特許第5904669号(P5904669)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許5904669-穀物加工品およびその製造方法 図000007
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5904669
(24)【登録日】2016年3月25日
(45)【発行日】2016年4月13日
(54)【発明の名称】穀物加工品およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 7/10 20160101AFI20160331BHJP
   A23L 21/10 20160101ALI20160331BHJP
   A23G 9/32 20060101ALI20160331BHJP
   A23G 9/44 20060101ALI20160331BHJP
   A23G 9/52 20060101ALI20160331BHJP
【FI】
   A23L1/10 H
   A23L1/06
   A23G9/02
【請求項の数】4
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2012-254195(P2012-254195)
(22)【出願日】2012年11月20日
(65)【公開番号】特開2014-100096(P2014-100096A)
(43)【公開日】2014年6月5日
【審査請求日】2015年1月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000214537
【氏名又は名称】長谷川香料株式会社
(72)【発明者】
【氏名】三次 博之
(72)【発明者】
【氏名】松永 有美
(72)【発明者】
【氏名】福原 孝一
(72)【発明者】
【氏名】川端 兆宏
【審査官】 原 大樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭58−036352(JP,A)
【文献】 特開平06−098703(JP,A)
【文献】 特開昭59−196049(JP,A)
【文献】 特開平03−112455(JP,A)
【文献】 特開2009−254301(JP,A)
【文献】 特開2010−063399(JP,A)
【文献】 特開昭59−002661(JP,A)
【文献】 特開2001−017070(JP,A)
【文献】 特開2007−282503(JP,A)
【文献】 特開2001−037414(JP,A)
【文献】 特開2003−274852(JP,A)
【文献】 米国特許第05510128(US,A)
【文献】 五十嵐脩他編,丸善食品総合辞典,丸善株式会社発行,1998年,p.389
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 7/00−7/25
A23L 21/00−21/25
A23L 29/00−29/30
A01J 1/00−99/00
A23C 1/00−23/00
A23G 1/00−9/52
MEDLINE/BIOSIS/EMBASE/WPIDS/WPIX/CAplus/FSTA/FROSTI(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a−1)α化した穀物種子、(b)糖類および(c)水、(d)酸味料および(e)増粘剤を混合して加熱する工程を含む穀物種子入りプレザーブの製造方法であって、穀物種子入りプレザーブ全体の質量に対して、(a−1)α化した穀物種子12.2〜40質量%、(b)糖類を1025質量%、(c)水を35.0〜61.9質量%、(d)酸味料を0.01〜3質量%および(e)増粘剤を0.0670.5質量%含有し、下記の工程により製造されることを特徴とする穀物種子入りプレザーブの製造方法:
工程前記(a−1)、(b)、(c)、(d)および(e)を含有する混合物を得る工程、
工程2:工程1で得られた混合物を、撹拌しながら、加熱を行い、55℃達温時に脱気を行い、常圧に戻した後、さらに加熱を続け、80〜100℃の範囲内の温度で加熱殺菌する工程、
工程3:工程2の加熱殺菌後、直ちに55℃以下に冷却し、最終的に40℃以下に冷却する工程。
【請求項2】
(a)穀物種子、(b)糖類、(c)水、(d)酸味料および(e)増粘剤を混合して加熱する工程を含む穀物種子入りプレザーブの製造方法であって、穀物種子入りプレザーブ全体の質量に対して、(a)穀物種子を5〜10質量%、(b)糖類を1025質量%、(c)水を42.274.1質量%、(d)酸味料を0.01〜3質量%および(e)増粘剤を0.0670.5質量%含有し、下記の工程により製造されることを特徴とする穀物種子入りプレザーブの製造方法
工程1:前記(a)および(c)を混合し、撹拌しながら、加熱を行い、55〜100℃の範囲の温度で加熱および殺菌を行った後、直ちに55℃以下に冷却し、α化した穀物種子を得る工程
工程2:工程1で得られたα化した穀物種子に、さらに前記(b)、(d)および(e)を添加・混合し、加熱を行い、55℃達温時に脱気を行い、常圧に戻した後、さらに加熱を続け、80〜100℃の範囲内の温度で加熱殺菌する工程、
工程3:工程2の加熱殺菌後、直ちに55℃以下に冷却し、最終的に40℃以下に冷却する工程。
【請求項3】
工程1において、55℃以下に冷却する方法として0〜30℃の範囲内の温度の水を(a)および(c)の混合物に加することを特徴とする、請求項2に記載の穀物種子入りプレザーブの製造方法
【請求項4】
請求項1〜のいずれか1項に記載の製造方法で製造された穀物種子入りプレザーブを含有させる飲食品の製造方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、でんぷんをα化した穀物にさらに加工を施すことによって、適度な柔らかさを有しながら、つぶつぶ感、ぷりぷり感といったこれまでにない嗜好性の高い新食感が付加され、長期間安定に物性が保たれ、ヨーグルトなどの水分の多い食品に添加した場合にも溶解することなく、優れた付加価値を付与することのできる穀物加工品に関する。
【背景技術】
【0002】
米、麦、その他の雑穀などの穀物は脱穀後の生の状態で食用に供されることはまずない。その理由は人が生の穀物中のβでんぷんをほとんど消化できないためである。そこで、各民族は茹でる、炊く、焼く、蒸すなどの加熱処理を施すことにより、消化しやすいαでんぷん(いわゆる、α化)とする技術を獲得し、現在では一般化している。
【0003】
より具体的には、米飯、雑穀粥、パン、麺類などとして食されるほか、餅や団子、餡類、ケーキ、クッキーなどの食品においてもα化は頻繁に使用されている。
【0004】
一方、穀物は乾燥することにより、シリアルという製品に加工され、簡便で短時間の食事とされ、さらに繊維分を多く含む健康訴求が消費者に受け入れられ、最近ではダイエットにも取り入れられている。例えば、シリアルとヨーグルトを組み合わせて食する方法が一般的である。
【0005】
穀物のα化による利用は良いことずくめではあるが、不思議なことにこれまで穀物をα化したものをヨーグルトなど水分の多い食品に添加・混合した製品はなかった。
【0006】
その理由は、α化されたでんぷんはβでんぷんに戻る現象、すなわち、でんぷんの老化が起こるからである。米飯の例で言えば、炊きたての米飯は好ましい食感を与える適度な硬さであるが、時間が経つと冷えて固くなる、すなわち老化が起こる。米飯の場合は再加熱を行えば、α化が起こり、食することができるが、再加熱を行うことができない食品では、糖類、ショ糖脂肪酸エステル(ショ糖エステル)、グリセリン脂肪酸エステルなどの乳化剤、その他の成分を添加することによりα化を抑制することが一般的に行われている。
【0007】
一方、ヨーグルトなどに添加する果実加工品は保存安定性、形状の維持などを目的として糖類、酸類、増粘剤などを添加し、加熱殺菌し、プレザーブ化を行っている。しかしながら、穀物原料に糖類、酸類、増粘剤などを添加したプレザーブ化を行おうとすると、これらの成分はα化を抑制する性質があり、穀物原料をうまくプレザーブ化することができない。その結果、穀物原料をα化する一方で、α化を抑制しつつ、プレザーブ化するという技術的課題が生ずる。ところが、従来、この技術的課題を解決する技術は見出されていなかった。
【0008】
穀物をヨーグルトなどに添加する技術としては、大麦原料を、歩留り約40%程度に搗精処理するとともに茹で加熱してα化し更に酵素アミラーゼを作用させて澱粉を糖に分解し水とともに糖液化した精白麦とし、前記精白麦をヨーグルト材料に添加して乳酸発酵させたことを特徴とする大麦入りヨーグルト(特許文献1)、イネ科植物から抽出されたβグルカンを配合したことを特徴とするヨーグルト類(特許文献2)があるが、穀物をα化し、ヨーグルトなどに添加してつぶつぶ感、ぷりぷり感といった食感を楽しむことのできる穀物加工品に関する提案ではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2001−37414号公報
【特許文献2】特開2003−274852号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、でんぷんをα化した穀物にさらに加工を施すことによって、適度な柔らかさを有しながら、つぶつぶ感、ぷりぷり感といったこれまでにない嗜好性の高い新食感が付加され、長期間安定に物性が保たれ、ヨーグルトなどの水分の多い食品に添加した場合にも溶解することなく、優れた付加価値を付与することのできる穀物加工品に関する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、α化した穀物に糖類を添加混合して80〜100℃で加熱殺菌し、直ちに40℃以下に冷却することにより、つぶつぶ感、ぷりぷり感といったこれまでにない嗜好性の高い新食感が付加され、長期間安定に物性が保たれ、ヨーグルトなどの水分の多い食品に添加した場合にも溶解することなく、優れた付加価値を付与することのできる穀物加工品を見出し、本発明を完成させた。
【0012】
かくして、本発明は、以下のものを提供する。
【0016】
(1)(a−1)α化した穀物種子、(b)糖類および(c)水、(d)酸味料および(e)増粘剤を混合して加熱する工程を含む穀物種子入りプレザーブの製造方法であって、穀物種子入りプレザーブ全体の質量に対して、(a−1)α化した穀物種子を12.2〜40質量%、(b)糖類を10〜25質量%、(c)水を35.0〜61.9質量%、(d)酸味料を0.01〜3質量%および(e)増粘剤を0.067〜0.5質量%含有し、下記の工程により製造されることを特徴とする穀物種子入りプレザーブの製造方法:
工程1:前記(a−1)、(b)、(c)、(d)および(e)を含有する混合物を得る工程、
工程2:工程1で得られた混合物を、撹拌しながら、加熱を行い、55℃達温時に脱気を行い、常圧に戻した後、さらに加熱を続け、80〜100℃の範囲内の温度で加熱殺菌する工程、
工程3:工程2の加熱殺菌後、直ちに55℃以下に冷却し、最終的に40℃以下に冷却する工程。
【0017】
(2)(a)穀物種子、(b)糖類、(c)水、(d)酸味料および(e)増粘剤を混合して加熱する工程を含む穀物種子入りプレザーブの製造方法であって、穀物種子入りプレザーブ全体の質量に対して、(a)穀物種子を5〜10質量%、(b)糖類を10〜25質量%、(c)水を42.2〜74.1質量%、(d)酸味料を0.01〜3質量%および(e)増粘剤を0.067〜0.5質量%含有し、下記の工程により製造されることを特徴とする穀物種子入りプレザーブの製造方法:
工程1:前記(a)および(c)を混合し、撹拌しながら、加熱を行い、55〜100℃の範囲の温度で加熱および殺菌を行った後、直ちに55℃以下に冷却し、α化した穀物種子を得る工程、
工程2:工程1で得られたα化した穀物種子に、さらに前記(b)、(d)および(e)を添加・混合し、加熱を行い、55℃達温時に脱気を行い、常圧に戻した後、さらに加熱を続け、80〜100℃の範囲内の温度で加熱殺菌する工程、
工程3:工程2の加熱殺菌後、直ちに55℃以下に冷却し、最終的に40℃以下に冷却する工程。
【0018】
(3)工程1において、55℃以下に冷却する方法として0〜30℃の範囲内の温度の水を(a)および(c)の混合物に添加することを特徴とする、(2)の穀物種子入りプレザーブの製造方法。
【0019】
(3)(1)〜(3)のいずれかの製造方法で製造された穀物種子入りプレザーブを含有させる飲食品の製造方法。

【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、ヨーグルト、プリン、アイスクリーム、洋菓子などの飲食品に使用することにより、穀物のつぶつぶ感、ぷりぷり感といったこれまでにない新食感を楽しむことができ、長期間の保存でも固くなることがなく、繊維質を多く含み消費者の健康志向に訴えることのできる新たなる商品開発が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明品1および4、比較品1および2の荷重−歪率曲線を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明についてさらに詳細に説明する。
【0023】
本発明で使用する穀物とは、植物から得られる食材の総称の1つで、澱粉質を主体とする種子を食用とするものを指す。具体的な例として、小麦、大麦、燕麦、烏麦、鳩麦、ライ麦、黒米、赤米、白米、緑米、小豆、大豆、ササゲ、インゲンマメ、ラッカセイ、エンドウ、ソラマメ、レンズマメ、ヒヨコマメ、粟(あわ)、稗(ヒエ)、黍(キビ)、ヒユ、蜀黍(もろこし)、ソバ、キヌアなどの雑穀類などを挙げることができるが、これらに限定されるわけではない。また、これらの穀物の部位のうち、米、麦類の籾殻および豆類の鞘などの非食用部分を除去した種子を用いる。場合によっては、物理的な処理を行って押し麦や引き割りなどのようにその形状、形態、物性を変えたものを使用することもできる。
【0024】
本発明においてα化した穀物とは、上記の穀物中の澱粉を加熱することにより、βデンプンを全部または一部をαデンプンに変えたものを指し、さらに糖類等を添加し、加熱殺菌を行って得られる穀物加工品を人が飲食した段階に好ましく感じられる程度にα化したものであれば良い。
【0025】
本発明においてα化した穀物を調製する方法であるが、穀物および水の混合物を加熱する場合、一般的には穀物および水の混合物を釜又は容器に仕込んで加熱を行う。その際、撹拌を行っても良い。加熱温度および加熱時間の組み合わせは、穀物および水の混合比率にもよるが、通常、55〜100℃の温度範囲で、10秒〜120分の加熱、好ましくは80〜100℃の温度範囲で1〜30分の加熱、より好ましくは、80〜100℃の温度範囲で1〜15分の加熱で上記のα化を行うことができる。また、圧力鍋、圧力釜などを使用し、加圧下、100〜135℃で加熱を行う場合には、同程度のα化に要する時間を短縮することができる。
【0026】
本発明において穀物および水の混合物を加熱する場合の穀物および水の混合比率であるが、穀物を1質量部とした時の水の量として0.5〜100質量部を挙げることができる。好ましくは0.5〜10質量部、より好ましくは、1〜5質量部を挙げることができる。100質量部を越える場合には、でんぷんがα化した後に、穀物が柔らかくなりなりすぎるか、糊化が始まるので好ましくない。また、0.5質量部未満ではα化の度合いが低く、穀物は芯が残った、固い状態であり、糖添加後の加熱を行っても、つぶつぶ感、ぷりぷり感などの好ましい食感が得られないので好ましくない。一般的な米飯は、穀物を1質量部とした時の水の量は1.2質量部程度である。
【0027】
上記の加熱方法は、湯取法と呼ばれる方法、すなわち、水によく浸した米を、水を張った釜(鍋)に入れ、ある程度加熱してからザルなどに上げ、それを蒸籠などに移して蒸す方法を用いてα化した穀物を調製しても良い。
【0028】
本発明においてα化された穀物および水の混合物を、55〜100℃の範囲の温度で加熱し、α化した穀物を調製し、直ちに55℃以下に冷却する方法であるが、第1の方法は穀物および水の混合物を釜または容器中で加熱し、α化した穀物を調製し、該釜または該容器に付属する冷却器又は該釜または該容器以外の冷却器を用いて冷却する方法である。第2の方法は穀物および水の混合物を釜または容器中で加熱し、α化した穀物を調製し、これに水を直接添加することにより冷却する方法である。添加する水の温度範囲としては、0〜45℃、好ましくは0〜30℃、より好ましくは0〜20℃の温度範囲が好ましい。この方法を採用する場合は、α化した穀物に直接冷却の目的で添加する水の量を、α化した穀物を調製する際に使用する水および糖類を添加混合する際に使用する水のいずれか一方または両方からその分を差し引く。
【0029】
第2の方法は急速に冷却ができ、効率的かつ実用的であり、好ましい。また、得られる穀物加工品の食感も良くなる。また、ここで直ちにとは、α化された穀物が過度の加熱により、穀物粒表面あるいは穀物粒全体が柔らかくなりすぎ、つぶつぶ感、ぷりぷり感などの弾力ある、好ましい食感が失われない程度の時間内に急速に冷却を行うことであり、具体的には1〜30分以内、好ましくは3〜10分以内に55℃以下とすることを意味する。実際には5〜20℃の範囲内の水を使用すれば添加量にもよるが、3〜10分以内に10〜25℃の範囲内の温度に容易に冷却することができる。
【0030】
また、本発明でα化した穀物に糖類などを添加して加熱後、80〜100℃の範囲内の温度で約2〜約30分間加熱殺菌した後、直ちに55℃以下に冷却し、最終的に40℃以下に冷却し、穀物加工品を得る工程において最終的に40℃以下に冷却する場合、0〜40℃、好ましくは、3〜27℃程度の範囲内の温度に冷却する。ここで直ちに55℃以下に冷却するとは、前記のα化した穀物を冷却する場合と同様である。すなわち、具体的には1〜30分以内、好ましくは3〜10分以内に55℃以下とする。55℃以下に急速冷却した際に上記温度範囲内になるまで急速冷却するのが好ましいが、最終的に40℃以下に冷却するまでに要する冷却時間は、穀物加工品の物性および冷却器の能力にもよるが、冷却全体で5〜120分、好ましくは、5〜30分以内、より好ましくは、5〜15分以内で行う。
【0031】
このようにして得られた穀物加工品は、4〜25℃の温度範囲で冷蔵または室温保存しても、つぶつぶ感、ぷりぷり感などの弾力ある、好ましい食感が損なわれることがなく、保存安定性に優れている。
【0032】
本発明において使用する糖類であるが、例えば、砂糖、異性化糖、ブドウ糖、果糖、乳糖、麦芽糖、和三盆、黒糖、三温糖などの糖類;フラクトオリゴ糖、マルトオリゴ糖などのオリゴ糖類;蜂蜜、メープルシロップ、廃糖蜜などの天然から得られる糖類;マルチトール、ソルビトール、キシリトール、ラクチトール、パラチニット、還元澱粉糖化物などの糖アルコール類などを挙げることができ、これらは単独でまたは2種以上組み合わせて使用することができる。糖類の配合割合は特に制限されるものではなく、使用する糖類の種類、所望する甘味度により異なり一概には言えないが、通常、穀物加工品に対して5〜40重量%、好ましくは10〜25重量%の範囲内を例示することができる。
【0033】
所望により、上記の糖類に加えて、その他の甘味料を添加しても良い。例えば、ステビア、甘草抽出物、羅漢果抽出物、ソーマチン、アスパルテーム、アセスルファムカリウム、スクラロース、サッカリン、サイクラミン酸などを挙げることができるがこれらに限定されるわけではない。
【0034】
次に、本発明において使用する酸味料であるが、例えば、クエン酸、コハク酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、グルコン酸、リン酸などの酸またはこれらの塩を挙げることができるが、これらに限定されるわけではない。その使用量は、使用する酸味料の種類などにより異なり一概には言えないが、通常、穀物加工品に対して0.01〜3重量%、好ましくは0.05〜0.5重量%の範囲内を例示することができる。
【0035】
本発明で使用される安定剤としては、果肉加工品などに通常使用されている広範囲の安定剤を使用することができ、例えば、ペクチン(LMペクチン、HMペクチンなど)、アルギン酸ナトリウム、グアガム、タマリンドシードガム、ローカストビーンガム、キサンタンガム、カラギーナン、ジェランガム、セルロース類、アルファー化澱粉類などが挙げられ、これらは、所望する粘性などの違いにより、適宜選択し、組み合わせて用いることもできる。その使用量は、使用する安定剤の種類などにより異なり一概には言えないが、通常、穀物加工品に対して0.01〜1重量%、好ましくは0.1〜0.5重量%の範囲内を例示することができる。
【0036】
果実などを糖類や酸味料と共に加熱加工した果実加工品は、一般にプレザーブと呼ばれ、ストロベリープレザーブ、アップルプレザーブなどと称される。本発明の穀物加工品は穀物プレザーブと呼ぶことができる。
【0037】
本発明の穀物加工品(穀物プレザーブ)には、種々の果実および果汁、アロエ葉肉、ナタデココ、ナッツ類を、糖類添加混合時に添加しても良い。あるいは、穀物プレザーブとは別に種々の果実および果汁アロエ葉肉、ナタデココ等を含有するプレザーブを調製し、穀物プレザーブと混合するか、または、飲食品の喫食時に2つのプレザーブを併用しても良い。
【0038】
また、本発明の穀物加工品には、所望により、香料、調味料、香辛料、酒類、金属塩、抗酸化剤、色素、ビタミン類、消泡剤、その他の食品、天然原料または食品添加物など食品に使用可能な成分を適宜配合してもよい。
【0039】
本発明の穀物加工品を含有する飲食品としては、特に制限はないが、穀物加工品を含有することにより、飲食品の香味、食感などが改善され、より広い消費者の嗜好性に応えるものであればよい。具体的には、例えば、ヨーグルト、プリン、アイスクリーム、ゼリー、ババロア、パンナコッタ、その他の洋菓子類、高齢者用飲食品、乳幼児向け食品などを挙げることができるが、これらに限定されるわけではない。
【0040】
本発明の穀物加工品をヨーグルト、ゼリー、洋菓子などの飲食品に添加することにより、適度な柔らかさを有しながら、つぶつぶ感、ぷりぷり感といったこれまでにない嗜好性の高い穀物の新食感を付与することができるとともに、長期間安定に物性が保たれ、水分の多い食品中でも溶解することがないので、食品開発の応用可能性を著しく改善することができる。
【0041】
以下、本発明を実施例および比較例によりさらに具体的に説明するが、これらに限定されるわけではない。
【実施例】
【0042】
[実施例1]大麦押麦入りプレザーブの調製−本発明品1
ガラス製丸底フラスコ(容量2000ml)に、大麦押麦105g、水315gを入れ、テフロン(デュポン社、登録商標)翼(直径13cm半円形、厚さ2mm)で毎分60回転の速度で攪拌しながら80℃、5分間の加熱を行った。加熱後直ちに、4℃の水463gを添加したところ、穀物同士が緩くブロック状の塊を形成したので、5分間の撹拌を行ったところ、穀物粒は容易に分離し、水中に分散した(約25℃)。
【0043】
この混合物にビートグラニュー糖164g、クエン酸2.5g、グアガム0.7g、キサンタンガム0.3gを添加し、毎分60回転の速度で攪拌を行いながら5分間加熱した。55℃達温時に0.02MPaまで減圧し、脱気を行い、常圧に戻した後、90〜95℃、10分間加熱殺菌の後、500ml入りガラス瓶に分注して密栓した。これを氷水に入れて約10分間で4℃まで冷却し、大麦入りプレザーブ(本発明品1)を調製した。
【0044】
[実施例2]大麦押麦入りプレザーブの調製−本発明品2
ガラス製丸底フラスコ(容量2000ml)に、大麦押麦105g、水315gを入れ、テフロン(デュポン社、登録商標)翼(直径13cm半円形、厚さ2mm)で毎分60回転の速度で攪拌しながら80℃、5分間の加熱を行った。加熱後直ちに、氷水に容器全体を浸すことにより約15分間で4℃に冷却した。
【0045】
この混合物にビートグラニュー糖164g、クエン酸2.5g、グアガム0.7g、キサンタンガム0.3gと水463gが混合された分散液を添加し、毎分60回転の速度で攪拌を行いながら5分間加熱した。55℃達温時に0.02MPaまで減圧し、脱気を行い、常圧に戻した後、90〜95℃、10分間加熱殺菌の後、500ml入りガラス瓶に分注して密栓した。これを氷水に入れて約10分間で4℃まで冷却し、大麦入りプレザーブ(本発明品2)を調製した。
【0046】
[実施例3]大麦押麦入りプレザーブの調製−本発明品3
ガラス製丸底フラスコ(容量2000ml)に、大麦押麦105g、水126gを入れ、撹拌を行わずに、80℃、10分間加熱した。加熱後直ちに、4℃に冷却した水647gを添加したところ、穀物同士が緩くブロック状の塊を形成したので、5分間の撹拌を行ったところ、穀物粒は容易に分離し、水中に分散した(約23℃)。
【0047】
この混合物にビートグラニュー糖164g、クエン酸2.5g、グアガム0.7g、キサンタンガム0.3gを添加し、毎分60回転の速度で攪拌を行いながら5分間加熱した。55℃達温時に0.02MPaまで減圧し、脱気を行い、常圧に戻した後、90〜95℃、10分間加熱殺菌の後、500ml入りガラス瓶に分注して密栓した。これを氷水に入れて約10分間で4℃まで冷却し、大麦入りプレザーブ(本発明品3)を調製した。
【0048】
[実施例4]鳩麦入りプレザーブの調製−本発明品4
ガラス製丸底フラスコ(容量2000ml)に、鳩麦105g、水315gを入れ、テフロン(デュポン社、登録商標)翼(直径13cm半円形、厚さ2mm)で毎分60回転の速度で攪拌しながら80℃、5分間の加熱を行った。加熱後直ちに、氷水に容器全体を浸すことにより約15分間で4℃に冷却した。
【0049】
この混合物にビートグラニュー糖164g、クエン酸2.5g、グアガム0.7g、キサンタンガム0.3gと水463gが混合された分散液を添加し、毎分60回転の速度で攪拌を行いながら5分間加熱した。55℃達温時に0.02MPaまで減圧し、脱気を行い、常圧に戻した後、90〜95℃、10分間加熱殺菌の後、500ml入りガラス瓶に分注して密栓した。これを4℃まで冷却し、鳩麦入りプレザーブ(本発明品4)を調製した。
【0050】
[実施例5]黒米入りプレザーブの調製−本発明品5
ガラス製丸底フラスコ(容量2000ml)に、黒米105g、水315gを入れ、テフロン(デュポン社、登録商標)翼(直径13cm半円形、厚さ2mm)で毎分60回転の速度で攪拌しながら80℃、5分間の加熱を行った。加熱後直ちに、氷水に容器全体を浸すことにより約15分間で4℃に冷却した。
【0051】
この混合物にビートグラニュー糖164g、クエン酸2.5g、グアガム0.7g、キサンタンガム0.3gと水463gが混合された分散液を添加し、毎分60回転の速度で攪拌を行いながら5分間加熱した。55℃達温時に0.02MPaまで減圧し、脱気を行い、常圧に戻した後、90〜95℃、10分間加熱殺菌の後、500ml入りガラス瓶に分注して密栓した。これを氷水に入れて約10分間で4℃まで冷却し、黒米入りプレザーブ(本発明品5)を調製した。
【0052】
[実施例6]赤米入りプレザーブの調製−本発明品6
ガラス製丸底フラスコ(容量2000ml)に、赤米105g、水315gを入れ、テフロン(デュポン社、登録商標)翼(直径13cm半円形、厚さ2mm)で毎分60回転の速度で攪拌しながら80℃、5分間の加熱を行った。加熱後直ちに、氷水に容器全体を浸すことにより約15分間で4℃に冷却した。
【0053】
この混合物にビートグラニュー糖164g、クエン酸2.5g、グアガム0.7g、キサンタンガム0.3gと水463gが混合された分散液を添加し、毎分60回転の速度で攪拌を行いながら5分間加熱した。55℃達温時に0.02MPaまで減圧し、脱気を行い、常圧に戻した後、90〜95℃、10分間加熱殺菌の後、500ml入りガラス瓶に分注して密栓した。これを氷水に入れて約10分間で4℃まで冷却し、赤米入りプレザーブ(本発明品6)を調製した。
【0054】
[実施例7]複数種穀物入りミックスフルーツプレザーブの調製−本発明品7
ガラス製丸底フラスコ(容量2000ml)に、大麦12.6g、キビ12.6g、アワ12.6g、ヒエ7.35g、ヒユ7.35g、水75gを入れ、テフロン(デュポン社、登録商標)翼(直径13cm半円形、厚さ2mm)で毎分60回転の速度で攪拌しながら80℃、5分間の加熱を行った。
【0055】
加熱後直ちに、氷水に容器全体を浸すことにより約15分間で4℃に冷却した。この混合物にビートグラニュー糖14g、クエン酸3gと水100gが混合された分散液を添加し、これに市販のシロップ入りリンゴ缶詰を12mmにダイスカットを行ったもの315g、市販のシロップ入り黄桃缶詰を12mmにダイスカットを行ったもの315g、水64g、ビートグラニュー糖100g、乳酸カルシウム1g、グアガム0.5g、キサンタンガム0.2g、スクラロース0.05gを加え、毎分60回転の速度で攪拌を行いながら5分間加熱した。
【0056】
55℃達温時に0.02MPaまで減圧し、脱気を行い、常圧に戻した後、リンゴ香料5gを添加、90〜95℃、10分間加熱殺菌の後、500ml入りガラス瓶に分注して密栓した。これを氷水に入れて約10分間で4℃まで冷却し、複数種穀物入りミックスフルーツプレザーブ(本発明品7)を調製した。
【0057】
[実施例8]複数種穀物入りミックスフルーツプレザーブの調製−本発明品8
ステンレス製丸底タンク(容量500l)に、大麦12.6kg、キビ12.6kg、アワ12.6kg、ヒエ7.35kg、ヒユ7.35kg、水75kgを入れ、テフロン(デュポン社、登録商標)翼(直径40cm半円形、厚さ8mm)で毎分60回転の速度で攪拌しながら80℃、5分間の加熱を行った。
【0058】
加熱後直ちに、氷水に容器全体を浸すことにより約25分間で4℃に冷却した。この混合物にビートグラニュー糖14kg、クエン酸3kgと水100kgが混合された分散液を添加し複数種穀物混合物を調製した。
【0059】
これとは別に、市販のシロップ入りリンゴ缶詰を12mmにダイスカットを行ったもの315kg、市販のシロップ入り黄桃缶詰を12mmにダイスカットを行ったもの315kg、水64kg、ビートグラニュー糖100kg、乳酸カルシウム1kg、グアガム0.5kg、キサンタンガム0.2kg、スクラロース0.05kgを入れたステンレス製丸底タンク(容量2000l)に、上記の複数種穀物混合物を添加し、毎分60回転の速度で攪拌を行いながら5分間加熱した。
【0060】
55℃達温時に0.02MPaまで減圧し、脱気を行い、常圧に戻した後、リンゴ香料5kgを添加、90〜95℃、10分間加熱殺菌の後、500ml入りガラス瓶に分注して密栓した。これを氷水に入れて約10分間で4℃まで冷却し、複数種穀物入りミックスフルーツプレザーブ(本発明品8)を調製した。
【0061】
[比較例1]大麦入りプレザーブの調製−比較品1
ガラス製丸底フラスコ(容量2000ml)に、大麦押麦105g、水778g、ビートグラニュー糖164g、クエン酸2.5g、グアガム0.7g、キサンタンガム0.3gを入れ、テフロン(デュポン社、登録商標)翼(直径13cm半円形、厚さ2mm)で毎分60回転の速度で攪拌しながら80℃、5分間の加熱を行った。
【0062】
加熱後直ちに、氷水に容器全体を浸すことにより約15分間で4℃に冷却した後、再び加熱を開始し、55℃達温時に0.02MPaまで減圧し、脱気を行い、常圧に戻した後、90〜95℃、10分間加熱殺菌の後、500ml入りガラス瓶に分注して密栓した。これを氷水に入れて約10分間で4℃まで冷却し、大麦入りプレザーブ(比較品1)を調製した。
【0063】
[比較例2]鳩麦入りプレザーブの調製−比較品2
ガラス製丸底フラスコ(容量2000ml)に、鳩麦105g、水778g、ビートグラニュー糖164g、クエン酸2.5g、グアガム0.7g、キサンタンガム0.3gを入れ、テフロン(デュポン社、登録商標)翼(直径13cm半円形、厚さ2mm)で毎分60回転の速度で攪拌しながら80℃、5分間の加熱を行った。
【0064】
加熱後直ちに、氷水に容器全体を浸すことにより約15分間で4℃に冷却した後、再び加熱を開始し、55℃達温時に0.02MPaまで減圧し、脱気を行い、常圧に戻した後、90〜95℃、10分間加熱殺菌の後、500ml入りガラス瓶に分注して密栓した。これを氷水に入れて約10分間で4℃まで冷却し、鳩麦入りプレザーブ(比較品2)を調製した。
【0065】
[比較例3]黒米入りプレザーブの調製−比較品3
ガラス製丸底フラスコ(容量2000ml)に、黒米105g、水778g、ビートグラニュー糖164g、クエン酸2.5g、グアガム0.7g、キサンタンガム0.3gを入れ、テフロン(デュポン社、登録商標)翼(直径13cm半円形、厚さ2mm)で毎分60回転の速度で攪拌しながら80℃、5分間の加熱を行った。
【0066】
加熱後直ちに、氷水に容器全体を浸すことにより約10分間で4℃に冷却した後、再び加熱を開始し、55℃達温時に0.02MPaまで減圧し、脱気を行い、常圧に戻した後、90〜95℃、10分間加熱殺菌の後、500ml入りガラス瓶に分注して密栓した。これを氷水に入れて約10分間で4℃まで冷却し、黒米入りプレザーブ(比較品3)を調製した。
【0067】
[比較例4]赤米入りプレザーブの調製−比較品4
ガラス製丸底フラスコ(容量2000ml)に、赤米105g、水778g、ビートグラニュー糖164g、クエン酸2.5g、グアガム0.7g、キサンタンガム0.3gを入れ、テフロン(デュポン社、登録商標)翼(直径13cm半円形、厚さ2mm)で毎分60回転の速度で攪拌しながら80℃、5分間の加熱を行った。
【0068】
加熱後直ちに、氷水に容器全体を浸すことにより約15分間で4℃に冷却した後、再び加熱を開始し、55℃達温時に0.02MPaまで減圧し、脱気を行い、常圧に戻した後、90〜95℃、10分間加熱殺菌の後、500ml入りガラス瓶に分注して密栓した。これを氷水に入れて約10分間で4℃まで冷却し、赤米入りプレザーブ(比較品4)を調製した。
【0069】
[比較例5]複数種穀物入りミックスフルーツプレザーブの調製−比較品5
ガラス製丸底フラスコ(容量2000ml)に、大麦12.6g、キビ12.6g、アワ12.6g、ヒエ7.35g、ヒユ7.35g、市販のシロップ入りリンゴ缶詰を12mmにダイスカットを行ったもの315g、市販のシロップ入り黄桃缶詰を12mmにダイスカットを行ったもの315g、水239g、ビートグラニュー糖114g、クエン酸3g、乳酸カルシウム1g、グアガム0.5g、キサンタンガム0.2g、スクラロース0.05gを入れ、テフロン(デュポン社、登録商標)翼(直径13cm半円形、厚さ2mm)で毎分60回転の速度で攪拌しながら80℃、5分間の加熱を行った。
【0070】
加熱後直ちに、氷水に容器全体を浸すことにより約15分間で4℃に冷却した後、再び加熱を開始し、55℃達温時に0.02MPaまで減圧し、脱気を行い、常圧に戻した後、リンゴ香料5gを添加、90〜95℃、10分間加熱殺菌の後、500ml入りガラス瓶に分注して密栓した。これを氷水に入れて約10分間で4℃まで冷却し、複数種穀物入りミックスフルーツプレザーブ(比較品5)を調製した。
【0071】
[比較例6]複数種穀物入りミックスフルーツプレザーブの調製−比較品6
ステンレス製丸底タンク(容量500リットル)に、大麦12.6kg、キビ12.6kg、アワ12.6kg、ヒエ7.35kg、ヒユ7.35kg、市販のシロップ入りリンゴ缶詰を12mmにダイスカットを行ったもの315kg、市販のシロップ入り黄桃缶詰を12mmにダイスカットを行ったもの315kg、水239kg、ビートグラニュー糖114kg、クエン酸3kg、乳酸カルシウム1kg、グアガム0.5kg、キサンタンガム0.2kg、スクラロース0.05kgを入れ、テフロン(デュポン社、登録商標)翼(直径40cm半円形、厚さ8mm)で毎分60回転の速度で攪拌しながら80℃、5分間の加熱を行った。
【0072】
加熱後直ちに、氷水に容器全体を浸すことにより約25分間で4℃に冷却した後、再び加熱を開始し、55℃達温時に0.02MPaまで減圧し、脱気を行い、常圧に戻した後、リンゴ香料5kgを添加、90〜95℃、10分間加熱殺菌の後、500ml入りガラス瓶に分注して密栓した。これを氷水に入れて約10分間で4℃まで冷却し、複数種穀物入りミックスフルーツプレザーブ(比較品6)を調製した。
【0073】
〔評 価〕
本発明品1〜8、および比較品1〜6について、10名の良く訓練されたパネルにより、外観観察及び官能評価を行った。結果を表1に示す。
【0074】
【表1】
【0075】
本発明品1および3は加熱後、水添加時に緩いブロック状の塊が形成するも撹拌により穀物粒は容易に分離し、水中に分散した。実施例2、4〜8は加熱後、冷却時に穀物粒の結着がなく、良好に分離していた。
【0076】
また、官能評価の結果、10名全員が本発明品1〜6のプレザーブは、穀物粒の一つ一つが、ぷりぷりとした、好ましい新食感を有し、満足感があると評価した。
【0077】
さらに、異なる穀物粒および果実を含有する本発明品7および8のプレザーブは、穀物粒の一つ一つが、弾力のある、好ましい新食感を有し、異なる穀物の複雑な香味がリンゴと桜桃の食感との対比が好ましく、満足感があると評価した。
【0078】
一方、比較品1〜6はα化が不十分で膨潤不足から、55℃脱気工程後に撹拌しても穀物が沈殿していた。また、官能評価でも、比較品1は大麦粒の中心部に硬さが残り、固く、違和感のある食感であった。比較品2は全体的に固く、食用に供する状態ではなかった。また、比較品3および4は生米の固い食感であり、食用に供する状態ではなかった。さらに比較品5および6は穀物粒の中心部に硬さが残り、固く、違和感のある食感であった。
【0079】
以上の結果より、大麦、鳩麦、黒米、赤米、黍(キビ)、粟(アワ)、稗(ヒエ)、ヒユなどを原料に本発明の方法により調製されたプレザーブは、穀物粒の一つ一つが、ぷりぷりとした、好ましい新食感を有し、満足感があり、十分なα化が行えるとともに作業的にも十分、工業的製法として使用しうるものであることが確認された。
【0080】
さらに、本発明品1〜8のプレザーブを4℃にて1ヶ月間保存し、外観観察、官能評価を行ったが、いずれも外観の変化なく、官能評価においても製造直後と遜色のない良好な食感が維持されていることが確認された。このような優れた物性と食感を有する穀物加工品はこれまでなく、本願発明の穀物加工品は新たな付加価値が付与されたプレザーブであることが確認された。
【0081】
結論として、本願発明の穀物加工品は、好ましい新食感と長期間安定な優れた物性と食感を生かして、種々の加工食品に対して広く応用が可能であり、嗜好性と健康志向を兼ね備えた極めて良好な食品素材を提供することができることが確認された。
【0082】
[実施例9]
本発明品1および比較品1の大麦プレザーブ、本発明品4および比較品2の4品についてそのテクスチャーを測定した。
【0083】
[測定方法]
レオメータ(山電社製:RHEONERII RE2−33005S)を用い、表2に示す条件にてテクスチャーを測定した。測定結果を図1に示す。
【0084】
【表2】
【0085】
図1に示したように、本発明品1の大麦プレザーブは最大荷重2100g(歪率95%時)であるのに対し、比較品1は最大荷重3300g(歪率95%時)であり、かつ、α化が不足しているために固く、本発明品1に比べ最大荷重も大きかった。
【0086】
一方、本発明品4のハト麦プレザーブは最大荷重8300g(歪率85%時)であるのに対し、比較品2は最大荷重14400g(歪率85%時)であり、かつ、α化が不足しているために非常に固く、本発明品4に比べ最大荷重もかなり大きかった。
【0087】
なお、穀物プレザーブにおいて、つぶつぶ感、ぷりぷり感などの好ましい食感を与える最大荷重の範囲は、穀物の種類により異なるので、固すぎず、柔らかすぎず、好ましい範囲とすればよい。
【0088】
[実施例10] 穀物プレザーブ入りヨーグルト
市販のプレーンヨーグルト70部に本発明品1〜3、比較品1の大麦入りプレザーブをそれぞれ30部配合し、専門パネラー10名による官能評価を行った。
【0089】
その結果を表3に示した。
【0090】
【表3】
【0091】
表3から明らかなように、専門パネラー10名全員が、本発明品1〜3の大麦押麦入りプレザーブを配合したヨーグルトは、穀物粒の一つ一つがぷりぷりとした好ましい新食感があり、ヨーグルト中で独特の存在感を感じさせ、滑らかなヨーグルトとの相性も良く、ヨーグルトの嗜好性を向上させていると評価した。また、比較品1の大麦押麦プレザーブを配合したヨーグルトは穀物粒の中心に硬さが残るか、全体的に固く、食用に供するには不十分であると評価した。
【0092】
[実施例11] 穀物プレザーブ入りココナッツミルクプリン
水180mlに粉ゼラチン20gを入れ、膨潤させ、電子レンジで500W、20秒加熱し、溶解させゼラチン溶液を調製した。次に鍋に市販ココナッツミルク600mlおよび牛乳400mlを入れ良く撹拌した後、上白糖150gを加え、溶解し、加熱し、沸騰直前で加熱を止め、ゼラチン溶液を加え、混合溶解した(ココナッツプリン基材)。
【0093】
得られたココナッツプリン基材をステンレス製ボウルに移し、回りを氷水で冷やしながら、撹拌したもの250mlを360ml入りガラス容器に充填した。
【0094】
充填直後のまだ、緩い状態で本発明品1および4、比較品1および2のプレザーブを60g添加混合し、冷蔵庫にて冷却し、穀物プレザーブ入りココナッツミルクプリンを調製した。
【0095】
得られた穀物プレザーブ入りココナッツミルクプリンに対して専門パネラー10名による官能評価を行った。その結果を表4に示した。
【0096】
【表4】
【0097】
表4の結果から明らかなように、本発明品1および4の大麦押麦プレザーブを混合したココナッツミルクプリンは大麦押麦のぷりぷりとした、好ましい新食感および香味がココナッツプリンの口当たりとの相性が良く、満足感を与えたとの評価であった。
【0098】
一方、比較品1は、大麦押麦粒の中心部に硬さが残り、違和感のある食感であり、比較品2は全体的に固く、食用に供する状態ではなかった。
【0099】
[実施例12] 穀物プレザーブ混合アイスクリーム
市販アイスクリーム200gに対して、本発明品2、5、6、比較品1、3、4のプレザーブを25g加え、市販メープルシロップ10gを掛け、専門パネラー10名による官能評価を行った。その結果を表5に示した。
【0100】
【表5】
【0101】
表5の結果から明らかなように、本発明品2のプレザーブを混合したバニラアイスクリームは、大麦押麦粒のぷりぷりとした、好ましい新食感がバニラアイスとの相性も良く、大麦押麦のプレーンな香味にメープルシロップの風味が加わり、単調なバニラアイスに複雑さを与え、満足感が得られたとの評価であった。
【0102】
また、本発明品5のプレザーブを混合したバニラアイスクリームは、黒米粒のぷりぷりとした、好ましい新食感はバニラアイスとの相性も良く、黒米の力強い香味にメープルシロップの風味が加わり、単調なバニラアイスに複雑さを与え、満足感が得られたとの評価であった。
【0103】
また、本発明品6のプレザーブを混合したバニラアイスクリームは、赤米粒のぷりぷりとした、好ましい新食感はバニラアイスとの相性も良く、赤米の野性的な香味にメープルシロップの風味が加わり、単調なバニラアイスに複雑さを与え、満足感が得られたとの評価であった。
【0104】
一方、比較品1のプレザーブを混合したバニラアイスクリームは、黒米の固い食感が残り、食用に供する状態ではなく、比較品3のプレザーブを混合したバニラアイスクリームは、赤米の固い食感が残り、食用に供する状態ではなく、比較品4のプレザーブを混合したバニラアイスクリームは、穀物粒の中心部に硬さが残り、固く、違和感のある食感で食用に供する状態ではなかったとの評価であった。
図1