(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5904377
(24)【登録日】2016年3月25日
(45)【発行日】2016年4月13日
(54)【発明の名称】メカニカルシール
(51)【国際特許分類】
F16J 15/34 20060101AFI20160331BHJP
【FI】
F16J15/34 Z
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-536380(P2013-536380)
(86)(22)【出願日】2012年9月27日
(86)【国際出願番号】JP2012074884
(87)【国際公開番号】WO2013047658
(87)【国際公開日】20130404
【審査請求日】2015年3月20日
(31)【優先権主張番号】特願2011-218797(P2011-218797)
(32)【優先日】2011年10月1日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000101879
【氏名又は名称】イーグル工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】503227553
【氏名又は名称】イーグルブルグマンジャパン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098729
【弁理士】
【氏名又は名称】重信 和男
(74)【代理人】
【識別番号】100116506
【弁理士】
【氏名又は名称】櫻井 義宏
(74)【代理人】
【識別番号】100116757
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 英雄
(74)【代理人】
【識別番号】100123216
【弁理士】
【氏名又は名称】高木 祐一
(74)【代理人】
【識別番号】100163212
【弁理士】
【氏名又は名称】溝渕 良一
(74)【代理人】
【識別番号】100148161
【弁理士】
【氏名又は名称】秋庭 英樹
(74)【代理人】
【識別番号】100156535
【弁理士】
【氏名又は名称】堅田 多恵子
(72)【発明者】
【氏名】高橋 秀和
(72)【発明者】
【氏名】五十嵐 猛史
【審査官】
杉山 悟史
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭49−147464(JP,U)
【文献】
実公昭48−028987(JP,Y1)
【文献】
実開平03−055965(JP,U)
【文献】
特開2011−149489(JP,A)
【文献】
特開2007−138965(JP,A)
【文献】
特開2005−048818(JP,A)
【文献】
国際公開第2009/066664(WO,A1)
【文献】
実公昭63−032461(JP,Y2)
【文献】
実開平07−025368(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16J 15/00 − 15/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸とハウジングとの間に装着されて密封摺動面の外周から内周方向への被密封流体の漏れを防止するインサイド形のメカニカルシールであって、前記回転軸側に装着された回転密封環とシールカバー側に装着された固定密封環とを備え、前記固定密封環側にコイルスプリングを内蔵した静止形のものにおいて、
前記固定密封環と前記シールカバーとの間に2次シールとしてのOリングを設け、前記回転密封環と固定密封環との密封摺動面の外周側の被密封流体側に連通した空間に円筒状の攪拌部材を前記回転密封環側から立設し、
前記円筒状の攪拌部材の円周上に複数の攪拌孔を設けるとともに、前記攪拌部材の攪拌孔に外周側から清浄なフラッシング液を供給するフラッシング孔を前記シールカバー側に設けることを特徴とするメカニカルシール。
【請求項2】
前記フラッシング孔、前記攪拌孔及び前記回転密封環と固定密封環との密封摺動面が半径方向に重複するように配置されることを特徴とする請求項1に記載のメカニカルシール。
【請求項3】
前記回転密封環と固定密封環との密封摺動面の外周側の空間と被密封流体側とを連通する通路に面する回転軸のスリーブの外周面に、円周方向に複数の攪拌溝を設けることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のメカニカルシール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スラリーを含む液(以下「スラリー流体」という。)を処理する装置又はポンプに用いられて有用なメカニカルシールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、スラリー流体をシールするためのメカニカルシールにおいて、固定環と回転環との密封摺動面の近傍からスラリー流体を排出するようにしたものとして実公昭63−32461号公報(特許文献1)に記載のメカニカルシールが知られている(以下、「従来技術」という。)。
図4は、従来技術のメカニカルシールを示す縦断面図であって、固定環72は、機器本体70に装着された環状カバー71にOリング73を介して嵌挿されており、回転環74はOリング75を介して回転軸76に嵌挿され、ワンコイルタイプのコイルスプリング77により固定環72側に押圧されており、固定環72と回転環74とが密封摺動しながら相対回転することにより、機内側のスラリー流体をシールするようになっている。そして、被密封流体であるスラリー流体とは異なる清浄なフラッシング液を密封摺動面78の近傍にフラッシング孔79から供給するとともに、回転環74の外周面に螺条部又は羽根80を形成し、密封摺動面78から遠ざかる方向の力を被密封流体に作用させるようにしている。
【0003】
図4に示した従来技術のメカニカルシールは、密封摺動面78の外周から内周に向かう被密封流体をシールする形式のインサイド形といわれるものであって、回転環74と回転軸76との間をシールする作動用のOリング75及び回転環74を押圧するコイルスプリング77が被密封流体であるスラリー流体にさらされる構造となっている。
このため、従来技術では次のような問題が起きる。
(1)作動用のOリング75は、スラリー流体をシールするための2次シールとして設けられているが、この作動用のOリング75にはスラリー流体が堆積し、回転環74が軸方向に移動できなくなる。その結果、密封摺動面78において正常な密封作用が機能しなくなり、漏れや異常摩耗などが発生する。
(2)コイルスプリング77にもスラリー流体が堆積し、スプリングの機能が失われるため、回転環74を固定環72に押圧することができなくなる。その結果、密封摺動面78において正常な密封作用が機能しなくなり、漏れや異常摩耗などが発生する。
(3)回転環74の外周に螺条部又は羽根80を形成するため、作業が煩雑になる。
(4)回転環74の外周に形成される螺条部又は羽根80は回転軸の回転方向に応じた右ねじまたは左ねじとする必要があり、両方の回転方向に対応することができない。
【0004】
上記従来技術の他に、スラリー流体をシールするためのメカニカルシールとしては、スプリングに加えてゴム材製からなるリング状のパッキンにより固定環を押圧するタイプのもの(たとえば、特許文献2参照。)が知られているが、パッキンにスプリング及び二次シール機能をもたせる必要がある。しかし、このような構成にすると適切なスプリング面圧(スプリング荷重)にすることが難しく、漏れや摺動面の異常摩耗を起こす原因になることから、コイルスプリングのみで摺動環を押圧できればそれが望ましいことはいうまでもない。また、コイルスプリングに代えてベローズを用いるタイプのもの(たとえば、特許文献3参照。)も知られている。ベローズを用いると作動用のOリングが不要になるが、ベローズはスラリー流体と接するため、ベローズの内側溶接個所にスラリー流体が堆積し易く、それが原因でベローズが破損したり、適切なスプリング面圧(スプリング荷重)を失うことから漏れなどが起きる。そのため、スラリー流体が接しない個所にコイルスプリングを使用して摺動環を押圧するタイプのものが望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実公昭63−32461号公報
【特許文献2】再公表2009−008289号公報
【特許文献3】実開平7−25368号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、従来技術の問題を解決するためになされたもので、密封摺動面の外周から内周に向かう被密封流体をシールする形式のインサイド形のメカニカルシールであって、固定密封環側にコイルスプリングを内蔵した静止形のものにおいて、密封摺動面から2次シールにかけてスラリー流体の堆積を防止するようにしたメカニカルシールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため本発明のメカニカルシールは、第1に、回転軸とハウジングとの間に装着されて密封摺動面の外周から内周方向への被密封流体の漏れを防止するインサイド形のメカニカルシールであって、前記回転軸側に装着された回転密封環とシールカバー側に装着された固定密封環とを備え、前記固定密封環側にコイルスプリングを内蔵した静止形のものにおいて、
前記固定密封環と前記シールカバーとの間に2次シールとしてのOリングを設け、前記回転密封環と固定密封環との密封摺動面の外周側の被密封流体側に連通した空間に円筒状の攪拌部材を前記回転密封環側から立設してなることを特徴としている。
この特徴によれば、回転密封環と固定密封環との密封摺動面の外周側の空間からリテーナの外周面とシールカバーの内周面との間のOリング付近にかけて活発な攪拌現象及び流れが生じるため、被密封流体がスラリー流体のような滞留しやすい流体であっても、密封摺動面からOリング付近にかけてスラリー流体が滞留することはない。このため、密封摺動面、スラリー流体をシールするための2次シールとして設けられている作動用のOリング及びコイルスプリングにスラリー流体が堆積することが防止され、その結果、密封摺動面における正常な密封作用を長期間にわたって維持することができる。
【0008】
また、本発明のメカニカルシールは、第2に、第1の特徴において、前記円筒状の攪拌部材の円周上に複数の攪拌孔を設けることを特徴としている。
この特徴によれば、被密封流体の攪拌部材の内側から外側に向かう環流現象が生起され、被密封流体の攪拌作用を一層増大することができる。
【0009】
また、本発明のメカニカルシールは、第3に、第2の特徴において、前記攪拌部材の攪拌孔に外周側から清浄なフラッシング液を供給するフラッシング孔を前記シールカバー側に設けることを特徴としている。
この特徴によれば、回転密封環と固定密封環との密封摺動面の外周側の空間に清浄なフラッシング液が供給されるため、スラリー流体は希釈され、滞留現象を減殺することができる。
【0010】
また、本発明のメカニカルシール装置は、第4に、第3の特徴において、前記フラッシング孔、前記攪拌孔及び前記回転密封環と固定密封環との密封摺動面が半径方向に重複するように配置されることを特徴としている。
この特徴によれば、清浄なフラッシング液が攪拌部材の攪拌孔に向けて供給されるため、攪拌作用の大きな攪拌孔の近傍にフラッシング液が供給されることになり、希釈された被密封流体が攪拌されることにより、密封摺動面の外周側からリテーナの外周面とシールカバーの内周面に設けられたOリングにかけてのスラリー流体の滞留が一層防止される。また、攪拌孔を通して直接密封摺動面に供給されたフラッシング液が密封摺動面を洗浄する作用を奏する。
【0011】
また、本発明のメカニカルシールは、第5に、第1ないし第4の何れかの特徴において、前記回転密封環と固定密封環との密封摺動面の外周側の空間と被密封流体側とを連通する通路に面する回転軸のスリーブの外周面に、円周方向に複数の攪拌溝を設けることを特徴としている。
この特徴によれば、回転密封環と固定密封環との密封摺動面の外周側の空間と被密封流体側とを連通する通路を流れる被密封流体に対して攪拌作用を与え、スラリーの滞留を防止することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、以下のような優れた効果を奏する。
(1)上記第1の特徴によれば、回転密封環と固定密封環との密封摺動面の外周側の空間からリテーナの外周面とシールカバーの内周面との間のOリング付近にかけて活発な攪拌現象及び流れが生じるため、被密封流体がスラリー流体のような滞留しやすい流体であっても、密封摺動面からOリング付近にかけてスラリー流体が滞留することはない。このため、密封摺動面、スラリー流体をシールするための2次シールとして設けられている作動用のOリング及びコイルスプリングにスラリー流体が堆積することが防止され、その結果、密封摺動面における正常な密封作用を長期間にわたって維持することができる。
【0013】
(2)上記第2の特徴によれば、被密封流体の攪拌部材の内側から外側に向かう環流現象が生起され、被密封流体の攪拌作用を一層増大することができる。
(3)上記第3の特徴によれば、回転密封環と固定密封環との密封摺動面の外周側の空間に清浄なフラッシング液が供給されるため、スラリー流体は希釈され、滞留現象を減殺することができる。
(4)上記第4の特徴によれば、清浄なフラッシング液が攪拌部材の攪拌孔に向けて供給されるため、攪拌作用の大きな攪拌孔の近傍にフラッシング液が供給されることになり、希釈された被密封流体が攪拌されることにより、密封摺動面の外周側からリテーナの外周面とシールカバーの内周面に設けられたOリングにかけてのスラリー流体の滞留が一層防止される。また、攪拌孔を通して直接密封摺動面に供給されたフラッシング液が密封摺動面を洗浄する作用を奏する。
(5)上記第5の特徴によれば、回転密封環と固定密封環との密封摺動面の外周側の空間と被密封流体側とを連通する通路を流れる被密封流体に対して攪拌作用を与え、スラリーの滞留を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施の形態に係るメカニカルシールの全体を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明に係るメカニカルシールを実施するための形態を図面を参照しながら詳細に説明するが、本発明はこれに限定されて解釈されるものではなく、本発明の範囲を逸脱しない限りにおいて、当業者の知識に基づいて、種々の変更、修正、改良を加えうるものである。
【0016】
図1は、本発明の実施の形態に係るメカニカルシールの全体を示す縦断面図であり、左側が機内側(被密封流体側)であり、右側が機外側(大気側)である。また、
図2は、
図1のA−A断面図であり、
図3は、
図1のB部拡大図である。
装置本体(ケーシング)50の軸孔51には回転軸60が貫通している。メカニカルシール1は、装置本体50の外面52の軸孔51の周りに設けられたシールカバー2を介して取り付けられる。シールカバー2はOリング53を介して植え込みボルト3によりに装置本体50に固定されている。また、回転軸60は軸孔51に装着されて図示省略の軸受けにより回転可能に支持されている。
【0017】
シールカバー2の内周面4と回転軸60に嵌合されたスリーブ61の外周面との間の空間には、機内側寄りに、密封摺動面の外周から内周方向への被密封流体の漏れを防止するインサイド形のメカニカルシールS1が配置され、機外側寄りに、密封摺動面の内周から外周方向への被密封流体の漏れを防止するアウトサイド形のメカニカルシールS2が配置されている。
本発明においては、機内側寄りに配置されたインサイド形のメカニカルシールS1に特徴を有するものであり、機外側寄りに配置されたアウトサイド形のメカニカルシールS2は必要に応じて配置されるもので、必須ではない。
【0018】
インサイド形のメカニカルシールS1において、固定密封環5はノックピン7によりリテーナ6に回転不能に支持されており、固定密封環5とリテーナ6との間にはOリング8が設けられている。また、リテーナ6は、その外周面とシールカバー2の内周面4に設けられた2次シールの役割を有するOリング9を介してシールカバー2に気密に支持されている。リテーナ6の後部には、シールカバー2に一端が支持された複数のコイルスプリング10の他端が接合され、リテーナ6を軸方向に付勢するようになっている。
一方、回転密封環11は、回転軸60のスリーブ61にノックピン13を介して一体的に回動されるように支持されており、回転密封環11とスリーブ61との間にはOリング12が設けられている。
【0019】
機外側寄りに配置されたアウトサイド形のメカニカルシールS2は、固定密封環25がノックピン27によりリテーナ26に回転不能に支持されており、固定密封環25とリテーナ26との間ははOリング28が設けられている。また、リテーナ26は、その外周面とシールカバー2の内周面4に設けられた2次シールの役割を有するOリング29を介して気密に支持されている。リテーナ26の後側には、シールカバー2に一端が支持された複数のコイルスプリング30の他端が接合され、リテーナ26を軸方向に付勢するようになっている。
一方、回転密封環31は、ノックピン33によりリテーナ32に回転不能に支持されており、回転密封環31とリテーナ32との間にはOリング34が設けられている。リテーナ32は回転軸60のスリーブ61にセットスクリュー35により固定されたカラー36に支持されており、リテーナ32とスリーブ61との間にはOリング37が設けられている。
【0020】
機内側寄りに配置されたインサイド形のメカニカルシールS1の密封摺動面Sの内周側空間から機外側寄りに配置されたアウトサイド形のメカニカルシールS2の密封摺動面Sの内周側空間にかけて形成された中間室40には、中間液が充填されている。この中間液は、シールカバー2に設けられたサーキュレーション注入孔41及びサーキュレーション排出孔42を通じて、外部に設置されたリザーバタンク(図示省略)との間で循環され、機外側寄りのメカニカルシールS2の密封摺動面Sを潤滑・冷却するものである。
【0021】
回転軸60が回転されると、インサイド形のメカニカルシールS1においては、回転密封環11に対して固定密封環5がコイルスプリング10により押圧され、両者の密封摺動面Sが相対摺動しながら機内側の被密封流体が外周側から内周側への漏れるのを防止するものであるが、被密封流体がスラリー流体などである場合、密封摺動面Sの外周側からリテーナ6の外周面とシールカバー2の内周面4に設けられたOリング9にかけてスラリー流体が滞留して密封摺動面Sにおけるシール機能を損なう恐れがある。
【0022】
そこで、本発明は、インサイド形のメカニカルシールS1における回転密封環11と固定密封環5との密封摺動面Sの外周側の被密封流体側に連通した空間に円筒状の攪拌部材15を回転密封環11側から立設し、シールカバー2の内周面4と固定密封環5及び回転密封環11の外周面との間の空間の被密封流体を回転軸60の回転に伴い攪拌するようにしたものである。
円筒状の攪拌部材15は、縦断面が略L字状をなしており、小径部である基部16において回転密封環11を支持しているスリーブ61にボルト17により固定され、大径部である円筒部18が回転密封環11の外周側から固定密封環5の外周側に向かって延設され、密封摺動面Sの外周側を覆うようになっている。密封摺動面Sの半径方向外方に位置する円筒部18の部位には、円周方向に複数の攪拌孔19が設けられている。
図2に示すように、攪拌孔19は、円周方向に12等配に設けられている。攪拌孔19の数及び位置は、必要に応じて設定されるもので、12等配に限るものではなく、被密封流体を効率よく攪拌できるものであればよい。
【0023】
また、回転密封環11と固定密封環5との密封摺動面Sの外周側の空間と被密封流体側とを連通する通路38に面する回転軸60のスリーブ61の外周面には、円周方向に複数の攪拌溝39が設けられている。攪拌溝39は、通路38に沿った軸方向には
図1及び
図3に示すように円弧状をなし、軸直交断面では
図2に示すように略矩形状をなしている。
攪拌溝39は、
図2に示すように、攪拌孔19の円周方向の位置と略同じくして円周方向に12等配に設けられている。攪拌溝39の数及び位置は、12等配に限るものではなく、また、その位置も攪拌孔19の円周方向の位置と同じでなくてもよい。要は、回転密封環11と固定密封環5との密封摺動面Sの外周側の空間と被密封流体側とを連通する通路38に流れる被密封流体に対して攪拌作用を与え、スラリーの滞留を防止することができればよい。
【0024】
図1及び
図2に示すように、シールカバー2には、被密封流体とは別の清浄なフラッシング液を供給するためのフラッシング孔20が設けられている。
図2では、円周方向に1個のフラッシング孔20が設けられているがこれに限るものではなく、攪拌孔19と同じく12等配に設けられてもよく、要は、回転密封環11と固定密封環5との密封摺動面Sの外周側の空間の被密封流体を希釈できればよい。また、
図1及び
図2では、フラッシング孔20は、攪拌作用の大きな攪拌孔19の近傍にフラッシング液が供給されるように攪拌部材15の攪拌孔19に半径方向に重複するように設けられている。
【0025】
回転軸60の回転に伴い、スリーブ61並びに回転密封環11及び攪拌部材15が回転すると、回転密封環11と固定密封環5との密封摺動面Sの外周側の空間と被密封流体側とを連通する通路38の被密封流体は、攪拌溝39により攪拌されながらスリーブ61の回転方向に回転される。また、シールカバー2の内周面4と回転密封環11の外周面との間の空間の被密封流体は攪拌部材15及び攪拌孔19により攪拌されながら回転密封環11及び攪拌部材15に回転に引きずられるようにして回転し、遠心力により半径方向外側へ向かうように流れるとともに、回転密封環11側から固定密封環5側へ向かうようにも流れる。その際、攪拌部材15に攪拌孔19が設けられているため、
図3のRで示すような攪拌部材15の円筒部18を内側から外側へ貫通する環流Rが生じる。攪拌溝39、攪拌部材15及び攪拌孔19の攪拌作用及び環流Rにより、回転密封環11と固定密封環5との密封摺動面Sの外周側の空間からリテーナ6の外周面とシールカバー2の内周面4との間のOリング9付近にかけて活発な攪拌現象及び流れが生じるため、被密封流体がスラリー流体のような滞留しやすい流体であっても、密封摺動面SからOリング9付近にかけてスラリー流体が滞留することはない。
【0026】
さらに、フラッシング孔20は攪拌孔19と半径方向に重複するように設けられているため、シールカバー2に設けたフラッシング孔20から、清浄なフラッシング液が攪拌部材15の攪拌孔19に向けて供給されるため、攪拌作用の大きな攪拌孔19の近傍にフラッシング液が供給されることになり、希釈された被密封流体が攪拌されることにより、密封摺動面Sの外周側からリテーナ6の外周面とシールカバー2の内周面4に設けられたOリング9にかけてのスラリー流体の滞留が一層防止される。また、攪拌部材15が静止している状態では、攪拌孔19を通して直接密封摺動面Sに供給されたフラッシング液が、密封摺動面Sを洗浄する。
【0027】
本発明のメカニカルシールは、インサイド形のメカニカルシールが少なくとも1つ配置されるものであればよく、シングル形、タンデム形またはダブル形のいずれにも適用できる。また、摺動環を付勢するコイルスプリングは円周方向に複数配置されるマルチ形に限らず回転軸を中心として1つ配置されるワンコイル形でもよい。さらに、コイルスプリングの位置は固定密封環を内蔵される形式の静止形であって、固定密封環をシールするための2次シールがOリングである形式のメカニカルシールに適用されるのが好ましい。
【符号の説明】
【0028】
1 メカニカルシール
2 シールカバー
3 植え込みボルト
4 シールカバーの内周面
5 固定密封環
6 リテーナ
7 ノックピン
8 Oリング
9 Oリング
10 コイルスプリング
11 回転密封環
12 Oリング
13 ノックピン
15 攪拌部材
16 基部
17 ボルト
18 円筒部
19 攪拌孔
20 フラッシング孔
25 固定密封環
26 リテーナ
27 ノックピン
28 Oリング
29 Oリング
30 コイルスプリング
31 回転密封環
32 リテーナ
33 ノックピン
34 Oリング
35 セットスクリュー
36 カラー
37 Oリング
38 通路
39 攪拌溝
40 中間室
41 サーキュレーション注入孔
42 サーキュレーション排出孔
50 装置本体(ケーシング)
51 軸孔
52 外面
53 Oリング
60 回転軸
61 スリーブ
S 密封摺動面