特許第5904441号(P5904441)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5904441
(24)【登録日】2016年3月25日
(45)【発行日】2016年4月13日
(54)【発明の名称】合成樹脂製アンプル容器
(51)【国際特許分類】
   A61J 1/06 20060101AFI20160331BHJP
【FI】
   A61J1/06 F
   A61J1/06 A
   A61J1/06 D
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-104103(P2012-104103)
(22)【出願日】2012年4月27日
(65)【公開番号】特開2013-230253(P2013-230253A)
(43)【公開日】2013年11月14日
【審査請求日】2014年11月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006909
【氏名又は名称】株式会社吉野工業所
(74)【代理人】
【識別番号】100076598
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 一豊
(72)【発明者】
【氏名】岸上 晴男
【審査官】 今井 貞雄
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−246137(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3151850(JP,U)
【文献】 特表2009−528224(JP,A)
【文献】 特表2010−510018(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61J 1/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
容液(N)を収容する有底筒状の本体部(1)と、該本体部(1)の上端に起立連設された有頂筒状の頭部(6)と、前記本体部(1)と頭部(6)の境界部に形成され、前記本体部(1)と頭部(6)の相対変動により破断される弱化部(9)とを備え、内周面に、前記弱化部(9)よりも下位から下方に延びる少なくとも1本の縦突条状の縦リブ(8)を設け、該縦リブ(8)は、前記頭部(6)内に位置する残留内容液(n)の下端液面(n1)の周端縁が付着する内周面部分(7)を通過する構成であることを特徴とする合成樹脂製アンプル容器。
【請求項2】
縦リブ(8)を、アンプル容器成形用の有底筒状のプリフォーム(p)の内周面に付形された縦突条状の縦リブ条(8a)で構成した請求項1に記載の合成樹脂製アンプル容器。
【請求項3】
縦リブ(8)を、間隔を開けて複数、望ましくは3〜4本設けた請求項1または2に記載の合成樹脂製アンプル容器。
【請求項4】
縦リブ(8)の下端を、本体部(1)の下端に位置させた請求項1〜3の何れか1項に記載の合成樹脂製アンプル容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬剤や栄養剤を収納する合成樹脂製アンプル容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
薬剤や栄養剤等を収納するアンプル容器として、例えば特許文献1に示されるような、有底円筒状の胴部の上端に、上方に縮径する肩部を連設し、この肩部から有頂筒状の小内径となった首部を起立設し、この首部と肩部の境界部分に切り込み部を形成し、胴部と肩部の組み合わせ部分を2軸延伸ブロー成形した樹脂製アンプル容器が知られている。このアンプル容器は、胴部側と首部側を相対的に変動させることにより、切り込み部により形成される弱化部で破断して容器が開封されるのであるが、予め切り込み部の形状および寸法を選択設定しておくことにより、切り込み部が形成する弱化部の破断を容易とし、これによる開封の際の衝撃による内容液の飛散が生じないようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−037442号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載された従来技術にあっては、アンプル容器において、内容液の付着力および表面張力の作用により、首部内に残留内容液が位置したままであると云う従前からの問題が解消されておらず、このため開封時に、この首部の残留内容液が飛散もしくは流出する、と云う問題があった。
【0005】
すなわち、図5に示すように、従前からのアンプル容器は、一般的に、本体部1に収納された内容液Nとは別に、首部相当部分である頭部6内に残留内容液nが、頭部6内の径Bと高さCの相関関係によっては、その付着力と表面張力の作用により、自重に逆らって本体部1に流下することなく、頭部6内に位置する現象が発生する。この状態は、内周面部分7に付着している残留内容液nの下端液面n1の周端縁に、残留内容液nの表面張力が均等に作用している状態で発揮される。
【0006】
このように、残留内容液nが頭部6内に位置している状態で、弱化部9を破断すると、この衝撃により残留内容液nが飛散、もしくは容器外に流出するのである。また、頭部6内に残留内容液nが残留すると云うことは、この残留内容液nの分だけ、本体部1に収容されている内容液Nの量が目減りしていることになり、有効に使用される内容液Nの量が不足する、と云う問題を生じる。
【0007】
そこで、本発明は、上記した従来技術における問題点を解消すべく創案されたもので、容器を正立状態では首部相当部分である頭部内に、残留内容液を位置させないことを技術的課題とし、もって開封時における内容液の飛散や流出を防止し、内容液の適正な量の収容を得る、ことを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決する本発明の手段の主たる構成は
容液を収容する有底筒状の本体部と、この本体部の上端に起立連設された有頂筒状の頭部と、本体部と頭部の境界部に形成され、本体部と頭部の相対変動により破断される弱化部とを備えていること、
内周面に、弱化部よりも下位から下方に延びる少なくとも1本の縦突条状の縦リブを設けること、
この縦リブは、頭部内に位置する残留内容液の下端液面の周端縁が付着する内周面部分を通過する構成であること、
にある。
【0009】
内容液の密封収容は、頭部の開放状態となっている上端開口部から所定量の内容液を注入し、次いで頭部の上端開口部を熱加工により密閉して達成される。このため、本体部と頭部は連通した状態のまま、内容液を収容して取扱われるので、この頭部内には本体部から内容液が自由に出入りすることになる。
【0010】
頭部内に浸入した内容液は、アンプル容器が正立姿勢になった際に、その付着力と表面張力により内周面に付着し、重力に逆らって頭部内に残留内容液として留まろうとする。
【0011】
この頭部内に浸入した残留内容液の付着に対して、この残留内容液の下端液面が位置する内周面部分には、少なくとの1本の縦リブが突出状に形成されて位置しているので、この縦リブにより内周面部分の平滑性は失われた状態となる。このため、縦リブにより、内周面部分に沿って残留内容液の表面張力を均等に作用させることが阻害されることになって、残留内容液は頭部内に留まる力を発揮することができない状態となる。それゆえ、頭部内の内容液は本体部に自然流下し、頭部内に残留内容液を生じさせることがない。
【0012】
また、突条状の縦リブは、弱化部よりも下位に位置しているので、この縦リブが弱化部を機械的に補強することは全くない。
【0013】
さらに、縦リブは、内周面だけに形成されるものであるので、この縦リブがアンプル容器の外観体裁に影響を与えることがない。
【0014】
本発明の別の構成は、上記した主たる構成における縦リブを、アンプル容器成形用の有底筒状のプリフォームの内周面に付形された縦突条状の縦リブ条で構成したものである。
【0015】
縦リブを、アンプル容器成形用の有底筒状のプリフォームの内周面に付形された縦リブ条で構成したものにあっては、プリフォームを通常の2軸延伸ブロー成形手段によりアンプル容器に成形することにより、プリフォームの縦リブ条をアンプル容器の縦リブに成形することができる。
【0016】
また、本発明の別の構成は、上記した主たる構成の縦リブを、間隔を開けて複数、望ましくは3〜4本設けて構成したものである。
【0017】
縦リブを、間隔を開けて複数、望ましくは3〜4本設けたものにあっては、残留内容液の下端液面が位置する内周面部分の平滑な周長が、縦リブにより分割されて、十分に長い周長の平滑部分が失われることになので、残留内容液の表面張力が内周面に沿って均等に作用することができなくなると共に、十分な付着力を発揮することが不可能となる。
【0018】
また、本発明の別の構成は、上記した主たる構成の縦リブの下端を、本体部の下端に位置させたものである。
【0019】
縦リブの下端を、本体部の下端に位置させたものにあっては、縦リブに成形される縦突条状の縦リブ条を、プリフォーム内周面の下端まで連続させた構成で形成することができるので、縦リブ条が射出成形されたプリフォームの離型に悪影響を与える恐れがない。
【発明の効果】
【0020】
本発明は、上記した構成となっているので、以下に示す効果を奏する。
本発明におけるアンプル容器の主たる構成においては、頭部内に浸入した内容液は本体部内に必ず自然流下し、頭部内に残留内容液を生じさせることがないので、本体部から頭部を破断して開封した際に、頭部内の残留内容液が飛散したり流出して不都合を発生することが皆無となり、常に良好な開封操作を得ることができる。
【0021】
また、突条状の縦リブは、弱化部を機械的に補強することは全くないので、弱化部の破断動作、すなわちアンプル容器の人手による開封操作を、無理なく良好に行うことができる。さらに、縦リブは、内周面だけに形成されるものであるので、この縦リブがアンプル容器の外観体裁に影響を与えることがなく、アンプル容器の外観形状の変更を要することがないので、従前からの2軸延伸ブロー金型をそのまま使用して成形することができ、これにより成形経費の増大を防止することができる。
【0022】
縦リブを、アンプル容器成形用の有底筒状のプリフォームの内周面に付形された縦リブ条で構成したものにあっては、プリフォームの縦リブ条をアンプル容器の縦リブに成形することができるので、縦リブの成形が無理なく簡単に達成できる。
【0023】
縦リブを、間隔を開けて複数、望ましくは3〜4本設けたものにあっては、残留内容液の表面張力が内周面に沿って均等に作用することができなくなると共に、十分な付着力を発揮することが不可能となるので、頭部内に位置した内容液の本体部側への自然流下を確実に得ることができ、頭部内の残留内容液の発生を確実に防止する。
【0024】
縦リブの下端を、本体部の下端に位置させたものにあっては、縦リブ条が射出成形されたプリフォームの離型に悪影響を与える恐れがないので、アンプル容器に成形されるプリフォームの円滑で良好な射出成形を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の一実施形態例を示す、全体縦断面図である。
図2図1図示実施形態例の、要部縦断拡大図である。
図3図2中、A−A線に沿って切断矢視した、一実施例の平面図である。
図4図2中、A−A線に沿って切断矢視した、他の実施例の平面図である。
図5】従来技術の概要を説明するための、全体縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態例を、図1図4を参照しながら説明する。
なお、本実施形態例では、本体部1に対して頭部6が位置する側を上方とし、その反対側(図1における下側)を下方とする。
【0027】
合成樹脂製アンプル容器は、有底筒状に2軸延伸ブロー成形され、内容液Nを収容する本体部1と、この本体部1の上端に起立連設された有頂筒状の頭部6と、本体部1と頭部6の境界部に形成され、本体部1と頭部6の折れ曲がりなどの相対変動により破断される弱化部9とを備え、頭部6内に残留内容液nが位置した場合に、この残留内容液nの下端液面n1の周端縁が付着する内周面部分7に、残留内容液nの表面張力が内周面部分に沿って均等に作用するのを阻止する縦突条状の縦リブ8を形成して構成されている。
【0028】
本体部1(図1参照)は、有底筒状の胴部2と、この胴部2の上端に、上方に段状に縮径しながら起立連設された肩部3と、この肩部3の上端に小外径の首部4を介して外鍔構造の口鍔部5を連設して構成されており、頭部6は、この口鍔部5に、外側からの切り込みにより肉薄に成形された弱化部9を介して連設されている。本体部1の口鍔部5よりも下の部分は2軸延伸ブロー成形された部分であるのに対して、口鍔部5は、2軸延伸ブロー成形されない部分で、肉厚となっている。この口鍔部5は肉厚となっているので、後述する肉厚な頭部6との間に切り込みなどにより形成された弱化部9は、口鍔部5および頭部6により殆ど変形することなく支えられることなり、これにより安定して良好に破断されることになる。
【0029】
頭部6(図1参照)は、口鍔部5と同様に2軸延伸ブロー成形されない部分で、当初から比較的肉厚に成形されているが、この頭部6から本体部1にかけての内周面は、首部4から肩部3上端にかけての部分で急に下方に拡径している。このため、頭部6から本体部1にかけての内周面域には、頭部6内に残留内容液nが位置した場合には、この残留内容液nの下端液面n1(図5参照)が位置する内周面部分7が形成されることになる。
【0030】
この内周面部分7には、周方向に沿って残留内容液nの表面張力が均等に作用するのを阻止する複数の縦突条状の縦リブ8が、間隔を開けて形成しており、図1ないし図3に示した第1の実施形態例では、この縦リブ8は、等中心角毎に3本設けられている。各縦リブ8は、その上端を弱化部9より下位に位置させており(図1図2参照)、またその下端を本体部1の下端に位置させて(図1参照)いる。それゆえ、縦リブ8が弱化部9に位置することはなく、この弱化部9を構造的に補強することはない。
【0031】
この縦リブ8は、アンプル容器成形用の有底筒状のプリフォームp(図1の二点鎖線図示参照)の内周面に付形された縦リブ条8aで成形される。この縦リブ条8aは、プリフォームpの弱化部9より下位から下端である底部にかけて設けられて、プリフォームpの離型方向に沿って位置することになるので、この縦リブ条8aがプリフォームpの成形金型からの離型に邪魔となることがなく、プリフォームpを射出成形金型から円滑にかつ良好に離型させることができる。
【0032】
この縦リブ8は、図3および図4に示すように、等中心角毎に配置された3本または4本とするのが有効である。例えば、縦リブ8を等中心角毎に2本設けた場合には、内周面部分7の分割程度が小さく(内周面部分7の平滑面域が大きくなる)なり、縦リブ8による残留内容液nに対する、表面張力を均等に働かせることを阻害する作用が、十分ではないと云う不満が生じる恐れがある。反対に、縦リブ8を等中心角毎に5本以上設けた場合には、縦リブ8の本数が増えた分、構造が複雑となると共に、本体部1の内周面の凹凸が多くなるので、上記したように縦リブ8の本数は3〜4がより望ましいことになる。しかしながら、この縦リブ8の本数の設定は、頭部6の内径寸法の大きさに従うのが良く、その本数を限定するものではない。
【0033】
以上、実施形態例に沿って本発明の構成とその作用効果について説明したが、本発明の実施の形態は上記実施形態例に限定されるものではなく、例えば、プリフォームpの縦リブ条8aは、プリフォームpの底部まで延びる構造で成形される構成に特定されることはなく、プリフォームpの形状が、首部4に成形される部分に対して、肩部3および胴部2に成形される部分の内径が小さい寸法となっている場合には、縦リブ条8aの下端を肩部3に成形される部分に位置させる構成とすることも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明の合成樹脂製アンプル容器は、頭部内に残留内容液を生じさせないので、安全にかつ清潔に使用することができると共に、内容液の収容量を正確に維持することができるので、アンプル容器として広い分野での適用が可能とすることができる。
【符号の説明】
【0035】
1 ;本体部
2 ;胴部
3 ;肩部
4 ;首部
5 ;口鍔部
6 ;頭部
7 ;内周面部分
8 ;縦リブ
8a;縦リブ条
9 ;弱化部
N ;内容液
n ;残留内容液
n1;下端液面
p ;プリフォーム
図1
図2
図3
図4
図5