【実施例】
【0059】
本発明の実施例について説明する。かかる実施例によって本発明が限定されるものではない。
【0060】
(実施例1)
水素化ニトリルゴム(日本ゼオン社製「Zetpol 1020」)
100重量部
カーボンブラック(新日化カーボン社製「旭#60」;平均粒子径:45nm、ヨウ素吸着量:43g/kg、DBP吸油量:114ml/100g)
80重量部
カーボンファイバー(三菱化学産資社製「ダイアリードK6371M」;算術平均繊維長:55μm、算術平均繊維径:11μm)
10重量部
加硫剤(ジクミルパーオキサイド)(日本油脂社製「パーブチルP」)
4重量部
【0061】
以上の各成分を、ニーダおよびオープンロールにて混練し、混練物を加硫プレスにより180℃8分間の加硫を行ない、JIS規定円形試験片(直径120mm、厚さ2mm)、JIS規定ダンベル4号試験片(長さ100mm、幅15mm、厚さ2mm)を得た。
【0062】
<評価方法>
(1)耐摩耗特性(摩耗特性試験)
試験片に以下の条件下で砥石を擦り付け、JIS K6264−2(2005)に準じてテーバー摩耗試験を行い、テーバー摩耗量(mg)によって耐摩耗特性を評価した。
・試験片形状:JIS規定円形試験片(直径120mm、厚さ2mm)
・試験温度:25℃
・周波数:1Hz
・荷重:1N
・摩耗回数:1000回
摩耗前後における試験片の重量差から摩耗量を算出し、摩耗量が110mg未満の材料を良好、110mg以上の材料を不良として評価した。
【0063】
(2)耐圧特性(ヒステリシス・ロス評価試験)
島津製作所製オートグラフ「AG−IS 100kN」を用いて、ストレス・ストローク曲線(s−s曲線)を求め、変形時・回復時の弾性エネルギーを算出した。
試験片を、以下の条件において一定応力まで変形させた後、元に戻すことを繰り返し行なった。
・試験片形状:JIS規定ダンベル4号試験片
・試験温度:150℃
・最大応力:5MPa
・繰り返し回数:50回
変形時の弾性エネルギーの総和から回復時の弾性エネルギーの総和を減じてヒステリシス・ロスを算出し、ヒステリシス・ロスが3.2J未満の材料を良好、3.2J以上の材料を不良と評価した。
CVT用シール材DリングとしてHNBR架橋体を用いた際に、ヒステリシス・ロスが抑えられることによって、はみ出し部のエグレ発生を抑えることができると評価できる。
【0064】
(実施例2)
実施例1において、FEFカーボンブラックの配合量を、75重量部と変更した以外は同様に架橋ゴム試料を成形し、同様に評価し、その結果を表1に示した。
【0065】
(実施例3)
実施例1において、FEFカーボンブラックの配合量を、85重量部と変更した以外は同様に架橋ゴム試料を成形し、同様に評価し、その結果を表1に示した。
【0066】
(実施例4)
実施例1において、カーボンファイバーの配合量を、7.5重量部と変更した以外は同様に架橋ゴム試料を成形し、同様に評価し、その結果を表1に示した。
【0067】
(実施例5)
実施例1において、カーボンファイバーの配合量を、15重量部と変更した以外は同様に架橋ゴム試料を成形し、同様に評価し、その結果を表1に示した。
【0068】
(実施例6)
実施例1において、FEFカーボンブラックの配合量を、75重量部と変更し、カーボンファイバーの配合量を、7.5重量部と変更した以外は同様に架橋ゴム試料を成形し、同様に評価し、その結果を表1に示した。
【0069】
(実施例7)
実施例1において、FEFカーボンブラックの配合量を、75重量部と変更し、カーボンファイバーの配合量を、15重量部と変更した以外は同様に架橋ゴム試料を成形し、同様に評価し、その結果を表1に示した。
【0070】
(実施例8)
実施例1において、FEFカーボンブラックの配合量を、85重量部と変更し、カーボンファイバーの配合量を、7.5重量部と変更した以外は同様に架橋ゴム試料を成形し、同様に評価し、その結果を表1に示した。
【0071】
(実施例9)
実施例1において、FEFカーボンブラックの配合量を、85重量部と変更し、カーボンファイバーの配合量を、15重量部と変更した以外は同様に架橋ゴム試料を成形し、同様に評価し、その結果を表1に示した。
【0072】
(実施例10)
実施例1において、カーボンファイバー10重量部を、ウォラストナイト(巴工業社製「NYAD 400」;繊維長:35μm、繊維径:7μm)10重量部と変更した以外は同様に架橋ゴム試料を成形し、同様に評価し、その結果を表2に示した。
【0073】
(実施例11)
実施例1において、FEFカーボンブラックの配合量を、75重量部と変更し、カーボンファイバー10重量部を、ウォラストナイト(巴工業社製「NYAD 400」;繊維長:35μm、繊維径:7μm)10重量部と変更した以外は同様に架橋ゴム試料を成形し、同様に評価し、その結果を表2に示した。
【0074】
(実施例12)
実施例1において、FEFカーボンブラックの配合量を、85重量部と変更し、カーボンファイバー10重量部を、ウォラストナイト(巴工業社製「NYAD 400」;繊維長:35μm、繊維径:7μm)10重量部と変更した以外は同様に架橋ゴム試料を成形し、同様に評価し、その結果を表2に示した。
【0075】
(実施例13)
実施例1において、カーボンファイバー10重量部を、ウォラストナイト(巴工業社製「NYAD 400」;繊維長:35μm、繊維径:7μm)7.5重量部と変更した以外は同様に架橋ゴム試料を成形し、同様に評価し、その結果を表2に示した。
【0076】
(実施例14)
実施例1において、カーボンファイバー10重量部を、ウォラストナイト(巴工業社製「NYAD 400」;繊維長:35μm、繊維径:7μm)15重量部と変更した以外は同様に架橋ゴム試料を成形し、同様に評価し、その結果を表2に示した。
【0077】
(実施例15)
実施例1において、FEFカーボンブラックの配合量を、75重量部と変更し、カーボンファイバー10重量部を、ウォラストナイト(巴工業社製「NYAD 400」;繊維長:35μm、繊維径:7μm)7.5重量部と変更した以外は同様に架橋ゴム試料を成形し、同様に評価し、その結果を表2に示した。
【0078】
(実施例16)
実施例1において、FEFカーボンブラックの配合量を、75重量部と変更し、カーボンファイバー10重量部を、ウォラストナイト(巴工業社製「NYAD 400」;繊維長:35μm、繊維径:7μm)15重量部と変更した以外は同様に架橋ゴム試料を成形し、同様に評価し、その結果を表2に示した。
【0079】
(実施例17)
実施例1において、FEFカーボンブラックの配合量を、85重量部と変更し、カーボンファイバー10重量部を、ウォラストナイト(巴工業社製「NYAD 400」;繊維長:35μm、繊維径:7μm)7.5重量部と変更した以外は同様に架橋ゴム試料を成形し、同様に評価し、その結果を表2に示した。
【0080】
(実施例18)
実施例1において、FEFカーボンブラックの配合量を、85重量部と変更し、カーボンファイバー10重量部を、ウォラストナイト(巴工業社製「NYAD 400」;繊維長:35μm、繊維径:7μm)15重量部と変更した以外は同様に架橋ゴム試料を成形し、同様に評価し、その結果を表2に示した。
【0081】
(比較例1)
実施例1において、FEFカーボンブラック80重量部を、SRF−LMカーボンブラック(新日化カーボン社製「旭#50」;平均粒子径:80nm、ヨウ素吸着量:23g/kg、DBP吸油量:63ml/100g)80重量部と変更した以外は同様に架橋ゴム試料を成形し、同様に評価し、その結果を表3に示した。
【0082】
(比較例2)
実施例1において、FEFカーボンブラック80重量部を、MAFカーボンブラック(新日化カーボン社製「旭#60H」;平均粒子径:41nm、ヨウ素吸着量:50g/kg、DBP吸油量:124ml/100g)10重量部と変更した以外は同様に架橋ゴム試料を成形し、同様に評価し、その結果を表3に示した。
【0083】
(比較例3)
実施例1において、FEFカーボンブラック80重量部を、SRF−LMカーボンブラック(新日化カーボン社製「旭#50」;平均粒子径:80nm、ヨウ素吸着量:23g/kg、DBP吸油量:63ml/100g)80重量部と変更し、カーボンファイバー10重量部を、ウォラストナイト(巴工業社製「NYAD−400」)10重量部と変更した以外は同様に架橋ゴム試料を成形し、同様に評価し、その結果を表3に示した。
【0084】
(比較例4)
実施例1において、FEFカーボンブラック80重量部を、MAFカーボンブラック(新日化カーボン社製「旭#60H」;平均粒子径:41nm、ヨウ素吸着量:50g/kg、DBP吸油量:124ml/100g)80重量部と変更し、カーボンファイバー10重量部を、ウォラストナイト10重量部と変更した以外は同様に架橋ゴム試料を成形し、同様に評価し、その結果を表3に示した。
【0085】
(比較例5)
実施例1において、カーボンファイバー10重量部を、炭化ケイ素(屋久島電工社製「ダイヤシックOY−20」)10重量部と変更した以外は同様に架橋ゴム試料を成形し、同様に評価し、その結果を表3に示した。
【0086】
(比較例6)
実施例1において、カーボンファイバー10重量部を、二酸化チタン(石原産業社製「タイペークA−100」)10重量部と変更した以外は同様に架橋ゴム試料を成形し、同様に評価し、その結果を表3に示した。
【0087】
(比較例7)
実施例1において、FEFカーボンブラック80重量部を、MAFカーボンブラック(新日化カーボン社製「旭#60H」;平均粒子径:41nm、ヨウ素吸着量:50g/kg、DBP吸油量:124ml/100g)80重量部と変更し、カーボンファイバー10重量部を、二酸化チタン(石原産業社製「タイペークA−100」)10重量部と変更した以外は同様に架橋ゴム試料を成形し、同様に評価し、その結果を表3に示した。
【0088】
(比較例8)
実施例1において、FEFカーボンブラックの配合量を、70重量部と変更した以外は同様に架橋ゴム試料を成形し、同様に評価し、その結果を表3に示した。
【0089】
(比較例9)
実施例1において、FEFカーボンブラックの配合量を、90重量部と変更した以外は同様に架橋ゴム試料を成形し、同様に評価し、その結果を表3に示した。
【0090】
(比較例10)
実施例1において、FEFカーボンブラックの配合量を、70重量部と変更し、カーボンファイバー10重量部を、ウォラストナイト(巴工業社製「NYAD 400」;繊維長:35μm、繊維径:7μm)10重量部と変更した以外は同様に架橋ゴム試料を成形し、同様に評価し、その結果を表3に示した。
【0091】
(比較例11)
実施例1において、FEFカーボンブラックの配合量を、90重量部と変更し、カーボンファイバー10重量部を、ウォラストナイト(巴工業社製「NYAD 400」;繊維長:35μm、繊維径:7μm)10重量部と変更した以外は同様に架橋ゴム試料を成形し、同様に評価し、その結果を表3に示した。
【0092】
(比較例12)
実施例1において、カーボンファイバーの配合量を、2.5重量部と変更した以外は同様に架橋ゴム試料を成形し、同様に評価し、その結果を表3に示した。
【0093】
(比較例13)
実施例1において、カーボンファイバーの配合量を、25重量部と変更した以外は同様に架橋ゴム試料を成形し、同様に評価し、その結果を表3に示した。
【0094】
(比較例14)
実施例1において、カーボンファイバー10重量部を、ウォラストナイト2.5重量部と変更した以外は同様に架橋ゴム試料を成形し、同様に評価し、その結果を表3に示した。
【0095】
(比較例15)
実施例1において、カーボンファイバー10重量部を、ウォラストナイト(巴工業社製「NYAD 400」;繊維長:35μm、繊維径:7μm)25重量部と変更した以外は同様に架橋ゴム試料を成形し、同様に評価し、その結果を表3に示した。
【0096】
【表1】
【0097】
【表2】
【0098】
【表3】
【0099】
<評価>
実施例と比較例1〜4から、耐摩耗特性、耐圧特性を満たすために用いられるカーボンブラックとしては、FEFカーボンブラックが最適であり、SRF−LMカーボンブラック、MAFカーボンブラックでは耐摩耗特性に劣ることが明確になった。
【0100】
また、実施例と比較例8〜10から、カーボンブラックの配合量は、75〜85重量部という極めて限定された範囲において耐摩耗特性、耐圧特性を満たすことが確認できた。
【0101】
従来、カーボンブラックは高強度、耐摩耗性を補う場合に添加することは知られており、先行技術においても、多量に添加することが開示されているが、本発明において、耐圧特性、耐摩耗特性を満たすためには、極めて限定された範囲での添加が重量であることが明確になった。また、カーボンブラックの種類に関しても、極めて限定されたカーボンブラックにおいて、耐圧特性、耐摩耗特性を満足させることができる点が明らかとなった。
【0102】
一方、実施例と比較例5、6、7から、耐摩耗特性、耐圧特性を満たすために用いられる硬質充填材としては、数ある充填材のうち、カーボンファイバー又はウォラストナイトが最適であることが確認できた。
【0103】
また、実施例と比較例12〜15から、硬質充填材の配合量は3〜20の配合量において、効果を発揮することが確認できた。
【0104】
特に、カーボンファイバーの増量により、テーバー摩耗量が増加し(耐摩耗特性が悪化し)、ヒステリシス・ロスは減少する(耐圧特性は良好となる)傾向であることがわかる。
【0105】
硬質充填材においても、極めて限定された範囲での添加が重要であることが明確になった。