(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1,2に記載の集熱管構造において、管内を流れる熱媒体への伝熱効率を向上させるためには、なるべく集熱管の外径を小さくする必要があるが、この場合、集熱管への集光が困難となり、その結果、集熱効率が低下する懸念がある。また、集熱管の材質は、銅管やアルミニウム管等で構成されているため保温性に劣り、放熱による熱損失が生じる懸念もある。
【0006】
一方、特許文献3,4に記載の集熱管の構造では、真空度(保温性)の高い真空二重ガラス管(以下にガラス管という)の内部に熱媒体が流れる導通管を設け、広い集光面と高い保温性を集熱管に確保することができる。しかしながら、ガラス管の内周面に金属板からなる熱伝導体を外周方向への弾発力により面接触させ、熱伝導体の内周面に加熱媒体導通管を面接触させて固定するため、ガラス管と熱伝導体が正確に接触するようにその形状を形成する必要がある。ガラス管と熱伝導体が正確に面接触しない場合、例えば、ガラス管の内径に対して熱伝導体の外径が大きすぎると、ガラス管に熱伝導体を装着する際に、ガラス管が破損する懸念がある。また、ガラス管の内径に対して、熱伝導体の外径が小さすぎると、ガラス管に熱伝導体が面接触せずその間に隙間が生じるため、熱抵抗が大きくなり、その結果、ガラス管から熱媒体への伝熱効率が低下してしまう。更に、熱伝導体は反射率の高い金属板から形成されているため、内部のガラス管から熱伝導体への放射伝熱が減じてしまう虞がある。このように、ガラス管から熱媒体への伝熱効率を良好にするためには、熱伝導体の形状を正確に作製し、ガラス管と熱伝導体を確実に面接触させる必要がある。
【0007】
これに対し、特許文献5に記載の伝熱フィンは、
図10に示すように、一側が開口110した断面円弧状に形成される円弧状基部120に内方に向かって凹状に屈曲する凹状湾曲部130が設けられている。このように形成される特許文献5に記載の伝熱フィン100の構造では、一側が開口110した断面円弧状に形成される伝熱フィン100の円弧状部の内方に向かって凹状に屈曲する凹状湾曲部130を設けることで、伝熱フィン100と二重真空管との接触面積及び密着性を向上させる構造となっている。凹状湾曲部130を設けることで、伝熱フィン100を二重真空管に挿入する作業を、伝熱フィン100を撓ませて容易に行うことができ、撓んだ伝熱フィン100が元に戻ろうとする弾性応力により、伝熱フィン100と二重真空管とを圧着させている。更には伝熱フィン100の外表面上に施した陽極酸化被膜により、伝熱フィン100を二重真空管に挿入する際の摩擦を軽減し、伝熱フィン100と二重真空管とを圧着させる際の緩衝作用を持たせ、伝熱フィン100から二重真空管へ働く弾性応力を均一化させている。
【0008】
しかし、二重真空管は例えば外径が30〜100mmで、長さが1000〜2000mmと比較的長尺であるため、二重真空管の内管内に伝熱フィンを挿入するためには、更に小さい応力で伝熱フィンを撓ませることができ、かつ伝熱フィンと二重真空管との密着性を更に向上させることが太陽光集熱装置の機能向上及び組立作業性には不可欠であり、伝熱フィンの更なる改善が望まれている。
【0009】
この発明は、発明者等が上記事情に鑑みて鋭意研究してなされたもので、小さい応力で伝熱フィンを撓ませて伝熱フィンの二重真空管内への挿入を容易にして組立作業を容易にすると共に、密着性を向上させることにより、反射鏡により集熱部に集光された太陽放射エネルギを、熱媒管内に流れる熱媒体へ効率よく伝導する集熱効率の高い太陽光集熱装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、この発明は、照射される太陽光を集熱部に集中させ、上記集熱部内を流れる熱媒体を温める太陽光集熱装置であって、透明なガラス製の二重真空管と、上記二重真空管の内管の外周面に被覆される選択吸収膜と、弾発力によって上記二重真空管の内管の内周面に面接触可能な伝熱フィンと、上記伝熱フィンの内側面に面接触する熱媒管とを具備し、上記伝熱フィンの外表面には陽極酸化皮膜処理が施され、かつ、伝熱フィンの外径が上記二重真空管の内管の内径と同径以上に形成され、更に上記伝熱フィンは、一側が開口した断面円弧状に形成されると共に、上記開口と対向する部位に先端が位置すべく円弧状部の内方に向かってV字状に屈曲するV字状屈曲部が設けられ
、上記伝熱フィンのV字状屈曲部分の肉厚が、それ以外の伝熱フィン部分よりも薄く形成されている、ことを特徴とする。
【0011】
このように構成することにより、伝熱フィンの開口とV字状屈曲部とを結ぶ線に対して直交する方向から伝熱フィンに力を加えると、V字状屈曲部に応力が集中し、小さい応力で伝熱フィンを撓ませることができる。これにより、外径が二重真空管の内管と同径以上に形成された伝熱フィンの二重真空管の内管への挿入を容易にすることができ、また、伝熱フィンの撓みに応じた弾発力によって伝熱フィンの外表面を内管の内周面に密着させることができる。
【0012】
また、伝熱フィンの外表面に陽極酸化皮膜処理を施すことにより、伝熱フィン外表面の反射率を抑制することができる以外に、更に伝熱フィンを二重真空管の内管に挿入する際の摩擦を低減することができると共に、緩衝作用を持たせることができるので、上記伝熱フィンの撓み及び弾発力の作用と相俟って伝熱フィンの二重真空管の内管への挿入を容易にし、伝熱フィンと二重真空管の内管との接触面積を増やし、伝熱フィンと二重真空管の内管との密着性を向上させることができる。
【0013】
また、この発明によれば、更に小さい応力で伝熱フィンを撓ませることができ、伝熱フィンの二重真空管の内管への挿入を更に容易にすることができる。
【0014】
また、この発明は、太陽放射エネルギを集熱部に集中させ、上記集熱部内を流れる熱媒体を温める太陽光集熱装置であって、透明なガラス製の二重真空管と、上記二重真空管の内管の外周面に被覆される選択吸収膜と、弾発力によって上記二重真空管の内管の内周面に面接触可能な伝熱フィンと、上記伝熱フィンの内側面に面接触する熱媒管とを具備し、上記伝熱フィンの外表面には陽極酸化皮膜処理が施され、かつ、伝熱フィンの外径が上記二重真空管の内管の内径と同径以上に形成され、更に上記伝熱フィンは、一側が開口した断面円弧状に形成されると共に、上記開口と対向する部位に先端が位置すべく円弧状部の内方に向かってV字状に屈曲するV字状屈曲部が設けられ、上記伝熱フィンに設けられた上記V字状屈曲部のV字部の内角が25°〜35°である、ことを特徴とする。
また、この発明は、太陽放射エネルギを集熱部に集中させ、上記集熱部内を流れる熱媒体を温める太陽光集熱装置であって、透明なガラス製の二重真空管と、上記二重真空管の内管の外周面に被覆される選択吸収膜と、弾発力によって上記二重真空管の内管の内周面に面接触可能な伝熱フィンと、上記伝熱フィンの内側面に面接触する熱媒管とを具備し、上記伝熱フィンの外表面には陽極酸化皮膜処理が施され、かつ、伝熱フィンの外径が上記二重真空管の内管の内径と同径以上に形成され、更に上記伝熱フィンは、一側が開口した断面円弧状に形成されると共に、上記開口と対向する部位に先端が位置すべく円弧状部の内方に向かってV字状に屈曲するV字状屈曲部が設けられ、上記伝熱フィンのV字状屈曲部分の肉厚が、それ以外の伝熱フィン部分よりも薄く形成され、上記伝熱フィンに設けられた上記V字状屈曲部のV字部の内角が25°〜35°である、ことを特徴とする。
このように構成することで、伝熱フィンを少ない応力で撓ませることが可能になる。しかし、V字状屈曲部の内角が25°よりも小さいと、例えば、伝熱フィンをアルミニウム製押出形材にて形成する場合、加工精度上不良率が高くなり、製品コストが高騰してしまう。また、V字状屈曲部の内角が35°よりも大きいと、十分な撓み量が期待できない。
【0015】
また、この発明において、V字状屈曲部のV字内方向長さ(D)と伝熱フィンの半径(R)の比率(D/R)は、4/17〜10/17が好ましく、更には5/17〜8/17が好ましい。このように構成することで、伝熱フィンを少ない応力で撓ませることが可能になる。V字状屈曲部部分の長さ(D)と伝熱フィンの半径(R)の比率(D/R)が、4/17よりも小さい場合や10/17よりも大きい場合は、十分な変形量を得られず、弾性応力も小さくなるため、二重真空管への密着性も低下してしまう。
【0016】
このように構成することにより伝熱フィンの外向きの弾性的応力を確実に確保することができるため、伝熱フィンと内管の接触面積を増やし、密着性を更に向上させることができる。
【0017】
また、この発明において、上記伝熱フィンの内側面に、断面が狭隘開口状の嵌合溝部が長手方向に沿って設けられ、上記嵌合凹溝部内に上記熱媒管を嵌合させる方がよい。
【0018】
このように構成することにより、伝熱フィンの内側面に熱媒管の接触面積を増やすことができると共に、確実に面接触することができるため、伝熱フィンと熱媒管の密着性が向上する。
【0019】
更に、上記伝熱フィンは、アルミニウム製押出形材にて形成することができる。このように構成することにより、伝熱フィンは良好な熱伝導性を確保することができる。また、アルミニウムはリサイクル性が良好である。
【発明の効果】
【0020】
この発明によれば、 小さい応力で伝熱フィンを撓ませて伝熱フィンの二重真空管内への挿入を容易にして組立作業を容易にすることができると共に、密着性を向上させて集熱効率を向上することができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に、この発明に係る太陽光集熱装置の実施形態を添付図面に基づいて詳細に説明する。
【0023】
この発明に係る太陽光集熱装置は、
図1ないし
図3に示すように、給水管33と給湯管34を挿入する矩形筒状の主枠31と、この主枠31の一方の側壁の下部から外方に延在する矩形状のベース板32と、このベース板32の端部であって主枠31と対向する位置に設けられた真空管受け36からなる本体30と、主枠31の側壁部に沿設される側枠部材35を介してベース板32の上方に並設される複数の集熱部1と、各集熱部1の下方に配設された集光枠部材40にくさび状接続部材42(
図4(a)参照)によって取り付けられ、集熱部1付近に入光する太陽光を反射して集熱部1に集中させる集光板43とを具備している。
【0024】
上記集光枠部材40は、
図4(a)に示すように、アルミニウム製(アルミニウム合金を含む)の押出形材にて形成されており、中央部に断面コ字状の凹状嵌合部41を有し、両側部が左右対称かつW字形状の複合放物面に形成された取付面を有している。なお、取付面を形成する複合放物面は、インボリュート曲線と放物曲線(CPC曲線)とを組み合わせてなる形状であり、入射光が最も効率よく集熱部1に向けて反射される形状である。
【0025】
上記集熱部1は、
図4ないし
図6に示すように、透明なガラス製の外管2aと内管2bからなる二重真空管2と、二重真空管2の内管2bの外周面に被覆される選択吸収膜3と、二重真空管2の内管2bの内周面に面接触するように配置された伝熱フィン10と、伝熱フィン10の内側面に面接触するように配置され、主枠2内に挿入された給水管33と給湯管34に接続する熱媒管15とを具備している。また、
図1,
図2に示すように、集熱部1の先端部は、真空管受け36に取り付けられたキャップ36aに挿入された状態で保持され、集熱部1の基端部は、側枠部材35に取付孔35aを介して保持されている。
【0026】
上記二重真空管2は、真空度の高い真空ガラス管を使用し、ガラス管の一方の端面を閉じた外管2aと内管2bとを重ね合わせ、外管2aと内管2bの一方の端面を閉じる。そして、他方の端面側を真空ポンプによって減圧し、外管2aを封止する。このようにすることによって、真空層5が形成される。なお、内管2bの外周面には、後述する選択吸収膜3が被覆される。
【0027】
上記内管2bの外表面を被覆する選択吸収膜3は、例えば内管2bの外周面を密着被覆する低熱放射率の薄い金属膜上に黒色の黒クロムまたは無電解ニッケルがメッキ処理されたり、マンガン系の黒色塗料がペイントまたは蒸着されるか、あるいは酸化銅皮膜やアルマイト皮膜などにより、既存の方法によって太陽光の吸収率が大きい薄膜を形成したものである。上記内管2bの外表面に選択吸収膜3が形成されることで、太陽熱を効率的に吸収しながら選択吸収膜3から外管2aへの放射伝熱を低下させることができる。また、内管2bと外管2aとの間の真空層5が、選択吸収膜3から外管2aへの対流熱伝達による熱損失を防ぐ。
【0028】
上記のように形成される選択吸収膜3は、
図5に示すように、二重真空管2の内管2bの外周面に被覆される。選択吸収膜3は、二重真空管2の外管2aと内管2bの間に位置するため、上述したように、内管2bに選択吸収膜3を被覆した上で、外管2aと内管2bを一体的に結合する。
【0029】
上記伝熱フィン10は、
図7及び
図8に示すように、熱伝導率の高いアルミニウム製(アルミニウム合金を含む)の押出形材にて形成されており、長手方向に沿う一側に開口11aが設けられた断面略円弧状に形成される基部11と、基部11の長手方向に沿ってそれぞれ形成される、開口11aと対向する部位に先端が位置すべく基部11の内方に向かってV字状に屈曲するV字状屈曲部12と、断面が狭隘開口状であって、基部11の内方に向かって対向する位置に形成される2つの嵌合溝部13と、から形成されている。この場合、V字状屈曲部12のV字部12aの2辺は等しくなっている。
【0030】
上記のように形成される伝熱フィン10は、後述する
図9に示すように、開口11aとV字状屈曲部12とを結ぶ線Lに対して直交する方向に力Pを加えると、V字状屈曲部12に応力が集中することが知見されている。これにより、小さい応力によって伝熱フィン10を撓ませることができ、また、撓みに応じて弾発力を持たせることができる。
【0031】
この場合、伝熱フィン10の基部11及び嵌合溝部13の肉厚t
1に対してV字状屈曲部12のV字部12aの肉厚t
2を薄く形成する方が良い。なお、V字状屈曲部12のV字部12aの先端の円弧部12bの半径rは任意であるが、ここでは肉厚t
1と同寸法に形成されている(
図8(b)参照)。
【0032】
このようにV字状屈曲部12のV字部12aの肉厚t
2をそれ以外の部分の肉厚t
1に対して薄く形成することにより、更に小さい応力で伝熱フィン10を撓ませることができ、伝熱フィン10の二重真空管2の内管2bへの挿入を容易にすることができる。
【0033】
また、伝熱フィン10を少ない応力で撓ませるために、V字状屈曲部12の内角θは、25°〜35°の範囲に設定されている。V字状屈曲部12の内角θが25°よりも小さいと、アルミニウム製押出形材にて形成される伝熱フィン10の加工精度上不良率が高くなり、製品コストが高騰してしまう。また、V字状屈曲部12の内角θが35°よりも大きいと、十分な撓み量が期待できない。
【0034】
また、伝熱フィン12を少ない応力で撓ませて外向きの弾性的応力を確保すると共に、伝熱フィン10と内管2bの接触面積を増やために、V字状屈曲部12のV字内方向長さ(D){V字部12aの深さ}と伝熱フィン10の半径(R)の比率(D/R)は、4/17〜10/17が好ましく、更に好ましくは5/17〜8/17に設定されている。V字状屈曲部12のV字内方向長さ(D)と伝熱フィンの半径(R)の比率(D/R)が、4/17よりも小さい場合や10/17よりも大きい場合は、十分な変形量を得られず、弾性応力も小さくなるため、二重真空管2の内管2bへの密着性も低下してしまう。
【0035】
このように構成することにより伝熱フィン10の外向きの弾性的応力を確実に確保することができるため、伝熱フィン10と内管2bの接触面積を増やし、密着性を更に向上させることができる。
【0036】
また、上記伝熱フィン10の外表面には、
図7に示すように、陽極酸化皮膜処理(以下にアルマイト処理という)が施されている。アルマイト処理は、例えば、脱脂処理とエッチング、そしてアルマイト処理を経た後、90℃前後の熱水中にて陽極酸化皮膜14の孔を塞ぐ方法にて行う。陽極酸化皮膜14の膜厚は2μm以上から20μm以下の範囲が好ましい。その理由は、2μm未満であると下地の反射率が反映されるため2μm以上が好ましく、逆に膜厚が20μmを超過すると生産性が低下したり、陽極酸化皮膜14の熱抵抗が無視できなくなり、伝熱フィン10への入熱が減少する虞があるためである。
【0037】
伝熱フィン10の外表面にアルマイト処理を施すことにより、伝熱フィン10外表面の反射率を抑制することができるため、伝熱フィン10への放射伝熱を改善し、集熱効率が向上する。また、伝熱フィン10の外表面にアルマイト処理を施すことにより、すべり性が向上し、内管2bへの伝熱フィン10の挿入の際の摩擦を軽減することができるため、二重真空管2の内管2bに伝熱フィン10を装着する際、二重真空管2の破損率を抑制することができる。
【0038】
図7に示した取付前の伝熱フィン10の外径Yは、
図5に示した二重真空管2の内管2bの内径Xと同径以上に形成されている。しかし、伝熱フィン10の基部11の長手方向に開口11aが設けられ断面略円弧状に形成されると共に、開口11aと対向する部位に先端が位置すべく基部11の内方に向かってV字状に屈曲するV字状屈曲部12が形成されることにより、上述したように、小さい応力によって伝熱フィン10を撓ませることができるため、伝熱フィン10を内管2bへの挿入が可能となる。また、撓みに応じて弾発力を持たせることができるため、挿入された伝熱フィン10は外向きの弾性的応力によって伝熱フィン10と内管2bの接触面積を増やすことができる。
【0039】
また、
図4〜7に示すように、伝熱フィン10の内側面に、断面が狭隘開口状であって、基部11の内方に向かって対向する位置に形成される2つの嵌合溝部13が基部11の長手方向に沿ってそれぞれ形成され、嵌合溝部13内に熱媒管15が嵌合されることにより、伝熱フィン10と熱媒管15との接触面積を増やすことができると共に、確実に面接触することができ、伝熱フィン10と熱媒管15の密着性が向上する。
【0040】
なお、上記熱媒管15は、例えば銅やアルミニウムなどの熱伝導率の良い金属から形成されるU字状の管体にて形成されており、熱媒体例えば水が流れる。
【0041】
上記のように構成される二重真空管2,選択吸収膜3,伝熱フィン10,熱媒管15は、以下の手順で組み立てることができる。まず、外表面に選択吸収膜3が被覆された内管2bと外管2aを重ね合わせ、外管2aと内管2bの一方の端面を閉じる。そして、他方の端面側を真空ポンプによって減圧し、外管2aを封止する。これにより、内管2bの外周面に選択吸収膜3が被覆された二重真空管2が形成される。次に、内管2bの開口から、伝熱フィン10を撓ませて内管2bに挿入して、伝熱フィン10の弾発力によって伝熱フィン10を内管2bの内周面に密接する。なお、伝熱フィン10の外表面にアルマイト処理を施してあることにより、すべり性が向上し、内管2bへの伝熱フィン10の挿入の際の摩擦を軽減することができるため、二重真空管2の内管2bに伝熱フィン10を装着する際、二重真空管2の破損率を抑制する。
【0042】
次に、上記のようにして二重真空管2に挿入された伝熱フィン10の嵌合溝部13を、給水管33と給湯管34に溶接固定されている熱媒管15に嵌合するように挿入する。伝熱フィン10の弾発力及び熱媒管15の挿入により、内管2bの外周方向への圧力が発生するが、伝熱フィン10の外表面にアルマイト処理を施してあるので、陽極酸化皮膜14の緩衝機能により、伝熱フィン10から内管2bへの圧力を均等にすることができるため、伝熱フィン10と内管2bの密着性を向上させることができる。
【0043】
その後、二重真空管2の基端部を側枠部材35に形成された取付孔35aに嵌合し、先端部を真空管受け36に取り付けられたキャップ36aで保持する。
【0044】
上記実施形態に係る太陽光集熱装置によれば、伝熱フィン10の開口11aとV字状屈曲部12とを結ぶ線Lに対して直交する方向から伝熱フィン10に力Pを加えると、V字状屈曲部12に応力が集中するため、小さい応力で伝熱フィン10を撓ませることができる。これにより、外径Yが二重真空管2の内管2bの内径Xと同径以上に形成された伝熱フィン10の二重真空管2の内管2bへの挿入を容易にすることができる。伝熱フィン10の撓みに応じた弾発力によって伝熱フィン10の外表面を内管の内周面に密着させることができる。
【0045】
また、伝熱フィン10の外表面に陽極酸化皮膜14を施すことにより、伝熱フィン10を二重真空管2の内管2bに挿入する際の摩擦を低減することができると共に、緩衝作用を持たせることができるので、伝熱フィン10の撓み及び弾発力の作用と相俟って伝熱フィン10の二重真空管2の内管2bへの挿入を容易にし、伝熱フィン10と二重真空管2の内管2bとの接触面積を増やし、伝熱フィン10と二重真空管2の内管2bとの密着性を向上させることができる。
【0046】
また、伝熱フィン10は、V字状屈曲部12のV字部の肉厚t
2がそれ以外の部分の肉厚t
1よりも薄く形成することにより、更に小さい応力で伝熱フィン10を撓ませることができ、伝熱フィン10の二重真空管2の内管2bへの挿入を更に容易にすることができる。
【0047】
また、伝熱フィン10の内側面に、断面が狭隘開口状の嵌合溝部13を長手方向に沿って設けることにより、伝熱フィン10の内側面に熱媒管15の接触面積を増やすことができると共に、確実に面接触することができるため、伝熱フィン10と熱媒管15の密着性が向上する。
【0048】
更に、伝熱フィン10は、アルミニウム製押出形材にて形成することにより、伝熱フィン10は良好な熱伝導性を確保することができるため、熱伝導性が向上し集熱効率が増大する。また、アルミニウムはリサイクル性が良好である。
【0049】
なお、上記実施形態では、V字状屈曲部12のV字部12aの2辺は等しい場合について説明したが、少なくともV字状屈曲部12のV字部12aの先端部が開口11aと対向する部位に位置していれば、V字部12aの2辺の長さは必ずしも等しくなくても良い。
【実施例】
【0050】
次に、この発明に係る太陽光集熱装置について、
図8及び
図9を参照して、アルミニウム製押出形材にて形成された伝熱フィン10のV字状屈曲部12のV字部12aの形状と応力の関係を調べるために、下記の条件等にて実験を行った結果について説明する。
【0051】
<実験条件>
・角度θ:V字部の内角
・深さD:V字状屈曲部の先端部と伝熱フィンの曲線への直線距離
(V字部の2辺は等しいものとする)
・変位量(撓み)δ:応力を10N加えた時の、伝熱フィンの変形量
(静止状態の変形量を0とする)
・伝熱フィンの半径R:17mm
・伝熱フィンの板厚(肉厚)t
1:0.8mm
・V字部の板厚(肉厚)t
2:0.66mm
・伝熱フィン(試料)の厚さ(奥行き):10mm
・比較例a,b,c:
図10に示す伝熱フィン100の肉厚を0.6mm,0.7mm,0.8mmとした、厚さ(奥行き):10mmの試料。
【0052】
<実験方法>
上記条件の伝熱フィン(試料){深さ(D)が3mm,5mm,8mm、但し、実施品(θ=26°)については、5.3mm}を、
図9に示すように、伝熱フィン10の直径より大きい曲率の円弧状の上面を有する固定台Fの上に、開口11aとV字状屈曲部12とを結ぶ線Lが固定台Fと平行になるように載置する。この状態で、開口11aとV字状屈曲部12とを結ぶ線Lと直交する中心点直上から下方向に荷重10Nを加えて、V字部12aの深さ(D)と変位量(撓み)(δ)との関係について、構造解析ソフトを用いて調べたところ、表1に示すような結果が得られた。
【表1】
【0053】
上記実験において、伝熱フィンの肉厚が0.6mmでは押出加工上、実施が不可能(×)であり、また、肉厚が0.7mmでは不良率の可能性(△)があるため、評価実績がない。肉厚が0.8mmにおいては押出加工が良好(○)で、評価実績が得られた。実験の結果、角度(θ)が25°〜35°の範囲が現実的と考えられる。
【0054】
次に、V字状屈曲部12の深さ(D)と撓み(δ)との関係を考察するために、角度(θ)が25°の場合を代表して、実験を行ったところ、表2及び
図11に示すような結果が得られた、
【表2】
【0055】
上記実験の結果、深さ(D)が4mm〜10mmの範囲では、変位量(撓み)(δ)が5.76mm〜5.779mm{最大:6.025(深さ7mm)}で良好であり、深さ(D)が5mm〜8mmの範囲では、変位量(撓み)(δ)が5.942mm〜5.958mm{最大:6.025(深さ7mm)}で更に良好であることが判った。
【0056】
角度(θ)が30°,35°における深さ(D)が5mm、8mmの場合の変位量(撓み)(δ)も、表1に記載のように5.863mm〜5.975mmであり、角度(θ)が25°の場合と同様に良好であることが推測できる。
【0057】
上記実験の結果より、伝熱フィン10に設けられたV字状屈曲部12のV字部12aの内角が25°〜35°で、V字状屈曲部12の深さ(V字内方向長さ)(D)と伝熱フィン10の半径(R)の比率(D/R)は、4/17〜10/17が好ましく、5/17〜8/17が更に好ましいことが判った。
【0058】
なお、実施例では、伝熱フィン10の板厚(肉厚)に対してV字部12aの板厚(肉厚)が薄い場合について説明したが、伝熱フィン10とV字部12aの板厚(肉厚)を同じにした場合でも、凹状湾曲部130を有する伝熱フィン100(比較例)(
図10参照)に比べてV字部12aに応力が集中するため、撓みの変位量は大きくなる。
【0059】
また、比較例a,b、cから判るように、肉厚を薄くすれば変位量(撓み)は劇的に良好になるが、薄くし過ぎると不良率が増加してしまう。したがって、応力集中箇所をV字状とし、V字部の角度(内角)と長さ(深さ)を上記のように調節することで、肉厚の薄い伝熱フィンの変位量(撓み)に近づけることができる。