特許第5904163号(P5904163)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5904163
(24)【登録日】2016年3月25日
(45)【発行日】2016年4月13日
(54)【発明の名称】接続検出装置及び車載中継装置
(51)【国際特許分類】
   H04L 12/28 20060101AFI20160331BHJP
【FI】
   H04L12/28 200M
【請求項の数】6
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-128812(P2013-128812)
(22)【出願日】2013年6月19日
(65)【公開番号】特開2015-5829(P2015-5829A)
(43)【公開日】2015年1月8日
【審査請求日】2015年5月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】足立 直樹
【審査官】 大石 博見
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−181431(JP,A)
【文献】 特開2011−135520(JP,A)
【文献】 特開2010−231407(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 12/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の車載通信装置が通信を行う一又は複数の通信線に接続され、該通信線にて送受信される信号の波形情報を取得する波形情報取得部と、
所定の信号に係る波形情報を記憶する波形情報記憶部と、
前記波形情報取得部が取得した波形情報、及び、前記波形情報記憶部が記憶した所定の信号に係る波形情報を比較し、比較結果に応じて前記通信線に対する装置の接続を検出する接続検出部と
を備え
前記波形情報取得部は、前記通信線に生じたリンギング波形に係る波形情報を取得し、
前記波形情報記憶部は、所定のリンギング波形に係る波形情報を記憶し、
前記接続検出部は、前記波形情報取得部が取得したリンギング波形に係る波形情報、及び、前記波形情報記憶部が記憶した所定のリンギング波形に係る波形情報の比較結果に応じて、前記通信線に対する装置の接続を検出するようにしてあること
を特徴とする接続検出装置。
【請求項2】
前記波形情報は、リンギング波形の振幅又は収束時間であることを特徴とする請求項に記載の接続検出装置。
【請求項3】
前記通信線に接続された車載通信装置へ信号の送信を要求する信号送信要求部を備え、
前記波形情報取得部は、前記信号送信要求部による要求に応じて複数の車載通信装置が信号を送信した際に生じたリンギング波形に係る波形情報を取得するようにしてあること
を特徴とする請求項1又は請求項に記載の接続検出装置。
【請求項4】
複数の通信線に接続され、
複数の通信線間の通信を中継する通信中継部を備え、
前記接続検出部は、通信線毎に装置の接続を検出するようにしてあり、
前記通信中継部は、前記接続検出部が装置の接続を検出した通信線に関する通信の中継を行わないようにしてあること
を特徴とする請求項1乃至請求項のいずれか1つに記載の接続検出装置。
【請求項5】
前記接続検出部が装置の接続を検出した場合に、通知を行う通知部を備えること
を特徴とする請求項1乃至請求項のいずれか1つに記載の接続検出装置。
【請求項6】
複数の車載通信装置がそれぞれ通信を行う複数の通信線に接続され、複数の通信線間の通信を中継する通信中継部と、
各通信線にて送受信される信号の波形情報をそれぞれ取得する波形情報取得部と、
所定の信号に係る波形情報を通信線毎に記憶する波形情報記憶部と、
前記波形情報取得部が取得した波形情報、及び、前記波形情報記憶部が記憶した所定の信号に係る波形情報を比較し、比較結果に応じて各通信線に対する装置の接続を検出する接続検出部と
を備え
前記波形情報取得部は、前記通信線に生じたリンギング波形に係る波形情報を取得し、
前記波形情報記憶部は、所定のリンギング波形に係る波形情報を記憶し、
前記接続検出部は、前記波形情報取得部が取得したリンギング波形に係る波形情報、及び、前記波形情報記憶部が記憶した所定のリンギング波形に係る波形情報の比較結果に応じて、前記通信線に対する装置の接続を検出するようにしてあること
を特徴とする車載中継装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車輌に搭載された複数の車載通信装置が通信線を介して通信を行うシステムにおいて、通信線に対する不正な装置の接続を検出する接続検出装置及び車載中継装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、検出用アンテナから送信する電波の進行電力及び受信した反射波の反射電力を基に、電波のリターンロス値を算出し、予め記憶したリターンロス値の波形と新たに測定して算出したリターンロス値の波形とを比較することによって、車載器の不正の有無を検出する方法が記載されている。
【0003】
また特許文献2には、通信バスの通信状態を監視すると共に、通信バスの通信状態に異常が発生したときの過去の通信状態に関する異常状態情報を予め記憶しておき、通信バスの監視結果と記憶した異常状態情報とを比較することによって、車載のネットワークにおけるバス負荷増加の原因を特定及び解析する監視装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−255731号公報
【特許文献2】特開2007−96799号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら特許文献1に記載の不正検出方法では、車載器の盗難など、車載器自身に対する不正は検出することができるが、車輌のネットワークに不正な機器が接続されたことを検出することはできない。また特許文献2に記載の監視装置では、異常が発生した場合であっても、予め記憶した過去の異常状態情報に合致しなければ異常を検出することができないという問題がある。
【0006】
近年の車輌に搭載される電子機器は高機能化され、車輌に搭載される電子機器の数も増大している。これにより車輌のネットワークにて送受信される情報も高度化され、例えばユーザの個人情報など秘匿性の高い情報が含まれる。これらの情報の不正な取得を目的として車輌のネットワークに不正な装置が接続された場合、個人情報の漏洩などが発生する。特許文献1及び2に記載の技術では、このような不正な装置がネットワークに接続された場合に対応することはできない。
【0007】
本発明は、斯かる事情に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、車輌のネットワークに対して不正な装置が接続されたことを検出する接続検出装置及び車載中継装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る接続検出装置は、複数の車載通信装置が通信を行う一又は複数の通信線に接続され、該通信線にて送受信される信号の波形情報を取得する波形情報取得部と、所定の信号に係る波形情報を記憶する波形情報記憶部と、前記波形情報取得部が取得した波形情報、及び、前記波形情報記憶部が記憶した所定の信号に係る波形情報を比較し、比較結果に応じて前記通信線に対する装置の接続を検出する接続検出部とを備え、前記波形情報取得部は、前記通信線に生じたリンギング波形に係る波形情報を取得し、前記波形情報記憶部は、所定のリンギング波形に係る波形情報を記憶し、前記接続検出部は、前記波形情報取得部が取得したリンギング波形に係る波形情報、及び、前記波形情報記憶部が記憶した所定のリンギング波形に係る波形情報の比較結果に応じて、前記通信線に対する装置の接続を検出するようにしてあることを特徴とする。
【0011】
また、本発明に係る接続検出装置は、前記波形情報が、リンギング波形の振幅又は収束時間であることを特徴とする。
【0012】
また、本発明に係る接続検出装置は、前記通信線に接続された車載通信装置へ信号の送信を要求する信号送信要求部を備え、前記波形情報取得部は、前記信号送信要求部による要求に応じて複数の車載通信装置が信号を送信した際に生じたリンギング波形に係る波形情報を取得するようにしてあることを特徴とする。
【0013】
また、本発明に係る接続検出装置は、複数の通信線に接続され、複数の通信線間の通信を中継する通信中継部を備え、前記接続検出部は、通信線毎に装置の接続を検出するようにしてあり、前記通信中継部は、前記接続検出部が装置の接続を検出した通信線に関する通信の中継を行わないようにしてあることを特徴とする。
【0014】
また、本発明に係る接続検出装置は、前記接続検出部が装置の接続を検出した場合に、通知を行う通知部を備えることを特徴とする。
【0015】
また、本発明に係る車載中継装置は、複数の車載通信装置がそれぞれ通信を行う複数の通信線に接続され、複数の通信線間の通信を中継する通信中継部と、各通信線にて送受信される信号の波形情報をそれぞれ取得する波形情報取得部と、所定の信号に係る波形情報を通信線毎に記憶する波形情報記憶部と、前記波形情報取得部が取得した波形情報、及び、前記波形情報記憶部が記憶した所定の信号に係る波形情報を比較し、比較結果に応じて各通信線に対する装置の接続を検出する接続検出部とを備え、前記波形情報取得部は、前記通信線に生じたリンギング波形に係る波形情報を取得し、前記波形情報記憶部は、所定のリンギング波形に係る波形情報を記憶し、前記接続検出部は、前記波形情報取得部が取得したリンギング波形に係る波形情報、及び、前記波形情報記憶部が記憶した所定のリンギング波形に係る波形情報の比較結果に応じて、前記通信線に対する装置の接続を検出するようにしてあることを特徴とする。
【0016】
本発明においては、車輌のネットワークを構成する通信線に接続された接続検出装置が、不正な装置の接続を検出する。なお接続検出装置は、車載機器のいずれかにその機能を付与したものであってよい。例えば複数の通信線が接続され、通信線間の通信を中継するゲートウェイなどの車載中継装置に接続検出装置の機能を付与することができる。
接続検出装置は、複数の車載通信装置によって送受信される信号の波形情報を通信線から取得する。また接続検出装置は、所定の信号(例えば不正な装置が接続されていない状態などで送受信される信号)に係る波形情報を予め記憶している。接続検出装置は、通信線から取得した波形情報と、記憶した波形情報とを比較し、この比較結果に応じて不正な装置の接続を検出する。
ネットワークの通信線に新たな装置を接続した場合、通信路のインピーダンスなどの電気的特性が変化し、通信線を送受信される信号の波形に歪みなどの変化が生じる。そこで接続検出装置は、通信線上の信号波形を定期的に監視し、正常時の信号波形と比較することによって、不正な装置を検出することができる。
【0017】
また、本発明においては、接続検出装置が例えば周期的に、複数回に亘って波形情報を取得し、複数の波形を重ね合わせたアイパターンを生成する。また接続検出装置は、所定の信号に基づいて生成されたマスクを記憶している。マスクは、例えば正常時の信号波形及び許容される波形変化等を規定する閾値の集合などとすることができる。接続検出装置は、生成したアイパターンとマスクとを比較し、比較結果に基づきアイパターンが正常波形から逸脱していると判断できる場合に異常波形と認識し、通信線に装置が接続されたことを検出する。これにより接続検出装置は、不正な装置の接続を精度よく検出することができる。
【0018】
また、本発明においては、通信に係る信号と共に通信線に生じたリンギング波形に係る波形情報を接続検出装置が取得する。また接続検出装置は、所定のリンギング波形に係る波形情報記憶している。リンギング波形に係る波形情報は、例えばリンギング波形の最大の振幅又はリンギングが収束するまでの時間等の情報とすることができる。接続検出装置は、取得したリンギング波形に係る波形情報と、記憶したリンギング波形に係る波形情報とを比較し、比較結果に応じて不正な装置の接続を検出する。これにより接続検出装置は、容易な方法で不正な装置の接続を検出することができる。
【0019】
また、本発明においては、通信線に接続された車載通信装置へ接続検出装置が信号の送信を要求し、この要求に応じて各車載通信装置が通信線へ信号を送信する。接続検出装置は、複数の車載通信装置から送信された複数の信号が通信線にて重畳された信号の波形情報を取得し、取得した重畳信号の波形情報に基づいて不正な装置の接続を検出する。
【0020】
また、本発明においては、接続検出装置を、複数の通信線間の通信を中継する装置とする。接続検出装置は、通信線毎に不正な装置の接続検出を行う。接続検出装置は、不正な装置の接続が検知された通信線に関して、通信の中継を行わない。これにより接続検出装置は、不正な装置が接続された通信線以外の通信線について、不正な装置の接続による悪影響が波及することを防止できる。
【0021】
また、本発明においては、不正な装置の接続を検出した場合、接続検出装置は通知を行う。通知は、例えばアラーム又はホーン等による警告音出力、車内のディスプレイなどへのメッセージ出力、又は、ユーザの携帯電話器などへのメッセージ送信等の種々の方法で行うことができる。これによりユーザは、車輌に生じた異常を認識することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明による場合は、通信線から取得した波形情報と予め記憶した所定の波形情報とを比較して、通信線に対する装置の接続を検出することにより、装置の接続による通信路の電気的特性の変化に基づく精度のよい検出を行うことができ、車輌のネットワークに対して不正な装置が接続されたことを精度よく検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本実施の形態に係る車載通信システムの構成を示すブロック図である。
図2】本実施の形態に係るゲートウェイの構成を示すブロック図である。
図3】ゲートウェイによる不正な通信装置の接続検出処理の手順を示すフローチャートである。
図4】アイパターンの一例を示す模式図である。
図5】変形例に係るゲートウェイが行う接続検出処理を説明するための模式図である。
図6】リンギング波形の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
(実施の形態1)
以下、本発明をその実施の形態を示す図面に基づき具体的に説明する。図1は、本実施の形態に係る車載通信システムの構成を示すブロック図である。図において1は車輌であり、車輌1にはECU(Electronic Control Unit)などの複数の車載通信装置5が搭載されている。複数の車載通信装置5は車輌1内に敷設された通信線4a〜4cのいずれかにそれぞれ接続されている。図示の例では、各通信線4a〜4cにそれぞれ3つの車載通信装置5が接続されている。また通信線4a〜4cは、ゲートウェイ2に接続されている。
【0025】
ゲートウェイ2は、接続された複数の通信線4a〜4c間の通信を中継する処理を行う装置である。これにより各車載通信装置5は、自らが接続された通信線4a〜4cに接続された他の車載通信装置5のみでなく、自らが接続された通信線4a〜4c以外の通信線4a〜4cに接続された他の車載通信装置5ともゲートウェイ2を介して通信を行うことができる。これら車載通信装置5、ゲートウェイ2及び通信線4a〜4c等により、車輌1内のネットワークが構成されている。
【0026】
また本実施の形態に係るゲートウェイ2は、通信線4a〜4cに対する不正な通信装置99の接続を検出する機能を有している。ゲートウェイ2は、不正な通信装置99の接続を検出した場合、アラーム3を駆動して車輌1のユーザなどへの通知を行う。
【0027】
図2は、本実施の形態に係るゲートウェイ2の構成を示すブロック図である。ゲートウェイ2は、処理部20、記憶部21、アラーム駆動部22及び複数の通信部23を備えて構成されている。処理部20は、CPU(Central Processing Unit)又はMPU(Micro Processing Unit)等の演算処理装置を用いて構成され、記憶部21などに記憶されたプログラムを読み出して実行することにより種々の演算処理を行う。処理部20は、一の通信線4a〜4cを経て受信した情報を、他の通信線4a〜4cに対して送信する中継処理を行う。また本実施の形態において処理部20は、各通信線4a〜4cに対する不正な通信装置99の接続を検出する処理を行う。
【0028】
記憶部21は、フラッシュメモリなどの不揮発性のメモリ素子を用いて構成されている。記憶部21は、処理部20が実行するプログラム及びプログラムの実行により行われる処理に必要なデータ等が記憶されている。また本実施の形態において記憶部21は、正常波形情報21aを記憶している。正常波形情報21aは、詳細は後述するが、通信線4a〜4cを介して送受信される信号の波形について、正常時の波形に関する情報であり、処理部20による不正な通信装置99の接続検出処理に用いられる。
【0029】
アラーム駆動部22は、車輌1の適所に設置されたアラーム3と信号線などを介して接続されている。アラーム駆動部22は、処理部20からの指示に応じて、アラーム3へ駆動信号を出力する。アラーム3は、アラーム駆動部22からの駆動信号に応じて駆動され、警告音などの出力を行う。
【0030】
本実施の形態においてゲートウェイ2は3つの通信部23を備えている。各通信部23は、通信線4a〜4cのいずれか1つがそれぞれ接続されている。通信部23は、接続された通信線4a〜4cを介して、車輌1に搭載された車載通信装置5との通信を行う。通信部23は、例えばCAN(Controller Area Network)又はLIN(Local Interconnect Network)等の通信プロトコルに基づいて、車載通信装置5との通信を行う。
【0031】
通信部23は、通信線4a〜4cの電位をサンプリングすることによって、通信線4a〜4c上の信号電位を2値信号として取得し、2値信号をデジタルの情報に変換することで、車載通信装置5から送信された情報を受信する。通信部23は、受信した情報を処理部20へ与える。また通信部23は、処理部20から与えられた送信用の情報を2値信号に変換し、通信線4a〜4cへ出力することにより、車載通信装置5への情報送信を行う。
【0032】
また本実施の形態において通信部23は、波形情報取得部24をそれぞれ有している。波形情報取得部24は、通信線4a〜4cに対して車載通信装置5が出力した信号の波形に関する情報を取得する。本実施の形態において波形情報取得部24は、通信線4a〜4c上の信号を複数回に亘ってサンプリングし、複数の信号波形を重ね合わせたアイパターン(又はアイ・ダイアグラム)を波形情報として生成する。波形情報取得部24は、生成したアイパターンを処理部20へ与える。処理部20は、波形情報取得部24から与えられたアイパターンと、記憶部21に記憶した正常波形情報21aとに基づいて、不正な通信装置99の接続検出処理を行う。
【0033】
処理部20は、例えば車輌1のイグニッションスイッチのオン操作がなされる都度、又は、1時間毎若しくは1日毎等の所定期間毎のように、予め定められたタイミングで通信線4a〜4cに対する不正な通信装置99の接続を検出する処理を行う。図3は、ゲートウェイ2による不正な通信装置99の接続検出処理の手順を示すフローチャートである。なおゲートウェイ2は、通信線4a〜4c毎に接続検出処理をそれぞれ行う。ゲートウェイ2の処理部20は、上記のような検出を行うタイミングに至ったか否かを判定し(ステップS1)、検出を行うタイミングに至っていない場合(S1:NO)、検出を行うタイミングに至るまで待機する。
【0034】
検出を行うタイミングに至った場合(S1:YES)、処理部20は、通信部23にて通信線4a〜4cに接続された車載通信装置5へ、所定の検出用信号の送信要求を与える(ステップS2)。この送信要求を与えられた各車載通信装置5は、予め定められたパターンの検出用信号を信号線4a〜4cに対して出力する。検出用信号のパターンは、例えば2進数で”000001010011100101110111…”などのパターンとすることができ、アイパターンの生成し易い信号パターンであることが好ましい。同一の通信線4a〜4cに接続された複数の車載通信装置5は、タイミングを同期させて検出用信号を出力する。
【0035】
ゲートウェイ2の処理部20は、通信部23の波形情報取得部24にて通信線の信号をサンプリングする(ステップS3)。波形情報取得部24は、サンプリングにより得られた複数の信号波形を重ね合わせることによってアイパターンを生成する(ステップS4)。図4は、アイパターンの一例を示す模式図である。なお図4には、理想的な形状のアイパターンを図示してあるが、実際には図示のものより歪んだ形状となる。図示のアイパターンは、”000”、”001”、”010”、”011”、”100”、”101”、”110”、”111”の3ビット毎の信号波形を重ね合わせたものである。また同図においてハッチングを付した領域が、記憶部21に正常波形情報21aとして記憶されるマスクである。
【0036】
波形情報取得部24からアイパターンを与えられた処理部20は、記憶部21から正常波形情報21aとして記憶したマスクの情報を読み出す(ステップS5)。処理部20は、ステップS4にて生成したアイパターンと、ステップS5にて読み出したマスクとを比較する(ステップS6)。記憶部21に記憶されるマスクは、不正な通信装置99が接続されていない正常な状態、即ち通信システムの初期状態において取得したアイパターンに対して、アイパターンと重ならない領域が設定される。またマスクは、温度変化又は経年変化等によるアイパターンの変化を考慮し、ある程度のマージンを持たせて設定される。よって検出処理時に取得したアイパターンと記憶したマスクとが重なり合う箇所がなければ、アイパターンは正常であり、通信線4a〜4c上の信号波形は正常であると判断できる。
【0037】
これに対して、通信線4a〜4cに不正な通信装置99が接続された場合、通信路のインピーダンスなどの電気的特性が変化し、信号波形に歪みなどの変化が生じる。信号波形が変化した場合、波形情報取得部24によるアイパターンの形状が変化する。その結果、アイパターンとマスクとに重なり合う箇所が生じ、アイパターンは異常であり、通信線4a〜4c上の信号波形は異常であると判断できる。即ち、通信線4a〜4cに不正な通信装置99が接続されたと判断できる。
【0038】
ゲートウェイ2の処理部20は、ステップS6での比較結果に基づいて、信号線4a〜4c上の信号波形が正常波形であるか否かを判定する(ステップS7)。信号波形が正常波形でない場合(S7:NO)、処理部20は、アラーム駆動部22に指示を与えることによって、アラーム駆動部22からアラーム3へ駆動信号を出力し、アラーム3を駆動して(ステップS8)、警告音などを出力し、ユーザへの通知を行う。また処理部20は、異常を検知した通信線4a〜4cに関して、この通信線4a〜4cと他の通信線4a〜4cとの間の通信の中継を禁止する設定を行い(ステップS9)、処理を終了する。信号線4a〜4c上の信号波形が正常波形である場合(S7:YES)、処理部20は、通知及び中継禁止等を行うことなく、処理を終了する。
【0039】
以上の構成の本実施の形態に係る車載通信システムは、複数の通信線4a〜4cが接続されたゲートウェイ2が、これら通信線4a〜4cに対する不正な通信装置99の接続を検出する。ゲートウェイ2の波形情報取得部24は、通信線4a〜4cから複数回に亘って信号波形のサンプリングを行い、複数の波形を重ねたアイパターンを生成する。またゲートウェイ2は、正常時のアイパターンに基づいて生成されたマスクを正常波形情報21aとして記憶部21に記憶している。ゲートウェイ2の処理部20は、生成したアイパターンと記憶したマスクとを比較し、アイパターン及びマスクが重なり合う箇所が存在する場合に異常波形と認識し、通信線4a〜4cに不正な通信装置99が接続されたことを検出する。これによりゲートウェイ2は、通信線4a〜4cに対する不正な通信装置99の接続を精度よく検出することができる。
【0040】
またゲートウェイ2は、通信線4a〜4cに接続された車載通信装置5へ検出用信号の送信を要求し、この要求に応じて各車載通信装置5が通信線4a〜4cへ検出用信号を送信する。ゲートウェイ2の波形情報取得部24は、通信線4a〜4cに接続された複数の車載通信装置5が送信した複数の検出用信号が重畳された信号をサンプリングしてアイパターンを生成する。これにより通信線4a〜4cに接続された複数の車載通信装置5について、出力する信号波形に関する判定処理を一括して行うことができる。
【0041】
またゲートウェイ2は、不正な通信装置99の接続を検出した通信線4a〜4cについて、中継処理を禁止する。これにより不正な通信装置99が接続された通信線4a〜4c以外の通信線4a〜4cについて、不正な通信装置99の接続による悪影響が波及することを防止できる。またゲートウェイ2は、不正な通信装置99の接続を検出した場合、アラーム3を駆動してユーザへの通知を行う。これによりユーザは、車輌1に生じた異常を認識することができる。
【0042】
なお本実施の形態においては、車載通信システムのゲートウェイ2が不正な通信装置99の接続検出処理を行う構成としたが、これに限るものではない。例えば車載通信装置5のいずれかが接続検出処理を行う構成としてもよく、この場合には通信線4a〜4c毎に1つの車載通信装置5が接続検出処理を行う構成とすることができる。また車載通信システム中の複数の装置が接続検出処理を行う構成としてもよい。例えばゲートウェイ2と、通信線4a〜4c毎に1つの車載通信装置5がそれぞれ接続検出処理を行う構成とすることができる。また例えばゲートウェイ2及び全ての車載通信装置5が接続検出処理を行う構成としてもよい。
【0043】
またゲートウェイ2は、不正な通信装置99の接続を検出した場合に、アラーム3を駆動して通知を行う構成としたが、通知の方法はこれに限らない。例えば車輌1内に設けられたディスプレイなどへのメッセージ出力、又は、ユーザの携帯電話器などへのメッセージ送信等の種々の方法で通知を行う構成としてよい。またゲートウェイ2は、不正な通信装置99の接続を検出した通信線4a〜4cについて通信の中継を禁止し、それ以外の通信線4a〜4cについて通信の中継を行う構成としたが、これに限るものではない。例えばゲートウェイ2は、いずれかの通信線4a〜4cにて不正な通信装置99の接続を検出した場合、動作を停止し、全ての中継処理を行わない構成としてもよい。
【0044】
また図4に示したアイパターン及びマスクの形状などは一例であって、これに限るものではない。またゲートウェイ2の要求に応じて複数の車載通信装置5が同期して検出用信号を送信し、複数の信号が重畳された波形をゲートウェイ2にて取得する構成としたが、これに限るものではない。例えば複数の車載通信装置5が、予め定められた順序で又はランダムな順序で検出用信号を送信し、ゲートウェイ2が車載通信装置5毎の信号波形を取得して接続検出処理を行う構成としてもよい。この場合、ゲートウェイ2の記憶部21には、車載通信装置5毎の正常波形情報21aが記憶される。また本実施の形態にて示した技術は、通信線4a〜4cに不正な通信装置99が接続されたことを検出するのみでなく、その他の通信に係る異常検出に用いることが可能である。
【0045】
(変形例)
上述の実施の形態においては、ゲートウェイ2が複数回に亘って信号波形のサンプリングを行ってアイパターンを生成し、アイパターンとマスクとの比較により検出を行う構成としたが、これに限るものではない。変形例に係るゲートウェイ2は、アイパターンを生成せず、通信線4a〜4cから取得した信号波形とマスクとの比較により検出を行う。図5は、変形例に係るゲートウェイ2が行う接続検出処理を説明するための模式図であり、通信線4a〜4cから取得した信号波形とマスクとの一例を示してある。
【0046】
例えばゲートウェイ2からの要求に応じて車載通信装置5は”010”のパターンの検出用信号を通信線4a〜4cへ送信する。ゲートウェイ2の波形情報取得部24は、通信線4a〜4cの電位をサンプリングして”010”のパターンの検出用信号の波形を取得する。図5には、波形情報取得部24が取得した波形の一例が実線で示してある。またゲートウェイ2の記憶部21は、不正な通信装置99が接続されていない正常状態での”010”のパターンに対するマスクを正常波形情報21aとして記憶している。図5には、ハッチングを付した領域としてマスクの一例を示してある。
【0047】
ゲートウェイ2の処理部20は、波形情報取得部24が取得した波形情報と、記憶部21に正常波形情報21aとして記憶されたマスクとを比較し、波形及びマスクが重なりあう箇所がなければ、通信線4a〜4c上の信号波形は正常であると判定する。これに対して、波形及びマスクに重なり合う箇所が生じた場合、処理部20は、信号波形は異常であり、通信線4a〜4cに不正な通信装置99が接続されたと判定する。
【0048】
このように変形例に係るゲートウェイ2は、アイパターン及びマスクの比較を行うのではなく、信号波形及びマスクの比較を行う構成であるが、上述の実施の形態と同様に、通信線4a〜4cに対する不正な通信装置99の接続を精度よく検出することができる。なお図5に示した信号波形及びマスクは一例であって、これに限るものではない。
【0049】
(実施の形態2)
実施の形態2に係るゲートウェイ2は、車載通信装置5の通信によって通信線4a〜4c上に生じるリンギングの波形に基づいて、不正な通信装置99の接続を検出する。図6は、リンギング波形の一例を示す模式図である。リンギングは、信号の反射などの要因によって波形に振動が生じるものであり、信号変化時に発生して徐々に減衰する。図示の例は、信号が”1”から”0”へ変化した場合に生じたリンギングの波形である。
【0050】
接続検出処理を行う場合、ゲートウェイ2は、通信線4a〜4cに接続された車載通信装置5へ、検出用信号の送信要求を与える。この要求に応じて各車載通信装置5は、予め定められた検出用信号を通信線4a〜4cへ送信する。このとき複数の車載通信装置5は、タイミングを同期させて検出用信号を送信する。検出用信号は、例えば”01010101…”のようなパターンとすることができる。
【0051】
ゲートウェイ2の波形情報取得部24は、通信線4a〜4c上の信号が”1”から”0”へ変化した場合のリンギング波形について、その最大振幅及び収束時間を波形情報として取得して処理部20へ与える。例えば波形情報取得部24は、信号が”1”から”0”へ変化したタイミングから通信線4a〜4c上の信号のサンプリングをリンギングの周期より短い周期で繰り返し行い、サンプリングにより得られた複数の電位の最大値を最大電位とすることができる。また波形情報取得部24は、サンプリングにより得られた複数の電位について、所定期間における電位の変化が閾値以下となった場合にリンギングが収束したと判断し、信号が”0”へ変化したタイミングからリンギングが収束したタイミングまでの時間を収束時間とすることができる。
【0052】
ゲートウェイ2の記憶部21には、不正な通信装置99が接続されていない正常状態において、通信線4a〜4c上に発生するリンギングに関する情報が正常波形情報21aとして記憶されている。正常波形情報21aは、リンギング波形の最大振幅及び収束時間が満たすべき条件、例えば最大振幅の範囲を規定する閾値(上限値及び下限値)など、とすることができる。
【0053】
処理部20は、波形情報取得部24が取得したリンギング波形の最大振幅及び収束時間と、記憶部21に正常波形情報21aとして記憶した条件とを比較し、取得した最大振幅及び収束時間が条件を満たしているか否かを判定する。最大振幅及び収束時間が共に条件を満たしている場合、処理部20は、通信線4a〜4cに不正な通信装置99が接続されていないと判定する。最大振幅又は収束時間の少なくとも一方が条件を満たしていない場合、処理部20は、通信線4a〜4cに不正な通信装置99が接続されたと判定し、アラーム3の駆動及び中継の禁止等の処理を行う。
【0054】
以上の構成の実施の形態2に係る車載通信システムは、車載通信装置5の信号送信に伴って通信線4a〜4cに生じたリンギング波形に係る波形情報を、ゲートウェイ2の波形情報取得部24が取得する。ゲートウェイ2の記憶部21は、不正な通信装置99が接続されていない正常状態でのリンギング波形に係る正常波形情報21aを記憶している。ゲートウェイ2の処理部20は、取得したリンギング波形の波形情報と、記憶した正常波形情報21aとを比較し、比較結果に応じて不正な通信装置99の接続を検出する。リンギング波形の波形情報は、例えば最大振幅及び収束時間等とすることができる。これによりゲートウェイ2は、不正な通信装置99の接続を容易な方法で検出することができる。
【0055】
なお本実施の形態においては、波形情報取得部24がリンギング波形の最大振幅及び収束時間を波形情報として取得する構成としたが、これに限るものではない。例えば波形情報取得部24が最大振幅又は収束時間のいずれか一方のみを取得する構成であっても良く、これら以外のリンギング波形の特性を波形情報として取得してもよい。また図6に示したリンギング波形は、一例であって、これに限るものではない。
【0056】
またゲートウェイ2は、実施の形態1にて説明したアイパターン及びマスクを用いた検出と、実施の形態2にて説明したリンギング波形に基づく検出との両方を行う構成としてよい。この場合、ゲートウェイ2は、少なくともいずれか一方の方法にて異常が検出された場合、通信線4a〜4cに不正な通信装置99が接続されたと判断することができる。
【0057】
また実施の形態2に係る車載通信システム及びゲートウェイ2のその他の構成は、実施の形態1に係る車載通信システム及びゲートウェイ2の構成と同様であるため、同様の箇所には同じ符号を付して詳細な説明を省略する。
【符号の説明】
【0058】
1 車輌
2 ゲートウェイ
3 アラーム
4a〜4c 通信線
5 車載通信装置
20 処理部(接続検出部、信号送信要求部、通信中継部、通知部)
21 記憶部(波形情報記憶部)
21a 正常波形情報(アイパターン生成部)
22 アラーム駆動部
23 通信部
24 波形情報取得部
99 不正な通信装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6