特許第5904615号(P5904615)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5904615スポーツ用ボールのケーシング及びこれを製造する方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5904615
(24)【登録日】2016年3月25日
(45)【発行日】2016年4月13日
(54)【発明の名称】スポーツ用ボールのケーシング及びこれを製造する方法
(51)【国際特許分類】
   A63B 41/00 20060101AFI20160331BHJP
   A63B 45/00 20060101ALI20160331BHJP
【FI】
   A63B41/00 A
   A63B41/00 B
   A63B45/00 C
【請求項の数】13
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2014-518867(P2014-518867)
(86)(22)【出願日】2012年6月22日
(65)【公表番号】特表2014-518135(P2014-518135A)
(43)【公表日】2014年7月28日
(86)【国際出願番号】US2012043700
(87)【国際公開番号】WO2013003221
(87)【国際公開日】20130103
【審査請求日】2014年4月18日
(31)【優先権主張番号】13/170,912
(32)【優先日】2011年6月28日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】314006455
【氏名又は名称】ナイキ イノヴェイト シーヴィー
(74)【代理人】
【識別番号】100139044
【弁理士】
【氏名又は名称】笹野 拓馬
(74)【代理人】
【識別番号】100071238
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 恒久
(72)【発明者】
【氏名】バーググレン スコット アール
(72)【発明者】
【氏名】ジョンソン スコット ダブリュー
(72)【発明者】
【氏名】ホワイト ヴィンセント エフ
(72)【発明者】
【氏名】チャベス エリエザー シー
【審査官】 砂川 充
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2009/158103(WO,A1)
【文献】 特開平1−212578(JP,A)
【文献】 実公昭35−15502(JP,Y1)
【文献】 特開平7−185043(JP,A)
【文献】 米国特許第3512777(US,A)
【文献】 米国特許第2244503(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63B 37/00−47/04
A63B 69/00−69/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のパネル及び第2のパネルを含むケーシングであって、第1のパネル及び第2のパネルの各々が、外周側を向いている外面と、これの反対側で内周側を向いている内面とを有し、第1のパネルと第2のパネルとを一体に継ぎ合わせるシームを形成するように、第1のパネルの内面と第2のパネルの内面とが接合されている、ケーシングと、
上記ケーシング内に配置されたブラダと、
を備え
第1のパネル及び第2のパネルの各々が、上記シームから離間した領域においてよりも上記シームに隣接した領域において厚さが薄いことを特徴とするスポーツ用ボール。
【請求項2】
第1のパネル及び第2のパネルを含むケーシングであって、第1のパネル及び第2のパネルの各々が、外周側を向いている外面と、これの反対側で内周側を向いている内面とを有し、第1のパネルと第2のパネルとを一体に継ぎ合わせるシームを形成するように、第1のパネルの内面と第2のパネルの内面とが接合されている、ケーシングと、
上記ケーシング内に配置されたブラダと、
を備え
第1のパネルが、(a)第1のパネルの外面の一部を形成する第1の層と、(b)ポリマ発泡体材料から形成され、上記シームから離間した領域においてよりも上記シームに隣接した領域において厚さが薄い第2の層と、(c)第1のパネルの内面の一部を形成している第3の層と、を含む層状の構成を有することを特徴とするスポーツ用ボール。
【請求項3】
第1のパネル及び第2のパネルのうち少なくとも一方が、上記シームの位置で熱ボンドを形成する熱可塑性ポリマ材料を含むことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のスポーツ用ボール。
【請求項4】
第1のパネル及び第2のパネルの辺縁が上記ケーシングの外面の一部を形成することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のスポーツ用ボール。
【請求項5】
上記ケーシングと上記ブラダとの間に制限構造体が配置されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のスポーツ用ボール。
【請求項6】
スポーツ用ボールを製造する方法において、
第1のパネル及び第2のパネルを用意するステップであって、第1のパネル及び第2のパネルの各々が、第1の面と、これの反対側の第2の面とを有する、第1のパネル及び第2のパネルを用意するステップと、
第2のパネルに第1のパネルを継ぎ合わせるステップであって、(a)第2のパネルの第2の面に対して第1のパネルの第2の面を配置すること、及び、(b)第2のパネルの第2の面に対して第1のパネルの第2の面を継ぎ合わせる接合を形成すること、により第2のパネルに第1のパネルを継ぎ合わせるステップと、
第1のパネル及び第2のパネルを配向するステップであって、(a)第1のパネルの第1の面と第2のパネルの第1の面が外側を向いて該スポーツ用ボールの外周側に面し、(b)第1のパネルの第2の面と第2のパネルの第2の面が内側を向いて該スポーツ用ボールの内周側に面するように、第1のパネル及び第2のパネルを配向するステップと、
を含み、
上記継ぎ合わせるステップは、第1のパネルのフランジ領域と第2のパネルのフランジ領域とを接触させるように配置し、上記フランジ領域どうしを一体に圧縮し、上記フランジ領域を加熱することを含み、
上記継ぎ合わせるステップは、上記フランジ領域に形成された位置合せ孔を整列させることをさらに含む方法。
【請求項7】
上記用意するステップは、第1のパネルおよび第2のパネルのうちの少なくとも一方に熱可塑性ポリマ材料を組み込むことを含む、請求項に記載の方法。
【請求項8】
上記フランジ領域を切り取ることをさらに含む請求項に記載の方法。
【請求項9】
スポーツ用ボールを製造する方法において、
第1のパネル及び第2のパネルを用意するステップであって、第1のパネル及び第2のパネルの各々が熱可塑性ポリマ材料を含み、第1のパネルが第1のフランジを画定しているとともに、第2のパネルが第2のフランジを画定している、第1のパネル及び第2のパネルを用意するステップと、
第1のパネルと第2のパネルとの間にシームを形成するステップであって、第1のフランジと第2のフランジとを接触させるように配置し、第1のフランジと第2のフランジを一体に圧縮し、さらに第1のフランジと第2のフランジを加熱することによって、第1のパネルと第2のパネルとの間にシームを形成するステップと、
上記シームの突出部を画定するように、第1のフランジ及び第2のフランジの少なくとも一部を除去するステップと、
該スポーツ用ボールの外周側を向くように上記シームの突出部を配向するステップと、
を含み、
上記用意するステップは、ポリマ発泡体材料を含む層状の構成を有する第1のパネル及び第2のパネルを選択することを含む方法。
【請求項10】
スポーツ用ボールを製造する方法において、
第1のパネル及び第2のパネルを用意するステップであって、第1のパネル及び第2のパネルの各々が熱可塑性ポリマ材料を含み、第1のパネルが第1のフランジを画定しているとともに、第2のパネルが第2のフランジを画定している、第1のパネル及び第2のパネルを用意するステップと、
第1のパネルと第2のパネルとの間にシームを形成するステップであって、第1のフランジと第2のフランジとを接触させるように配置し、第1のフランジと第2のフランジを一体に圧縮し、さらに第1のフランジと第2のフランジを加熱することによって、第1のパネルと第2のパネルとの間にシームを形成するステップと、
上記シームの突出部を画定するように、第1のフランジ及び第2のフランジの少なくとも一部を除去するステップと、
該スポーツ用ボールの外周側を向くように上記シームの突出部を配向するステップと、
を含み、
上記シームを形成するステップは、第1のフランジ及び第2のフランジに形成された位置合せ孔を整列させることを含む方法。
【請求項11】
上記シームを形成するステップは、第1のフランジ及び第2のフランジの厚さを薄くするように、上記ポリマ発泡体材料を圧縮することを含む請求項に記載の方法。
【請求項12】
上記シームを形成するステップは、第1のフランジ及び第2のフランジの厚さを薄くすることを含む請求項9または請求項10に記載の方法。
【請求項13】
上記配向するステップは、第1のパネル及び第2のパネルの辺縁を該スポーツ用ボールの外に露出させることを含む請求項9または請求項10に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スポーツ用ボールのケーシング及びこれを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のサッカーボール等の様々な空気注入式スポーツ用ボールは、ケーシング、制限構造体及びブラダを含む層構造を呈する。ケーシングは、スポーツ用ボールの外側部分を形成するものであって、概して、互いに当接する辺縁に沿って一体に継ぎ合わされた(例えば、縫合又は接着の手段で)複数の耐久性かつ耐摩耗性のパネルから形成されている。パネルの構成は様々に変化し得るが、典型的なサッカーボールのケーシングは、32枚のパネルを含む(このうち12枚は五角形の形状であり、20枚は六角形の形状を有する)。
【0003】
制限構造体は、ケーシングとブラダとの間に配置され、スポーツ用ボールの中間部分を形成している。制限構造体を設ける目的として、スポーツ用ボールに柔らかい感触を提供すること、エネルギを還元すること、及びブラダの膨張を制限することが挙げられる。いくつかの構成においては、制限構造体または制限構造体の一部が、裏当て材としてケーシングに接合され、継ぎ合わされ、或いは組み込まれ得る。
【0004】
空気注入式の構成を有するブラダは、スポーツ用ボールの内側部分を提供するように制限構造体内に配置される。膨張(すなわち、加圧された空気を使用すること)を容易にするために、ブラダは、概して、制限構造体とケーシングの各々を貫通する弁付きの開口を有し、これによって、スポーツ用ボールの外側からアクセスすることが可能となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ポーツ用ボールを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
ケーシングとブラダを含むスポーツ用ボールを以下に説明する。ケーシングは、接合により継ぎ合わされた辺縁領域を有する複数のパネルを含み、これらの辺縁領域は、ボールの外周側へ突出している。ブラダは、ケーシング内に配置されている。他の態様においては、ケーシングは、第1のパネルと第2のパネルを含み、第1のパネルと第2のパネルの各々は、外周側を向いている外面と、これの反対側で内周側を向いている内面と、を有する。第1のパネルと第2のパネルを一体に継ぎ合わせるシームを形成するように、第1のパネルの内面と第2のパネルの内面とが接合される。
【0007】
また、スポーツ用ボールの製造方法を以下に説明する。この方法は、第1のパネル及び第2のパネルを用意するステップであって、第1のパネル及び第2のパネルの各々が、第1の面と、これの反対側の第2の面とを有する、第1のパネル及び第2のパネルを用意するステップと、第2のパネルに第1のパネルを継ぎ合わせるステップであって、(a)第2のパネルの第2の面に対して第1のパネルの第2の面を配置すること、及び、(b)第2のパネルの第2の面に対して第1のパネルの第2の面を継ぎ合わせる接合を形成すること、により第2のパネルに第1のパネルを継ぎ合わせるステップと、第1のパネル及び第2のパネルを配向するステップであって、(a)第1のパネルの第1の面と第2のパネルの第1の面が外側を向いて該スポーツ用ボールの外周側に面し、(b)第1のパネルの第2の面と第2のパネルの第2の面が内側を向いて該スポーツ用ボールの内周側に面するように、第1のパネル及び第2のパネルを配向するステップと、を含む。
【0008】
本発明の利点や新規性を有する特徴部は、添付の特許請求の範囲に特定されている。本発明の利点および新規性のある特徴部をよく理解できるように、本発明に関連する様々な構成や概念を説明し図示する事項や図面が本願の参照となり得る。
【0009】
上記の概要及び以下の詳細な説明は、添付の図を参照しつつ読むことにより更によく理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】スポーツ用ボールの斜視図。
図2】スポーツ用ボールの他の斜視図。
図3図2における分断線3−3に沿って切り出されたスポーツ用ボールの一部を示す断面図。
図4】スポーツ用ボールの1枚のパネルの上面を示す平面図。
図5】2枚の継ぎ合わされたパネルを示す斜視図。
図6図5における分断線6−6に沿って切り出された2枚の継ぎ合わされたパネルを示す断面図。
図7】パネルを継ぎ合わせることに利用される接合用ダイの斜視図。
図8図7における分断線8−8に沿って切り出された接合用ダイの断面図。
図9A】スポーツ用ボールの製造プロセスにおいて複数のパネルを一体に溶接するステップを概略的に示す断面図。
図9B】スポーツ用ボールの製造プロセスにおいて複数のパネルを一体に溶接するステップを概略的に示す断面図。
図9C】スポーツ用ボールの製造プロセスにおいて複数のパネルを一体に溶接するステップを概略的に示す断面図。
図9D】スポーツ用ボールの製造プロセスにおいて複数のパネルを一体に溶接するステップを概略的に示す断面図。
図9E】スポーツ用ボールの製造プロセスにおいて複数のパネルを一体に溶接するステップを概略的に示す断面図。
図10図8に対応し、接合用ダイの他の構成を示す断面図。
図11A】スポーツ用ボールの製造プロセスにおける更なるステップを示す斜視図。
図11B】スポーツ用ボールの製造プロセスにおける更なるステップを示す斜視図。
図11C】スポーツ用ボールの製造プロセスにおける更なるステップを示す斜視図。
図11D】スポーツ用ボールの製造プロセスにおける更なるステップを示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下の詳細な説明及び添付の図は、様々なスポーツ用ボールを製造する方法を開示する。サッカーボールに関するものとしてスポーツ用ボールについて説明し図示するが、本発明のスポーツ用ボール及びこれを製造する方法に関連する考え方は、様々な型式の空気注入式スポーツ用ボールに適用され得る。従って、サッカーボールに加えて、本明細書中で説明する考え方は、例えば、バスケットボール、(アメリカンフットボールやラグビーの)フットボール、バレーボール、及び水球用ボールに適用され得る。野球のボールやソフトボールなどの様々な非空気注入式スポーツ用ボールに本明細書中で説明される考え方を取り入れてもよい。
【0012】
スポーツ用ボールの構成
【0013】
図1図3に、サッカーボールの一般的な構成を有するスポーツ用ボール10が示されている。スポーツ用ボール10は、(a)スポーツ用ボール10の外側部分を形成するケーシング20と、(b)ケーシング20内に配置され、スポーツ用ボールの中間部分を形成する制限構造体30と、(c)スポーツ用ボール10の内側部分を形成する空気注入式のブラダ40と、を有する層構造を呈する。ブラダ10は、加圧されると、ボール10がほぼ球形の形状となるように導く。詳しくは、ブラダ40内の圧力に起因して、ブラダ40が制限構造体30に外周側への力を作用させる。この制限構造体30が今度は、ケーシング20に外周側への力を作用させる。ブラダ40が拡大することを制限するとともにケーシング20内の張力を制限するために、制限構造体30の一部がある程度までしか伸びないようになっているとよい。換言すると、ブラダ40は、制限構造体30に外周側への力を作用させるが、この外周側への力がケーシング20内に過度の張力を生じさせることがないように、制限構造体30の伸び特性が有効に機能する。こうして、制限構造体30がブラダ40からの圧力を制限する一方で、外周側への力がケーシング20内で球形の形状となるように導くことで、スポーツ用ボール10が球形の形状となる。
【0014】
ケーシング20は、複数のシーム22を形成するように互いに当接する辺つまり辺縁に沿って一体に継ぎ合わされた様々なパネル21から形成される。すなわち、複数のパネル21の辺縁領域が互いに継ぎ合わされてシーム22を形成する。パネル21は、12枚の正五角形の形状を有するものとして示されているが、パネル21は、寄木細工の要領でケーシング20を形成するように互いに組み合わされる、非正多角形の形状、凹凸のある辺縁を有する形状、又は様々な他の形状(例えば、三角形、正方形、長方形、六角形、台形、円形、楕円形、非幾何学的形状)を有し得る。いくつかの構成においては、スポーツ用ボール10は、典型的なサッカーボールの概形を与えるように、12枚の五角形のパネル21と、20枚の六角形のパネル21を有する。また、シーム22の数を少なくすることができる架橋パネルを形成するために、選択されたパネル21が、隣接するパネル21と単一(すなわちワンピース)の構成で形成されている場合もある。従って、ケーシング20の構成は、著しく変化し得る。
【0015】
ケーシング20用に選択される材料としては、皮革、合成皮革、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、および一般に耐久性と耐摩耗性を有する他の材料がある。多くの構成においては、パネル21の各々は、合成皮革の層などの単一の材料から形成され得る。しかし、いくつかの構成においては、パネル21の各々は、2つ以上の材料を組み合わせた層状の構成を有し得る。例えば、図3は、外側層23、中間層24および内側層25を含む層構造を有するケーシング20を示している。層23〜25用に選択される材料は著しく変化し得るが、外側層23は、合成皮革から形成され、中間層24はポリマ発泡体材料から形成され、内側層25は織物(例えば、織ってつくられた、不織の、又はニット織物)であり得る。従って、様々な材料及び材料の組合せがケーシング20に利用され得る。
【0016】
従来のケーシングとケーシング20との明確な違いは、シーム22を形成するようにパネル21が継ぎ合わされる様式に関連する。従来のスポーツ用ボールのパネルは、縫合(例えば、手縫い又はミシン縫い)で継ぎ合わされていることが多い。これに対して本発明では、スポーツ用ボール10の製造においてパネル21どうしを継ぎ合わせてシーム22を形成するために、接合プロセス(接着または熱接合)が利用される。シーム22の構成の一例を示す図3の断面図においては、接合プロセスにより、効果的に、互いに固定され、接合され、或いは継ぎ合わされた2枚のパネル21が示されている。シーム22のすべてを形成するために接合プロセスが用いられ得るが、パネル21のいくつかは、縫合又は他のプロセスによって継ぎ合わされ、或いは接合プロセスによって形成される様々なシーム22が縫合で補強され得る。
【0017】
シーム22の構成は、従来のシームとは異なり他の態様になっている。多くのスポーツ用ボールにおいて、シームは内周側へ有効に突出している。すなわち、外面どうしを合わせた複数のパネルの一部が継ぎ合わされていて、湾曲した内側がスポーツ用ボール内へ延びるシームを形成している。これに対して本発明では、シーム22は、外周側へ有効に曲がっていて、外周側へ突出している。再び図3を参照すると、ケーシング20の内面を形成する内側層25どうしがくっ付くように継ぎ合わされている。すなわち、パネル21の内面どうしがくっ付くように継ぎ合わされると、外周側へ突出する構成を有するシーム22が形成される。これに加え、シーム22の構成は、スポーツ用ボール10の外側にある各パネル21の辺縁の一部を露出させる。すなわち、パネル21の辺縁が、スポーツ用ボール10の外面の一部をシーム22の位置で形成する。
【0018】
シーム22を形成するために接合プロセスを利用することの利点の一つは、スポーツ用ボール10の総質量に関連する。従来のスポーツ用ボールの質量の約10%〜約15%がパネル間のシームで占められ得る一方で、本発明の接合パネル21は、シーム22の位置での質量を減らすことができる。縫合によるシームをケーシング20から除くことにより、縫合によるシームの分の質量を他の構造エレメントに利用できるので、性能特性(例えば、エネルギの還元、真球度、質量の分布、耐久性、空力学特性)を高めることができる。他の利点が製造効率に関連する。従来のスポーツ用ボールにおけるシームの各々を縫合することは、特に手縫いの場合には、時間のかかるプロセスである。複数のパネル21をシーム22の位置で一体に接合することにより、ケーシング20を形成するのに必要な時間が短縮され、これによって、全体の製造効率が向上する。
【0019】
制限構造体30は、ケーシング20とブラダ40との間に配置され、スポーツ用ボール10の中間層を形成する。一般に、制限構造体30は、ブラダ40の膨張を制限するために拡張に限度のある材料から形成されるが、様々な構成や目的を有し得る。例えば、制限構造体30は、(a)ブラダ40のほぼ全体を覆うメッシュを形成するように様々な方向にブラダ40に繰り返し巻き付けられた糸、編み糸又はフィラメント、(b)ブラダ40の周囲に延びる構造体を形成するように一体に縫合された複数の概ね平坦なつまり平らな織物エレメント、(c)ブラダ40の周囲に重なる(オーバラップする)構成に配置され、ラテックスを含浸する複数の概ね平坦なつまり平らな織物ストリップ、又は(d)ほぼシームレスで球形の形状の織物、から形成され得る。スポーツ用ボール10のいくつかの構成においては、制限構造体30もまたケーシング20かブラダ40のいずれかに接合され、継ぎ合わされ、或いは組み込まれている。或いは、制限構造体30は、スポーツ用ボール10から省かれている。これに応じて、制限構造体30の構成は、様々な構成および材料を含むように著しく変化し得る。
【0020】
ブラダ40は、空気注入式の構成を有し、スポーツ用ボール10の内側部分を提供するように制限構造体30内に配置されている。ブラダ40は、膨張すると、丸い形状つまり概ね球形の形状となる。膨張し易くするために、ブラダ40は、制限構造体30とケーシング20の各々を貫通する弁41を有し、これによって、スポーツ用ボール10の外側からアクセスすることが可能となっている。他の構成においては、ブラダ40は、半永久的に膨張した弁なしの構造を有し得る。ブラダ40は、例えば、ゴム、カーボン・ラテックス、ポリウレタン、ウレタン、ポリエステル、ポリエステル・ポリウレタン、ポリエーテル・ポリウレタン、及びこれらの混合物などの様々な材料から形成され、或いはこれらの材料からなる層状の構成にされ得る。これらの材料は、ブラダ40内の空気又は他の流体がスポーツ用ボール10の外へ放出されることつまり拡散することを防ぐのに有効であるが、Mitchellらに与えられた米国特許第5,713,141号及び米国特許第5,952,065号(両者とも本願の参照となる)は、放出つまり拡散を実質的に防ぎ得る材料を開示している。様々な構成が利用され得るが、この材料は、概して、熱可塑性ポリマ材料からなる第1の層と、バリヤ材料からなる第2の層と、を含む。熱可塑性ポリマ材料は、材料のエレメント間の接合を形成することを可能にするとともに、適程な伸長強さ、摩耗強さ、曲げ疲労強さ、弾性率及び耐摩耗性をもたらす。バリヤ材料は、ブラダ40内の流体が(例えば、窒素)放出されることを制限するのに有効である。いくつかの構成においては、熱可塑性ポリマ材料は、熱可塑性ウレタンである。さらには、熱可塑性ウレタンは、ポリエステル、ポリエーテル、ポリカプロラクトン、ポリオキシプロピレン及びポリカーボネート・マクログリコール基材料及びこれらの混合物を含む群から選択され得る。いくつかの構成においては、バリヤ材料は、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリ塩化ビニリデン、アクリロニトリル−アクリル酸メチル共重合体、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート、脂肪族ポリアミド及び芳香族ポリアミドなど)、液晶ポリマ、並びにポリウレタン・エンジニアリング熱可塑性材料を含む群から選択される。従って、ブラダ40は、様々な材料から形成され得る。
【0021】
パネル接合プロセス
【0022】
上述したように、従来のスポーツ用ボールのパネルは、縫合(例えば、手縫いや機械縫い)によって継ぎ合わされ得る。しかし、本発明のパネル21は、接合プロセスによって継ぎ合わされる。図4を参照すると、スポーツ用ボール10に組み込まれる前のパネル21の1枚が、パネル領域26と5つのフランジ領域27を有するものとして示されている。パネル領域26が概してパネル21の中心部を形成する一方で、フランジ領域27は、パネル領域26の周囲に延在し、パネル21の周縁部分を形成している。基準線とする目的で、パネル領域26と様々なフランジ領域27との間に延びている破線が示されている。パネル21は五角形の形状を有し、フランジ領域27の各々が、五角形の形状の1辺の領域に対応する。パネルが別の形状を有するさらなる構成においては、フランジ領域の数は、その形状の辺の数に応じて変化し得る。パネル21は、五角形の形状の各頂点から内側へ向けて複数のフランジ領域27を互いに有効に分離する5つの切り込み28を画定している。切り込み28は、フランジ領域25を互いに分断するようにパネルの厚さ全体を貫くように切り込まれ、フランジ領域27がパネル領域26と接続したまま、フランジ領域27が曲がること或いは互いに独立して動くことを可能としている。加えて、各フランジ領域27は、様々な位置合せ孔29を画定しており、これらの位置合せ孔29は、パネル21を貫通する穴を形成している。
【0023】
様々なパネル21のパネル領域26は、スポーツ用ボール10の外側において視認可能なケーシング20の半分以上の部分又は全部を形成する。しかし、各フランジ領域27の半分以上は、ケーシング20から切り取られるか或いは除去され、概して、スポーツ用ボール10から省かれている。パネル領域26とフランジ領域27との間の境界にシーム22が形成されているので、フランジ領域27の比較的小さい部分がケーシング20内に(特に、シーム22の位置において)残り得る。図5及び図6を参照すると、中間の製造ステップにおいて、2つのパネル21が互いに継ぎ合わされている様子の例が示されている。パネル領域26は、概して、互いに共有の平面を有しているが、継ぎ合わされたフランジ領域27は、上方へ曲がり、当接面に沿って互いに固定されている。加えて、継ぎ合わされたフランジ領域27の各々からの位置合せ孔26が整列している。接合する前に位置合せ孔26を整列させることにより、複数のフランジ領域27が互いに対して正しく配置される。
【0024】
フランジ領域27を互いに接合させるために接着や熱接合などの様々な技術が利用され得る。例えば、図3および図6を参照すると、内層25の面どうしがくっ付くように互いに接合され、シーム22の1つを形成している。接着においては、内層25を互いに接着するために、隣接するパネル21の内層25間に接着剤が施され、これによって、隣接するパネル21が継ぎ合わされ、シーム22の1つが形成される。熱接合においては、内側層25を互いに接合するように、パネル21に熱が与えられ、これによって、隣接するパネル21が継ぎ合わされ、シーム22の1つが形成される。以下に詳しく説明するように、熱接合は、概して、熱可塑性ポリマ材料を使用してシーム22を形成することに関する。
【0025】
熱可塑性ポリマ材料は、充分な熱に晒されると、固体の状態から軟らかい状態つまり液体の状態に変化する。この熱可塑性ポリマ材料は、充分に冷却されると、軟らかい状態つまり液体の状態から固体の状態に戻る。熱可塑性ポリマ材料のこれらの特性に基づいて、パネル21の一部(すなわち、フランジ領域27)を互いに継ぎ合わせる接合を形成するために熱接合プロセスが利用され得る。本明細書中で使用される「熱接合」又はこれの同義語は、2つのエレメント間を固定する技術であって、これらのエレメントのうち少なくとも一方に含まれる熱可塑性ポリマ材料を軟らかくしつまり融かし、これらのエレメントが冷却されると互いに固定される技術として定義される。同様に、「熱ボンド」又はこれの同義語は、2つのエレメントのうち少なくとも一方に含まれる熱可塑性ポリマ材料を軟らかくしつまり融かし、これらのエレメントが冷却されると互いに固定されるプロセスを用いて2つのエレメントを継ぎ合わせる、溶接、リンク又は構造体として定義される。
【0026】
熱接合の様々な例を以下に説明する。第1の熱接合プロセスにおいては、2つの隣接するパネル21の各々の少なくとも一部が熱可塑性ポリマ材料からつくられている。隣接するパネル21が互いに接触するように配置され、加熱されることで、熱可塑性ポリマ材料が融解しつまり軟らかくなるように導く。すると、熱可塑性ポリマ材料は、互いに混ざり合い(例えば、熱可塑性ポリマ材料間の境界層を越えて拡散し)、冷却されると一体に固定され、これによってシーム22の一つが形成される。第2の熱接合プロセスにおいては、各2つの隣接するパネル21のうちの一方の少なくとも一部が熱可塑性ポリマ材料から形成されている。隣接するパネル21が互いに接触するように配置され、加熱されることで、熱可塑性ポリマ材料が融解しつまり軟らかくなるように導く。すると、熱可塑性ポリマ材料は、他方のパネル21に形成された窪みつまりキャビティに浸透し、このパネル21が冷却されると一体に固定される。第3の熱接合プロセスにおいては、2つの隣接するパネル21からの内層25の各々の少なくとも一部が、熱可塑性ポリマ材料の層に予備接合された織物から形成されている。この内層25が互いに接触するように配置され、熱可塑性ポリマ材料が融解しつまり軟らかくなるように加熱される。隣接する内層25に含まれる熱可塑性ポリマ材料が互いに混ざり合い(例えば、熱可塑性ポリマ材料間の境界層を越えて拡散し)、冷却されると一体に固定される。第4の熱接合プロセスにおいては、2つの隣接するパネル21からの内層25は、織物から形成されている。これらの内層25間に熱可塑性ポリマ材料からなるシートが配置され、熱可塑性ポリマ材料が融解しつまり軟らかくなるように加熱される。すると、この熱可塑性ポリマ材料は、内層25に含まれる編み糸、フィラメントないしファイバとからむように延びつまり結合する。この熱可塑性ポリマ材料は、内層25を互いに有効に継ぎ合わせる。つまり、熱接合は、パネル21の両方又は一方が熱可塑性ポリマ材料を含むときに生じるだけでなく、或いはいずれのパネル21も熱可塑性ポリマ材料を含まないときにも生じる。しかも、熱接合は、一般に、縫合すること又は接着剤の使用とは関係なく、熱を使ってパネル21を互いに直接に接合することに関する。しかし、いくつかの実施例においては、熱接合を補強するために縫合または接着剤が使用され得る。
【0027】
図7及び図8に、接合用ダイ50を使って2つのフランジ領域27を接合することによりシーム22が形成されることが示されている。接合用ダイ50は、パネル21の一辺の長さに概ね対応する長さを有する2つの部分51を含む。すなわち、接合用ダイ50の長さは、概して、フランジ領域27の長さと同じかもっと長い。また、片方の部分51が、もう片方の部分51を向いている対面52を画定する。すなわち、対面52は、互いに向き合っている。例えば、熱を伝える目的で使用される場合には、接合用ダイ50の温度を充分に上昇させてフランジ領域27間に熱接合を形成するために、部分51の各々が、加熱された液体を導く内側加熱エレメントつまりコンジットを含み得る。高周波加熱の目的で使用される場合には、部分51の一方又は両方が、パネル21に含まれる特定のポリマ材料を加熱する高周波エネルギを放出し得る。接合用ダイ50の他の構成もまた、超音波加熱によりフランジ領域27を加熱し得る。接合用ダイ50に加え、パネル21間に熱接合を有効に形成する様々な他の装置が利用され得る。
【0028】
図9A図9Eを参照して、接合用ダイ50を使ってパネル21を継ぎ合わせるプロセスを以下に説明する。図9Aに示されるように、最初に、(a)フランジ領域27が互いに隣接し、(b)内層25の面が互いに向き合い、(c)位置合せ孔29が概ね整列するように、2つのパネル21が配置される。接合用ダイ50の部分51もまた、フランジ領域27と対向する側に配置されている。そして、図9Bを参照すると、部分51が、対面52間でフランジ領域27を一体に圧縮し、内層25の面どうしを接触させている。接合用ダイ50を使ってフランジ領域27を加熱することにより、内層25に含まれる熱可塑性ポリマ材料は、フランジ領域27間の熱接合を容易にする程度にまで融解しつまり軟らかくなる。接合用ダイを用いてフランジ領域27を圧縮することにより、1つまたは複数の層23〜25もまた縮む。例えば、中間層24は、ポリマ発泡体材料から形成されていて、接合用ダイからの熱と圧縮により、中間層24が圧縮され、部分51間の領域における中間層24の厚さが有効に薄くなる。
【0029】
いくつかの構成においては、内層25の両方が、図9Bに示されるステップの際に加熱される熱可塑性材料を含んでいる。例えば、内層25が熱可塑性ポリマ材料のシートから形成されているか、内層25が熱可塑性ポリマ材料を含浸する織物(例えば、熱可塑性ポリマシートに接合されたポリエステルや綿織物)であるか、或いは内層25が熱可塑性ポリマ材料から形成された編み糸を有する織物である。しかし、上述したように、熱接合は、パネル21の両方又は一方が熱可塑性ポリマ材料を含むときに生じるだけでなく、いずれのパネル21も熱可塑性ポリマ材料を含まないときにも生じる。すなわち、熱接合は、内層25の一方のみが熱可塑性ポリマ材料含むときに生じ得るし、内層25のいずれも熱可塑性ポリマ材料を含まない条件でも、図9Aに示されるようにパネル21間に熱可塑性ポリマエレメントが配置され、図9Bに示されるようにパネル21間で熱可塑性ポリマエレメントが圧縮され加熱されることによって、内層25を継ぎ合わせる熱接合が形成される。
【0030】
加熱と圧縮に続いて、図9Cに示されるように、部分51は、パネル21から分離される。この段階で、パネル21が冷却されることによって、内層25間に熱ボンドを形成する熱可塑性ポリマ材料が確実に固化される。また、中間層24は、概して、圧縮されたままである。詳しくは、接合用ダイ50からの熱と圧縮により、中間層24のポリマ発泡体材料の一部が融けるか、或いは中間層24に含まれる気泡(セル)が壊れることで、部分51が分離したときに圧縮された構成を保ち得る。そして、図9Dに示されるように、位置合せ孔29を画定する領域を含み得るフランジ領域27の余分な部分が切り取られ、つまり除去される。そして、図9Eに示されるように、2つのパネル領域26が回転され分離されると、シーム22の構造が明らかになる。
【0031】
上述した接合プロセスの利点の一つは、外層23により形成されたケーシング20の外面の半分以上よりも低い位置までシーム22が凹んでいることである。また、熱接合後の切り取られたパネル21の辺縁も、ケーシング20の外面の半分以上よりも低い位置まで凹んでいる。この構成により、パネル21間のシーム22の位置で凹部が有効に形成される。接合プロセスの際に、接合用ダイ50により、パネル21が圧縮される(例えば、中間層24が圧縮される)。この圧縮により、シーム22の領域におけるパネル21の厚さは薄くなり、これによって、シーム22及び切り取られたパネル21の辺縁は、窪みを形成し、ケーシング20の外面よりも低い位置まで凹んだままである。この構成において、各パネル21は、シーム22から離れた領域においてよりもシーム22に隣接した領域において厚さが薄い。
【0032】
フランジ領域27の余分な部分を除去するために、様々な切り取りプロセスが利用され得る。切り取りプロセスの例として、レーザ切断装置、ダイカッタ(打抜き)、研削盤又はエッチングプロセスがある。他の例として、図10に示されるように、接合用ダイ50の有する刃先53が、接合プロセスの際にフランジ領域27を切り取る。すなわち、刃先53は、部分51が対面52間のフランジ領域27を一体に加熱して圧縮するのと同時に、フランジ領域27を貫いて突出することでフランジ領域27を有効に切り取るように使用され得る。
【0033】
図9A図9Eに開示されている接合プロセスは、スポーツ用ボール10の外周側へ向かって有効に突出する構成を有するシーム22を形成する。接合プロセスにより、ケーシング20の内面を形成する内層25どうしがくっ付くように互いに接合される。すなわち、パネル21の内面どうしがくっ付くように互いに継ぎ合わされることで、外周側へ突出する構成を有するシーム22が形成される。接合が形成される領域においてパネル21が圧縮される(例えば、中間層24が圧縮される)ことにより、並びにフランジ領域27の余分な部分を切り取ることにより、シーム22及びパネル21の切り取られた辺縁は、ケーシング20の外面の半分以上よりも低い位置まで凹んでいる。
【0034】
さらなる事項として、上述した接合プロセスにより形成されたシーム22は、各パネル21の辺縁の部分をスポーツ用ボール10の外側に露出させる構成を有する。すなわち、パネル21の辺縁は、スポーツ用ボール10の外面の一部を形成するとともに、シーム22の位置におけるケーシング20を形成する。例えば、図9Eを参照すると、切り取られたパネル21の領域が層23〜25の各々の辺縁を露出させ、これによって、パネル21の辺縁が露出している。この構成の利点の一つは、シーム22が、従来のスポーツ用ボールにはないスポーツ用ボール10の独特の美感を呈し得ることである。
【0035】
スポーツ用ボールの形成
【0036】
パネル21間にシーム22を形成するようにフランジ領域27を接合するゼネラル・プロセスは、概して、図9A図9Eを参照して上述した通りである。このゼネラル・プロセスが、複数のパネル21に関して、各パネル21の複数のフランジ領域27で繰り返し実行され得ることで、概ね球形のつまり閉じた構造を有するケーシング20が有効に形成される。詳しくは、ケーシング20の様々なパネル21からのフランジ領域27の半分以上が一体に接合されることで、図11Aに示される構造体が形成され得る。接合された後、フランジ領域27の余分な部分が切り取られることで、図11Bに示されるように、シーム22の形成が有効に完了される。いくつかのプロセスにおいては、フランジ領域27間の接合の各々が形成された後ではなく、各接合が形成された後すぐにフランジ領域27が切り取られる。
【0037】
シーム22は、概して、フランジ領域27の各間に形成されるが、製造プロセスのこの段階で、シーム22の少なくとも1つが互いに接合されないままであるとよい。図11A及び図11Bを参照すると、2つの接合されていないフランジ領域27が、ケーシング20内の開口11を形成する。少なくとも2つのフランジ領域27を互いに接合させずに開口11を残すことの目的の一つは、図11Cに示されるように、ケーシング2内へ制限構造体30とブラダ40を挿入できるようにすることにある。制限構造体30とブラダ40が正しく配置され、1枚のパネル21内の孔を通る弁41が配置された後、最後の2つのフランジ領域27が接合され切り取られることで、図11Dに示されるように、最後のシーム22が形成される。
【0038】
上記の説明に基づいて、接合プロセスを用いてパネル21を継ぎ合わせることにより、ケーシング20の少なくとも一部が形成され得る。パネルを継ぎ合わせる他の方法と比較して、接合プロセスは、スポーツ用ボール10の総質量を小さくするとともに、生産効率を向上させることができる。接合プロセスを用いてパネル21の半分以上が継ぎ合わされた後、ケーシング20内の開口11を通して制限構造体30とブラダ40が挿入されることに続いて、最後のシーム22が形成されることにより、開口11が密封され得る。
【0039】
Raynakらの米国特許出願公開第2010/0240479号明細書(これは本願の参照となる)は、スポーツ用ボールを形成するようにパネルが継ぎ合わされ得る他のプロセスを開示している。該公報が開示するプロセスは、上記のプロセスと同様に、(a)複数のパネルを接合してケーシングのシームを形成すること、(b)ケーシングの開口を通してケーシング内へ構成要素を挿入すること、及び(c)開口の位置で最後のシームを形成することにより開口を閉じること、に関する。スポーツ用ボール(例えば、スポーツ用ボール10)におけるすべてのシームを形成するために、上述した接合プロセスが利用され得るが、本発明の接合プロセスは、上記公報が開示するスポーツ用ボールにおける最後のシームを形成するために用いられてもよい。従って、本明細書中で開示した接合プロセスは、様なプロセスにより形成された様々なスポーツ用ボールに適用することができる。
【0040】
添付の図を参照して本発明の様々な実施例を説明したが、この説明は限定することを意図するものではなく例示することを意図するものである。当業者であれば、添付の特許請求の範囲を逸脱することなく、様々な変更や変形がなされ得ることを理解されよう。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9A
図9B
図9C
図9D
図9E
図10
図11A
図11B
図11C
図11D