(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5904461
(24)【登録日】2016年3月25日
(45)【発行日】2016年4月13日
(54)【発明の名称】排水口構造
(51)【国際特許分類】
E03C 1/22 20060101AFI20160331BHJP
【FI】
E03C1/22 A
【請求項の数】1
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2010-276341(P2010-276341)
(22)【出願日】2010年11月25日
(65)【公開番号】特開2012-112229(P2012-112229A)
(43)【公開日】2012年6月14日
【審査請求日】2013年11月18日
【審判番号】不服2015-10553(P2015-10553/J1)
【審判請求日】2015年5月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】392028767
【氏名又は名称】株式会社日本アルファ
(74)【代理人】
【識別番号】100090619
【弁理士】
【氏名又は名称】長南 満輝男
(72)【発明者】
【氏名】加籐 智哉
【合議体】
【審判長】
赤木 啓二
【審判官】
谷垣 圭二
【審判官】
小野 忠悦
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭55−44815(JP,U)
【文献】
特開2010−37919(JP,A)
【文献】
特開2003−74102(JP,A)
【文献】
特開2003−3548(JP,A)
【文献】
特開2009−91749(JP,A)
【文献】
特開平10−30263(JP,A)
【文献】
特開2000−248595(JP,A)
【文献】
実開平5−54678(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03C1/12-1/33
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
槽底に形成された陥没部に排水口が設けられ、該排水口には、上方より上パッキンを介して排水口金具が挿通され、槽底の裏面へ突出した排水口金具に下パッキンを介して排水管などの締結部材が締結されて、該締結部材と排水口金具のフランジ部とで排水口縁部を挟持固定した排水口において、排水口金具のフランジ部上面が伸展され、フランジ部下面外端に段差を付けて該フランジ部より薄い環状舌片を周設して、その環状舌片の上面と鋭角をなす外周端面が形成され、該環状舌片の変形と、この外周端面の鋭角部分による槽底の陥没部への屈曲接触とをさせて、排水口金具のフランジ部と槽底の陥没部との間に生じる隙間が塞ぎ覆われることを特徴とする排水口構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浴槽または洗面器などの槽底に陥没部を形成し、該陥没部に排水口が設けられ、該排水口に排水管へ接続する排水口金具を挿通させてなる排水口構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、浴槽または洗面器などの排水口は、槽底に陥没部を形成し、該陥没部に排水口が設けられ、該排水口に排水管へ接続する排水口金具を挿通させ、該排水口金具のフランジ部が前記陥没部に埋没させられている構造になっていた。
しかし、排水口金具のフランジ部と槽底の陥没部との間に隙間を生じ、水垢やゴミなどが堆積し易くなり、またカビなどの発生の原因にもなって、見栄え悪く、不衛生にもなり、不都合であった。
【0003】
そこで、浴槽または洗面器などの槽底に設けられた排水口の周囲に、該排水口方向への下り傾斜面でなる陥没部を形成して、この下り傾斜面と相対する斜面を下面に形成したフランジ部が備えられた排水口金具を排水口へ挿通し、排水管などによって締結され、槽底の陥没部の下り傾斜面と排水口金具のフランジ部下面の斜面とを接合して隙間のないようにするものがある。
よって、隙間がない故に、水垢やゴミなどの堆積、カビなどの発生を阻止出来るということである(特許文献1)。
【0004】
ところで、浴槽などの大型の水槽、陶磁製洗面器などの水槽であると、槽底の排水口の位置の精度を定め難く、水密性に不充分さがある上、排水口金具への排水管の接続で締結の負荷が負わされ、特に、水槽が陶磁製の場合には、排水口縁部が欠けたり、割れたりすることが応々にあり、安定した強度の排水口金具のフランジ部を得るためには、補足、補強されなければならなかった。
そこで、一応の厚さがあり、強度を有するフランジ部が備えられた排水口金具を使用し、該排水口金具が上パッキンを介して排水口へ挿通され、また、挿通した該排水口金具に下パッキンを介して排水管などの締結部材が締結され、このような排水口金具と排水管などの締結部材とによって、排水口縁部が上下パッキンを介して挟持固定された。しかし、そのようなものは、既に知られていることである(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】 実開昭62−125173
【特許文献2】 実公平6−14682
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
槽底に設けられた排水口の周囲に下り傾斜面でなる陥没部を形成し、該排水口に挿通した排水口金具のフランジ部下面を陥没部の下り傾斜面と相対する斜面にして、これらの槽底と排水口金具のフランジ部との間に生じる隙間がないように接合されたものは、そのフランジ部と陥没部とに生じる隙間の問題を解決する為に、排水口金具のフランジ部のみならず、槽底の陥没部までもが設計変更させられることになり、全体的な変更にもなりかねなく、大変な大掛かりの作業になり、採算も合わず、不都合である。
【0007】
そして、排水口金具のフランジ部は、排水口縁部が強固に挟持されるための強度を要するものでなければならないにも係らず、該フランジ部の下面を陥没部の下り傾斜面と相対する斜面にし、楔状とされたフランジ部での排水口縁部の挟持は、強度が弱められ、また締結で楔状のフランジ部の先端が変形されて、捲り上げられる可能性も生じ、問題を生じる。
【0008】
また、陥没部の下り傾斜面と、これに相対する排水口金具のフランジ部下面の斜面とは、水密性の点からも精度を良くしなければならないのに、その精度が得られるには困難を要し、よって、締結による接合に妥当なものとはいえない。
従ってまた、陥没部の下り傾斜面と、これに相対するフランジ部下面の斜面とによる接合の水密性を得るためには、パッキンが介在される必要を生じ、このパッキンの介在は、結果的には、隙間を起させることになり、所期の目的の隙間問題解消対策にならない。
【0009】
そこで、結局は、一応の厚さがあり、強度を有するフランジ部が備えられた排水口金具を使用することになり、排水口に挿通させたこのような排水口金具は、排水口との水密性及び緩衝性とが得られるように、排水口縁部が上パッキンと下パッキンとを介して排水口金具のフランジ部と排水管などの締結部材とで挟持固定されることになるが、その結果、排水口金具のフランジ部と槽底の陥没部との間には隙間を生じさせてしまい具合悪い。
【0010】
本発明は、排水口金具のフランジ部の強度と水密性とを有し、締結の緩衝性を保ち、排水口金具のフランジ部と槽底の陥没部との間に生じた隙間が塞ぎ覆われることになって、水垢やゴミ等の堆積、及びカビ等の発生を解消する排水口構造が得られることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の排水口構造は、槽底に形成された陥没部に排水口が設けられ、該排水口には、上方より上パッキンを介して排水口金具が挿通され、槽底の裏面へ突出した排水口金具に下パッキンを介して排水管などの締結部材が締結されて、該締結部材と排水口金具のフランジ部とで排水口縁部を挟持固定した排水口において、排水口金具のフランジ部上面が伸展され、
フランジ部下面外端に段差を付けて該フランジ部より薄い環状舌片を周設して、その環状舌片の上面と鋭角をなす外周端面が形成され、該環状舌片の変形と、この外周端面の鋭角部分による槽底の陥没部への屈曲接触とをさせて、排水口金具のフランジ部と槽底の陥没部との間に生じる隙間が塞ぎ覆われるものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明の排水口構造は、排水口金具のフランジ部が、上面を伸展した、該フランジ部より薄い環状舌片を周設して、その環状舌片の上面と鋭角をなす外周端面が形成され、該環状舌片の変形と、この外周端面の鋭角部分による槽底の陥没部への屈曲接触とをさせることで隙間の問題を解消し、このことによって、排水口縁部を挟持締結保持するフランジ部の強度を弱めることなく確保でき、隙間を確実に塞ぎ覆うことができ、隙間に生じる水垢やゴミ等の堆積、カビなどの発生を防止し、結局、これらの問題を解決することができる。
【0013】
本発明の排水口構造は、排水口には、上方より上パッキンを介して排水口金具が挿通され、槽底の裏面へ突出した排水口金具に下パッキンを介して排水管などの締結部材が締結されて、該締結部材と排水口金具のフランジ部とで排水口縁部を挟持固定するものであるので、上パッキン及び下パッキンによって水密性とすることが出来る。
そして、排水口金具のフランジ部に周設した変形する環状舌片と、この外周端面の鋭角部分による槽底の陥没部への屈曲接触とをさせることによって、槽底の陥没部や排水口に多少の寸法、及び位置の誤差があっても、それが収められて、隙間を塞ぎ覆うことができ、隙間に生じる水垢やゴミ等の堆積を防止することができ、また、隙間を塞ぎ覆っているので見栄えが良い。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】 槽底に形成された陥没部に排水口金具を装着した状態の断面図である。
【
図2】 環状舌片が周設されたフランジ部を備えた排水口金具の断面図である。
【
図3】 槽底に形成された陥没部に排水口金具が装着されてのフランジ部に周設する環状舌片の状態を示す拡大断面図である。
【
図4】 槽底に形成された排水口方向への下り傾斜面でなる陥没部に排水口金具を装着した状態の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0015】
本発明の実施例1の排水口構造を図面に基いて説明する。
図1に示す如く、浴槽または洗面器などの槽底10に陥没部11を形成し、該陥没部に排水口12が設けられる。
排水口12には、上方より上パッキン3を介して排水口金具1がそのフランジ部2を陥没部11に埋没するように挿通され、槽底10の裏面へ突出した排水口金具1に下パッキン5を介して排水管4などの締結部材が螺合締結されて、該締結部材と排水口金具1のフランジ部2とで排水口縁部13を挟持固定する。
【0016】
排水口金具1は、
図2に示す如く、その上部にフランジ部2を形成し、該フランジ部の上面21が伸展された、フランジ部2より薄い環状舌片22を周設する。該環状舌片の外周端面25がフランジ部上面21を伸展した環状舌片22の上面23と鋭角24をなすように形成される。
【0017】
槽底10の陥没部11へ排水口金具1のフランジ部2を埋没挿通させることによって、フランジ部2に周設される環状舌片22が、
図3に示す如く、変形され、この変形と、更に、環状舌片22の外周端面25が上面と鋭角になるよう形成された鋭角24部分による槽底10の陥没部11への屈曲接触とをさせて、排水口金具1のフランジ部2と、槽底10の陥没部11との間に生じる隙間14が塞ぎ覆われることになる。
そして、排水口金具のフランジ部2と、槽底の陥没部11との間に生じる隙間14が、該フランジ部に周設された環状舌片22の変形と、該環状舌片22の外周端面25の鋭角24部分を槽底10の陥没部11への屈曲接触させることとで塞ぎ覆われ、よって、この隙間14に堆積する水垢やゴミ等が無く、また、カビなどの発生をもさせないことになる。
【実施例2】
【0018】
本発明の実施例2の排水口構造を図面に基いて説明する。
図4に示す如く、浴槽または洗面器などの槽底101に、排水口方向への下り傾斜面でなる陥没部111を形成し、該陥没部に排水口121が設けられる。
排水口121には、上方より上パッキン3を介して排水口金具1がそのフランジ部2を陥没部111に埋設するように挿通され、槽底101の裏面へ突出した排水口金具1に下パッキン5を介して排水管4などの締結部材が螺合締結されて、該締結部材と排水口金具1のフランジ部2とで排水口縁部131を挟持固定する。
【0019】
排水口金具1は、その上部にフランジ部2を形成し、該フランジ部の上面が伸展された、該フランジ部2より薄い環状舌片22を周設し、該環状舌片の外周端面25がフランジ部上面を伸展した環状舌片22の上面と鋭角になるよう形成される。
【0020】
槽底101の陥没部111へ排水口金具1のフランジ部2を埋没挿通させることによって、フランジ部2に周設される環状舌片22が変形され、この変形と、更に、環状舌片22の外周端面25の鋭角部分が槽底101の陥没部111への屈曲接触させられて、排水口金具1のフランジ部2と、槽底101の陥没部111との間に生じる隙間141が塞ぎ覆われることになる。
そして、この隙間141に堆積する水垢やゴミ等が無く、また、カビなどの発生をもさせないことになる。
【符号の説明】
【0021】
1 排水口金具
10 槽底
101 槽底
11 陥没部
111 下り傾斜面でなる陥没部
12 排水口
121 排水口
13 排水口縁部
131 排水口縁部
14 隙間
141 隙間
2 フランジ部
21 上面
22 環状舌片
23 上面
24 鋭角
25 外周端面
3 上パッキン
4 排水管
5 下パッキン