(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5904438
(24)【登録日】2016年3月25日
(45)【発行日】2016年4月13日
(54)【発明の名称】3次元実装システム、CAD装置、実装装置、3次元実装方法及びそのプログラム
(51)【国際特許分類】
H05K 13/04 20060101AFI20160331BHJP
【FI】
H05K13/04 B
H05K13/04 Z
【請求項の数】7
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2012-11976(P2012-11976)
(22)【出願日】2012年1月24日
(65)【公開番号】特開2013-152999(P2013-152999A)
(43)【公開日】2013年8月8日
【審査請求日】2014年10月31日
(73)【特許権者】
【識別番号】598015084
【氏名又は名称】学校法人福岡大学
(73)【特許権者】
【識別番号】000237271
【氏名又は名称】富士機械製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099634
【弁理士】
【氏名又は名称】平井 安雄
(72)【発明者】
【氏名】友景 肇
(72)【発明者】
【氏名】服部 友彦
【審査官】
飯星 潤耶
(56)【参考文献】
【文献】
特開2000−307296(JP,A)
【文献】
特開平11−154798(JP,A)
【文献】
特開2007−106048(JP,A)
【文献】
特開2006−237529(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 3/30
H05K 13/00−13/08
B23P 19/00−19/02
B23P 19/04−19/08
B23P 21/00
B25J 1/00−21/02
G06F 17/50
H01L 21/447−21/449
H01L 21/60−21/607
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
チップを実装する対象となる任意形状の3次元対象物に関する情報を管理するCAD装置と、前記3次元対象物にチップを実装する実装装置とを備える3次元実装システムであって、
前記CAD装置が、
前記3次元対象物の設計情報を記憶する設計情報記憶手段と、
前記設計情報から、前記3次元対象物にチップを実装する場合の配置点を示す配置点座標を特定する配置点特定手段と、
前記配置点座標の周辺で、且つ、前記3次元対象物の表面に位置し、前記配置点との関係で直線上にない少なくとも2つの補助点、又は、直線上にない少なくとも3つの補助点を補助点座標として特定する補助点特定手段と、
前記補助点を含む微小平面を設定する微小平面設定手段と、
前記微小平面を通り、当該微小平面に垂直な垂線の位置及び方向を特定する垂線特定手段と、
前記チップが実装される位置に対応する前記3次元対象物の表面の曲率を算出する曲率算出手段と、
前記曲率の値に応じて、前記チップの実装の可否を判定する実装判定手段とを備え、
前記実装装置が、
前記CAD装置の仮想空間と当該実装装置の実空間との座標変換式に基づいて、仮想空間における前記垂線の位置及び方向を、実空間における座標に変換する座標変換手段と、
変換された座標に基づいて、前記実装装置のヘッドの位置及び方向を制御するヘッド制御手段とを備えることを特徴とする3次元実装システム。
【請求項2】
請求項1に記載の3次元実装システムにおいて、
前記座標変換手段が、前記垂線を中心軸とした場合のヘッドの回転角度を、前記ヘッドに設置されたチップの状態と前記補助点の位置とに基づいて算出することを特徴とする3次元実装システム。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の3次元実装システムにおいて、
前記実装装置が、
前記3次元対象物に記されたマーカを取得するマーカ取得手段と、
前記設計情報に記憶されているマーカの位置と前記マーカ取得手段が取得したマーカの位置とから、前記座標変換式を導出する座標変換式導出手段とを備えることを特徴とする3次元実装システム。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載の3次元実装システムにおいて、
前記補助点特定手段が、前記チップの少なくとも3つの頂点位置に対応する前記3次元対象物上の点を補助点として特定することを特徴とする3次元実装システム。
【請求項5】
チップを実装する対象となる任意形状の3次元対象物に関する情報を管理し、前記チップを実装する場合の実装装置のヘッドの位置及び方向に関する情報を前記実装装置に提供するCAD装置であって、
前記3次元対象物の設計情報を記憶する設計情報記憶手段と、
前記設計情報から、前記3次元対象物にチップを実装する場合の配置点を示す配置点座標を特定する配置点特定手段と、
前記配置点座標の周辺で、且つ、前記3次元対象物の表面に位置し、前記配置点座標との関係で直線上にない少なくとも2つの補助点を補助点座標として特定する補助点特定手段と、
前記配置点及び前記補助点を含む微小平面を設定する微小平面設定手段と、
微小平面を通り、当該微小平面に垂直な垂線の位置及び方向を特定する垂線特定手段と、
前記チップが実装される位置に対応する前記3次元対象物の表面の曲率を算出する曲率算出手段と、
前記曲率の値に応じて、前記チップの実装の可否を判定する実装判定手段と、
演算結果の情報を前記実装装置に出力する出力手段とを備えることを特徴とするCAD装置。
【請求項6】
コンピュータが、
チップを実装する対象となる任意形状の3次元対象物の設計情報を記憶し、記憶された前記設計情報から、前記3次元対象物にチップを実装する場合の配置点を示す配置点座標を特定する配置点特定ステップと、
前記配置点座標の周辺で、且つ、前記3次元対象物の表面に位置し、前記配置点座標との関係で直線上にない少なくとも2つの補助点を補助点座標として特定する補助点特定ステップと、
前記配置点及び前記補助点を含む微小平面を設定する微小平面設定ステップと、
微小平面を通り、当該微小平面に垂直な垂線の位置及び方向を特定する垂線特定ステップと、
前記チップが実装される位置に対応する前記3次元対象物の表面の曲率を算出する曲率算出ステップと、
前記曲率の値に応じて、前記チップの実装の可否を判定する実装判定ステップと、
仮想空間と実空間との座標変換式に基づいて、仮想空間における前記垂線の位置及び方向を、実空間における座標に変換する座標変換ステップと、
変換された座標に基づいて、実装装置のヘッドの位置及び方向を制御するヘッド制御ステップとを実行することを特徴とする3次元実装方法。
【請求項7】
コンピュータを、
チップを実装する対象となる任意形状の3次元対象物の設計情報を記憶する設計情報記憶手段、
前記設計情報から、前記3次元対象物にチップを実装する場合の配置点を示す配置点座標を特定する配置点特定手段、
前記配置点座標の周辺で、且つ、前記3次元対象物の表面に位置し、前記配置点座標との関係で直線上にない少なくとも2つの補助点を補助点座標として特定する補助点特定手段、
前記配置点及び前記補助点を含む微小平面を設定する微小平面設定手段、
微小平面を通り、当該微小平面に垂直な垂線の位置及び方向を特定する垂線特定手段、
前記チップが実装される位置に対応する前記3次元対象物の表面の曲率を算出する曲率算出手段、
前記曲率の値に応じて、前記チップの実装の可否を判定する実装判定手段、
仮想空間と実空間との座標変換式に基づいて、仮想空間における前記垂線の位置及び方向を、実空間における座標に変換する座標変換手段、
変換された座標に基づいて、実装装置のヘッドの位置及び方向を制御するヘッド制御手段として機能させることを特徴とする3次元実装プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、3次元対象物にチップを実装する3次元実装システムに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、任意形状の3次元対象物における任意の位置に、チップを実装する技術が望まれている。3次元対象物において、特に曲率が0より大きい曲面の領域にフリップチップ等の技術でチップを実装する際には、実装する3次元対象物の曲面に対して垂直(略垂直)な方向にチップの面を設置しないと、チップが破損等してしまい、実装することができないという問題がある。
【0003】
曲面に対して部品を実装する技術として、例えば特許文献1に示す技術が開示されている。特許文献1に示す技術は、高密度実装及び筐体の小型化に対応して、回路が形成された筺体壁面における水平面以外の面、例えば曲面や鉛直面等にも、ワークの装着が可能なマウンタに関する技術であり、マウンタは、多軸ロボットと、電子部品供給装置と、X−Yテーブルと、マウンタ全体を制御する制御部とから構成され、ヘッドアセンブリの先端部に配設されたX軸サーボモータアームや吸着ノズルホルダ等を駆動することによって、吸着ノズルに吸着保持されたQFPを、電子機器筺体の内周面に装着するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−307296号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に示す技術は、実装ヘッドの位置決めをどのようにして実施するのかといった具体的な技術内容が開示されておらず、実装の正確性や精度について保証されるものではない。
【0006】
本発明は、任意形状の3次元対象物における曲面の領域であっても、チップを破損することなく正確な位置に高精度に実装することができる3次元実装システム等を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る3次元実装システムは、チップを実装する対象となる任意形状の3次元対象物に関する情報を管理するCAD装置と、前記3次元対象物にチップを実装する実装装置とを備える3次元実装システムであって、前記CAD装置が、前記3次元対象物の設計情報を記憶する設計情報記憶手段と、前記設計情報から、前記3次元対象物にチップを実装する場合の配置点を示す配置点座標を特定する配置点特定手段と、前記配置点座標の周辺で、且つ、前記3次元対象物の表面に位置し、前記配置点との関係で直線上にない少なくとも2つの補助点、又は、直線上にない少なくとも3つの補助点を補助点座標として特定する補助点特定手段と、前記補助点を含む微小平面を設定する微小平面設定手段と、前記微小平面を通り、当該微小平面に垂直な垂線の位置及び方向を特定する垂線特定手段とを備え、前記実装装置が、前記CAD装置の仮想空間と当該実装装置の実空間との座標変換式に基づいて、仮想空間における前記垂線の位置及び方向を、実空間における座標に変換する座標変換手段と、変換された座標に基づいて、前記実装装置のヘッドの位置及び方向を制御するヘッド制御手段とを備えるものである。
【0008】
このように、本発明に係る3次元実装システムにおいては、CAD装置の仮想空間上でチップを実装する面に対する垂線の位置及び方向を特定し、特定された情報を実空間の座標に変換し、変換された座標にしたがって実装装置のヘッドの位置及び方向を制御するため、例えば、3次元対象物上の任意の曲率である曲面や、複数の面で形成される曲折部分を有するような形状の領域であっても、略垂直方向を仮想空間上で正確に特定することで、チップを破損することなく、正確な位置に高精度に実装することができるという効果を奏する。
【0009】
補助点特定手段により補助点が2つ特定される場合は、当該2つの補助点と配置点の計3つの点に基づいて、微小平面が設定されるようにしてもよい。また、補助点特定手段により補助点が3つ以上特定される場合は、当該補助点に基づいて微小平面が設定されるようにしてもよい。
【0010】
本発明に係る3次元実装システムは、前記座標変換手段が、前記垂線を中心軸とした場合のヘッドの回転角度を、前記ヘッドに設置されたチップの状態と前記補助点の位置とに基づいて算出するものである。
【0011】
このように、本発明に係る3次元実装システムにおいては、垂線を中心軸とした場合のヘッドの回転角度を、ヘッドに設置されたチップの状態と補助点の位置とに基づいて算出するため、ヘッドの位置及び方向に加えて、回転方向も正確に制御することが可能となり、チップを正確な位置に高精度に実装することができるという効果を奏する。
【0012】
本発明に係る3次元実装システムは、前記実装装置が、前記3次元対象物に記されたマーカを取得するマーカ取得手段と、前記設計情報に記憶されているマーカの位置と前記マーカ取得手段が取得したマーカの位置とから、前記座標変換式を導出する座標変換式導出手段とを備えるものである。
【0013】
このように、本発明に係る3次元実装システムにおいては、実装装置が、3次元対象物に記されたマーカを取得し、設計情報に記憶されているマーカの位置と取得したマーカの位置とから座標変換式を導出するため、3次元対象物を任意の配置位置や配置方向に設置した場合であっても、CAD装置上の仮想空間の座標と実装装置上の実空間の座標とを正確に対応付けることができ、チップを正確な位置に高精度に実装することができるという効果を奏する。
【0014】
本発明に係る3次元実装システムは、前記補助点特定手段が、前記チップの少なくとも3つの頂点位置に対応する前記3次元対象物上の点を補助点として特定するものである。
【0015】
このように、本発明に係る3次元実装システムにおいては、チップの少なくとも3つの頂点位置に対応する3次元対象物上の点を補助点として特定するため、3次元対象物に対するチップの面の角度と、後段の処理で特定される微小平面の角度を正確に設定することができ、チップを垂直に設置する際に正確に実行することができるという効果を奏する。
【0016】
本発明に係る3次元実装システムは、前記CAD装置が、前記チップが実装される位置に対応する前記3次元対象物の表面の曲率を算出する曲率算出手段と、前記曲率の値に応じて、前記チップの実装の可否を判定する実装判定手段とを備えるものである。
【0017】
このように、本発明に係る3次元実装システムにおいては、3次元対象物の表面の曲率に応じてチップの実装の可否を判定するため、CAD装置上で実装の可否を予め判断することができ、無駄な実装操作を行うことなく、作業を効率的に行うことができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】第1の実施形態に係る3次元実装システムの処理概要を示す図である。
【
図2】第1の実施形態に係る3次元実装システムにおけるCAD装置のハードウェア構成図である。
【
図3】第1の実施形態に係る3次元実装システムにおける実装装置のハードウェア構成図である。
【
図4】第1の実施形態に係る3次元実装システムの機能ブロック図である。
【
図5】第1の実施形態に係る3次元実装システムの処理を示す第1の図である。
【
図6】第1の実施形態に係る3次元実装システムの処理を示す第2の図である。
【
図7】第1の実施形態に係る3次元実装システムの処理を示す第3の図である。
【
図8】第1の実施形態に係る3次元実装システムの処理を示す第4の図である。
【
図9】第1の実施形態に係る3次元実装システムの処理を示す第5の図である。
【
図10】第1の実施形態に係る3次元実装システムにおけるCAD装置の動作を示すフローチャートである。
【
図11】第1の実施形態に係る3次元実装システムにおける実装装置の動作を示すフローチャートである。
【
図12】第2の実施形態に係る3次元実装システムにおけるCAD装置の機能ブロック図である。
【
図13】第2の実施形態に係る3次元実装システムにおけるCAD装置の処理を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態を説明する。本実施形態の全体を通して同じ要素には同じ符号を付けている。
【0020】
(本発明の第1の実施形態)
本実施形態に係る3次元実装システムについて、
図1ないし
図11を用いて説明する。本実施形態に係る3次元実装システムは、CAD装置と実装装置とからなり、CAD装置にて演算された情報を用いて実装装置でチップを実装するものである。
【0021】
図1に3次元実装システム1の処理概要を示す。CAD装置10では、チップ2を実装する対象となる3次元対象物3の設計情報が管理されている。CAD装置10の仮想空間(座標Aに基づいて特定される仮想空間)において、チップ2を実装する配置点4が特定され、当該配置点4に基づく微小平面5を設定し、設定された微小平面5から垂線6を特定する。実装装置20では、CAD装置10から実装に必要な情報を取得し、それらの情報に基づいて実際にチップ2を実装する。CAD装置10から取得する情報は、仮想空間で演算されたものであるため、実空間(座標Bに基づいて特定される実空間)の座標に変換される。変換された座標に基づいて、ヘッド28をθ,φ,ρの方向にそれぞれ駆動制御すると共に、所定の位置に駆動制御する。位置及び方向が制御された後は、実際に3次元対象物3にチップ2をフリップチップ実装する。
【0022】
図2及び
図3にCAD装置10及び実装装置20のハードウェア構成を示す。
図2は、CAD装置10のハードウェア構成であり、
図3は、実装装置20の制御機能に関連する部分のハードウェア構成である。
図2において、CAD装置10のコンピュータは、CPU11、RAM12、ROM13、ハードディスク(HDとする)14、通信I/F15、及び入出力I/F16を備える。ROM13やHD14には、オペレーティングシステムや各種プログラムが格納されており、必要に応じてRAM12に読み出され、CPU11により各プログラムが実行される。
【0023】
通信I/F15は、他の装置間(例えば、実装装置、サーバ等)の通信を行うためのインタフェースである。入出力I/F16は、キーボードやマウス等の入力機器からの入力を受け付けたり、プリンタやモニタ等にデータを出力するためのインタフェースである。この入出力I/F16は、必要に応じて光磁気ディスク、フロッピーディスク、CD−R、DVD−R等のリムーバブルディスク等に対応したドライブを接続することができる。各処理部はバスを介して接続され、情報のやり取りを行う。
【0024】
図3において、実装装置20の制御機能に関するハードウェア構成は、CPU21、RAM22、ROM23、ハードディスク(HDとする)24、通信I/F25、入出力I/F26、カメラ27、及びヘッド28を備える。CPU21、RAM22、ROM23、ハードディスク(HDとする)24、通信I/F25、及び入出力I/F26については、CAD装置10の構成と同じである。なお、入出力I/F26は、キーボードやマウス等の入力機器からの入力を受け付けてもよいし、スイッチ、パネル等の入力機器からの入力を受け付けてもよい。
【0025】
カメラ27は、実装装置20のワークに設置された3次元対象物3を撮像し、マーカを取得するものである。ヘッド28は、先端部にチップ2を設置して、3次元対象物3の所定の位置にフリップチップ実装する。
【0026】
図4は、本実施形態に係る3次元実装システム1を構成するCAD装置10及び実装装置20の機能ブロック図である。CAD装置10は、3次元対象物3の設計情報を記憶する設計情報記憶部41と、設計情報からチップ2を配置する配置点4の座標を特定する配置点特定部42と、配置点4の周辺領域で3次元対象物3の表面に複数の補助点4a,4b,・・を特定する補助点特定部43と、特定された補助点4a等を含む微小平面5を設定する微小平面設定部44と、微小平面5を通り当該微小平面5に垂直な垂線6の位置及び方向を特定する垂線特定部45と、実装装置20との間で情報を入出力する第1入出力部46とを備える。
【0027】
実装装置20は、ワークに設置された3次元対象物3を撮像し、3次元対象物3に記されているマーカの実空間における位置を取得するマーカ取得部51と、取得したマーカの位置と設計情報記憶部41に記憶されている仮想空間におけるマーカの位置とに基づいて、仮想空間の座標を実空間の座標に変換する座標変換式を導出する座標変換式導出部52と、座標変換式に基づいてCAD装置10の仮想空間における座標を、実装装置の実空間における座標に変換する座標変換部53と、変換された座標に応じてヘッド28を駆動制御するヘッド制御部54と、CAD装置10との間で情報を入出力する第2入出力部56とを備える。
【0028】
各処理部の処理について、
図5ないし
図9を用いて具体的に説明する。
図5(A)は、まず、配置点特定部42が、設計情報記憶部41に記憶されている設計情報から対象となる3次元対象物3の情報を読み出し、チップ2を実装する配置点4を特定する。なお、この配置点4は、例えば、(1)実装するチップ2のチップ面における中心点に対応する3次元対象物3上の点であってもよいし、(2)実装するチップ2のいずれかの頂点に対応する3次元対象物3上の点であってもよいし、(3)実装するチップの重心点であってもよい。ここでは、仮に、配置点4が(1)で特定されているとする。
【0029】
特定された配置点4に基づいてチップ2が実装された場合に、当該チップ2のチップ面の頂点の位置に対応する3次元対象物3上の点を補助点として特定する(補助点4a〜4c)。なお、この補助点4a〜4cは、少なくとも2点特定されればよい。1つの微小平面5を設定するためには、少なくとも直線上にない3つの点を特定する必要がある。すなわち、(1)配置点4に加えて、2つの補助点(補助点4a,4b、又は補助点4b,4c)を特定してもよいし(
図5(B)の場合に相当)、(2)配置点4を含めずに、3つの補助点(補助点4a,4b,4c)を特定してもよい(
図5(A)の場合に相当)。ここでは、仮に、補助点が(2)で特定されているとする。また、このとき、補助点4a〜4cの位置は、実装されるチップ2のチップ面における頂点の位置、又はチップ2が矩形ではない場合は、チップ面の外周上における中心からの距離が大きい点の位置に特定されるのが望ましい。さらに、補助点は、実装されるチップ2のチップ面の外周上にある程度の間隔を空けて特定されるのが望ましい。そうすることで、後段の処理における微小平面5が正確に設定されることとなる。
【0030】
3つの点(配置点4+2つの補助点又は3つの補助点)が特定されると、
図6に示すように、微小平面設定部44が、この3つの点を含む微小平面5を設定する。微小平面5が設定されると、垂線特定部45が、微小平面5を通り当該微小平面5に垂直な垂線6の方向及び位置を特定する。なお、垂線6の位置は、配置点4を通る位置又は補助点4a〜4cのいずれかを通る位置に特定されるのが望ましいが、より好ましくは、配置点4の位置に特定されるのがよい。ここでは、仮に、垂線6が配置点4を通る位置に特定されているとする。設計情報記憶部41の設計情報の一部、配置点特定部42が特定した配置点4の情報、補助点特定部43が特定した補助点4a〜4cの情報、並びに垂線特定部45が特定した垂線の方向及び位置の情報は、第1入出力部46を介して実装装置20に送られる。
【0031】
ここまでの処理が、CAD装置10の処理である。すなわち、各処理の演算は仮想空間を特定する座標Aに基づいて行われ、得られた情報も座標Aに基づくものである。
【0032】
CAD装置10において上記のような処理が行われると、得られた情報に基づいて実装装置20が実際にチップ2を3次元対象物3に実装する。この場合、CAD装置10における仮想空間を特定する座標Aを、実装装置20における実空間を特定する座標Bに変換する必要がある。座標を変換するための座標変換式は、予め定められたものを用いるようにしてもよい。その場合、3次元対象物3が実装装置20のワークにしっかりと決まった態様で固定されることが前提となる。しかしながら、チップ2は非常に微細なものであり、僅かなずれであっても、3次元対象物3の正確な位置に実装できなくなってしまう。つまり、3次元対象物3に作り込まれている配線パターンに合わせた正確な実装を行うためには、厳密な座標変換が必要となる。
【0033】
本実施形態においては、3次元対象物3に記されたマーカを読むことで、座標変換式を導出する。
図7において、ワーク上に3次元対象物3を固定して設置し、マーカ取得部51が、カメラ27により撮像された3次元対象物3の画像を取得する。その際、少なくとも2つのマーカ71,72が3次元対象物3に記されており、これらが画像内に写るように撮像が行われる。得られた画像から実空間における座標Bに基づくマーカ71,72の位置を特定する。そして、座標変換式導出部52が、特定された実空間におけるマーカ71,72の位置と、CAD装置から取得した設計情報に記憶されている仮想空間におけるマーカ71,72の位置とから、仮想空間の座標Aを実空間の座標Bに変換する座標変換式を導出する。なお、このとき、3次元対象物3がx−y平面に固定されることで、zの値が必然的に決定される構成とすることが望ましい。
【0034】
座標変換式が導出されると、座標変換部53が、配置点4、補助点4a〜4c並びに垂線6の方向及び位置等を仮想空間から実空間の座標に変換する。そして、
図8(A)に示すように、変換された座標に基づいて、ヘッド制御部54がヘッド28の方向(θ,φの角度)を調整すると共に、位置(ヘッド28の中心軸が配置点4を通る位置)を調整して、駆動制御する。また、このとき、ヘッド28にセットされているチップ2の態様と補助点4a〜4cとを対応付けることで、ρの回転角度を調整する。
【0035】
図8(B)は、ヘッド28にセットされているチップ2の態様を示す図である。予めヘッド28に設定されている周方向の角度(0°〜360°)とチップ2の位置とが対応付けられてセットされている。すなわち、
図8(B)の場合は、45°、135°、225°及び315°の位置にチップ2の頂点が対応するようにチップ2がセットされており、且つ、135°、225°及び315°の位置に対応する頂点が、補助点4a〜4cに対応している。したがって、ヘッド28の回転角度を調整して制御することが可能となる。
【0036】
ヘッド28が駆動制御されると、チップ2がセットされている位置と3次元対象物3との距離を演算し、実際にフリップチップ実装を行う。一旦座標変換式が導出された後は、当該導出された座標変換式に基づいて、
図9に示すように、複数のチップ2を連続的に実装することが可能となる。
【0037】
次に、本実施形態に係る3次元実装システムの動作について説明する。
図10は、CAD装置10の動作を示すフローチャート、
図11は、実装装置20の動作を示すフローチャートである。まず、配置点特定部42が、設計情報記憶部41に記憶された設計情報に基づいて、チップ2を実装する配置点4を特定する(S11)。補助点特定部43が、チップ2の頂点の位置に対応する3次元対象物3上の2以上の点を補助点4a,4b,・・として特定する(S12)。このとき、配置点4と2つの補助点4a,4b、又は、3つの補助点4a〜4cは、直線上にない点とする。微小平面特定部44が、配置点4と2つの補助点4a,4b、又は、3つの補助点4a〜4cを通る微小平面5を特定する(S13)。垂線特定部45が、微小平面5を通り、当該微小平面5に垂直な垂線の位置及び方向を特定する(S14)。なお、このとき、配置点4を通る垂線の位置を特定することが望ましい。第1入出力部46が、上記各処理における演算結果の情報を実装装置20に出力する(S15)。
【0038】
実装装置20においては、第2入出力部56が、CAD装置10から出力された情報を入力する。この入力のタイミングは、座標変換式を導出する前であればいつでもよい。
図11において、3次元対象物3がワークに設置されると、カメラ27が3次元対象物に記されたマーカ71,72と共に、3次元対象物3を撮像する。マーカ取得部51が、撮像された画像からマーカ71,72の位置を取得する(S21)。座標変換式導出部52が、設計情報から得られたマーカ71,72の座標と、画像から取得したマーカ71,72の位置とから、仮想空間から実空間に座標変換する座標変換式を導出する(S22)。座標変換部53が、導出された座標変換式に基づいて、CAD装置10から得られた情報を実空間の座標に変換する(S23)。ヘッド制御部54が、変換された実空間の座標に基づいて、ヘッド28を駆動制御し(S24)、チップ2をフリップチップ実装して(S25)、処理を終了する。
【0039】
(本発明の第2の実施形態)
本実施形態に係る3次元実装システムについて、
図12及び
図13を用いて説明する。本実施形態に係る3次元実装システムは、前記第1の実施形態に係る3次元実装システムにCAD装置10の機能を拡張したものである。なお、本実施形態において、前記第1の実施形態と重複する説明は省略する。
【0040】
図12は、本実施形態に係る3次元実装システムにおけるCAD装置10の機能ブロック図である。
図4に示したCAD装置10との違いは、曲率算出部47と実装判定部48とを備えることである。利用者から入力されたチップ配置情報31(チップ2の配置点、配置方向、サイズ等を含む配置情報)に基づいて、3次元対象物3上のチップ2が配置される面の曲率を算出する。実装判定部48は、算出された曲率の値を閾値判定して、その配置点にチップ2を実装可能かどうかを判定し、判定結果を表示部32に表示する。
【0041】
図13は、実装判定部48の処理を示す図である。
図13(A)は、チップ2を実装する3次元対象物3上の面の曲率が、予め設定されている閾値(チップ2を実装してもチップ2に破損が生じない値)を超えている場合であり、この場合は、チップ2を実装できない旨の警告を表示部32に表示する。
図13(B)は、チップ2を実装する3次元対象物3上の面の曲率が、予め設定されている閾値未満の場合であり、この場合は、チップ2の配置が設計情報に正式に登録された旨の通知が表示部32に表示される。このように、CAD装置10上で、チップ2を所望の位置に配置可能かどうかを予め判定することが可能となる。
【0042】
なお、曲率算出部47は、チップ2の一方の端部に対応する3次元対象物3上の点から他方の端部に対応する3次元対象物3上の点における曲率の平均値を求めるようにしてもよいし、最大値を求めるようにしてもよい。
【0043】
また、表示部32には、チップ2を実装できない場合にのみ警告を通知し、実装可能な場合には、特に通知を行わないようにしてもよい。
【符号の説明】
【0044】
1 3次元実装システム
2 チップ
3 3次元対象物
4 配置点
4a,4b,・・・ 補助点
5 微小平面
6 垂線
10 CAD装置
11,21 CPU
12,22 RAM
13,23 ROM
14,24 HD
15,25 通信I/F
16,26 入出力I/F
27 カメラ
28 ヘッド
31 チップ配置情報
32 表示部
41 設計情報記憶部
42 配置点特定部
43 補助点特定部
44 微小平面設定部
45 垂線特定部
46 第1入出力部
47 曲率算出部
48 実装判定部
51 マーカ取得部
52 座標変換式導出部
53 座標変換部
54 ヘッド制御部
56 第2入出力部
71,72 マーカ