【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のシールド付フレキシブルプリント配線板は、シールド層を備える。このシールド付フレキシブルプリント配線板は、ベース絶縁層と、ベース絶縁層に接して位置する信号線と、信号線およびベース絶縁層を覆うカバー絶縁層と、カバー絶縁層に接して位置する補強絶縁層とを備える。シールド層は前記補強絶縁層を覆っている。そして、補強絶縁層が、中実固体で形成され、(1)(形状的に)カバー絶縁層
、ベース絶縁層、およびシールド層、のいずれの層よりも小さい領域に位置
し、当該補強絶縁層では、平面的に見て信号線が位置する領域において、信号線が位置しない領域より、平均密度が高くなるように、補強絶縁層が、(a)平面的に見て前記信号線が位置する領域でのみ存在して他の領域では存在しない、又は(b1)該他の領域では部分的にしか存在しない、ことを特徴とする。
【0007】
上記の構成によれば、フレキシブルプリント配線板に導電層を配置してシールドをとることでノイズ電波の放射や侵入、およびクロストーク等を確実に防ぐことができる。加えて、補強絶縁層が信号線とシールド層との間に介在するので、信号線とシールド層との間隔を大きくすることができる。このため、信号線の線幅または断面積を小さくすることなく、インピーダンス整合をとることができる。このため、信号の伝送ロスを抑制することができる。また、上記の構造は非常に簡単であり、少ない工程の追加によって製造することができる。
さらに、カバー絶縁層上の全面に中実固体(多孔質ではない)の補強絶縁層を配置しないで、上記の(1
)の構成をとることで、補強絶縁層の挿入による可撓性の低下を抑制して所定レベルの可撓性を得ることができる。補強絶縁層において、平面的に見て信号線の領域での、平均密度(面密度)を他の領域より高くするのは、信号線とシールドとのインピーダンス整合をとり易くしながら、この目的のために影響が小さい部分では可撓性を劣化させないためである。
上記の(1)面積の減少化、とくに幅の大幅短尺
化は、補強絶縁層の剛性を低下させて、フレキシブルプリント配線板の可撓性を向上させる上で有効な手段である。
ここで、打ち抜き部分を含む、または打ち抜き領域であるとは、補強絶縁層が平面的にあるパターンで除去されていることをいい、たとえばパッチ状に存在しない又は規則正しく矩形模様等が除去されている状態をいう。この状態において、残っている補強絶縁層はどのような形態でもよく、たとえば櫛状、桟状または格子状などでもよい。
なお、上記のフレキシブルプリント配線板は、ベース絶縁層の片面側にシールド層等が設けられた片面基板であってもよいし、ベース絶縁層の両面側にシールド層等が設けられた両面基板であってもよい。また、カバー絶縁層、補強絶縁層などは、固定のための接着剤を当然、備えているが、煩雑になるので言及を省略した。
【0008】
補強絶縁層が、(a)平面的に見て信号線が位置する領域でのみ存在して他の領域では存在しない、又は(b1)該他の領域では部分的にしか存在しない構成をとる
。
上記の構成により、補強絶縁層による上述の効果を得ながら、可撓性の低下を抑制することができる。
【0009】
上記補強絶縁層が、他の領域で存在しな
い場合において、その補強絶縁層
について、該他の領域
では、カバー絶縁層とシールド層とが接していてその補強絶縁層のためのスペースがない構成にすることができる。
上記の構成によって、シールド性能およびインピーダンス整合を得ながら、十分高い可撓性を保持することができる。
【0010】
信号線の上面とシールド層の下面との間の距離が、信号線の上面とカバー絶縁層の上面との間の距離の1.1倍以上あるようにするのがよい。
ここで、上面は、一つの層を画定する両面において、ベース絶縁層から遠いほうの面をさし、トップ面、外側の面、またはおもて面とも呼ぶ。下面は、逆にベース絶縁層から近いほうの面をさし、底面または裏面とも呼ぶ。ベース絶縁層自体の両面については、信号線が片面側に設けられる場合は、信号線側の面をおもて面と呼び、逆側の面を裏面と呼ぶ。
また、ある一つの層の面を指定するのではなく、ベース絶縁層を基準に、一方の側の積層構造を指定する場合に、おもて面側または裏面側と呼ぶ場合がある。以後の説明では、重複を厭わず繰り返して説明する。
導電層によってシールド特性を確保しながら、信号線とシールド層との間の誘電体占有場所の距離を、信号線とカバー絶縁層の上面との間の距離の1.5倍以上に大きくすることで、信号線の断面積を小さくすることなくインピーダンス整合をとりやすくできる。ベース絶縁層の両面にシールドの導電層を設ける場合は、両面ともに、上記の距離関係を満たすのがよい。信号線とカバー絶縁層の上面との間の距離は、信号線側のおもて面の場合は、信号線トップ面−カバー絶縁層トップ面(ベース絶縁層から遠い面)、の面間距離であり、裏面側の場合は、信号線の底面−カバー絶縁層におけるベース絶縁層から遠い面、の面間距離である。信号線とシールド層を形成する導電層との間の距離は、信号線側のおもて面の場合は、信号線トップ面−導電層の底面(ベース絶縁層に近い側の面)、の面間距離であり、裏面側の場合は、信号線の底面−導電層におけるベース絶縁層に近い面、の面間距離である。
【0011】
上記の補強絶縁層を、カバー絶縁層と同じ材料で形成することができる。
これによって、上記(1
)(又は(a)〜(b1))を満たしながら、多くのフレキシブルプリント配線板に多用されているカバー絶縁層の樹脂材料を用いて、信号線−導電層との間の距離を、容易に大きくすることができる。また、(a)〜(b1)のいずれかを満たす、カバー絶縁層および補強絶縁層には、高周波信号の洩れ等のロスを減らすために、柔軟な可撓性の点で許容できる範囲で、比誘電率および誘電正接の小さい材料を用いるのがよい。
【0012】
補強絶縁層を、カバー絶縁層よりも硬さが低い材料で形成するのがよい。
この場合、補強絶縁層を、上記(a)〜(b1)の形態とした上で、その材料に硬さがカバー絶縁層より低い絶縁樹脂を用いることになる。この結果、フレキシブルプリント配線板の全体厚みをある程度厚くしながら、フレキシブルプリント配線板において重要視される、軟らかくしなやかな可撓性を維持することができる。この場合も、カバー絶縁層および補強絶縁層には、比誘電率および誘電正接が小さい樹脂とするのが好ましい。
【0013】
本発明のシールド付フレキシブルプリント配線板の製造方法は、シールド層を備えるフレキシブルプリント配線板を製造する。この製造方法は、ベース絶縁層上に信号線を形成する工程と、信号線およびベース絶縁層を覆うようにカバー絶縁層を積層する工程と、カバー絶縁層上に、中実固体からなる補強絶縁層パターンを
、該補強絶縁層パターン中の補強絶縁層がカバー絶縁層、およびベース絶縁層のいずれの層よりも小さい領域に位置するように形成する工程と、補強絶縁層パターン上にシールド層を構成する導電層を
、補強絶縁層が該導電層よりも小さい領域に位置するように積層する工程とを備え、補強絶縁層パターンを、平面的に見て少なくとも信号線が位置する領域に重ならない領域では、該補強絶縁層の平均密度が、信号線が位置する領域よりも小さくなるように、(a)平面的に見て前記信号線が位置する領域でのみ存在して他の領域では存在しない、又は(b1)該他の領域では部分的にしか存在しない、ように、形成することを特徴とする。
【0014】
上記の方法によって、可撓性を保持しながら、シールド性能に優れ、他の配線とのインピーダンス整合を、容易にとることができるフレキシブルプリント配線板を、簡単な製造工程で製造することができる。すなわち、電磁ノイズやクロストークを確実に防止し、かつ可撓性を保持することができる。カバー絶縁層および/または補強絶縁層は絶縁樹脂フィルムを接着剤で貼ってもよいし、溶媒に溶解させた粘着状の絶縁樹脂を塗布して乾燥させたものであってもよい。
【0015】
本発明の電子機器は、上記いずれかのシールド付フレキシブルプリント配線板
を備えることを特徴とする。
上記
のフレキシブルプリント配線板を用いることで、ノイズ電波の放射や侵入、およびクロストーク等を確実に防ぎ、かつ伝送ロスを防止しながら、電子機器内の各配線回路の間のインピーダンス整合をとることができる。そして、電子機器の組み立ての際、又は製品使用の際、このフレキシブルプリント配線板に備わる十分高い可撓性の利益を受けることができる。電子機器としては、各種の薄型テレビ受像器、携帯端末、PCなどを挙げることができる。