特許第5904303号(P5904303)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5904303
(24)【登録日】2016年3月25日
(45)【発行日】2016年4月13日
(54)【発明の名称】コンテナ用冷凍装置
(51)【国際特許分類】
   F25B 49/02 20060101AFI20160331BHJP
   F25D 11/00 20060101ALI20160331BHJP
   F25D 23/00 20060101ALI20160331BHJP
【FI】
   F25B49/02 A
   F25D11/00 101D
   F25D23/00 301Z
【請求項の数】11
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2015-232072(P2015-232072)
(22)【出願日】2015年11月27日
【審査請求日】2015年11月27日
(31)【優先権主張番号】特願2014-242143(P2014-242143)
(32)【優先日】2014年11月28日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤本 祐介
(72)【発明者】
【氏名】中谷 直樹
(72)【発明者】
【氏名】高岡 久晃
(72)【発明者】
【氏名】伊賀 紀夫
【審査官】 関口 勇
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−322437(JP,A)
【文献】 特開2005−274059(JP,A)
【文献】 特開2011−242004(JP,A)
【文献】 特開2001−146390(JP,A)
【文献】 特開平5−191496(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25B 49/02
F25D 11/00
F25D 23/00
F24F 11/02
G05B 23/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷媒回路(20)を備えたコンテナ用冷凍装置において、
上記冷媒回路(20)を構成する機器及び該冷媒回路(20)の機能を、複数の評価項目に渡って順次評価する故障診断を行う故障診断部(200)を備え、
上記故障診断部(200)は、上記故障診断が中断された場合に、該故障診断の途中からリスタートするリスタート機能を有していることを特徴とするコンテナ用冷凍装置。
【請求項2】
請求項1において、
上記故障診断部(200)は、評価が中断された評価項目の初めからリスタートするモードを有していることを特徴とするコンテナ用冷凍装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2において、
上記故障診断部(200)は、評価が中断された評価項目の途中段階からリスタートするモードを有していることを特徴とするコンテナ用冷凍装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3の何れかにおいて、
上記複数の評価項目には、上記冷媒回路(20)を構成する機器を評価する第1種の評価項目と、所定の機器が複合することで得られる機能の評価であって、該第1種の評価項目の評価が終了した後に行われる第2種の評価項目とがあり、
上記故障診断部(200)は、上記第1種の評価項目の評価が中断された場合には、上記第1種の評価項目の評価からリスタートすることを特徴とするコンテナ用冷凍装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4の何れかにおいて、
上記故障診断の進捗を記録する記録部(220)を備え、
上記故障診断部(200)は、起動された後に上記記録部(220)の記録を確認し、未評価の評価項目があった場合には、上記リスタート機能を実行することを特徴とするコンテナ用冷凍装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5の何れかにおいて、
上記故障診断が中断された場合に、中断されたことを遠隔通信によって通知する送信部(240)と、
遠隔通信による上記リスタートの指示を受信する受信部(230)と備え、
上記故障診断部(200)は、上記受信部(230)が上記リスタートの指示を受けたら上記リスタート機能を実行することを特徴とするコンテナ用冷凍装置。
【請求項7】
請求項1から請求項6の何れかにおいて、
入力されたユーザの指示に応じて、上記リスタート機能の有効と無効とを切り換える機能を有することを特徴とするコンテナ用冷凍装置。
【請求項8】
請求項1から請求項7の何れかにおいて、
入力されたユーザの指示に応じて、上記リスタートに係る動作を強制終了させる機能を有することを特徴とするコンテナ用冷凍装置。
【請求項9】
請求項1から請求項8の何れかにおいて、
上記故障診断部(200)は、上記コンテナ用冷凍装置の電源がオフとなることによって上記故障診断が中断されてから所定期間が経過した場合には、上記リスタートに係る動作を強制終了させることを特徴とするコンテナ用冷凍装置。
【請求項10】
請求項1から請求項9の何れかにおいて、
実施中の故障診断が、ユーザから診断開始の指示を受けてから何回目のものかを表示する表示部(250)を備えていることを特徴とするコンテナ用冷凍装置。
【請求項11】
請求項1から請求項10の何れかにおいて、
実施する故障診断が、診断開始の指示後の初回の診断かリスタートされた診断かを表示する表示部(250)を備えていることを特徴とするコンテナ用冷凍装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンテナの庫内を冷却するコンテナ用冷凍装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
船舶などで貨物を輸送する際に用いるコンテナには、冷媒回路を有した冷凍装置(コンテナ用冷凍装置)を備えるものがある(例えば特許文献1を参照)。そのようなコンテナでは、冷凍装置の機能を担保するために、例えば、港などにコンテナが置かれている間に、商用電源の電力によってコンテナ用冷凍装置を作動させて故障診断が実施されることが多い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013−140002号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、コンテナが置かれた場所によっては商用電源の信頼性が低く、停電によって故障診断が中断させられる場合がある。また、電源系統(商用電源を供給する設備)の不具合によって電圧低下などが起こって、故障診断が中断させられる場合もある。このように故障診断が中断させられると、故障診断をやり直す必要があり、貨物輸送のスケジュールにも影響が及ぶ可能性がある。
【0005】
本発明は上記の問題に着目してなされたものであり、故障診断が中断させられた場合の時間のロスを低減できるようにすることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するため、第1の態様は、
冷媒回路(20)を備えたコンテナ用冷凍装置において、
上記冷媒回路(20)を構成する機器及び該冷媒回路(20)の機能を、複数の評価項目に渡って順次評価する故障診断を行う故障診断部(200)を備え、
上記故障診断部(200)は、上記故障診断が中断された場合に、該故障診断の途中からリスタートするリスタート機能を有していることを特徴とする。
【0007】
この構成では、故障診断部(200)が、故障診断の途中から評価がリスタートするモードを備えている。
【0008】
また、第2の態様は、第1の態様において、
上記故障診断部(200)は、評価が中断された評価項目の初めからリスタートするモードを有していることを特徴とする。
【0009】
この構成では、故障診断部(200)が、評価項目を区切りとして評価がリスタートされるモードを備えている。
【0010】
また、第3の態様は、第1又は第2の態様において、
上記故障診断部(200)は、評価が中断された評価項目の途中段階からリスタートするモードを有していることを特徴とする。
【0011】
この構成では、故障診断部(200)が、評価項目の途中段階から評価がリスタートされるモードを備えている。
【0012】
また、第4の態様は、第1から第3の態様の何れかにおいて、
上記複数の評価項目には、上記冷媒回路(20)を構成する機器を評価する第1種の評価項目と、所定の機器が複合することで得られる機能の評価であって、該第1種の評価項目の評価が終了した後に行われる第2種の評価項目とがあり、
上記故障診断部(200)は、上記第1種の評価項目の評価が中断された場合には、上記第1種の評価項目の評価からリスタートすることを特徴とする。
【0013】
この構成では、所定の機器が複合することで得られる機能の評価の前に、機器単体の評価が実施される。
【0014】
また、第5の態様は、第1から第4の態様の何れかにおいて、
上記故障診断の進捗を記録する記録部(220)を備え、
上記故障診断部(200)は、起動された後に上記記録部(220)の記録を確認し、未評価の評価項目があった場合には、上記リスタート機能を実行することを特徴とする。
【0015】
この構成では、故障診断を自動的にリスタートさせることが可能になる。
【0016】
また、第6の態様は、第1から第5の態様の何れかにおいて、
上記故障診断が中断された場合に、中断されたことを遠隔通信によって通知する送信部(240)と、
遠隔通信による上記リスタートの指示を受信する受信部(230)と備え、
上記故障診断部(200)は、上記受信部(230)が上記リスタートの指示を受けたら上記リスタート機能を実行することを特徴とする。
【0017】
この構成では、故障診断が中断した場合に送信部(240)によってその事実が通知される。また、遠隔操作によって、故障診断をリスタートできる。
【0018】
また、第7の態様は、第1から第6の発明の何れかにおいて、
入力されたユーザの指示に応じて、上記リスタート機能の有効と無効とを切り換える機能を有することを特徴とする。
【0019】
また、第8の態様は、第1から第7の発明の何れかにおいて、
入力されたユーザの指示に応じて、上記リスタートに係る動作を強制終了させる機能を有することを特徴とする。
【0020】
また、第9の態様は、第1から第8の発明の何れかにおいて、
上記故障診断部(200)は、上記コンテナ用冷凍装置の電源がオフとなることによって上記故障診断が中断されてから所定期間が経過した場合には、上記リスタートに係る動作を強制終了させることを特徴とする。
【0021】
また、第10の態様は、第1から第9の発明の何れかにおいて、
実施中の故障診断が、ユーザから診断開始の指示を受けてから何回目のものかを表示する表示部(250)を備えていることを特徴とする。
【0022】
また、第11の態様は、第1から第10の発明の何れかにおいて、
実施する故障診断が、診断開始の指示後の初回の診断かリスタートされた診断かを表示する表示部(250)を備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
第1の態様や第2の態様によれば、故障診断の途中からリスタートすることで、故障診断が中断させられた場合の時間のロスを低減することが可能になる。
【0024】
また、第3の態様によれば、より効果的に時間のロスを低減することが可能になる。
【0025】
また、第4の態様によれば、より信頼できる故障診断を行うことが可能になる。
【0026】
また、第5の態様によれば、中断された故障診断が自動的にリスタートされるので、より効果的に時間のロスを低減することが可能になる。
【0027】
また、第6の態様によれば、故障診断が中断したことをユーザが容易に知ることが可能になる。
【0028】
また、第7から11の態様によれば、ユーザの利便性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1図1は、コンテナ用冷凍装置の冷媒回路の配管系統図である。
図2図2は、表示部における、故障診断の実施回数の表示例である。
図3図3は、リスタート動作が開始される場合における表示部の表示例を示す。
図4図4は、通常の故障診断が開始される場合における表示部の表示例を示す。
図5図5は、「冷蔵運転のプルダウン評価」を、モード1を利用してリスタートした場合のタイムチャートである。
図6図6は、「冷蔵運転のプルダウン評価」を、モード2を利用してリスタートした場合のタイムチャートである。
図7図7は、本発明の実施形態2にかかる故障診断部の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【0031】
《発明の実施形態1》
本発明の実施形態1に係るコンテナ用冷凍装置(10)は、図示しないコンテナの庫内を冷却するものであり、冷媒回路(20)、コントローラ(100)、故障診断部(200)、及び表示部(250)を備えている。
【0032】
〈冷媒回路〉
図1は、コンテナ用冷凍装置(10)の冷媒回路(20)の配管系統図である。この冷媒回路(20)は、主回路(21)、ホットガスバイパス回路(22)、及びレヒート回路(80)を有している。
【0033】
−主回路(21)−
主回路(21)は、圧縮機(30)、凝縮器(31)、主膨張弁(32)、及び蒸発器(33)が順に冷媒配管によって直列に接続されて構成されている。また、主回路(21)には、過冷却熱交換器(44)も設けられている。
【0034】
圧縮機(30)には、例えばロータリ式圧縮機やスクロール式圧縮機を採用できる。圧縮機(30)では、圧縮機構がモータ(何れも図示省略)によって駆動される。このモータには、インバータ回路(図示省略)によって電力が供給され、モータの回転数は、インバータ回路の出力を制御することによって可変される。
【0035】
この例では、凝縮器(31)及び蒸発器(33)は、何れもフィン・アンド・チューブ熱交換器である。凝縮器(31)は、コンテナの庫外に配置されている。凝縮器(31)では、庫外の空気と冷媒とが熱交換する。蒸発器(33)は、コンテナの庫内に配置されている。蒸発器(33)では、庫内の空気と冷媒とが熱交換する。また、蒸発器(33)の下方には、ドレンパン(37)が設けられている。ドレンパン(37)は、上側が開放された扁平な容器状に形成されている。ドレンパン(37)の内部には、蒸発器(33)から剥がれ落ちた霜や氷塊や、空気中から凝縮した結露水等が回収される。
【0036】
主膨張弁(32)は、開度がパルスモータによって多段階に調節可能な弁である。主膨張弁(32)は、低圧液管(27)によって蒸発器(33)に接続されている。
【0037】
凝縮器(31)の近傍には、庫外ファン(35)が設けられている。また、蒸発器(33)の近傍には、庫内ファン(36)が設けられている。庫内ファン(36)は、蒸発器(33)で冷却された冷却空気を庫内に供給する。
【0038】
圧縮機(30)と凝縮器(31)との間には高圧ガス管(24)が設けられ、高圧ガス管(24)には、第4開閉弁(38)と逆止弁(CV)とが順に設けられている。第4開閉弁(38)は、開度がパルスモータによって多段階に調節可能である。逆止弁(CV)は、図1に示す矢印の方向への冷媒の流れを許容し、その逆の流れを禁止している。
【0039】
凝縮器(31)と主膨張弁(32)との間には、高圧液管(25)が設けられ、高圧液管(25)には、レシーバ(41)と第2開閉弁(49)とドライヤ(43)と過冷却熱交換器(44)とが順に設けられている。レシーバ(41)は、凝縮器(31)の下流側に設けられ、凝縮器(31)を流れた冷媒を流入させ、飽和液と飽和ガスとに分離する。第2開閉弁(49)は、開閉自在な電磁弁である。ドライヤ(43)は、凝縮器(31)を流れた液冷媒中の水分を捕捉するものである。凝縮器(31)の上流側には、液封防止管(90)が接続されている。この液封防止管(90)の途中には液封開閉弁(91)が設けるとともに、主膨張弁(32)の下流側に接続されている。
【0040】
過冷却熱交換器(44)は、凝縮器(31)を流れた液冷媒を冷却するものである。過冷却熱交換器(44)は、1次側通路(45)と2次側通路(46)を有している。つまり、過冷却熱交換器(44)では、1次側通路(45)を流れる冷媒と2次側通路を流れる冷媒とが熱交換する。1次側通路(45)は、高圧液管(25)に接続され、2次側通路(46)は、過冷却分岐管(26)に接続されている。この過冷却分岐管(26)の流入端は、レシーバ(41)と第2開閉弁(49)の間に接続されている。また、過冷却分岐管(26)の流出端は、圧縮機(30)の圧縮途中(中間圧力状態)の圧縮室(中間圧縮室)に接続されている。つまり、過冷却分岐管(26)は、高圧液管(25)の液冷媒の一部が分流し圧縮機(30)の中間圧縮室へ流入する通路である。過冷却分岐管(26)における2次側通路(46)の流入側には、第1開閉弁(47)と過冷却膨張弁(48)とが設けられている。第1開閉弁(47)は、開閉自在な電磁弁で構成されている。一方、過冷却膨張弁(48)は、開度がパルスモータによって多段階に調節可能である。
【0041】
−ホットガスバイパス回路(22)−
ホットガスバイパス回路(22)は、圧縮機(30)で圧縮された冷媒(圧縮機(30)から吐出された高温のガス冷媒)を蒸発器(33)へ供給するためのバイパス回路である。このホットガスバイパス回路(22)は、主通路(50)、第1分岐通路(51)、及び第2分岐通路(52)を有している。第1分岐通路(51)、及び第2分岐通路(52)は、主通路(50)から分岐している。主通路(50)の流入端は、高圧ガス管(24)に接続されている。主通路(50)には、第3開閉弁(53)が設けられている。第3開閉弁(53)は、開閉自在な電磁弁である。
【0042】
第1分岐通路(51)は、一端が主通路(50)の流出端に接続され、他端が低圧液管(27)に接続されている。同様に、第2分岐通路(52)も、一端が主通路(50)の流出端に接続され、他端が低圧液管(27)に接続されている。第2分岐通路(52)は、第1分岐通路(51)よりも長い冷媒配管で構成されている。また、第2分岐通路(52)は、ドレンパン(37)の底部に沿うように蛇行して配置されたドレンパンヒータ(54)を有している。ドレンパンヒータ(54)は、ドレンパン(37)の内部を冷媒によって加熱する。
【0043】
−レヒート回路(80)−
レヒート回路(80)は、圧縮機(30)で圧縮された冷媒(圧縮機(30)から吐出された高温のガス冷媒)の一部をレヒート熱交換器(83)へ供給するための回路である。このレヒート回路(80)は、レヒート通路(82)を有している。レヒート通路(82)の流入端は、高圧ガス管(24)に接続されている。また、レヒート通路(82)の途中には、第5開閉弁(81)が設けられている。第5開閉弁(81)は、開閉自在な電磁弁である。更に、レヒート通路(82)は、レヒート熱交換器(83)とキャピラリチューブとを有している。レヒート熱交換器(83)は、除湿運転時(除湿運転についての説明は省略する)において、流入した吐出冷媒と、蒸発器(33)で冷却除湿させた後の空気との間で熱交換させ、該空気を加熱するものである。この例では、レヒート熱交換器(83)は、フィン・アンド・チューブ熱交換器である。なお、キャピラリチューブは、レヒート熱交換器(83)を流出した冷媒を減圧させるものである。
【0044】
−冷媒回路(20)を構成するその他の機器−
冷媒回路(20)には、各種のセンサ類も設けられている。具体的に、高圧ガス管(24)には、高圧圧力センサ(60)と高圧圧力スイッチ(61)と吐出温度センサ(62)とが設けられている。高圧圧力センサ(60)は、圧縮機(30)から吐出される高圧ガス冷媒の圧力を検出する。吐出温度センサ(62)は、圧縮機(30)から吐出される高圧ガス冷媒の温度を検出する。蒸発器(33)と圧縮機(30)の間の低圧ガス管(28)には、低圧圧力センサ(63)と吸入温度センサ(64)とが設けられている。低圧圧力センサ(63)は、圧縮機(30)に吸入される低圧ガス冷媒の圧力を検出する。吸入温度センサ(64)は、圧縮機(30)に吸入される低圧ガス冷媒の温度を検出する。
【0045】
また、過冷却分岐管(26)には、流入温度センサ(65)、及び流出温度センサ(66)が設けられている。流入温度センサ(65)は、2次側通路(46)に流入する直前の冷媒の温度を検出する。また、流出温度センサ(66)は、2次側通路(46)を流出した直後の冷媒の温度を検出する。
【0046】
低圧液管(27)には、流入温度センサ(67)が設けられている。この流入温度センサ(67)は、蒸発器(33)に流入する直前の冷媒の温度を検出する。低圧ガス管(28)には、流出温度センサ(68)が設けられている。この流出温度センサ(68)は、蒸発器(33)から流出した直後の冷媒の温度を検出する。
【0047】
コンテナの庫外には、凝縮器(31)の吸込側に外気温度センサ(69)が設けられている。外気温度センサ(69)は、凝縮器(31)に吸い込まれる直前の庫外空気の温度(即ち、外気の温度)を検出する。コンテナの庫内には、蒸発器(33)の吸込側に吸込温度センサ(70)が設けられ、蒸発器(33)の吹出側に吹出温度センサ(71)が設けられている。吸込温度センサ(70)は、蒸発器(33)を通過する直前の庫内空気の温度(吸込空気温度RS)を検出する。吹出温度センサ(71)は、蒸発器(33)を通過した直後の庫内空気の温度(吹出空気温度(SS))を検出する。
【0048】
〈コントローラ(100)〉
コントローラ(100)は、マイクロコンピュータと、それを動作させるためのプログラムを格納するメモリディバイスとを有し、冷媒回路(20)の動作を制御する。具体的には、コントローラ(100)は、冷媒回路(20)において行われる、「冷却運転」、「加熱運転」、「デフロスト運転」といった運転を制御する。なお、コンテナ用冷凍装置(10)には、ユーザが操作するスイッチ類を配置した制御パネルが設けられており、ユーザは、制御パネルを用いて、コントローラ(100)や故障診断部(200)に所定の指令(庫内温度の設定値、後述の故障診断の開始など)を送ることができる。
【0049】
以下では、コントローラ(100)が制御する各運転について簡単に説明する。
【0050】
−冷却運転−
冷却運転では、第1開閉弁(47)および第2開閉弁(49)が開放状態となり、第3開閉弁(53)および第5開閉弁(81)が閉鎖状態となる。第4開閉弁(38)は全開状態となり、過冷却膨張弁(48)および主膨張弁(32)の開度が適宜調節される。また、圧縮機(30)、庫外ファン(35)および庫内ファン(36)が運転される。
【0051】
圧縮機(30)で圧縮された冷媒は、凝縮器(31)で凝縮した後、レシーバ(41)を通過する。レシーバ(41)を通過した冷媒は、一部が低圧液管(27)をそのまま流れ、残りは過冷却分岐管(26)に分流する。低圧液管(27)を流れた冷媒は、主膨張弁(32)で減圧された後、蒸発器(33)を流れる。蒸発器(33)では、冷媒が庫内空気から吸熱して蒸発する。これにより、庫内空気が冷却される。蒸発器(33)で蒸発した冷媒は、圧縮機(30)に吸入されて再び圧縮される。
【0052】
なお、過冷却分岐管(26)に分流した冷媒は、過冷却膨張弁(48)を通過して中間圧にまで減圧された後、過冷却熱交換器(44)の2次側通路(46)を流れる。過冷却熱交換器(44)では、1次側通路(45)を流れる冷媒と2次側通路(46)を流れる冷媒とが熱交換する。その結果、1次側通路(45)の冷媒が過冷却される一方、2次側通路(46)の冷媒が蒸発する。2次側通路(46)を流出した冷媒は、圧縮機(30)の中間ポートより中間圧力状態の圧縮室に吸入される。
【0053】
−加熱運転−
加熱運転では、圧縮機(30)で圧縮した高温高圧のガス冷媒を、凝縮器(31)やレシーバ(41)、過冷却熱交換器(44)、主膨張弁(32)をバイパスさせて蒸発器(33)へ供給する。この加熱動作は、コンテナ庫内の温度が目標温度よりも低くなり、コンテナ庫内が過剰に冷却されている場合に実行される。
【0054】
加熱運転では、第2開閉弁(49)が閉鎖状態となり、第3開閉弁(53)が開放状態となる。主膨張弁(32)は全閉状態となる。第1開閉弁(47)、第4開閉弁(38)、第5開閉弁(81)および過冷却膨張弁(48)は原則として全閉状態となる。そして、圧縮機(30)および庫内ファン(36)が運転され、庫外ファン(35)は原則として停止状態となる。
【0055】
圧縮機(30)で圧縮された冷媒は、ホットガスバイパス回路(22)を経由して蒸発器(33)へ供給される。詳しくは、高温高圧のガス冷媒は、主回路(21)を流れた後、第1分岐通路(51)と第2分岐通路(52)とへ分流する。第2分岐通路(52)へ分流した冷媒は、ドレンパンヒータ(54)を通過した後、第1分岐通路(51)を流出した冷媒と合流する。合流後の冷媒は蒸発器(33)へ流れる。蒸発器(33)では、冷媒が庫内空気へ放熱する。その結果、庫内空気が加熱されるため、庫内温度を目標温度に近づけることができる。蒸発器(33)で放熱した冷媒は、圧縮機(30)に吸入されて圧縮される。
【0056】
−デフロスト運転−
冷却運転を継続して行うと、蒸発器(33)の伝熱管等の表面に霜が付着し、この霜が徐々に成長して肥大化する。このため、コンテナ用冷凍装置(10)では、蒸発器(33)の除霜を行うための運転、すなわちデフロスト運転が行われる。
【0057】
デフロスト運転は、圧縮機(30)で圧縮した高温高圧のガス冷媒を、凝縮器(31)、レシーバ(41)、過冷却熱交換器(44)、および主膨張弁(32)をバイパスさせて蒸発器(33)へ直接供給する動作である。デフロスト運転では、第3開閉弁(53)が開かれ、第2開閉弁(49)が全閉状態となり、第1開閉弁(47)、第4開閉弁(38)、第5開閉弁(81)および過冷却膨張弁(48)が原則として全閉状態となる。そして、圧縮機(30)が運転開始し、庫外ファン(35)および庫内ファン(36)は原則として停止する。
【0058】
圧縮機(30)で圧縮された冷媒は、ホットガスバイパス回路(22)を経由して蒸発器(33)へ供給される。詳しくは、高圧ガス冷媒は、主回路(21)を流れた後、第3開閉弁(53)を通過して第1分岐通路(51)と第2分岐通路(52)とへ分流する。第2分岐通路(52)へ分流した冷媒は、ドレンパンヒータ(54)を通過する。ここで、ドレンパン(37)の内部には、蒸発器(33)の表面から剥がれ落ちた氷塊等が回収されている。この氷塊等は、ドレンパンヒータ(54)の内部を流れる冷媒によって加熱されて融解する。融解した水は、所定の流路を通じて庫外へ排出される。ドレンパンヒータ(54)を流出した冷媒は、第1分岐通路(51)を通過した冷媒と合流し、蒸発器(33)を流れる。蒸発器(33)では、伝熱管の内部を高圧ガス冷媒(いわゆるホットガス)が流通する。このため、蒸発器(33)では、伝熱管の周囲に付着した霜が、冷媒によって内部から徐々に加熱される。その結果、蒸発器(33)に付着した霜が徐々にドレンパン(37)に回収される。蒸発器(33)の除霜に利用された冷媒は、圧縮機(30)に吸入されて圧縮される。
【0059】
〈故障診断部(200)〉
故障診断部(200)は、コンテナ用冷凍装置(10)の故障診断を行う。この故障診断では、冷媒回路(20)を構成する個々の機器、及び冷媒回路(20)全体の機能を、複数の評価項目に渡って順次評価する。
【0060】
故障診断部(200)は、診断制御部(210)、及び記録部(220)を備えている。診断制御部(210)、及び記録部(220)の主要部は、例えばマイクロコンピュータと、それを動作させるためのプログラムを格納するメモリディバイスとを用いて構成できる。このマイクロコンピュータは、コントローラ(100)のものと兼用してもよいし、別個に設けてもよい。
【0061】
−診断制御部(210)−
診断制御部(210)は、所定の指令をコントローラ(100)に送信することによって、冷媒回路(20)を構成する各機器を作動させ、上記故障診断を行う。本実施形態では、主に以下に示す2種類の評価(第1種の評価項目、第2種の評価項目)を行う。まず、第1種の評価項目は、センサ等の冷媒回路(20)を構成する機器の評価であり、第2種の評価項目は、所定の機器が複合することで得られる機能の評価である(冷媒回路(20)全体の機能評価もこれに含まれる)。そして、第2種の評価項目の評価は、第1種の評価項目の評価の終了後に行う。第2種の評価項目の評価は、冷媒回路(20)を構成する個々の機器の機能が正常であることが前提として行われる評価だからである。本実施形態で実施される第1種及び第2種の評価項目については後に詳述する。
【0062】
そして、診断制御部(210)は、コンテナ用冷凍装置(10)が起動(電源スイッチがオンにされた場合)された際に、記録部(220)の記録内容(後述)を確認し、故障診断が中断されていた場合には、故障診断をリスタートさせる機能も有している。
【0063】
−記録部(220)−
記録部(220)は、故障診断の経過を記録するものである。記録部(220)に記録する内容は、終了した評価項目、それらの評価項目の開始時刻、終了時刻、評価結果、更には、現在実行中の評価の途中経過などである。例えば、現在実施中の評価項目で温度センサを使用する場合には、その検出値(すなわち温度)を検出時刻(あるいは評価開始時からの経過時間)と対にして記録する。記録部(220)の記録は、コンテナ用冷凍装置(10)に電源供給されていない場合にも保持できるように、不揮発性のメモリに記録されている。
【0064】
〈表示部(250)〉
表示部(250)は、ディスプレイ装置(例えば液晶パネル)を有し、コンテナ用冷凍装置(10)に関する情報を表示する。表示部(250)に表示される情報は多岐にわたるが、例えば、表示部(250)には、故障診断部(200)の指示(より具体的には診断制御部(210)の指示)に応じて、故障診断に関する情報が表示される。故障診断に関する情報としては、後に詳述する、通常の故障診断を行うかリスタートによる故障診断を行うかを示す情報や、故障診断の実施回数等が挙げられる。
【0065】
なお、この例では「実施回数」とは、ユーザが故障診断を指示した後に行われた故障診断の回数である。すなわち、ユーザによる故障診断の開始指示を受けた後に最初に行われる故障診断(すなわち通常の故障診断)を1回目とカウントする。図2は、表示部(250)における、故障診断の実施回数の表示例である。この例では、1回目の故障診断であることを示す「1st」という文字列が表示されている。すなわち、図2は、通常の故障診断の実施中であることを示している。
【0066】
そして、この表示部(250)には、リスタートが1回行われる毎に、例えば、2nd、3rdのように、実施回数がカウントアップされて表示される。例えば、「2nd」と表示されている場合には、通常の故障診断が中断され、1回目のリスタートが行われたことを示している。なお、故障診断が完了したり強制終了(後述)されたりした場合には、実施回数のカウントは、ゼロにクリアされる。
【0067】
〈故障診断の評価項目、及びリスタート〉
−第1種の評価項目−
このコンテナ用冷凍装置(10)では、複数の第1種の評価項目があり、これらの複数の項目(第1種の評価項目群とも呼ぶ)を所定の順番で評価する。例えば、第1種の評価項目としては、冷媒回路(20)に設けられている、温度センサや圧力センサの評価、これらのセンサのアラームの評価がある。冷媒回路(20)には、高圧圧力センサ(60)や低圧圧力センサ(63)等があり、高圧圧力センサ(60)の評価が一つの「第1種の評価項目」であり、低圧圧力センサ(63)の評価も一つの「第1種の評価項目」である。同様に、吸込温度センサ(70)、吹出温度センサ(71)などの各温度センサ(詳細は冷媒回路(20)の説明を参照)の評価も、それぞれが第1種の評価項目の例である。また、庫外ファン(35)、庫内ファン(36)の評価も第1種の評価項目である。
【0068】
また、冷媒回路(20)には、主膨張弁(32)等の種々の弁が設けられており、これらの弁の開閉動作の評価も第1種の評価項目である。なお、これらの弁の評価の際には、圧縮機(30)は作動させる場合がある。これは、所定の状態(例えば冷媒の圧力など)を再現した上で評価する場合があるからである。
【0069】
(第1種の評価項目のリスタート)
第1種の評価項目群のうちの何れかの項目の評価が中断させられた場合には、コンテナ用冷凍装置(10)では、第1種の評価項目群の最初の項目に戻って、故障診断をリスタートさせる。これは、第2種の評価項目の評価が、個々の機器の機能が正常であることが前提として行われる評価であり、より信頼できる故障診断を行うのは、第1種の評価項目の評価を入念に行う方がよいと考えられるからである。勿論、ユーザの利便性を考慮して、第1種の評価項目群の途中の項目からリスタートできるように故障診断部(200)を構成してもよい。そうすることで、既に評価が終了した評価(例えば温度センサの評価)を省略でき、故障診断をより効率的に行うことができる。
【0070】
−第2種の評価項目−
第2種の評価項目は、主に、冷媒回路(20)の冷蔵機能や冷凍機能などの、所定の機器が複合することで得られる機能を評価するための項目である。このコンテナ用冷凍装置(10)では、以下の評価項目がある。
【0071】
(1)冷蔵運転のプルダウン評価
この評価では、冷蔵運転により、吹出空気温度(SS)が10℃から1℃になるまでの時間(t)を計測し、その時間(t)が判定基準値(例えば120分)以内かどうかで合否を判定する。なお、吹出空気温度(SS)は吹出温度センサ(71)で検出する。また、この評価では、評価開始時の吹出空気温度が10℃未満の場合には、まず加熱運転によって、10℃よりも高くなるまで温度を上昇させてから冷蔵運転を行う。評価開始時の吹出空気温度(SS)が10℃以上の場合には、直ちに、冷蔵運転を開始させる。
【0072】
(「冷蔵運転のプルダウン評価」のリスタート)
コンテナ用冷凍装置(10)では、「冷蔵運転のプルダウン評価」が中断された場合における故障診断のリスタート機能として、以下の2つのモード(モード1、及びモード2)を有し、ユーザ(作業者)が何れのモードを利用するかを選択できるようになっている。これらのモードのうち、モード1は、「冷蔵運転のプルダウン評価」を最初からやり直すモードである。
【0073】
一方、モード2では、「冷蔵運転のプルダウン評価」の途中段階からリスタートする場合がある。詳しくは、モード2では、中断時の吹出空気温度(SS)を吹出空気温度(SS1)、吹出空気温度(SS1)に到達するまでにかかった時間を時間(t1)とすると、コンテナ用冷凍装置(10)では、リスタート時の吹出空気温度(SS2)と、中断時の吹出空気温度(SS1)との大小関係に応じて以下のように故障診断のリスタートを行う。
【0074】
(i)SS2≦SS1の場合
この場合は、加熱運転によって、SS1まで吹出空気温度(SS)を上昇させる。その後、冷蔵運転を行い、吹出空気温度(SS)がSS1から1℃になるまでの時間(t2)を測定する。そして、吹出空気温度(SS)が10℃から1℃まで下がるのに必要な時間として、t=t1+t2を求める。
【0075】
(ii)SS2>SS1且つSS2≦10℃の場合
この場合は、加熱運転は不要であり、直ちに冷蔵運転を行う。そして、吹出空気温度(SS)がSS1から1℃になるまでの時間(t2)を測定し、吹出空気温度(SS)が10℃から1℃まで下がるのに必要な時間として、t=t1+t2を求める。
【0076】
(iii)SS2>10℃の場合
この場合は、モード1と同じ動作を行う。
【0077】
以上のように、(i),(ii)の場合は、評価時間がt1経過した段階から評価をリスタートするものと見なすことができる。一方、(iii)の場合には、「冷蔵運転のプルダウン評価」自体をやり直すことになる。そして、診断制御部(210)は、(i)〜(iii)の何れの場合においても、吹出空気温度が10℃から1℃にまで下がるのに必要な時間(t)が求まると、その値と判定基準値(この例では120分)を比較して評価結果を求める。
【0078】
なお、上記のリスタート動作を実現するため、記録部(220)は、周期的に吹出温度センサ(71)の出力をモニターしてその値を記録している。診断制御部(210)は、中断の直近に記録部(220)に記録された吹出空気温度(SS)を中断時の吹出空気温度(SS1)として用いる。また、何れのモードにおいても、リスタート時には、圧縮機(30)の保護のために、圧縮機(30)に過度な負荷がかからないように、圧縮機(30)の回転速度や各弁の制御(起動制御とも呼ぶ)を行うのが望ましい(以下、他の評価項目のリスタートでも同様)。
【0079】
(2)冷蔵温度保持の評価
この評価では、冷蔵運転によって所定の温度を保持できるかどうかを評価する。この例では、冷蔵運転を行って、吹出空気温度(SS)=0℃で10分間、連続運転できるかどうかを評価する。
【0080】
(「冷蔵温度保持の評価」のリスタート)
「冷蔵温度保持の評価」が中断された場合における故障診断のリスタートでは、「冷蔵温度保持の評価」を最初からやり直す。これは、「冷蔵温度保持の評価」は、所定時間、連続運転することが評価の前提であり、評価項目の途中段階からのリスタートには馴染まない項目だからである。
【0081】
(3)デフロスト運転の評価
この評価では、デフロスト運転を実施し、その所要時間を計測し、その時間が判定基準値(例えば90分)以内かどうかで合否を判定する。
【0082】
(「デフロスト運転の評価」のリスタート)
「デフロスト運転の評価」が中断された場合におけるリスタートでは、「デフロスト運転の評価」を最初からやり直す。
【0083】
(4)冷凍運転のプルダウン評価
この評価では、冷凍運転により、この項目の評価開始時の吸込空気温度(RS)が0℃から−18℃になるまでの時間(t)を計測し、その時間(t)が判定基準値(例えば180分)以内かどうかで合否を判定する。なお、吸込空気温度(RS)は吹出温度センサ(71)で検出する。また、この評価では、評価開始時の吸込空気温度(RS)が0℃未満の場合には、まず加熱運転によって、0℃よりも高い温度(本実施形態では3℃)まで温度を上昇させてから冷凍運転を行う。評価開始時の吸込空気温度(RS)が3℃以上の場合には、直ちに、冷凍運転を開始させる。なお、冷凍運転において、吸込空気温度(RS)を用いて制御するのは、冷凍運転では、庫内の温度が確実に目標温度にまで下がることが重要であり、それには、吹出空気温度(SS)よりも高い吸込空気温度(RS)を見て制御する方がより確実な温度管理が可能になるからである。
【0084】
(「冷凍運転のプルダウン評価」のリスタート)
この評価項目のリスタートに関する考え方は、既述した「冷蔵運転のプルダウン評価」のリスタートと同様である。すなわち、コンテナ用冷凍装置(10)では、「冷凍運転のプルダウン評価」が中断された場合における故障診断のリスタートのモードとして、以下の2つのモード(モード1、及びモード2)を有し、ユーザ(作業者)が何れのモードを利用するかを選択できるようになっている。これらのモードのうち、モード1は、「冷凍運転のプルダウン評価」を最初からやり直すモードである。
【0085】
一方、モード2では、「冷凍運転のプルダウン評価」の途中段階から評価をリスタートする場合がある。詳しくは、モード2では、中断時の吸込空気温度(RS)を吸込空気温度(RS1)、吸込空気温度(RS1)に到達するまでにかかった時間を時間(t1)とすると、コンテナ用冷凍装置(10)では、リスタート時の吸込空気温度(RS2)と、中断時の吸込空気温度(RS1)との大小関係に応じて以下のように故障診断のリスタートを行う。
【0086】
(i)RS2≦RS1の場合
この場合は、加熱運転によって、RS1まで吸込空気温度(RS)を上昇させる。その後、冷凍運転を行い、吸込空気温度(RS)がRS1から−18℃になるまでの時間(t2)を測定する。そして、吸込空気温度(RS)が0℃から−18℃まで下がるのに必要な時間として、t=t1+t2を求める。
【0087】
(ii)RS2>RS1且つRS2≦0℃の場合
この場合は、加熱運転は不要であり、直ちに冷凍運転を行う。そして、吸込空気温度(RS)がRS1から−18℃になるまでの時間(t2)を測定し、吸込空気温度(RS)が0℃から−18℃まで下がるのに必要な時間として、t=t1+t2を求める。
【0088】
(iii)RS2>10℃の場合
この場合は、モード1と同じ動作を行う。
【0089】
以上のように、(i),(ii)の場合は、評価時間がt1経過した段階からリスタートするものと見なすことができる。一方、(iii)の場合には、「冷凍運転のプルダウン評価」自体をやり直すことになる。そして、診断制御部(210)は、(i)〜(iii)の何れの場合においても、吸込空気温度(RS)が0℃から−18℃にまで下がるのに必要な時間(t)が求まると、その値と判定基準値(この例では180分)を比較して評価結果を求める。
【0090】
なお、上記のリスタート動作を実現するため、記録部(220)は、周期的に吸込温度センサ(70)の出力をモニターしてその値を記録している。診断制御部(210)は、中断の直近に記録部(220)に記録された吸込空気温度(RS)を中断時の吸込空気温度(RS1)として用いる。
【0091】
(5)冷凍温度保持の評価
この評価では、冷凍運転によって所定の温度を保持できるかどうかを評価する。この例では、冷凍運転を行って、吸込空気温度(RS)=−18℃(設定温度=−18℃)で10分間、連続運転できるかどうかを評価する。
【0092】
(「冷凍温度保持の評価」のリスタート)
「冷凍温度保持の評価」が中断された場合におけるリスタートでは、「冷凍温度保持の評価」を最初からやり直す。これは、「冷凍温度保持の評価」は、所定時間、連続運転することが評価の前提であり、評価項目の途中段階からのリスタートには馴染まない項目だからである。
【0093】
〈故障診断の実施〉
コンテナ用冷凍装置における故障診断は、比較的長時間(例えば3時間)かかるので、作業者が退社前に故障診断をスタートさせ、作業時間外に故障診断を行わせるという運用がなされる場合がある。しかしながら、例えば、コンテナが置かれた場所によっては商用電源の信頼性が低く、作業者が故障診断を監視していない期間に、停電や電圧低下等によって故障診断が中断させられることがある。それに対し、本実施形態のコンテナ用冷凍装置(10)では、以下のようにして故障診断のリスタートが自動的に行われる。
【0094】
コンテナ用冷凍装置(10)では、停電などの電力異常状態から復旧して正常な電力供給が再開されると、診断制御部(210)は、記録部(220)の内容を確認する。例えば、故障診断が正常に終了していた場合(全ての評価項目について終了の記録があった場合)には、故障診断部(200)は動作を終了し、コントローラ(100)が、作業者の入力待ち状態になる。一方、故障診断が中断されていた場合(最後の評価項目まで終了の記録がない場合)には、診断制御部(210)が故障診断をリスタートさせる。
【0095】
このとき、表示部(250)には、診断制御部(210)によって、故障診断をリスタートさせる旨の情報が表示される。図3は、リスタート動作が開始される場合における表示部(250)の表示例を示す。この例では、本実施形態における故障診断の略号である「PTI」とともに「Restart」の文字列が表示されている(なお、PTIは、「Pre-Trip Inspection」の略である)。また、表示部(250)には、故障診断が開始されるまでの秒数(図3の例では10秒)も表示されている。この秒数は適宜カウントダウンされる。
【0096】
なお、図4には、通常の故障診断が開始される場合における表示部(250)の表示例を示す。ここで、「通常の故障診断」とは、ユーザが故障診断を指示した後に行われる初回の故障診断である。この例では、「System Check」の文字列が表示されており、リスタートによる故障診断が行われる場合と区別できる。また、この場合も診断開始までの秒数(図4の例では10秒)も表示されている。この秒数も適宜カウントダウンされる。
【0097】
そして、故障診断がリスタートされると、表示部(250)には診断制御部(210)によって、故障診断の実施回数をカウントアップして表示する。
【0098】
例えば、第1種の評価項目の評価中に故障診断が中断させられた場合には、診断制御部(210)は、第1種の評価項目群の最初の項目に戻って、故障診断をリスタートさせる。また、第2種の評価項目の何れかを評価中に故障診断が中断させられた場合には、中断された評価項目が途中段階からのリスタートを許容するかどうかで、リスタートのポイント異なってくる。
【0099】
「冷蔵運転のプルダウン評価」や「冷凍運転のプルダウン評価」は、既述の通り、モード2では、途中段階でのリスタートが可能な場合がある。例えば、「冷蔵運転のプルダウン評価」に関してユーザがモード2を選択していた場合に、この評価の途中で、故障診断が中断されたと仮定する。
【0100】
この場合に、正常な電力供給が再開されると、診断制御部(210)は、記録部(220)を確認し、中断時の吹出空気温度(SS1)と、吹出空気温度(SS1)に到達するまでにかかった時間(t1)を求める。例えば、(i)SS2≦SS1の場合や、(ii)SS2>SS1且つSS2≦10℃の場合には、吹出空気温度(SS)がSS1まで下がった段階までは時間計測が済んだものとして評価を行う。すなわち、「冷蔵運転のプルダウン評価」の途中段階からリスタートするのである。
【0101】
なお、リスタート時の吹出空気温度(SS2)>10℃の場合には、「冷蔵運転のプルダウン評価」を初めからやり直すことになる。また、「冷蔵運転のプルダウン評価」や「冷凍運転のプルダウン評価」において、ユーザがモード1を選択した場合にも、やはり、その評価項目を初めからやり直すことになる。また、「冷蔵温度保持の評価」のように途中段階のリスタートができない(或いは好ましくない)項目もある。このような評価項目は、その評価項目を初めからやり直すことになる。
【0102】
〈本実施形態における効果〉
図5は、「冷蔵運転のプルダウン評価」を、モード1を利用してリスタートした場合のタイムチャートである。図5では、縦軸が吹出空気温度(SS)である。なお、停電中は、空気の吹き出しはないが、図5では、停電の期間も吹出温度センサ(71)の検出値を吹出空気温度という名称で呼んでいる。そして、図5では、(A)がリスタート時の吹出空気温度(SS2)≦10℃の場合、(B)がリスタート時の吹出空気温度(SS2)>0℃の場合をそれぞれ示している。
【0103】
コンテナ用冷凍装置(10)では、図5に示すように、電力が復旧した後に故障診断が自動的にリスタートさせられている。これは、例えば作業者が退社時に故障診断をスタートさせ夜間に故障診断を実行させるような運用を行った場合に有益である。すなわち、作業者がいない深夜に停電したようなケースにおいて、作業者が翌朝に作業を開始するよりも前に電源が復旧すれば、翌朝に作業者が手動で故障診断をリスタートするよりも、本実施形態では、より早く故障診断を終えることが可能になる。
【0104】
また、図6は、「冷蔵運転のプルダウン評価」を、モード2を利用してリスタートした場合のタイムチャートである。図6では、(A)がリスタート時の吹出空気温度(SS2)≦中断時の吹出空気温度(SS1)の場合、(B)がSS2>SS1の場合をそれぞれ示す。例えばコンテナが置かれている場所の気温(外気温)が比較的低い場合には、(A)に示すように、停電中に吹出空気温度(SS)(実質的には庫内温度)が徐々に低下する場合がある。
【0105】
そして、モード2では、図6に示すように、電力供給が復旧した後に、「冷蔵運転のプルダウン評価」の途中段階から、故障診断が自動的にリスタートさせられている。そのため、モード2では、モード1よりも更に早く故障診断を終えることが可能になる。
【0106】
以上のように、本実施形態によれば、故障診断が中断させられた場合の時間のロスを低減することが可能になる。
【0107】
《発明の実施形態2》
図7は、本発明の実施形態2にかかる故障診断部(200)の構成を示すブロック図である。本実施形態の故障診断部(200)は、実施形態1の故障診断部(200)に、受信部(230)と送信部(240)とを追加するとともに、診断制御部(210)に変更を加えたものである。
【0108】
受信部(230)は、遠隔通信によって、ユーザからリスタートの指示を受信する。この例では、受信部(230)は、携帯端末(例えば、いわゆるスマートフォン)と通信(受信)できるようなっている。そして、本実施形態では、診断制御部(210)は、受信部(230)がリスタートの指示を受けたら、その指示を記憶し、リスタート可能な状態になったら、リスタート機能を実行する。すなわち、本実施形態では、故障診断のリスタートをユーザが遠隔地から指示できる。
【0109】
また、診断制御部(210)は、商用電源の状態(例えば電圧)を周期的にモニターし、故障診断が中断された場合には、予め設定された携帯端末(ユーザのスマートフォン等)に対して、中断されたことを示す情報を通知する。この通知は、送信部(240)を介して行う。すなわち、送信部(240)は、故障診断が中断された場合に、中断されたことを示す情報を遠隔通信によってユーザに通知する。送信部(240)による通知は、例えばE−mailによる通知や、中断したことを画面に表示するソフトウエアをユーザのスマートフォンに入れておいて、そのソフトウエアを起動させることによる通知など、種々の方法が考えられる。なお、本実施形態では、故障診断部(200)は、診断制御部(210)や送信部(240)が停電時にも動作できるようにバッテリーを備えている。
【0110】
〈故障診断のリスタート〉
本実施形態では、診断制御部(210)が、商用電源の状態を周期的にモニターしている。そのため、故障診断が中断されるような電源の異常(例えば停電)を検知したら、診断制御部(210)は、送信部(240)を介して、故障診断が中断したことを送信(通知)する。それにより、ユーザは、その情報を携帯端末などで受信することになる。そして、ユーザが、故障診断部(200)に故障診断のリスタートの指示を送信しておけば、診断制御部(210)が、電源が復旧した際に故障診断をリスタートさせる。勿論、故障診断のリスタートが不要であるとユーザが判断すれば、ユーザは、単に上記通知を無視すればよい。
【0111】
〈本実施形態における効果〉
本実施形態でも、実施形態1と同様に、故障診断の途中からのリスタートによって、時間のロスの低減も可能になる。
【0112】
そして、本実施形態では、故障診断が中断した場合にその事実をユーザが直ちに知ることができる。したがって、電源復旧後に、直ちに故障診断をリスタートさせることが可能になる。本実施形態の機能は、故障診断を勤務時間内に実施させつつ、作業者が別の作業を行うような場合に有益な機能である。
【0113】
更に、本実施形態では、リスタートの要否をユーザが判断することができるので、その点においても、コンテナの効果的な運用が可能になる。
【0114】
なお、本実施形態の携帯端末は、いわゆるスマートフォンには限定されない。
【0115】
《その他の実施形態》
(1)なお、リスタート機能を必要としないユーザがいることも考えられるので、そのようなユーザのために、スタート機能の有効、無効をユーザが設定できるように故障診断部(200)を構成することが考えられる。そうすることで、ユーザの利便性が向上する。
【0116】
(2)また、リスタート機能を有効に設定しているユーザであっても、状況によっては、故障診断のリスタートを望まない場合があると考えられる。そのため、そのようなユーザのために、入力されたユーザの指示に応じて、リスタートに係る動作を強制終了させる機能を故障診断部(200)に設けてもよい。ここで、「リスタートに係る動作」には、故障診断部(200)が故障診断を開始する前の段階(準備段階)の動作も、故障診断がリスタートされた後の段階の動作も含む概念である。なお、この強制終了を行っても、スタート機能自体を無効化した場合とは異なり、ユーザが新たに故障診断をスタートさせた場合には、必要に応じてリスタートが行われる。
【0117】
(3)また、リスタート動作を自動的に強制終了させることも考えられる。例えば、ユーザが所定の操作を行った場合には、リスタートを行わない方が好ましいと考えられる場合がある。具体的には、故障診断の途中にユーザがコンテナ用冷凍装置(10)の電源スイッチをオフにした場合や、ユーザが何らかの設定を行うためにコンテナ用冷凍装置(10)の制御盤を操作した場合などが考えられる。
【0118】
(4)また、コンテナ用冷凍装置(10)の電源がオフとなることによって故障診断が中断されてから所定期間(例えば3日)が経過した場合には、リスタート動作を自動的に強制終了、或いは、リスタートの指令を受け付けないようにすることも考えられる。このように、中断期間が比較的長い場合には、コンテナ用冷凍装置(10)や電源等の状況を確認してから、改めて故障診断の要否を検討する方が評価の信頼性を確保する観点からは好ましい場合があるからである。
【0119】
(5)また、リスタート回数には制限を設けてもよい。例えば、商用電源が不安定な地域では、故障診断の中断とリスタートが繰り返されて、長期間にわたって故障診断が終了しないことも考えられる。このような場合には、リスタートを繰り返すよりも、商用電源が安定してから故障診断をやり直す方が診断の信頼性が増す場合もあると考えられる。
【0120】
(6)また、実施形態1のリスタート機能と、実施形態2のリスタート機能の両方の機能を故障診断部(200)に組み込んで、何れの方式でリスタートするかを、ユーザが選択できるようにしておくと利便性が向上する。
【0121】
(7)また、上記実施形態で挙げた評価項目や、それらの評価における条件や判定値は例示である。
【産業上の利用可能性】
【0122】
本発明は、コンテナの庫内を冷却するコンテナ用冷凍装置として有用である。
【符号の説明】
【0123】
10 コンテナ用冷凍装置
20 冷媒回路
200 故障診断部
220 記録部
240 受信部
250 送信部
【要約】
【課題】故障診断が中断させられた場合の時間のロスを低減できるようにする。
【解決手段】冷媒回路(20)を構成する機器及び該冷媒回路(20)の機能を、複数の評価項目に渡って順次評価する故障診断を行う故障診断部(200)を設ける。故障診断部(200)には、故障診断が中断された場合に、該故障診断の途中からリスタートするリスタート機能を設ける。
【選択図】図1
図1
図5
図6
図7
図2
図3
図4