(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記溶媒が、アルコール、エステルアルコール、エステル、炭化水素、アルデヒド、ケトン、及びカルボン酸のうちの少なくとも1つを含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
前記溶媒が、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、及びヘキサノールからなる群から選択される、少なくとも1つの第1級、第2級、又は第3級のアルコールを含むことを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【背景技術】
【0003】
押出成形ハニカムセラミックで作製されたディーゼルエンジン粒子フィルター及び触媒基
材は、現行及び将来の排出規制に対応するように設計された近代エンジンの後処理システムにおける重要な構成要素である。コージライトは、基
材用に現状では優位な選択材料であり、さらにディーゼル粒子のフィルター、特に重負荷用途のフィルターとしても使用されている。コージライト系フィルターはまた、ガソリン粒子のフィルター用にも検討されていて、将来の排出基準はそのようなものを必要とするようになるであろう。その他の材料選択肢には、安定化チタン酸アルミニウム(AT)及び再結晶化炭化ケイ素(SiC)又はSi結合炭化ケイ素(SiC)が挙げられる。
【0004】
このような製品は一般的に、押出し成型に続いて乾燥し、高温度の熱処理(焼成)の工程によって製造される。フィルターに関しては、ハニカムチャネルを閉塞させるために追加の工程が必要である。コージライト及びチタン酸アルミニウムのハニカムは合成セラミックスであり、その押出しバッチには、主としてアルミナ、シリカ、チタニアなどの焼成工程で反応して処理済みセラミックを形成する前駆体が含まれる。レオロジー特性を調節し、所望の構造を有する細孔形成を支援するために追加の成分を添加する。処理済み材料は、高温度の熱処理期間で粗原料を化学反応させた後でのみ得られるので、その処理前には、ハニカム構造体及びバッチ材料は一般的に「未焼成(green)」状態にあると称される。
【0005】
可能な材料の差異に加えて、今日のフィルターに使用されるハニカム構造体及び基材は更に、単位面積当たりのセル数(一般的にインチ四方当たりのセル数、(cpsi)と表示)、ウェブ厚さ、及び壁材料の孔隙率特性、すなわち孔隙率及び細孔径分布が異なる。今日市販用に製造される押出し製品の全ては、入り口面から出口面までの壁に沿って、及びあるチャネルから隣接するチャネルまでのウェブを横断して、孔隙率及び細孔径分布が基本的に均一であり、この多孔性特性は主として、未焼成バッチの組成及び後続の熱処理工程のよって決定される。さらにこれら製品は基本的に、入り口から出口までウェブ厚さが一定であり、この厚さは押出しダイの寸法によって決定される。対照的に機械的強度を増加させるために、半径方向でウェブ厚さが変化する、すなわち中心部から表皮までにウェブ厚さが増加する製品が市販されている。この変動は一般的に、押出しダイの異なったスロットサイズにより設計され、さらに部品の主軸に沿った変化はない。
【0006】
基材だけが必要とされる用途(基材がディーゼル粒子フィルターに属する場合チャネルは閉塞されない)では、触媒活性材料が、例示的にはウォッシュコーティング(washcoating)法によって基材上に沈積される。この方法では、触媒材料がその中に分散及び溶解されているスラリー形態で適用される。スリップキャスティング効果作用により触媒粒子は主として基材の幾何学的表面上に沈積し、一部分は実際には基材の細孔構造の内部に浸透し、アンカーとして作用してコーティングと基材の壁との間で良好な接着性をもたらす。接着度合いを高めるために、高い孔隙率及び調整された細孔径を有するウェブ表面が望まれる。しかしながら、コーティングの壁への過剰な浸透があると、拡散限界によって触媒の利用度が低下するので、これを防止するために孔隙率がより低く、かつより微細な細孔を有するウェブが望まれる。さらに孔隙率が非常に低い基材は機械的強度に有利である。
【0007】
今日のディーゼルエンジンで使用されている、いわゆる壁面流フィルター内部における煤ろ過の場合では、煤がフィルター壁に捕捉されるにつれて圧力降下が増加する。このことはエンジン
動作性及び燃料経済性の両視点から望ましくない。そのシステムの全体的圧力降下に対処するために、フィルターは、その期間中に蓄積されたカーボン系物質が酸化される状態に頻繁に暴露(再生)される。一般的に圧力降下は、チャネルの水力直径、流動のための開口面積及びウェブ厚さ及び幾何学的面積又はろ過面積の観点からハニカムの幾何学形状によって決定される。さらに、煤の存在下では圧力降下は微細構造の中に
入り込む煤の量によるもの(深層ろ過)、並びにフィルター壁表面上に蓄積する煤の量によるもの(ケークろ過)によって増加する。多孔質壁における流動制限及び比速度が高いことにより、厚い層の煤(多孔質壁の内部に沈積)の圧力降下に及ぼす影響は、ケークとして沈積した煤と比較して著しく顕著である。この影響は
、細孔径が減少し、
典型的には約10マイクロメートル
を下回る平均細孔径であると低減されることが分かっている。細孔径の減少による欠点は、壁透過性は
、煤が無くても
、細孔径の2乗に比例して減少し、かつ壁厚
に対して直線的に減少することである。従って、大きな細孔径を有し多孔性が高い基材によって支持された、小さい細孔径と高い多孔性の両方を有した薄い表面層であれば、これらの懸案事項の少なくとも一部を解決する助けになるであろう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記のように、煤の蓄積に付帯する圧力上昇により、頻繁なフィルターの再生及び蓄積した煤の酸化による除去が必要となる。
ある条件下では、この酸化工程期間での熱放出が重大になり、制御不可の再生と称される、フィルター内部の温度上昇がもたらされる。極端な場合、熱応力によるフィルター損傷又はフィルター溶融に至ることもある。フィルター材料に関して、体積熱容量(かさ密度×比熱容量)と
極端な煤再生
事象の間に観測されるピーク温度との間に密接な相関関係が見出された。高い値の体積熱容量に対しては、より低い温度が観測される。
その結
果、所定の比熱容量(J/kgK)及び所定の最高温度を有した所定の材料にとって、増加した煤質量の限界に対してより
大きいかさ密度が必要とされる。より
大きいかさ密度は、多孔
度のより
小さい材料を使用するか、又はフィルターを、より
小さい開口チャネル容積を有する、すなわちより厚いウェブを有するように設計するかのいずれかで得られる。フィルター用途では、最も高い温度は
、通常
、フィルター出口で観測され、そのため出口においてより
大きい密度を有することが温度の増加を軽減するであろう。しかしながら、圧力降下に関しては、より
大きい孔隙率及びより薄い壁を有したフィルターが望ましい。基材に関しての上述したトレードオフに類似して、フィルターの設計はこれらの相反する特性を調和させ最適化する必要があるが、連続的な押出しプロセスによって経済的に実現できるそのような設計はこれまで確認されていない。
【0009】
現在、触媒活性材料は基材上のみではなく一部のフィルター上にも同様にコーティングされる。
閉塞された粒子フィルター
の触媒コーティング
は、
典型的には多孔質壁構造の内部に見出される。このことは浸透性の見地から多くの場合で望ましいことであり、
しばしば、フィルターチャネルの交互閉塞パターンによってスラリーが壁を通って流れることになるコーティングプロセスによって
もたらされる。一般的な制限事項は、
ウェブ又は壁を横断する触媒の機能の分離
が、2種以上の触媒活性物質の存在のため
に、技術的に達成困難であるということである。壁の片側に少数の細孔を有した非対称性細孔構造であれば、壁のその側から適用したスラリーの触媒粒子をふるい分けする/スリップキャスティングするのに役立ち、細孔構造の中への相当量の
入り込みが防止
されるであろう。追加の触媒材料をウェブの反対側から適用して、例えば多孔質壁構造の中に沈積させる結果を得ることが可能であろう。ウェブ全域で均質な細孔径及び細孔構造である現況のフィルター製品にとって、このことは不可能ではないにしても、ひいき目に見ても至難のことである。
【0010】
上記の適用例は、網羅的ではないが、
入り口面から出口面までウェブに沿って、またはあるチャネルから隣接するチャネルまでウェブを横断して、異なった特性を有する、ウェブ付基材及びフィルター基材本体に対する
必要性を例証する
。しかしながら、そのような設計は連続的押出しプロセスによって経済的に実行可能な方法で達成できない。ウェブの規模に関するそのような可変性を有した構造体を作製する
ための従来の方法は、上記の触媒コーティング方法に類似した
、焼成
した基材本体に
スラリーを適用することに基づいている。これらの方法は、しかしながら、追加の熱処理工程を必要とし、
一般的に異なった熱機械的特性を有する界面を形成し、
その結果
、熱応力をもたらし、かつ細孔構造体が連続的ではなくむしろ分離した層であるので浸透性が低い。浸透性が低いことは、特性勾配を有した多数の層を使用することによってある程度まで対処可能であるが、これは製造コストが高くなる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本開示の一実施形態は
セルラーセラミック物品の製造方法に関する。本方法は、バインダー材料及び複数のチャネルを含む未焼成の
セルラーセラミック体を提供する工程を含む。さらに、本方法は、未焼成コーティング組成物と溶媒とを含むスラリーで複数のチャネルの少なくとも1つをコーティングして、複数のチャネルの少なくとも1つの上にコーティング層を形成する工程を含む。好ましくは、そのバインダー材料はその溶剤に不溶性であり、スラリーでコーティングする際に複数のチャネルの少なくとも1つは閉塞されない。
【0012】
本開示の別の実施形態は未焼成の
セルラーセラミック体に関する。未焼成の
セルラーセラミック体はバインダー材料と複数のチャネルとを含む。コーティング層は複数のチャネルの少なくとも1つの上にある。コーティング層は、未焼成コーティング組成物と溶媒とを含むスラリーから形成される。好ましくは、そのバインダー材料はその溶媒に不溶性であり、コーティング層でコーティングされた複数のチャネルの少なくとも1つは閉塞されない。
【0013】
本開示のさらに別の実施形態は未焼成
セルラーセラミック体から焼成した
セルラーセラミック物品に関する。未焼成セラミック体は、バインダー材料と複数のチャネルとを含む。コーティング層は複数のチャネルの少なくとも1つの上にある。コーティング層は未焼成のコーティング組成物と溶媒とを含むスラリーから形成される。好ましくは、バインダー材料は溶媒に不溶性であり、コーティング層でコーティングされた複数のチャネルの少なくとも1つは閉塞されない。
【0014】
更なる特徴及び利点を以下の詳細な説明の中で説明し、一部は当業者にはその説明から容易に明らかであり、又は書面による明細及びその請求項、並びに添付の図面に記載のとおり実施形態を実施することによって理解できるであろう。
【0015】
前述の一般的説明及び以下の詳細な説明の両方とも、単に例示となるものであって、特許請求の範囲の概観又は枠組みを提供し特許請求範囲の本質と特性を把握することを目的としたものと理解すべきである。
【0016】
添付の図は更なる理解を与えるために包含され、本明細書に組み入れられてその一部を構成する。図は1つ以上の実施形態を説明し、説明部分とともに各種実施形態の原理及び操作を説明する働きをする。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本明細書では、多孔
質セルラーセラミック物品の特性を目的に合わせるための新規な方法を開示する。その方法は、未焼成の
セルラーセラミックの壁に薄い未焼成コーティングを塗布し、続いてコーティングされたウェアを焼成し、コーティングと壁の両方を所定の多孔質セラミックフィルターに転化させる工程を含む。未焼成の
セルラー体は、好ましくは押出し成形されたハニカムであり、無機前駆体、有機及び無機のバインダー、細孔形成剤、オイル、及び水を含む。未焼成のコーティングは、好ましくは未焼成基材本体に含まれない液体の中から選択された好適な液体媒体と、無機前駆体と、任意の細孔形成剤との混合物である。好適な液体媒体としては、疎水性及び揮発性が許容できる度合いであるなどの妥当性を有するアルコールが挙げられるが、その他の適切な液体も使用できる。未焼成コーティング中のその他の無機及び有機粗原料は、未焼成基材本体の作製に使用されたものと類似の性質又は同一のものであってもよい。さらに、そのコーティングの特性、例えば細孔径及び孔隙率を目的に合わせるために類似の技術的アプローチを使用できる。未焼成コーティング及び基材が焼成される時に、両方の中に存在する前駆体及び細孔形成剤は、反応し及び/又は燃焼し、結果として良好に結合した固相を有する
セルラーセラミック体をもたらす。
【0019】
コーティングが未焼成状態で塗布される
ので、未焼成ウェアの壁は焼成した本体と比較して小さい直径で孔隙率が低い
が、壁を横断して少なくとも2つの比較的明確な別個の領域が形成され、領域の1つは基材材料の未焼成組成物によって決定され、残りの領域はコーティングの未焼成組成物によって決定される。例えば、チャネル壁の両側がコーティングされたり、又は異なる組成物の多数のコーティングが塗布されたりすると、より多数の領域が観測される。好ましくは反応が焼結と同時に発生するので、全ての領域は、良好に結合されることができ、かつ固相の観点からは連続している。さらに、細孔を形成する添加剤からのガス状生成物がそのコーティング層を通過して脱出する必要があるので、両方の領域の細孔空間も非常に良好に結合される。
【0020】
得られた焼成したコーティングセラミックの空間的特性は、未焼成コーティング組成物の選択によって著しく変えることができる。例えば、粒子径及びバッチ材料の適切な選択により、元の基材材料の領域と比較して、より大きい若しくはより小さい細孔径及び/又はより
大きい若しくはより
小さい孔隙率又は異なった化学組
成さえも有するコーティングが形成できる。未焼成状態において、コーティングを追加することは、このコーティングの特性及び均一性を向上できるだけでなく、
少なくとも、一回だけの焼成工程
で済むという
理由で、無機質膜の製造工程におけるコスト及び複雑度をも顕著に減少できる。それに比べて、従来の無機質膜の製造方法は、一般的にコーティング、乾燥及び焼成という多数の工程からなる。
【0021】
壁を横断して又は壁に沿って特性が変化する一体構造の基材材料を提供する工程は、多くの用途で今日見出される
1つまたはそれ以上の問題に対処できる。例えば、バルク壁よりもより小さい孔径、並びに同じか
またはより
大きい孔隙率を有する薄い表面層を形成することにより、深層ろ過が有利に減少し、ディーゼル粒子フィルター(DPF)の煤の負荷による圧力降下が減少する結果になる。さらに、そのような層は、背圧の影響を最小にしながらろ過効率を増加できる。この薄い表面層はまた、PDF向けの壁上の触媒コーティングの沈積を容易にすることができる。その特性(孔隙率、細孔径、及び/又は厚さ)がフィルターの長さに沿って変化する表面層の形成も実現できる。例えば、壁の厚さが長さに沿って増加するというフィルターは、軸方向の温度勾配を減少できる。基材に関する別の例として、孔隙率が
小さく強度が
大きい基材を、孔隙率、細孔径及び表面粗度が
大きい薄層でコーティングして、基材に塗布された触媒コーティングの接着性を増加できるケースが挙げられる。
【0022】
本明細書において、パーセンテージの増加又は減少が開示された場合、パーセンテージの増加又は減少は、
述べている
未増加または未減少のパラメータの
大きさに対するものとし
て理解すべきである。例えば、コーティング層によってコーティングされ
ている壁又はチャネルが30%の表面孔隙率を有する場合、「コーティング層の表面孔隙率が
、ぞれがコーティングされる壁又はチャネルの表面孔隙率よりも少なくとも5%大きい」という記述は、コーティング層の表面孔隙率が、少なくとも35%ではなくて、少なくとも1.05×30%を有すると記述していると理解されるべきである。
【0023】
本明細書に開示される実施形態は、得られる焼成したウェアの特別の特性を改変することができる、未焼成の
セルラーセラミックに適用される方法を提供する。本方法によって作製された物品も提供される。未焼成ウェアをコーティングすることは、焼成したウェアをコーティングすることと比較すると、特に焼成したウェアが
実質的に多孔質である場合に、1つ以上の利点を有することができる。焼成したウェアをコーティングすることが有する一般的な問題点は、細孔が十分に大きい場合に、コーティングを形成する粒子が基材の中に
入り込む可能性があることである。この手法に対する課題は、
図1Aに概略的に例示してあり、コーティング由来の粒子12が基材の細孔構造10の中に
入り込み、壁の全体的透過性を顕著に減少させる。
【0024】
この問題に対する従来の解決策は、多層の中で段階的に粒子径を減少させることであり、
図1Bに示されるようにより小さい粒子12がより大きい粒子14の上に層形成され、その結果いずれのコーティング工程の間でも
入り込みが制限さ
れる。物質の積み重ねが上部層を形成し、最終の細孔径及び孔隙率を得るようにそこでの粒子径及び焼結条件が選択される。各コーティング工程は一般的に、少なくとも2回行なって、次工程の最小粒径の粒子が沈積される前により小さい粒子を有した連続層が形成されることを確実にする。しかしながらセラミック材料の場合では、この方法は、多数のコーティング、乾燥及び(高温度の)焼成工程が必要であるので極めて高価な加工方法である。
【0025】
図1Cに示されるように、比較的
非多孔性
の未焼成ウェア16をコーティングすることにより、そのスラリーがほとんど浸透しない、ないしは全く浸透しない孔隙率となるので、スラリーを形成する粒子12を必要に応じて小さくでき、結果として製造のコストと複雑さを大幅に減少できる。別の利点は、コーティングと基材との間の改善された接着性であり、これは、ウェアとコーティングの両方とも未焼成であり、焼成の間に前駆体がコーティング層と壁層の両方の中で反応し、同時にその界面を横断して反応して最終製品を形成するからである。さらに別の利点は、形成されたコーティングが壁上のコーティングであることであり、一般的に未焼成ウェアが
小さい孔隙率及び非常に小さい細孔直径を有するからである。これにより、コーティングをバリア層として使用することが可能であり、バリア層は幾つかの利用の中でも特に壁上の触媒コーティングを形成するのに非常に有用となり得る。
【0026】
無機相及び細孔形成剤相に対する溶媒媒体は、未焼成ウェア壁中のバインダー材料、例えばメチルセルロースが溶媒に不溶性であるように選択される必要がある。例えば、水系のスラリーがコーティングを塗布するのに使用される場合、スラリー中の水がメチルセルロースバインダーの一部を壁から溶出させるであろう。この点を例示するために、5種の異なった溶媒を含有するスラリーを調製し、
セルラーの未焼成ウェアに塗布した。第1の2つの溶媒はアルコール、具体的にはブタノールとイソプロピルアルコール(IPA)であった。次の3種の溶媒はアルコール−水の混合物、具体的にはイソプロパノールと10%の水、イソプロパノールと25%の水、及びイソプロパノールと50%の水であった。
図2に示されるように、その溶媒中の水の含量が増加すると、時間当たりの重量%での未焼成ウェアの重量損失も増加し、これにより最終製品に大幅な弱体化がもたらされる可能性がある。
【0027】
従って、本明細書では、未焼成の
セルラーセラミック体を提供する工程を含む
セルラーセラミック物品を製造する方法が提供され、その未焼成の
セルラーセラミック体はバインダー材料と複数のチャネルとを含む。その方法にはさらに、複数のチャネルのうちの少なくとも1つを未焼成のコーティング組成物と溶媒とを含むスラリーでコーティングして、複数のチャネルの少なくとも1つの上にコーティング層を形成するコーティング工程が含まれる。バインダー材料は溶媒に不溶性であることが必要である。さらに、好ましい実施形態では、複数のチャネルのなかの少なくとも1つは、スラリーでコーティングした際に閉塞されない。
【0028】
適切な溶媒成分には、例えば、アルコール、エステルアルコール、エステル、炭化水素、アルデヒド、ケトン及びカルボン酸が含まれても良い。スラリーに使用される溶媒は好ましくは、少なくとも1種の第1級、第2級又は第3級アルコールを含む。溶媒として使用できるアルコールの例には、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、及びヘキサノールが挙げられる。使用できるエステルアルコールの例は、Texanol(2、2、4−トリメチル−1、3−ペンタンジオールモノイソブチレート)であり、使用できるエステルの例は、Optifilm Enhancer300(プロパニイック酸、2−メチル−、1、1’−[2、2−ジメチル−1−(1−メチルエチル)−1、3−プロパンジイル]エステル、であり、両方共イーストマンケミカル社(Eastman Chemical Company)によって市販されている。
【0029】
スラリーに使用される未焼成のコーティング組成物には、好ましくは無機前駆体が含まれる。無機前駆体の選択は所望する組成物に依存する。例えば、未焼成のコーティング組成は、アルミナ、チタニア、シリカ、炭酸ストロンチウム、炭酸カルシウム、及び/又は酸化ランタンのような物質を含んでもよい。未焼成のコーティング組成物用に選択される材料は、未焼成の
セルラーセラミック体のバルク壁中のセラミック組成物を形成するために選択されたものと同一のもの又は異なったものであってもよく、例えば、未焼成の
セルラーセラミック中でチタン酸アルミニウムが主相であり、長石が二次相である。任意選択で細孔形成剤を未焼成コーティング組成物に添加してコーティング
に多孔性を生
じさせることができる。細孔形成剤の量と種類は所望の孔隙率に応じて変更できるが、好適な実施形態の細孔形成剤には、例えばジャガイモ、コメ及び/又はトウモロコシから誘導されたデンプンを、例えば約1〜50重量%の上乗せ添加が挙げられる。
【0030】
上記で説明したように、未焼成の
セルラーセラミック体は、1つ以上の実施形態において、焼成によって反応してチタン酸アルミニウム(AT)を形成する材料を含む。しかしながら、未焼成の
セルラーセラミック体は反応してATを形成する材料に限定されず、並びに高温度で反応して酸化物セラミック又は非酸化物セラミックを形成し、金属、金属間化合物、ムライト、コージライト、アルミナ(Al
2O
3)、ジルコン、アルカリ及びアルカリ土類のアルミノ珪酸塩、スピネル、ペロブスカイト、ジルコニア、セリア、炭化ケイ素(SiC)、窒化ケイ素(Si
3N
4)、酸窒化ケイ素アルミニウム(SiAlON:silicon aluminum oxynitride)、及びゼオライトなどを含むものを形成する、
どのような材料及び材料の混合物を
も含むことができる。
【0031】
未焼成
セルラーセラミック体中の好適なバインダー物質はセルロースエーテルである。好適なセルロースエーテルには、メチルセルロース及びヒドロキシプロピルメチルセルロースであって、ダウケミカル社から市販されている製品のメトセルの一群なども含むものが挙げられる。好適なバインダー物質には、ポリオール類、例えばポリビニルアルコール(PVA)も挙げられる。
【0032】
ある例示的実施形態では、未焼成の
セルラーセラミック体及び未焼成のコーティング組成物は、同じ又は本質的に同じ成分を有することができる。別のある例示的実施形態では、未焼成の
セルラーセラミック体及び未焼成のコーティング組成物は、少なくとも一部の異なった成分を有することができる。さらに別のある例示的実施形態では、未焼成のコーティング組成物は2つ以上の異なったコーティング組成物を有することができる。例えば、未焼成のコーティング組成物は、未焼成の
セルラーセラミック体と同じ又は本質的に同じ成分を有する第1のコーティング組成物と、未焼成の
セルラーセラミック体とは少なくとも一部が異なる成分を有する第2のコーティング組成物とを含むことができる。別法として、未焼成のコーティング組成物は、それぞれが未焼成の
セルラーセラミックとは少なくとも一部が異なる2つ以上のコーティング組成物を含んでもよい。その2つ以上のコーティング組成物は、第1のコーティング組成物を入り口チャネル上に、及び第2のコーティング組成物を出口チャネル上に、のようにセラミックの異なったチャネルの上にコーティングしてもよい。
【0033】
例えば、未焼成のコーティング組成物は、焼成によって反応して、チタン酸アルミニウム(AT)、金属、金属間化合物、ムライト、コージライト、アルミナ(Al
2O
3)、ジルコン、アルカリ及びアルカリ土類のアルミノ珪酸塩、スピネル、ペロブスカイト、ジルコニア、セリア、炭化ケイ素(SiC)、窒化ケイ素(Si
3N
4)、酸窒化ケイ素アルミニウム(SiAlON:silicon aluminum oxynitride)、及びゼオライトからなる群から選択される少なくとも1つの材料であって、未焼成の
セルラーセラミック体とは同じであっても異なっていてもよいものを含むことができる。留意すべきは、未焼成のコーティング組成物が未焼成の
セルラーセラミック体とは異なっている場合、未焼成のコーティング組成物が、焼成の際に未焼成の
セルラーセラミック体と
共に、好ましくは熱力学的に安定であるか、又は少なくとも焼結温度において
動力学的に制限される必要があることである。
【0034】
未焼成のコーティング組成物はまた、バインダー材料を含んでもよい。バイダー材料は好ましくは、乾燥後にコーティングに対して未焼成強度を提供するように選択さ
れ、好ましくは未焼成コーティング組成物で使用される
どのような液体媒体中に
も分散可能であ
る。未焼成のコーティング組成物のバインダー材料に好適な物質には、コロイド状ベーマイト(AlOOH)、コロイド状シリカ、コロイド状チタニア、オルトケイ酸テトラエチル(TEOS)、オルトケイ酸テトラメチル(TMOS)、アルミニウムアルコキシド、チタニウムアルコキシド、及びポリビニルブチラールが挙げられるが、液体媒体中に溶解する又は分散できる
どのようなバインダーも使用してよい。ベーマイト又はシリカなどのコロイド状バインダーの表面化学を修飾することが、選択溶媒の中での良好な分散性を確保するために必要な場合がある。留意すべき重要なことは、加熱により無機物質に転化させるバインダー材料を使用する際には、未焼成のスリップの化学的性質は、好ましくはこの追加の無機物を調節して構成し、所望の焼成物の化学的性質を得るようにする必要があることである(例えば、AT、ムライト、等)。
【0035】
未焼成の
セルラーセラミック体のチャネルをスラリーでコーティングする前に、複数のチャネルのうちの1つ以上は、スラリー
がマスキングされていないチャネルの上に
のみコーティングされるように、マスキングすることができる。例えば、ある好ましい実施形態では、
スラリーが入り口チャネルとして閉塞する予定のチャネルの上だけにコーティングされるように、出口チャネルとして閉塞する予定のチャネル
を、スラリーをコーティングする前にマスキングして
もよ
い。
あるいは、
スラリーが出口チャネルとして閉塞する予定のチャネルの上だけにコーティングされるように、入り口として閉塞する予定のチャネル
を、スラリーをコーティングする前にマスキングして
もよ
い。チャネルはさらに、異なったスラリー組成物を異なったチャネルの上にコーティングする、及び/又は異なった量のスラリー組成物を異なったチャネルの上にコーティングするようにマスキングしてよい。
【0036】
コーティングの塗布は、未焼成の
セルラーセラミック体の上面の上からスラリーを注いで、スラリーが
重力でチャネル
中を引っ張られるにまかせることによって達成できる(ウォーターフォール法)
。コーティングを軸方向に沿って分配さ
せ、そしてチャネルを閉塞させることになる可能性のあ
る材料も除去
するため、チャネル内の過剰のスラリーを加圧空気によってモノリスの端部から追い出すことができる。
【0037】
コーティングの塗布はまた、未焼成の
セルラーセラミック体をスラリー中に浸漬することによって達成できる。例えば、コーティング層の厚さが少なくとも一部のチャネルの軸方向長さに沿って変化させることを意図する実施形態では、未焼成の
セルラーセラミック体は、
スラリー中に、時間を変えて及び/又は軸方向長さに沿った長さを変え
て浸漬することができる。
【0038】
コーティングを塗布する追加の方法には、チャネル上のスラリーを引き抜くように真空を利用すること、及びチャネル上にスラリーをポンプ供給することが挙げられる。
【0039】
図3は、本明細書に説明されるコーティングプロセス(シェード付き四角で表示)が、どのようにしてより広範囲の製造プロセスに統合できるかを示すプロセスフローチャートを概略的に例示する。例えば、プロセス中にすでに存在している粗原料(例えば、無機材収納容器108,細孔形成剤収納容器106,及びスラリー液104から)に類似したものから、スラリーが調製されると(110)、乾燥工程100と焼成工程116との間の工程としてコーティング工程が挿入できる。
図3に示される例示的なプロセスでは、未焼成の多孔質セラミック物品はスラリー112でコーティングされ、次いで専用の乾燥工程114中で乾燥され、乾燥工程では任意で、凝縮、吸着、又は吸収過程などの当技術分野では周知の方法によってスラリー液104が回収される。回収された液体はスラリー調製工程へと戻ってリサイクルできる(102)。コーティングされ乾燥された未焼成基材は次に、当業者に知られた方法によって、焼成過程116の中で焼成される。焼成過程に続いて、得られた多孔質セラミック物品は閉塞され(フィルターの場合)、当業界で周知の方法によって仕上げ(118)され
てもよい。
【0040】
図4A及び4Bは、本明細書に開示した方法によ
る未焼成の
セルラーセラミック物品のチャネルのコーティング態様を例示する2種の光学画像を示す。
図4Aは、出口チャネルをコーティングから遮断するようにマスキングされた未焼成の
セルラーセラミック試料の真向きからの図(end−on view)である(端面に連続マスキングを適用し、次いでレーザーを使用して入り口チャネルを被覆するマスキング材料を焼き取る)。
図4Bは、軸方向に沿ったコーティングの分配が極めて良好であることを示し、交互のチャネルだけがコーティングさ
れ(明色部)、
一方、残りのチャネルは未コーティングのままである(暗色部)
ことが明らかである。
【0041】
図5A〜5Fは焼成後の
セルラーセラミック物品のSEM画像を示し、それによりバルクセラミックの
孔隙率とは異なる孔隙率を有す
るコーティング層
上の表面領域が形成していることが分かる。具体的には、
図5A〜Cは、両側のチャネル壁上に比較的小さいコーティング層細孔径(「小細孔径コーティング」)を与えるためのコーティング組成物でコーティングされた第1の基材を示し、
図5D〜Fは、両側のチャネル壁上にいくらか大きいコーティング層細孔径(「中細孔径コーティング」)を与えるためのコーティング組成物でコーティングされた第2の基材を示す。第1基材の研磨断面の図を2つのレベルの倍率で
図5A〜Bに示し、第2基材の研磨断面の図を
同じ2つのレベルの倍率で
図5D〜Eに示す。第1基材
のチャネルの
トップ・ダウン図を
図5Cに示し、第2基材
のチャネルの
トップ・ダウン図を
図5Fに示す。表面の孔隙率とバルクの孔隙率との間の相違は研磨した断面図
とチャネル
のトップ・ダウン図を比較することによって識別できる。コーティングと基材との間の界面は区別するのが困難であり、コーティングが良好に接着していることの合理的な証拠を与える。
【0042】
これらの実施例用のコーティング組成物を表1に示す。スラリーはパウダーとしてのこれらをイソプロパノールと組み合わせて調製した。コーティング組成物を調製する際に、使用されるパウダーと溶媒との比率は一般的に、所望のコーティング厚さとコーティング塗布の許容回数との相関要素である。一般的には、スリップ中の固形物がより濃けれ
ば、得られるコーティングは
より厚くなり、反対にスリップ中の固形物がより薄ければ、得られるコーティングは
より薄くなる。スリップ中の固形物濃度の好適な範囲は約20%〜約75%であり、例えば約35%〜約60%である。ポリマーの添加による粘度の改変を使用して厚さを目的に合わせてもよい。加えて、無機バインダー、例えばアルコール分散したコロイド状ベーマイトなどの無機バインダーの使用は
、コーティング未焼成強度に顕著な増加がもたらされ得る。追加の例示的バインダーとしては、IPAに分散させることが可能なコロイド状シリカ、オルトケイ酸テトラエチル(TEOS)、オルトケイ酸テトラメチル(TMOS)、及びポリビニルブチラールが挙げられる。加熱により無機物質に転化させるバインダー材料を使用する際には、未焼成のスリップの化学的性質は、好ましくはこの追加の無機物を調節して構成し、所望の焼成物の化学的性質を得るようにする必要がある(AT、ムライト、等)。
【表1】
【0043】
図6A及び6Bは、2種の試料
のチャネル
のトップ・ダウン視野のSEM画像を示し、
図6Aに見られる第1の試料において、基材はコーティング層でコーティングされていなく、また
図6Bに見られる第2の試料において、基材は入り口チャネル表面
が本明細書で開示したようなコーティング層でコーティングされていた。表面孔隙率及び細孔径分布における差異は画像解析によって定量化され、コーティングされてない基材の表面は26.5%の全表面孔隙率を有し、コーティングされた基材上のコーティングされたチャネルの表面は33.1%であると分かった。
【0044】
図7Aから7Cは、焼成したセラミック
のチャネル
のトップ・ダウン視野のSEM画像を示す。
図7Aはコーティングされてないセラミックチャネルを示す。
図7B及び7Cは、コーティングされたセラミックの表面を示す。
図7Bにおけるセラミックコーティングは、2:1のA10−325とイロプロピルアルコール(IPA)との比率を有するスリップから作製された。
図7Cにおけるセラミックコーティングは、2:1の固形分とIPAとの比率を有するスリップから作製され、固形分は約75%のA10−325及び約25%の細孔形成剤(コメデンプン)を有した。細孔径及び孔隙率における変化は見てすぐに分かる。
【0045】
コーティング層の厚さはスラリー濃度、スラリー粘度、及び/又はコーティング回数の変更によって変えることができる。DPF用途では、深層ろ過を最小化しながらコーティングはできるだけ薄いことが好ましい。例えば、焼成工程の後で、チャネル上のコーティング層とコーティングが行われる壁の厚さとの比率は、最小で約1:100であって、少なくとも1:50が含まれ、そして更には約1:100〜1:2、さらに言えば約1:50〜1:2、などの少なくとも約1:20が含まれ、そしてなお言えば約1:20〜約1:2であって、約1:10〜約1:4が含まれ、そして更には約1:10〜約1:5が含まれる。
【0046】
例えば、約200マイクロメートルの壁厚さに対して、焼成工程後のコーティング層の厚さは少なくとも約2マイクロメートルとすることができ、少なくとも約5マイクロメートルが含まれ、さらに言えば約2〜約50マイクロメートルなど、そして更に言えば約5〜約50マイクロメートルなど、そしてなお言えば約10〜約50マイクロメートルなど、の少なくとも10マイクロメートルが含まれる。
【0047】
好ましい実施形態では、焼成工程後のコーティング層の最小厚さは、コーティング層における細孔の平均細孔径とほぼ同じである。例えば、コーティング層における細孔が5マイクロメートルの平均細孔経を有している場合であれば、そのコーティング層の厚さは少なくとも約5マイクロメートルが好ましい。コーティング層における細孔が2マイクロメートルの平均細孔経を有している場合であれば、そのコーティング層の厚さは少なくとも約2マイクロメートルが好ましい。
【0048】
ある好ましい実施形態では、コーティング層の厚さは、コーティングされている複数のチャネルにそってほぼ一定である。別のある好ましい実施形態では、コーティング層の厚さは、複数のチャネルの少なくとも1つの軸長さにそって変化し得る。例えば、コーティング層の厚さは、チャネルの軸長さに沿った第1のポイントにおいて、そのチャネルの軸長さに沿った第2のポイントよりも少なくとも1.1倍大きくすることができ、例えば少なくとも1.2倍大きい、更には少なくとも1.5倍より大きい、さらに言えば少なくとも2倍より大きくすることができる。
【0049】
なお別のある好ましい実施形態では、コーティング層の厚さは異なる
チャネルに沿って変化し得る。例えばコーティング層の厚さは、
セルラーセラミック体の中央部長手方向軸からより離れた(すなわち半径方向でより外側の)チャネルよりも
セルラーセラミック体の中央部長手方向軸により近いチャネルに沿った所でより大きくすることができ、その結果あるチャネル上に最も厚くコーティングされたコーティング層のその厚さは、あるチャネル上に最も薄くコーティングされたコーティング層のその厚さよりも、少なくとも1.1倍大きい、更には例えば少なくとも1.2倍大きい、なお更には例えば少なくとも1.5倍大きい、さらに別に言えば例えば少なくとも2倍大きくすることができる。
【0050】
コーティング層の厚さは、閉鎖された前面面積
の増加に関連させても表現できる。好ましくは、コーティングにより少なくとも1%の閉鎖された前面面積
の増加が提供される
べきであり、例えば1〜25%、更には1〜10%であり、2〜10%が含まれる。例えば、8ミル(0.203mm)厚さの壁を有する300セル/in
2(46.5セル/cm
2)である部品に対して、閉鎖された前面面積における1%の増加は約2マイクロメートル厚さのコーティング層に相当する。
【0051】
コーティング層の厚さはまた、複数のチャネルのうちの
少なくとも1つのものの軸長さに沿って変化してもよく、その結果、そのチャネルの軸長さに沿った第1のポイントにおいて閉鎖された前面面積は、そのチャネルの軸長さに沿った第2のポイントよりも、少なくとも5%、例えば少なくとも10%、更には例えば少なくとも20
%大きい。
【0052】
本明細書に開示される例示的実施形態には、コーティング層が
、コーティングされているチャネルの全長に沿って延
在しているもの、又
はコーティングされているチャネルの長さに沿って部分的だけに延
在しているものが含まれる。例示的実施形態には、コーティング層が、少なくとも1つのチャネルの全長に沿って延
在していて、かつ少なくとも1つの別のチャネルの長さに沿って部分的だけに延
在しているものも含まれる。
【0053】
焼成工程の後で、コーティング層の表面
孔隙率は、コーティングされ
ているチャネル上の壁の表面
孔隙率と同じとすることも異なることもできる。表面
孔隙率の差異は、例えば画像解析によって定量化できる。例えば、コーティング層の表面
孔隙率は、コーティングされ
ているチャネル上の壁の表面
孔隙率よりも、少なくとも5%大きい、例えば少なくとも10%大きい、そして更に例えば少なくとも20%大きい、そしてなお更には例えば少なくとも30%大きい、さらになお言えば例えば少なくとも50%大きくすることができる。その表面
孔隙率はまた、コーティングされ
ているチャネル上の壁の表面
孔隙率よりも、少なくとも5%少ない、例えば少なくとも10%少ない、そして更に例えば少なくとも20%少ない、そしてなお更には例えば少なくとも30%少ない、さらになお言えば例えば少なくとも50%少なくてもよい。
【0054】
焼成工程の後で、コーティング層における細孔の平均細孔直径は、コーティングされ
ているチャネル上の壁における細孔の平均細孔直径と同じとすることも異なることもできる。平均細孔直径は、例えば水銀ポロシメーターによって測定できる。例えば、コーティング層における細孔の平均細孔直径は、コーティングされ
ているチャネル上の壁における細孔の平均細孔直径よりも、少なくとも5%小さい、例えば少なくとも10%小さい、そして更に例えば少なくとも20%小さい、そしてなお更には例えば少なくとも30%小さい、さらになお言えば例えば少なくとも50%小さいことができる。コーティング層における細孔の平均細孔直径はまた、コーティングされ
ているチャネル上の壁における細孔の平均細孔直径より少なくとも5%大きい、例えば少なくとも10%大きい、そして更に例えば少なくとも20%大きい、そしてなお更には例えば少なくとも30%大きい、さらになお言えば例えば少なくとも50%大きくてもよい。
【0055】
図8は、煤負荷に関するノイズ対信号比率(N/Sと表示)を図示する。この場合の信号(S)は5g/Lの煤負荷における圧力降下であり、一方ノイズ(N)は深層ろ過に関連する圧力降下であり、ノイズ対信号比率
が大きいほど深層ろ過がより大
きいこと
を示す。
【0056】
図9Aは2”×6”(5.05cm×15.2cm)の閉塞したDPF−型フィルターの室温下26.5scfm(45.0m
3/h)における圧力降下データを煤負荷(Printex U)の関数として示し、一方
図9Bはこれらの部品に対するコーティングによるN/Sの減少を示す。
【0057】
図10A及び10Bは、2”×6”(5.05cm×15.2cm)のコーティング及び未コーティングフィルターの圧力降下(
図10A)と深層ろ過(
図10B)を比較する。
図10A及び10Bより分かるように、未コーティングフィルターは大きな深層ろ過を有し、コーティングフィルターではそれが減少した。
図10A及び10Bより分かるように、これらの実施例におけるコーティングは、新フィルター搭載時(clean pressure drop)の圧力降下が上昇する一方で、煤負荷時の圧力降下が低下すると考えられる。
【0058】
従って、焼成工程及び閉塞工程の後で、
セルラーセラミック物品は、未コーティングフィルターと比較して、煤負荷した圧力降下におけるノイズ対信号比率
が好ましくは減少
する。
ある望ましい実施形態では、焼成工程及び閉塞工程の後で
セルラーセラミック物品は煤負荷により圧力降下を示し、ノイズ対信号比率は約0.4未満であり、例えば約0.35未満、そして更には例えば0.3未満であって、例えば0.2〜約0.4、そして更には例えば約0.2〜約0.35、そして更に言えば約0.2〜約0.3である。
【0059】
図11は、膜コーティングしたAフ
ィルターと未コーティングのBフィルターに
関する質量基準のろ過効率をプロットする。膜を有した
フィルターでは、その
ろ過効率は全ての煤−負荷
量において
非コーティングフィルターよりもより高いだけでなく、非コーティングフィルターよりも煤−負荷がより低い所で100%効率に到達する。
【0060】
図12は、実験室で異なった長さに亘ってコーティングした2”×6”(5.05cm×15.2cm)フィルターを用いて再生実験を行った試験の結果を示す。コーティングの無い対照部品並びに1/3と2/3の長さに亘って所定のコーティングをコーティングしたフィルターの2組が含まれる。実験では、煤負荷(PrintexU)が連続的に増加し、続いて「最悪ケース」の再生が行われ、
フィルターの内側で極端な温
度及び温度勾配がもたらされる。温度及び温度勾配はフィルターの内側に装填した数個の熱電対によって測定する(温度範囲に応じてK型及びS型の熱電対を使用する)。煤負荷が増加すると、温度と温度勾配が増加する。損傷、すなわちクラックが観察された時に各試験及び検査及び検証を停止し、フィルターの完全性を評価する。試験結果は最後まで存続した
時及び最初に破壊した
時の温度と温度勾配を示す。各フィルターの条件に対し2個の試料を使用する。1/3だけに亘ってコーティングした部品では破壊条件で極僅かに劣っていたが、コーティングした候補の両方とも参照試料と同様な性能を発揮する
こと
が分かる。全体としては、コーティングにより
、熱−機械的特性が
損なわれることは無いことを示唆している。
【0061】
明示的に別段の定めをした場合を除き、本明細書で説明したどの方法もその工程が特定の順序で実施されることを必要するとして解釈されることを全く意図しない。従って、所定の方法クレームは、ステップが行われるべき順番を実際に列挙していない、又はクレーム若しくは説明の中で工程が特定の順番に限定されると具体的に記載されていない場合には、特定の順番が暗示されることを全く意図しない。
【0062】
当業者には、様々な改良及び変更が本発明の趣旨又は範囲から逸脱することなく実施できることが明らかである。当業者は、本発明の趣旨及び内容を組み入れた開示した実施形態の変更形態、組合せ形態、部分的組合せ形態、及び変形形態を思いつくことができるため、本発明は添付の請求項の範囲内に含まれる全てのもの及びそれらの均等物を含むものと解釈されるべきである。