特許第5904504号(P5904504)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社日立メディコの特許一覧

<>
  • 特許5904504-医用画像装置 図000002
  • 特許5904504-医用画像装置 図000003
  • 特許5904504-医用画像装置 図000004
  • 特許5904504-医用画像装置 図000005
  • 特許5904504-医用画像装置 図000006
  • 特許5904504-医用画像装置 図000007
  • 特許5904504-医用画像装置 図000008
  • 特許5904504-医用画像装置 図000009
  • 特許5904504-医用画像装置 図000010
  • 特許5904504-医用画像装置 図000011
  • 特許5904504-医用画像装置 図000012
  • 特許5904504-医用画像装置 図000013
  • 特許5904504-医用画像装置 図000014
  • 特許5904504-医用画像装置 図000015
  • 特許5904504-医用画像装置 図000016
  • 特許5904504-医用画像装置 図000017
  • 特許5904504-医用画像装置 図000018
  • 特許5904504-医用画像装置 図000019
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5904504
(24)【登録日】2016年3月25日
(45)【発行日】2016年4月13日
(54)【発明の名称】医用画像装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 8/14 20060101AFI20160331BHJP
【FI】
   A61B8/14
【請求項の数】5
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2013-529937(P2013-529937)
(86)(22)【出願日】2012年7月25日
(86)【国際出願番号】JP2012068750
(87)【国際公開番号】WO2013027526
(87)【国際公開日】20130228
【審査請求日】2015年7月7日
(31)【優先権主張番号】特願2011-179889(P2011-179889)
(32)【優先日】2011年8月19日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000153498
【氏名又は名称】株式会社日立メディコ
(72)【発明者】
【氏名】西浦 朋史
【審査官】 冨永 昌彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−223712(JP,A)
【文献】 特開2010−148828(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 8/00 − 8/15
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体の複数枚の断層画像をそれぞれの断層画像の断層面の直交方向に沿って撮像してボリューム画像データを得、前記ボリューム画像データを用いて設定された視点から見た前記被検体の内部の診断対象の三次元画像を構成する画像構成部と、前記被検体の断層画像又は診断対象の三次元画像を表示する表示部と、前記表示部に表示された被検体の断層画像を用いて前記ボリューム画像データのうちの前記被検体の診断対象より前記視点側に存在するボクセル画像データと前記被検体の診断対象のボクセル画像データとのボクセル画像データ間の境界にプリカット面の設定を含むパラメータを入力する入力部と、前記入力部に設定されたプリカット面に基づき前記画像構成部の前記被検体の内部の診断対象の三次元画像の構成を制御する制御部と、を備えた医用画像装置であって、
前記制御部は、前記入力部によって入力されたパラメータのうちの前記ボクセル画像データ間の閾値に基づき前記境界を抽出し、該抽出した境界によってプリカット面を再設定し、該再設定されたプリカット面に基づき前記画像構成部に前記被検体の内部の診断対象の三次元画像を再構成させ、前記制御部は、前記診断対象に係るボクセルからなる前記三次元画像の三次元領域を、予め設定された範囲内のボクセル画像データを用いて判別する領域判別部と、複数の前記ボクセルの各ボクセル画像データに基づいて前記ボリューム画像データを複数の三次元領域に分割する領域分割部を備え、
前記領域判別部は、前記領域分割部により分割された前記ボリューム画像データの各三次元領域の前記ボクセル画像データに基づいて、前記診断対象に係る三次元領域と該診断対象に隣接する三次元領域を判別し、
前記画像構成部は、さらに、前記プリカット面よりも前記視点側の前記ボクセルを削除したプリカット・ボリューム画像データの残留三次元領域の三次元画像を作成して、前記残留三次元領域の三次元画像を表示部に表示させ
前記制御部は、さらに、前記領域判別部により判別された前記診断対象に係る三次元領域の前記視点から見た深度が最も浅い境界面と、前記隣接する三次元領域の前記視点から見た深度が最も深い境界面との間に前記プリカット面を設定すること
を特徴とする医用画像装置。
【請求項2】
前記領域判別部は、予め設定された範囲内のボクセル画像データを前記診断対象に係る前記三次元領域を包囲する隣接ボクセル群であると判別すること
を特徴とする請求項1に記載の医用画像装置。
【請求項3】
前記領域分割部は、前記ボクセル画像データが設定許容差内で一致する複数の前記ボクセル画像データごとにグループ化して、前記複数の三次元領域に分割すること
を特徴とする請求項1に記載の医用画像装置。
【請求項4】
前記領域判別部は、前記各三次元領域のボクセル画像データ、隣り合うボクセルのボクセル画像データの差又は勾配、又はそれらを組み合わせた物理量に基づいて、前記診断対象に係る三次元領域と該診断対象に隣接する三次元領域の少なくとも一方を判別すること
を特徴とする請求項1に記載の医用画像装置。
【請求項5】
被検体の複数枚の断層画像をそれぞれの断層画像の断層面の直交方向に沿って撮像してボリューム画像データを得、前記ボリューム画像データを用いて設定された視点から見た前記被検体の内部の診断対象の三次元画像を構成する画像構成部と、前記被検体の断層画像又は診断対象の三次元画像を表示する表示部と、前記表示部に表示された被検体の断層画像を用いて前記ボリューム画像データのうちの前記被検体の診断対象より前記視点側に存在するボクセル画像データと前記被検体の診断対象のボクセル画像データとのボクセル画像データ間の境界にプリカット面の設定を含むパラメータを入力する入力部と、前記入力部に設定されたプリカット面に基づき前記画像構成部の前記被検体の内部の診断対象の三次元画像の構成を制御する制御部と、を備えた医用画像装置であって、
前記制御部は、前記入力部によって入力されたパラメータのうちの前記ボクセル画像データ間の閾値に基づき前記境界を抽出し、該抽出した境界によってプリカット面を再設定し、該再設定されたプリカット面に基づき前記画像構成部に前記被検体の内部の診断対象の三次元画像を再構成させ、
前記制御部は、前記診断対象に係るボクセルからなる前記三次元画像の三次元領域を、予め設定された範囲内のボクセル画像データを用いて判別する領域判別部と、複数の前記ボクセルの各ボクセル画像データに基づいて前記ボリューム画像データを複数の三次元領域に分割する領域分割部を備え、
前記領域判別部は、前記領域分割部により分割された前記ボリューム画像データの各三次元領域の前記ボクセル画像データに基づいて、前記診断対象に係る三次元領域と該診断対象に隣接する三次元領域を判別し、
前記画像構成部は、さらに、前記領域分割部で分割された前記ボリューム画像データに基づいて、複数の三次元領域を表示する任意断面における断面画像と前記複数の三次元領域の全体を表示する全体三次元画像を構成するとともに、前記断面画像に前記分割された三次元領域の境界線又は面と、前記入力部で設定されたプリカット線又は面を重ねたプリカット面設定画面を構成して前記表示部に表示させるプリカット面設定画面作成部を備え、
前記画像構成部は、前記表示部の前記プリカット面設定画面に異なる表示形態で削除される三次元領域と残される三次元領域を表示するための前記削除される三次元領域と前記残される三次元領域を構成し、
前記プリカット面設定画面作成部は、前記入力部により前記プリカット面設定画面に表示された前記プリカット面又は線に接する前記三次元領域を指定することにより、指定された前記三次元領域に接する前記プリカット面を前記視点側又は反視点側に変更し、更に、前記プリカット面に接する前記視点側の前記三次元領域を残留化候補とし、前記プリカット面に接する前記反視点側の前記三次元領域をカット化候補として、それぞれ異なるマーク、色又は表示形態で識別可能に表示すること
を特徴とする医用画像装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医用画像装置及び医用画像構成方法に係り、診断対象の三次元画像を構成して表示するのに好適な医用画像装置及び医用画像構成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
超音波画像装置や磁気共鳴画像装置を含む医用画像装置では、被検体内の胎児を含む部位を撮像し、ボリュームレンダリング法等を用いて胎児の三次元画像を構成し、当該胎児の三次元画像を表示画面に表示する。
【0003】
ボリュームレンダリング法とは、前記被検体を撮像したボリューム画像データを三次元的に任意の位置の視点から胎児を見たとき、その視線上に存在する複数のボクセル画像データに基づいて胎児の三次元画像を構成する方法である。
【0004】
ところが、胎盤のボクセル画像データは、胎児のボクセル画像データより視点に近い位置存在するため、胎盤のボクセル画像データを含めたボリューム画像データに基づいて胎児の三次元画像を構成すると、胎盤のボクセル画像データの影響を受けて、鮮明な胎児の三次元画像が得られない。
【0005】
そこで、従来は胎児のボクセル画像データの手前の視線上に1本の境界ライン(プリカットライン)を設定し、前記プリカットラインを通るプリカット面を設定して、視点の位置からプリカット面までのボクセル画像データを除去し、視点の位置からプリカット面までのボクセル画像データが除去されたボリューム画像データを用いて胎児の三次元画像を構成し、鮮明な胎児の三次元画像を表示している(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005-288153号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1では、1本のプリカットラインのみで検者がプリカット面を設定するため、表示されている断層画像の奥行き方向に対するプリカット面の設定が適正か否かを、実際に胎児の三次元画像を構成し、構成された胎児の三次元画像を表示してみなければ検者が確認できないものと思料する。
【0008】
本発明の目的は、プリカット面の設定が適正か否かを確認可能とする医用画像装置及び医用画像構成方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、被検体の複数枚の断層画像をそれぞれの断層画像の断層面の直交方向に沿って撮像してボリューム画像データを得、前記ボリューム画像データを用いて設定された視点から見た前記被検体の内部の診断対象の三次元画像を構成する画像構成部と、前記被検体の断層画像又は診断対象の三次元画像を表示する表示部と、前記表示部に表示された被検体の断層画像を用いて前記ボリューム画像データのうちの前記被検体の診断対象より前記視点側に存在するボクセル画像データと前記被検体の診断対象のボクセル画像データとのボクセル画像データ間の境界にプリカット面の設定を含むパラメータを入力する入力部と、前記入力部に設定されたプリカット面に基づき前記画像構成部の前記被検体の内部の診断対象の三次元画像の構成を制御する制御部と、を備えた医用画像装置であって、前記制御部は、前記入力部によって入力されたパラメータのうちの前記ボクセル画像データ間の閾値に基づき前記境界を抽出し、該抽出した境界によってプリカット面を再設定し、該再設定されたプリカット面に基づき前記画像構成部に前記被検体の内部の診断対象の三次元画像を再構成させ、前記制御部は、前記診断対象に係るボクセルからなる前記三次元画像の三次元領域を、予め設定された範囲内のボクセル画像データを用いて判別する領域判別部と、複数の前記ボクセルの各ボクセル画像データに基づいて前記ボリューム画像データを複数の三次元領域に分割する領域分割部を備え、前記領域判別部は、前記領域分割部により分割された前記ボリューム画像データの各三次元領域の前記ボクセル画像データに基づいて、前記診断対象に係る三次元領域と該診断対象に隣接する三次元領域の少なくとも一方を判別し、前記画像構成部は、さらに、前記プリカット面よりも前記視点側の前記ボクセルを削除したプリカット・ボリューム画像データの残留三次元領域の三次元画像を作成して、前記残留三次元領域の三次元画像を表示部に表示させることを特徴とする。
また、本発明は、被検体の複数枚の断層画像をそれぞれの断層画像の断層面の直交方向に沿って撮像してボリューム画像データを得、前記ボリューム画像データを用いて設定された視点から見た前記被検体の内部の診断対象の三次元画像を構成する画像構成部と、前記被検体の断層画像又は診断対象の三次元画像を表示する表示部と、前記表示部に表示された被検体の断層画像を用いて前記ボリューム画像データのうちの前記被検体の診断対象より前記視点側に存在するボクセル画像データと前記被検体の診断対象のボクセル画像データとのボクセル画像データ間の境界にプリカット面の設定を含むパラメータを入力する入力部と、前記入力部に設定されたプリカット面に基づき前記画像構成部の前記被検体の内部の診断対象の三次元画像の構成を制御する制御部と、を備えた医用画像装置であって、前記制御部は、前記入力部によって入力されたパラメータのうちの前記ボクセル画像データ間の閾値に基づき前記境界を抽出し、該抽出した境界によってプリカット面を再設定し、該再設定されたプリカット面に基づき前記画像構成部に前記被検体の内部の診断対象の三次元画像を再構成させ、
前記制御部は、前記診断対象に係るボクセルからなる前記三次元画像の三次元領域を、予め設定された範囲内のボクセル画像データを用いて判別する領域判別部と、複数の前記ボクセルの各ボクセル画像データに基づいて前記ボリューム画像データを複数の三次元領域に分割する領域分割部を備え、前記領域判別部は、前記領域分割部により分割された前記ボリューム画像データの各三次元領域の前記ボクセル画像データに基づいて、前記診断対象に係る三次元領域と該診断対象に隣接する三次元領域の少なくとも一方を判別し、前記画像構成部は、さらに、前記領域分割部で分割された前記ボリューム画像データに基づいて、複数の三次元領域を表示する任意断面における断面画像と前記複数の三次元領域の全体を表示する全体三次元画像の少なくとも一方を構成するとともに、前記断面画像と前記全体三次元画像に前記分割された三次元領域の境界線又は面と、前記入力部で設定されたプリカット線又は面を重ねたプリカット面設定画面を構成して前記表示部に表示させるプリカット面設定画面作成部を備え、前記画像構成部は前記表示部の前記プリカット面設定画面に異なる表示形態で削除される三次元領域と残される三次元領域を表示するための前記削除される三次元領域と前記残される三次元領域を構成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、プリカット面の設定が適正か否かを確認可能とする医用画像装置及び医用画像構成方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明を医用画像診断装置の一実施形態の超音波画像装置のブロック構成図
図2図1の画像構成部5のハードウエア構成と周辺部を示すブロック図
図3図1の画像構成部5と周辺部の機能ブロックを示す図
図4】本実施形態の特徴部の実施例1の構成を示すフローチャート
図5図4のフローチャートを説明するための超音波画像の一例を示す図
図6図4のフローチャートにより再設定されるプリカット面の再設定手順を説明する図
図7】実施例2のプリカット面を変更する方法の一実施例のフローチャートを示す図
図8図7の実施例によりプリカット面を修正する状態を説明する図
図9図7により削除するボクセル画像データが修正された状態を説明する図
図10図8における直交3断面を説明する図
図11図7の実施例により修正されたプリカット面設定画面及び変更されたプリカット・ボリュームデータに基づいて構成された三次元画像を表示する図
図12】実施例3のプリカット面を変更する方法の一実施例のフローチャートを示す図
図13図12の実施例によるプリカット面設定の手順を説明する図
図14図12の実施例によるプリカット面設定の手順を説明する図
図15】プリカット面設定画面と構成された診断対象の三次元画像の表示例を示す図
図16】プリカット面設定画面とプリカット・ボリューム画像データにより構成された診断対象の三次元画像の表示例を示す図
図17】プリカット面設定画面の他の表示例を示す図
図18】プリカット面設定画面のさらに他の表示例及び構成された三次元画像を表示する図
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の医用画像診断装置の一実施形態を図面を用いて説明する。
医用画像診断装置は、被検体の診断部位の断層画像が得られればよく、MRI装置、X線CT装置、超音波診断装置の何れであってもよい。
【0013】
MRI装置は、被検体に外部から静磁場を作用させた後、被検体内での各組織毎の緩和現象を傾斜磁場により特定した2次元ないし3次元の位置情報により断層画像を生成するものである。
【0014】
X線CT装置は、被検体の周囲を線源と検出器が回転し、被検体はX線を全方位から受け、照射されたX線は検査対象を通過し、対象に一部吸収されて減衰した後、線源の反対側に位置するX線検出装置に到達し記憶される。それぞれの方向でどの程度吸収されたかを記憶したのち、コンピュータで断層画像をフーリエ変換で再構成するものである。
【0015】
本実施形態では医用画像装置の代表例を超音波診断装置によって得られる被検体の診断部位の断層画像を得て、得られた断層画像を用いた三次元画像を構成する例で説明するが、上記MRI装置及びX線CT装置によって得られる断層画像にも採用可能である。
【0016】
図1に示すように、本実施形態の超音波診断装置1は、被検体2内に超音波を送受信し得られる反射エコー信号を用いて診断対象部位の二次元超音波画像である断層画像、あるいは三次元超音波画像である三次元画像を形成し、二次元超音波画像又は三次元画像を表示する。
【0017】
超音波診断装置1は、被検体2に超音波を照射し受信する振動子を複数備えた超音波探触子3と、超音波探触子3に超音波信号を送受信する超音波送受信部4と、受信信号に基づいて二次元の断層画像と、断層画像に基づいて三次元画像を作成する画像構成部5と、画像構成部5において作成された断層画像と三次元画像を表示する表示部6と、これらの各部を制御する制御部7と、制御部7に検者の指示を与える入力部8と、を有している。
【0018】
超音波探触子3は、複数の振動子が配列された長軸方向と、各振動子を長軸方向に直交する短軸方向に切断した複数の振動要素を有している。
【0019】
超音波送受信部4は、超音波探触子3の長軸方向及び長軸方向に直交する短軸方向の振動子及び振動要素との間で送受する超音波の送信タイミングを制御して、長軸方向及び短軸方向の送波と受波にフォーカスができる機能を有している。
【0020】
また、長軸方向の送波と受波のスキャン面を短軸方向にもスキャンして、複数の断層画像からなる三次元のボリューム画像データを取得する。また、超音波探触子3と超音波送受信部4は、どのような構成のものでもよく、要は、短軸方向にずらした複数枚の断層画像を撮像して、三次元のボリューム画像データを取得できる構成であればよい。
【0021】
表示部6は、例えばCRTモニタ、液晶モニタからなる表示画面で構成されている。また、表示部6は、画像構成部5で変換した断層画像を表示するようになっている。
【0022】
制御部7は、入力部8によって入力される指令等の情報(入力パラメータ)に基づいて、図1の超音波送受信部4と画像構成部5の各部の動作を制御するもので、入力部8と表示部6からなるユーザインターフェースを有する制御用コンピュータシステムを形成している。また、制御部7は、超音波送受信部4で受信した反射エコー信号を画像構成部5に転送するとともに、画像構成部5で作成した断層画像、三次元画像及びそれらの画像と共に表示する画像情報を表示部6に伝送するようになっている。
【0023】
本発明の特徴部に係る画像構成部5、制御部7、入力部8のハードウエア構成について図2を用いて説明する。
【0024】
画像構成部5は、中央演算処理装置(CPU)51、磁気ディスク装置(磁気デ)52、RAM53、高速演算装置54の各要素を接続するバス55を有している。
【0025】
また、CPU51は制御部7に接続され、制御部7から制御プログラムが通信可能となっている。また、バス55は、超音波送受信部4の出力側と表示部6の入力側がそれぞれ接続されている。
【0026】
CPU51は磁気ディスク52、RAM53、高速演算装置54の各要素を、制御部7から通信される制御プログラムによって制御する。磁気ディスク52は超音波送受信部4の出力からの反射エコー信号やRF信号を記憶する。RAM53は、磁気ディスク52から反射エコー信号やRF信号を読み出し、反射エコー信号等を断層画像に、あるいは断層画像から三次元画像を形成するためのワークメモリとして用いられる。高速演算装置54は反射エコー信号等を断層画像に、あるいは断層画像から三次元画像を形成する演算を行う。
【0027】
次に、画像構成部5、制御部7、入力部8の機能について図3を用いて説明する。
入力部8は、表示部6に表示された断層画像又は三次元画像にプリカット面を設定するプリカット面設定部81と、被検体の診断対象に係る三次元領域とその診断対象に隣接する三次元領域との境界の画素値の閾値を設定する閾値設定部82と、を有している。
【0028】
画像構成部5は、超音波送受信部4から被検体の反射エコー信号等を被検体の断層画像に変換する断層画像形成部57と、被検体の複数枚の断層画像をそれぞれの断層画像の断層面の直交方向に沿って撮像してボリューム画像データを得、前記ボリューム画像データを用いて設定された視点から見た前記被検体の内部の診断対象の三次元画像を構成する三次元画像形成部58と、プリカット面設定部81と領域判別部72の入力を受け、プリカット面設定画面を構成して表示部6に表示させるプリカット面設定画面作成部59と、を有している。
【0029】
プリカット面設定画面作成部59は、断面画像と、全体の三次元画像が分割された分割線を境界線とし、プリカット面設定部81で設定されたプリカット面の一部であるプリカット線を重ねている。なお、境界線でなく境界面である場合には、境界面とプリカット面を重ねている。
【0030】
制御部7は、プリカット面設定部81の設定値の入力を受け、ボリューム画像データを構成する複数のボクセルの各ボクセル画像データに基づいて、ボリューム画像データを複数の三次元領域に分割する(図4のS12を実行する)領域分割部71と、領域分割部71により分割されたボリューム画像データの各三次元領域のボクセル画像データに基づいて、診断対象に係る三次元領域と該診断対象に隣接する三次元領域の少なくとも一方、例えば羊水を判別(図4のS13を実行する)し、判別された診断対象に係る三次元領域とその診断対象に隣接する三次元領域との境界又は診断対象に隣接する三次元領域内にプリカット面を再設定する(図4のS14を実行する)領域判別部72と、を備えている。
【0031】
ここでは、領域分割部71、領域判別部72を制御部7に設けた例で説明するが、画像構成部5のCPU51に設けてもよい。
【0032】
そして、画像構成部5のプリカット面設定画面作成部59は、再設定されたプリカット面よりも視点側のボクセルを除いたプリカット・ボリューム画像データを生成する。すなわち、図4のS15を実行する機能を有している。
【0033】
画像構成部5の三次元画像形成部58は、生成されたプリカット・ボリューム画像データに基づいて、診断対象の三次元画像を構成する。すなわち、図4のS16を実行する機能を有している。
【0034】
制御部7は、画像構成部5で構成した断層画像、三次元画像を含む画像情報を、表示部6に伝送するようになっている。
【0035】
表示部6は、断層画像、三次元画像を含む画像情報を表示する。
【0036】
ここで、本発明の特徴に係る画像構成部5について、実施例に分けて説明する。
【実施例1】
【0037】
図4は、画像構成部5のプログラムにより構成される本発明の特徴部に係る処理手順の実施例1のフローチャートである。
【0038】
まず、図4のステップS11のボリューム画像データ入力、プリカット設定画面表示/ROI設定では、画像構成部5はボリューム画像データを入力して、プリカット面設定画面を表示部6に表示する。検者は、表示部6にプリカット面設定画面が表示されると、入力部8から関心領域ROIを入力設定する。ここで、図5に示す胎児を診断対象とする具体例に基づいて説明すると、図5(b)のように、表示部6に表示された二次元のプリカット面設定画面40に検者が三次元のROI46を設定する。ROI46により設定されたボリューム画像データ41を三次元画像化すれば、図5(a)に示される。図5(a)において、胎児44は子宮内膜45の内側の羊水43内で胎盤42から栄養を受けて育まれている。
【0039】
次に、図4のステップS12の領域分割において、領域分割部71は、三次元のボリューム画像データ41を各ボクセル画像データに基づいて、複数の三次元領域(以下、セグメントという。)に分割する。つまり、ROI46で指定されたボリューム画像データ41に対して領域分割処理を行う。この領域分割処理により、ボリューム画像データ41は、セグメント461〜473に分割される。胎盤42のボクセル群がセグメント461〜464に、羊水43のボクセル群がセグメント465、466、467、468、471に、胎児44のボクセル群がセグメント469、470に、子宮内膜45のボクセル群がセグメント472、473にそれぞれ相当する。このように、ステップS12の領域分割処理によって、セグメント単独又は複数のセグメントにより、胎盤42、羊水43、胎児44、子宮内膜45がそれぞれ構成されるように、分割される。ステップS12の領域分割処理は、三次元空間のボリューム画像データに対してなされる。したがって、領域分割結果を図5(c)の断面492において切断すると、図5(d)に示すように、セグメント461が領域461a、セグメント462が領域462aの要領で、それぞれ対応している。
【0040】
すなわち、領域分割処理は、様々な生体構造及び生体組織の生体部位のボクセル画像データに応じて、複数の設定値、設定値との許容差からなる複数の設定範囲を、それぞれの設定範囲が重ならないように定める。そして、ボクセル画像データがいずれかの設定範囲内に一致する複数のボクセルをグループ化して、複数の三次元領域に分割する。
【0041】
ところで、領域分割処理の手法は、特徴空間におけるクラスタリングが広く知られている。他に、ミーンシフト法(参考文献1)やグラフカット法(参考文献2)も知られている。
【0042】
(参考文献1)岡田和典、コンピュータビジョンとイメージメディア研究報告、Vol.2008、No.27、pp.401-414
(参考文献2)石川博、情報処理学会研究報告、Vol.2007、No.31、pp.193-204
【0043】
また、領域分割処理による三次元領域の境界検出に際し、ボリューム画像データ41のボクセル画像データである濃度値、濃度値の勾配、あるいはそれらを組み合わせた物理量に基づくことができる。また、実施例1の説明では、胎盤42、羊水43、胎児44、子宮内膜45の領域を得る分割処理を説明した。しかし、ボリューム画像データ41のプリカット面によって除去したい部位が含まれ、プリカット面の再設定に資するような分割を目的とする限り、抽出対象はこれらに限定されないのは、言うまでもない。
【0044】
領域分割結果は、セグメント情報として磁気ディスク装置52、RAM53のいずれかに保持する。セグメント情報は、セグメントを代表する3次元座標(例えばセグメントの重心座標)、セグメントを代表するボクセル画像データの濃度値、セグメントを一意に特定するための識別符号のうち少なくとも1つを、セグメント毎に付与する。
【0045】
ここで、領域分割手法は、上述した三次元のボリューム画像データ41の全域にわたって行うことに代えて、領域分割に係る処理時間を低減するために、次の手法を採用できる。つまり、ボリューム画像データ41の配列方向を一つ選択し、配列方向に沿う複数の二次元断面を設定する。そして、複数の二次元断面のそれぞれについて二次元の領域分割処理を行って二次元のセグメントを求める。そして、求めた二次元のセグメントを複数の二次元断面間で接続して、三次元のセグメントを構成する。
【0046】
さらに、領域分割に係る処理時間を低減するために、診断対象が胎児44の場合は、視点側から胎児44を見ると、視線上の胎児44の手前には、羊水43が存在する可能性が高いことに鑑み、胎児44と羊水43の領域分割のみを行うように簡略化することも可能である。
【0047】
次に、図4のステップS13の分割領域の判別において、領域判別部72は、分割された三次元領域のボクセル画像データに基づいて、診断対象である胎児44に係る複数のボクセルからなる三次元領域か、胎盤42、羊水43などの他の生体部位に係るボクセルからなる三次元領域かを判別する。この判別の方法は、領域分割のステップS12で説明したように、生体部位の種類に対応付けて予め設定したボクセル画像データの設定範囲に一致するボクセル群か否か判別して、胎盤42、羊水43、胎児44などの生体部位の違いを判別することができる。例えば、図5(e)に示すように分割されたセグメント461〜473のうち、セグメントを代表するボクセル画像データの濃度値が所定以下のセグメントの集合を羊水セグメント48とする。
【0048】
また、領域判別処理は、各三次元領域のボクセル画像データ、隣り合うボクセルのボクセル画像データの差又は勾配、又はそれらを組み合わせた物理量に基づいて、診断対象に係る三次元領域と該診断対象に隣接する三次元領域の少なくとも一方を判別することもできる。
【0049】
ステップS14のプリカット面設定処理は、ボリューム画像データ41から胎児44の視線上の手前にある例えば胎盤42を除去するため、セグメント461〜473のうち、セグメントを代表するボクセル画像データの濃度値が所定以下のセグメントの集合を羊水セグメント48とする。図5(c)では、セグメント465、466、467、468、471が上記条件に該当し、図5(e)の羊水セグメント48を構成している。この羊水セグメント48を断面492において切断すると、図5(g)の領域48aが対応している。ステップS14では、次に、羊水セグメント48のうち、最も深度が浅い面491を境界としてボリューム画像データ41を2つに分割し、深度が浅い側に属するセグメントのセグメント情報に、カット対象マークを付加する。カット対象とは、診断対象の三次元画像を作成する基となるプリカット・ボリューム画像データ41の対象としないで削除することを意味する。一方、深度が深い側に属するセグメントのセグメント情報に、残留対象マークを付加する。残留対象とは、診断対象の三次元画像を作成する基となるプリカット・ボリューム画像データ41の対象として残すことを意味する。
【0050】
次に、図6に示すように、羊水セグメント48のうち最も深度が浅い面491を予め設定された設定量(Nボクセル)1402だけ、深度方向に移動してできる面1401をプリカット面として再設定する。ここで、設定量1402は、領域分割で求めた羊水セグメント48に接する胎盤42の部分のセグメントを確実にカット対象とするために設けるパラメータであり、Nは0以上の数値である。また、胎児44の三次元画像におけるノイズを低減するため、プリカット面1401をスムージングして、滑らかなプリカット面を再設定することもできる。
【0051】
以上説明したように、実施例1の領域分割部71は、複数のボクセルの各ボクセル画像データに基づいてボリューム画像データを複数の三次元領域に分割し、領域判別部72は領域分割部72により分割されたボリューム画像データの各三次元領域のボクセル画像データに基づいて、診断対象に係る三次元領域とその診断対象に隣接する三次元領域の少なくとも一方を判別し、制御部7は領域判別部72により判別された診断対象に係る三次元領域と、その診断対象に隣接する三次元領域との境界、又は診断対象に隣接する三次元領域内にプリカット面を設定している。
【0052】
すなわち、実施例1は、ボリューム画像データを構成する複数の各ボクセルのボクセル値に基づいて、ボクセル値が診断対象(例えば、胎児)に係るボクセルかどうかを判別する。この判別は、各種の診断対象のボクセル値を収集することにより、特定の診断対象に係るボクセル値であるか否かを区別できるようになる。このようにして、診断対象に係るボクセルの集合である三次元領域を判別することができれば、診断対象に係る三次元領域の視点側にプリカット面を設定することが容易になる。その結果、表示されている断層画像の奥行き方向に対するプリカット面の設定が適正か否かを検者は確認できる。そのため、診断対象のボリューム画像データを削除することなくプリカット面を設定でき、被検体内の診断対象の鮮明な三次元画像を構成することができる。
【0053】
また、実施例1において、診断対象に係る三次元領域の視点側の境界面に沿って曲面状のプリカット面を設定することができ、診断対象以外の生体部位を残すことなくプリカットできる。そのため、一層鮮明な診断対象の三次元画像を得ることができる。また、ボクセル値が予め設定された範囲内のボクセルを診断対象に係るボクセルであると判別することができる。また、診断対象に係るボクセル値か否かを判別する設定値及び範囲を可変設定できるようにし、診断時に適切な診断対象の三次元画像を得られるように調整することができる。
【0054】
また、実施例1のプリカット面を設定する方法は、ボクセル値が予め別に設定された範囲内のボクセルを、診断対象に係る三次元領域を包囲する隣接ボクセル群であると判別し、該隣接ボクセル群からなる三次元領域内の前記視点側に前記プリカット面を設定するようにすることができる。すなわち、診断対象が胎児などの場合は、羊水により包囲されていることが通常である。このような場合、羊水のボクセル値は胎児のボクセル値よりも十分に小さいから、羊水部分を削除しなくても胎児の三次元画像は殆ど変らない。しかも、羊水の三次元領域は比較的大きいことから、羊水の三次元領域を判別するのは容易である。
【0055】
そこで、羊水の三次元領域を判別して、羊水の三次元領域内にプリカット面を設定することにより、確実に診断対象のボリューム画像データを削除することなくプリカット面を設定でき、被検体内の診断対象の鮮明な三次元画像を構成することができる。
【0056】
また、実施例1の医用画像装置のプリカット面設定部は、前記複数のボクセルの各ボクセル値に基づいて前記ボリューム画像データを複数の三次元領域に分割する領域分割部と、該領域分割部により分割された前記ボリューム画像データの各三次元領域の前記ボクセル値に基づいて、前記診断対象に係る三次元領域と該診断対象に隣接する三次元領域の少なくとも一方を判別する領域判別部とを備えて構成できる。この場合、領域判別部により判別された前記診断対象に係る三次元領域と該診断対象に隣接する三次元領域との境界又は前記診断対象に隣接する三次元領域内にプリカット面を設定する構成とすることができる。
【0057】
実施例1は、ボリューム画像データをボクセル値に基づいて複数の三次元領域に分割することを基本的な特徴とする。すなわち、診断対象は様々な生体構造及び生体組織の生体部位により取り囲まれているのが一般である。そこで、特定の診断領域のボクセル値に加えて、様々な生体構造及び生体組織の生体部位のボクセル値に応じて、複数の設定値、設定値との許容差からなる複数の設定範囲を、それぞれの設定範囲が重ならないように定める。つまり、設定許容差内で一致する複数の前記ボクセルごとにグループ化することにより、ボリューム画像データを生体部位に応じた複数の三次元領域に分けることができる。そして、特定の診断領域に隣接する一又は複数の三次元領域が分かれば、それらの隣接する三次元領域内にプリカット面を設定することにより、確実に診断対象のボリューム画像データを削除することなくプリカット面を設定でき、被検体内の診断対象の鮮明な三次元画像を構成することができる。
【0058】
また、実施例1の領域判別部は、前記各三次元領域のボクセル値、隣り合うボクセルのクセル値の差又は勾配、又はそれらを組み合わせた物理量に基づいて、前記診断対象に係る三次元領域と該診断対象に隣接する三次元領域の少なくとも一方を判別するようにすることができる。
【0059】
さらに、実施例1のプリカット面設定部は、前記領域判別部により判別された前記診断対象に係る三次元領域の前記視点から見た深度が最も浅い境界面と、前記隣接三次元領域の前記視点から見た深度が最も深い境界面との間に前記プリカット面を設定することができる。これによれば、例えば、胎児を診断対象とする場合、羊水のボクセルの存在は、胎児の三次元画像の鮮明度に与える影響が小さいことから、胎児の一部をカットするリスク及び胎盤の一部を残すリスクを低減でき、確実に胎児のボクセルを残すことができる。
【0060】
また、実施例1の画像構成部は、さらに、前記領域分割部で分割された前記ボリューム画像データに基づいて、複数の三次元領域を表示する任意断面における断面画像と前記複数の三次元領域の全体を表示する全体三次元画像の少なくとも一方を構成するとともに、前記断面画像と前記全体三次元画像に前記分割された三次元領域の境界線又は面と、前記プリカット面設定部で設定されたプリカット線又は面を重ねたプリカット面設定画面を構成して前記画像表示部に表示させるプリカット面設定画面作成部を備えて構成することができる。これにより、検者は、断層画像又は三次元画像に描出される診断対象と他の生体部位と、プリカット面と位置関係を容易に把握できるから、適正なプリカット面が設定されているか否かを確認できる。この場合、断層画像はボリューム画像データを直交3断面でスライスした3断面画像を構成して表示することが好ましい。
【0061】
さらに、前記プリカット面設定画面は、削除される前記三次元領域と残される三次元領域が、異なる表示形態で表示することが好ましい。これにより、検者が適正なプリカット面であるか否かを確認した結果、プリカット面の位置を修正したい場合、三次元領域を単位として容易に修正することができる。
【0062】
つまり、前記プリカット面設定画面作成部は、前記入力部により前記プリカット面設定画面に表示された前記プリカット面又は線に接する前記三次元領域を指定することにより、指定された前記三次元領域に接する前記プリカット面を前記視点側又は反視点側に変更することが好ましい。この場合、さらに、前記プリカット設定画面の変更では、前記プリカット面に接する前記視点側の前記三次元領域を残留化候補とし、前記プリカット面に接する前記反視点側の前記三次元領域をカット化候補として、それぞれ異なるマーク、色又は表示形態で識別可能に表示することが好ましい。これにより、修正操作が一層やり易くなる。
【0063】
また、実施例1は、さらに、前記プリカット・ボリューム画像データの残留三次元領域の三次元画像を作成して、前記画像表示部に表示させるプリカット三次元画像作成部を備えて構成することができる。
【0064】
特に、実施例1は、ボリューム画像データをボクセル画像データに基づいて複数の三次元領域に分割することを基本的な特徴とする。すなわち、診断対象は様々な生体構造及び生体組織の生体部位により取り囲まれているのが一般である。そこで、特定の診断領域のボクセル画像データに加えて、様々な生体構造及び生体組織の生体部位のボクセル画像データに応じて、複数の設定値、設定値との許容差からなる複数の設定範囲を、それぞれの設定範囲が重ならないように定める。つまり、設定許容差内で一致する複数のボクセルごとにグループ化することにより、ボリューム画像データを生体部位に応じた複数の三次元領域に分けることができる。そして、特定の診断領域に隣接する一又は複数の三次元領域が分かれば、それらの隣接する三次元領域内にプリカット面を設定することにより、確実に診断対象のボリューム画像データを削除することなくプリカット面を設定でき、被検体内の診断対象の鮮明な三次元画像を構成することができる。
【0065】
また、実施例1の領域判別部71は、各三次元領域のボクセル画像データ、隣り合うボクセルのボクセル画像データの差又は勾配、又はそれらを組み合わせた物理量に基づいて、診断対象に係る三次元領域とその診断対象に隣接する三次元領域の少なくとも一方を判別することができる。
【0066】
さらに、実施例1の領域判別部72は判別された診断対象に係る三次元領域の視点から見た深度が最も浅い境界面と、隣接する三次元領域の視点から見た深度が最も深い境界面との間を判別し、プリカット面設定部81にプリカット面を設定するための判別結果を出力する。これにより、例えば、胎児を診断対象とする場合、羊水のボクセルの存在は、胎児の三次元画像の鮮明度に与える影響が小さいことから、胎児のボクセル画像データの一部を損なうリスク及び胎盤のボクセル画像データの一部を残すリスクを低減でき、確実に胎児のボクセル画像データを残すことができる。
【0067】
また、実施例1の画像構成部5は、さらに、領域分割部72で分割されたボリューム画像データに基づいて、複数の三次元領域を表示する任意断面における断面画像と複数の三次元領域の全体を表示する全体三次元画像の少なくとも一方を構成することができる。
【0068】
また、プリカット面設定画面作成部56を備えることにより、検者は、断層画像又は三次元画像に描出される診断対象と他の生体部位と、プリカット面と位置関係を容易に把握できるから、適正なプリカット面が設定されているか否かを確認できる。この場合、断層画像はボリューム画像データを直交3断面でスライスした3断面画像を構成して表示することができる。
【実施例2】
【0069】
実施例2はプリカット面の設定を変更することを他の特徴とする。図7に、プリカット面変更処理に係るフローチャートを示す。実施例2では、プリカット面をセグメント単位で変更することができるようになっている。まず、図8に示すプリカット面設定画面51が表示部6に表示されているものとする。図8(a)は、断層画像503に重ねてプリカット面601と削除対象のセグメントのグループ602、ROI46がそれぞれ表示されている。図9に示すように、プリカット面設定画面51のセグメントのうち、設定されたプリカット面601に接するセグメントには、残留化候補セグメント(▽)あるいはカット化候補セグメント(△)のマークが付して表示されている。残留化候補セグメント(▽)は、実施例1では削除対象のセグメントであるが、検者の判断によって削除しない、つまり残留させる候補となるセグメントである。一方、カット化候補セグメント(△)は、その逆で、実施例1では残留対象のセグメントであるが、検者の判断によって削除する、つまりカットする候補となるセグメントである。なお、残留化候補セグメント及びカット化候補セグメントに付加するマークは、実施例2に拘束されない。また、マークを用いずに、両者が識別できるよう、セグメントを所定の線スタイルで縁取っても、パターンで塗りつぶしてもよい。
【0070】
図8(a)に示すように、胎児44の一部でありながら、プリカット面の視点側に位置されるセグメント604(図9の符号71の部分)が存在する。この場合、検者は入力部8のトラックボール及びキーボードなどの入力デバイスを操作して、プリカット面設定画面51のセグメント604を指定する。これにより、図7のプリカット面変更処理が開始される。まず、入力デバイスからセグメント604がクリックされると、セグメント604及び座標を特定する(S21)。次に、セグメント604がカット化候補セグメントか、残留化候補セグメントか、それ以外であるかを判断する(S22)。
【0071】
セグメント604がカット化候補であれば、残留化候補セグメントのマークに付け直す(S23)。一方、セグメント604が残留化候補セグメントであれば、カット化候補セグメントのマークに付け直す(S24)。これにより、図8(b)に示すように、プリカット面設定画面51のセグメント604が、削除対象から残留対象に属性が変更される。
また、削除対象であるセグメントのグループ602が削除対象のグループ605に変化される。
【0072】
次に、変更後のセグメントの属性に合わせて、プリカット面601が更新される(S25)。これにより、図8(c)に示すように、セグメント604が羊水セグメントのグループに併合され、変更されたプリカット面606が求められる。
【0073】
このように、実施例2によれば、プリカット面の再設定において、ボリューム画像データの領域分割によって得られる個々のセグメントを単位として、削除対象か残留対象かの修正をすることができる。
【0074】
また、実施例2によれば、実施例1で説明した効果の他に、二次元の断層画像であるプリカット設定画面51では視認できない奥行き方向についても、プリカット面の形状を修正できる。
【0075】
しかも、簡単な操作により、プリカット面の変更を行うことができる。また、図110に示すように、プリカット面設定画面51と診断対象の三次元画像52を並べて表示し、カット対象のセグメント604から残留対象に変更したセグメント1501と、同セグメント1501に該当する三次元画像の部分1502を強調して表示することにより、変更操作の確認をすることができる。しかも、リアルタイムで表示を更新することで、検者が加えたプリカット面への変更が、診断対象である胎児の観察にとって妥当か否かを判断しながらプリカット面の変更を行うことができる。
【0076】
つまり、プリカット面設定画面は、除去される三次元領域と残される三次元領域を、異なる表示形態で表示されるから、検者が適正なプリカット面であるか否かを確認した結果、プリカット面の位置を修正したい場合、三次元領域を単位として容易に修正することができる。
【実施例3】
【0077】
プリカット面設定の手順の実施例3について、図12に示したフローチャートに沿って説明する。実施例3は、診断対象が胎児の場合に好適な実施例である。実施例3は、前述したように、胎児は比較的大量の羊水に包囲され、かつ、羊水のボクセル画像データは胎児のボクセル画像データに比べて小さいから、両者を分割して判別することは容易であることに基づくものである。
【0078】
図12に示すように、まず、ボリューム画像データをボクセル画像データである濃度に基づいて三次元の領域に分割する(S1201)。この領域分割方法は、図4のS12と同様であるが、診断対象である胎児を残して他の領域を削除することを狙いとする実施例3では、羊水の領域のみを判別して分割することが好ましい。そこで、実施例3では、濃度値が羊水を判別するための設定値以下のセグメントの集合を羊水セグメントの領域として分割する(S1202)。この様子を、図13(a)に示す。次に、図13(a)に示すように、羊水セグメント48の最も浅い面491(以降、A面と称する。)の座標データを磁気ディスク装置52又はRAM53に保持しておく(S1801)。次に、羊水セグメント48の内部にあり、セグメントを代表する濃度値が、羊水を判別するための設定値を越えるセグメントの集合を、図13(b)に示すように、胎児セグメント1602とする(S1802)。次に、胎児セグメント1602の最も深度が浅い面1603(以降、B面と称する。)の座標データを磁気ディスク装置52又はRAM53に保持しておく(S1803)。
【0079】
次に、図14に示すように、A面491とB面1603の中間深度をトレースし、これにより形成される面1701を最終的なプリカット面とする(S1804)。
【0080】
実施例3は、実施例1、実施例2で説明した効果の他に、ボクセル画像データが予め設定された設定値以下のボクセルを、診断対象である胎児に係る三次元領域を包囲する羊水セグメント、つまり隣接ボクセル群であると判別し、隣接ボクセル群からなる三次元領域内の視点側にプリカット面を設定しているから、胎盤にも胎児も接近しないプリカット面を設定することができる。その結果、胎盤のボクセル画像データを削除し損ねる及び胎児のボクセル画像データのカットし過ぎなどのリスクを低減することができる。
【0081】
(表示形態例)
ここで、本発明の医用画像装置により表示部6に表示される表示形態の実施例を説明する。次に、本実施形態における表示部6での表示について説明する。まず、プリカット面設定に係る実施例1によって表示部6に表示される表示形態を図15に示した。図15では、プリカット面設定画面51と診断対象の三次元画像52を並べて表示した。つまり、プリカット面設定画面51は、超音波画像511に、ROI512、領域分割によって得られたセグメントの境界513、プリカット面514、削除対象セグメントを表す表示属性515を重ねて表示したものである。これらのROI512、セグメントの境界513、プリカット面514は三次元的形態であるが、断層画像511の撮像断面と同じ断面で切断して表示している。
【0082】
また、削除対象のボリューム画像データに対応するセグメントのグループと、残留対象のボリューム画像データに対応するセグメントのグループとを互いに区別できるように、塗りつぶしの色、塗りつぶしの透明度、塗りつぶしのパターン、縁取り線の太さ、縁取り線の色、縁取り線のスタイルのいずれか一つあるいは複数を互いに変えることができる。また、図15では、セグメントの境界513を実線で表した。さらに、図15では、削除対象となったセグメントのグループ515を斜線パターンで塗りつぶした。
【0083】
図16に、他の実施例の表示形態を示す。図16では、複数の異なる断層面におけるプリカット面設定画面81、82、83と、設定されたプリカット面で生成されたプリカット・ボリューム画像データに基づいて生成した診断対象の三次元画像84とを並べて表示した例である。第1のプリカット面設定画面81と、第2のプリカット面設定画面82とは、異なる断層面における断層画像811、821におけるものである。また、第3のプリカット面設定画面83は、さらに別の断層画像831におけるものである。
【0084】
ここで、断層画像811、821及び831は、それぞれ、図10に示した同一のボリューム画像データ90における直交3断面91、92及び93における断層画像である。
これらの断層の位置は、入力部8のトラックボール及びキーボードなどの入力デバイスを用いて移動することができ、移動に応じて断層画像が変化するようになっている。また、プリカット面812及び822は、三次元の同一のプリカット面であり、直交3断面91、92及び93の位置の移動に、プリカット面が連動して更新されるようになっている。また、セグメントの境界813、823及び833の表示形態も、直交3断面91、92及び93の位置の移動に連動して、各断面におけるセグメントの境界に更新される。同様に、削除対象であるセグメントのグループ814及び824は、直交3断面91、92及び93の位置の移動に連動して、各断面における削除対象であるセグメントのグループの境界が表示されるようになっている。ROI815、825及び835についても、同様に、直交3断面91、92及び93の位置の移動に連動して、各断面におけるROIの境界が表示されるようになっている。
【0085】
図7を参照して説明したプリカット面の変更操作は、表示部6に表示されるボリューム画像データの一断面における断層画像と、ボリューム画像データの三次元画面を見ながら、グラフィックユーザインターフェイス(GUI)による操作である。GUIによる操作を、図16におけるプリカット面設定画面81及び82にて実施することにより、入力部8によって3次元超音波画像データの直交3断面91、92及び93を移動しながら、プリカット面の表示を変更することができる。これにより、ある断面におけるプリカット面の修正結果が妥当かを確認しながら、プリカット面の修正操作ができるため、一層、胎児の画像の形状に即したプリカット面の設定が可能となる。
【0086】
さらに、図17に、他の表示形態の実施例を示す。図17は、複数の断面の断層画像におけるプリカット面設定画面を連続的に配列して表示する例である。図17において、左上の断面位置表示画面1004は、断層画像に直交する平行な複数断面を設定した様子を示している。図17において、複数の直線1001は、複数断面の位置を表しており、左端の断面1002における断層画像及びプリカット面設定画面1002aを表示する同様の画像を、順次連続的に異なる断面位置の断層画像及びプリカット面設定画面を1003及び1003aまで配列している。このように表示することにより、連続断層における超音波診断と立体的なプリカット面の再設定を一括して行えるため、診断の効率化ができる。なお、表示断面の数は入力部8にて変更可能である。
【0087】
図18に、プリカット面設定画面の他の表示形態に実施例を示す。図18において、プリカット面設定画面51には、プリカット面1103と、削除対象であるセグメントのグループ1104を表示し、セグメントの塗りつぶしを半透明とし、複数の断面におけるセグメントを重畳的に表示できるようにしている。この表示形態により、本来であれば他のセグメントに隠れて見えない部分(例えば、部位1101)が見えるようになり、プリカット面の再設定をし易くすることができる。また、奥行きを示す濃淡バー1102を並べて表示してもよい。濃淡バー1102はグレースケールの他、徐々に変化するカラーのグラデーションで濃淡を表現してもよい。
【0088】
以上、本発明の医用画像装置及び医用画像構成方法を実施例に基づいて説明した。特に、具体例として胎児の観察、診断における三次元画像を生成する実施例を中心に説明したが、本発明の診断対象はこれに限られるものではない。例えば、診断対象として、肝臓、肝細胞、肝血管、胆嚢、胆管、脾臓、膵臓、腎臓、副腎、子宮、卵巣、前立腺、胃、腸、虫垂、心臓、動脈・静脈を含む血管、甲状腺、副甲状腺、頸動脈、頸静脈、乳腺、リンパ節、消化器、子宮、卵巣、尿管、膀胱の観察や、細胞組織、筋肉組織の観察において、ボリューム画像データを取得して、診断対象を三次元画像で表示する場合にも適用できる。
【符号の説明】
【0089】
5 画像構成部、6 表示部、7 制御部、8 入力部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18