【文献】
BINDER,C.J. et al.,The role of natural antibodies in atherogenesis,J.Lipid Res.,2005年,Vol.46, No.7,p.1353-1363
【文献】
能勢眞人 他,難治性血管炎に関する調査研究 無細胞タンパク質合成系による自己抗体のスクリ-ニング法と簡便なELISA法の,難治性血管炎に関する調査研究 平成19年度 総括・分担研究報告書,2008年,Page.53-56
【文献】
Sampi,M. et al.,Plasma Interleukin-5 Levels Are Related to Antibodies Binding to Oxidized Low-Density Lipoprotein and to Decreased Subclinical Atherosclerosis,Journal of the American College of Cardiology,米国,Elsevier Inc.,2008年10月21日,Vol.52, No.17,第1370−1378頁,URL,http://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0735109708026375
【文献】
BINDER,C.J. et al.,IL-5 links adaptive and natural immunity specific for epitopes of oxidized LDL and protects from atherosclerosis,The Journal of Clinical Investigation,米国,The American Society for Clinical Investigation,2004年 8月 1日,Vol.114, No.3,第427−437頁,URL,http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC484976/pdf/JCI0420479.pdf
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
ヒトのゲノムシークエンスが終了し、遺伝子について、バイオインフォマティクス(bioinformatics)の発展を促しながら、種を超えて保存されているアミノ酸配列(ドメイン)の探索、それを基にしたオーソログ遺伝子の分類など、核酸やアミノ酸配列を中心とした解析がなされている。しかし、未だにゲノム上の遺伝子の半数近くは、機能未知のままである。
ゲノム上に見出された、機能がまったく未知の遺伝子はもちろんのこと、実は、アノテーション(注釈付け)された遺伝子でさえ、生化学的な機能はまだわかっていない遺伝子が大半を占める。
そのため、ゲノムシークエンス後のポストゲノム時代において、膨大な予算を投入して見つかった2万5千種を超える遺伝子に関して、より有効な情報を得るためには、タンパク質の生化学的な機能を網羅的に解析する技術の発展が必須である(参照:非特許文献1)。
【0003】
上記のような網羅的に解析する技術の一つとして遺伝子発現プロファイルを使用する方法が知られている。遺伝子発現プロファイルを解析することで遺伝子機能を明らかにし、創薬、薬理学、毒性学、診断に供する知見を得るための研究がなされている。例えば、相関分析、主因子分析、分散分析などの統計解析、k平均クラスタリング、階層クラスタリング、最短近傍法、判別分析、ニューラルネットワーク、遺伝的アルゴリズムをDNAチップデータの解析に適用している(参照:特許文献1、5〜7)。
【0004】
一方、自己免疫疾患は、自分自身の構成成分である抗原(自己抗原)に対する免疫応答すなわち自己免疫によって発生する疾患を言う。
自己抗原が特定の臓器あるいは組織・細胞に限局して存在するような場合には、その臓器のみが障害されることとなり臓器特異的自己免疫疾患となる。代表的な例として、重症筋無力症、多発硬化症等が知られている。
一方、核物質など全身に普遍的な自己抗原に対する自己抗体の存在が知られており、血管炎など全身性の病変が生じているものは全身性自己免疫疾患となる。代表的な例として、全身性エリテマトーデス、慢性関節リウマチ、多発動脈炎症等が知られている。
【0005】
アテローム性動脈硬化症は、高血圧、糖尿病、脂質異常症といった生活習慣病の終末像であり、心筋梗塞、脳梗塞、末梢動脈疾患等を発症し、致命的又はADL(Activity of Daily Living)を大きく損なうことがある。
そのため、アテローム性動脈硬化症は、早期発見、発病予測が重要であるが、従来の画像診断では、初期段階のアテローム性動脈硬化を診断することができず、血清マーカー等も有用なものが存在しない状況である。
また、近年の研究成果から、アテローム性動脈硬化における炎症の一部に、自己免疫性機序が関わる可能性が示唆されていたが、実体は不明のままである。
【0006】
近年、上記述べた症状が、少なくとも部分的には自己免疫が関与していると考えられるようになってきたが、なお不明な点も多い。一方、臓器特異的自己免疫疾患では、自己抗体の病因的役割がはっきりしている場合が多い。これまでの研究から、臓器特異的自己免疫疾患は、抗原刺激を受けた Tリンパ球によって引き起こされるものと推定されるに至っている。自己抗体の産生機序については、さまざまな考えが出されている。第1は特定の自己抗体の産生に関わる遺伝子の関与説である。第2は、通常血中に微量にしか存在しない抗原がなんらかの原因で多量に放出されること、又は抗原がなんらかの原因で修飾されることによるとするものである。第3は、抗体産生に関与するリンパ球側に異常があり、寛容状態から逸脱してしまうことによるとするものである。
おそらく、これらが重複して自己抗体が産生されてくると考えられている(参照:特許文献2)。また、全身性自己免疫疾患における自己抗体の役割についてはいくつか報告されている。
【0007】
特表2009−503529号公報(特許文献3)は、「IL-1α自己抗体の検出を含む、アテローム性動脈硬化症および関連血管疾患の危険度を有する個体を検出する方法」を開示している。
しかし、自己免疫疾患に関与する因子がIL-1α自己抗体のみであると考えることはできない。さらに、本発明で特定した自己免疫疾患に関与する因子には、IL-1αが含まれていない。
【0008】
特表2008−501636号公報(特許文献4)は、「ホスホリルコリンに対する自己抗体、特にIgM自己抗体の有無は、アテローム性動脈硬化症を発症する危険の増減と関連していること」を開示している。
しかし、自己免疫疾患に関与する因子がホスホリルコリン自己抗体のみであると考えることはできない。さらに、本発明で特定した自己免疫疾患に関与する因子には、ホスホリルコリンが含まれていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上記述べた現状により、現段階においては、自己免疫疾患に関与する因子は、単独ではなく複数の因子、特に複数のタンパク質に対する自己抗体が発現していると考えられている。
従来の遺伝子発現プロファイル(参照:特許文献1、5〜7)では、自己免疫疾患患者由来の試料中の遺伝子発現量を、健常者由来の試料中の遺伝子発現量と比較することにより、原因タンパク質を特定していた。
しかし、各種の疾患患者の試料中の遺伝子発現量(転写産物)が、該遺伝子をコードするタンパク質の実際の発現量とは必ずしも一致しないことが多々報告されている。さらには、該プロファイルでは、自己抗体が発現しているかどうかを十分に特定することができない。
以上により、自己免疫疾患に関与する無数のタンパク質を高感度かつ高効率に検出する方法及び該検出方法から得られたデータの解析方法の構築が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、上記検出方法及び解析方法を構築するために、無細胞タンパク質合成系により発現させた哺乳動物由来のタンパク質を自己免疫疾患患者由来の試料と接触させることにより自己抗体産出を検出し、そして該検出したデータを統計的分析処理、さらに遺伝子オントロジー解析及び/又はパスウェイ解析を行うことにより、自己免疫疾患に関与するタンパク質を網羅的に解析する手段を提供した。
【発明の効果】
【0013】
本発明では、高感度かつ高効率で自己免疫疾患、特に動脈硬化に関与するタンパク質を解析する手段を提供した。さらに、該手段から得られた動脈硬化に関与するタンパク質に対する自己抗体の抗体価を検出することによる動脈硬化、特にアテローム性動脈硬化の検査方法を提供した。
【0014】
すなわち、本発明は以下の通りである。
「1.以下のいずれか1のタンパク質群に対する自己抗体の抗体価を患者由来の試料から検出することを特徴とする動脈硬化の検査方法。
(1)サイトカインに関与するタンパク質群、ここで、サイトカインに関与するタンパク質群は、以下のいずれか1以上である:
IL-5;STX1A;CSNK2A1;VAMP2;GSK3B;PRKCZ;PCNA;PIN1;STX4;HRB;HMGN1;HIST1H1C;TUBB;NPM1;VAMP8;VAPA;STX3;RABAC1、CCND2。
(2)アミノ酸輸送体に関与するタンパク質群、ここで、アミノ酸輸送体に関与するタンパク質群は、以下のいずれか1以上である:
SLC7A11;SLC36A4;SLC7A9、SLC1A3。
2.前記サイトカインに関与するタンパク質群は、以下のいずれか1以上である前項1の検査方法。
(1)IL-5
(2)STX1A
(3)CSNK2A1
(4)VAMP2
(5)GSK3B
(6)PRKCZ
(7)PCNA
(8)PIN1
(9)STX4
3.前記サイトカインに関与するタンパク質群は、以下のいずれか1以上である前項1の検査方法。
(1)HRB
(2)HMGN1
(3)HIST1H1C
(4)TUBB
(5)NPM1
(6)VAMP8
(7)VAPA
(8)STX3
(9)RABAC1
(10)CCND2
4.前記アミノ酸輸送体に関与するタンパク質群は、以下のいずれか1以上である前項1の検査方法。
(1)SLC7A11
(2)SLC36A4
(3)SLC7A9
(4)SLC1A3
5.前記動脈硬化が、アテローム性動脈硬化症である前項1〜4のいずれか1の検査方法。
6.前記検査方法は、発病リスクの検査、重症度の判定検査、又は治療効果の判定検査である前項5の検査方法。
7.動脈硬化検査を実施するための、少なくとも以下を含む検査キット:
IL-5;STX1A;CSNK2A1;VAMP2;GSK3B;PRKCZ;PCNA;PIN1;STX4;HRB;HMGN1;HIST1H1C;TUBB;NPM1;VAMP8;VAPA;STX3;RABAC1;CCND2;SLC7A11;SLC36A4;SLC7A9、及び/又はSLC1A3。
8.動脈硬化検査を実施するための、IL-5を含み、さらに少なくとも以下のいずれか1を含む検査キット。
(1)マイクロプレート
(2)標準液
(3)陽陰性コントロール
(4)反応用緩衝液
(5)酵素標識抗体
(6)洗浄用緩衝液
(7)酵素基質液
(8)反応停止液
9.以下の工程を有する自己免疫疾患に関与するタンパク質の解析方法:
(1)哺乳動物由来のタンパク質を、自己免疫疾患患者由来の試料と接触させて自己抗体の検出データ(データ1)を取得する工程;
(2)哺乳動物由来のタンパク質を、健常者由来の試料と接触させて自己抗体の検出データ(データ2)を取得する工程、及び/又は、哺乳動物由来のタンパク質を、自己免疫疾患の治療薬を投与されている自己免疫疾患患者由来の試料と接触させて自己抗体の検出データ(データ3)を取得する工程;
(3)上記データ1〜3のいずれか2以上を用いて統計学的分析を行い、示差的に発現している1以上の自己抗体の自己抗原タンパク質(哺乳動物由来のタンパク質)群のデータ(データ4)を取得する工程;
(4)上記データ4のタンパク質群に注釈付け(アノテーション)を行う工程、
(5)上記アノテーションに基づき上記タンパク質群の共通規則を抽出する工程。
10.さらに、前記共通規則に基づく拘束条件を用いてデータマイニングを行う工程を有することを特徴とする前項9の解析方法。
11.前記(5)の工程で抽出された共通規則を有するタンパク質を用いて上記(1)〜(5)の工程を複数回繰り返す工程を特徴とする前項9又は10の解析方法。
12.さらに、前記データ1〜3に含まれておらず、かつ前記共通規則を有する哺乳動物由来のタンパク質を使用して、上記(1)〜(3)の工程を行うことによりデータ5を取得する工程を有することを特徴とする前項9〜11のいずれか1の解析方法。
13.前記データ5を上記4データに組み合わせる工程を有することを特徴とする前項9〜12のいずれか1の解析方法。
14.前記哺乳動物由来のタンパク質を無細胞タンパク質合成系で発現させることを特徴とする前項9〜13のいずれか1の解析方法。
15.前記(1)及び/又は(2)の工程で、ALPHA(増幅発光近接ホモジニアスアッセイ)を使用してIgGと反応する哺乳動物由来のタンパク質を検出することを特徴とする前項9〜14のいずれか1の解析方法。
16.前記自己免疫疾患が、以下のいずれか1から選ばれる前項9〜15のいずれか1の解析方法、
全身性エリテマトーデス、円板状エリテマトーデス、多発性筋炎、強皮症、混合結合組織病、橋本甲状腺炎、原発性粘液水腫、甲状腺中毒症、悪性貧血、Good-pasture症候群、急性進行性糸球体腎炎、重症筋無力症、尋常性天疱瘡、水疱性類天疱瘡、インスリン抵抗性糖尿病、若年性糖尿病、アジソン病、萎縮性胃炎、男性不妊症、早発性更年期、水晶体原性ぶどう膜炎、交換性脈炎、多発性硬化症、動脈硬化症、アテローム性動脈硬化症、潰瘍性大腸炎、原発性胆汁性肝硬変、慢性活動性肝炎、自己免疫性溶血性貧血、発作性血色素尿症、突発性血小板減少性紫斑病、及びシェーグレン症候群。
17.前記自己免疫疾患が、動脈硬化症である前項9〜16のいずれか1の解析方法。
18.前記(4)の工程は、遺伝子オントロジー解析であることを特徴とする前項9〜17のいずれか1の解析方法。
19.前記遺伝子オントロジー解析の1つ以上が、分子機能、細胞内局在及び生物学的過程から選択される前項18の解析方法。
20.前記遺伝子オントロジー解析の共通規則が、分子機能の分類であることを特徴とする前項19の解析方法。
21.前記(1)〜(5)の工程を繰り返すことにより、前記分子機能の分類を下階層に絞りこむことを特徴とする前項20の解析方法。
22.前記自己免疫疾患が動脈硬化症であり、前記共通規則がアミノ酸輸送体であることを特徴とする前項18〜21のいずれか1の解析方法。
23.前記(4)の工程は、パスウェイ解析であることを特徴とする前項9〜17のいずれか1の解析方法。
24.前記自己免疫疾患が動脈硬化症であり、前記共通規則がサイトカインであることを特徴とする前項23の解析方法。」
【発明を実施するための形態】
【0016】
(自己免疫疾患に関与するタンパク質の解析方法)
本発明の自己免疫疾患に関与するタンパク質の解析方法は、主に以下の特徴を有する。
(1)哺乳動物由来のタンパク質を、自己免疫疾患患者由来の試料と接触させて自己抗体の検出データ(データ1)を取得する。
これにより、自己免疫疾患患者由来の試料中の自己抗体と反応した哺乳動物由来のタンパク質(自己抗原タンパク質)を特定することができる。
なお、「自己抗体」とは、一般的にはIgG分子であり、特に、IgG4分子であるが、IgM、IgE、IgA、またはIgD分子でもよい。
(2)哺乳動物由来のタンパク質を、健常者由来の試料と接触させて自己抗体の検出データ(データ2)を取得する、及び/又は、哺乳動物由来のタンパク質を、自己免疫疾患治療薬を投与されている自己免疫疾患患者由来の試料と接触させて自己抗体の検出データ(データ3)を取得する。
これにより、健常者由来の試料中及び/又は自己免疫疾患治療薬を投与されている自己免疫疾患患者由来の試料中の自己抗体と反応した哺乳動物由来のタンパク質(自己抗原タンパク質)を特定することができる。
(3)上記データ1〜3のいずれか2以上を用いて統計学的分析を行い、示差的に発現している1以上の自己抗体に対する自己抗原タンパク質(哺乳動物由来のタンパク質)群のデータ(データ4)を取得する。
これにより、健常者、自己免疫疾患患者、自己免疫疾患治療薬を投与されている自己免疫疾患患者によって、どのような自己抗体が特異的に産出、増加、減少又は消失されているかを特定することができる。
(4)上記データ4のタンパク質群に注釈付け(アノテーション)を行う。
これにより、自己抗原タンパク質(哺乳動物由来のタンパク質)の遺伝子機能情報、疾患関連情報、塩基配列情報、公共データベース情報、他種遺伝子間のホモログ情報、遺伝子ネットワーク情報、パスウェイ情報等が付与される。
(5)前記アノテーションに基づき前記タンパク質群の共通規則を抽出する。
これにより、各種の自己抗原タンパク質の共通規則が特定される。
なお、「共通規則」とは、各タンパク質が、発病時期、分子機能、細胞内構成、生物学的プロセス等の共通の性質を共有することを意味する。
【0017】
(自己免疫疾患)
本発明の自己免疫疾患は、以下のいずれか1から選択される。特に、好ましい自己免疫疾患は、動脈硬化であり、より好ましくはアテローム性動脈硬化である。
全身性エリテマトーデス、円板状エリテマトーデス、多発性筋炎、強皮症、混合結合組織病、橋本甲状腺炎、原発性粘液水腫、甲状腺中毒症、悪性貧血、Good-pasture症候群、急性進行性糸球体腎炎、重症筋無力症、尋常性天疱瘡、水疱性類天疱瘡、インスリン抵抗性糖尿病、若年性糖尿病、アジソン病、萎縮性胃炎、男性不妊症、早発性更年期、水晶体原性ぶどう膜炎、交換性脈炎、多発性硬化症、動脈硬化、アテローム性動脈硬化、潰瘍性大腸炎、原発性胆汁性肝硬変、慢性活動性肝炎、自己免疫性溶血性貧血、発作性血色素尿症、突発性血小板減少性紫斑病、およびシェーグレン症候群。
【0018】
(試料)
本発明の試料は、各状態(重篤、軽症、自己免疫疾患治療薬を投与されている状態)の自己免疫疾患患者及び健常者由来の生物学的材料を意味する。例えば、採取した血液、血液由来成分(血清、血漿)、尿、糞便、唾液、汗に含まれる産物を対象とする。特に、好ましい試料は、血清である。
【0019】
(哺乳動物由来のタンパク質)
本発明の哺乳動物由来のタンパク質は、哺乳動物の体内、特に血液で発現しているタンパク質を意味する。
さらに、本発明の哺乳動物は、ヒトを含む霊長類(例えば、ゴリラ、チンパンジー、ヒヒ、リスザル)、コンパニオンアニマル(例えば、ネコ、ウサギ、イヌ、ウマ)、家畜(例えば、ウシ、ヒツジ、ブタ、ヤギ、ウマ)、および実験動物(例えば、ネコ、イヌ、モルモット、ウサギ、ヒツジ、ヤギ、ブタ、チンパンジー、およびヒヒ)を含む。
【0020】
(接触)
本発明の各工程における「接触」とは、A溶液をB溶液に添加する、又はB溶液をA溶液に添加する、の両方を意味する。
例えば、哺乳動物由来のタンパク質を自己免疫疾患患者由来の試料と接触させる場合には、哺乳動物由来のタンパク質を含む溶液を試料に添加しても、又は、試料を哺乳動物由来のタンパク質を含む溶液に添加してもよい。
【0021】
(データマイニング)
本発明のデータマイニングとは、データから、興味ある規則性や因果関係をプログラム等を使用して自動的に抽出する技術のことである。なお、本発明で使用するデータマイニングは、統計的手法又は非統計的手法の両方を含む。
統計的手法の例として、主成分分析、重回帰分析、因子分析、判別分析、X二乗検定、Fisherの正確検定、Wilcoxonの検定、F-検定、多重検定、Welchのt-検定等が挙げられる。
非統計的手法の例として、クラスター解析、ニューラルネットワーク、自己組織化マップ、遺伝的アルゴリズム、決定木、k−最近傍法、パターン認識等が挙げられる。
加えて、以上述べた手法を併用することもできる。
【0022】
(正規化及びフィルタリング)
本発明の工程では、好ましくは、正規化及び/又はフィルタリングを導入する。
実験を行った時間、場所、作業者が異なることから実験のバックグランドや、ノイズの程度が異なるので、その実験ごとのバックグランドやノイズの程度を揃えるために正規化を行う。本発明の工程で、プロテインチップを使用した場合には、チップごとに画像輝度(蛍光強度)が異なることがある。よって、バックグランド輝度を考慮する必要がある。
また、フィルタリングでは、適切なデータを選択し、解析に悪影響を与える誤り値を除く操作のことである。例えば、しきい値を定める方法がある。具体的には、信号強度(蛍光強度)が低い場合、しきい値をXとし、X以下の信号強度をXにするかもしくはゼロにする。
また、クロスバリデーションも導入してもよい。
【0023】
(遺伝子オントロジー解析)
遺伝子の機能を調べるには、解析対象の遺伝子群を、遺伝子の機能に基づいて、分類し、視覚化する必要がある。遺伝子の機能を表示する方式として、よく使われているものに、遺伝子オントロジー解析がある。遺伝子オントロジーは、遺伝子の機能に関する統一的な枠組みを制定する必要性から立ち上げられたGene Ontologyコンソーシアム(http://www.geneontology.org/)と呼ばれるプロジェクトによって、提案されたものである。Gene Ontologyによると、遺伝子の機能を3つの情報として体系化している。即ち、分子機能(Molecular Function)、細胞内局在(Cellular component)、生物学的過程(Biological process)である。
【0024】
遺伝子オントロジー解析から得られた結果の例を
図1及び
図2で説明する。
GOIDは、生物学的過程、細胞内局在、及び分子機能の3つの情報に関するデータベースの識別符号である。
図1のオントロジー右端括弧中の数字は登録遺伝子数を示す。32056個の遺伝子が輸送体機能(transport)を有する遺伝子として現在登録されており、アミノ酸輸送体(amino acid tramsport)には1272個の遺伝子が登録されている。
さらに、
図2では、アミノ酸輸送体の下階層{酸性アミノ酸輸送体(95個)、アミノ酸膜貫通輸送体(8個)等}が登録されている。
遺伝子オントロジーでは汎用的な大分類から詳細な小分類へと階層構造を形成している。
【0025】
(遺伝子オントロジー解析を用いて共通規則を抽出する工程)
下記実施例6の遺伝子オントロジー解析結果の
図3を使用して説明する。
図3に記載の4つのタンパク質は、遺伝子オントロジー解析によって得られた結果である。
図3の遺伝子群は、あるクラス分類において重要であることが、上記(3)の工程の統計学的分析(データマイニング)により分かったタンパク質群であるとする。この
図3の遺伝子群から共通した性質や特徴を抽出することが、遺伝子アノテーションから共通規則を抽出する工程の目的である。例えば、
図3の遺伝子オントロジーに対して、複数の遺伝子において共通に見られるオントロジーがないかを検索する。
図3では、「amino acid transporter(アミノ酸輸送体)」又はその下階層が共通して見られる。これにより、一回目の上記(1)〜(5)の工程により、自己免疫疾患に関与するタンパク質群はアミノ酸輸送体のクラス分類に関わっているという規則が潜んでいる可能性を見出すことができる。
なお、実験者の主観を排除するために、クラス分類されたタンパク質群のTermの中で一番頻出頻度が高いものを共通規則として抽出してもよい。
【0026】
上記工程(1)〜(5)の工程の終了後において、抽出した共通規則の基づく拘束条件を用いてデータマイニングを行う工程を追加してもよい。
データマイニングでは、例えば、得られたデータ1〜3に対し、amino acid transporter(GO:0006865)に対応するデータ(タンパク質)という拘束条件を設けて、それに該当するタンパク質群のみでデータマイニング、さらにはクロスバリデーションすることで、amino acid transporterがどの程度、クラス分類に寄与するかを定量的に把握することができる。
また、amino acid transporter(GO:0006865)の上階層は、amino transport(GO:0015837)である。そこで別のデータマイニングでは、得られたデータ1〜3に対し、amino transport(GO:0015837)に対応するデータ(タンパク質)という拘束条件を設けて、それに該当するタンパク質群のみでデータマイニング、さらにはクロスバリデーションすることで、amino transporterがどの程度、クラス分類に寄与するかを定量的に把握することができる。
加えて、amino acid transporter(GO:0006865)の下階層は、acidic amino acid transport(GO:0015800)である。そこで別のデータマイニングでは、得られたデータ1〜3に対し、acidic amino acid transport(GO:0015800)に対応するデータ(タンパク質)という拘束条件を設けて、それに該当するタンパク質群のみでデータマイニング、さらにはクロスバリデーションすることで、acid amino acid transporterがどの程度、クラス分類に寄与するかを定量的に把握することができる。
仮に、"acidic amino acid transportを含む"を拘束条件としてデータマイニングを行った結果(正解率もしくはエラー率)を、"amino transport"を含む拘束条件としデータマイニングを行った結果及び"amino acid transport"を含む拘束条件としデータマイニングを行った結果と比較した場合に、"acidic amino acid transportを含む"を拘束条件としてデータマイニングを行った結果が他2者より良ければクラス分類には、" amino acid transporter "及び" amino transporter "ではなく、" acidic amino acid transport "が重要であることが分かる。これにより、自己免疫疾患に関与するタンパク質の分子機能を上階層から下階層に絞りこむことができる。
【0027】
すなわち、上記のような工程を複数繰り返すことにより、より一般性の高い共通規則を抽出することができる。
加えて、データ1〜3には含まれておらず、かつ共通規則の特性を有するタンパク質を、上記(1)〜(3)の工程を実施することにより、追加のデータであるデータ5を取得することができる。さらに、データ5をデータ4に組み合わせることにより、精度の高く、より一般性の高い共通規則を抽出することができる。
【0028】
パスウェイ解析を本実施例から得られた
図4で説明する。
図4では、各丸印は遺伝子を、丸印同士をつなぐ線は、相互関係があることを示している。なお、
図4では、相互関係スコアを省略している。相互関係スコアとは、一般に、線でつながれた二つの遺伝子が医学文献データベースMEDLINEの同一アブストラクト文中に存在した件数を示している。
また、1つのハブタンパク質として、9種類のタンパク質(IL-5、STX1A、CSNK2A1、VAMP2、GSK3B、PRKCZ、PCNA、PIN1、STX4)を特定できる。さらに、別のハブタンパク質として、10種類のタンパク質(HRB、HMGN1、HIST1H1C、TUBB、NPM1、VAMP8、VAPA、STX3、RABAC1、CCND2)を特定することができる。
文献データベースとしては、一般に、米国NCBIのMEDLINEやOMIMを用いているが、その他の文献データベースでもかまわない。
【0029】
(パスウェイ解析を用いて共通規則を抽出する工程)
パスウェイ解析により、自己免疫疾患に関与するタンパク質の共通規則を抽出する工程を説明する。また、パスウェイ解析ソフトウェアとしては、公知のソフトウェア{例:Pathway Assist ver3.0(Ariadne Genomics)}を用いることができる。
上記説明したように示差的に発現している1以上のタンパク質(自己抗原タンパク質)群のデータ4を含む発現タンパク質リストを作成する。
そして、作成した発現タンパク質リストをパスウェイ解析ソフトウェアにインポートする。なお、下記実施例においては、公知のパスウェイ解析ソフトウェアを用いてパスウェイ解析を行なっているため、添付されている説明書のプロトコールに従った。
次に、発現タンパク質リスト内でのパスウェイを計算する。即ち、生物医学文献情報を記憶している公共のデータベースであるMEDLINEデータベースにおいて検索可能な論文の要約中から、パスウェイ解析ソフトウェアの処理アルゴリズム(Natural Language Processing Engine)で関連付けられている分子間のつながりが検索される。
そして、分子間のつながりが抽出された場合には、分子間のつながりを示すパスウェイが計算される。
【0030】
MEDLINEデータベースにおいて検索可能な論文の要約中から、パスウェイ解析ソフトウェアのアルゴリズムで関連づけられている分子間のつながりが抽出されると、パスウェイ描画画面でノードが表示される。
【0031】
次に、ハブタンパク質群(
図4中:IL-5、STX1A、CSNK2A1、VAMP2、GSK3B、PRKCZ、PCNA、PIN1、STX4)の共通規則を抽出する。例えば、本実施例では、各タンパク質群の一部が統計的に有意にサイトカイン(ヒトサイトカイン)に関連するタンパク質(共通規則)であることが抽出することができる。なお、共通規則を抽出するために、前記説明した遺伝子オントロジー解析を利用することができる。
【0032】
また、パスウェイ解析により特定されたタンパク質群と自己免疫疾患との相関について、上記データ1〜3のデータでの該タンパク質群の発現レベルとの相関を確認することにより、パスウェイ解析により特定されたタンパク質群と自己免疫疾患の相関を検証できる。
従って、複数の検証を行うことにより、特定されたタンパク質群と自己免疫疾患の相関を有する可能性が高いものであるとの予測をより確実なものとすることができる。
加えて、段落「0026」及び「0027」に記載のように、データマイニング等の工程を追加してもよい。
【0033】
(無細胞タンパク質合成系)
本発明で使用する哺乳動物由来のタンパク質は、好ましくは、無細胞タンパク質合成系、より好ましくは真核生物由来のコムギ胚芽等を用いた無細胞タンパク質合成用抽出液を使用して発現させる。
市販のタンパク質合成用抽出液としては、ウサギ網状赤血球由来のRabbit Reticulocyte Lysate System(Promega社)やコムギ胚芽由来のWheat Germ Expression Premium Kit(WEPRO
登録商標、株式会社セルフリーサイエンス)等が挙げられる。
本発明に適用される最良の抽出液は、コムギ胚芽由来の抽出液であり、さらに混入する胚乳成分や胚芽組織細胞中のタンパク質合成阻害をもたらすグルコースなどの代謝物質が実質的に除去された抽出液である。なお、胚乳成分が実質的に除去された抽出液とは、リボソームの脱アデニン化率が7%以下、好ましくは1%以下になっていること意味する。さらに、好適には、細胞抽出液は、糖、リン酸化糖が10mM以下、好ましくは6mM以下まで低減されている(260nmにおける吸光度200OD/mlの抽出液中のグルコース濃度として)。このような抽出液の調製方法は、WO2005/063979 A1号公報に例示される。
【0034】
なお、本発明の特徴の一つとして、コムギ胚芽無細胞タンパク質合成系で哺乳動物由来のタンパク質を発現させることにより、下記実施例3に示すように、合成後のビオチン化哺乳動物由来のタンパク質を洗浄する必要がないことが挙げられる。すなわち、ビオチン化配列と結合しなかったビオチンを除去する必要がない。
これにより、本発明の解析方法では、多量の哺乳動物由来のタンパク質に対する自己抗体の抗体価を効率的に測定することができる。
【0035】
(自己抗体の検出データの取得)
本発明の「自己抗体の検出データの取得」とは、自己免疫疾患患者に特異的に発現している自己抗体を検出することを意味し、より詳しくは該自己抗体の抗体価を測定することである。なお、抗体価を検出する方法は自体公知の方法を利用することができる。
本発明では検出した1以上の自己抗体の抗体価の数値をエクセルファイル(Microsoft社製)等に書き込むことにより、データとして取得することができる。
【0036】
(自己抗体の抗体価の検出系)
本発明では、自己抗体の抗体価の検出方法は特に限定されない。しかし、洗浄工程を省略できるホモジニアスアッセイ、特にALPHAを検出系として使用することが好ましい。
本発明では、好ましくはALPHAを使用することで、大量に発現したタンパク質を効率的かつ高精度に検出することができる。
【0037】
{ALPHA(増幅発光近接ホモジニアスアッセイ)}
ALPHA は、PerkinElmer社のAlphaScreen
TMが代表的なアッセイ法である。
その方法は、近接させられたドナービーズとアクセプタービースとの間に一重項酸素の移動に基づく分析方法である。これは、680nmでの励起において、ドナービース中の光増感剤は、周囲の酸素を一重項状態の酸素に変換し、その酸素が200nmの距離まで拡散する。アクセプタービーズ中の化学発光基は、エネルギーをビーズ内の蛍光アクセプターに移動させ、続いて約600nmで光を放出する。なお、アクセプタービーズは、ガラス、シリカゲル、樹脂のような不活性担体であって、上記生体分子を固定化しておくための担体である。ドナービースは、ガラス、シリカゲル、樹脂のような不活性担体であって、ストレプトアビジンを固定化しておくための担体である。
【0038】
(ALPHAを使用したin vitroでの自己抗体価の検出)
ビオチン化した哺乳動物由来のタンパク質(ビオチン化哺乳動物由来タンパク質と称する場合がある)、該ビオチン化基質を直接的又は間接的に認識可能なアクセプタービーズ{Anti-IgG(protein G) Acceptor Beads}、ストレプトアビジンが結合したドナービース、自己免疫疾患患者由来の試料(血清)及び/又は健常者由来の試料をマイクロプレートに添加する。
ここで、ビオチン化哺乳動物由来タンパク質に対する自己抗体が発現していれば、該自己抗体が該ビオチン化哺乳動物由来タンパク質を抗原として認識(結合)することにより、ドナービースとアクセプタービーズが近接してシグナルの上昇が起こる。
一方、ビオチン化哺乳動物由来タンパク質に対する自己抗体が発現していなければ、該自己抗体が該ビオチン化哺乳動物由来タンパク質を抗原として認識(結合)しないので、ドナービースとアクセプタービーズが近接できずシグナルの上昇が起こらない。
なお、シグナルの検出方法は、例えばアクセプタービーズが発する蛍光強度を使って測定する。
【0039】
(イムノアッセイを使用した自己抗体価の検出)
本発明では、自己抗体の抗体価の検出は、哺乳動物由来タンパク質又はその断片を、自己免疫疾患、特に動脈硬化症由来の試料(特に血清)に接触させることによって行うことができる。哺乳動物由来タンパク質又はその断片に結合する自己抗体は、自体公知のイムノアッセイにより検出することができる。具体的な方法は、以下の通りであるが、特に限定されない。
【0040】
(非競合的イムノアッセイ)
哺乳動物由来タンパク質又はその断片に結合する自己抗体を、抗ヒト・イムノグロブリン抗体によって検出する。このとき、哺乳動物由来タンパク質若しくはその断片、又は、抗ヒト・イムノグロブリン抗体を予め固相化しておくと、未反応成分の除去(一般にB/F分離と呼ばれる)を洗浄によって容易に行うことができる。
例えば、固相化哺乳動物由来タンパク質又はその断片を患者血清に接触後、血清を除去してから抗ヒト・イムノグロブリン抗体を加える。抗ヒト・イムノグロブリン抗体を標識しておけば、自己抗体に比例して固相に結合する標識が増加する。この抗ヒト・イムノグロブリン抗体は、第2抗体と呼ばれる抗体に相当する。抗ヒト・イムノグロブリン抗体として、抗体のクラスを識別しうる抗体を利用すれば、自己抗体をクラス別に検出することもできる。哺乳動物由来タンパク質若しくはその断片、試料(例:血清)、および抗ヒト・イムノグロブリン抗体とは、同時に反応させることもできる。
【0041】
非競合的なイムノアッセイとして、粒子凝集反応やイムノクロマトグラフィーを利用することもできる。粒子凝集反応は、哺乳動物由来タンパク質若しくはその断片感作粒子が自己抗体によって凝集する現象に基づく検出方法である。
一方、イムノクロマトグラフィーでは、先に述べた固相化哺乳動物由来タンパク質若しくはその断片がクロマトグラフ媒体中に存在し、これに対して試料中の自己抗体、そして標識した抗ヒト・イムノグロブリン抗体を反応させ、更に未反応成分の分離がクロマトグラフ媒体中で反応と並行して行われるように設計されている。
【0042】
(競合的イムノアッセイ)
哺乳動物由来タンパク質若しくはその断片と抗哺乳動物由来タンパク質若しくはその断片抗体との免疫学的な反応を、自己抗体が阻害する現象を利用して、自己抗体の検出が可能である。この場合にも、未反応成分の除去は、固相を利用して簡便に行うことができる。すなわち、抗哺乳動物由来タンパク質若しくはその断片抗体と血液試料の存在下で哺乳動物由来タンパク質若しくはその断片と接触させるとき、抗哺乳動物由来タンパク質若しくはその断片抗体と哺乳動物由来タンパク質若しくはその断片のいずれかを固相化し、他方を標識して用いる。加えて、B/F分離の後に固相に結合した標識量に基づいて自己抗体の検出が可能である。競合的なイムノアッセイを行う場合、反応成分として用いる抗哺乳動物由来タンパク質若しくはその断片抗体は、自己抗体と競合するものであればポリクローナル抗体でもモノクローナル抗体であっても良い。
【0043】
(抑制的イムノアッセイ)
哺乳動物由来タンパク質若しくはその断片と試料とを接触させた後に、抗哺乳動物由来タンパク質若しくはその断片抗体との反応を行う。哺乳動物由来タンパク質若しくはその断片に対する自己抗体を含まない場合には哺乳動物由来タンパク質若しくはその断片と抗哺乳動物由来タンパク質若しくはその断片抗体との反応が阻害されないが、試料中に哺乳動物由来タンパク質若しくはその断片に対する自己抗体が存在すれば阻害をもたらす。
具体的には、まず固相化哺乳動物由来タンパク質若しくはその断片を試料に加え、十分に反応させた後に、さらに抗哺乳動物由来タンパク質若しくはその断片抗体を加える。抗哺乳動物由来タンパク質若しくはその断片抗体を標識しておけば、固相に結合した(またはしなかった)標識量を測定することによって自己抗体の存在を確認することができる。あるいは、標識した哺乳動物由来タンパク質若しくはその断片と試料を接触させ、これを固相化した抗哺乳動物由来タンパク質若しくはその断片抗体と接触させることも可能である。特にイムノクロマトグラフィーに応用する場合には利点がある方法である。
【0044】
イムノアッセイに用いる標識には、蛍光物質、発光物質、色素、酵素、補酵素、又はラジオアイソトープ等が知られている。中でも、アルカリホスファターゼやパーオキシダーゼのような酵素標識は、安全性や経済性に優れ、しかも必要な感度を比較的容易に達成できることから、有利な標識成分である。
抗ヒト・イムノグロブリン抗体や哺乳動物由来タンパク質若しくはその断片のような反応成分は、これらの標識成分によって直接標識することもできるし、あるいは更にこれらの成分を認識する抗体やアビジン−ビオチン系などを利用して間接標識することもできる。各種の抗体を固相に結合させるには、マイクロプレート、プラスチックビーズ、あるいは合成樹脂微粒子のような固相担体を用い、物理吸着や化学的な結合、あるいはアビジン−ビオチンを用いた間接的な結合方法が一般に利用される。これらの免疫成分を固相化した担体は、ウシ血清アルブミンやスキムミルクなどの不活性タンパク質で処理することによって、非特異的な反応を抑制することができる。なお、固相と酵素標識を組み合わせたとき、このイムノアッセイは特にELISAと呼ばれる。
【0045】
上記以外での自己抗体価の検出の例示として、間接蛍光抗体法、免疫比濁法、免疫比ろう法、二重免疫拡散法(DID法)、ラテックス凝集法、化学発光法(化学発光酵素免疫測定法等)等が挙げられるが特に限定されていない。
【0046】
(検査方法)
本発明の自己免疫疾患、特に動脈硬化症の検査において、以下のタンパク質群のいずれか1以上の抗体を患者由来の試料、特に血清から検出する。
なお、本発明の検査とは、発症リスク検査、重症度の判定検査、治療効果の判定検査を含む。
(1)サイトカインに関与するタンパク質群
(2)アミノ酸輸送体に関与するタンパク質群
サイトカインに関与するタンパク質群としては、好ましくは、IL-5(interleukin-5)、STX1A(syntaxin 1A)、CSNK2A1(casein kinase 2, alpha 1 polypeptide)、VAMP2{vesicle-associated membrane protein 2 (synaptobrevin 2)}、GSK3B(glycogen synthase kinase 3 beta)、PRKCZ (protein kinase C, zeta)、PCNA(proliferating cell nuclear antigen)、STX4(syntaxin 4)若しくはPIN1(peptidylprolyl cis/trans isomerase, NIMA-interacting 1)、及び/又はHRB(HIV-1 Rev binding protein)、HMGN1(high-mobility group nucleosome binding domain 1)、HIST1H1C(histone cluster 1, H1c)、TUBB(tubulin, beta)、NPM1{nucleophosmin (nucleolar phosphoprotein B23, numatrin)}、VAMP8(vesicle-associated membrane protein 8)、VAPA{VAMP (vesicle-associated membrane protein)-associated protein A}、STX3(SYNTAXIN 3)、CCND2(cyclin D2)若しくはRABAC1(Rab acceptor 1)であるが特に限定されない。
アミノ酸輸送体に関与するタンパク質群としては、好ましくは、SLC7A11{solute carrier family 7, (cationic amino acid transporter, y+ system) member 11}、SLC36A4{solute carrier family 36 (proton/amino acid symporter), member 4}、SLC7A9{solute carrier family 7 (cationic amino acid transporter, y+ system), member 9}又はSLC1A3{solute carrier family 1 (glial high affinity glutamate transporter), member 3}であるが特に限定されない。
加えて、下記実施例9〜11の結果により、上記タンパク質群の中でも、IL-5が好ましい。さらに、IL-5はfull lengthである完全長だけでなく、部分配列{例、IL-5(20-135: : IL-5の20位から135位を意味する。以下同じ)、IL-5(64-135:IL-5の64位から135位を意味する。以下同じ)}、特に分泌型IL-5{ IL-5(20-135) }も含む。
【0047】
(検査キット)
本発明の自己免疫疾患、特に動脈硬化症の検査キットは、上記述べた各ELISA、化学発光法、イムノクロマト法等を実施するためのキットでありうる。
特に、ELISAキットでは、IL-5、STX1A、CSNK2A1、VAMP2、GSK3B、PRKCZ、PCNA、PIN1、STX4、HRB、HMGN1、HIST1H1C、TUBB、NPM1、VAMP8、VAPA、STX3、RABAC1、CCND2、RABAC1、SLC7A11、SLC36A4、SLC7A9、及び/又はSLC1A3を含み、さらに以下のいずれか1の構成を含む。
(1)マイクロプレート
(2)標準液
(3)陽陰性コントロール
(4)反応用緩衝液
(5)酵素標識抗体
(6)洗浄用緩衝液
(7)酵素基質液
(8)反応停止液
【0048】
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例により限定されるものではない。
【実施例1】
【0049】
(自己免疫疾患患者由来の試料の調製)
本実施例では、アテローム性動脈硬化症の患者(23名)から得た血清を試料とした。さらに、該試料を、軽度の患者(mild)、重症患者(Serious)、軽度かつ陳旧性患者(mild Old)及び重症かつ陳旧性患者(mild Old)に分けて解析した。
なお、健常者由来の血清をコントロールとした。
【実施例2】
【0050】
(ビオチン化哺乳動物由来タンパク質をコードする翻訳鋳型の作成)
翻訳鋳型となるmRNAは、各種哺乳動物由来タンパク質(約3千種類)をコードする遺伝子にビオチンタグを融合したビオチン化タンパク質転写鋳型であるベクターを作成した(pEU-ビオチン化タグ-各種哺乳動物由来タンパク質)。該ベクターを基に、タバコモザイクウィルス(TMV)のΩ配列部分を含むPCR産物を鋳型とした。該転写鋳型を、転写反応溶液〔最終濃度、80mM HEPES−KOH pH7.8、16mM 酢酸マグネシウム、10mM ジチオトレイトール、2mM スペルミジン、2.5mM 4NTPs(4種類のヌクレオチド三リン酸)、0.8U/μLRNase阻害剤、1.6U/μL SP6 RNAポリメラーゼ〕に添加し、37℃で3時間反応させた。得られたRNAをフェノール/クロロフォルム抽出、エタノール沈殿の後、Nick Column(Amersham Pharmacia Biotech社製)により精製して翻訳鋳型とした。
【実施例3】
【0051】
(ビオチン化哺乳動物由来タンパク質の翻訳反応工程)
96穴タイタープレートを反応容器として用いた。
先ず、125.0μLの供給相(2×Substrate Mixture 62.5μ1、50μMのビオチン1.25μ1、MilliQ 61.25μ1)をタイタープレートに添加した。次に、25.0μ1の反応相(4μg/μLのcreatine kinase 0.25μ1、無細胞タンパク質合成用コムギ胚芽Extract(200 O.D.)6.5μ1、ビオチン化酵素(180 O.D.)1.0μ1、2×Substrate Mixture 8.75μ1、5μMのビオチン2.5μ1、MilliQ 3.5μ1)に、上記実施例2の各翻訳鋳型{ペレット状の翻訳鋳型(mRNA)を25μLの反応液で溶かした}を添加したものを、注意深く静かにタイタープレートの底に添加した。タンパク質合成反応は、26度、15〜20時間の静置で行った。
合成終了のビオチン化タンパク質は精製せずに、以下の実施例に用いた。
【実施例4】
【0052】
(Alpha Screen
TMを用いた自己抗体の抗体価の測定)
384穴タイタープレート(Optiplate-384TPP)を反応容器として用いた。
8.0μLのMixture A{6.0μLのMillQ, 1.0μLの10×AlphaScreen Buffer(1M Tris-HCl, pH8.0/0.1% Tween20), 1.0μLの10mG/mL BSA}、10μLの血清{(+):2.5×10-3希釈}及び5.0μLの上記実施例3の各種のビオチン化哺乳動物由来タンパク質(5倍希釈、Biomek FXを使用)を、それぞれの穴に添加して、26℃、30分間静置した。
上記静置後、10μLのMixture B(7.88μLのMillQ, 1.0μLの10×AlphaScreen Buffer(1M Tris-HCl, pH8.0/0.1% Tween20), 1.0μLの10mG/mL BSA, 0.06μLの{5mG/mL StreptAvidin Donor Beads, 0.06μLの5mG/mL Anti-IgG (protein G) Acceptor Beads}を、さらにそれぞれの穴に添加して、26℃、60分間静置した。
上記静置後、EnVisionを用いて蛍光強度(自己抗体価)を測定した。
【0053】
上記測定における一部の自己抗体の結果を
図5に示す。
上記結果から、哺乳動物由来タンパク質の相違により自己抗体の検出結果が異なることがわかった。
さらに、抗体価の高い自己抗原タンパク質に関するデータを取得した。
【実施例5】
【0054】
(自己免疫疾患に特異的に発現している自己抗原タンパク質の解析)
上記実施例4から得られた各患者{軽度の患者(mild)、重症患者(Serious)、軽度かつ陳旧性患者(mild Old)及び重症かつ陳旧性患者(mild Old)}由来の試料における蛍光強度(自己抗体価)のデータを、コントロールである健常者由来の試料における蛍光強度(自己抗体価)のデータを比較して、示差的に発現している自己抗体(特に、発現が上昇している自己抗体)の自己抗原タンパク質群のデータを取得した。
より詳しくは、各々のデータを自然対数変換したのち、平均・標準偏差を使ってスコア化(平均値を0として、+1SDのものを1, +2SDのものを2とする)した。さらに、スコアの上位のものから382種類のタンパク質を選択した。
【0055】
(2)クラスター分析(統計ソフトR(http://www.r-project/org)のheatmap2を用いて、Correlation heatmapを作成した)を用いて、上記382種類のタンパク質群を相互に関連性の高いタンパク質群である4つの群に分けた。
なお、cluster 1〜4は、それぞれ、126個(参照:
図6、7)、62個(参照:
図6、7)、129個(参照:
図6、7)及び65個(参照:
図6、7)を示すグループであった。
【0056】
上記解析結果の一部のデータを
図8に示す。なお、Ha1、Ha2、Ha3及びHa4は、それぞれ、軽度の患者(mild)、重症患者(Serious)、軽度かつ陳旧性患者(mild Old)及び重症かつ陳旧性患者(mild Old)を示す。
図8の結果から明らかなように、各疾患の状態により、自己抗体の抗体価が異なることがわかった。
【0057】
また、各患者におけるそれぞれのクラスターでのAverage profileを
図9に示す。
図9の結果から明らかなように、各疾患の状態及び各クラスターにより自己抗体の抗体価が異なることがわかる。
特に、cluster1に属するタンパク質に対する自己抗体の抗体価が非常に高いことがわかった。
【0058】
図8及び
図9に記載の解析結果から明らかなように、自己免疫疾患、特に動脈硬化症の患者では、病状の進行、年齢等により、血清中に発現している自己抗体の量及び種類が異なることがわかった。
これにより、血清中の自己抗体に対する自己抗原タンパク質を検出することにより、自己免疫疾患、特に動脈硬化症の発病リスク、重症度、治療効果の判定を行うことができる。
【実施例6】
【0059】
(遺伝子オントロジー解析による自己免疫疾患に関与するタンパク質の解析)
上記実施例5で取得した自己免疫疾患、特にアテローム性動脈硬化で示差的に発現しているタンパク質群の各クラスター別のデータを、公共のデータベース(http://www.geneontology.org/)にインポートした。
【0060】
上記インポートした一部の結果を
図10に示す。
図10に示すように、各クラスター別では、Termが異なることがわかる。なお、
図10の計算値(Pvalue)は、複数のシグナル値のグループを比較し検定を行った計算結果である。Termは遺伝子の機能を示す。
また、各クラスターで頻出Termに関し、cluster1はアミノ酸輸送体(Amino acid transporter)、cluster2は炎症反応(Inflammation)、糖質代謝(Carbohydrate matabolism)及びステロイド代謝(Steroid metabolism)、cluster3は翻訳(Translation)、転写(Transcription)及び組換え(recombination)、並びにcluster4はRNA異化(RNA catabolism)であった。
【0061】
cluster1に属し、さらにTermアミノ酸輸送体又は該アミノ酸輸送体の下階層概念を有するタンパク質を抽出して、
図3に示した。
これにより、
図3に示したタンパク質群であるSLC7A11、SLC36A4、SLC7A9及びSLC1A3は、自己免疫疾患、特に動脈硬化に関与するタンパク質であると判定することができる。
すなわち、自己免疫疾患、特にアテローム性動脈硬化の患者由来の試料、特に血清中のSLC7A11、SLC36A4、SLC7A9及びSLC1A3に対する自己抗体の抗体価を検出、測定することにより、自己免疫疾患、特に動脈硬化症、さらにはアテローム性動脈硬化症の発病リスク、重症度、治療効果の判定を行うことができる。
【実施例7】
【0062】
(パスウェイ解析による自己免疫疾患に関与するタンパク質の解析)
上記実施例5で取得した自己免疫疾患、特にアテローム性動脈硬化で示差的に発現しているタンパク質群のデータを、公知のソフトウェア{GeneSphere,Fujitsu(http://venus.netlaboratory.com/drug_discovery/genesphere/feature/)}で解析し、パスウェイ単位でタンパク質発現を評価した場合に自己免疫疾患において健常者群と比べて有意に発現変動しているパスウェイを抽出した。
【0063】
上記解析結果を
図4に示す。
図4の結果により、14種類のタンパク質(IL-5、STX1A、CSNK2A1、VAMP2、GSK3B、PRKCZ、PCNA、PIN1、STX4、HRB、HMGN1、HIST1H1C、TUBB、NPM1、VAMP8、VAPA、STX3、RABAC1、CCND2)を特定した。
【0064】
これにより、
図4に示したタンパク質群であるIL-5、STX1A、CSNK2A1、VAMP2、GSK3B、PRKCZ、PCNA、PIN1及びSTX4、さらには、HRB、HMGN1、HIST1H1C、TUBB、NPM1、VAMP8、VAPA、STX3、RABAC1及びCCND2は、自己免疫疾患、特に動脈硬化、さらにはアテローム性動脈硬化に関与するタンパク質であると判定することができる。
すなわち、自己免疫疾患、特に動脈硬化、さらにはアテローム性動脈硬化の患者由来の試料、特に血清中のIL-5、STX1A、CSNK2A1、VAMP2、GSK3B、PRKCZ、PCNA、PIN1及びSTX4、さらには、HRB、HMGN1、HIST1H1C、TUBB、NPM1、VAMP8、VAPA、STX3、RABAC1及びCCND2に対する自己抗体の抗体価を検出、測定することにより、自己免疫疾患、特にアテローム性動脈硬化症の発病リスク、重症度、治療効果の判定を行うことができる。
【実施例8】
【0065】
(上記実施例で解析して得られた各タンパク質での確認)
上記解析して得られた各タンパク質(IL-5、STX1A、CSNK2A1、VAMP2、GSK3B、PRKCZ、PCNA、PIN1、STX4、HRB、HMGN1、HIST1H1C、TUBB、NPM1、VAMP8、VAPA、STX3、RABAC1、CCND2、SLC7A11、SLC36A4、SLC7A9及びSLC1A3)を用いて上記実施例4と同様な方法により、患者由来の血清中の自己抗体の抗体価を測定した。
【0066】
上記タンパク質の大部分は、健常者由来の試料であるコントロールと比較して、有意に高い抗体価を示した。
これにより、上記解析して得られた各タンパク質を用いれば自己免疫疾患、特にアテローム性動脈硬化症の発病リスク、重症度、治療効果の判定を行うことができる。
さらには、本発明の解析方法は、自己免疫疾患に関与するタンパク質の解析方法として優れていることがわかった。
【実施例9】
【0067】
(抗IL-5抗体の抗体価の測定)
上記実施例1〜8により自己免疫疾患、特にアテローム性動脈硬化症の発病リスク、重症度、治療効果の判定の指標となる抗IL-5抗体の抗体価を詳細に測定した。詳細は、以下の通りである。
上記実施例2〜4と同様な方法により、Full length IL-5、Full length IL-5より抗体価の高い分泌型IL-5(20-135)及び部分配列IL-5(64-135)をコードする遺伝子を基にして、ビオチン化Full length IL-5、ビオチン化IL-5(20-135)及びビオチン化IL-5(64-135)を無細胞タンパク質合成用コムギ胚芽Extractで発現させた。
さらに、ビオチン化Full length、 ビオチン化分泌型IL-5(20-135)及びビオチン化部分配列IL-5(64-135)を、それぞれ、冠状動脈硬化症患者(IHD)及び閉塞性動脈硬化症患者(ASO)由来の血清中に添加して、抗IL-5抗体の抗体価を測定した。
【0068】
冠状動脈硬化症患者血清中のFull length IL-5、分泌型IL-5(20-135)及び部分配列IL-5(64-135)の添加による、冠状動脈硬化症患者血清中の抗IL-5抗体の抗体価の測定結果を
図11に示す。
図11に示すように、冠状動脈硬化症患者血清中の抗IL-5抗体は、Full length IL-5よりも、分泌型IL-5(20-135)及び部分配列IL-5(64-135)を強く認識することを確認した。
【0069】
分泌型IL-5(20-135)の添加による、閉塞性動脈硬化症患者及び冠状動脈硬化症患者血清中の抗IL-5抗体の抗体価の測定結果を
図12に示す。
図12に示すように、閉塞性動脈硬化症患者及び冠状動脈硬化症患者血清中の抗IL-5抗体は、分泌型IL-5(20-135)を認識していることを確認した。
以上により、閉塞性動脈硬化症患者及び冠状動脈硬化症患者血清中の抗IL-5抗体は、Full length IL-5だけでなく、分泌型IL-5(20-135)及び部分配列IL-5(64-135)を認識する。これにより、分泌型IL-5(20-135)及び部分配列IL-5(64-135)に対する自己抗体を患者の血清中から検出することにより、自己免疫疾患、特に動脈硬化症の検査を行うことができる。
【実施例10】
【0070】
(動脈硬化症患者の血清中のIL-5濃度測定)
動脈硬化症患者である冠状動脈硬化症患者血清中(n=20)及び健常者由来の血清中(n=10)のIL-5濃度をELISA(IMMUNOTECH, Mareille, France)で測定した。
なお、IL-5は、IL-5 遺伝子配列を基にして、無細胞タンパク質合成用コムギ胚芽Extractで発現させた。
【0071】
上記の測定結果を
図13に示す。
図13に示すように、動脈硬化症患者である冠状動脈硬化症患者血清のIL-5濃度が有意に低下していることを確認した。
以上により、患者の血清中のIL-5濃度を検出することにより、自己免疫疾患、特に動脈硬化症の検査を行うことができる。
【実施例11】
【0072】
(抗IL-5抗体価の受信者動作特性曲線の作成)
上記実施例9〜10の結果を基にして、抗IL-5抗体の抗体価の受信者動作特性曲線を作成した。
図14に示すように、抗IL-5抗体の抗体価の感度・特異度は、カットオフ値を1.19-1.21にすると、感度約81.3%, 特異度90%となる。
以上により、患者の血清中のIL-5抗体の抗体価の検出による自己免疫疾患、特に動脈硬化症の検査は、感度及び特異度が高いことを確認した。