mは下記式(X)を満たす関係である。
≦−0.14M+30.5 ・・・(X)
得られた積層シートについて、実施例1と同様に断面観察を行った結果、樹脂(A)が連続相である相分離構造を有することがわかった。
【0126】
また、得られた積層シートについて、実施例1と同様の評価を行った。その結果、表2に示す通り、更に優れた電気絶縁性(部分放電電圧)、非常に優れた耐紫外線性(伸度劣化の抑制性)、良好な難燃性を有することがわかった。
【0127】
また、得られた積層シートについて実施例15と同様の評価を行ったところ、非常に優れた熱寸法安定性(熱収縮率)、耐紫外線性(色調変化の抑制性)、反射性(分光反射率)を有することがわかった。
【0128】
【表2-1】
【0129】
【表2-2】
【0130】
(実施例22)
表3の通り、樹脂(A)としてナイロン66樹脂“アミラン”(登録商標)CM3001(東レ(株)製、TmA255℃)を用い、P1層形成用組成物を300℃の押出機1で、P2層形成用樹脂組成物として前記樹脂(A)を280℃の押出機2でそれぞれ溶融混練して製造した以外は、実施例1と同様に積層シートを得た。
【0131】
得られた積層シートについて、実施例1と同様に断面観察を行った結果、樹脂(A)が連続相である相分離構造を有することがわかった。
【0132】
また、得られた積層シートについて、実施例1と同様の評価を行った。その結果、表3に示す通り、非常に優れた電気絶縁性(部分放電電圧)、優れた耐紫外線性(伸度劣化の抑制性)、良好な難燃性を有することがわかった。
【0133】
また、得られた積層シートについて実施例1と同様に熱収縮率の評価を行ったところ、非常に優れた熱寸法安定性を有することがわかった。
【0134】
(実施例23)
表3の通り、樹脂(A)としてナイロン610樹脂“アミラン”(登録商標)CM2021(東レ(株)製、TmA220℃)を用い、P1層形成用組成物を270℃の押出機1で、P2層形成用樹脂組成物として前記樹脂(A)を260℃の押出機2でそれぞれ溶融混練した以外は、実施例1と同様に積層シートを得た。
【0135】
得られた積層シートについて、実施例1と同様に断面観察を行った結果、樹脂(A)が連続相である相分離構造を有することがわかった。
【0136】
また、得られた積層シートについて、実施例1と同様の評価を行った。その結果、表3に示す通り、非常に優れた電気絶縁性(部分放電電圧)、優れた耐紫外線性(伸度劣化の抑制性)、難燃性を有することがわかった。
【0137】
また、得られた積層シートについて実施例1と同様に熱収縮率の評価を行ったところ、非常に優れた熱寸法安定性を有することがわかった。
【0138】
(実施例24)
樹脂(A)としてナイロン11樹脂“リルサン”(登録商標)PA11(アルケマ製、TmA187℃)、樹脂(B)として変性ポリフェニレンエーテル樹脂“ノリル”(登録商標)PPO SA120(SABICイノベーティブプラスチック製、TgB165℃)を用いて、前記樹脂(A)100質量部と前記樹脂(B)100質量部を減圧した235℃のベント式二軸押出機内で溶融混練し、溶融押出してストランド状に吐出し、温度25℃の水で冷却した後、直ちにカッティングして混合原料C(ナイロン11/変性ポリフェニレンエーテル=50/50(質量比))を作製した。
【0139】
次いで、P1層形成用組成物として、得られた混合原料Cを90℃で5時間減圧乾燥し、100質量部を235℃の押出機1で、P2層形成用樹脂組成物として前記樹脂(A)を230℃の押出機2でそれぞれ溶融混練した以外は、実施例1と同様に積層シートを得た。
【0140】
得られた積層シートについて、実施例1と同様に断面観察を行った結果、樹脂(A)が連続相である相分離構造を有することがわかった。
【0141】
また、得られた積層シートについて、実施例1と同様の評価を行った。その結果、表3に示す通り、実施例1に比べ、更に優れた電気絶縁性(部分放電電圧)を有し、良好な耐紫外線性(伸度劣化の抑制性)、難燃性を有することがわかった。
【0142】
また、得られた積層シートについて実施例1と同様に熱収縮率の評価を行ったところ、優れた熱寸法安定性を有することがわかった。
【0143】
(実施例25、26)
P1層形成用組成物として、実施例24で用いた混合原料Cを樹脂(A)と樹脂(B)の質量比が表3の通りとなるように、樹脂(A)で希釈して用いた以外は、実施例19と同様に積層シートを得た。
【0144】
得られた積層シートについて、実施例1と同様に断面観察を行った結果、樹脂(A)が連続相である相分離構造を有することがわかった。
【0145】
また、得られた積層シートについて、実施例1と同様の評価を行った。その結果、表3に示す通り、樹脂(B)の質量比が最も小さい実施例20は、実施例24に比べて優れた難燃性を有することがわかった。また、実施例25、26は実施例24に比べて耐紫外線性(伸度劣化の抑制性)に劣るが問題ない範囲であった。
【0146】
また、得られた積層シートについて実施例1と同様に熱収縮率の評価を行ったところ、樹脂(B)の質量比が大きくなるほど、優れた熱寸法安定性を有することがわかった。
【0147】
(実施例27)
樹脂(A)としてナイロン12樹脂“UBESTA”(登録商標)3030XA(宇部興産(株)製、TmA176℃)を用い、P1層形成用組成物を230℃の押出機1で、P2層形成用樹脂組成物として前記樹脂(A)を220℃の押出機2でそれぞれ溶融混練した以外は、実施例1と同様に積層シートを得た。
【0148】
得られた積層シートについて、実施例1と同様に断面観察を行った結果、樹脂(A)が連続相である相分離構造を有することがわかった。
【0149】
また、得られた積層シートについて、実施例1と同様の評価を行った。その結果、表3に示す通り、実施例1に比べ、更に優れた電気絶縁性(部分放電電圧)を有し、良好な耐紫外線性(伸度劣化の抑制性)、難燃性を有することがわかった。
【0150】
また、得られた積層シートについて実施例1と同様に熱収縮率の評価を行ったところ、優れた熱寸法安定性を有することがわかった。
【0151】
(実施例28)
樹脂(B)として変性ポリフェニレンエーテル樹脂“ノリル”(登録商標)PPO SA120(SABICイノベーティブプラスチック製、TgB165℃)を用いた以外は、実施例1と同様に積層シートを得た。
【0152】
得られた積層シートについて、実施例1と同様に断面観察を行った結果、樹脂(A)が連続相である相分離構造を有することがわかった。
【0153】
また、得られた積層シートについて、実施例1と同様に部分放電電圧試験、紫外線照射後の破断伸度、難燃性試験の評価を行った。その結果、表3に示す通り、非常に優れた電気絶縁性(部分放電電圧)、良好な耐紫外線性(伸度劣化の抑制性)有することがわかった。また、実施例1に比べて、難燃性は劣るが問題ない範囲であった。
【0154】
また、得られた積層シートについて実施例1と同様に熱収縮率の評価を行ったところ、優れた熱寸法安定性を有することがわかった。
【0155】
(実施例29)
樹脂(B)としてポリエーテルイミド樹脂“ウルテム”(登録商標)1000(SABICイノベーティブプラスチック製、TgB217℃)を用いた以外は、実施例1と同様に積層シートを得た。
【0156】
得られた積層シートについて、実施例1と同様に断面観察を行った結果、樹脂(A)が連続相である相分離構造を有することがわかった。
【0157】
また、得られた積層シートについて、実施例1と同様の評価を行った。その結果、表3に示す通り、非常に優れた電気絶縁性(部分放電電圧)、難燃性、良好な耐紫外線性(伸度劣化の抑制性)を有することがわかった。
【0158】
また、得られた積層シートについて実施例1と同様に熱収縮率の評価を行ったところ、非常に優れた熱寸法安定性を有することがわかった。
【0159】
(実施例30)
樹脂(B)としてポリアリレート樹脂“Uポリマー”(登録商標)U−100(ユニチカ(株)製、TgB193℃)を用いた以外は、実施例1と同様に積層シートを得た。
【0160】
得られた積層シートについて、実施例1と同様に断面観察を行った結果、樹脂(A)が連続相である相分離構造を有することがわかった。
【0161】
また、得られた積層シートについて、実施例1と同様の評価を行った。その結果、表3に示す通り、非常に優れた電気絶縁性(部分放電電圧)、難燃性、優れた耐紫外線性(伸度劣化の抑制性)を有することがわかった。
【0162】
また、得られた積層シートについて実施例1と同様に熱収縮率の評価を行ったところ、優れた熱寸法安定性を有することがわかった。
【0163】
(実施例31)
樹脂(B)としてポリスルホン樹脂“ユーデル”(登録商標)P1700(ソルベイアドバンストポリマーズ製、TgB185℃)を用いた以外は、実施例1と同様に積層シートを得た。
【0164】
得られた積層シートについて、実施例1と同様に断面観察を行った結果、樹脂(A)が連続相である相分離構造を有することがわかった。
【0165】
また、得られた積層シートについて、実施例1と同様の評価を行った。その結果、表3に示す通り、非常に優れた電気絶縁性(部分放電電圧)、良好な耐紫外線性(伸度劣化の抑制性)、難燃性を有することがわかった。
【0166】
また、得られた積層シートについて実施例1と同様に熱収縮率の評価を行ったところ、良好な熱寸法安定性を有することがわかった。
【0167】
(実施例32)
樹脂(B)としてポリエーテルスルホン樹脂“レーデルA”(登録商標)A300(ソルベイアドバンストポリマーズ製、TgB220℃)を用いた以外は、実施例1と同様に積層シートを得た。
【0168】
得られた積層シートについて、実施例1と同様に断面観察を行った結果、樹脂(A)が連続相である相分離構造を有することがわかった。
【0169】
また、得られた積層シートについて、実施例1と同様の評価を行った。その結果、表3に示す通り、非常に優れた電気絶縁性(部分放電電圧)、良好な耐紫外線性(伸度劣化の抑制性)、難燃性を有することがわかった。
【0170】
また、得られた積層シートについて実施例1と同様に熱収縮率の評価を行ったところ、優れた熱寸法安定性を有することがわかった。
【0171】
(実施例33)
P2層形成用樹脂組成物として実施例1で作製した混合原料A(ナイロン6/ポリフェニレンエーテル=50/50(質量比))2質量部と同様に実施例1で用いた樹脂(A)100質量部を用いて、表3の通り、P2層に含まれる樹脂(A)と樹脂(B)の質量比を98:2とした以外は実施例7と同様に積層シートを得た。
【0172】
得られた積層シートについて、実施例1と同様に断面観察を行った結果、樹脂(A)が連続相である相分離構造を有することがわかった。
【0173】
また、得られた積層シートについて、実施例1と同様の評価を行った。その結果、表3に示す通り非常に優れた電気絶縁性(部分放電電圧)、良好な耐紫外線性(伸度劣化の抑制性)を有することがわかった。また、実施例7に比べて難燃性が劣るが問題ない範囲であった。
【0174】
また、得られた積層シートについて実施例1と同様に熱収縮率の評価を行ったところ、非常に優れた熱寸法安定性を有することがわかった。
【0175】
【表3】
【0176】
(比較例1)
P2層が設けられていないこと以外は、実施例3と同様にシートを得た。
【0177】
得られたシートについて、実施例1と同様の評価を行った。その結果、表4に示す通り、耐紫外線性(伸度劣化の抑制性)が劣ることがわかった。
【0178】
(比較例2)
P2層が設けられていないこと以外は、実施例1と同様にシートを得た。
【0179】
得られたシートについて、実施例1と同様に部分放電電圧試験、紫外線照射後の破断伸度、難燃性試験の評価を行った。その結果、表4に示す通り、非常に優れた電気絶縁性(部分放電電圧)、耐紫外線性(伸度劣化の抑制性)を有するが、難燃性が劣ることがわかった。
【0180】
(比較例3)
P2層が設けられていないこと以外は、実施例7と同様にシートを得た。
【0181】
得られたシートについて、実施例1と同様の評価を行った。その結果、表4に示す通り、非常に優れた耐紫外線性(伸度劣化の抑制性)、優れた電気絶縁性(部分放電電圧)を有するが、難燃性が劣ることがわかった。
【0182】
(比較例4)
P1層形成用組成物として、実施例1で用いた混合原料Aを樹脂(A)と樹脂(B)の質量比が96:4となるように、樹脂(A)で希釈して用いた以外は、実施例1と同様に積層シートを得た。
【0183】
得られたシートについて、実施例1と同様の評価を行った。その結果、表4に示す通り、優れた難燃性を有するが、電気絶縁性(部分放電電圧)が劣ることがわかった。
【0184】
(比較例5)
樹脂(A)100質量部と樹脂(B)127質量部を減圧した280℃のベント式二軸押出機内で溶融混練し、溶融押出してストランド状に吐出し、温度25℃の水で冷却した後、直ちにカッティングして混合原料D(N6/ポリフェニレンエーテル樹脂=44/56(質量比))を作製した以外は、実施例1と同様に積層シートを得た。
【0185】
得られた積層シートについて、実施例1と同様に断面観察を行った結果、樹脂(B)が連続相である相分離構造を有することがわかった。
【0186】
得られたシートについて、実施例1と同様の評価を行った。その結果、表4に示す通り、非常に優れた電気絶縁性(部分放電電圧)、良好な難燃性を有するが、耐紫外線性(伸度劣化の抑制性)が劣ることがわかった。
【0187】
【表4】
【産業上の利用可能性】
【0188】
本発明の積層シートは銅貼り積層板、太陽電池バックシート、粘着テープ、フレキシブルプリント基板、メンブレンスイッチ、面状発熱体、もしくはフラットケーブルなどの電気絶縁材料、コンデンサ用材料、自動車用材料、建築材料を初めとした電気絶縁性や難燃性が重視され、紫外線に長期間曝されるような用途に好適に使用することができる。