(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5904617
(24)【登録日】2016年3月25日
(45)【発行日】2016年4月13日
(54)【発明の名称】油含有マイクロカプセルを含む酸性含水製品およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
A23L 5/00 20160101AFI20160331BHJP
A23L 2/00 20060101ALI20160331BHJP
B01J 13/02 20060101ALI20160331BHJP
【FI】
A23L1/00 C
A23L2/00 A
B01J13/02
【請求項の数】32
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2014-556560(P2014-556560)
(86)(22)【出願日】2013年1月22日
(65)【公表番号】特表2015-511816(P2015-511816A)
(43)【公表日】2015年4月23日
(86)【国際出願番号】US2013022550
(87)【国際公開番号】WO2013119384
(87)【国際公開日】20130815
【審査請求日】2014年10月6日
(31)【優先権主張番号】13/368,542
(32)【優先日】2012年2月8日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】593203701
【氏名又は名称】ペプシコ,インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】PepsiCo Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【弁理士】
【氏名又は名称】柳田 征史
(74)【代理人】
【識別番号】100090468
【弁理士】
【氏名又は名称】佐久間 剛
(72)【発明者】
【氏名】ギヴン ジュニア,ピーター エス
(72)【発明者】
【氏名】トロンプ,ロベルト ハンス
【審査官】
柴原 直司
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2011/026612(WO,A1)
【文献】
特表2010−515455(JP,A)
【文献】
特表2009−500034(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 5/00−29/10
A23L 2/00
B01J 13/02−13/22
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロカプセルの水性分散液において、該マイクロカプセルが、
a.少なくとも1種類の疎水性物質と、
b.該少なくとも1種類の疎水性物質の周りの界面層であって、
i. 少なくとも50質量%変性された変性球状タンパク質を含む、タンパク質凝集体、および
ii. ブロック型電荷分布を有する負に帯電したポリマー、
を含む界面層と、
を有してなり、
前記界面層が、10:1から1:4の範囲の質量比で前記タンパク質凝集体および負に帯電したポリマーを含み、かつ0.005−10μmの厚さを有し、さらに
該水性分散液が3.5未満のpHを有する、マイクロカプセルの水性分散液。
【請求項2】
前記タンパク質凝集体が、変性ホエータンパク質、変性卵タンパク質、変性大豆タンパク質、変性ハウチワマメタンパク質、変性米タンパク質、変性エンドウ豆タンパク質、変性小麦タンパク質、およびそれらの任意のものの組合せから選択された変性球状タンパク質を含む、請求項1記載の水性分散液。
【請求項3】
前記少なくとも1種類の疎水性物質が、脂質、水不溶性ビタミン、水不溶性ステロール、水不溶性フラボノイド、香味料、精油、およびそれらの任意のものの組合せから選択される、請求項1記載の水性分散液。
【請求項4】
前記少なくとも1種類の疎水性物質が、オメガ3脂肪酸、オメガ6脂肪酸、およびそれらの任意のものの組合せから選択された脂肪酸を含む、請求項1記載の水性分散液。
【請求項5】
前記少なくとも1種類の疎水性物質が、ドコサヘキサエン酸(DHA)、エイコサペンタエン酸(EPA)、ステアリドン酸、α−リノレン酸(ALA)、共役リノール酸(CLA)、またはそれらの任意のものの組合せを含む、請求項1記載の水性分散液。
【請求項6】
前記負に帯電したポリマーが、ペクチン、カルボキシメチルセルロース、化工デンプン、カラギーナン、アルギネート、部分脱アセチル化キサンタン、部分脱アセチル化ゲラン、またはそれらの任意のものの組合せを含む、請求項1記載の水性分散液。
【請求項7】
前記負に帯電したポリマーが、高エステルペクチン、低エステルペクチン、アミド化ペクチン、およびそれらの任意のものの組合せから選択される、請求項6記載の水性分散液。
【請求項8】
前記負に帯電したポリマーが高メチルエステルペクチンを含む、請求項6記載の水性分散液。
【請求項9】
前記負に帯電したポリマーが柑橘ペクチンを含む、請求項6記載の水性分散液。
【請求項10】
前記タンパク質凝集体が変性ホエータンパク質を含む、請求項1記載の水性分散液。
【請求項11】
前記タンパク質凝集体が、5〜250nmの平均直径を有する、請求項1記載の水性分散液。
【請求項12】
前記マイクロカプセルが、0.1〜100μmの範囲の体積加重平均直径を有する、請求項1記載の水性分散液。
【請求項13】
前記マイクロカプセルの少なくとも大部分の各々の前記少なくとも1種類の疎水性物質が、0.01〜20μmの範囲の直径を有する油滴である、請求項1記載の水性分散液。
【請求項14】
前記界面層が、乾燥物質の少なくとも55%の量でタンパク質凝集体および負に帯電したポリマーを含む、請求項1記載の水性分散液。
【請求項15】
前記少なくとも1種類の疎水性物質が前記マイクロカプセルの少なくとも5質量%を占める、請求項1記載の水性分散液。
【請求項16】
前記少なくとも1種類の疎水性物質がオメガ3脂肪酸であり、前記タンパク質凝集体がホエータンパク質凝集体であり、前記負に帯電したポリマーが高メチルエステルペクチンを含む、請求項1記載の水性分散液。
【請求項17】
請求項1記載のマイクロカプセルの水性分散液を含む食品。
【請求項18】
前記食品が炭酸ソーダ飲料である、請求項17記載の食品。
【請求項19】
前記負に帯電したポリマーがペクチンを含む、請求項17記載の食品。
【請求項20】
マイクロカプセルの水性分散液を形成する方法において、
a. タンパク質および水を含むタンパク質溶液を調製する工程、
b. 前記タンパク質溶液を加熱して、タンパク質凝集体の溶液を形成する工程、
c. 前記タンパク質凝集体の溶液を疎水性物質と組み合わせ、均質化して、エマルションを形成する工程、
d. 前記エマルションのpHをpH4.0から5.0に調節する工程、
e. 前記エマルションにブロック型電荷分布を有する負に帯電したポリマーを添加し、均質化する工程、および
f. 前記負に帯電したポリマーおよび前記タンパク質凝集体を、前記疎水性物質と前記水の界面に蓄積させることを含む、マイクロカプセルを製造する工程、
を有してなる方法。
【請求項21】
前記タンパク質溶液が、少なくとも5kDaの分子量を有する球状タンパク質を含む、請求項20記載の方法。
【請求項22】
前記タンパク質溶液が5〜10質量%のタンパク質を含む、請求項20記載の方法。
【請求項23】
前記タンパク質溶液を加熱する工程が、60℃から200℃の温度で行われる、請求項20記載の方法。
【請求項24】
前記タンパク質溶液を加熱する工程が、式t=10,000/(T−59)により定義される期間に亘り行われ、式中、tは分で表された加熱期間であり、Tは℃で表された温度である、請求項20記載の方法。
【請求項25】
前記均質化してエマルションを形成する工程が、800バール(80MPa)および80バール(8MPa)での二段階均質化プロセスである、請求項20記載の方法。
【請求項26】
前記エマルションのpHをpH4.0から5.0に調節する工程が、酸味料の添加により行われる、請求項20記載の方法。
【請求項27】
前記酸味料が、クエン酸、グルコノデルタラクトン、アジピン酸、酢酸およびそれらの任意のものの組合せを含む、請求項26記載の方法。
【請求項28】
前記マイクロカプセルが、0.01〜45質量%の疎水性物質、0.01〜5質量%のタンパク質凝集体、および0.001〜1質量%の負に帯電したポリマーを含む、請求項20記載の方法。
【請求項29】
前記負に帯電したポリマーがペクチンを含む、請求項20記載の方法。
【請求項30】
マイクロカプセルを含む食品において、前記マイクロカプセルが、
a.少なくとも1種類の疎水性物質と、
b.該少なくとも1種類の疎水性物質の周りの界面層であって、
i. 少なくとも50質量%変性された変性球状タンパク質を含む、タンパク質凝集体、および
ii. ブロック型電荷分布を有する負に帯電したポリマー、
を含む界面層と、
を有してなり、
前記界面層が、10:1から1:4の範囲の質量比で前記タンパク質凝集体および負に帯電したポリマーを含み、かつ0.005−10μmの厚さを有し、さらに
該食品が1.5から3.8のpHを有する、食品。
【請求項31】
前記負に帯電したポリマーがペクチンを含む、請求項30記載の食品。
【請求項32】
マイクロカプセルの水性分散液において、該マイクロカプセルが、
a.オメガ3脂肪酸を含む少なくとも1種類の疎水性物質と、
b.該少なくとも1種類の疎水性物質の周りの界面層であって、
i. 少なくとも50質量%変性された変性ホエータンパク質を含むタンパク質凝集体、および
ii. ペクチン、
を含む界面層と、
を有してなり、
前記界面層が、10:1から1:4の範囲の質量比で前記タンパク質凝集体および負に帯電したポリマーを含み、かつ0.005−10μmの厚さを有し、さらに
該水性分散液が3.5未満のpHを有する、マイクロカプセルの水性分散液。
【発明の詳細な説明】
【0001】
本出願は、2012年2月8日に出願され、「油含有マイクロカプセルを含む酸性含水製品およびその製造方法」と題する米国特許出願第13/368542号(代理人事件番号056943.00964)に優先権を主張するものであり、その全開示がここに引用される。
【技術分野】
【0002】
本発明は、酸性水溶液系中の疎水性物質を保護する分野に関し、より詳しくは、食品などの酸性水溶液系中の疎水性物質を含有するマイクロカプセルに関する。
【背景技術】
【0003】
例えば、飲料などの食品中の成分として、特定の疎水性物質が望ましい。ある場合には、そのような疎水性物質は、許容される風味または風味プロファイルを持たないか、または酸性環境中において十分には安定ではない。そのような疎水性物質の例としては、オメガ3脂肪酸、水不溶性香味料、水不溶性ビタミンなどが挙げられる。特定の疎水性物質が、有益な健康効果を有することが発見された。例えば、オメガ3およびオメガ6脂肪酸は、食餌の重要な部分を形成する。オメガ3脂肪酸の長鎖形態である、エイコサペンタエン酸(EPA)およびドコサヘキサエン酸(DHA)は、多くの場合、数ある健康上の利益の中でも、脳と心臓血管の健康および機能を支援することが理解されている。オメガ3脂肪酸の消費量を増加させるべきであると提案されてきた。
【0004】
以前は、疎水性物質は、溶液(相溶性溶媒による)、抽出物、エマルション、またはミセル分散液(いわゆるマイクロエマルション)として水溶液系中に直接含まれていた。これらの手法の全ては、その疎水性物質を水溶液系中に分散させる働きをするが、加水分解および酸化に対する長期の保護を提供しない。市販の魚油は、オメガ3脂肪酸の量が多いことがあり、ある場合には、「被包されている」が、これらの市販の魚油は、全ての食品の状況において適切に安定である、例えば、酸性食品中において物理的安定性または風味安定性であるとは実証されていない。このことは、摂取後の不快な魚臭い風味と芳香、特に、げっぷにより胃から魚油が出ることにより生じる魚臭い後味などの、マイナスの変化を食品にもたらし得る。その上、オメガ3脂肪酸、並びに多くの水不溶性香味料、水不溶性ビタミンなどは、空気、水および/または光に曝露された場合、例えば、酸化または加水分解による、劣化に対して不安定である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
その組成が1種類以上の疎水性物質を含む、食品中に使用するのに適した食用組成物を提供することが望ましいであろう。また、そのような食用組成物を含む食品を提供することも望ましいであろう。
【課題を解決するための手段】
【0006】
下記に開示された新たな組成物の実施の形態の少なくともあるものは、ヒトまたは動物が消費するのに適した食品中の成分として使用された場合、含まれる1種類以上の疎水性物質の不快な風味および臭いを低減させるまたはなくすことができる。下記に開示された新たな組成物の実施の形態の少なくともあるものは、食品などの水溶液系中に使用するために安定形態にある疎水性物質を提供する。少なくともいくつかの実施の形態において、その疎水性物質は、食品の貯蔵寿命中に酸化および加水分解に対して安定である。少なくともいくつかの実施の形態において、その疎水性物質は、食品の貯蔵寿命中に酸化および加水分解に対して安定である。少なくともいくつかの実施の形態において、その疎水性物質は、酸性食品において、例えば、pH5.0未満のpHおよびある場合にはpH3.5未満のpHの食品において、酸化および加水分解に対して安定である。ここに開示された食品のいくつかまたは全ての追加の特徴および利点は、以下の要約および非限定的実施例の説明の恩恵を受けた食品技術における当業者にとって明らかになるであろう。
【0007】
本発明の態様は、例えば、酸性食品などの食品中に含ませてもよい疎水性物質の送達系に関する。疎水性物質を、タンパク質凝集体および負に帯電したポリマーから形成されたマイクロカプセル中に被包することによって、例えば、食品中に含ませる最中、出荷中、貯蔵中などに、時間とともに疎水性物質にそうしなければ生じるであろう1つ以上のマイナスの効果(例えば、酸化、異臭、不快な芳香など)を低減するまたはなくすことができる。
【0008】
1つの態様において、少なくとも1種類の疎水性物質およびこの少なくとも1種類の疎水性物質の周りの層を有するマイクロカプセルの水性分散液を含む食品が提供される。この層は、タンパク質凝集体およびブロック型電荷分布を有する負に帯電したポリマーを含む。その食品は、マイクロカプセルの水性分散液と共に少なくとも第2の食品成分を含む。
【0009】
ある実施の形態において、すなわち、ここに開示された送達系、水性分散液、および食品の態様のある非限定的実施例または実施の形態において、タンパク質凝集体は、変性タンパク質、例えば、変性球状タンパク質、例えば、少なくとも50質量%変性された、または少なくとも70質量%変性された球状タンパク質を含む、またはから実質的になる。ある実施の形態は、少なくとも80質量%変性された変性球状タンパク質を含む、またはから実質的になる。ある実施の形態において、変性球状タンパク質は、変性ホエータンパク質、変性卵タンパク質、変性大豆タンパク質、変性ハウチワマメ(lupine)タンパク質、変性米タンパク質、変性エンドウ豆タンパク質、変性小麦タンパク質、およびそれらの任意のものの組合せから選択してよい。ある実施の形態において、少なくとも1種類の疎水性物質は、脂質、水不溶性ビタミン、水不溶性ステロール、水不溶性フラボノイド、香味料、および精油を含んでよい。ある実施の形態において、負に帯電したポリマーはペクチンを含んでよく、そのペクチンは、高エステルペクチン、低エステルペクチン、アミド化ペクチン、およびそれらの任意のものの組合せから選択してよい。いくつかの実施の形態において、少なくとも1種類の疎水性物質はオメガ3脂肪酸を含み、タンパク質凝集体はホエータンパク質を含み、負に帯電したポリマーは高メチルエステルペクチンを含む。ある実施の形態において、その食品は、飲料であり、酸性飲料であってよい。
【0010】
第2の態様において、マイクロカプセルの水性分散液を調製する方法が提供される。この方法は、a)タンパク質と水を含むタンパク質溶液を調製する工程、b)そのタンパク質溶液を加熱して、タンパク質凝集体の溶液を形成する工程、c)このタンパク質凝集体の溶液と疎水性物質を組み合わせ、均質化して、エマルションを形成する工程、d)そのエマルションのpHをpH4.0から5.0に調節する工程、e)このエマルションに、ブロック型電荷分布を有する負に帯電したポリマーを加え、均質化する工程、およびf)マイクロカプセルを製造する工程であって、その負に帯電したポリマーおよびタンパク質凝集体を、疎水性物質と水の界面に蓄積させることを含む工程を有してなる。
【0011】
開示された方法の態様のある実施の形態において、タンパク質の溶液は、式t=10,000/(T−59)により定義される期間に亘り、60℃から200℃の温度で加熱され、式中、tは分で表された持続時間であり、Tは摂氏度で表された温度である。ある実施の形態において、タンパク質凝集体と少なくとも1種類の疎水性物質のエマルションのpHは、酸味料によって、4.0から5.0のpHに調節される。いくつかの実施の形態において、タンパク質凝集体、少なくとも1種類の疎水性物質、および負に帯電したポリマーのエマルションは、0.01質量%の疎水性物質、0.01〜5質量%のタンパク質凝集体、および0.001〜1質量%の負に帯電したポリマーを含む。いくつかの実施の形態において、負に帯電したポリマーはペクチンを含む。
【0012】
第3の態様において、少なくとも1種類の疎水性物質およびその少なくとも1種類の疎水性物質の周りの層を含むマイクロカプセルであって、その層がタンパク質凝集体およびブロック型電荷分布を有する負に帯電したポリマーを含む、マイクロカプセルが提供される。
【0013】
第4の態様において、少なくとも1種類の疎水性物質およびその少なくとも1種類の疎水性物質の周りの層を含むマイクロカプセルの水性分散液であって、その層がタンパク質凝集体およびブロック型電荷分布を有する負に帯電したポリマーを含む、マイクロカプセル分散液が提供される。
【0014】
第5の態様において、マイクロカプセルを含む食品が提供される。このマイクロカプセルは、少なくとも1種類の疎水性物質およびその少なくとも1種類の疎水性物質の周りの層を含み、その層は、タンパク質凝集体およびペクチンを含む。
【0015】
第6の態様において、マイクロカプセルの水性分散液は、a)タンパク質と水を含むタンパク質溶液を調製する工程、b)そのタンパク質溶液を加熱して、タンパク質凝集体の溶液を形成する工程、c)このタンパク質凝集体の溶液と疎水性物質を組み合わせ、均質化して、エマルションを形成する工程、d)そのエマルションのpHをpH4.0から5.0に調節する工程、e)このエマルションに、ブロック型電荷分布を有する負に帯電したポリマーを加える工程、およびf)その負に帯電したポリマーおよびタンパク質凝集体を、疎水性物質と水の界面に蓄積させ、それによって、マイクロカプセルを製造する工程を有してなる方法によって製造される。
【0016】
第8の態様において、オメガ3脂肪酸を含む少なくとも1種類の疎水性物質と、その少なくとも1種類の疎水性物質の周りの界面層であって、少なくとも50質量%変性された変性ホエータンパク質を含むタンパク質凝集体を含む界面層と、ペクチンとを含むマイクロカプセルの水性分散液が提供される。
【0017】
少なくともある実施の形態において、ここに開示されたマイクロカプセル(油含有マイクロカプセル、疎水性物質を含有するマイクロカプセル、タンパク質凝集体およびペクチンなどの負に帯電したポリマーに基づくマイクロカプセルなどと代わりにまた交換可能にここでは称される)および成分としてそれらを含む食品が、予期せぬ望ましい特性を有することが分かった。例えば、そのような実施の形態のあるものにおいて、タンパク質凝集体および負に帯電したポリマーに基づくマイクロカプセルは、驚くほど長期間に亘り水溶液系中、例えば、飲料、飲料濃縮物などの中に懸濁されたままでいられる。そのような実施の形態のあるものにおいて、タンパク質凝集体およびペクチンなどの負に帯電したポリマーに基づくマイクロカプセルは、驚くほど長期間に亘り、pH5.0未満の、ある場合には、pH3.5未満のpH値を有する酸性水溶液系、例えば、飲料、飲料濃縮物などの中において懸濁されたままでいられる。さらに、少なくともいくつかの実施の形態において、タンパク質凝集体の溶液および負に帯電したポリマーを含有する界面層は、酸化および/または加水分解などに対してマイクロカプセル中の疎水性物質を効果的に保護することが分かった。
【0018】
ここに開示された本発明のこれらと他の態様、利点および特徴は、以下の詳細な説明を参照することによって、より明白になるであろう。さらに、ここに記載された様々な実施の形態の特徴および要素は、相互に排他的ではなく、他の特徴および要素の有無にかかわらずに、そのような特徴に排他的ではないことが理解されよう。本開示は、任意の他の組合せまたは置換を有する他の実施の形態も含む。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図面において、同様の参照文字は概して、異なる図面に亘り同じ部分を指す。また、図面は、必ずしも同じ縮尺で描かれておらず、その代わりに、本発明の原理を説明する際に、一般に強調されている。以下の説明において、本発明の様々な実施の形態は、以下の図面を参照して記載される。
【発明を実施するための形態】
【0020】
ここに開示された本発明の主題の様々な実施例および実施の形態は、可能であり、本開示の恩恵を受ければ、当業者に明白であろう。本開示において、「ある例示の実施の形態」(および類似の句)の言及は、それらの実施の形態は、本発明の主題の単なる非限定的例であること、および排除されない他の代わりの実施の形態があると思われることを意味する。別記しない限り、またはそうでなければ記載された文脈から明白ではない限り、下記の実施の形態と実施例、および先の要約における代わりの要素または特徴は、互いに交換可能である。すなわち、1つの実施例に記載された要素は、別の実施例に記載された1つ以上の対応する要素と交換または置換してよい。同様に、特定の実施の形態または実施例に関連して開示された随意的なまたは必須ではない特徴は、開示された主題の任意の他の実施の形態に使用するために開示されていると理解すべきである。より一般に、それらの実施例の要素は、ここに開示されたデバイスおよび方法の他の態様および実施例に使用するために、広く開示されていると理解すべきである。作動している、すなわち、1つ以上の機能、タスクおよび/または動作などを行うことができる構成部材または成分への言及は、それが、少なくともある実施の形態において、明白に列挙された機能、タスクおよび/または動作を行うことができ、また1つ以上の他の機能、タスクおよび/または動作も行うように作動するであろうことを意味することが意図されている。本開示は、現在好ましい様式または実施の形態を含む特定の実施例を含むが、当業者には、付随の特許請求の範囲に述べられた発明の精神および範囲内のバリエーションおよび改良が数多くあることが認識されよう。特許請求の範囲に使用される各単語および句は、本開示における使用法および/または任意の関連する技術分野における技術的および工業的用法と調和する辞書的定義の全てを含むことが意図されている。単数形は、特許における通常の慣例的な様式で、特許請求の範囲に使用されており、「少なくとも1つ」または「1つ以上」を意味する。「含む(comprising)」という単語は、慣例的な制限のない意味を有する、すなわち、請求項により定義された製品またはプロセスが、明白に列挙されたものを越えて、追加の特徴、要素などを必要に応じて有してもよいことを意味するように、請求項に使用される。「から実質的になる(consisting essentially of)」という句は、定義された製品またはプロセスは、列挙された成分を必ず含み、本発明の基本的な性質および新規の性質に実質的に影響しない、列挙されていない成分を受け入れることを示唆するために使用される。
【0021】
本発明の態様は、食品に含ませるのに適した安定な組成物を提供する、疎水性物質のためのここに開示されたマイクロカプセル、すなわち、常温貯蔵、食品製造における使用、および酸性食品中に含まれたときの常温貯蔵に安定なマイクロカプセルに関する。このマイクロカプセルは、魚油などの多くの疎水性物質の不快な風味および臭いを低減させるかまたはなくし、不安定な疎水性物質の、例えば、酸化または加水分解による、劣化を減少させる。これらのマイクロカプセルは、向上した栄養価を提供するために、健康上の利益に関連する食品、例えば、オレンジジュースに含まれてもよい。その上、このマイクロカプセルは、食品、例えば、炭酸ソフトドリンクに含まれてもよい。そのような疎水性物質をマイクロカプセル中に被包することによって、食品に対する可能性のあるマイナスの視覚変化および物理的変化が低減されるか、避けられるであろう。結果として得られた食品は、消費者にとって魅力的であり、並びに安定であり、適切な貯蔵寿命を有する。
【0022】
ある実施の形態において、マイクロカプセルは水性分散液中に提供される。ここに用いたように、「水性分散液」は、液体水の媒体全体に亘り分布した粒子、例えば、懸濁液、コロイド、エマルション、ゾルなどとして定義される。液体水の媒体は、純水であってよく、または例えば、エタノールまたは他のアルコール、プロピレングリコール、グリセリン、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミドなどの、少なくとも1種類の水混和性溶媒と水との混合物であってよい。ある実施の形態において、約1体積%と約20体積%の間、例えば、5%、10%、または15%などの、かなりの濃度の水混和性溶媒が、マイクロカプセルの水性分散液中にあるであろう。他の実施の形態において、マイクロカプセルは食品中で薄められ、水混和性溶媒の濃度はごくわずかである。
【0023】
ここに用いたように、「マイクロカプセル」は、1種類以上の疎水性物質、例えば、油、水不溶性ビタミン、香料などを含有する明確に認識されるバラバラの粒子であって、その粒子を取り囲む環境から疎水性物質を隔てる界面層により被包されている粒子として定義される。ある実施の形態において、上述した粒子の明確に認識されるバラバラのクラスター(例えば、凝集体)があってもよい。
【0024】
ここに用いたように、「疎水性物質」は、油、脂質、水不溶性ビタミン(例えば、α−トコフェロール)、水不溶性ステロール、水不溶性フラボノイド、香料または精油などの、水不混和性材料を称する。本発明にしたがって使用される油は、固体、液体またはその両方の混合物であって差し支えない。
【0025】
ここに用いたように、「脂質」は、遊離脂肪酸を含む、1種類以上の脂肪酸残基を含有するどのような物質も包含する。それゆえ、「脂質」という用語は、例えば、トリグリセリド、ジグリセリド、モノグリセリド、遊離脂肪酸、リン脂質、またはそれらの任意のものの組合せを包含する。
【0026】
ここに用いたように、「脂肪酸」は、遊離脂肪酸並びに脂肪酸残基を包含する。ここで脂肪酸の質量百分率を参照したときはいつでも、この質量百分率は、遊離脂肪酸並びに脂肪酸残基(例えば、トリグリセリド中に含まれる脂肪酸残基)を含む。さらに、ここに用いたように、「ポリ不飽和脂肪酸」(PUFA)は、炭素鎖中に2つ以上の二重結合を含有する任意の脂肪酸を包含する。
【0027】
ここに用いたように、「タンパク質」は、鎖状に配列され、隣接するアミノ酸残基のカルボキシル基とアミノ基との間のペプチド結合によって互いに結合されたアミノ酸から構成されたポリマーを称する。典型的に、タンパク質は少なくとも10のアミノ酸残基を含有する。本発明にしたがって使用されるタンパク質は、例えば、無傷の天然に生じるタンパク質、タンパク質加水分解物、または合成タンパク質であって差し支えない。さらに、ここに用いたように、「球状タンパク質」は、球形の三次構造に近いタンパク質を称し、ここで、分子の無極(疎水性)アミノ酸は分子の内部に向けられており、分子の極性(親水性)アミノ酸は外側に向けられており、水との双極子間相互作用が可能になる。タンパク質の極性側基は、タンパク質分子内の原子の他の極性基に、またはタンパク質の周りの極性分子に、引力を及ぼす傾向にある。同様に、非極性側基は、タンパク質内の他の非極性側基に引力(異なる性質の)を働かせる。球状タンパク質分子がとる形状は、両方のタイプの引力を最大にする傾向にあり、それによって、非極性側鎖が内側を「向き(point)」、互いに相互作用し、極性側基は、隣接する極性水分子に曝露されるように外側を向く。いくつかの実施の形態において、熱処理の際に、これらの引力は、熱エネルギーに圧倒されるようになり、タンパク質の折り畳み構造がほどけ始める。タンパク質のアンフォールディングは、ここでは「変性」として知られている。部分的しか折り畳み構造がほどけていない、すなわち、三次および二次構造をある程度失ったタンパク質は、「部分的に変性」されている。ここに用いたように、「変性タンパク質」は、活性タンパク質となる点まで変性されたタンパク質を称する。変性タンパク質は、例えば、少なくとも50%、少なくとも70%、または少なくとも80%折り畳み構造がほどけていてよい。
【0028】
ここに用いたように、「ブロック型電荷(blockwise charge)」は、全体としてのポリマーよりも高い電荷密度を有する区域を形成する、ポリマーに沿って位置するイオン電荷のブロックを称する。例えば、ブロック型電荷分布を有する負に帯電したポリマーは、ポリマーに沿って分布した酸性基のクラスターによるものであろう、より高い負のイオン電荷のブロックを有してよく、それによって、負の電荷が、均一ではなくブロック状にポリマーに沿って分布する。
【0029】
ここに用いたように、「界面層」は、マイクロカプセル内の1種類以上の疎水性物質を周囲環境(例えば、水性液体またはガス状雰囲気)から分離する層である。ここに用いたように、「タンパク質界面層」は、水を除いて、少なくとも25質量%、好ましくは少なくとも50質量%のタンパク質および/またはタンパク質凝集体などのタンパク質誘導体を含有する界面層である。さらに、ここに用いたように、「界面層はタンパク質凝集体およびペクチンから主になる」とは、水を除いた界面層が、タンパク質凝集体およびペクチンから主になることを意味する。この界面層の組成は、必要であれば、マイクロカプセルを他の製品成分から単離し、その後、水と油(油中に捕捉された任意の成分を含む)を除去し、そのようにして得られた残留物を分析することによって、適切に決定されるであろう。
【0030】
ある実施の形態において、少なくとも1種類のタンパク質を含む水溶液が調製される。この水溶液は、必要に応じて他の成分と共に、水中に、または他の溶媒を含む水中に、例えば、5から10質量%のタンパク質を含んでよい。この少なくとも1種類のタンパク質は、例えば、ベータ−ラクトグロブリン、アルファ−ラクトグロブリン、ホエータンパク質単離体、ホエータンパク質濃縮物などのなどのホエータンパク質、卵タンパク質、ハウチワマメタンパク質、大豆タンパク質、米タンパク質、エンドウ豆タンパク質、小麦タンパク質、またはそれらの任意のものの組合せを含む、またはから実質的になってよい。ある実施の形態において、少なくとも1種類のタンパク質は、例えば、少なくとも5kDa、あるいは、少なくとも10kDaの分子量を有する球状タンパク質を含む。いくつかの実施の形態において、例えば、球状タンパク質のモル質量が20kDaより大きい場合、前記水溶液に高剪断混合を行ってよい。少なくとも1種類のタンパク質の水溶液は、少なくともtと等しい期間に亘り60から200℃の範囲内の温度で加熱され、この加熱期間tは、式:
【0032】
により決定され、式中、t=加熱期間(分で表される)、T=加熱温度(℃で表される)。最小の凝集体を得るのに必要な温度と時間は、例えば、使用されるタンパク質のタイプ、印加される剪断力、溶液のpH、または存在する塩に応じて様々であろう。少なくとも1種類のタンパク質の水溶液の熱処理により、タンパク質凝集体の水溶液が生じると現在理解されている。
【0033】
その水溶液中のタンパク質凝集体は、少なくとも1種類の変性球状タンパク質を含む。いくつかの実施の形態において、少なくとも1種類の球状タンパク質は部分的にしか変性されていなくてもよい。ある実施の形態において、少なくとも1種類の球状タンパク質は、少なくとも50%変性されていてよい。ある実施の形態において、タンパク質凝集体は、例えば、少なくとも50質量%、少なくとも70質量%、または少なくとも80質量%変性されている変性球状タンパク質を含む。ある実施の形態において、少なくとも1種類の変性球状タンパク質は、変性ホエータンパク質、変性卵タンパク質、変性大豆タンパク質、変性ハウチワマメタンパク質、変性米タンパク質、変性エンドウ豆タンパク質、変性小麦タンパク質、またはそれらの任意のものの組合せを含む。いくつかの実施の形態において、少なくとも1種類の変性球状タンパク質は変性ホエータンパク質である。ある実施の形態において、タンパク質凝集体は、追加の成分、例えば、タンパク質凝集体に関与できる追加のタンパク質を含む。そのような他のタンパク質の例としては、卵タンパク質、小麦タンパク質、または加熱後に不溶性凝集体を形成できる他のタンパク質が挙げられる。
【0034】
ある実施の形態において、タンパク質凝集体は、例えば、5〜250nm、10〜150nm、または20〜100nmの範囲内の体積加重平均直径を有する。タンパク質凝集体の直径は、例えば、光散乱技法によって測定してよい。
【0035】
ある実施の形態において、タンパク質凝集体の水溶液を疎水性物質と組み合わせることによって、エマルションが調製される。ある実施の形態において、その疎水性物質は、例えば、油滴である。ある実施の形態において、その油滴は、親油性栄養素または水不溶性香味料である。ある実施の形態において、タンパク質凝集体は蓄積して、油滴の周りに界面層を形成する。
【0036】
ある実施の形態において、前記エマルションは、タンパク質凝集体が界面層を形成する前に、均質化される。その均質化は、例えば、二段階均質化プロセス(すなわち、800バール(80MPa)および80バール(8MPa))を含むどのような適切な技法によって行っても差し支えない。均質化後、タンパク質凝集体は水と油の界面で蓄積して界面層を形成し、それによって、水性分散液中にマイクロカプセルを形成する。ある実施の形態において、エマルションの調製後に、酸味料を添加してもよい。その酸味料は、どのような食品グレードの酸味料、例えば、クエン酸、グルコノデルタラクトン、アジピン酸、酢酸、リン酸、酒石酸およびそれらの任意のものの組合せであってよい。いくつかの実施の形態において、エマルションは、抗菌剤により処理されても、照射されても、または無菌包装されてもよい。
【0037】
ある実施の形態において、親油性栄養素は、脂溶性ビタミン(例えば、ビタミンA、D、E、およびK)、トコトリエノール、カロチノイド、キサントフィル(例えば、リコピン、ルテイン、アスタキサンチン、およびゼアキサンチン)、植物ステロール、スタノールおよびそのエステルを含む脂溶性栄養補給食品、補酵素Q10およびユビキノール、疎水性アミノ酸およびペプチド、精油および抽出物、および脂肪酸を含んでよい、またはから実質的になってよい。脂肪酸の例としては、共役リノール酸(CLA)、オメガ6脂肪酸、およびオメガ3脂肪酸が挙げられるであろう。適切なオメガ3脂肪酸としては、例えば、植物源、例えば、亜麻仁由来の、アルファ−リノレン酸(ALA)などの短鎖オメガ3脂肪酸、およびエイコサペンタエン酸(EPA)およびドコサヘキサエン酸(DHA)などの長鎖オメガ3脂肪酸が挙げられる。この長鎖オメガ3脂肪酸は、例えば、海産油(marine oil)または魚油に由来して差し支えない。そのような油は、アンチョビ、カラフトシシャモ、タラ、ニシン、サバ、メンハーデン、サーモン、イワシ、サメおよびマグロなどの様々なタイプの魚または海生動物、または微細藻類などの海生植物、もしくはそれらの任意のものの組合せから抽出することができる。オメガ3脂肪酸の他の供給源としては、肝組織と脳組織および卵が挙げられる。
【0038】
ある実施の形態において、水不溶性香味料は、水に実質的に溶解しない、食品または飲料に所望の香りを提供する任意の物質(例えば、脂質、脂肪、油などの非極性、疎水性物質)を含んでもよい、またはから実質的になってよい。その香味料は、液体、ゲル、コロイド、または粒子状固体、例えば、油、抽出物、含油樹脂などであってよい。水不溶性香味料の例としては、以下に限られないが、柑橘油および抽出物、例えば、オレンジ油、レモン油、グレープフルーツ油、ライム油、シトラールおよびリモネン、堅果油および抽出物、例えば、アーモンド油、ヘーゼルナッツ油、他の果実油および抽出物、例えば、チェリー油、リンゴ油およびイチゴ油、植物油および抽出物、例えば、コーヒー油、ミント油、バニラ油、およびそれらの任意のものの組合せが挙げられる。
【0039】
いくつかの実施の形態において、エマルションの均質化後であって、酸味料の添加後に、タンパク質凝集体と疎水性物質のエマルションに、負に帯電したポリマーが添加される。代わりの実施の形態において、負に帯電したポリマーは、タンパク質凝集体の水溶液の調製中のどの時点においても、例えば、少なくとも1種類のタンパク質の水溶液の加熱の前、最中または後に、添加してもよい。
【0040】
ある実施の形態において、負に帯電したポリマーは、ブロック型電荷分布を有する負に帯電したポリマーを含んでよい、またはから実質的になってよい。いくつかの実施の形態において、負にブロック型に帯電したポリマーは、例えば、ペクチン、カルボキシメチルセルロース、化工デンプン(オクテニルコハク酸化工デンプン)、カラギーナン、アルギネート、部分脱アセチル化キサンタン、または部分脱アセチル化ゲラン、またはそれらの任意のものの組合せであってよい。
【0041】
ある実施の形態において、負に帯電したポリマーは、ペクチンを含んでよい、またはから実質的になってよい。いくつかの実施の形態において、ペクチンは、ブロック型電荷分布を有する負に帯電したペクチンであってよい。ある実施の形態において、ペクチンは、例えば、高エステル(HM)ペクチン(50%以上のエステル化)、低エステル(LM)ペクチン(50%以下のエステル化)、アミド化ペクチン、およびそれらの任意のものの組合せを含む群から選択してよい。いくつかの実施の形態において、ペクチンは高メチルエステルペクチンである。ある実施の形態において、ペクチンは65%超エステル化されている。ある実施の形態において、ペクチンは柑橘ペクチンである。ある実施の形態において、ペクチンは、例えば、60,000〜200,000g/モル、あるいは100,000〜150,000g/モルの分子量を有する。
【0042】
ある実施の形態において、タンパク質凝集体およびペクチンを含む界面層は、例えば、少なくとも55%、または少なくとも70%の合計乾燥質量組成を有する。ある実施の形態において、界面層は、例えば、10:1から1:4または5:1から1:3の質量比でタンパク質凝集体およびペクチンを含む。マイクロカプセルがこの質量比内で界面層を有する場合、マイクロカプセルは、特に高い化学的安定性および物理的安定性を有すると出願人は考えている。ある実施の形態において、マイクロカプセルの少なくとも大部分における界面層の厚さは、例えば、0.005から10μm、0.05から5μm、または0.1から1μmの範囲内である。
【0043】
ある実施の形態において、マイクロカプセルは、例えば、1:1.3未満または1:1.2未満の比[X]:[Y]により特徴付けられ、ここで、[X]は、75mgのマイクロカプセルが、3.0から7.0の範囲内の任意のpHで5℃の温度を有する50mlの希釈水中に分散された場合に溶解され得る、界面層中に含まれるタンパク質凝集体の質量百分率であり、[Y]は、75mgのマイクロカプセルが、3.0から7.0の範囲内の任意のpHで5℃の温度を有する50mlの2質量%ジチオスレイトール(DTT)の水溶液中に分散された場合に溶解され得る、界面層中に含まれるタンパク質凝集体の質量百分率である。
【0044】
ある実施の形態において、前記エマルションは、例えば、0.01〜45質量%、あるいは0.01〜20質量%の分散油;0.001〜5質量%、あるいは0.001〜2質量%のタンパク質凝集体;0.001〜1質量%の負に帯電したポリマー;45〜99.99質量%、あるいは70〜99.99質量%の水を含み、ここで、様々な成分は一緒に、例えば、エマルションの少なくとも95質量%に相当する。
【0045】
ある実施の形態において、前記油滴は、オメガ3脂肪酸、オメガ6脂肪酸およびそれらの任意のものの組合せから選択される1種類以上のポリ不飽和脂肪酸を、例えば、少なくとも3質量%、あるいは10質量%含有する。ある実施の形態において、1種類以上のポリ不飽和脂肪酸は、DHA、EPA、CLA、およびそれらの任意のものの組合せから選択される。代わりの実施の形態において、油滴は、例えば、少なくとも50質量%、少なくとも70質量%、または少なくとも80質量%の脂質を含有する。
【0046】
ある実施の形態において、本発明のマイクロカプセルは、例えば、0.1〜100μm、0.3〜50μm、0.5〜30μm、または0.7〜20μmの範囲の体積加重平均直径を有する。ある実施の形態において、マイクロカプセル中の油滴は、例えば、0.01〜20μmの範囲の直径を有する。他の実施の形態において、油滴は、例えば、0.1〜10μmの範囲の直径を有する。
【0047】
ある実施の形態において、油滴は、例えば、マイクロカプセルの少なくとも5質量%、少なくとも10質量%、少なくとも20質量%、または少なくとも35質量%に相当する。ある実施の形態において、油滴は、マイクロカプセルの80質量%以下に相当する。ある実施の形態において、油滴は、典型的に、例えば、40℃未満、30℃未満、または15℃未満の融点を有する。
【0048】
ある実施の形態において、タンパク質凝集体の溶液は、例えば、約pH6.0からpH7.0の中性pHで調製される。ある実施の形態において、タンパク質凝集体および少なくとも1種類の疎水性物質から形成されるエマルションは、例えば、約pH4.0からpH5.0のpHに調節される。ある実施の形態において、エマルションのpHが調節された後に、ペクチンを加えてよい。いくつかの実施の形態において、次いで、マイクロカプセルを含有する水性分散液は、例えば、pH1.0からpH5.5のpHであってよい酸性食品に加えられる。いくつかの実施の形態において、マイクロカプセルの水性分散液は、少なくともpH3.0の最終pHを有する食品に加えられる。
【0049】
ある実施の形態において、本発明の水性分散液は、マイクロカプセルに加え、他の分散された成分を含有してよい。ある実施の形態において、その分散液は、分散されたマイクロカプセルを含む、1種類以上の分散された食用成分を20質量%未満含有する。
【0050】
ある実施の形態において、マイクロカプセルは、例えば、マイクロカプセルの実質的なゲル化または実質的な硬化によって、実質的に追加に安定化されない。ある代わりの実施の形態において、タンパク質凝集体は、例えば、架橋剤、例えば、グルタルアルデヒドを使用することによって、架橋されてもよい。代わりの実施の形態において、タンパク質凝集体は、タンパク質分子の間にジスルフィド架橋を形成することによって、架橋されてもよい。
【0051】
ある実施の形態において、マイクロカプセルの水性分散液は水性分散液として維持される。代わりの実施の形態において、マイクロカプセルの水性分散液は、例えば、噴霧乾燥、凍結乾燥、ドラム乾燥、または層乾燥される。ある実施の形態において、マイクロカプセルの水性分散液は、水性分散液として維持される場合、微生物の成長から保護されるように処理される。ある実施の形態において、マイクロカプセルの水性分散液は、例えば、低温殺菌される;無菌包装される;ヘキサメタリン酸ナトリウム(SHMP)、プロピオン酸カルシウム、ソルビン酸カルシウム、ソルビン酸カリウム、クエン酸ナトリウム、クエン酸カリウム、安息香酸カルシウム、安息香酸ナトリウム、安息香酸カリウム、硝酸ナトリウム、塩化ナトリウム、二酸化硫黄、ナタマイシン、ナイシン、亜硫酸塩(二酸化硫黄、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸水素カリウムなど)またはEDTA二ナトリウムなどの化学保存料により処理される;クエン酸、グルコノデルタラクトン、アジピン酸、リン酸、酢酸、酒石酸、コハク酸、またはHClなどの酸により処理される;炭酸化される;またはそれらの任意のものの組合せの処理がされる。いくつかの実施の形態において、マイクロカプセルの水性分散液は、製造中に空気との接触が最小にされ、製造後に低温殺菌され、光への曝露が制限された冷蔵庫内に貯蔵される。
【0052】
ある実施の形態において、マイクロカプセルは食品中に分散される。ある実施の形態において、マイクロカプセルの水性分散液は、例えば、連続水相の0.03〜10質量%、またはいくつかの実施の形態において、0.1〜5質量%の濃度で分散したマイクロカプセルを含有する。ある実施の形態において、水性分散液は、限られた量のマイクロカプセルを含有し、連続水相は、水性分散液の大半、例えば、少なくとも70質量%、80〜99.9質量%、または90〜99.9質量%を占める。
【0053】
ある実施の形態において、マイクロカプセルの水性分散液は、マイクロカプセルを、例えば、食品に送達するために使用できる注ぐことのできる濃縮物である。この実施の形態によれば、水性分散液は、10〜50質量%のマイクロカプセルおよび50〜10質量%の連続水相を含有する。
【0054】
ある実施の形態において、例えば、少なくとも1質量%、少なくとも5質量%、または少なくとも10質量%の分散したマイクロカプセルを含有する濃縮マイクロカプセル組成物が調製される。ある実施の形態において、濃縮マイクロカプセル組成物は、食品を製造するために、水、およびある実施の形態において、他の成分と組み合わされる。ある実施の形態において、濃縮マイクロカプセル組成物の水および他の成分との組合せにより、例えば、少なくとも3、あるいは少なくとも5の希釈係数(最終体積/濃縮マイクロカプセル組成物の体積)が生じる。ある実施の形態において、希釈係数は1000を超えない。
【0055】
ある実施の形態において、上述したマイクロカプセルの形態にある疎水性物質が所望の量で食品に含まれる。マイクロカプセルの量、およびそれゆえ食品に含まれる疎水性物質の量は、食品の用途と所望の風味特徴に応じて様々であってよい。マイクロカプセルは、本開示の恩恵を受けた当業者により認識されるように、いくつの様式で食品に加えられてもよい。ある実施の形態において、マイクロカプセルは、実質的に均一な分布、例えば、安定な分散液を提供するために、食品中で十分に混合される。混合は、マイクロカプセルが破壊されないように行われるべきである。マイクロカプセルが破壊されると、疎水性物質が酸化されてしまうかもしれない。ミキサは、少なくとも一部には、使用する成分のタイプと量、使用する成分の粘度、製造すべき製品の量、流量、およびマイクロカプセルなどの成分の剪断力または剪断応力に対する感度に基づいて、特別の用途に選択することができる。
【0056】
上述したマイクロカプセルを使用した疎水性物質の被包は、疎水性物質を、例えば、酸化および加水分解による劣化から保護することによって、疎水性物質を安定化させる。酸性食品に含まれる場合、マイクロカプセルは、食品の貯蔵寿命に亘り疎水性物質の安定な分散液を提供できる。マイクロカプセルの貯蔵寿命に影響するかもしれない要因としては、製品が経る加工レベル、包装のタイプ、および製品の包装に使用される材料が挙げられる。製品の貯蔵寿命に影響するかもしれない追加の要因の例としては、基本処方の性質(例えば、砂糖で甘くされた酸性飲料は、アスパルテームで甘くされた酸性飲料よりも長い貯蔵寿命を有する)および環境条件(例えば、高温および日光への曝露は、そのまま飲める(ready-to-drink)飲料にとって有害である)が挙げられる。
【0057】
ある実施の形態において、食品は飲料である。ある実施の形態において、飲料としては、そのまま飲める飲料、飲料濃縮物、シロップ、常温で長期保存可能な飲料、冷蔵飲料、冷凍飲料などが挙げられる。いくつかの実施の形態において、飲料は、酸性である、例えば、約pH5.0未満の範囲内のpH値、ある実施の形態において、約pH1.0から約pH4.5の範囲内のpH値、またはある実施の形態において、約pH1.5から約pH3.8の範囲内のpH値を有する。いくつかの実施の形態において、飲料は3.0のpHを有する。飲料の例としては、以下に限られないが、炭酸および非炭酸ソフトドリンク、自販機の飲料、液体濃縮物、果汁および果汁風味の飲料、スポーツドリンク、エナジードリンク、強化/補強水ドリンク、大豆飲料、野菜飲料、穀物に基づく飲料(例えば、麦芽飲料)、発酵飲料(例えば、ヨーグルトおよびケフィア)、コーヒー飲料、お茶飲料、乳飲料、およびそれらの混合物が挙げられる。例示の果汁源としては、柑橘果物、例えば、オレンジ、グレープフルーツ、レモンおよびライム、ベリー、例えば、クランベリー、ラズベリー、ブルーベリーおよびイチゴ、リンゴ、ブドウ、パイナップル、プルーン、洋ナシ、モモ、チェリー、マンゴー、およびザクロが挙げられる。飲料製品としては、ボトル、缶、およびカートン製品および飲料製造器用シロップ用途が挙げられる。
【0058】
他の食品のある実施の形態は、発酵食品、ヨーグルト、サワークリーム、チーズ、サルサ、ランチディップ、フルーツソース、フルーツゼリー、フルーツジャム、フルーツの砂糖煮などが挙げられる。ある実施の形態において、食品は、酸性である、例えば、約pH5.0未満の範囲内のpH値、ある実施の形態において、約pH1.0から約pH4.5の範囲内のpH値、またはある実施の形態において、約pH1.5から約pH3.8の範囲内のpH値を有する。いくつかの実施の形態において、食品は3.0のpHを有する。
【0059】
食品は、他の追加の成分を必要に応じて含んでもよい。ある実施の形態において、追加の成分の例としては、ビタミン、ミネラル、甘味料、水溶性香味料、着色料、増粘剤、乳化剤、酸味料、電解質、消泡剤、タンパク質、炭水化物、保存料、水混和性香味料、食用粒子、およびそれらの混合物が挙げられる。ある実施の形態において、他の成分も考えられる。いくつかの実施の形態において、成分は、低温殺菌の前または後、マイクロカプセルの添加前または後を含む、加工中の様々な時点で加えてよい。
【0060】
少なくともある実施の形態において、ここに開示された食品は低温殺菌されてもよい。低温殺菌(pasteurization)プロセスの例としては、超高温(UHT)処理および/または高温短時間(HTS)処理が挙げられる。UHT処理は、直接蒸気圧入または蒸気注入、または熱交換器内での間接的加熱などによる、食品または飲料の高温への曝露を含む。一般に、製品が低温殺菌された後、製品は、特定の製品組成/形態および/または包装充填用途により要求されるように、冷却することができる。例えば、1つの実施の形態において、食品または飲料は、短時間、例えば、約1から60秒に亘り約185°F(85℃)から約250°F(121℃)への加熱に施され、次いで、冷蔵製品については、約36°F(2.2℃)±10°F(5℃)に、常温で長期保存可能な製品または冷蔵製品については周囲温度に、常温で長期保存可能な製品の高温充填用途については、約185°F(85℃)±10°F(5℃)に、急激に冷却される。低温殺菌プロセスは、典型的に、食品が雰囲気または他の可能性のある汚染源に曝露されないように、閉鎖系内で行われる。代わりの実施の形態において、例えば、無菌またはレトルト加工などの、他の低温殺菌または殺菌技法も有用であろう。その上、食品または成分により要求されるように、複数の低温殺菌プロセスを連続してまたは並行して行ってもよい。
【0061】
その上、食品を後処理してもよい。いくつかの実施の形態において、後処理は、典型的に、マイクロカプセルの添加後に行われる。後処理の例としては、製品溶液の冷却および包装と出荷のために容器への充填が挙げられる。ある実施の形態において、後処理は、4.0ppm未満の酸素、好ましくは2.0ppm未満、より好ましくは1.0ppm未満の酸素までの食品の脱気を含んでもよい。代わりの実施の形態において、脱気および他の後処理の作業は、加工前、低温殺菌前、マイクロカプセルとの混合前および/またはマイクロカプセルの添加と同時に行ってよい。その上、ある実施の形態において、不活性ガス(例えば、窒素またはアルゴン)ヘッドスペースは、製品の中間処理および最終的な包装中に維持してよい。その上/代わりに、最終包装において、酸素または紫外線バリアおよび/または脱酸素剤を使用しても差し支えない。
【0062】
以下の実施例は、本発明の特別な実施の形態であるが、それを制限することを意図していない。
【実施例】
【0063】
実施例1
魚油を含有するマイクロカプセルの水性分散液を含有する飲料の調製
本開示の1つの例示の実施の形態によるマイクロカプセルの水性分散液を、以下の方法を使用して調製した。
【0064】
90gのホエータンパク質単離体(WPI)を1000gの水に溶かした。次いで、マグネチック・スターラーを使用して、この水溶液を2時間に亘り撹拌した。この水溶液を2つの別々の溶液(AおよびB)に分けた。
【0065】
溶液Aは、120分間に亘り68.6℃に維持し、次いで、室温まで冷ませた。加熱後、この溶液は、部分的に折り畳み構造がほどけたホエータンパク質分子の凝集体を含有した。その凝集体の直径は、動的光散乱法により決定して、10nmと80nmの間であった。さらに、この溶液は透明であり、混濁していなかった。
【0066】
溶液Bは、室温に維持し、加熱しなかった。
【0067】
220gの溶液A、580gの水および200gの魚油を含むエマルションを、高圧均質化(800/80バール(80/8MPa))によって調製した。このエマルションは、2.5%のタンパク質(水およびタンパク質に基づく、すなわち、魚油の添加前)および20%の魚油を含有する。エマルションのpHは、クエン酸の50%水溶液で3.0のpHに調節した。
【0068】
220gの溶液B、580gの水および200gの魚油を含む第2のエマルションを、高圧均質化(800/80バール(80/8MPa))によって調製した。このエマルションは、2.5%のタンパク質および20%の魚油を含有する。エマルションのpHは、クエン酸の50%水溶液で3.0のpHに調節した。
【0069】
各エマルションの600gを330gの3%高メチル化ペクチン(HM−ペクチン)溶液および70gの水と混合し、120/20バール(12/2MPa)で均質化して、12%の魚油、1.5%のタンパク質および1%のペクチンを含有する2つの新たなエマルションを得た。
【0070】
各エマルションを、pH3のpH値を有する飲料に加えた。エマルションの添加後の飲料の含油量は0.072%であった。次いで、各飲料を、32℃(90°F)での7日間の期間に亘り、クリーミング(creaming)、綿状沈殿、沈降、および魚油の酸化に関連する風味の発生について試験した。
【0071】
WPI凝集体およびHM−ペクチンの組合せにより安定化された魚油を含有する飲料は、増加した安定性を示したのに対し、魚油、天然のWPIおよびHM−ペクチンを含有する飲料は、32℃(90°F)での7日間が終わる前に、綿状沈殿およびクリーミングを示し、酸化に関連する風味と香りの発生を示した。
【0072】
実施例2
魚油を含有するマイクロカプセルの水性分散液を含有する飲料の調製
本開示の別の例示の実施の形態によるマイクロカプセルの水性分散液を有する水溶液を、以下の方法を使用して調製した。
【0073】
60gのオボアルブミン(SigmaグレードIII)を1000gの水に溶かした。次いで、マグネチック・スターラーを使用して、この水溶液を2時間に亘り撹拌した。この水溶液を2つの別々の溶液(AおよびB)に分けた。
【0074】
溶液Aは、30分間に亘り80℃に維持し、次いで、室温まで冷ませた。加熱後、この溶液は、部分的に折り畳み構造がほどけたオボアルブミン分子の凝集体を含有した。その凝集体の直径は、動的光散乱法により決定して、10nmと80nmの間であった。さらに、この溶液は透明であり、混濁していなかった。
【0075】
溶液Bは、室温に維持し、加熱しなかった。
【0076】
330gの溶液A、470gの水および200gの魚油を含むエマルションを、高圧均質化(800/80バール(80/8MPa))によって調製した。このエマルションは、2.5%のタンパク質(水およびタンパク質に基づく、すなわち、魚油の添加前)および20%の魚油を含有する。エマルションのpHは、クエン酸の50%水溶液で3.0のpHに調節した。
【0077】
330gの溶液B、470gの水および200gの魚油を含む第2のエマルションを、高圧均質化(800/80バール(80/8MPa))によって調製した。このエマルションは、2.5%のタンパク質および20%の魚油を含有する。エマルションのpHは、クエン酸の50%水溶液で3.0のpHに調節した。
【0078】
各エマルションの600gを330gの3%高メチル化ペクチン(HM−ペクチン)溶液および70gの水と混合し、120/20バール(12/2MPa)で均質化して、12%の魚油、1.5%のタンパク質および1%のペクチンを含有する2つの新たなエマルションを得た。
【0079】
各エマルションを、pH3のpH値を有する飲料に加えた。エマルションの添加後の飲料の含油量は0.072%であった。次いで、各飲料を、32℃(90°F)での7日間の期間に亘り、クリーミング、綿状沈殿、沈降、および魚油の酸化に関連する風味の発生について試験した。
【0080】
オボアルブミン凝集体およびHM−ペクチンの組合せにより安定化された魚油を含有する飲料は、増加した安定性を示したのに対し、魚油、天然のオブアルブミンおよびHM−ペクチンを含有する飲料は、32℃(90°F)での7日間が終わる前に、綿状沈殿およびクリーミングを示し、酸化に関連する風味と香りの発生を示した。
【0081】
実施例3
魚油を含有する飲料の調製
本開示の別の例示の実施の形態によるマイクロカプセルの水性分散液を有する水溶液を、以下の方法を使用して調製した。
【0082】
本開示の1つの例示の実施の形態によるマイクロカプセルの水性分散液を、以下の方法を使用して調製した。
【0083】
90gのホエータンパク質単離体(WPI)を1000gの水に溶かした。次いで、マグネチック・スターラーを使用して、この水溶液を2時間に亘り撹拌した。この水溶液を2つの別々の溶液(AおよびB)に分けた。
【0084】
溶液Aは、120分間に亘り68.6℃に維持し、次いで、室温まで冷ませた。加熱後、この溶液は、部分的に折り畳み構造がほどけたホエータンパク質分子の凝集体を含有した。その凝集体の直径は、動的光散乱法により決定して、10nmと80nmの間であった。さらに、この溶液は透明であり、混濁していなかった。
【0085】
溶液Bは、室温に維持し、加熱しなかった。
【0086】
220gの溶液A、580gの水および200gの魚油を含むエマルションを、高圧均質化(800/80バール(80/8MPa))によって調製した。このエマルションは、2.5%のタンパク質(水およびタンパク質に基づく、すなわち、魚油の添加前)および20%の魚油を含有する。エマルションのpHは、クエン酸の50%水溶液で3.0のpHに調節した。
【0087】
220gの溶液B、580gの水および200gの魚油を含む第2のエマルションを、高圧均質化(800/80バール(80/8MPa))によって調製した。このエマルションは、2.5%のタンパク質および20%の魚油を含有する。エマルションのpHは、クエン酸の50%水溶液で3.0のpHに調節した。
【0088】
各エマルションの600gを330gの3%低メチル化ペクチン(LM−ペクチン)溶液および70gの水と混合し、120/20バール(12/2MPa)で均質化して、12%の魚油、1.5%のタンパク質および1%のペクチンを含有する2つの新たなエマルションを得た。
【0089】
各エマルションを、pH3のpH値を有する飲料に加えた。エマルションの添加後の飲料の含油量は0.072%であった。次いで、各飲料を、32℃(90°F)での7日間の期間に亘り、クリーミング、綿状沈殿、沈降、および魚油の酸化に関連する風味の発生について試験した。
【0090】
WPI凝集体およびLM−ペクチンの組合せにより安定化された魚油を含有する飲料は、増加した安定性を示したのに対し、魚油、天然のWPIおよびLM−ペクチンを含有する飲料は、32℃(90°F)での7日間が終わる前に、綿状沈殿およびクリーミングを示し、酸化に関連する風味と香りの発生を示した。
【0091】
実施例4
マイクロカプセルの組成
実施例1に記載された飲料を60分間に亘り5000gで遠心分離した。この溶液の上部の魚油含有混濁層から2mlのサンプルをピペットで採取し、標準的な凍結乾燥設備を使用して凍結乾燥した。次に、そのサンプルを、赤外線分光法およびサイズ排除クロマトグラフィーによって、タンパク質(WPI)、ペクチン、および含油量に関して分析した。
【0092】
一方がWPI凝集体を有し、もう一方が天然のWPIを有する、両方の飲料からの結果が、表1に示されている。
【0093】
【表1】
【0094】
本発明を、好ましい実施の形態を参照して説明してきた。先の詳細な説明を読み、理解する際に、改変および変更が他者に想起されることが明白である。本発明は、そのような改変および変更の全てが、付随の特許請求の範囲またはその同等物の範囲に入る限り、それらの全てを含むものと考えられることが意図されている。