(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5904539
(24)【登録日】2016年3月25日
(45)【発行日】2016年4月13日
(54)【発明の名称】通信装置、通信制御方法
(51)【国際特許分類】
H04W 16/14 20090101AFI20160331BHJP
H04W 64/00 20090101ALI20160331BHJP
H04M 1/725 20060101ALI20160331BHJP
H04M 11/00 20060101ALI20160331BHJP
【FI】
H04W16/14
H04W64/00 171
H04M1/725
H04M11/00 302
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-105832(P2012-105832)
(22)【出願日】2012年5月7日
(65)【公開番号】特開2013-236150(P2013-236150A)
(43)【公開日】2013年11月21日
【審査請求日】2015年3月5日
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)総務省委託「電波資源拡大のための研究開発」の一環、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】301022471
【氏名又は名称】国立研究開発法人情報通信研究機構
(74)【代理人】
【識別番号】110001092
【氏名又は名称】特許業務法人サクラ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】チャン ハグエン
(72)【発明者】
【氏名】デメシ ヨハネス アレムスグド
(72)【発明者】
【氏名】原田 博司
【審査官】
倉本 敦史
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2011/074686(WO,A1)
【文献】
国際公開第2011/047694(WO,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2011/0310866(US,A1)
【文献】
Yohannes D. Alemseged, et. al.,Channel list request/response for multiple geo-locations,IEEE 802.11af-10/1234r2,2010年11月 8日,pp.1-9
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04W 4/00−99/00
H04M 1/725
H04M 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信機能部を有する通信装置であって、
自装置の地理的位置を特定する手段と、
前記地理的位置と、該地理的位置の正確性を示す指標または該指標が意味する正確性より粗い正確性を示す指標のいずれかである第1の指標と、該第1の指標が意味する正確性より粗い正確性を示す第2の指標とをデータベースに送信する手段と、
前記第1の指標を伴った前記地理的位置において利用可能な第1の利用可能チャンネルを示すリストである第1のリストと、前記第2の指標を伴った前記地理的位置において利用可能な第2の利用可能チャンネルを示すリストである第2のリストとを前記データベースから取得する手段と、
前記第1の利用可能チャンネルから前記第2の利用可能チャンネルを除いたチャンネルのうちより、利用しようとするチャンネルを利用チャンネルとして選択する手段と、
前記利用チャンネルを用いるべく前記通信機能部を制御する手段と
を具備することを特徴とする通信装置。
【請求項2】
自装置の移動速度が比較的遅いか速いかを記憶保持しておく手段と、
自装置の移動速度が比較的遅い場合に、前記第1の利用可能チャンネルから前記第2の利用可能チャンネルを除いたチャンネルのうちより、利用しようとするチャンネルを利用チャンネルとして選択する手段と、
自装置の移動速度が比較的速い場合に、前記第2の利用可能チャンネルの中から、利用しようとするチャンネルを利用チャンネルとして選択する手段と
をさらに具備することを特徴とする請求項1記載の通信装置。
【請求項3】
前記地理的位置と、前記第1の指標と、前記第2の指標とを少なくとも含むメッセージを前記データベースへの問い合わせメッセージとして生成する手段をさらに具備することを特徴とする請求項1記載の通信装置。
【請求項4】
前記地理的位置と、前記第1の指標と、前記第2の指標と、該第2の指標が意味する正確性より粗い正確性を示す第3の指標とを前記データベースに送信する手段と、
前記第1のリストと、前記第2のリストと、前記第3の指標を伴った前記地理的位置において利用可能な第3の利用可能チャンネルを示すリストである第3のリストとを前記データベースから取得する手段と、
自装置の移動速度が比較的遅いか中位か速いかを記憶保持しておく手段と、
自装置の移動速度が比較的遅い場合に、前記第1の利用可能チャンネルから前記第2の利用可能チャンネルを除いたチャンネルのうちより、利用しようとするチャンネルを利用チャンネルとして選択する手段と、
自装置の移動速度が比較中位の場合に、前記第2の利用可能チャンネルから前記第3の利用可能チャンネルを除いたチャンネルのうちより、利用しようとするチャンネルを利用チャンネルとして選択する手段と、
自装置の移動速度が比較的速い場合に、前記第3の利用可能チャンネルのうちより、利用しようとするチャンネルを利用チャンネルとして選択する手段と
をさらに具備することを特徴とする請求項1記載の通信装置。
【請求項5】
前記地理的位置と、前記第1の指標と、前記第2の指標と、前記第3の指標とを少なくとも含むメッセージを前記データベースへの問い合わせメッセージとして生成する手段をさらに具備することを特徴とする請求項4記載の通信装置。
【請求項6】
通信機能部を有する通信装置における通信制御方法であって、
自装置の地理的位置を特定し、
前記地理的位置と、該地理的位置の正確性を示す指標または該指標が意味する正確性より粗い正確性を示す指標のいずれかである第1の指標と、該第1の指標が意味する正確性より粗い正確性を示す第2の指標とをデータベースに送信し、
前記第1の指標を伴った前記地理的位置において利用可能な第1の利用可能チャンネルを示すリストである第1のリストと、前記第2の指標を伴った前記地理的位置において利用可能な第2の利用可能チャンネルを示すリストである第2のリストとを前記データベースから取得し、
前記第1の利用可能チャンネルから前記第2の利用可能チャンネルを除いたチャンネルのうちより、利用しようとするチャンネルを利用チャンネルとして選択し、
前記利用チャンネルを用いるべく前記通信機能部を制御すること
を特徴とする通信制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テレビジョンホワイトスペース(TVWS)環境下で動作するように構成された端末である通信装置およびその通信制御方法に係り、特に、2次ユーザどうしの競合をできるだけ避けるのに適した通信装置およびその通信制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
免許事業のテレビ放送と同じ周波数帯を使用する、そのような免許不要で運用できる無線通信規格が検討されている。これらの規格では、テレビ事業者を1次ユーザとして、1次ユーザの免許周波数帯が使用されていない場合に限り、その周波数帯(使用されていない免許周波数帯=ホワイトスペース)で2次ユーザが無線通信を運用することを容認する。
【0003】
そのような環境下で使用される2次ユーザの通信装置は、TV信号が存在しないことを確認するため、TVチャンネルに関しその専用のデータベースに問い合わせを行う。すなわち、通信装置の現在の位置情報をデータベースに送信し、データベースから、その位置で使用可能(有効)なチャンネルのリストを得る。そして、リストにあるチャンネルの中から使用するチャンネルを選択し、2次ユーザとして無線通信の運用を行う。
【0004】
そこでごく近くに位置する2次ユーザどうしは、同じチャンネルを利用する可能性を有することになり、競合関係になる。すなわち、実際に同じチャンネルを選択した場合、通信に相互干渉が生じ通信品質が損なわれる恐れがある。このような事態を避けるため、例えば、2次ユーザどうしが直接に情報交換を行い、使用チャンネルが競合しないようにチャンネルを選択することや、あるいは、共存を管理するサーバを別途設けて、選択したチャンネルの登録と他の2次ユーザによるその照会とを通してチャンネル選択を行うことが考えられる。
【0005】
しかしながら、2次ユーザどうしで情報交換するにしても、共存を管理するサーバを設けるにしても、通信装置としては、そのためのインターフェースを新たに設ける必要があり負担になる。また、そのようなインターフェースを例え備えたとしても、一部の2次ユーザが2次ユーザどうしの情報交換に対応していない場合や、共存を管理するサーバがたまたま利用できない事態も考えられる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】FCC R&O 10-174
【非特許文献2】EU Electronic Communications Committee (ECC) Report Number 159, “Technical and operational requirements for the possible operation of cognitive radio systems in the ‘white space’ of the frequency band 470-790 MHz”, Jan. 2011.
【非特許文献3】IETF RFC 6225
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、テレビジョンホワイトスペース環境下で動作するように構成された端末である通信装置およびその通信制御方法において、簡易な構成で、2次ユーザどうしの競合をできるだけ避けることが可能な通信装置およびその通信制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため、本発明の一態様である通信装置は、通信機能部を有する通信装置であって、自装置の地理的位置を特定する手段と、前記地理的位置と、該地理的位置の正確性を示す指標または該指標が意味する正確性より粗い正確性を示す指標のいずれかである第1の指標と、該第1の指標が意味する正確性より粗い正確性を示す第2の指標とをデータベースに送信する手段と、前記第1の指標を伴った前記地理的位置において利用可能な第1の利用可能チャンネルを示すリストである第1のリストと、前記第2の指標を伴った前記地理的位置において利用可能な第2の利用可能チャンネルを示すリストである第2のリストとを前記データベースから取得する手段と、前記第1の利用可能チャンネルから前記第2の利用可能チャンネルを除いたチャンネルのうちより、利用しようとするチャンネルを利用チャンネルとして選択する手段と、前記利用チャンネルを用いるべく前記通信機能部を制御する手段とを具備することを特徴とする。
【0009】
この通信装置は、自装置の地理的位置の特定に続き、地理的位置の正確性を示す指標(またはこの指標が意味する正確性より粗い正確性を示す指標)である第1の指標と、この第1の指標が意味する正確性より粗い正確性を示す第2の指標とをデータベースに送信する。データベースからは、第1の指標を伴った地理的位置において利用可能な第1の利用可能チャンネルを示すリストである第1のリストと、第2の指標を伴った地理的位置において利用可能な第2の利用可能チャンネルを示すリストである第2のリストとが送られてくる。
【0010】
ここで、第1のリストが含むチャンネルの集合は、第2のリストが含むすべてのチャンネルを包含する集合になる。換言すると、第2のリストは第1のリストの部分集合(同一になる場合もまったくないわけではないが)である。これは、地理的位置の正確性の関係に起因して地理的に包含関係になる2つの領域についてデータベースが行う利用可能チャンネルの検索過程を考えると必然である。
【0011】
そこで、第1の利用可能チャンネルから第2の利用可能チャンネルを除いたチャンネルのうちより、利用しようとするチャンネルを選択するようにする。このようにすれば、より競争率の低い利用可能チャンネルを選択することになる。第2の利用可能チャンネルは、広い領域に共通に利用可能なチャンネルであり、それだけ競争率が高い。競争率の低い利用可能チャンネルを選択すれば、2次ユーザどうしの競合は必然的にそれだけ小さくなる。また、隣に位置する領域に存在する通信装置が選択すると考えられるチャンネルとも異なる確率が高くなり、やはり競合する可能性がそれだけ小さくなる。
【0012】
また、本発明の別の態様である通信制御方法は、通信機能部を有する通信装置における通信制御方法であって、自装置の地理的位置を特定し、前記地理的位置と、該地理的位置の正確性を示す指標または該指標が意味する正確性より粗い正確性を示す指標のいずれかである第1の指標と、該第1の指標が意味する正確性より粗い正確性を示す第2の指標とをデータベースに送信し、前記第1の指標を伴った前記地理的位置において利用可能な第1の利用可能チャンネルを示すリストである第1のリストと、前記第2の指標を伴った前記地理的位置において利用可能な第2の利用可能チャンネルを示すリストである第2のリストとを前記データベースから取得し、前記第1の利用可能チャンネルから前記第2の利用可能チャンネルを除いたチャンネルのうちより、利用しようとするチャンネルを利用チャンネルとして選択し、前記利用チャンネルを用いるべく前記通信機能部を制御することを特徴とする。
【0013】
この通信制御方法は、上記した通信装置に準拠した制御方法である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、テレビジョンホワイトスペース環境下で動作するように構成された端末である通信装置およびその通信制御方法において、簡易な構成で、2次ユーザどうしの競合をできるだけ避けることが可能な通信装置およびその通信制御方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の一実施形態である通信装置の構成を示す機能ブロック図。
【
図2】
図1中に示したデータベース問い合わせ部12がデータベースに送る地理的位置とその正確性指標との関係を説明する地理的表示図。
【
図3】
図1中に示したデータベース問い合わせ部12がデータベースに送信する問合せメッセージのフォーマット例を示す説明図。
【
図4】
図3に示したフォーマットに対応してデータベースが返信してくるメッセージのフォーマット例を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施態様として、自装置の移動速度が比較的遅いか速いかを記憶保持しておく手段と、自装置の移動速度が比較的遅い場合に、前記第1の利用可能チャンネルから前記第2の利用可能チャンネルを除いたチャンネルのうちより、利用しようとするチャンネルを利用チャンネルとして選択する手段と、自装置の移動速度が比較的速い場合に、前記第2の利用可能チャンネルの中から、利用しようとするチャンネルを利用チャンネルとして選択する手段とをさらに具備する、とすることができる。
【0017】
これは、装置の移動速度に応じて利用チャンネルの選択肢を変更するものである。移動速度が遅い場合は、すでに説明したようにチャンネルの選択が行われ、移動速度が速い場合は第2の利用可能チャンネルの中から利用チャンネルが選択される。このようにすれば、移動速度が速い場合に、チャンネルがより広域で利用可能なものに選択されているので、利用チャンネルの切り替え頻度を大きく抑制することができ、通信の安定につながりやすい。
【0018】
また、実施態様として、前記地理的位置と、前記第1の指標と、前記第2の指標とを少なくとも含むメッセージを前記データベースへの問い合わせメッセージとして生成する手段をさらに具備する、とすることができる。これは、データベースへの問い合わせを効率化するようにメッセージを生成するものである。すなわち、これによれば第1、第2の指標を一度にデータベースに送り、2回の問い合わせを行う必要がないので、効率的な問い合わせになる。
【0019】
また、実施態様として、前記地理的位置と、前記第1の指標と、前記第2の指標と、該第2の指標が意味する正確性より粗い正確性を示す第3の指標とを前記データベースに送信する手段と、前記第1のリストと、前記第2のリストと、前記第3の指標を伴った前記地理的位置において利用可能な第3の利用可能チャンネルを示すリストである第3のリストとを前記データベースから取得する手段と、自装置の移動速度が比較的遅いか中位か速いかを記憶保持しておく手段と、自装置の移動速度が比較的遅い場合に、前記第1の利用可能チャンネルから前記第2の利用可能チャンネルを除いたチャンネルのうちより、利用しようとするチャンネルを利用チャンネルとして選択する手段と、自装置の移動速度が比較中位の場合に、前記第2の利用可能チャンネルから前記第3の利用可能チャンネルを除いたチャンネルのうちより、利用しようとするチャンネルを利用チャンネルとして選択する手段と、自装置の移動速度が比較的速い場合に、前記第3の利用可能チャンネルのうちより、利用しようとするチャンネルを利用チャンネルとして選択する手段とをさらに具備する、とすることができる。
【0020】
これは、装置の移動速度に応じて利用チャンネルの選択肢をさらにきめ細かく変更するものである。移動速度が遅い場合は、すでに説明したようにチャンネルの選択が行われ、移動速度が中位の場合は第2の利用可能チャンネルから第3の利用可能チャンネルを除いたチャンネルのうちより、利用しようとするチャンネルが利用チャンネルとして選択され、移動速度が速い場合は第3の利用可能チャンネルの中から利用チャンネルが選択される。このようにすれば、移動速度の違いに応じて、チャンネルがより広域で利用可能なものに選択されているので、利用チャンネルの切り替え頻度を大きく抑制することができ、通信の安定につながりやすい。他方、2次ユーザどうしの競合もより小さくなる。
【0021】
また、実施態様として、前記地理的位置と、前記第1の指標と、前記第2の指標と、前記第3の指標とを少なくとも含むメッセージを前記データベースへの問い合わせメッセージとして生成する手段をさらに具備する、とすることができる。これも、データベースへの問い合わせを効率化するようにメッセージを生成するものである。すなわち、これによれば第1、第2、第3の指標を一度にデータベースに送り、3回の問い合わせを行う必要がないので、効率的な問い合わせになる。
【0022】
以上を踏まえ、以下では本発明の実施形態を図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の一実施形態である通信装置の構成を示す機能ブロック図である。同図に示すように、この通信装置は、位置特定部11、データベース問い合わせ部12、利用チャンネル選択部13、移動速度情報記憶保持部14、制御部15、通信機能部16を有する。
【0023】
位置特定部11は、例えばGPS(global positioning system)衛星を利用して自装置の現在位置の特定を行う。特定された現在位置はデータベース問い合わせ部12に渡される。位置特定部11によって得られた現在位置は、その緯度、経度の情報(すなわち地理的位置)である。得られた地理的位置には、GPS衛星の能力に応じて、潜在的にその正確性が付随している。
【0024】
データベース問い合わせ部12は、位置特定部11から渡された地理的位置と、その正確性を示す指標(またはこの指標が意味する正確性より粗い正確性を示す指標)と、さらにより粗い正確性を示す指標とをデータベースに送信する。すなわち、地理的位置の正確性について複数の指標を送信する。複数の指標は、一度に送信しても複数に分けて送信してもよい。データベースは、TVWS環境下で運用され得る通信装置に、利用可能チャンネルに関する情報を提供するようにインターネット上に設けられたサーバである。
【0025】
通常の通信装置ではひとつの指標を送れば足りるところ、上記のように複数の指標を送信するのは、以下の理由による。データベースは、問い合わせされた地理的位置の正確性を考慮してその地理的位置で利用可能なチャンネルを検索する。すなわち、正確性が高ければ、その地理的位置を含む実質的に狭い領域でのみ利用可能なチャンネルの検索を行うことになり、正確性が劣れば、その地理的位置を含むそれより広い領域のすべてで利用可能なチャンネルの検索を行う。地理的位置の正確性によらず1次ユーザに妨害を与えないように2次ユーザが無線運用するにはこのような検索を行う必要がある。
【0026】
このようなデータベースの作用を利用し、意図的に、地理的位置の正確性について複数の指標を送信する。このようにすれば、データベースでは、正確性指標ごとに利用可能チャンネルのリストが生成され、この複数のリストがデータベース問い合わせ部12に送られてくる。この複数のリストには、以下のような性質がある。すなわち、正確性の優る指標に対応したリストL1に含まれる利用可能チャンネルの集合S1に対して、正確性の劣る指標に対応したリストL2に含まれる利用可能チャンネルの集合S2は、必ずその部分集合(同一の場合も考えられる)になる(S1⊇S2)。前者は、狭い領域で利用可能であればよいので一般的に多チャンネルになり、後者は、より広い領域内全部で利用可能でなければならないのでそれよりは少ないチャンネル数である。
【0027】
複数のリストL1、L2をデータベース問い合わせ部12が取得すると、通常の通信装置であれば、単に、多チャンネルとして提示されているリストL1が含むチャンネルが選択されるべき選択肢になるところ、リストL2も利用することにより2次ユーザどうしの競合をできるだけ避けるようなもっと価値の高い選択が可能になる(次の利用チャンネル選択部13についての説明において述べる)。データベース問い合わせ部12がデータベースから取得した複数のリストは利用チャンネル選択部13に渡される。
【0028】
利用チャンネル選択部13は、データベース問い合わせ部12から渡された複数のリストL1、L2を用いて、選択すべきチャンネルの選択肢を次のように生成する。すなわち、L2に属さないチャンネルの集合(S2の補集合)とL1に属するチャンネルの集合S1との積集合を選択すべきチャンネルの選択肢として生成する。換言すると、選択肢はL1からL2を除いたチャンネルの集合である。
【0029】
このような選択肢を生成すれば、より競争率の低い利用可能チャンネルが選択されることになる。L2に含まれる利用可能チャンネルは、広い領域に共通に利用可能なチャンネルであり、それだけ選択されると考えられる競争率が高い。競争率の低い利用可能チャンネルを選択すれば、2次ユーザどうしの競合は必然的にそれだけ小さくなる。また、隣に位置する領域に存在する通信装置が選択すると考えられるチャンネルとも異なる確率が高くなり、やはり競合する可能性がそれだけ小さくなる。
【0030】
利用チャンネル選択部13は、上記のように生成した選択肢の中から利用しようとするチャンネルを利用チャンネルとして選択する。利用チャンネルは、この装置での通信に都合がよいのであれば複数選んでもよい。選択された利用チャンネルの情報は、制御部15に渡される。
【0031】
移動速度情報記憶保持部14は、自装置の移動速度が比較的遅いか速いかを記憶保持しておく記憶部である。この記憶保持部14は、設けるか設けないか随意的である。設けた場合の利点は、自装置の移動速度が比較的遅いか速いかの情報を利用チャンネル選択部13に送ることにより、利用チャンネル選択部13でのチャンネルの選択肢を変更させることができる点にある。
【0032】
移動速度が遅い場合(例えば位置固定された通信装置や歩行者が携行する通信装置)には、利用チャンネル選択部13は、すでに説明したようにチャンネルの選択を行う。移動速度が速い場合(例えば高速鉄道で移動する通信装置)は、上記とは異なりL2の中から利用チャンネルを選択するようにする。このようにすれば、移動速度が速い場合には、チャンネルがより広域で利用可能なものに選択されているので、利用チャンネルの切り替え頻度を大きく抑制することができ、通信の安定につながりやすい。ただし、移動速度が速い場合でも、L1からL2を除いたチャンネルの集合を選択肢としたチャンネル選択をしても通信ができないわけではなく、利用チャンネルの頻繁な切り替えが生じるというだけである。
【0033】
なお、移動速度情報記憶保持部14に情報を保持させるため、自装置の移動速度を検出する手段を設けるようにして、その手段の出力を移動速度情報記憶保持部14に導くようにしてもよい。移動速度の検出は、位置特定部11が出力する地理的位置を刻々と探知する手段を設ければ実現できる。位置固定された通信装置として運用されることが確定的な通信装置の場合は、移動速度情報記憶保持部14に自装置の移動速度が比較的遅い旨の情報を保持させておくか、または移動速度情報記憶保持部14自体を設けないようにすることもできる。
【0034】
制御部15は、利用チャンネル選択部13から渡された利用チャンネルの情報に基づき、通信機能部16を制御する。すなわち、通信機能部16は、この利用チャンネルを用いて無線の送受信を行う。通信機能部16は、本来の通信機能を担っている機能部である。
【0035】
以上、一実施形態の構成および動作について述べた。TVWS環境下で運用される通信装置では、一般的に、例えば、2次ユーザどうしが情報交換を行い、使用チャンネルが競合しないようにチャンネルを選択することや、あるいは、共存を管理するサーバを別途設けて、選択したチャンネルの登録と他の2次ユーザによるその照会とを通してチャンネル選択を行うことが考えられている。しかしながら、そのいずれにしても、通信装置内にそれ用のインターフェースを新たに設ける必要があり負担になる。また、そのようなインターフェースを備えても、一部の2次ユーザが2次ユーザどうしの情報交換に対応していない場合や、共存を管理するサーバがたまたま利用できない事態も考えられる。上記の実施形態では、簡易に、このような点を解決させる効果がある。
【0036】
なお、以上の実施形態の説明では、複数のリストとして2つのリストをデータベース問い合わせ部12が取得する場合を述べているが、同様の考えで、3つ以上のリストを取得するように構成を展開し応用することも考えられる。これによれば、装置の移動速度に応じて利用チャンネルの選択肢をさらにきめ細かく変更することができる。
【0037】
すなわち、例えば3つのリストを取得する場合は次のようになる。まず、データベース問い合わせ部12は、地理的位置と、その比較的精度の高い正確性を示す第1の指標と、中位の精度の正確性を示す第2の指標と、比較的精度の劣る正確性を示す第3の指標とをデータベースに送信する。データベースは、第1の指標に対応する第1のリストと、第2の指標に対応する第2のリストと、第3の指標に対応する第3のリストとをデータベース問い合わせ部12に送ってくるので、問い合わせ部12は、これを取得する。
【0038】
移動速度情報記憶保持部14は、自装置の移動速度が比較的遅いか中位か速いかを記憶保持しておく。利用チャンネル選択部13は、自装置の移動速度が比較的遅い場合には、第1のリストにある利用可能チャンネルから第2のリストにある利用可能チャンネルを除いたチャンネルのうちより、利用しようとするチャンネルを利用チャンネルとして選択する。また、自装置の移動速度が比較中位の場合には、第2のリストにある利用可能チャンネルから第3のリストにある利用可能チャンネルを除いたチャンネルのうちより、利用しようとするチャンネルを利用チャンネルとして選択する。さらに、自装置の移動速度が比較的速い場合には、第3のリストにある利用可能チャンネルのうちより、利用しようとするチャンネルを利用チャンネルとして選択する。
【0039】
このようにすれば、移動速度の違いに応じて、チャンネルがより広域で利用可能なものに選択されているので、利用チャンネルの切り替え頻度を大きく抑制することができ、通信の安定につながりやすい。他方、2次ユーザどうしの競合もより小さくなるという効果も維持されている。
【0040】
以上説明した各実施形態は、例えば、IEEE802.11afの装置に適用できる。実施形態中で言及したデータベースおよび通信装置とのインターフェースについても同じ規格で運用され得る。また、IEEE802.19.1のような自律共存システムに対して、その機能を補足するために同じ考えを適用することもできる。
【0041】
次に、
図2は、
図1中に示したデータベース問い合わせ部12がデータベースに送る地理的位置とその正確性指標との関係を説明する地理的表示図である。
図2を用いて、地理的位置の正確性について補足的に説明する。
【0042】
地理的位置は、すでに述べたようにその経度、緯度で特定される。その地理的位置に正確性の指標が付随しているとは、
図2中に示すように、実質的に、例えば「第1の指標」による上限および下限の経度ならびに上限および下限の緯度で区切られる矩形状の領域A1内に通信装置が位置することを意味している。「第1の指標」が意味する正確性より粗い正確性を示す「第2の指標」が同じ地理的位置に付随していれば、
図2中に示すように、通信装置は、「第2の指標」による上限および下限の経度ならびに上限および下限の緯度で区切られる矩形状の領域A2内に位置していることになる。
【0043】
領域A1は領域A2に包含されているので、必然的に、A1で有効な利用可能チャンネルの集合の部分集合(同一の場合もある)がA2で有効な利用可能チャンネルの集合になる。すなわち、前者は、狭い領域で利用可能であればよいので一般的に多チャンネルになり、後者は、より広い領域内全部で利用可能でなければならないのでそれよりは少ないチャンネル数である。
【0044】
地理的位置の正確性は、例えば、IETF RFC 6225に定められた規格に基づいて2
8−xで表される値で示すことができる。ここで、xは6ビットの値(=0〜63)であり、2
8−xとして、2
8〜2
−55の範囲(64段階)になる。この規格では、地理的位置に加えてx値を与えれば
図2中に示す上限および下限の緯度ならびに上限および下限の緯度を与えたことになる。
【0045】
次に、
図3は、
図1中に示したデータベース問い合わせ部12がデータベースに送信する問合せメッセージのフォーマット例を示す説明図である。
図3を用いて、データベースに送信する問合せメッセージのフォーマットについて補足的に説明する。
【0046】
図3に示すように、データベース問い合わせ部12は、例えば、装置識別子のほか、その地理的位置、送る指標の数、指標A、指標B、指標C、…を含むメッセージをデータベースへの問い合わせメッセージとして生成する。このようにすれば、指標A、B、C、…が一度にデータベースに送信され、複数回の問い合わせを行う必要がないので、効率的な問い合わせになる。なお、これを最初に説明した
図1を参照した実施形態に適用すると、送る指標の数は2であり、指標Aおよび指標Bまでがフォーマットに含まれることになる。
【0047】
次に、
図4は、
図3に示したフォーマットに対応してデータベースが返信してくるメッセージのフォーマット例を示す説明図である。
図4を用いて、データベースが返信してくるメッセージのフォーマットについて補足的に説明する。
【0048】
図4に示すように、利用可能なチャンネルのリストは、それぞれの正確性指標ごとに生成され返信メッセージのフォーマットに含まれることになる。利用可能なチャンネルのそれぞれには、その有効時間や利用できる最大電力の情報が付帯されてもよい。この点は、TVWS環境下で運用することを前提とする各無線通信規格に基づく。制御部15は、通信機機能部16の動作が、上記の有効時間や利用できる最大電力の情報に反することにならないように通信機能部16を制御する。
【符号の説明】
【0049】
11…位置特定部、12…データベース問い合わせ部、13…利用チャンネル選択部、14…移動速度情報記憶保持部、15…制御部、16…通信機能部。