【発明が解決しようとする課題】
【0006】
交通事故の多くに追突事故がある。特に大型トラックやバス等の追突は大きな事故になりやすい。運送やバス等の事業者にとって、運転者の管理、教育などによりこのような追突事故を減少させることは、利益にも繋がるので、非常に重要である。追突事故の主な要因には、短い車間距離、居眠り運転、わき見運転等がある。これらは、各運転者の適正、癖、疲労度なども関係するので、各運転者ごとの日常の運転状態や、どのような場合に危険な運転状態に陥りやすいか、すなわち、危険な運転状態に陥りやすい運転時間、運転距離、運転環境などを分析して統計的に把握し、その結果に基づいて管理、教育を行えば事故を減少できる。上記のような運転者の管理、教育を行うことを可能とする安全運転管理システムが必要とされている。
【0007】
特許文献1に記載の運行状態記録装置および運行管理システムは、事故の発生状況を詳細に再現して事故原因を把握するため、危険状態での運転時の記録を主目的としている。一方、上記のような目的の安全運転管理システムでは、安全な運転状態の情報を危険度の高い運転状態の情報と同程度に詳細に記録し、分析し、出力する必要がある。また、特許文献1のシステムでは、安全な運転状態と危険度の高い運転状態の比較に関する統計的な把握もできない。そこで、特許文献1のシステムは上記の安全運転管理システムの用途には使用できない。
【0008】
特許文献2のシステムは、自動車教習場などにおいて、運転者の傾向や癖を、運転中に撮影された画像情報や運転操作情報により解析して運転者に通知し、安全運転を支援することを目的としている。主として動画像の解析のみによって運転者の運行状態や運転操作に関する傾向を得るものである。そこで、上記の目的の安全運転管理システムとして適用した場合、詳細な運転状態の把握や長期間にわたる運転状態の把握が十分にできないおそれがある。また、安全な運転状態と危険な運転状態の比較、分析手段、その比較結果の出力手段などが示されていないので、運転者に対する管理、教育が的確にできない。
【0009】
本発明の目的は、上記の課題を解決し、運転者の日常の運転状態や、危険な運転状態に陥りやすい運転状況などを分析し、統計的に把握して、管理、教育を行うことを可能とする車両の安全運転管理システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
第1の観点では、本発明は、車両の前方に存在する物体との距離に関する情報を取得する手段と、前記距離とは異なる車両の走行状況に関する情報を取得する手段と、前記車両の運転状態を分析する分析手段とを備え、前記分析手段は、前記距離に関する情報と前記車両の走行状況に関する情報とこれら両者の関係に基づいて、前記車両の運転状態が危険状態か否かを分析することを特徴とする車両の安全運転管理システムを提供する。
【0011】
上記第1の観点による車両の安全運転管理システムでは、分析手段により分析された情報に基づいて、運転者の日常の運転状態や、危険な運転状態に陥りやすい運転状況などを分析し、統計的に把握して、管理、教育を行うことができる。ここで、車両の前方に存在する物体との距離に関する情報には車間センサの計測情報などがあり、前記距離とは異なる車両の走行状況に関する情報としては、車両の位置や速度などの情報、さらには、走行中の道路や車両の周囲の状況などに関する情報も含まれる。また、各情報の計測時の時刻、または任意の基準時刻からの経過時間などの情報を取得することにより、各情報が関係付けられる。前記の距離に関する情報や車両の走行状況に関する情報を取得する手段としては、運転時に各々の情報の計測手段等から直接取得する方法や、記憶装置などの記憶手段に一旦記憶された情報を後に取得する方法、これらの方法を併用する方法などがある。また、分析としては、例えば、車両の運転状態が危険状態か否かを分別判定する構成とするとよい。
【0012】
第2の観点では、本発明は、前記第1の観点による車両の安全運転管理システムにおいて、前記車両の走行状況に関する情報として、前記車両の前方に存在する物体との距離が車間距離でなく周囲の構造物との間の距離である可能性があるか否かを判断するための前方確認情報を備え、前記分析手段は、前記前方確認情報に基づいて前記可能性があると判断した場合、当該可能性を加味して前記分析を行うことを特徴とする。
【0013】
車両の前方に存在する物体との距離に関する情報を得る手段として一般的に使用される車間センサは、レーザ光やマイクロ波の車両の前方の物体からの反射を検出して車間を計測するものであるので、前方に道路の周囲の構造物などの車両以外の物体が存在すると、前方車両との間の車間距離ではなくその構造物との間の距離を計測している可能性がある。そこで、前方確認情報により得られる道路の状況や道路周囲の物体、その位置関係などに基づいて、車両以外の物体との間の距離を計測している可能性がある場合、当該可能性を加味して前記分析を行うことにより、より正確に、危険状態か否かの分析を行うことができる。
【0014】
第3の観点では、本発明は、前記第2の観点による車両の安全運転管理システムにおいて、前記距離に関する情報と前記車両の走行状況に関する情報とこれら両者の関係を特定可能に記憶する記憶手段を備え、前記分析手段は、前記記憶手段に記憶された前記距離に関する情報と前記車両の走行状況に関する情報とに基づいて、前記分析を行うことを特徴とする。
【0015】
第3の観点による車両の安全運転管理システムにおいては、分析手段は記憶手段に記憶された情報に基づいて分析を行うので、分析処理速度に対する制限は少ない。このため、特に高速の処理装置でなくとも処理が可能となり、情報を計測手段等から直接入手する場合に比べて、より安価な処理装置を使用できる。また、分析手段を車両に搭載する必要がなく、通常のパーソナルコンピュータを分析手段として適用できる可能性がある。さらに、分析処理速度に対する制限が少ないことから、より正確な前方確認情報を用いた車両以外の物体との間の距離を計測している可能性の判断や、それを加味した分析が可能となる。
【0016】
第4の観点では、本発明は、前記第2または前記第3の観点による車両の安全運転管理システムにおいて、前記分析手段は、前記距離に関する情報と前記車両の走行状況に関する情報とこれら両者の関係に基づいて、前記車両の走行状態を、前記運転状態が危険状態にない安全走行状態と、前記運転状態が危険状態にある危険走行状態とに分別し、その分別結果を出力することを特徴とする。
【0017】
上記第4の観点による車両の安全運転管理システムでは、例えば、特定の時刻、時間間隔、特定の車両の位置、特定の位置の範囲内などにおける走行状態を安全走行状態と危険走行状態とに分別して出力する。各々の状態に該当した走行時間、走行距離、走行軌跡や、危険走行状態に該当した回数などを統計的に処理できるので、運転者に対してより分かりやすく管理、教育を行うことができる。
【0018】
第5の観点では、本発明は、前記第4の観点による車両の安全運転管理システムにおいて、前記分析手段は、前記危険走行状態として、前記距離に関する情報と前記車両の走行状況に関する情報とこれら両者の関係に基づいて危険運転範囲を設定し、危険運転範囲内の走行状況と危険運転範囲外の走行状況とに基づいて前記分別結果を出力することを特徴とする。
【0019】
上記第5の観点による車両の安全運転管理システムでは、例えば、危険運転範囲内での走行時間、危険運転範囲外での走行時間、危険運転範囲内での走行回数等により危険運転度を算出し、総合的な走行判定を行うことなども可能である。また、分析手段は、危険運転範囲を設定する場合に、前記距離に関する情報と前記車両の走行状況に関する情報から運転状態が危険状態と判断された2つの状態間の時間的な間隔、位置的な間隔、またはその状態の連続性などを加味して判断して設定するとよい。
【0020】
第6の観点では、本発明は、前記第4または前記第5の観点による車両の安全運転管理システムにおいて、前記車両の走行状況に関する情報として前記車両の位置に関する情報を備え、前記前方確認情報として前記車両が走行する道路が敷設された地形または前記道路の形状に関する情報を備え、前記分析手段は、前記車両の位置に関する情報と前記地形または前記道路の形状に関する情報を加味して前記分析を行うことを特徴とする。
【0021】
上記第6の観点による車両の安全運転管理システムでは、走行時の車両の位置情報とその位置における地形や道路の形状に関する情報とを備えるので、例えば、道路の勾配、カーブや変形状態などの情報を加味して分析することにより、それらを考慮した車両以外の物体が存在する可能性の判断や、道路状態の危険度を考慮した分析が可能となる。
【0022】
第7の観点では、本発明は、前記第4から前記第6のいずれかの観点による車両の安全運転管理システムにおいて、前記前方確認情報としてカメラにより撮影された画像情報を備え、前記分析手段は、前記画像情報を加味して前記分析を行うことを特徴とする。
【0023】
上記第7の観点による車両の安全運転管理システムでは、例えば、車両に搭載されたカメラにより撮影された画像情報を取得し、その画像情報を分析することにより、車両の前方の周囲に存在する物体、それらとの間の距離や位置関係、その変化などを把握でき、より的確に、前方の物体が車両であるか他の物体であるかを識別することができる。
【0024】
第8の観点では、本発明は、前記第4から前記第7のいずれかの観点による車両の安全運転管理システムにおいて、前記前方確認情報として加速度センサまたはジャイロセンサによる計測情報を備え、前記分析手段は、前記計測情報を加味して前記分析を行うことを特徴とする。
【0025】
上記第8の観点による車両の安全運転管理システムでは、加速度センサまたはジャイロセンサによる計測情報を備えるので、それらの情報により、道路のカーブ形状や傾斜などを推定でき、前方の物体が車両であるか他の物体であるかを推定することができる。
【0026】
第9の観点では、本発明は、前記第4から前記第8のいずれかの観点による車両の安全運転管理システムにおいて、前記分析手段は、前記危険走行状態を、前記距離と前記車両の走行状態に基づいて、危険度に応じた2以上の状態にさらに分別し、その分別結果を出力することを特徴とする。
【0027】
上記第9の観点による車両の安全運転管理システムでは、危険走行状態を危険度に応じた2以上の状態にさらに分別し、各々の危険走行状態に関する情報を出力する。例えば、各々の危険走行状態の走行時間、走行距離、走行軌跡、または各々の危険走行状態に該当した回数などを出力してもよい。第9の観点による車両の安全運転管理システムでは、速度に対する車間距離の判定条件を数段階設けて、危険走行状態のレベルを分けて判定し、出力することにより、運転者に対するより細かい管理、教育が可能となる。例えば、危険走行状態のレベルを点数化して統計し、各運転者に対して、走行時間に対する点数をグラフ化すると、運転者の癖や車間距離に対する注意度などがわかるので、的確な管理、指導を行うことができる。
【0028】
第10の観点では、本発明は、前記第4から前記第9のいずれかの観点による車両の安全運転管理システムにおいて、地図を表示可能な表示部を備え、前記分析手段は、前記車両の走行軌跡を安全走行状態と危険走行状態、または2以上の危険走行状態に分別して前記地図上に表示することを特徴とする。
【0029】
上記第10の観点による車両の安全運転管理システムでは、地図上に安全走行状態と危険走行状態の軌跡を区別して表示することにより、運転者の癖や走行中の注意の程度をわかりやすく指摘でき、効果的に運転者を指導することができる。
【0030】
第11の観点では、本発明は、コンピュータを、前記第1から前記第10のいずれかの観点による車両の安全運転管理システムとして機能させるためのプログラムを提供する。