(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記血管症状に影響される1つ以上のパラメータが、(a)動脈圧波形データのセットの脈拍標準偏差に基づいたパラメータ、(b)動脈圧波形データのセットのR−R間隔に基づいたパラメータ、(c)動脈圧波形データのセットの収縮期部分の領域に基づいたパラメータ、(d)動脈圧波形データのセットの心収縮の持続時間に基づいたパラメータ、(e)動脈圧波形データのセットの心拡張の持続時間に基づいたパラメータ、(f)動脈圧波形データのセットの平均動脈圧に基づいたパラメータ、(g)動脈圧波形データのセットの圧力加重標準偏差に基づいたパラメータ、(h)動脈圧波形データのセットの圧力加重平均に基づいたパラメータ、(i)動脈圧波形データのセットの動脈脈拍歪値に基づいたパラメータ、(j)動脈圧波形データのセットの動脈脈拍尖度値に基づいたパラメータ、(k)動脈圧波形データのセットの圧力加重歪度に基づいたパラメータ、(l)動脈圧波形データのセットの圧力加重尖度に基づいたパラメータ、および(m)動脈圧波形データのセットの圧力依存ウインドケッセルコンプライアンスに基づいたパラメータからなる群から選択される、請求項2に記載のモデル。
前記血管症状に影響される1つ以上のパラメータが、(a)動脈圧波形データのセットの脈拍標準偏差に基づいたパラメータ、(b)動脈圧波形データのセットのR−R間隔に基づいたパラメータ、(c)動脈圧波形データのセットの収縮期部分の領域に基づいたパラメータ、(d)動脈圧波形データのセットの心収縮の持続時間に基づいたパラメータ、(e)動脈圧波形データのセットの心拡張の持続時間に基づいたパラメータ、(f)動脈圧波形データのセットの平均動脈圧に基づいたパラメータ、(g)動脈圧波形データのセットの圧力加重標準偏差に基づいたパラメータ、(h)動脈圧波形データのセットの圧力加重平均に基づいたパラメータ、(i)動脈圧波形データのセットの動脈脈拍歪値に基づいたパラメータ、(j)動脈圧波形データのセットの動脈脈拍尖度値に基づいたパラメータ、(k)動脈圧波形データのセットの圧力加重歪度に基づいたパラメータ、(l)動脈圧波形データのセットの圧力加重尖度に基づいたパラメータ、および(m)動脈圧波形データのセットの圧力依存ウインドケッセルコンプライアンスに基づいたパラメータを含む、請求項2に記載のモデル。
さらに、(n)心拍間動脈血圧信号の形状と、少なくとも1つの1以上の次数を持つ動脈血圧信号の統計モーメントとに基づいたパラメータ、(o)心拍数に対応するパラメータ、および(p)患者の身体計測パラメータのセット、の1つ以上を使用して前記血管症状を検出することを含む、請求項2に記載のモデル。
前記血管症状に影響される1つ以上のパラメータが、(a)動脈圧波形データのセットの脈拍標準偏差に基づいたパラメータ、(b)動脈圧波形データのセットのR−R間隔に基づいたパラメータ、(c)動脈圧波形データのセットの収縮期部分の領域に基づいたパラメータ、(d)動脈圧波形データのセットの心収縮の持続時間に基づいたパラメータ、(e)動脈圧波形データのセットの心拡張の持続時間に基づいたパラメータ、(f)動脈圧波形データのセットの平均動脈圧に基づいたパラメータ、(g)動脈圧波形データのセットの圧力加重標準偏差に基づいたパラメータ、(h)動脈圧波形データのセットの圧力加重平均に基づいたパラメータ、(i)動脈圧波形データのセットの動脈脈拍歪値に基づいたパラメータ、(j)動脈圧波形データのセットの動脈脈拍尖度値に基づいたパラメータ、(k)動脈圧波形データのセットの圧力加重歪度に基づいたパラメータ、(l)動脈圧波形データのセットの圧力加重尖度に基づいたパラメータ、および(m)動脈圧波形データのセットの圧力依存ウインドケッセルコンプライアンスに基づいたパラメータからなる群から選択される、請求項10に記載の方法。
前記血管症状に影響される1つ以上のパラメータが、(a)動脈圧波形データのセットの脈拍標準偏差に基づいたパラメータ、(b)動脈圧波形データのセットのR−R間隔に基づいたパラメータ、(c)動脈圧波形データのセットの収縮期部分の領域に基づいたパラメータ、(d)動脈圧波形データのセットの心収縮の持続時間に基づいたパラメータ、(e)動脈圧波形データのセットの心拡張の持続時間に基づいたパラメータ、(f)動脈圧波形データのセットの平均動脈圧に基づいたパラメータ、(g)動脈圧波形データのセットの圧力加重標準偏差に基づいたパラメータ、(h)動脈圧波形データのセットの圧力加重平均に基づいたパラメータ、(i)動脈圧波形データのセットの動脈脈拍歪値に基づいたパラメータ、(j)動脈圧波形データのセットの動脈脈拍尖度値に基づいたパラメータ、(k)動脈圧波形データのセットの圧力加重歪度に基づいたパラメータ、(l)動脈圧波形データのセットの圧力加重尖度に基づいたパラメータ、および(m)動脈圧波形データのセットの圧力依存ウインドケッセルコンプライアンスに基づいたパラメータを含む、請求項10に記載の方法。
さらに、(d)心拍間動脈血圧信号の形状と、少なくとも1つの1以上の次数を持つ動脈血圧信号の統計モーメントとに基づいたパラメータ、(e)心拍数に対応するパラメータ、および(f)患者の身体計測パラメータのセットの1つ以上を使用した血管症状を検出することを有する、請求項10に記載の方法。
前記血管症状に影響される前記1つ以上のパラメータが、(a)動脈圧波形データのセットの脈拍標準偏差に基づいたパラメータ、(b)動脈圧波形データのセットのR−R間隔に基づいたパラメータ、(c)動脈圧波形データのセットの収縮期部分の領域に基づいたパラメータ、(d)動脈圧波形データのセットの心収縮の持続時間に基づいたパラメータ、(e)動脈圧波形データのセットの心拡張の持続時間に基づいたパラメータ、(f)動脈圧波形データのセットの平均動脈圧に基づいたパラメータ、(g)動脈圧波形データのセットの圧力加重標準偏差に基づいたパラメータ、(h)動脈圧波形データのセットの圧力加重平均に基づいたパラメータ、(i)動脈圧波形データのセットの動脈脈拍歪値に基づいたパラメータ、(j)動脈圧波形データのセットの動脈脈拍尖度値に基づいたパラメータ、(k)動脈圧波形データのセットの圧力加重歪度に基づいたパラメータ、(l)動脈圧波形データのセットの圧力加重尖度に基づいたパラメータ、および(m)動脈圧波形データのセットの圧力依存ウインドケッセルコンプライアンスに基づいたパラメータからなる群から選択される、請求項19に記載の方法。
前記血管症状に影響される前記1つ以上のパラメータが、(a)動脈圧波形データのセットの脈拍標準偏差に基づいたパラメータ、(b)動脈圧波形データのセットのR−R間隔に基づいたパラメータ、(c)動脈圧波形データのセットの収縮期部分の領域に基づいたパラメータ、(d)動脈圧波形データのセットの心収縮の持続時間に基づいたパラメータ、(e)動脈圧波形データのセットの心拡張の持続時間に基づいたパラメータ、(f)動脈圧波形データのセットの平均動脈圧に基づいたパラメータ、(g)動脈圧波形データのセットの圧力加重標準偏差に基づいたパラメータ、(h)動脈圧波形データのセットの圧力加重平均に基づいたパラメータ、(i)動脈圧波形データのセットの動脈脈拍歪値に基づいたパラメータ、(j)動脈圧波形データのセットの動脈脈拍尖度値に基づいたパラメータ、(k)動脈圧波形データのセットの圧力加重歪度に基づいたパラメータ、(l)動脈圧波形データのセットの圧力加重尖度に基づいたパラメータ、および(m)動脈圧波形データのセットの圧力依存ウインドケッセルコンプライアンスに基づいたパラメータを含む、請求項19に記載の方法。
前記閾値が閾値範囲であり、前記心血管パラメータが前記閾値範囲内ならば結果が不確定であり、前記方法が患者からの付加的な動脈圧波形データを使用して繰り返される、請求項18に記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0006】
血管症状を検出する多変数統計モデル、そのような多変数統計モデルを作成する方法および多変数統計モデルを用いて、患者の血管症状を検出する方法が記載される。血管症状は、例えば血管拡張、血管収縮、末梢の圧力/流量が中央の圧力/流量に無関係な状況、末梢の動脈圧が中央の大動脈圧に比例しない状況、および末梢の動脈圧が中央の大動脈圧より低い状況などの異なる心血管の血行動態状況や状態を含んでもよい。
【0007】
本明細書に記載される、血管症状の検出に使用するモデルは、多変数統計モデルである。この多変数統計モデルは、特定の血管症状がある第1の群の患者および同一の血管症状がない第2の群の患者からの動脈圧波形データに基づく。1つの例として、特定の血管症状があった第1の群の患者は、動脈圧波形データが収集されたとき、末梢の動脈圧/流量が中央の大動脈圧/流量に無関係であった患者である。さらなる例として、同一の血管症状がなかった第2の群の患者は、動脈圧波形データが収集されたとき、末梢の動脈圧/流量が中央の大動脈圧/流量に無関係でなかった、例えば正常な血管症状であった患者である。多変数統計モデルは、それぞれの入力データに異なる出力値を提供するため設定される。特に、多変数統計モデルは、第1のセットの動脈圧波形データの動脈圧波形の第1の確定された値、および第2のセットの動脈圧波形データの動脈圧波形の第2の確定された値に対応するモデル出力値を提供する。
【0008】
多変数統計モデルは、血管症状に影響される1つ以上のパラメータを含む因子のセットに基づく。理論に縛られることを望まず、1つのモデルを使用し、モデルに第1および第2のセットのデータに異なる出力を要求するよう強制することで、患者に血管症状が起こっている指標を提供する複数の因子の利点が得られる。使用されるそれぞれのタイプの因子、例えば脈拍標準偏差は、通常は特定の血管症状がある患者とその症状がない人達の間の差を記録する。しかしこの差は、しばしば連続線に沿って位置し、特定の患者は明確にポジティブな指標と明確にネガティブな指標の間の値である可能性があり、または、血管症状があるにもかかわらず、この患者ではなんらかの理由で特定の因子が正常の範囲である可能性がある。しかし、複数の因子、すなわち血管症状に影響される複数の因子を使用することにより、通常は症状があることを示す十分にポジティブな指標(または症状がない十分にネガティブな指標)があることになる。本明細書で記載されるように確定された多変数統計モデルは、2つの状態、すなわち血管症状があるかまたはないかを識別する能力を増大させる複数の因子を使用する能力を提供する。
【0009】
多変数統計モデルで使用される因子の具体的な数は、特定の症状がある患者と特定の症状がない患者とを識別する個々の因子の能力による。因子の数は、モデルの正確性のレベルを上げるため、増やすことも可能である。よって、モデルの精度、正確性および/または特定の環境で必要とされるモデルの再現性を促進するため、より多くの因子を使用してもよい。本明細書に記載されるモデルで使用可能な因子の例は、(a)動脈圧波形データのセットの脈拍標準偏差に基づいたパラメータ、(b)動脈圧波形データのセットのR−R間隔(または心拍数)に基づいたパラメータ、(c)動脈圧波形データのセットの収縮期部分の領域に基づいたパラメータ、(d)動脈圧波形データのセットの心収縮の持続時間に基づいたパラメータ、(e)動脈圧波形データのセットの心拡張の持続時間に基づいたパラメータ、(f)動脈圧波形データのセットの平均動脈圧に基づいたパラメータ、(g)動脈圧波形データのセットの圧力加重標準偏差に基づいたパラメータ、(h)動脈圧波形データのセットの圧力加重平均に基づいたパラメータ、(i)動脈圧波形データのセットの動脈脈拍歪値に基づいたパラメータ、(j)動脈圧波形データのセットの動脈脈拍尖度値に基づいたパラメータ、(k)動脈圧波形データのセットの圧力加重歪度に基づいたパラメータ、(l)動脈圧波形データのセットの圧力加重尖度に基づいたパラメータ、および(m)Langewouters et al.(“The Static Elastic Properties of 45 Human Thoracic and 20 Abnormal Aortas in vitro and the Parameters of a New Model,”J.Biomechanics,17(6):425−435(1984))に定義されるように、動脈圧波形データのセットの圧力依存ウインドケッセルコンプライアンスに基づいたパラメータを含む。本明細書に記載される、多変数統計モデルと共に使用可能な付加的な因子は、(n)心拍間動脈血圧信号の形状と、少なくとも1つの1以上の次数を持つ動脈血圧信号の統計モーメントとに基づいたパラメータ、(o)心拍数に対応するパラメータ、および(p)患者の身体計測パラメータのセットを含む。特定のパラメータの例が提供されるが、一般に、動脈圧波形の時間領域、回数領域または時間回数領域パラメータの使用が可能である。これらのまたは他の因子の1つ以上(またはこれらのまたは他の因子の全て)が、本明細書に記載される多変数統計モデルで使用が可能である。
【0010】
本明細書に記載されるモデルおよび方法で使用される因子は、動脈血圧に基づいた信号、または動脈血圧に比例した、動脈血圧から得られたまたは動脈血圧の関数の信号から計算される。動脈コンプライアンス(動脈緊張)のような心血管パラメータの計算は、2004年7月14日に出願された米国特許出願第10/890,887号に記載されており、この全体は参照により本明細書に組み込まれる。米国特許出願第10/890,887号で述べられたパラメータを含む、本明細書中に開示される方法での使用のための心血管パラメータの計算に使用される因子およびデータの例を後述する。
【0011】
図1は1つの心臓サイクルを採取した動脈圧波形P(t)の例である。この心臓サイクルは、時間t
dia0において拡張期圧力P
diaの地点で始まり、収縮期圧力P
sysまでの時間t
sysを経過して血圧がもう一度P
diaに達する時間t
dia1までである。
【0012】
本方法で有益な信号は、例えば撓骨、大腿または上腕のような動脈樹のあらゆる地点で侵襲的または非侵襲的に測定された、動脈血圧または動脈血圧信号に比例した動脈血圧信号から得られたまたは動脈血圧信号の関数であるあらゆる信号に基づく心血管パラメータを含む。侵襲的器具、特にカテーテル装着圧力トランスデューサが使用されると、いずれの動脈も測定可能な地点となりうる。器具自体、例えば指カフス、上腕圧力カフスおよび耳たぶクランプにより、通常は非侵襲的トランスデューサの配置が決まる。使用される特定の器具に関わらず、得られたデータは、最終的に動脈血圧に対応する(例えば比例した)電気信号を生じる。
【0013】
図2に示されるように、動脈血圧のようなアナログ信号は、標準アナログ−デジタル変換器(ADC)を使用してデジタル値の配列にデジタル化が可能である。言い換えれば、動脈血圧t
0≦t≦t
fは、公知の方法および回路を用いてデジタル形態P(k)、k=0、(n−1)に変換が可能であり、ここでt
0およびt
fは測定時間の最初および最後の時間であり、nは通常測定時間にわたり均一に分布する、計算に含められる動脈血圧のサンプルの数である。
【0014】
そのようなデジタルまたはデジタル化された信号から関連するデータをとらえるため、mの値の順序づけた集合、すなわち、配列Y(i)、i=1,...,(m−1)を考える。統計の分野から公知のように、Y(i)の最初の4つのモーメントμ
1、μ
2、μ
3およびμ
4は、公知の数式を用いて計算することができ、μ
1が平均(数学的平均)、μ
2=σ
2がその変分(すなわち標準偏差σの2乗)、μ
3が歪度、およびμ
4が尖度である。よって、
μ1=Yavg=1/m
*Σ(Y(i)) (数式1)
μ
2=σ
2=1/(m−1)
*Σ(Y(i)−Y
avg)
2 (数式2)
μ
3=1/(m−1)
*Σ[(Y(i)−Y
avg)/σ]
3 (数式3)
μ
4=σ/(m−1)
*Σ[(Y(i)−Y
avg)/σ]
4 (数式4)
一般に、β回目のモーメントμpは以下のように表現でき、
μ
β=1(m−1)
*1/σ
β*Σ[(Y)(i)−Y
avg)]
β (数式5)
ここで、i=0,...,(m−1)である。第2から第4のモーメントの個別の値の数式は、公知の統計的理由のため、1/mの代わりに1/(m−1)で計算する。
【0015】
本明細書に記載される方法は、圧力波形P(k)の4つのモーメントだけでなく、圧力加重時間ベクトルの関数も利用する。標準偏差σは、σが大きくなるほどY(i)の関数が「広がる」、すなわちより平均から逸脱する傾向があるという1つのレベルの形状情報を提供する。標準偏差はいくつかの形状情報を提供するが、その欠点は以下を検討することで容易に理解できる。配列Y(i)を作る値内の順序が「逆転する」と、平均および標準偏差は変化しない。すなわち、Y(i)はi=0軸で反射され、値Y(m−1)が時間で第1の値となるようシフトされる。
【0016】
歪度は対称性の欠如の指標であり、関数Y(i)の右側または左側が統計的最頻値に対してより重いかどうかを示す。ポジティブに歪曲した関数は急速に上昇してピークに達し、その後緩慢に下降する。ネガティブに歪曲した関数はまさに反対である。ポイントは、歪度値が平均または標準偏差に見られない形状情報を持っていて、特に最初に関数がどのように急速に上昇しその後どのように緩慢に減少するかを示すことである。2つの異なる関数は、同一の平均および標準偏差を有するかもしれないが、同一の歪度を有することはまれである。
【0017】
尖度は関数Y(i)が通常の分布よりピークをつけるかまたはより平坦かどうかの指標である。よって、高い尖度値は、平均付近の明確なピーク、その後の重い「尾」に続く降下を示す。低い尖度値は、その関数がピークの範囲内で比較的平坦であることを示す傾向がある。通常の分布は尖度が3.0である。従って、実際の尖度値は、値が代わりに起点に対するよう、しばしば3.0に調整される。
【0018】
心拍間動脈圧波形の4つの統計的モーメントを使用する利点は、モーメントが心拍間動脈圧波形の形状の数学的指標に正確で高感度であることである。動脈コンプライアンスおよび末梢抵抗は動脈圧波形の形状に直接影響するので、動脈コンプライアンスおよび末梢抵抗の影響は動脈圧波形の形状を測定することにより直接に評価が可能である。本明細書に記載された他の動脈圧パラメータと共に心拍間動脈圧波形の形状高感度統計的モーメントは、血管コンプライアンスおよび末梢抵抗、すなわち動脈緊張の複合した影響を測定するのに効果的に使用可能である。動脈緊張は動脈コンプライアンスおよび末梢抵抗の複合した影響を示し、容量性および抵抗性構成要素からなる、ウインドケッセル血行動態モデルの公知の2要素電気アナログ等価モデルのインピーダンスに対応する。動脈緊張を測定することにより、動脈弾性、1回拍出量、および心拍出量のような動脈緊張に基づいたいくつかの他のパラメータも、直接測定が可能である。それらのいずれのパラメータも、本明細書に記載されたモデルおよび方法で因子として使用が可能である。
【0019】
圧力波形P(k)の最初の4つのモーメントμ
1P、μ
2P、μ
3P、およびμ
4P(μ
1Pが平均でμ
2P P=σ
P2が変分すなわち標準偏差σ
Pの2乗)が本明細書に記載されたようなモデルにおいて計算され使用されるとき、μ
3Pが歪度、μ
4Pが尖度であり、これらのモーメントの全ては圧力波形P(k)に基づく。前記数式1〜4を、YをPに、iをkに、mをnに置き換えた後に計算のため使用してもよい。
【0020】
前記数式2は、標準偏差を計算する「教科書の」方法を提供する。他のより適切な方法も使用してよい。例えば、少なくとも血圧ベースの測定値のコンテキストにおいて、σ
Pの大まかな近似値は、測定された圧力値の最大値と最小値の差を3で割り、時間に対するP(t)の第1の微分の最大値または最小値の絶対値は、一般的にσ
Pに比例する。
【0021】
図2に示すように、それぞれの個別の時間kにおいて、対応する測定された圧力はP(k)になる。値kおよびP(k)は、ヒストグラムに対応する配列T(j)に形成でき、それぞれのP(k)の値は対応するkの値の「計数」として使用されることを意味する。非常に簡略化した例で、全体の圧力波形が4つの測定された値P(1)=25,P(2)=50、P(3)=55、およびP(4)=35のみで構成されていると仮定する。これは、それから、1が25個、2が50個、3が55個および4が35個の配列T(j)として表わすことができる。
T(j)=1,1,...,1,2,2,...,2,3,3,...,3,4,4,...,4
この配列は、よって25+50+55+35=165の項を有する。
【0022】
この配列のモーメントは、他に関しても計算できる。例えば、平均(第1のモーメント)は以下となる。
μ
1T=(1
*25+2
*50+3
*55+4
*35)/165=430/165=2.606 (数式6)
また標準偏差σ
Tは変分μ
2Tの平方根である。
SQRT[1/164
*25(1−2.61)
2+50(2−2.61)
2+55(3−2.61)
2+35(4−2.61)
2]=0.985
歪度μ
3Tおよび尖度μ
4Tは、数式3および4で類似の置換により計算が可能である。
μ
3T={1/(164)
*(1/σ
T3)Σ[P(k)
*(k−μ
1T)
3]}(数式7)
μ
4T={1/(164)
*(1/σ
T4)Σ[P(k)
*(k−μ
1T)
4]}(数式8)
ここで、k=1,...,(m−1)である。
【0023】
これらの数式が示すように、このプロセスは、時間のモーメントを計算する前に、実質的に、個別の時間値kを対応する圧力値P(k)によって「加重する」。配列T(j)は、圧力波形の時間分布をしっかりと特徴づける非常に有益な特性を持つ。圧力値P(k)の順序を逆転すると、ほとんど全てのケースでT(j)の平均ならびに高次のモーメントさえも変化することになる。また、重複脈圧力P
dicroticにおいて通常起こる二次的「ハンプ」も、尖度μ
4Tの値に著しく影響する。対照的に、ロマノ法(Romano method)におけるような先行技術において重複脈隆起を単に識別することは、少なくとも1つの微分のノイズが多い計算を要する。
【0024】
圧力加重モーメントは、心拍間動脈圧信号の振幅および時間情報の両方の正確な測定値であるので、心拍間動脈圧信号の他のレベルの形状情報を提供する。圧力波形モーメントに加えて圧力加重モーメントを使用することで、本明細書に記載されるモデルの正確性の増大が可能である。
【0025】
他の公知の特徴、例えば、患者特有の血管の分岐の複雑なパターンを考慮するため、付加的なパラメータを計算に含めてもよい。付加的な値の例は、体表面積BSAまたは患者の他の身体計測パラメータ、Langewouters et al.(“The Static Elastic Properties of 45Human Thoracic and 20 Abnormal Aortas in vitro and the Parameters of a New Model,”J.Biomechanics,17(6):425−435(1984))により記載されたような公知の方法を用いて計算されたコンプライアンス値C(P)を含み、この方法では圧力波形、および患者の年齢および性別、動脈血圧信号の形状および1以上の次数を持つ動脈血圧信号の少なくとも1つの統計モーメントに基づいたパラメータ、動脈血圧信号の収縮期部分の領域に基づいたパラメータ、心収縮の持続時間に基づいたパラメータ、および心拡張の持続時間に対する心収縮の持続時間の比率に基づいたパラメータの多項式関数としてコンプライアンスを計算する。
【0026】
これら最後の3つの心血管パラメータ、すなわち動脈血圧信号の収縮期部分の領域、心収縮の持続時間、および心拡張の持続時間に対する心収縮の持続時間の比率は、動脈緊張および血管コンプライアンスに影響され、よって、例えば、通常の血行動態状況の患者と末梢動脈圧が連動しない収縮過多状況の患者の間で差が生じる。これらの3つの心血管パラメータは、通常の患者と収縮過多の患者で差が生じるので、本明細書に記載される方法は、患者の末梢動脈内の血管拡張または血管収縮を検出するためにこれらの心血管パラメータを使用してもよい。
【0027】
動脈圧波形の収縮期部分の領域(A
sys)が、
図3にグラフで示されている。動脈圧信号の動脈圧波形の収縮期部分の領域は、拍動の開始から始まり重複隆起内で終わる波形の部分の領域(
図3のb地点からd地点)として定義される。心収縮の領域は、心収縮の間の動脈圧信号のエネルギーを表し、1回拍出量に直接比例して、動脈コンプライアンスに反比例する。通常および収縮過多の患者を測定するとき、A
sysのシフトが検出できる。
図4に示すように、心収縮の間の動脈圧信号のエネルギーは、例えば一部の収縮過多状況の患者でより高い。これらのA
sysが高い患者は、通常は高心拍出量(CO)および低または通常心拍数HRの患者であり、COの増加は主に心収縮の増加により起こり、心収縮の間動脈圧信号のエネルギーに直接影響して、これらの患者の1回拍出量が増加して動脈コンプライアンスが減少したことを意味する。多くの収縮過多状況の間通常非常に激しい、影響を受けた波も、心収縮の間信号のエネルギーの増加に著しく寄与する。
【0028】
心収縮の持続時間(t
sys)が、
図5にグラフで示されている。動脈圧波形の心収縮の持続時間は、拍動の開始から重複隆起までの持続時間(
図5のb地点からd地点)として定義される。心収縮の持続時間は動脈コンプライアンスに直接影響され、大きな影響の波が存在するときを除き、末梢動脈緊張の変化から比較的独立している。
図6に示されるように、例えば一部の収縮過多患者の心収縮の持続時間は、通常の患者の心収縮の持続時間より長い(高いt
sys値にシフトしたデータ)。収縮期エネルギーに見られるように、心収縮の持続時間は、通常はCOが高くHRが低または通常の患者で長く、COの増加は主に心収縮の増加により起こり、収縮は収縮期エネルギーを増加させるには十分ではない可能性があった。これらの患者の1回拍出量の増加は、部分的には収縮の増加によるもので、また部分的には心収縮の持続時間の増加によるものである。影響された波も同様に作用する。
【0029】
図7にグラフで示されるように、通常と収縮過多の患者の間で差が生じるさらなるパラメータは、例えば、心収縮の持続時間(t
sys)と心拡張の持続時間(t
dia)の比率である。動脈圧波形の心拡張の持続時間は、重複隆起から心臓サイクルの終了までの持続時間(
図7のd地点からe地点)として定義される。一部の収縮過多状況において、心収縮および心拡張の持続時間の比率は、通常の血行動態状況で観察されるより明らかに高い。これは、通常は、COが増加した敗血症性ショックでHRも高い患者に観察される。これらのタイプの状況では、心収縮が心臓サイクルのほぼ全体を占め、次の心臓サイクルが始まる前の心拡張の時間は非常に短い。これは
図8および9に示され、敗血症性ショックの患者および通常の患者のHRが高い状況間の、心拡張の持続時間(
図8)および心収縮の持続時間(
図9)を表す。図に示すように、通常の血行動態状況の高HR患者(点線)は、心収縮および心拡張の両方の持続時間が短い傾向があり、敗血症性ショックの高HR患者(太線)は、心拡張の持続時間が短いが心収縮の持続時間は通常または長い傾向がある。
【0030】
動脈緊張因子に基づいた他のパラメータ、例えば、1回拍出量(SV)、心拍出量(CO)、動脈流量、動脈弾性または血管緊張などを、本明細書に記載されるモデルにおいて因子として使用してもよい。
【0031】
それぞれの計算が行われる時間であるアナログ測定時間、すなわち時間ウィンドウ[t0,tf]、および、従って個別のサンプリング時間k=0,...,(n−1)は、圧力および/または時間モーメントで実質的なシフトを包含しないように、十分短くすべきである。しかし、1つの心臓サイクルより長く伸びる時間ウィンドウは、適切なデータを提供する。測定時間は、異なる心臓サイクルの同一の地点において開始し終了する複数の心臓サイクルが望ましい。複数の心臓サイクルを使用することで、種々の高次モーメントの計算に使用される平均圧力値が、サイクルの不完全な測定のために偏っていない平均圧力値P
avgを使用することが確実になる。
【0032】
サンプリングウィンドウが大きいと、反影で起こることのような変動の影響が、通常減少する利点がある。当業者に公知の通常の実験的および臨床的方法を用いて、適切な時間ウィンドウが決定されうる。時間ウィンドウが1つの心臓サイクルに一致し、このケースで平均圧力のシフトが懸念にならない可能性があることに留意されたい。
【0033】
時間ウィンドウ[t
0,t
f]も、P
avg内の移動により調節可能である。例えば、所定の時間ウィンドウにわたるP
avgが、前の時間ウィンドウのP
avgと絶対的または比例的に閾値より多く異なれば、時間ウィンドウを縮小してもよい。このケースでは、P
avgの安定性が、その後時間ウィンドウが拡張可能であることを示すのに用いられる。時間ウィンドウも、ノイズ源、または信号対ノイズ比または変分の測定値に基づき、拡張および収縮が可能である。時間ウィンドウの拡張または収縮が許される量は制限することが望ましく、そのような拡張または収縮が完全に許されるならば、時間の目安をユーザに表示することが望ましい。
【0034】
時間ウィンドウは、心臓サイクルのいずれの特定の地点で開始する必要はない。よって、t
0は、t
dia0と同一であることが実施の多くで好都合な選択であるかもしれないが、そうである必要はない。よって、時にはt
dia0またはt
sysのような心臓サイクルのほぼあらゆる特徴、またはR波などのような非圧力の特徴が、それぞれの測定時間の開始および終了(すなわちt
0およびt
f)を作動してもよい。
【0035】
血圧を直接測定するよりむしろ、血圧に比例した、血圧から得た、または血圧の関数であるあらゆる他の入力信号を使用してよい。これは、計算のいくつかの地点のどれかまたは全てで補正してもよいことを意味する。例えば、動脈血圧それ自身以外の信号が入力として使用されていれば、その値が種々の構成要素モーメントの計算に使用される前または後で、血圧に補正してもよく、このケースでは、どちらの結果のモーメント値も増減されうる。つまり、心血管パラメータが一部のケースで動脈血圧の直接測定値よりも異なる入力信号を使用する可能性があるという事実は、正確なコンプライアンス推計値を作る能力を排除しない。
【0036】
1つの例では、因子の所定のセットの多変数ブールモデルの無関係な出力値は、第1のセットの動脈圧波形データの動脈圧波形から得られるようなそれらの因子の第1の確定された値に制約され、同時に、第2のセットの動脈圧波形データの動脈圧波形から得られるようなそれらの因子の第2の確定された値に制約される。第1の確定された値および第2の確定された値は、分析される患者のモデル出力値を好都合に比較するように設定が可能である。例えば、第1の確定された値は、第2の確定された値より大きくてもよい。また、第1の確定された値は正数であってもよく、第2の確定された値は負数であってもよい。さらに例えば、第1の確定された値は+100で、第2の確定された値は−100であってもよい。
【0037】
そのような確定された値、すなわち+100および−100は、多変数統計モデルのブールタイプ結果を出すのに使用してもよい。例えば、第1の確定された値が+100で、第2の確定された値が−100の多変数統計モデルに、そのモデル出力値は後述の指標のように設定してもよい。
モデル出力値≧0→血管症状を示す
モデル出力値<0→血管症状を示さない
このケースでは、「0」の値が、同値またはそれを上回ると血管症状を示す閾値とみなされ、すなわち、0以上の値は、血管症状がない患者よりも、多変数モデルを確定するのに用いられた、血管症状がある患者により多く関連する。逆に、「0」より小さい値は、患者が、血管症状がある患者よりも、多変数モデルを確定するのに用いられた血管症状がない患者により密接に関連した血管症状があることを示す。この例に、閾値は、第1の確定された値および第2の確定された値の間の平均に設定された。しかし、閾値は、経験的観察に基づきシフトしてもよい。例えば、値αが第1および第2の閾値の間の平均であれば、閾値は、α−1、α−2、α−3、α−4、α−5、α−10、α−15、α−20、α+1、α+2、α+3、α+4、α+5、α+10、α+15、またはα+20であってもよい。
【0038】
一部の血管症状で、患者が問題になっている血管症状があるかどうかは決定的でない閾値の範囲がありうる。これらのケースで、閾値範囲を用いてもよい。例えば、第1の確定された値が+100で、第2の確定された値が−100の多変数統計モデルに、そのモデル出力値は後述の指標のように設定してもよい。
モデル出力値≧10→血管症状を示す
−10<モデル出力値<10→不確定(分析を続ける)
モデル出力値≦−10→血管症状を示さない
この例で、10と−10の間の値は不確定とみなされ、値が10以上または−10以下を示すかどうかを見るため、さらにデータを分析してもよい。そうでなければ、この状況では、10以上のモデル出力値は血管症状を示し、−10以下は通常の血管症状を示す。閾値の範囲は、第1および第2の確定された値の間の中間点において血管症状を示すモデルの能力の評価による。また、閾値の範囲は経験的観察に基づきシフトしてもよく、そうでなければ調整してもよい。例えば、値αが第1および第2の閾値の間の平均値であれば、閾値は、[(α−1)±β]、[(α−2)±β]、[(α−3)±β]、[(α−4)±β]、[(α−5)±β]、[(α−10)±β]、[(α−15)±β]、[(α−20)±β]、[(α+1)±β]、[(α+2)±β]、[(α+3)±β]、[(α+4)±β]、[(α+5)±β]、[(α+10)±β]、、[(α+15)±β]または[(α+20)±β]であってもよく、ここでβは範囲の上限および下限であり、例えばβは、モデルにより1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15または20であってもよい。
【0039】
そのようなブール結果を提供する多変数統計モデルの作成は、いくつかの工程を有する。例えば、複数線形回帰応答曲面法をこのモデルの確定に使用してもよい。このモデルで使用される項の数は、モデル出力値とモデルが特定の状況のために強いられる値の間の平均二乗誤差を最小化する、いくつかの数値的手法を用いて決定される。より詳細な例として、モデル出力値の予測変数セットは、特定の患者群に関連し、すなわち、確定された値は、特定の血管症状がある患者に+100を設定してもよく、血管症状がない患者に−100を設定してもよい。この操作は基準値群を作り、基準値群のそれぞれはモデル出力値の構成要素パラメータの関数である。それから、多変数近似関数を、最善に定義された方法で患者群によりモデル出力値を+100または−100に関連付ける公知の数式モデルを用いて計算してもよい。それから、多項式多変数あてはめ関数を、それぞれの予測値のセットの+100および−100の制約を満たす多項式の係数を生成するために使用してもよい。そのような多変数モデル(ここではχがモデル出力値)は以下の一般形を有する。
【0040】
【数1】
(数式10)
ここで、a
1...a
nは多項式重回帰モデルの係数で、x
1...x
nはモデルの予測変数である。予測変数は、動脈圧波形から得られた前述の因子から選択される。
【0041】
それぞれのモデルの予測変数x
iは動脈圧波形パラメータν
iの予め定義済の組み合わせであり、以下のように計算が可能である。
【0042】
【数2】
(数式11)
係数a
iおよび指数行列「P」は、患者から収集した因子データを用いて、多変数最小二乗回帰により決定されうる。それらは、参照患者の母集団に対する患者群によって、例えば+100および−100の値に関連付けてもよい。例えば、血管症状がある患者からの因子データは、以下のように関連しうる。
【0043】
【数3】
(数式12)
そして、血管症状がない患者からの因子データは、以下のように関連しうる。
【0044】
【数4】
(数式13)
具体的な例として、14の動脈圧波形因子(ν
i)を用いて多変数モデルが作られ、その中でモデルを最適にするため17の項が必要であった。これらのパラメータは、ν
1(脈拍標準偏差(std))、ν
2(R−R間隔(r2r))、ν
3(心収縮の領域(sys area))、ν
4(心収縮の持続時間(t_sys))、ν
5(心拡張の持続時間(t_dia))、ν
6(平均動脈圧(MAP))、ν
7(圧力加重標準偏差(σ
T))、ν
8(圧力加重平均(μ
2))、ν
9(動脈脈拍の歪度(μ
3P))、ν
10(動脈圧の尖度(μ
4P))、ν
11(圧力加重歪度(μ
3T))、ν
12(圧力加重尖度(μ
4T))、ν
13(圧力依存ウインドケッセルコンプライアンス(C
W))およびν
14(患者の体表面積(BSA))であった。このモデルは以下のようであった。
【0045】
【数5】
(数式14)
回帰の後、配列の値P(17×14)が、モデルに含まれる変数を以下のように定義して決定された。
【0046】
【数6】
この回帰は、回帰項毎のパラメータの数が2つ以下に抑制され、それぞれのパラメータが2以下の次数を有するよう実行された。よって、前述のように、行列Pのそれぞれの行は、多くとも3つの0ではない項を有し、Pのそれぞれの構成要素の絶対値は最大2である。これらの制約は、数値的安定性および正確性のために設定された。従って、χの表現は14次元パラメータ空間内の17項の二次曲線になった。χの結果の表現は以下のように記すことができる。
【0047】
【数7】
(数式15)
ここでA
1...A
17は、多項式多回帰モデルの係数である。これらの係数は、選択された因子群を与えられたχが+100または−100に等しいようにパラメータを最良に関連付けるように、その後(公知の数値的方法を用いて)計算された。最小二乗回帰に基づいた多項式多変数あてはめ関数が、後述の多項式の係数を生成するのに使用された。
【0048】
【数8】
よって、患者の心血管パラメータは、最初に記載されたようにモデルを作成することにより決定されうる(すなわち、第1のセットの動脈圧波形データの動脈圧波形の第1の確定された値および第2のセットの動脈圧波形データの動脈圧波形の第2の確定された値に対応するモデル出力値の臨床的に得られた参照測定のセットに関する近似関数を決定し、出力値は血管症状がない患者と血管症状がある患者の両方からの心血管パラメータの臨床測定値を表し、近似関数は前述のようなパラメータの1つ以上の関数であり、臨床的に決定された参照測定のセットは通常の血行動態状況の患者または異常な血行動態状況の患者からの心血管パラメータによる血圧パラメータを表す(モデルによる))。次に、動脈血圧波形データから動脈血圧パラメータのセットを決定し、この動脈血圧パラメータのセットは多変数統計モデルの作成に使用される同一のパラメータを含む。それから、動脈血圧パラメータのセットを用いて近似関数を評価することにより、患者の心血管パラメータを推計する。
【0049】
一度そのようなモデルが開発されると、リアルタイムで継続的にあらゆる患者の心血管症状の検出に使用が可能である。このモデルを、患者の動脈圧波形から決定された選択された因子を用いて、継続的に評価してもよい。この例では、第1の確定された値は+100に設定され、第2の確定された値は−100に設定され、閾値を例えばこのモデルにおいて、以下を提供するため0に設定できた。
χ≧0→血管症状を示す
χ<0→血管症状を示さない
【0050】
患者の血管症状の検出に使用するそのような多変数統計モデルを作成する方法も、本明細書に開示される。この方法は、まさに提供された例と類似した様式で遂行される。特に、この方法は、血管症状がある第1の群の患者からの第1のセットの動脈圧波形データの提供、および血管症状がなかった第2の群の患者からの第2のセットの動脈圧波形データの提供を含む。それから、このデータは、第1のセットの動脈圧波形データの動脈圧波形の第1の確定された値および第2のセットの動脈圧波形の第2の確定された値に対応するモデル出力値を提供する多変数統計モデルを構築するために使用される。この多変数統計モデルは、前述の血管症状に影響される1つ以上のパラメータを含む因子のセットを使用する。
【0051】
患者の血管症状を検出する方法がさらに開示される。この方法は、患者からの動脈圧波形データの提供を含む。この動脈圧波形データは、多変数統計モデルが基づくデータになる。それから、心血管パラメータを決定するため動脈圧波形データに多変数統計モデルを適用する。多変数統計モデルは、前述のように、血管症状がある第1の群の患者からの第1のセットの動脈圧波形データ、および血管症状がなかった第2の群の患者からの第2のセットの動脈圧波形データから準備が可能である。多変数統計モデルは、第1のセットの動脈圧波形データの動脈圧波形の第1の確定された値および第2のセットの動脈圧波形データの動脈圧波形の第2の確定された値に対応する心血管パラメータを提供するため設定される。一度心血管パラメータが計算されると、心血管パラメータは予め確定された閾値と比較される。予め確定された閾値は、閾値以上の心血管パラメータは患者の血管症状があることを示し、閾値未満の心血管パラメータは患者の血管症状がないことを示すように選択される。
【0052】
この患者の血管症状を検出する方法は、時間的状況でのありうる変化を監視できるよう、継続的に患者を監視するため使用してもよい。この方法でさらに、血管症状が示されるときユーザに警告してもよい。そのような警告は、グラフィカルユーザインタフェース上に表示される通知または音であってもよい。
【0053】
このモデルは、例えば末梢動脈圧の無関係を検出するために使用してもよい。本明細書で使用するように、末梢動脈圧の無関係の語句は、末梢動脈圧および/または流量が中央大動脈圧および/または流量と無関係である状況を意味し、末梢動脈の語は、例えば撓骨、大腿、または上腕動脈のような、心臓から離れて位置する動脈を意味するよう意図される。無関係動脈圧は、末梢動脈圧および中央の圧力の間の通常の関係が成立していないことを意味する。これは、末梢動脈圧が中央大動脈圧に比例していない、または中央大動脈圧の作用ではない状況も含む。通常の血行動態状況では、血圧は心臓から離れて測定されるほど上昇する。そのような圧力の上昇は
図10に示され、すなわち、撓骨動脈で測定された圧力波の振幅は、大腿動脈で測定された圧力より大きく、順に大腿動脈で測定された圧力は大動脈圧力より大きい。これらの圧力における差は、波反射に関連し、すなわち圧力は末梢へ増幅される。
【0054】
この通常の圧力の血行動態の関係、すなわち心臓から離れた圧力の増加は、しばしば医療診断において頼られる。しかし、収縮過多状況で、動脈圧が中央大動脈圧より低くなり、この関係は逆転する。この逆転は、例えば、前述の波反射に影響すると示唆される末梢血管内の動脈緊張の結果であると考えられてきた。そのような収縮過多状況は
図11に示され、すなわち、撓骨動脈で測定された圧力波の振幅は、大腿動脈で測定された圧力より低く、順に大腿動脈で測定された圧力は大動脈圧力より低い。小さい末梢動脈を拡張する薬剤(例えば硝酸塩、ACE阻害剤およびカルシウム阻害剤)は、収縮過多状況に貢献すると考えられる。これらのタイプの重度の血管拡張状況も、心肺バイパス(冠動脈バイパス)のまさに後の状態でしばしば観察され、撓骨動脈圧が大動脈内の圧力を下回る。末梢動脈圧が中央大動脈圧を下回る中央と末梢の相当の圧力差は、重度の血管拡張を治療するのに使用される大量の液体および高用量の血圧上昇剤で治療される重度の敗血症患者に、通常観察される。非常に類似した状況が、肝疾患の末期の患者に観察される。当業者によく理解されるであろうように、通常の血行動態状況の患者のある治療は、収縮過多状況の患者とは異なるアプローチを取る。よって、患者の血管拡張のようなここで開示された血管症状の検出方法は、当業者に非常に有益であろう。
【0055】
図12は、患者の血管拡張のような血管症状を検出する、本明細書に記載された方法を実行するシステムの主な構成要素を示す。この方法は既存の患者モニタリング装置内で実行してもよく、または専用のモニタとして実行してもよい。前述のように、圧力、または圧力に比例したいくつかの他の入力信号、圧力から得られたいくつかの他の入力信号、または圧力の関数を、侵襲的および非侵襲的方法の2つの方法のどちらでも、または実際に両方で検出してもよい。便宜上、システムを、圧力に変換されるいくつかの他の入力信号に対比するものとして動脈血圧を測定するものとして記載する。
【0056】
図12は、完全性のため、圧力検出の両方のタイプを示す。本明細書に記載される方法の実際の適用の多くにおいて、通常は1つまたはいくつかの変更が行われるであろう。本明細書に記載される方法の侵襲的適用において、従来の圧力センサ100がカテーテル110上に装着され、人間または動物の患者の身体の部分130の動脈120内に挿入される。動脈120は、例えば、大腿、撓骨または上腕動脈のような、動脈システム内のあらゆる動脈である。本明細書に記載される方法の非侵襲的適用において、光プレチスモグラフ血圧プローブのような従来の圧力センサ200が、例えば指230の周りのカフまたは患者の手首に装着されたトランスデューサを用いた従来の方法で外部に装着される。
図12は、概略的に、両方のタイプを示す。
【0057】
センサ100、200からの信号は、1つ以上のプロセッサおよび他の補助ハードウェア、およびプロセス信号および実行コードに普通含まれるシステムソフトウェア(図示せず)を有する処理システム300への入力として、公知のコネクタを介して通過させられる。本明細書に記載される方法は、改良された標準のパーソナルコンピュータを用いて実行してもよいし、またはより大きい特殊化したモニタリングシステム内に含めてもよい。本明細書に記載される方法を使用するため、処理システム300は、必要に応じて増幅、フィルタリングまたは測距のような通常の信号処理タスクを実行する調整回路302も有するか接続してもよい。調整され検出された入力圧力信号P(t)は、それから、基準時間を持つかクロック回路305から基準時間を取る、従来のアナログ−デジタル変換器ADC304によりデジタル形態に変換される。よく理解されているように、ADC304のサンプリング回数は、圧力信号のエイリアシングを避けるため、ナイキスト基準に関連して選択すべきである(この手順はデジタル信号処理の分野で非常に公知である)。ADC304からの出力は、個別の圧力信号P(k)となり、その値を従来のメモリ回路(図示せず)に格納してもよい。
【0058】
値P(k)は、血管症状の計算のためどの多変数統計モデルが選択されても実行するコンピュータ実行可能なコードを有するソフトウェアモジュール310によりメモリへ渡され、またはメモリからアクセスされる。そのようなソフトウェアモジュール310の設計は、コンピュータプログラミングの当業者には容易であろう。
【0059】
使用されると、年齢、身長、体重、BSAなどのような患者特有のデータがメモリ領域315に格納され、メモリ領域は閾値または閾値範囲値のような他の予め定められたパラメータを格納してもよい。これらの値は、従来の方法で、公知の入力装置400を用いて入力してもよい。
【0060】
計算された心血管パラメータの閾値への比較は、モジュール320内で行われる。計算モジュール320は、コンピュータ実行可能なコードおよびモジュール310の入力としての取得および閾値情報を有し、それから、患者の血管症状があれば、決定のための選択された計算を実行する。
【0061】
図12で示されるように、比較結果は、表示してユーザが読み取るため、従来のディスプレイまたは記録装置500に渡してもよい。入力装置400のように、ディスプレイ500は、通常は他の目的のため処理システムが使用するであろう。
【0062】
本明細書に記載されるそれぞれの方法で、血管症状が検出されたとき、血管症状をユーザに通知することが可能である。ディスプレイ500または他のグラフィカルユーザインタフェース装置上に通知を表示することにより、ユーザに血管拡張状況を通知してもよい。さらに、音でユーザに血管症状を通知してもよい。視覚および聴覚信号の両方を使用してもよい。
【0063】
方法、機器およびコンピュータプログラムプロダクトのブロック図およびフローチャートを参照して、本発明の例示的な実施形態を前述に記載した。当業者は、ブロック図およびフローチャートのそれぞれのブロック、およびブロック図およびフローチャートのブロックの組み合わせが、それぞれコンピュータプログラム指示を含む種々の手段により実行されうることを理解するであろう。これらのコンピュータプログラム指示は、コンピュータまたは他のプログラム可能なデータ処理機器上で実行する指示がフローチャートのブロックまたはブロック内に特定された機能を実行する手段を生成するよう、汎用コンピュータ、特殊用途コンピュータ、またはマシンを製造する他のプログラム可能なデータ処理機器にロードしてもよい。
【0064】
本明細書に記載される方法は、さらに、コンピュータまたは他のプログラム可能なデータ処理機器に指示が可能な、プロセッサまたは処理システム(
図12で300として示される)内のような、コンピュータ可読なメモリ内に格納された指示が、
図12で示されるブロック内で特定された機能の実行のためのコンピュータ可読な指示を含む製品を製造するよう特定の方法で機能する、コンピュータ可読なメモリ内に格納される可能性があるコンピュータプログラム指示に関する。コンピュータプログラム指示も、コンピュータまたは他のプログラム可能な機器上で実行する指示がブロック内の特定の機能を実行する工程を提供するよう、コンピュータで実行されるプロセスを製造するように、コンピュータ、処理システム300、または他のプログラム可能な機器上で実行されるべき一連の運用面の工程を引き起こすため、コンピュータ、処理システム300、または他のプログラム可能なデータ処理機器にロードしてもよい。また、種々の計算を実行し本明細書に記載される関連した方法工程を実行するために使用される種々のソフトウェアモジュール310および320も、この方法を異なる処理システムにロードし異なる処理システムにより実行することを可能にするため、コンピュータ可読な媒体上のコンピュータ実行可能な指示として格納してもよい。
【0065】
従って、ブロック図およびフローチャートのブロックは、特定の機能を実行する手段の組み合わせ、特定の機能を実行する工程の組み合わせ、および特定の機能を実行するプログラム指示手段の組み合わせを支持する。当業者は、ブロック図およびフローチャートのそれぞれのブロック、およびブロック図およびフローチャートのブロックの組み合わせが、特定の機能または工程、または特定目的ハードウェアとコンピュータ指示の組み合わせを実行する特定目的ハードウェアベースコンピュータシステムによって実行されうることを理解するであろう。
【0066】
本発明は、本発明のいくつかの態様の提示を意図した本明細書に開示される実施形態によって範囲内に限定されるものではなく、機能的な等価物であるあらゆる実施形態は本発明の範囲内である。本明細書に示され記載されたものに加え、モデルおよび方法の種々の改良が当業者に明らかになるであろうし、これらは添付の請求の範囲内に入ることが意図される。さらに、本明細書中に開示されるモデルおよび方法工程の特定の代表的な組み合わせのみが前述の実施形態で特に述べられているが、他のモデル構成要素および方法工程の組み合わせが当業者に明らかになるであろうし、添付の請求の範囲内に入ることも意図される。よって、構成要素または工程の組み合わせは本明細書で明確に述べたかもしれないが、他の構成要素および工程の組み合わせは、明確に述べていなくても含まれる。本明細書で使用されるような「備える」の語およびその変形は、「含む」の語およびその変形の同意語として使用され、非限定の語である。