【文献】
小林 克希,橋梁の点検画像を用いたベイジアンネットワークによる変状の推定に関する検討,電子情報通信学会技術研究報告ITS2013-30―ITS2013-67,2014年 2月10日,Vol.113 No.433,pp.217-221
【文献】
鈴木 彰吾,地下鉄トンネルの検査結果に基づく健全度評価について,土木学会第69回年次学術講演会講演概要集,2014年 9月,pp.339-340
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来から行われている検査では、予め定められた判断基準に基づいて、性能が低下しているか否かの判断が検査者により行われる。しかしながら、従来から行われている検査では、目視によるもののように、検査対象の性能が低下しているか否かの判断を検査者が行うものが含まれている。このような検査では、複数の検査者が同じ検査対象を見た場合に、性能が低下しているか否かの判断が互いに異なる可能性がある。したがって、検査結果が妥当であるかを検証することが望まれている。
【0005】
本発明は上記を鑑みてなされたものであり、検査結果の検証を好適に行うことが可能な管理指標算出装置及び管理指標算出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の一形態に係る管理指標算出装置は、都市鉄道の地下トンネルにおける変状の有無を複数の検査項目について評価した検査結果により構成される検査結果データを取得するデータ取得手段と、前記検査結果データに対して数値変換処理を行うことで分析用データを作成するデータ変換手段と、ベイジアンネットワークにより、前記分析用データにおける前記複数の検査項目に係る因果関係を求め、当該因果関係に基づいて前記検査結果の妥当性を示す管理指標を算出する管理指標算出手段と、前記管理指標算出手段により算出された前記管理指標を出力する出力手段と、を備えることを特徴とする。
【0007】
また、本発明の一形態に係る管理指標算出方法は、都市鉄道の地下トンネルにおける変状の有無を複数の検査項目について評価した検査結果により構成される検査結果データを取得するデータ取得ステップと、前記検査結果データに対して数値変換処理を行うことで分析用データを作成するデータ変換ステップと、ベイジアンネットワークにより、前記分析用データにおける前記複数の検査項目に係る因果関係を求め、当該因果関係に基づいて前記検査結果の妥当性を示す管理指標を算出する管理指標算出ステップと、前記管理指標算出ステップにおいて算出された前記管理指標を出力する出力ステップと、を備えることを特徴とする。
【0008】
上記の管理指標算出装置及び管理指標算出方法によれば、検査結果データを数値変換した分析用データを用いて、ベイジアンネットワークにより、分析用データにおける複数の検査項目同士の因果関係を求め、当該因果関係に基づいて検査結果に係る管理指標が算出される。ベイジアンネットワークを活用することで、他の検査項目の検査結果を考慮して、検査結果の妥当性を評価することができることから、検査結果の検証を好適に行うことが可能となる。
【0009】
ここで、前記管理指標は、前記変状がないと判断された前記検査結果における変状見落とし可能性を示す指標である態様とすることができる。
【0010】
上記のように、検査結果における変状見落とし可能性を示す指標を管理指標として算出することにより、変状を見落とすことにより、より重大な損傷等が発生することを未然に防ぐことができる。
【0011】
また、前記管理指標は、前記変状があると判断された前記検査結果の確からしさを示す指標である態様とすることができる。
【0012】
上記のように、検査結果の確からしさを示す指標を管理指標として算出することにより、変状があると判断された検査結果についてもその妥当性を確認することができ、例えば、変状に関する補修の優先度を検討する際に考慮することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、検査結果の検証を好適に行うことが可能な管理指標算出装置及び管理指標算出方法が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための形態を詳細に説明する。なお、図面の説明においては同一要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0016】
図1は、本発明の実施形態に係る管理指標算出装置の機能ブロック図である。本実施形態に係る管理指標算出装置1は、都市鉄道の地下トンネルの維持管理において、検査者によって検査された結果の妥当性を示す指標である管理指標を算出する装置である。
【0017】
管理指標算出装置1により算出される「管理指標」は、地下トンネル内の各位置において変状の有無に関する検査を行った結果に基づいて、地下トンネル内の所定の区間(キロ程間隔:例えば、1m、5m等)毎にそれぞれ算出される数値による指標であり、地下トンネル内で変状が観測された場合のその結果の確からしさを示す指標と、地下トンネル内で変状が観測されなかった場合の見落とし可能性を示す指標と、が含まれる。詳細は後述する。
【0018】
なお、「変状」とは、地下トンネルがあるべき健全な状態から性能が低下をしている状態のことをいう。また、「地下トンネルの変状の有無に係る検査」とは、都市鉄道の地下トンネルの維持管理を目的として、変状の有無等を確認する検査のことをいう。このような「地下トンネルの変状に係る検査」としては、例えば、「鉄道構造物等維持管理標準」に基づいて実施され、地下トンネルの構造物の変状の有無及びその進行性の状態把握のための定期検査である通常全般検査及び特別全般検査が挙げられる。複数の検査項目とは、異なる変状の種類毎に評価を行う検査におけるそれぞれの評価に係る変状の種類のことをいう。また、同じ区間において同じ観点の評価を行う場合であっても、測定対象位置が互いに異なる場合には、これらを複数の検査項目として個別に取り扱ってもよい。
【0019】
なお、変状の有無に係る検査は、上記の検査に限定されるものではない。地下トンネルの変状は、例えば、ひび割れや漏水等の目視で確認できる現象として覆工(く体)の表面に生じることが一般的である。そのため、変状の有無に係る検査には、目視による検査が含まれる。また、目視では確認できない浮き・剥離を始めとした覆工(く体)の状態を調べるための打音調査等もこれに含まれる。管理指標算出装置1は、上記のような地下トンネルの各位置における複数の検査項目に関する検査結果が含まれるデータ群(以下、これを「検査結果データ」という。)を取得し、検査結果データから管理指標を算出する装置である。
【0020】
管理指標算出装置1は、
図1に示すように、携帯端末、サーバ装置等の外部装置2から検査結果データを取得して、検査結果から算出された管理指標を外部装置2に対して送信する機能を有する。外部装置2としては、地下トンネルの変状に係る検査を行う者が携帯する端末装置、地下トンネルを含む鉄道に係る情報を管理するサーバ等が挙げられる。なお、管理指標算出装置1に対して検査結果データを送信する装置と管理指標算出装置1において算出された管理指標を送信する対象となる装置とが同一である必要はなく、互いに異なっていてもよい。
【0021】
管理指標算出装置1は、CPU(Central Processing Unit)、主記憶装置であるRAM(Random Access Memory)及びROM(Read Only Memory)、通信を行うための通信モジュール、並びにハードディスク等の補助記憶装置等のハードウェアを備えるコンピュータとして構成される。そして、これらの構成要素が動作することにより、各部の機能が発揮される。
【0022】
次に、管理指標算出装置1の各部の機能について説明する。
図1に示すように、管理指標算出装置1は、データ取得部11(データ取得手段)、データ変換部12(データ変換手段)、管理指標算出部13(算出手段)、モデル記憶部14及び結果出力部15(出力手段)を含んで構成される。
【0023】
データ取得部11は、外部装置2から検査結果データを取得するデータ取得手段として機能する。データ取得部11が取得する検査結果データの例を
図2に示す。検査結果データでは、地下トンネル内の位置情報に対応するキロ程と、当該キロ程における複数の検査項目(
図2ではひび左下、ひび左…)の検査結果と、が対応付けられている。
図2に示す検査結果データでは、目視による検査の結果、ひびに関する何らかの状態変化(通常状態ではない状態)が観測された場合には、観測された状態に応じて「AA,A1,A2,B,C,S」のいずれかが付与されている(なお、
図2ではAAは含まれていない)。
図2の検査結果データにおいて、AA,A1,A2は、運転保安、旅客および公衆などの安全ならびに列車の正常運行の確保を脅かす、またはそのおそれのある変状等があるものを示していて、その重大度に応じてAA,A1,A2に割り振られている。Bは、将来的にAA,A1又はA2の状態へ移行する可能性のある変状等を示している。Cは、軽微な変状等を示している。また、Sは、健全なもの(措置(補修等)の結果、健全と判断したもの)であることを示している。そして、空欄は、状態変化が観測されなかったことを示している。データ取得部11において取得された検査結果データは、データ変換部12へ送られ、データの変換に係る処理が行われる。
【0024】
データ変換部12は、検査結果データについて数値変換処理を行うことで分析用データを作成するデータ変換手段として機能する。管理指標は検査結果データに基づいて算出される数値であるため、検査結果データが、
図2に示すように文字列を含む形式である場合に、統計処理が可能となるように数値変換を行う必要がある。データ変換部12では、管理指標の算出に好適に利用することができる分析用データとして、検査結果データに含まれる検査結果を所定の距離毎に集計した上で、0又は1の2値に数値に変換する処理を行っている。この点については後述する。データ変換部12において変換された分析用データは管理指標算出部13へ送られ、管理指標算出に係る処理が行われる。
【0025】
管理指標算出部13は、分析用データから管理指標を算出する管理指標算出手段として機能する。管理指標算出部13では、ベイジアンネットワークを利用して複数の確率変数間の確率的な因果関係を求め、これに基づいて管理指標を算出する機能を有する。
【0026】
また、モデル記憶部14とは、管理指標の算出に用いられるベイジアンネットワークに係る統計モデルを記憶するモデル記憶手段として機能する。
【0027】
また、結果出力部15とは、管理指標算出部13において算出された管理指標を外部装置2に対して出力する出力手段として機能する。
【0028】
ここで、管理指標算出部13での管理指標の算出に用いられるベイジアンネットワークについて説明する。ベイジアンネットワークとは、「原因」及び「結果」の関係を複数組み合わせることにより、これらがお互いに影響を及ぼしながら発生する現象をネットワーク図と確率という形で可視化したものである。したがって、過去に発生した「原因」と「結果」との積み重ねを統計的に処理し、特定の「結果」を導く「原因」、又は、特定の「原因」から発生する「結果」について、確率をもって予測する推論手法である。ベイジアンネットワークを用いた推論手法では、「原因」と「結果」との対応関係を示すベイジアンネットワークモデルと、当該モデルにおける「原因」と「結果」との因果関係を示す条件付き確率と、を最初に定義する。そして、実際に発生した「原因」及び「結果」を入力していくことで、「原因」と「結果」との対応関係の分析及び推測、ある「原因」を仮定した場合に、それにより導かれる「結果」に係る推測、及び、特定の「結果」を仮定した場合に、その「結果」を導く可能性のある「原因」の推測が可能となる。
【0029】
これを本実施形態に係る地下トンネルの変状に対して適用したとすると、何らかの変状が生じている場合に、その変状を「原因」として別の種類の変状が「結果」として生じる可能性(因果関係)を検討することで、検査結果の正当性及び妥当性を検証することが可能となる。
【0030】
図3に、本実施形態に係る地下トンネルの変状に関するベイジアンネットワークモデルを示す。
図3では、地下トンネルに生じる可能性のある変状として、初期変状N1、鋼材劣化N2,CJ(コールドジョイント)N3、浮き・剥離N4、漏水N5、ひび割れN6、その他N7がそれぞれ個別に示されている。そして、「原因」と「結果」との対応関係を矢印で示している。例えば、初期変状N1は、鋼材劣化N2、浮き・剥離N4、漏水N5及びひび割れN6の「原因」となり得ることを矢印で示している。このように、ベイジアンネットワークモデルを用いた分析を行うことで、検査項目同士の因果関係が求められると共に、検査結果から両者の因果関係の強さを示す条件付き確率を求めることができる。
【0031】
検査項目同士の因果関係は以下の方法で考えることができる。例えば、ある路線について初期変状N1が40箇所、鋼材劣化N2が120箇所認められ、そのうち初期変状N1及び鋼材劣化N2が同時に認められた箇所が10箇所あったとする。このとき、初期変状N1が認められたという条件で鋼材劣化N2が認められる確率は、10/40=0.25となる。反対に、鋼材劣化N2が認められたという条件で初期変状N1が認められる確率は、10/110=0.09となる。つまり、初期変状N1(原因)→鋼材劣化N2(結果)の条件付き確率は0.25となり、鋼材劣化N2(原因)→初期変状N1(結果)の条件付き確率は0.09である。この結果から、初期変状N1を原因、鋼材劣化N2を結果と考えた方が良いと判断することができる。このようにして求められる「原因」と「結果」との対応関係、すなわち因果関係と、検査結果とを比較することで、検査結果の正当性及び妥当性を推定することができる。
【0032】
本実施形態に係る管理指標算出装置1では、因果関係を示す条件付き確率に基づいて、所定の変状が当該場所で生じる確率を求めることができる。なお、検査項目同士の因果関係を示す条件付き確率は、所定の路線の地下トンネルの所定の検査結果における検査項目から、上記の方法に基づいて計算することができる。
【0033】
管理指標算出装置1において算出する管理指標とは、概略、地下トンネルにおける検査結果データに含まれる個々の検査結果の正当性及び妥当性を示す指標である。管理指標は、ベイジアンネットワークモデルにおける各項目について個別に算出される。
図3に示すベイジアンネットワークモデルにおける各項目は、従来から行われている都市鉄道の地下トンネルにおける検査に含まれる検査項目(評価項目)に対応するものである。
【0034】
また、管理指標には、2種類の「変状の観測確率」が含まれる。すなわち、「検査結果データでは変状が観測されなかった場所での、理論上の変状の観測確率」及び「検査結果データにおいて変状が観測された場所での、理論上の変状の観測確率」である。
【0035】
「検査結果データでは変状が観測されなかった場所での、理論上の変状の観測確率」とは、検査において変状なしと判断された箇所が、本来は変状が観測される確率、つまり、検査において変状を見落とした可能性を示すものである。例えば、特定の項目に関して変状が観測されていなかったとしても、同じ位置における他の検査項目のうち特に因果関係が強い検査項目において変状が観測された場合には、見落としであることが考えられる。そこで、他の検査項目の検査結果との関係性に基づいて、変状を見落とした可能性がどれくらいあるかの指標を算出する。これは、変状なしと判断された箇所及び検査項目に関して算出される指標である。
【0036】
一方、「検査結果データにおいて変状が観測された場所での、理論上の変状の観測確率」とは、検査において変状ありと判断された箇所の確からしさを示すものである。例えば、特定の項目に関して変状が観測された場合、同じ位置における他の検査項目のうち特に因果関係が強い検査項目において変状が観測された場合には、変状ありという検査結果の確からしさが向上する。一方、同じ位置における他の検査項目のうち特に因果関係が強い検査項目において変状が観測されなかった場合には、変状の誤検出であることも考えられる。そこで、他の検査項目の検査結果との関係性に基づいて、変状ありと判断した結果の確からしさを示す指標を算出する。これは、変状ありと判断された箇所及び検査項目に関して算出される指標である。
【0037】
上記の2種類の指標を、ベイジアンネットワークを利用して算出し、「管理指標」とすることで、「変状あり」と判断された検査結果及び「変状なし」と判断された検査結果双方についての検証が可能となる。
【0038】
次に、
図4及び
図5〜
図9の具体例を参照しながら、管理指標算出装置1による管理指標算出方法について説明する。
図4は、管理指標算出方法を説明するフローチャートであり、
図5及び
図6は、管理指標算出装置のデータ変換部12によるデータ変換結果を示す図である。また、
図7は、検査項目の1つである漏水の条件付き確率表を示す図であり、
図8及び
図9は、漏水に関して管理指標を算出した結果を示す図である。
【0039】
まず、データ取得部11が外部装置2から検査結果データを取得する(S01:データ取得ステップ)。次に、データ変換部12において、分析用データへの数値変換が行われる(S02:データ変換ステップ)。
【0040】
データ変換部12におけるデータ変換の一例を説明する。データ取得部11が
図2に示す検査結果データを取得した場合、まず、各検査結果のうち「変状あり」とされた結果を「1」に変換すると共に、「変状なし」とされた結果を「0」に変換する。
図2に示す検査結果データでは、A1,A2,Bと記載された欄を「1」に変換し、S又はCと記載された欄及び空欄を「0」に変換することとする。それぞれの検査結果(ここでは、「AA,A1,A2,B,C,S」)についての「0」又は「1」への変換基準は、適宜変更することができる。
【0041】
その後、所定の区間(本実施形態では5m毎)に区切って、各欄に記載された数字を検査項目毎に集計する。この際に地下トンネルの所定の位置(キロ程)における変状を観測した部位(左上、上、右下等)を考慮せずに、検査項目毎に集計する。その結果が
図5である。さらに、
図5に示す表において、1以上の数字が記載されている欄は「1」に再度変換した結果が、
図6に示す表である。
図6のように変換することで、所定の区間における所定の検査項目において「変状あり」という結果が1以上得られている場合には、該当する欄に「1」が記載された検査結果データが得られる。例えば、「0k15m」により特定される区間では、ひび、漏水、鋼材劣化、及び初期変状の各検査項目について、「変状あり」という結果が1以上得られたことが示されている。このように、検査結果データを数値化することで、ベイジアンネットワークを用いた分析に利用することができる。
【0042】
次に、
図4に戻り、変換後の分析用データから管理指標を算出する(S03:管理指標算出ステップ)。ここでは、モデル記憶部14に記憶された
図3に示すベイジアンネットワークモデルと、ベイジアンネットワークモデルに示された因果関係に基づいて予め準備された条件付き確率表に基づいて管理指標を算出する。
図3に示すベイジアンネットワークモデルに含まれる各項目N1〜N7のうち、他の項目との因果関係を有する項目N1〜N6について、条件付き確率表がそれぞれ準備され、これに基づいて判断を行う。条件付き確率は、分析用データ全体を解析することで、各検査項目同士の因果関係を求めることによって算出される。
【0043】
図7では、漏水N5に関する条件付き確率表を一例として示す。この条件付き確率表では、
図2に示すように漏水N5に対して原因となる可能性のある鋼材劣化N2、初期変状N1及びCJ(コールドジョイント)N3における「変状あり」と判定されていた項目と、漏水N5が発生する確率との対応関係と条件1〜8として示している。特定の位置(キロ程)における漏水の検査結果を検証する場合、当該位置が含まれる区間(キロ程間隔)の分析用データにおける他の検査項目の検査結果に基づいて、漏水の検査結果が「変状あり」となる観測確率が条件1〜8のいずれかから選ばれる。そして、漏水の検査結果が「変状あり」である場合には「結果の確からしさ(管理指標)=観測確率」となり管理指標として算出される。また、漏水の検査結果が「変状なし」である場合には「見落としの可能性=観測確率」となり、管理指標として算出される。この処理を、各区間の各検査項目について、それぞれ行うことにより、区間毎及び検査項目毎の管理指標が算出される。
【0044】
最後に、結果出力部15により算出結果を外部装置2へ出力する(S04:出力ステップ)。
図8及び
図9は、出力結果の一例である。
図8は、漏水が観測されなかったキロ程に対応させて、「漏水の観測確率=見落とし可能性」をプロットしたものである。また、
図9は、漏水が観測されたキロ程における「漏水の観測確率=結果の確からしさ」をプロットしたものである。このように、キロ程に対応させて、結果を出力するような構成としてもよい。以上により、管理指標算出方法に係る処理が終了する。
【0045】
以上のように、本実施形態に係る管理指標算出装置1及び管理指標算出方法によれば、検査結果データを数値変換した分析用データを用いて、ベイジアンネットワークにより、分析用データにおける複数の検査項目同士の因果関係を求め、当該因果関係に基づいて検査結果に係る管理指標が算出される。管理指標の算出にベイジアンネットワークを活用することで、他の検査項目の検査結果を考慮して、検査結果の妥当性を評価することができる。したがって、検査結果の検証を好適に行うことが可能となる。
【0046】
また、管理指標として、検査結果における変状見落とし可能性を示す指標を算出する構成を備えることにより、変状を見落とすことにより、より重大な損傷等が発生することを未然に防ぐことができる。
【0047】
また、管理指標として、検査結果の確からしさを示す指標を算出する構成を備えることにより、変状があると判断された検査結果についてもその妥当性を確認することができ、例えば、検査結果に基づいて変状に関する補修の優先度を検討する際に考慮することができる。
【0048】
以上、本発明の実施形態に係る管理指標算出装置及び管理指標算出方法について説明したが、本発明は必ずしも上述した実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の変更を行うことができる。
【0049】
例えば、管理指標算出装置1による管理指標の算出対象となる検査項目は、上記実施形態で説明したものに限定されない。また、検査項目の種類等に応じて、分析用データの生成方法及びベイジアンネットワークで用いられるモデルは適宜変更することができる。
【0050】
また、上記実施形態では、分析用データの生成の過程において、変状の発生部位を考慮しないような集計処理を行っているが、分析用データをどのように生成するかについても適宜変更することができる。
【0051】
また、上記実施形態では、折れ線グラフ化した管理指標を出力する例について説明したが、これについても適宜変更することができる。
【0052】
また、上記実施形態では、管理指標算出装置1が1台の装置により実現されている場合について説明したが、管理指標算出装置1は複数の装置により構成されていてもよい。
【解決手段】管理指標算出装置1及び管理指標算出方法によれば、検査結果データを数値変換した分析用データを用いて、ベイジアンネットワークにより、分析用データにおける複数の検査項目同士の因果関係を求め、当該因果関係に基づいて検査結果に係る管理指標が算出される。管理指標の算出にベイジアンネットワークを活用することで、他の検査項目の検査結果を考慮して、検査結果の妥当性を評価することができる。したがって、検査結果の検証を好適に行うことが可能となる。