【文献】
Naoki Suehiro,Rongzhen Jin,Chenggao Han,Takeshi Hashimoto,Performance of Very Effecient Wireless Frequency Usage System Using Kronecker Product with Rows of DFT Matrix,Proceedings of 2006 IEEE Information Theory Workshop(ITW'06),2006年10月,pp.526-529
【文献】
末広直樹,韓承鎬,伊本俊明,DFT行列とのクロネッカ積を用いたマルチパス信号の擬コヒーレント加算による無線周波数利用効率の増大,電子情報通信学会技術研究報告,2003年 3月19日,vol.012,no.743,pp.45-50
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0004】
末広らは、DFT(Discrete Fourier Transform)行列の行ベクトル(「行ベクトル」でなく、「列ベクトル」であってもよい。本明細書では、行ベクトルの場合について説明する。)とデータベクトル間のクロネッカー積を利用した新しい情報伝送方式である、Suehiro’sDFT(OSDM)方式を考案した(非特許文献1、2参照)。
【0005】
この方式は、現在様々な通信に利用されているOFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplex)方式と比べ、無線周波数利用効率が約2倍になることが確認されている(非特許文献3参照)。
【0006】
次に、N次元のDFT行列のN個(Nは、3以上の自然数)の行ベクトルのそれぞれと長さM(Mは、2以上の自然数)のデータとのクロネッカ積をとることによって生成された長さM×Nの信号を送受信する伝送方法であるOSDM(Orthogonal Signal Division Multiplex)方式について説明する。
(DFT行列と送信信号)
先ず、N次のDFT(Discrete Fourier Transform)行列について説明する。
【0007】
N次のDFT行列F
Nを、
F
N=[f
N(i、j)] ・・・(1)
とする。なお、N次逆DFT行列F
N−1は、DFT行列F
Nの複素共役である。
【0008】
ここで、iは、行番号で、0≦i≦N−1であり、jは、列番号で、0≦j≦N−1である。
【0009】
また、f
N(i、j)=exp(2π√−1ij/N)/√N ・・・(2)
である。
【0010】
また、単位円をN分割した点に相当する変数W
Nを、
図1に示すように、次のように定義する。
【0011】
W
N≡exp(2π√−1)/N ・・・(3)
このW
Nを用いると、DFT行列F
Nは、
図2に示すようになる。
【0012】
なお、W
Nは回転子であり、以下の関係が成立する。
【0013】
W
NN=e
j2π=1 ・・・(4)
W
NN−k=W
N2N−k=・・・=W
N−k
・・・(5)
図2に示すように、N次のDFT行列F
Nは、ベクトルf
N、0、ベクトルf
N、1・・・ベクトルf
N、N−1のN個の行ベクトルを有している。この行ベクトル同士は、周期相互相関が全てのシフトにおいて、ゼロである。
【0014】
次に、この行ベクトルを用いたデータの送信について説明する。
図3に示すように、送信部#0、送信部#1・・・送信部#(N−1)のN個の長さMの送信データ:データX
O(x
00、x
01、・・・、x
0(M−1))、データX
1(x
10、x
11、・・・、x
1(M−1))・・・データX
(N−1)(x
(N−1)0、x
(N−1)1、・・・、x
(N−1)(M−1))を、それぞれ、行ベクトルf
N、0、行ベクトルf
N、1・・・行ベクトルf
N、N−1を用いて、次のようにして生成された信号S
0、S
1・・・S
N−1を送信する。
【0015】
【数1】
生成された信号S
0、S
1・・・S
N−1を送信することにより、複数の送信部から、相関なく、データを送信することができる。なお、送信される信号の長さは、N×Mの長さとなる。
【0016】
つまり、信号S
0、S
1・・・S
N−1の中で任意の二つの信号の周期相互相関が全てのシフトで0(ゼロ)となるので、適切なマッチドフィルタを設計すればこれらの信号を足し合わせて送信しても、受信時にそれぞれのデータ列を分離することが可能になる。
(マッチドフィルタ)
長さMのベクトルI
M(1、0、・・・・、0)を定義する。
【0017】
ここでベクトルf
k(0≦k≦N−1)とI
Mのクロネッカ積
【0018】
【数2】
を整合する信号とするマッチドフィルタを用意する。
【0019】
このマッチドフィルタに信号S
k(0≦k≦N−1)を入力すると、出力の中央のM個の部分は、データX
kになる。
【0020】
また、(g≠k, 0 ≦ k ≦ N − 1, 0 ≦ g
≦ N − 1)としたときの信号S
gを
【0021】
【数3】
(擬周期信号)
信号S
0から信号S
N−1までを足し合わせた信号をS
sumとする。信号S
sumは長さMNの有限長系列であるため、マルチパスチャネル通過の際に、DFT行列によって得られた周期性を失ってしまう。すると、マッチドフィルタ出力からデータX
k(0≦k≦N−1)を得ることができなくなる。
【0022】
周期的な無限長の信号である場合、マルチパスチャネルは信号の周期性に影響を与えない。しかし、無限長の系列を送信することは実用的ではない。そこで、無限長の周期系列から必要な長さを切り出す擬周期信号を導入する。
【0023】
まず、想定されるマルチパス遅延時間よりも大きな値L
2を与える。
また、直接経路信号が存在しなかったり、極めて小さな電力レベルである場合、最大振幅信号に対する遅延時間がマイナスであることがある。その時間を考慮した値をL
1とする。
このL
1,L
2を使って
図4のような擬周期信号を作り送信する。
【0024】
ここでL
2にあたる部分をサイクリックプレフィックス、L
1にあたる部分をサイクリックポストフィックスと呼ぶ。受信時にはマッチドフィルタ入力前に両者を取り除く必要がある。
(パイロット信号)
データ列X
0を長さをMとして以下のように決める。
【0025】
X
0=(1,0,0,0,...,0) ・・・・(9)
【0026】
【数4】
X0=(p0,p1,p2,p3,...,p(L2−1), 0, 0, ..., 0) ・・・・(11)
ただし、(p
0,p
1,p
2,p
3,...,p
k,...,p
(L2−1)
)は、時間kだけ遅れて到達したパスに乗算される複素係数であり、送信装置内の伝送特性、伝搬空間の伝送特性及び受信装置内の伝送特性を含む伝送特性であり、時間軸上のチャネル特性を表している。
【0027】
このp
kは一般に、振幅係数r
kと位相回転θ
kを用いて、
p
k=r
k・e
jθk ・・・・(12)
と表される。
【0028】
なお、パイロット信号として、ZACZ(Zero Auto Correlation Zone Sequence)系列の信号、ZCCZ(Zero Crosscorrelation Zone Sequence)系列の信号、PN系列の信号を用いることが出来る。
【0029】
【数5】
パイロット信号として、ZACZ等を用いても、マルチパス特性を含む時間軸上のチャネル特性を検出することができる。
(連立方程式)
パイロット信号の挿入によってマルチパス特性を含む時間軸上のチャネル特性を知ることができることを示した。
パイロット以外のデータ信号部分Xk(1<k<N−1)の、それぞれのマッチドフィルタ出力の中心のM個の部分(dk0〜dk(M−1))は、データとマルチパス特性が以下の式のような関係を示す。
【0030】
(p
0,p
1,...,p
L2−2,p
L2−1,0,...,0,0,0)・x
k0
+(0,p
0,p
1,...,p
L2−2,p
L2−1,0,...,0,0)・x
k1
+(0,0,p
0,p
1,...,p
L2−2,p
L2−1,0,...,0)・x
k2
・
・
・
+(0,0,0,...,0,0,0,0,p
0,p
1)・x
k(M−2)
+(0,0,0,0,...,0,0,0,0,p
0)・x
k(M−1)
=(d
k0,d
k1,d
k2,...,d
k(M−2),d
k(M−1)) ・・・・(13)
これを行列を用いて表現すると次の式(14)のようになる。
【0031】
【数6】
ここで、
【0032】
【数7】
とすると、
D
k=P
tX
k ・・・・(17)
となる。
【0033】
式(17)をX
kについて解くことで、受信側において、送信装置側の伝送特性、伝搬空間の伝送特性及び受信装側の伝送特性を含む時間時間軸上のチャネル特性を補償した送信データを得ることができる。
【0034】
この連立方程式を簡単に解くためには、例えば、式(17)の両辺左からPの逆行列を掛ければよい。
【0035】
P
−1D
k=P
−1P
tX
k
=
tX
k ・・・・(18)
【発明を実施するための形態】
【0047】
送信データとして、
図5〜
図7の信号構成のものを用いる。
【0048】
図5〜
図7の信号構成において、N次元のDFT行列のN個の行ベクトル(N個の系列)をf
N、0、f
N、1、f
N、2、・・・f
N、N−1とする。また、このN個の行ベクトル内、P個の行ベクトルf
N、0〜f
N、P−1は、パイロット信号を送信するためのパイロット用行ベクトルとして用い、N−P個の行ベクトルf
N、P〜f
N、N−1は、データを送信するためのデータ送信用行ベクトルとして用いる。
【0049】
図5の信号構成は、パイロット用行ベクトルとして1個の行ベクトルf
N、0を用い、データ用行ベクトルとして、N−P個の行ベクトルf
N、P〜f
N、N−1を用いた場合である。
【0050】
また、行ベクトルf
N、0、f
N、1、f
N、2、・・・f
N、N−1は、N次元のDFT行列のN個の列ベクトルであってもよい。
【0051】
また、ベクトルf
N、0、f
N、1、f
N、2、・・・f
N、N−1は、N次元のDFT行列のN個の行ベクトルでなく、ZCCZ系列セットを構成するN個の系列であってもよい。
【0052】
例えば、ZCCZ系列セットとして、次に定義するZCCZ行列の行ベクトルを用いることができる。
【0053】
ここで言うZCCZ行列は、N行K列の行列であって、任意の二つの行ベクトルの間の、Kを周期とする周期相互相関関数にゼロクロスコリレーションゾーンが存在する。
【0054】
なお、二つの行ベクトルの組合せによっては、Kと異なるK’(K’≠K)を周期とする周期相互相関関数にゼロクロスコリレーションゾーンが存在してもよい。
【0055】
パイロット信号X
O(x
00、x
01、・・・、x
0(M−1))は、X
0=(1,0,0,0,...,0)であっても、良いし、長さMのZCZ系列の信号、長さMのZCCZ系列の信号等を用いることができる。
【0056】
N−P個の送信データX
0、P(x
0、P、0、x
0、P、1、・・・、x
0、P、(M−1))・・・X
0、N−1(x
0、(N−1)、0、x
0、(N−1)、1、・・・、x
0、(N−1)、(M−1))は、それぞれ、N−P個の行ベクトルf
N、P〜f
N、N−1と、クロネッカ積が取られる。
【0057】
したがって、
図5に示されている「送信信号0」は、次の信号である。
【0058】
【数8】
図6の信号構成は、パイロット用行ベクトルとして1個の行ベクトルf
N、1を用い、データ用行ベクトルとして、N−P個の行ベクトルf
N、P〜f
N、N−1を用いた場合である。
【0059】
図6に示されている「送信信号1」は、次の信号である。
【0060】
【数9】
同様にして、
図7の信号構成は、パイロット用行ベクトルとして1個の行ベクトルf
N、P−1を用い、データ用行ベクトルとして、N−P個の行ベクトルf
N、P〜f
N、N−1を用いる。
【0061】
図7に示されている「送信信号P−1」は、次の信号である。
【0062】
【数10】
(仮想チャネル用データ)
なお、仮想チャネル生成用データの一例として、
図8のデータを用いることができる。
【0063】
また、仮想チャネル生成用データとして、相関の小さい系列又は乱数を用いることが出来る。
なお、異なる前記仮想チャネル生成用データの一つで、データをたたみ込んで、送信することにより、仮想チャネルが生成される。なお、この仮想的なチャネルは、送信側で生成されるので、仮想送信チャネル又は仮想送信アンテナとも言える。
(送信装置)
ここで、
図5〜
図7において、実アンテナが1つで、Pが「3」の場合(パイロット信号が3個の場合であって、仮想チャネル(仮想送信チャネル、仮想送信アンテナ)が3つの場合である。)の送信装置について、
図9を用いて説明する。
【0064】
図9の送信装置では、N次元のDFT行列のN個の行ベクトル(N個の系列)をf
N、0、f
N、1、f
N、2、・・・f
N、N−1とし、このN個の行ベクトルの内、3個の行ベクトルf
N、0〜f
N、2をパイロット用行ベクトルとして用い、N−P(N−3)個の行ベクトルf
N、3〜f
N、N−1は、送信データを送信するためのデータ用行ベクトルとして用いる。
【0065】
図9の送信装置は、仮想チャネル0用(仮想送信チャネル0用、仮想送信アンテナ0用)の送信信号作成部11、仮想チャネル1用(仮想送信チャネル1用、仮想送信アンテナ1用)の送信信号作成部12、仮想チャネル2用(仮想送信チャネル2用、仮想送信アンテナ2用)の送信信号作成部13、仮想チャネル生成用データたたみ込み・加算部15、送信部17及びアンテナ18から構成されている。仮想チャネル生成用データたたみ込み・加算部15は、仮想チャネル生成用データが記憶された仮想チャネル生成用データ記憶部151を有している。
【0066】
仮想チャネル0用の送信信号作成部11は、パイロット用行ベクトルf
N、0とパイロット信号X
O(x
00、x
01、・・・、x
0(M−1))とのクロネッカ積と、N−3個のデータ用ベクトルf
N、3〜f
N、N−1のそれぞれとN−3個の送信データX
0、3(x
0、3、0、x
0、3、1、・・・、x
0、3、(M−1))・・・X
0、N−1(x
0、(N−1)、0、x
0、(N−1)、1、・・・、x
0、(N−1)、(M−1))とのクロネッカ積を取って、仮想チャネル0用の送信信号KS0を作成する。
【0067】
最終的に、仮想チャネル0用の送信信号作成部11は、次の信号を作成する。
【0068】
【数11】
なお、送信信号KS0は、長さNMの信号の(N−2)個の信号の和である。
【0069】
同様に、仮想チャネル1用の送信信号作成部12は、パイロット用行ベクトルf
N、1とパイロット信号X
1(x
10、x
11、・・・、x
1(M−1))とのクロネッカ積と、N−3個のデータ用ベクトルf
N、3〜f
N、N−1のそれぞれとN−3個の送信データX
1、3(x
1、3、0、x
1、3、1、・・・、x
1、3、(M−1))・・・X
1、N−1(x
1、(N−1)、0、x
1、(N−1)、1、・・・、x
1、(N−1)、(M−1))とのクロネッカ積を取って、仮想チャネル1用の送信信号KS1を作成する。
【0070】
最終的に、仮想チャネル1用の送信信号作成部12は、次の信号を作成する。
【0071】
【数12】
同様に、仮想チャネル2用の送信信号作成部13は、パイロット用行ベクトルf
N、2とパイロット信号X
2(x
20、x
21、・・・、x
2(M−1))とのクロネッカ積と、N−3個のデータ用ベクトルf
N、3〜f
N、N−1のそれぞれとN−3個の送信データX
2、3(x
2、3、0、x
2、3、1、・・・、x
2、3、(M−1))・・・X
2、N−1(x
2、(N−1)、0、x
2、(N−1)、1、・・・、x
2、(N−1)、(M−1))とのクロネッカ積を取って、仮想チャネル2用の送信信号KS2を作成する。
【0072】
最終的に、仮想チャネル2用の送信信号作成部13は、次の信号を作成する。
【0073】
【数13】
仮想チャネル生成用データたたみ込み・加算部15は、仮想チャネル0用の送信信号KS0、仮想チャネル1用の送信信号KS1及び仮想チャネル2用の送信信号KS2に対して、それぞれ、異なる仮想チャネル用データとのたたみ込みを行って、加算して、送信部に供給する。
【0074】
送信部17及びアンテナ18は、仮想チャネル生成用データたたみ込み・加算部15で生成された信号を高周波数に乗せてアンテナ18を介して送信する。
【0075】
仮想チャネル生成用データたたみ込み・加算部15の例を
図10に示す。
図10の仮想チャネル生成用データたたみ込み・加算部15は、仮想チャネル生成用データ記憶部151、たたみ込み部152〜154及び加算部155から構成されている。
【0076】
たたみ込み部152は、仮想チャネル0用の送信信号KS0と仮想チャネル生成用データD2とのたたみ込みを行い、たたみ込み部153は、仮想チャネル1用の送信信号KS1と仮想チャネル生成用データD1とのたたみ込みを行い、たたみ込み部154は、仮想チャネル2用の送信信号KS2と仮想チャネル生成用データD0とのたたみ込みを行う。
【0077】
加算部155は、たたみ込み部152〜154からの信号の加算を行い、送信部17に出力する。
【0078】
たたみ込み部の意義:送信部及びアンテナを介して、加算部155で加算された送信信号KS0、送信信号KS1及び送信信号KS2が送信される。送信信号KS0、送信信号KS1及び送信信号KS2は、同一の空間を経て、受信機で受信されるので、空間におけるチャネル特性は同じであるが、送信信号KS0、送信信号KS1及び送信信号KS2は、それぞれ異なる仮想チャネル用データとのたたみ込みが行われているので、受信機から見ると、送信信号KS0、送信信号KS1及び送信信号KS2は、それぞれ、異なる回線を経由して、受信されたものと等価である。
【0079】
したがって、受信側で、それぞれの回線のチャネル特性を検出して、連立方程式を生成し、この連立方程式を解くことにより、正確に、送信信号KS0、送信信号KS1及び送信信号KS2を得ることができる。
【0080】
図11に基づいて、たたみ込み部152を説明する。
【0081】
ここで、仮想チャネル0用の送信信号KS0に対する仮想チャネル用データD2を( 1 j 1 −j)とし、仮想チャネル0用の送信信号KS0を、(KS0
0、KS0
1、KS0
2、KS0
3、・・・KS0
NM−1)とする。
【0082】
図11に示されているように、(KS0
0、KS0
1、KS0
2、KS0
3、・・・KS0
NM−1)と、これに1タイムスロット後のj(KS0
0、KS0
1、KS0
2、KS0
3、・・・KS0
NM−1)と、更に、1タイムスロット後の(KS0
0、KS0
1、KS0
2、KS0
3、・・・KS0
NM−1)と、更に、1タイムスロット後の-j(KS0
0、KS0
1、KS0
2、KS0
3、・・・KS0
NM−1)が加算された信号が、たたみ込み部152の出力となる。
【0083】
同様に、たたみ込み部153からは、仮想チャネル1用の送信信号KS1に対する仮想チャネル用データD2を( j 1 1 j)とすると、j(KS1
0、KS1
1、KS1
2、KS1
3、・・・KS1
NM−1)と、これに1タイムスロット後の(KS1
0、KS1
1、KS1
2、KS1
3、・・・KS1
NM−1)と、更に、1タイムスロット後の(KS1
0、KS1
1、KS1
2、KS1
3、・・・KS1
NM−1)と、更に、1タイムスロット後のj(KS1
0、KS1
1、KS1
2、KS1
3、・・・KS1
NM−1)が加算された信号が出力される。
【0084】
同様に、たたみ込み部154からは、仮想チャネル2用の送信信号KS2に対する仮想チャネル生成用データD0を( 1 j j 1)とすると、(KS2
0、KS2
1、KS2
2、KS2
3、・・・KS2
NM−1)と、これに1タイムスロット後のj(KS2
0、KS2
1、KS2
2、KS2
3、・・・KS2
NM−1)と、更に、1タイムスロット後のj(KS2
0、KS2
1、KS2
2、KS2
3、・・・KS2
NM−1)と、更に、1タイムスロット後の(KS2
0、KS2
1、KS2
2、KS2
3、・・・KS2
NM−1)が加算された信号が出力される。
(受信装置)
送信側仮想チャネルによって、(N−P)倍の送信データ量となった、
図9の送信装置から送信され信号を受信する受信装置について説明する。
【0085】
図9の仮想チャネルを有する送信機から送信される一般化した信号を
図43に示す。
【0086】
図43の信号構成は、パイロット信号がP個、仮想チャネル数がP個、DFT行列の行ベクトルが、
図4のように定義された行ベクトルf
N、0、行ベクトルf
N、1・・・行ベクトルf
N、N−1(以下、「行ベクトルf
0、行ベクトルf
1・・・行ベクトルf
N−1」又は「f
0、f
1・・・f
N−1」とも言う。)」を用いた場合である。
【0087】
また、送信データは、仮想チャネル毎に、パイロット信号と共に、(N−P)×M個のデータを送信する場合である。
【0088】
仮想チャネル#0からは、行ベクトルf
0とクロネッカ積が取られてパイロット信号#0が送信される。同時に、仮想チャネル#0からは、N−P個の送信データ(X
00、X
01、・・・、X
0(N−P)が、行ベクトルf
0、行ベクトルf
1・・・行ベクトルf
N−1のそれぞれとクロネッカ積が取られて送信データ#0として送信される。
【0089】
なお、N−P個の送信データは、それぞれ、長さMのデータであるので、仮想チャネル#0からは、M×(N−P)のデータが送信される。
【0090】
同様に、仮想チャネル#1からは、行ベクトルf
1とクロネッカ積が取られてパイロット信号#1が送信される。同時に、仮想チャネル#1からは、N−P個の送信データ(X
10、X
11、・・・、X
1(N−P)が、行ベクトルf
0、行ベクトルf
1・・・行ベクトルf
N−1のそれぞれとクロネッカ積が取られて送信データ信号#1として送信される。
【0091】
・
・
同様に、仮想チャネル#P−1からは、行ベクトルf
P−1とクロネッカ積が取られてパイロット信号#P−1が送信される。同時に、仮想チャネル#P−1からは、N−P個の送信データ(X
P−10、X
P−11、・・・、X
P−1(N−P)が、行ベクトルf
0、行ベクトルf
1・・・行ベクトルf
N−1のそれぞれとクロネッカ積が取られて送信データ信号#N−1として送信される。
【0092】
各仮想チャネルのパイロット信号は、クロネッカ積が取られる行ベクトルが異なるので、他のパイロット及びデータと干渉されずに受信することが出来る。
【0093】
しかしながら、各仮想チャネルの送信データは、クロネッカ積が取られるN−P個の行ベクトルf
P〜f
N−1を共有している。
【0094】
そのため、同一の行ベクトルで送信されたMP個のデータが、受信側で何もしないと、混信して受信される。
【0095】
そこで、本発明は、受信側でU(U≧P)個の仮想チャネルを生成し、アンテナで受信した信号を、このU個の仮想チャネルに分岐し、分岐されたU個の信号を処理することにより、連立一次方程式を生成し、この連立一次方程式を解くことによって、送信信号を混信なく受信するようにしたものである。
【0096】
つまり、
(1)送信側で、別々のP通りの送信側仮想チャネルを通した後に、加算して得た信号を実際の伝送チャネルに送信し、受信側で、受信した信号をU(U≧P)通りの別々の仮想チャネルを通す。
【0097】
(2)送信側でP通り、受信側でU通りの仮想チャネルがあるので、通過する仮想チャネルはPU通りである。このPU通りの全ての仮想チャネル特性を検出する。
【0098】
このPU通りの全ての仮想チャネル特性のうち、少なくともP
2個の仮想チャネルを検出する。
【0099】
(3)受信側で得たPU通りのチャネル特性と、送信側から送信されたデータが別々の受信側仮想チャネルを通った出力とを用いて、連立一次方程式を生成し、この連立一次方程式を解くことによって、送信信号を混信なく受信するようにしたものである。
【0100】
なお、受信側でU(U≧P)通りの別々の仮想チャネルを通す方法として、オーバサンプリングによる方法と、送信側と同じように、U個の仮想チャネル生成用データでたたみ込む方法とがある。
【0101】
図12は、オーバサンプリングによる方法であり、
図44は、仮想チャネル生成用データでたたみ込む方法である。
(受信装置(その1))
図9の送信装置から送信された信号について、オーバサンプリングによる受信装置について、
図12を用いて説明する。なお、
図12では、R(P)=3でなく、一般的に図示した。
【0102】
図12の受信装置は、アンテナ21と、アンテナ21で検出された受信信号をベースバンド信号に変換する受信部22と、受信部22でベースバンド信号に変換された受信信号をU倍のオーバサンプリングを行うオーバサンプリング部28と、オーバサンプリング部28から出力された後述するサンプリング系列毎に、ベクトルf
N、0、ベクトルf
N、1・・・ベクトルf
N、N−1のN個の行ベクトルのそれぞれとベクトルI
Mとのクロネッカ積に整合するマッチドフィルタから構成される信号分離部29と、送信装置側の伝送特性、伝搬空間の伝送特性及び受信装側の伝送特性を含む送信側から受信側にかけての全伝送路の時間時間軸上のチャネル特性を検出する(後述する仮想送信チャネルと仮想受信アンテナとの全組合せの時間軸上のチャネル特性を検出する。)チャネル特性検出部25と、連立方程式生成部26と、復号部27とを有している。
(オーバサンプリング)
オーバサンプリング部28は、受信部22でベースバンド信号に変換された受信信号をU倍のオーバサンプリングを行う。
【0103】
ここで、信号P(1、−1、1、1)のオーバサンプリングについて、
図13を用いて、模式的に説明する。なお、オーバサンプリング部28におけるオーバサンプリングは、
図13に示されているような、綺麗な「0」、「1」から構成されているような信号ではなく、回線雑音、熱雑音、他のチャネルからの漏洩信号等を含む綺麗でない信号である。
【0104】
図13(A)に示すように、信号Pのピッチ間隔をτ(ピッチ周波数1/τ)としたとき、ピッチ周波数の4倍の周波数(τ/4の間隔)で、オーバサンプリングを行うと、
図13(B)に示すように、
信号A(1、−1、1、1)が、信号B(1、1、1、1、−1、−1、−1、−1、1、1、1、1、1、1、1、1)となる。
【0105】
なお、オーバサンプリングのタイミングが固定されていれば、オーバサンプリングの間隔は、同一でなくてもよい。
【0106】
つまり、後述する#を用いれば、同一の#におけるサンプリング間隔はどの#の場合であっても、固定(図の場合は、τ/4である。)であるが、#間の間隔は、一定である必要はない。
【0107】
また、オーバサンプリングは、ベースバンドでなく、高周波段階又は中間周波数の段階で行ってもよい。
【0108】
図14に示されているように、信号(a
0、a
1、・・・、a
(M−1))が受信され、かつ、オーバサンプリングされる。このとき、信号a
0に対するオーバサンプリング#0の信号をa
0−0とし、信号a
0に対するオーバサンプリング#1の信号をa
0−1とし、・・・信号a
0に対するオーバサンプリング#(U−1)の信号をa
0−(U−1)とし、信号a
1に対するオーバサンプリング#0の信号をa
1−0とし、信号a
1に対するオーバサンプリング#1の信号をa
1−1とし、・・・信号a
1に対するオーバサンプリング#(U−1)の信号をa
1−(U−1)とし、・・・・信号a
(M−1)に対するオーバサンプリング#0の信号をa
(M−1)−0とし、信号a
(M−1)に対するオーバサンプリング#1の信号をa
(M−1)−1とし、・・・信号a
(M−1)に対するオーバサンプリング#(U−1)の信号をa
(M−1)−(U−1)とする。
【0109】
これを、サンプリング点での信号の系列で見ると、
図15のように示せる。
【0110】
サンプリング#0の系列 a
0―0 a
1―0 ・・・・a
(M−1)―0
サンプリング#1の系列 a
0―1 a
1―1 ・・・・a
(M−1)―1
・・・・
サンプリング#U−1の系列 a
0―(U−1) a
1―(U−1) ・・・
a
(M−1)−(U−1)
これによれば、サンプリングの系列毎に、送信信号に対応する信号系列が存在しており、換言すれば、サンプリングの系列毎に、仮想的なチャネルが存在していると言える。なお、この仮想的なチャネルは、受信側で生成されるので、仮想受信アンテナとも言える。
【0111】
ところで、パイロット信号では、仮想チャネル毎に異なる行ベクトルお使用しているので、全パイロット信号は、混信することなく受信側で受信することができる。しかしながら、送信データは、仮想チャネル毎に、異なる行ベクトルを用いていないので、同じ行ベクトルを用いた他の送信データと混信する。
【0112】
本願発明では、受信側でオーバサンプリングすることにより、送信データを復号できるに十分な連立一次方程式を生成し、この連立一次方程式を解くことによって、回線のチャネル特性の影響を排除して、送信データを推測することを可能としている。
【0113】
なお、この場合、オーバサンプリングのUは、
U≧R
である。
(信号の分離)
信号分離部29は、オーバサンプリング部28から出力されたサンプリング系列毎に、ベクトルf
N、0、ベクトルf
N、1・・・ベクトルf
N、N−1のN個の行ベクトルのそれぞれとベクトルI
Mとのクロネッカ積に整合するマッチドフィルタを通す。信号分離部29は、ベクトルf
N、0、ベクトルf
N、1・・・ベクトルf
N、N−1のN個の行ベクトルのそれぞれとベクトルI
Mとのクロネッカ積に整合するマッチドフィルタ毎に信号を分離する。
【0114】
分離された信号は、サンプリング系列毎の、P個のパイロット信号とN−P個の送信データである。
【0115】
次に、あるサンプリング系列#i(0≦i≦U−1)のパイロット信号の分離について説明する。
【0116】
仮想チャネル0用(仮想送信チャネル0用、仮想送信アンテナ0用)の送信信号KS0には、パイロット信号X
0が
【0117】
【数14】
ベクトルf
N、0とベクトルI
Mとのクロネッカ積の整合フィルタを通過させることにより、パイロット信号X
0を得ることができる。
【0118】
また、同様にして、信号分離部29は、仮想チャネル1(仮想送信チャネル1、仮想送信アンテナ1)及び仮想チャネル2(仮想送信チャネル2、仮想送信アンテナ2)の受信信号を、ベクトルf
N、1とベクトルI
Mとのクロネッカ積の整合フィルタ及びベクトルf
N、2とベクトルI
Mとのクロネッカ積の整合フィルタに入力させることにより、仮想チャネル1及び仮想チャネル2のパイロット信号X
1及びパイロット信号X
2Wを得ることができる。
【0119】
また、パイロット信号の抽出と同様にして、N−P個の送信データを得ることができる。
【0120】
つまり、仮想チャネル0の信号を、N−P(ここでは、P=3)個の行ベクトルf
N、P〜f
N、N−1のそれぞれとベクトルI
Mとのクロネッカ積に整合フィルタを通過させることにより、N−P個の送信データX
0、P(x
0、P、0、x
0、P、1、・・・、x
0、P、(M−1))・・・X
0、N−1(x
0、(N−1)、0、x
0、(N−1)、1、・・・、x
0、(N−1)、(M−1))を得ることができる。
【0121】
また、同様にして、信号分離部29は、仮想チャネル1及び仮想チャネル2のN−P個の送信データを、仮想チャネル1及び仮想チャネル2の信号を、N−P個の行ベクトルf
N、P〜f
N、N−1のそれぞれとベクトルI
Mとのクロネッカ積に整合フィルタを通過させることにより、得ることができる。
【0122】
ところで、パイロット信号は、仮想チャネル毎(仮想送信チャネル毎、仮想送信アンテナ毎)に異なる行ベクトルを使用しているので、全パイロット信号は、混信することなく受信側で受信することができる。しかしながら、送信データは、仮想チャネル毎に、異なる行ベクトルを用いていないので、何もしなければ、同じ行ベクトルを用いた他の送信データと混信する。
【0123】
本願発明は、各仮想チャネル(仮想送信チャネル毎、仮想送信アンテナ毎)上に、それぞれ、異なるパイロット信号を送信しており、受信側で、このパイロット信号を受信することにより、全仮想チャネルのチャネル特性を含むチャネル特性を検出できるようになっており、このチャネル特性を用いて、混信することなく、送信データを検出することができる。
(チャネル特性検出)
本発明は、次に示すように、仮想チャネル(仮想送信アンテナ)毎に、1つのパイロット信号が挿入されている。
【0124】
【数15】
したがって、#j(0≦j≦N−1)パイロット信号を検出することにより、#jの仮想チャネル(仮想送信アンテナ)のチャネル特性を得ることができる。
【0125】
また、本発明では、サンプリングの系列毎に、
ベクトルf
0とベクトルI
Mとのクロネッカ積の為の整合フィルタ、
ベクトルf
1とベクトルI
Mとのクロネッカ積の為の整合フィルタ、
・
・
ベクトルf
P−1とベクトルI
Mとのクロネッカ積の為の整合フィルタ、
を持っている。
換言すれば、
仮想受信アンテナ#0〜#(U−1)のそれぞれが
ベクトルf
0とベクトルI
Mとのクロネッカ積の為の整合フィルタ、
ベクトルf
1とベクトルI
Mとのクロネッカ積の為の整合フィルタ、
・
・
ベクトルf
P−1とベクトルI
Mとのクロネッカ積の為の整合フィルタ、
を持っている。
ところで、仮想受信アンテナ#i(0≦i≦U−1)からの信号を、ベクトルf
j(0≦j≦P−1)とベクトルI
Mとのクロネッカ積の為の整合フィルタに入力したときの出力は、仮想送信アンテナjから仮想受信アンテナiのへの仮想チャネルの特性である。
【0126】
したがって、仮想受信アンテナ#i(0≦i≦U−1)(つまり、オーバサンプリングの#iの系列)において、全仮想送信アンテナと仮想受信アンテナ#i間の仮想チャネル特性を得ることができる。
【0127】
また、これを全ての、仮想受信アンテナで行うことにより、チャネル特性検出部25は、全仮想送信アンテナと全仮想受信アンテナ間の仮想チャネル特性を得ることができる。
【0128】
また、本願発明では、時間軸でチャネル特性を検出しているので、チャネル特性検出部25は、送信装置側の伝送特性、伝搬空間の伝送特性及び受信装側の伝送特性を含む送信側から受信側にかけての全伝送路の時間時間軸上のチャネル特性を検出することができる。
【0129】
本発明では、時間時間軸上のチャネル特性を検出するものであり、デルタ信号を送信したときの時間応答検出するものである。
【0130】
時間時間軸上のチャネル特性は、マルチパス応答を含む、送信装置側の伝送特性、伝搬空間の伝送特性及び受信装側の伝送特性を含む送信側から受信側にかけての全伝送路のチャネル特性である。
【0131】
なお、時間時間軸上のチャネル特性は、マルチパス特性と同様の形式で表現される。
(連立方程式の生成)
連立方程式生成部26は、オーバサンプリングで生成された受信信号と、チャネル特性検出部25で検出された時間軸上のチャネル特性とに基づいて、式(17)のような連立方程式を生成する。
【0132】
実際には、
図16に示すように、対応する行ベクトルに係る送信データを加算してT
0、T
1、T
2を生成し、T
0、T
1、T
2毎に、連立方程式を生成する。
(復号)
連立方程式生成部26は、チャネル分離部29で分離された3個の仮想チャネルの受信信号と、チャネル特性検出部25で検出された時間軸上のチャネル特性とに基づいて、式(17)のような連立方程式を生成する。
【0133】
復号部27は、連立方程式生成部26で生成された連立方程式を解く。なお、連立方程式生成部26で生成された連立方程式には、送信装置側の伝送特性、伝搬空間の伝送特性及び受信装側の伝送特性を含む送信側から受信側にかけての全伝送路の時間時間軸上のチャネル特性が、反映されているので、その解は、送信装置側の伝送特性、伝搬空間の伝送特性及び受信装側の伝送特性に影響されていない送信データを復号することができる。
【0134】
換言すれば、式(17)の連立方程式を解くことは、伝送路の時間時間軸上のチャネル特性の影響を排除した信号を得ることができる。
【0135】
上述したように、仮想チャネル生成用データで生成された仮想チャネルと、オーバサンプリングの系列毎に生成された仮想的なチャネルが得られた。前者は、送信側で生成された仮想チャネルであり、後者は、受信側で生成された仮想チャネルであり、これらの仮想チャネルは独立に生成される。してみると、前者により仮想送信アンテナが生成され、後者によって、仮想受信アンテナが生成されるとみなすことができる。
【0136】
仮想チャネル生成用データで生成された仮想チャネルが3(P=3)つで、オーバサンプリングの系列毎に生成された仮想的なチャネルがUであれば、そのチャネル数は、3Uである。
【0137】
従って、チャネル特性検出部25は、3Uのチャネルについて、送信装置側の伝送特性、伝搬空間の伝送特性及び受信装側の伝送特性を含む送信側から受信側にかけての全伝送路の時間時間軸上のチャネル特性を検出する。
(受信装置(その2))
(受信側でたたみ込みにより、仮想チャネルを生成する方法)
次いで、受信側で、仮想チャネルを生成する方法として、受信信号を仮想チャネル生成用データでたたみ込む方法について、
図44を用いて説明する。
【0138】
図44の受信装置は、アンテナ21と、アンテナ21で検出された受信信号をベースバンド信号に変換する受信部22と、受信部22でベースバンド信号に変換された受信信号を、U
1個の仮想チャネル生成用データでたたみ込む受信側仮想チャネル用たたみ込み部38と、受信側仮想チャネル用たたみ込み部38から出力されたU
1個の仮想チャネル毎に、ベクトルf
N、0、ベクトルf
N、1・・・ベクトルf
N、N−1のN個の行ベクトルのそれぞれとベクトルI
Mとのクロネッカ積に整合するマッチドフィルタから構成される信号分離部29と、チャネル特性検出部25と、連立方程式生成部26と、復号部27とを有している。
【0139】
図44において、受信側仮想チャネル用たたみ込み部38以外の、アンテナ21、受信部22、信号分離部29、チャネル特性検出部25、連立方程式生成部26及び復号部27は、
図12と同じである。
【0140】
受信側仮想チャネル用たたみ込み部38は、仮想チャネル生成用データ記憶部381を有し(仮想チャネル生成用データ記憶部381を有していなくてもよい。)、受信部22でベースバンドに落とされた受信信号を、仮想チャネル生成用データ記憶部381に記憶されている仮想チャネル生成用データの一つで、たたみ込みを行う。
【0141】
受信信号をRSとし、仮想チャネル生成用データを、E
1〜E
U1としたとき、受信側仮想チャネル用たたみ込み部38からは、
受信信号RSと、仮想チャネル生成用データE
1〜E
U1とがたたみ込まれ、
受信側仮想チャネル用たたみ込み部38の出力として、
受信信号RSと、仮想チャネル生成用データE
1とがたたみ込まれた信号#1、
受信信号RSと、仮想チャネル生成用データE
12とがたたみ込まれた信号#2、
・
・
受信信号RSと、仮想チャネル生成用データE
U1とがたたみ込まれた信号#U
1とが、別々に出力される。
【0142】
信号分離回路は、U
I個の受信側仮想チャネル用たたみ込み部38の出力に対して、それぞれ、ベクトルf
N、0、ベクトルf
N、1・・・ベクトルf
N、N−1のN個の行ベクトルのそれぞれとベクトルI
Mとのクロネッカ積に整合するマッチドフィルタを通して、マッチドフィルタ毎に信号を分離する。
【0143】
チャネル特性検出部25、連立方程式生成部26及び復号部27は、
図12と同じであるので、説明を省略する。
【0144】
(アンテナ数)
なお、上記説明では、送信アンテナが一つ、受信アンテナが一つの場合であって、仮想チャネルの送信アンテナ数R及び仮想チャネルの受信アンテナ数Uの場合について説明した。
【0145】
仮想チャネル数をRとし、仮想チャネルの送信アンテナ数をT、仮想チャネルの受信アンテナ数をVとし、更に、現実の送信アンテナ数をTA、現実の受信アンテナ数をRAとすると、
典型的システムでは
仮想チャネル数R=仮想チャネルの受信アンテナ数U
であり、
現実の送信アンテナ数TA=現実の受信アンテナ数RA=1
の場合である。
【0146】
本願発明は、この場合に限らず実施することができる。
【0147】
例えば、次のケース1〜ケース4の場合である。
【0148】
(1) ケース1
送信側:現実の送信アンテナ数R
受信側:現実の受信アンテナ数1で、仮想チャネルの受信アンテナ数R
の場合
(2) ケース2
送信側:現実の送信アンテナ数1で、仮想チャネルの送信アンテナ数R
受信側:現実の受信アンテナ数R
の場合
(3) ケース3
送信側:現実の送信アンテナ数R
受信側:現実の受信アンテナ数R
の場合
(4) ケース4
送信側:現実の送信アンテナ数TA
仮想チャネルの送信アンテナ数(R−TA)
受信側:現実の受信アンテナ数RA
仮想チャネルの受信アンテナ数(R−RA)
上記実施の形態では、仮想送信アンテナ数をRが「3」の場合について説明する。
【0149】
図17は、送信側の現実の送信アンテナ数Rが、仮想チャネル数Rに等しい場合である。
【0150】
図17の送信装置は、仮想チャネル0用の送信信号作成部11、仮想チャネル1用の送信信号作成部12、仮想チャネル2用の送信信号作成部13、仮想チャネル生成用データ151、たたみ込み部152〜154、送信部171及びアンテナ181から構成されている。
【0151】
たたみ込み部152は、仮想チャネル0用の送信信号KS0と仮想チャネル生成用データD2とのたたみ込みを行い、たたみ込み部153は、仮想チャネル1用の送信信号KS1と仮想チャネル生成用データD1とのたたみ込みを行い、たたみ込み部154は、仮想チャネル2用の送信信号KS2と仮想チャネル生成用データD0とのたたみ込みを行う。
【0152】
送信部171は、たたみ込み部152〜154からの信号(仮想チャネル0用の送信信号、仮想チャネル1用の送信信号、仮想チャネル2用の送信信号)を、高周波信号に変換して、それぞれ、別のアンテナ181、182M183から送信する。
【0153】
図18は、送信側の現実の送信アンテナ数Rが、仮想チャネル数Rより、少ない場合で、現実の送信アンテナ数TAとしたとき、仮想チャネルの送信アンテナ数がR−TAの場合である。
【0154】
なお、送信部は、アンテナ181〜183毎に、設けるようにしてもよい。この場合、3人のユーザが、別々のアンテナを利用するようにしてもよい。
【0155】
図18の送信装置は、仮想チャネル0用の送信信号作成部11、仮想チャネル1用の送信信号作成部12、仮想チャネル2用の送信信号作成部13、仮想チャネル生成用データ151、たたみ込み部152〜154、加算部1551、送信部172及びアンテナ184、185から構成されている。
【0156】
たたみ込み部152は、仮想チャネル0用の送信信号KS0と仮想チャネル生成用データD2とのたたみ込みを行い、たたみ込み部153は、仮想チャネル1用の送信信号KS1と仮想チャネル生成用データD1とのたたみ込みを行い、たたみ込み部154は、仮想チャネル2用の送信信号KS2と仮想チャネル生成用データD0とのたたみ込みを行う。
【0157】
加算部1551は、たたみ込み部153、154からの信号の加算を行い、送信部17に出力する。
【0158】
なお、たたみ込み部152の出力は、直接、送信部17に出力される。
【0159】
送信部171は、たたみ込み部152からの信号(仮想チャネル0用の送信信号)及び加算部151からの信号(仮想チャネル1用の送信信号、仮想チャネル2用の送信信号)を、高周波信号に変換して、アンテナから送信する。
【0160】
なお、仮想チャネル0用の送信信号は、アンテナ184から送信され、仮想チャネル1用の送信信号及び仮想チャネル2用の送信信号は、アンテナ185から送信される。
【0161】
図19は、受信側の現実の送信アンテナ数Rが、仮想チャネル数Rに等しい場合である。
【0162】
なお、送信部は、アンテナ181〜183毎に、設けるようにしてもよい。この場合、2人のユーザが、別々のアンテナを利用することができる。
【0163】
図19は、
図9、
図17及び
図18の送信装置から送信された信号を、アンテナ211〜213及び受信部221〜223で受信するものである。
【0164】
図19の受信装置は、アンテナ211〜213と、アンテナ211〜213で検出された受信信号をオーバサンプリングするオーバサンプリング部28と、ベクトルf
N、0、ベクトルf
N、1・・・ベクトルf
N、N−1のN個の行ベクトルに整合するマッチドフィルタから構成されオーバサンプリング部28の出力をオーバサンプリング系列毎に信号を分離する信号分離部29と、送信装置側の伝送特性、伝搬空間の伝送特性及び受信装側の伝送特性を含む送信側から受信側にかけての全伝送路の時間時間軸上のチャネル特性を検出するチャネル特性検出部25と、連立方程式生成部26と、復号部27とを有している。
【0165】
なお、オーバサンプリング28は、受信部221〜223のそれぞれに設けるようにしてもよい。
【0166】
受信部221〜223が、異なるユーザの場合は、ユーザ毎に、オーバサンプリング部を有する構成にする。
【0167】
図20は、受信側の現実の送信アンテナ数Rが、仮想チャネル数R未満の場合である。
【0168】
図20は、
図9、
図17及び
図18の送信装置から送信された信号を、アンテナ214、215及び受信部224、225で受信するものである。
【0169】
図20の受信装置は、アンテナ214、215と、アンテナ214、215で検出された受信信号をベースバンド信号に変換する受信部224、225と、オーバサンプリング28と、ベクトルf
N、0、ベクトルf
N、1・・・ベクトルf
N、N−1のN個の行ベクトルに整合するマッチドフィルタから構成され、オーバサンプリングの系列毎に信号を分離する信号分離部29と、送信装置側の伝送特性、伝搬空間の伝送特性及び受信装側の伝送特性を含む送信側から受信側にかけての全伝送路の時間時間軸上のチャネル特性を検出するチャネル特性検出部25と、連立方程式生成部26と、復号部27とを有している。
【0170】
これによれば、上記ケース1は、送信側が
図17、受信側が
図12の場合であり、上記ケース2は、送信側が
図9、受信側が
図19の場合であり、上記ケース3は、送信側が
図17、受信側が
図21の場合であり、上記ケース4は、送信側が
図18、受信側が
図20の場合である。
【0171】
なお、仮想チャネルの送信アンテナ数T=仮想チャネルの受信アンテナ数U
の場合は、受信側で、式(17)と同様の連立方程式が一つ生成することになる。
【0172】
しかしながら、仮想チャネルの送信アンテナ数T<仮想チャネルの受信アンテナ数Vの場合は、受信側の個の全仮想アンテナVからT個選んで連立方程式を立てることができる。
【0175】
その結果、受信側で、式(17)と同様の連立方程式が、複数生成することができる。
【0176】
この場合、同一送信データに対して、複数の推定結果が得られるので、多数決論理その他の方法によって、確からしい送信データを推定し、ビット誤り率を減らすことができる。
【0177】
また、仮想チャネルの送信アンテナ数T<仮想チャネルの受信アンテナ数Vの場合でなくても、送信側のいくつかの仮想アンテナに、情報を乗せないことにより、仮想チャネルの送信アンテナ数T<仮想チャネルの受信アンテナ数Vの場合と同様に、連立方程式を複数生成することができる。
(パイロット信号)
【0178】
【数17】
となり、
図21に示されているように、re
jθ1の乗じ具合が問題となる。
【0179】
【数18】
となり、
図21に示されているようなre
jθ1の乗じ具合が問題とならなくなる。
【0180】
【数19】
但し、この場合は、それぞれの仮想チャネル(仮想送信アンテナ)において、パイロット信号を受信して検出した仮想チャネルのチャネル特性を、パイロット信号を受信しないときの仮想チャネルチャネル特性として用いることになる。
【0181】
図22は、仮想チャネル(仮想送信アンテナ)R=3の場合である。
【0182】
フェーズ1では、仮想チャネル0において、パイロット信号f
0が送信され、仮想チャネル1、2においては、パイロット信号は送信されない。
【0183】
フェーズ2では、仮想チャネル1において、パイロット信号f
0が送信され、仮想チャネル0、2においては、パイロット信号は送信されない。
【0184】
このとき、仮想チャネル0のチャネル特性として、フェーズ1で検出したチャネル特性を用いる。
【0185】
フェーズ3では、仮想チャネル2において、パイロット信号f
0が送信され、仮想チャネル0、1においては、パイロット信号は送信されない。
【0186】
このとき、仮想チャネル0のチャネル特性として、フェーズ1で検出したチャネル特性を用い、仮想チャネル1のチャネル特性として、フェーズ2で検出したチャネル特性を用いる。
【0187】
フェーズ3の次は、フェーズ1となり、フェーズ1、フェーズ2、フェーズ3が巡回される。
【0188】
次のフェーズ1では、仮想チャネル0のチャネル特性として、このフェーズ1で検出したチャネル特性を用い、仮想チャネル1のチャネル特性として、先のフェーズ2で検出したチャネル特性を用い、仮想チャネル2のチャネル特性として、先のフェーズ3で検出したチャネル特性を用いる。
【0189】
なお、送信側は、P個のパイロット系列のそれぞれは、櫛の歯状のスペクトラムで互いに干渉しないようになっていて、データ信号とも干渉しないようになっていればよい。
【0190】
データ信号は、同じ仮想チャネルを通るデータ同士が、櫛の歯状のスペクトラムで干渉しないようになっていればよい。つまり、データから信号を作るのにDFT行ベクトル以外でもよい。
【0191】
受信側は、P個のパイロット信号のそれぞれは、同期スペクトラムが櫛の歯状のスペクトラムになる系列のい整合フィルタを用いて受信すればよい。
【0192】
データ信号も、周期スペクトラムが櫛の歯状のスペクトラムになる系列の整合フィルタなら何でもよく、DFT行ベクトル以外であってもよい。
(送信データ)
図5〜
図7の信号構成は、仮想チャネル0において、N−P個の送信データX
0、P(x
0、P、0、x
0、P、1、・・・、x
0、P、(M−1))・・・X
0、N−1(x
0、(N−1)、0、x
0、(N−1)、1、・・・、x
0、(N−1)、(M−1)が送信され、仮想チャネル1において、N−P個の送信データX
1、P(x
1、P、0、x
1、P、1、・・・、x
1、P、(M−1))・・・X
1、N−1(x
1、(N−1)、0、x
1、(N−1)、1、・・・、x
1、(N−1)、(M−1)が送信され、
仮想チャネル2において、N−P個の送信データX
2、P(x
2、P、0、x
2、P、1、・・・、x
2、P、(M−1))・・・X
2、N−1(x
2、(N−1)、0、x
2、(N−1)、1、・・・、x
2、(N−1)、(M−1)が送信される。
【0193】
仮想チャネル0では、データX
0、P・・・X
0、N−1が送信され、仮想チャネル1では、データX
1、P・・・X
1、N−1が送信され、仮想チャネル2では、データX
2、P・・・X
2、N−1が送信される。
【0194】
各 仮想チャネルで送信されるデータは、同一であってもよいが、異なるデータであってもよい。
【0195】
これは、上記ケース1、ケース2、ケース3及びケース4についても言える。
【0196】
この場合、実アンテナ毎に、異なるユーザとすることができる。
【0197】
これによれば、多数送信ユーザで単数受信ユーザ、単数送信ユーザで複数受信ユーザの場合であってもよい。
【0198】
N=1024の場合、複数ユーザの全仮想チャネル分だけのパイロット信号の為のベクトル(パイロット用系列)を確保すれば、残りのデータ用のベクトル(データ用系列)は、複数の仮想チャネル(複数ユーザが割当られていても)が共用することができる。
【0199】
つまり、多数ユーザでも帯域を余分に必要とするのはパイロット信号の分だけなので、周波数利用効率は更に向上する。
【0200】
なお、パイロット信号以外にも、振幅分布を調整する信号など、いくらかはユーザ毎に異なるものある。しかしながら、この調整用信号は、ユーザ毎に共用できる。
【0201】
このようなことができるのは、仮想チャネル毎に、異なるデータを送信するからであり、MIMO−OFDMは、全アンテナが同じ信号(又は情報)を送信するので、このような使用方法はできない。
【0202】
また、送受信を行う各ユーザが単数又は複数の実アンテナを用いて1個以上の仮想チャネルで送受信している場合であって、
(A)送信側が多数ユーザ、即ち、複数の実アンテナ
(B)受信側がベースステーション(単一ユーザ)で複数又は単数の実アンテナ
の場合は、
本願発明は、仮想チャネル生成用データを用いて、仮想チャネル(仮想送信チャネル、仮想送信アンテナ)を生成しているので、遠近問題を避けるために、送信側でパワーコントロールを行うと、受信雑音の発生を抑えることができる。
【0203】
なお、パワーコントロールデータは、受信雑音に基づいて、受信側が生成し、送信側に通知する。
【0204】
次に、「本願発明の技術的根拠−OSDMの理論」と、本願発明の実施例に相当する「複数仮想アンテナOSDM方式」を説明する。
(本願発明の技術的根拠−OSDMの理論)
本願発明の技術的根拠として、OSDMの理論を説明する。
1.(第1章) まえがき
近年における高度情報化社会の進展とともに電気通信に関する社会的ニーズはますます広域化・多様化しており、中でも無線技術を使って移動しながら通信が行えるモバイル情報通信は社会基盤の一つとして欠くことのできない重要な要素となっている。
【0205】
次世代通信技術として着目されているOFDM方式は、その高い周波数利用効率や耐マルチパス特性などから様々な分野に於いて注目を浴びている技術の一つである。一方で,
独立に変調された搬送波が重畳されているために, ピーク電力対平均電力比(Peak to Average Power Ratio;PAPR)が高くなるといった問題が指摘されている。OSDM方式はOFDM方式と同様に、周波数利用効率を改善することにより他の通信方式と比較して抜本的に通信路容量を拡充すべく考案された通信方式であるが、従来は不可能であった通信路環境をリアルタイムに把握することが可能になっている。また、OFDM方式と比較してPAPRがほぼフラットであることが報告されている。この特徴を複数アンテナを用いた通信システムに適用することで、通信路容量が送受信アンテナ数に対してほぼ比例的に増加することが期待される。ここでは、OSDM方式の基礎からその拡張である複数アンテナOSDM方式に至るまで、その性能を適宜OFDM方式と比較しながらシミュレーションの結果を基に評価する。
【0206】
本説明は6つの章からなる。第2章ではOSDM方式の基礎理論を紹介し、続く第3章でその性能をシミュレーションにより評価する。第4章ではOSDM方式の拡張として複数アンテナOSDM方式の理論を提唱し、第5章ではその複数アンテナOSDM方式の性能をシミュレーションにより評価する。第6章ではこれらの結果から得られた知見をまとめる。
2.基礎理論
本章では、OSDM方式の理論を以下の4つの節に分けて紹介する。まず、第1節では送信系に着目し、データから送信信号を形成するプロセスを紹介する。次に第2節では受信系に着目し、受信された信号から通信路環境を得るとと共に、得られた通信路環境からデータを推定するプロセスを紹介する。最後に、第3節ではOSDM方式の特徴を、OFDM方式と比較する形で考察する。
2.1 (第2章第1節) 送信系
送信系は
図23のようなプロセスで構成される。以下にその詳細を示す。
長さがMのデータベクトルx
0、x
1、・・・、x
N−1各々以下のように定義する。
【0207】
x
O=(x
00、x
01、・・・、x
0(M−1))
x
1=(x
10、x
11、・・・、x
01(M−1))
・
・
x
N−1=(x
(N−1)0、x
(N−1)1、・・・、x
0、(N−1)(M−1))
・・・(25)
また、W
N≡exp(2π√−1)/Nの元でN次逆DFT行列F
−1及びその行ベクトル、行ベクトルf
N、0、行ベクトルf
N、1・・・行ベクトルf
N、N−1(ここでは、「行ベクトルf
0、行ベクトルf
1・・・行ベクトルf
N−1」又は「f
0、f
1・・・f
N−1」と言う。)を
図4のように定義する。
【0208】
ここで、ベクトルf
iとx
iとのクロネッカ積をX
iとする。
【0210】
【数20】
に長さL−1のサイクリックプレフィクスを付加した信号
S=(S
MN−L+1、・・・、S
MN−1、S
0、S
1、・・・、S
MN−1) ・・(28)
が実際に通信路に送信される信号である。
2.2 受信系
受信系は
図24のようなプロセスで構成される。以下にその詳細を示す。
【0211】
通信路のインパルス応答をh
0、h
1、・・・、h
L−1とすると、受信信号
〜RはMN
× MNの右巡回シフト行列Tを用いて、以下の式で表記できる。
【0214】
【数23】
2.3 特徴
OSDM方式は、OFDM方式と比較して以下のような特徴を持つ。
【0215】
(A)N個の送信データベクトルを同時に送信することが出来るので、そのうちの1つにインパルス応答測定のためのパイロット信号を配置することで、予測性を含まない通信路環境がリアルタイムに得られる。
【0216】
(B)受信信号から送信データベクトルを推定する際に、全ての通信路のインパルス応答が独立に得られる。すなわち、受信側に到来した様々な反射波のエネルギーを独立に利用することができる。
【0217】
(C)OFDM方式の場合、周波数領域等化に於いてインパルス応答の逆行列を受信信号に乗ずる等化法(Zero-Forcing; ZF)の代わりに雑音抑圧のための等化法(Minimum Mean Squared Error; MMSE)を適用しても、SN比を改善することができない。一方、OSDM方式は前述の理由から、MMSEを適用することでSN比を向上させることが可能である。
3. シミュレーション結果
本章では、前章の内容を基にOSDM方式の性能をシミュレートした結果を紹介する。第1節ではシミュレーションの諸定義を、第2節ではシミュレーションの結果を紹介する。最後に第3節で検証を行う。
3.1 諸定義
前章の内容を元に、ベースバンドに於けるOSDM方式、並びにOFDM方式の性能シミュレーションを実施した。以下にシミュレーション時のパラメータは、
M=13
N=64
L=8
である。
【0218】
また、通信路のインパルス応答は各々独立な零平均複素ガウス過程とし、信号はQPSK及び16QAMで変調した。この際、誤り訂正符号等は採用していない。
【0219】
また、熱雑音として受信側で加法性白色ガウス雑音(Additive White Gaussian oise; AWGN)を付加している。また、受信信号から送信データベクトルを推定する方法としてはMMSE等化を用いている。
【0220】
実験の方法として、それぞれのシステムに対しビットあたりの電力密度対雑音電力密度比(Eb/No)を0〔dB〕から25〔dB〕まで1〔dB〕ずつ変化させ、各々のEb/No値に於いて104回モンテカルロシミュレーションを実施している。
3.2 シミュレーション結果
本節では、前節の定義に基づいて実施したシミュレーションの結果を紹介する。
【0221】
図25及び
図26は、OSDM及びOFDM方式のQPSK及び16QAMの各変調に於ける、ビットあたりの電力密度対雑音電力密度比(Eb/No)対ビット誤り率(BER)のグラフである。なお、グラフの横軸に用いられているビットあたりの電力密度(Eb)は直接波だけでなく、全ての反射波のエネルギーを含んでいることに注意されたい。また、受信側は通信路の環境をノイズの影響がない、理想的な形で把握しているものとする。
【0222】
次に
図27及び
図28はQPSK、16QAM各変調に於いて、通信路を理想的に推定した時のOSDM方式の性能と、実際にパイロットシグナルから通信路を推定した時のOSDM方式の性能の比較である。今回の実験では、パイロットシグナルとして長さMの零相関(Zero Correlation Zone; ZCZ)信号を用いて通信路の推定を行っている。
3.3 検討
本節では、前節で紹介したシミュレーションの結果について、検討を行う。
【0223】
まず、
図25及び
図26より、OSDM方式はOFDM方式と比較して概ね良好なBER特性を持っており、その差はビットあたりの電力密度対雑音電力比(Eb/No)が大きいほど顕著であることが確認できる。例えば、OSDM方式はOFDM方式と比較して約3〔dB〕低いEb/No値に於いて10
−3のBERを達成することが分かる。すなわち、同等の通信品質をOSDM方式はOFDM方式の約1/2の送信電力で実現できることが示唆される。
【0224】
一方、OFDM方式はその変調によってBERの収束度がさほど変化しないのに対して、OSDM方式は1 シンボル当たりのビット数が増加するにつれて、Eb/Noの値が小さいときに限り収束度が悪くなる傾向も確認できる。これは、全ての反射波のエネルギーを独立に利用しているというOSDM方式の特性上信号対雑音電力比(SNR)が小さい環境に於いては、送信信号推定時に雑音のエネルギーの影響がOFDM方式と比較して顕著に表れているためと推測できる。しかしながら、通信路を理想的に与えない状態では後述の理由よりOSDM方式はOFDM方式と比較してEb/Noの劣化量が軽微であると期待できることから、実通信環境に於いてもOSDM方式の優位性に影響を与えるものではない。
【0225】
図27及び
図28より、理想的に通信路を与えた状態と実際に通信路を推定した場合では、OSDM方式の場合Eb/Noの劣化量は約3〔dB〕に留まることが分かった。この結果から、通信路のインパルス応答が各々独立な零平均複素ガウス過程という非常に重いマルチパス環境に於いても、パイロットシグナルが通信路の状態を予測性を含まない形で正しく受信側に提供していることが確認できる。通信路環境を測定するためのプリアンブルを送信信号中に離散的に配置するOFDM方式と異なり、OSDM方式は連続的に通信路環境を把握することが可能であることから、通信路環境が頻繁に変化するような状況下ではOSDM方式の通信品質の劣化はOFDM方式と比較して軽微にとどまることが予想される。またOSDM方式の場合、第1章で挙げたようにPAPRがほぼフラットであること、また送信信号長に占めるガードインターバルの割合がOFDM方式のLN+Lに対してLMN+Lに留まることから、OFDM方式と比較してより良好な伝送速度を維持できることが期待される。
4. 複数アンテナOSDM方式の理論
本章では、OSDM方式の応用として、複数アンテナを用いそれらが同一周波数帯で独立にデータを送受信する複数アンテナOSDM方式の理論を以下の4つの節に分けて紹介する。まず、第1節では送信系に着目し、データから送信信号を形成するプロセスを紹介する。次に、第2節では受信系に着目し、受信された信号から通信路環境を得ると共に、得られた通信路環境からデータを推定するプロセスを紹介する。最後に第3節では複数アンテナOSDM方式の特徴を、OSDM方式と比較する形で紹介する。
4.1 送信系
送信系は
図29のようなプロセスで構成される。以下にその詳細を示す。
【0226】
第2章で定義した理由から、OSDM方式は通信路のインパルス応答を予測性を含まない形でリアルタイムに得ることが出来るという特徴がある。すなわち、送信側で信号に工夫を加えることで、複数の通信路のインパルス応答も正確に把握することができることから、OSDM方式は通信路環境の推定精度が通信品質に与える影響がより顕著な複数アンテナを用いた通信方式にも適応性が高いと期待できる。
【0227】
ここでは、第2章で用いたパラメータはそのままに、t本のアンテナを用いて送受信することを考える。
【0228】
あるアンテナi(0≦i≦t−1)に於いて
図30のように、N−t個の長さがMのデータベクトルx
ti、x
t+1i、・・・、x
N−1iを(25)と同様に定義する。また、
図31のようにx
iiにはパイロットシグナルを、それ以外の行には零行列をそれぞれ適用する。
【0229】
次に、式(26)と同様に、IDFT行列とデータベクトルとのクロネッカ積を適用する。ここで、各アンテナから送信される送信データのパイロットシグナルはそれぞれIFDT列の異なる行とのクロネッカ積をとっていることから、それぞれのパイロットシグナルの直交性は保証されている。すなわち、式(27)、(28)を経て生成される送信信号Siが複数の通信路を経て他信号と干渉しながら受信側に到達した際に、受信側はその複数の通信路のインパルス応答を予測性を含まない形で独立に把握することが可能であることに注意されたい。
4.2 受信系
受信系は
図32のようなプロセスで構成される。以下にその詳細を示す。
【0230】
【数24】
アンテナiから受信アンテナj に至る通信路のインパルス応答、Tは第2章2節に示すシフト行列である。
【0231】
【数25】
次に、マッチドフィルタWを定義する。ここで、WはN次DFT行列FNとN×Mの単位行列IM及びt×tの単位行列Itとのクロネッカ積で、以下の式で表記される。
【0234】
【数28】
Wをマッチドフィルタとすると、マッチドフィルタの出力Yとインパルス応答hが得られたとき、Hを基に連立方程式を解くことによって送信データベクトルが得られることがわかる。
4.3 特徴
複数アンテナOSDM方式は、MIMO−OFDM方式に代表される複数アンテナを用いたOFDM方式と比較して以下のような特徴を持つ。
【0235】
第2章3節で触れたように、OSDM方式はOFDM方式と異なり、予測性を含まない通信路環境がリアルタイムに得られる。また、t本のアンテナを送受信に用いた場合の複数アンテナOSDM方式は、t行のデータ領域をパイロットシグナルの割り当て領域として確保することから、アンテナ1本あたりに割り当てるデータ領域は(N−t)行となる。そのため、1つのデータ領域にパイロットシグナルを割り当てる単一アンテナOSDM方式と比較して理論上t(N−t)N−1倍の情報伝送容量を実現することが期待される。
【0236】
一方、MIMO−OFDM方式は送信側と受信側で通信路環境の情報を共有し、固有値概念に基づいたビームフォーミング等の手法を用いることで通信路容量を確保している。すなわち、伝送方法そのもので比較すると、複数アンテナOSDM方式はMIMO−OFDM方式と比較してより簡単な方法でアンテナ数にほぼ比例した通信路容量を確保できる。
5. シミュレーション結果
本章では、前章の内容を基に複数アンテナOSDM方式の性能をシミュレートした結果を紹介する。第1節ではシミュレーションの諸定義を、第2節ではシミュレーションの結果を紹介する。最後に第3節で検証を行う。
5.1 諸定義
前章の内容を元に、ベースバンドに於ける複数アンテナOSDM方式の性能シミュレーションを実施した。
【0237】
各パラメータ値に関しては第3章1節の内容と同一である。送受信アンテナ数はtとし、t2個の通信路のインパルス応答は各々独立な零平均複素ガウス過程と
した。
【0238】
実験の方法として、送受信アンテナ数tをt=1,2,4,8と変化させながら、それぞれのシステムに対しビットあたりの電力密度対雑音電力密度比(Eb/No)を0〔dB〕から25〔dB〕まで1〔dB〕ずつ変化させ、各々のEb/No値に於いて104回モンテカルロシミュレーションを実施している。
5.2 シミュレーション結果
本節では、前節の定義に基づいて実施したシミュレーションの結果を紹介する。
図33及び
図34は、複数アンテナOSDM方式のQPSK及び16QAMの各変調に於ける、ビットあたりの電力密度対雑音電力密度比(Eb/No)対ビット誤り率(BER)のグラフである。なお、第3章2節と同じく、グラフに用いられているビットあたりの電力密度は直接波だけでなく、全ての反射波のエネルギーを
図23のQPSK変調時のBER特性
図34の16QAM変調時のBER特性含んでいることに注意されたい。また、受信側は通信路の環境をノイズの影響がない、理想的な形で把握しているものとする。
次に
図35及び
図36はQPSK、16QAM各変調に於いて、信号対雑音電力比(SNR)を5,10,20〔dB〕,及び10,20,30〔dB〕とした時の、タイムスロットが1〔μs〕に於ける送受信アンテナ本数対定常接続状態でのスループットのグラフである。なお、グラフに用いられている信号電力は直接波だけでなく、全ての反射波のエネルギーを含んでいることに注意されたい。また、スループットの算出には以下の近似式を用いている
Throughput〜α×(1−BER)/β・・・(41)
ここでαは1シンボルあたりのビット数、βはシンボルタイムである。
5.3 検証
本節では、前節で紹介したシミュレーションの結果について、検討を行う。
まず
図33及び
図34より、複数アンテナOSDM方式はアンテナ数を増加させても、ビットあたりの電力密度対雑音電力密度比(Eb/No)の劣化が僅かであることが確認できる。特にEb/Noが十分大きい時、t=8の複数アンテナOSDM方式は第2章で紹介したt=1の単一アンテナOSDM方式と比較して理論上7.1倍の情報伝送容量を誇るにもかかわらず、Eb/Noの劣化は約3〜6〔dB〕に収まっている点は特筆に値する。
【0239】
また
図35及び
図36より、信号対雑音電力比(SNR)が十分大きい時にはt=8の複数アンテナOSDM方式はt=1の単一アンテナOSDM方式と比較して約7倍の情報伝送容量を実現していることが分かる。これは前述の理論値とほぼ等しいことが確認できた。
(複数仮想アンテナOSDM方式)
複数仮想アンテナの実施例を説明する。
【0240】
モバイル通信などの無線通信においては、無線周波数資源の逼迫が深刻な問題となっている。この問題に対処するために、送信側・受信側ともに複数のアンテナを用いる方法(MIMO−OFDM)や、本発明者らによる複数のアンテナを直交信号分割多重方式(OSDM)が研究されている。複数アンテナOSDMは、MIMO−OFDMより遙かに大きな無線周波数利用効率を与えるが、携帯通信機器には複数のアンテナを用いること自体が、携帯通信機器には複数のアンテナを用いることが過剰な負担となりかねない。
本実施例は、携帯通信機器に用いることを主要な目的として、送信側・受信側ともに単数のアンテナを用いるにも拘わらず、恰も送信側・受信側ともに複数のアンテナを用いたかのような高い無線周波数利用効率の実現を可能にする「仮想アンテナの理論」である。
【0241】
本説明は、上記「本願発明の技術的根拠−OSDMの理論」の説明に関係しているので、「複数仮想アンテナOSDM方式」の章節は、「本願発明の技術的根拠−OSDMの理論」の章節に続く番号を付与する。
6. 送信側の仮想アンテナの理論
図39のように仮想送信アンテナ#0、仮想送信アンテナ#1、・・・、仮想送信アンテナ#(K−1)を仮想し、仮想チャネル特性#0、仮想チャネル特性#1、・・・、仮想チャネル特性#(K−1)をチャネル特性が互いになるべく異なるように設定する。
【0242】
仮想送信アンテナ#0に信号#0を入力し、・・・、仮想送信アンテナ#(K−1)に信号#(K−1)を入力し、仮想チャネルを通した後に加算して得られた信号を、実の送信アンテナに入力する。
【0243】
実の送信アンテナから送信された電波を実の受信アンテナで受信すると、信号#0は、仮想チャネル#0と実の送受信アンテナ間のチャネルを通るので、信号#0は、仮想チャネル特性#0と実の送受信アンテナ間のチャネル特性をたたみ込んだチャネル特性の影響を受けることになる。信号#1、・・・、信号#(K−1)も同様である。
【0244】
仮想送信アンテナの仮想チャネル特性と実の送受信アンテナのチャネル特性をたたみ込んで得られるチャネル特性が仮想送信アンテナ毎に十分に異なれば、このような仮想送信アンテナを仮定した信号設計を行うことにより、信号#0、・・、信号#(K−1)は、恰もK個の送信アンテナと1個の受信アンテナを用いたと同様のチャネル特性を受けることになる。
6.2 受信側の仮想アンテナの理論
図40のように、各タイムスロットにK個ずつのサンプル点を設定し、各タイムスロットのサンプル点#0は等間隔に、各タイムスロットのサンプル点#1も等間隔に、・・、各タイムスロットのサンプル点#(K−1)も等間隔になるようにする。
注記:なお、ここで「タイムスロット」は時間幅を意味し、データのチップ幅が入る時間幅に相当します。
また、送信側で、仮想送信信号♯0が仮想送信チャネル♯0を通って仮想送信チャネル特性♯0の影響を受ける、というように♯番号の同じ仮想送信信号と仮想送信チャネルと仮想送信チャネル特性は関係が有るが、仮想送信チャネル♯0を通って仮想送信チャネル特性♯0の影響を受けた仮想送信信号♯0と‥‥と、仮想送信チャネル♯(K−1)を通って仮想送信チャネル特性(K−1)の影響を受けた仮想送信信号♯(K−1)が加算されて、実送信アンテナから送信され、実受信アンテナの受信信号は分岐されて仮想受信信号#0、仮想受信信号#1、‥‥、仮想受信信号#(K−1)とされ、
仮想受信信号#0は仮想受信チャネル#0を通って仮想受信チャネル特性#0の影響を受け、
仮想受信信号#1は仮想受信チャネル#1を通って仮想受信チャネル特性#1の影響を受け、‥‥、仮想受信信号#(K−1)は仮想受信チャネル#(K−1)を通って仮想受信チャネル特性#(K−1)の影響を受ける。
すなわち、送信側の番号♯0は受信側の番号#0、‥‥、#(K−1)の全てと関係が有り、
送信側の番号♯1も受信側の番号#0、‥‥、#(K−1)の全てと関係が有り、‥‥、送信側の番号♯(K−1)も受信側の番号#0、‥‥、#(K−1)の全てと関係が有るので、送信側の♯番号と受信側の#番号とは互いに独立な番号です。
送信側の♯番号と受信側の♯番号とは送信側、受信側の各々における記号の順番のナンバーを示すものであって互いに独立な番号です。
【0245】
すると、サンプル点列#0、サンプル点列#1、・・・、サンプル点列#(K―1)より得られるK個の離散信号はそれぞれ異なるチャネル特性の影響を受けることになり、恰も、K個のアンテナを用いて、各アンテナ毎に各タイムスロットに1個のサンプル点を設定したかのように、それぞれ異なるチャネル特性の影響を受けることになる。すなわち、1個の受信アンテナを用いて、K個の仮想受信アンテナを仮想することができる。
【0246】
さらに、複数アンテナOSDM方式の応用として、複数仮想アンテナを用いそれらが同一周波数帯で独立にデータを送受信する複数仮想アンテナOSDM方式の理論を以下の5つの節に分けて紹介する。まず、第1節では、仮想送信アンテナの概念について述べ、第2節では、仮想受信アンテナの概念について述べる。第3節では送信系に着目し、データから送信信号を形成するプロセスを紹介する。次に、第4節では受信系に着目し、受信された信号から仮想通信路環境を得るとと共に、得られた仮想通信路環境からデータを推定するプロセスを紹介する。
6.3 送信系
送信系は
図41のようなプロセスで構成される。以下にその詳細を示す。
【0247】
ここでは、第2章で用いたパラメータはそのままに、t本の仮想アンテナを用いて送受信することを考える。
【0248】
ある仮想受信アンテナi(0≦i≦t−1)に於いて
図30のように、N−t個の長さがMのデータベクトルx
ti、x
t+1i、・・・、x
N−1iを(1)
と同様に定義する。また、
図31のようにx
iiにはパイロットシグナルを、それ以外の行には零行列をそれぞれ適用する。
【0249】
次に、式(26)と同様に、IDFT行列とデータベクトルとのクロネッカ積を適用する。ここで、各仮想送信アンテナから送信される送信データのパイロットシグナルはそれぞれIDFT行列の異なる行とのクロネッカ積をとっていることから、それぞれのパイロットシグナルの直交性は保証されている。すなわち、式(27)、(28)を経て生成される送信信号Siが複数の仮想通信路を経て他信号と干渉しながら仮想受信アンテナに到達した際に、受信側はその複数の仮想通信路のインパルス応答を予測性を含まない形で独立に把握することが可能であることに注意されたい。
6.4 受信系
受信系は
図42のようなプロセスで構成される。以下にその詳細を示す。
【0250】
【数29】
アンテナ(仮想送信アンテナ)iから仮想受信アンテナjに至る通信路のインパルス応答、Tは第2章2節に示すシフト行列である。
【0251】
【数30】
次に、マッチドフィルタWを定義する。ここで、WはN次DFT行列FNとN×Mの単位行列IM及びt×tの単位行列Itとのクロネッカ積で、以下の式で表記される。
【0254】
【数33】
Wをマッチドフィルタとすると、マッチドフィルタの出力Yとインパルス応答hが得られたとき、Hを基に連立方程式を解くことによって送信データベクトルが得られることがわかる。
6.5 送信側が単数送信者、受信側が複数受信者の場合の複数仮想アンテナOSDMの例
例えば、セルラー移動通信におけるダウンリンクのように、送信側が単数の送信者(ダイバーシチ送受信等の為に、実アンテナ数が複数の場合もある。)、受信側が複数の受信者(各受信者の実アンテナは、単数が典型であるが、ダイバーシチ送受信等の為に、実アンテナ数が複数の場合でもよい。)の場合は、次のようになる。
【0255】
連立方程式を解くのは、受信側であるから、1個の実アンテナを有する受信者(受信機)における仮想受信アンテナの数は、受信される総仮想送信アンテナ数より多いか等しいことが必要である。
【0256】
連立方程式を解くと、各受信者は他の受信者のために送信されたデータをも得ることができるので、送信データは暗号化して送信する。
6.6 送信側が複数送信者、受信側が単数受信者の場合の複数仮想アンテナOSDMの例
例えば、セルラー移動通信におけるアップリンクのように、送信側が複数の送信者(各送信者の実アンテナは、単数が典型であるが、複数の場合でもよい。)、受信側が単数の受信者の場合は、次のようになる。
【0257】
この場合も、連立方程式を解くのは、受信側であるから、1個の実アンテナを有する受信者(受信機)の仮想受信アンテナの数は、受信される総仮想送信アンテナ数(仮想チャネル数)より多いか等しいことが必要である。
【0258】
全ての仮想送信アンテナのパイロット信号は、混ざらないようにパイロット信号用の行ベクトルとして、N次元のDFT行列の行ベクトルの内、別々の行ベクトルを用いる必要がある。
6.7 送信側が複数送信者、受信側が複数受信者の場合の複数仮想アンテナOSDMの例)
例えば、セル間干渉のあるセルラー移動通信のように、送信側、受信側ともに、複数の送受信者の場合は、全ての仮想送信アンテナのパイロット信号用の行ベクトルとして、N次元のDFT行列の行ベクトルの内、別々の行ベクトルを用いる必要がある。
【0259】
また、受信側で連立方程式を解けるように、受信機1組の総仮想受信アンテナ数は、受信される総仮想送信アンテナより多いか、等しいことが必要である。
6.8 パイロット信号
ここまでは、全ての仮想送信アンテナのパイロット信号用の行ベクトルとして、N次元のDFT行列の行ベクトルの内、別々の行ベクトルを用いる必要があると説明した。
【0260】
しかしながら、ZCZ系列セット(各系列がZACZ系列で、しかも互いに、ZCCZ系列である。)か、近似的ZCCZ系列セットを用いれば、同一のパイロット信号用行ベクトルを複数の仮想送信アンテナに割り当てることができる。
【0261】
また、N次元のDFT行列の行ベクトルの内のどの行ベクトルをパイロット信号用とするかは、任意に設定することができる。
7.検証
複数仮想アンテナOSDM方式に関して、以下の条件において、検証を行った。
【0262】
M=13
N=64
L=8
なお、実マルチパスはレイリーフェージング、仮想マルチパスは一様ランダムな、16ビットの信号であり、等化方法はMMSEを用いた。
【0263】
なお、EB/NoのEbは直接パスだけでなく反射パスも含んでおり、1つの実アンテナから送信される、全送信電力は一定とした。
【0264】
上記条件において、
図37及び
図38のような、シミュレーションの結果が得られた。
【0265】
なお、本発明は以下の、態様で実施することができる。
【0266】
・送信側では、信号作成部において、複数の仮想チャネルのそれぞれを別々のデータが通過したと想定した信号を加算した信号を信号作成部の出力として作成し、受信側では、オーバサンプリングを行い、サンプリングしたデータを配分して複数の仮想受信アンテナの出力と想定して信号検出を行う送受信システム。
【0267】
信号作成部において、複数の仮想チャネルのそれぞれを別々のデータが通過したと想定した信号を加算した信号を作成し、
該信号作成部が作成した信号を送信する送信装置。
【0268】
・受信した信号に対して、オーバサンプリングを行い、サンプリングしたデータを配分して複数の仮想受信アンテナの出力と想定して信号検出を行う受信装置。
【0269】
・送信機側で、単一の送信機から、複数の受信機のそれぞれに別々のデータを送信するに際し、パイロット信号は、チャネル特性を用いずに分離できるように送信し、別々のデータは、それぞれ、別々の仮想送信チャネルを通してから加算して送信し、
前記複数の受信機では、それぞれ、オーバサンプリングしてサンプリング結果を分配して複数の仮想受信アンテナとみなすことにより、送信データを推定できる連立多元1次方程式を得、該連立多元1次方程式を解くことにより送信データを推定する送受信システム。
【0270】
・複数の送信機から、それぞれ送信機に対応したパイロット信号をチャネル特性を用いずに分離できるように送信されたパイロット信号と、前記パイロット信号に付加されて送信されたデータとを受信し、
受信した信号をオーバサンプリングした結果を分配して、複数の仮想受信アンテナ出力とみなすことにより、送信機・受信機間のチャネル特性の多様性を多元連立一次方程式が解けるように、チャネル特性による送信機分離を行って送信データを推定する受信装置。
(本発明の技術的意義)
なお、シャノンは、誤り率をいくらでもゼロに近づける方法が存在するためには、情報伝送速度が
C=Wlog
2(S+N/N)
を超えてはいけないことを示したが、本発明は、「有限誤り率を許容すれば、帯域幅が有限でも、情報伝送速度に限界は存在しない」ことを示すものである。
【0271】
ここで、本発明により、「有限の帯域幅を用いて、いくらでも大きな情報伝送速度を実現する方法」を以下に説明する。
【0272】
送信側で、複数(K個)の仮想送信アンテナを用意し、それぞれの仮想送信アンテナに別々のデータをOSDM方式によって信号生成を行い入力する。次いで、仮想送信アンテナ毎に別々の仮想チャネルを通し(時間特性をたたみ込む)た後、加算して、実の送信アンテナから送信する。
【0273】
受信側では、実の受信アンテナで受信した信号を分岐して、別々の仮想チャネルの時間特性をたたみ込み、それぞれの仮想チャネルに対応する仮想受信アンテナに出力する。仮想受信アンテナの数はK個とする。
【0274】
仮想送信アンテナの数がK個、仮想受信アンテナの数もK個であれば、「複数アンテナOSDMの理論」が適用でき、実の送信アンテナが1個、実の受信アンテナが1個であるにも拘わらず、情報伝送速度を単一アンテナOSDM(単一アンテナOFDMの約2倍の無線周波数利用効率を有する。)の約K倍にすることができる。
【0275】
計算量と時間遅れをいとわなければ、Kは、いくらでも大きくすることができるので、有限の帯域幅を用いても、有限の誤り率を許容すれば、いくらでも大きな情報伝送速度を実現することができる。
【0276】
また、OSDMにおいては、送信アンテナにおける振幅分布の改善(時間、又は周波数領域において、所定の大きさの送信電力を超えないようにする。)を容易に行うことができる。
【0277】
以上、発明を実施するための最良の形態について説明を行ったが、本発明は、この最良の形態で述べた実施の形態に限定されるものではない。本発明の主旨をそこなわない範囲で変更することが可能である。
【0278】
本件国際出願は、2007年4月10日及び2008年3月4日に出願した日本国特許出願2007−103078号及びPCT/JP2008/053866に基づく優先権を主張するものであり、日本国特許出願2007−103078号及びPCT/JP2008/053866の全内容を本国際出願に援用する。