特許第5904707号(P5904707)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5904707
(24)【登録日】2016年3月25日
(45)【発行日】2016年4月20日
(54)【発明の名称】塗面コート剤の処理方法
(51)【国際特許分類】
   B05D 3/06 20060101AFI20160407BHJP
【FI】
   B05D3/06 Z
【請求項の数】2
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2010-266801(P2010-266801)
(22)【出願日】2010年11月30日
(65)【公開番号】特開2012-115751(P2012-115751A)
(43)【公開日】2012年6月21日
【審査請求日】2013年11月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】597176935
【氏名又は名称】株式会社カーチスホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100081282
【弁理士】
【氏名又は名称】中尾 俊輔
(74)【代理人】
【識別番号】100085084
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 高英
(74)【代理人】
【識別番号】100095326
【弁理士】
【氏名又は名称】畑中 芳実
(74)【代理人】
【識別番号】100115314
【弁理士】
【氏名又は名称】大倉 奈緒子
(74)【代理人】
【識別番号】100117190
【弁理士】
【氏名又は名称】玉利 房枝
(72)【発明者】
【氏名】黒木 敏則
【審査官】 八板 直人
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−195693(JP,A)
【文献】 特開平06−013306(JP,A)
【文献】 特開平09−299843(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05D 1/00−7/26
B05C 1/00−21/00
B05B 1/00−3/18;7/00−9/08;
15/00−15/12
C09D 1/00−10/00;101/00−201/10
B41J 2/01;2/165−2/20;2/21−2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁誘導作用を阻害しない非導電材料からなり、ケイ素、窒素および水素から構成された無機ポリマーを主成分とする塗面コート剤を収納した収納容器に対し、無誘導巻き配置とされた処理コイルを近接または当接させた状態で前記処理コイルに少なくとも12時間以上通電し、前記塗面コート剤にホワイトノイズ波形の20Hz〜20MHzの周波数の電磁波を継続して加えることを特徴とする塗面コート剤の処理方法。
【請求項2】
前記塗面コート剤の無機ポリマーは、パーヒドロポリシラザンであることを特徴とする請求項1に記載の塗面コート剤の処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車のボディ等の塗装面に塗布し、その塗装面を被覆する塗面コート剤の処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、自動車のボディ等の塗装面にコート剤を塗布することで、その塗装面に光沢を付与したり(光沢処理)、汚れなどの付着を軽減し、落とし易くしたり(防汚処理)、あるいは、色あせ、錆、傷などを防止すること(塗膜保護)等がなされている(以下、これらの目的で塗装面に塗布されるコート剤を「塗面コート剤」という)。
【0003】
また、塗面コート剤の性質は、大別して、表面に付着した水を弾く性質を有し、表面に付いた水が水滴状(玉状)になる「撥水性」の性質を有するコート剤と、表面に付いた水が水滴にならずに表面に拡がる「親水性」の性質を有するコート剤との2つのタイプがある。この「撥水性」、「親水性」の厳格な定義はないが、ここでは対水接触角が80°以上であれば「撥水性」に分類し、40°以下であると「親水」に分類することとする。
【0004】
そして、塗面コート剤は、「親水性」であるか、「撥水性」であるかにより、メリット、デメリットも様々である。例えば、「撥水性」の場合、水が水滴状(玉状)になることから、塗面コート剤が作用している感じ(以下、「効いている感」という)を視覚的に得ることができる。しかし、水を弾く代わりに、落としにくいがんこな油性の汚れとは馴染み易いというデメリットがある。そして、静電気を帯びやすいため、大気中に浮遊する塵や埃を吸い寄せる傾向がある。また、「親水性」の場合、水が拡がる感じは視覚的な「効いている感」が乏しい。その反面、実は、水捌けがよく、自己洗浄作用があるため、汚れにくく、雨染みも付きにくいというメリットがある。
【0005】
これらの性質を勘案し、例えば、自動車ボディの塗装面に塗布するコート剤においても、撥水性、親水性の両タイプの塗面コート剤が、ユーザーの好みや用途に応じて使い分けられており、従来から、撥水性を有する塗面コート剤(例えば、特許文献1参照)、親水性を有する塗面コート剤(例えば、特許文献2)の双方について、様々な開発がなされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−202717号公報
【特許文献2】特開2009−280723号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、前述の両タイプの塗面コート剤に共通する解決課題として、「効果の持続性(耐久性)」がある。つまり、「撥水性」、「親水性」の何れのタイプの塗面コート剤であっても、その特有の効果が長く持続することが望ましいことは言うまでもない。
【0008】
また、そのような持続性を備えた塗面コート剤が安価、かつ、簡便に処理できることは望ましい。
【0009】
そこで、本発明では、光沢処理、防汚処理、塗膜保護等の目的に適う機能を備えた塗面コート剤に対し、もう一工程の処理を施すことにより、耐久性の点で格段に優れた塗面コート剤の処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決するため、本発明の塗面コート剤の処理方法は、電磁誘導作用を阻害しない非導電材料からなり、ケイ素、窒素および水素から構成された無機ポリマーを主成分とする塗面コート剤を収納した収納容器に対し、無誘導巻き配置とされた処理コイルを近接または当接させた状態で前記処理コイルに少なくとも12時間以上通電し、前記塗面コート剤にホワイトノイズ波形の20Hz〜20MHzの周波数の電磁波を継続して加えることを特徴とする。
【0011】
また、本発明の塗面コート剤の処理方法は、前記塗面コート剤の無機ポリマーは、パーヒドロポリシラザンであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明の塗面コート剤の製造装置を用い、塗面コート剤の処理方法を実行すれば、被処理物としての塗面コート剤に収納容器を介して前記処理コイルから電磁誘導作用を加え、塗面コート剤の成分のクラスタを活性化・微小化させることができる。
【0015】
そして、このようにして処理された塗面コート剤を塗装面に塗布すれば、水分等の成分が活性化され、微小化された塗面コート剤を塗装面における塗料分子間に奥深くまで浸透させることができ、結果として、塗膜と塗面コート剤の溶剤との結合をより強固なものとすることができ、その塗面コート剤の撥水性、親水性の別や、光沢処理、防汚処理、塗膜保護等の主たる目的を問わず、耐久性に優れたものとなる。
【0016】
このように、本発明の塗面コート剤の処理方法は非常に簡易な構成となっており、従来の製造ラインの最終工程として、収納容器に収納された塗面コート剤をサイン波形を基本とするホワイトノイズ波形により処理する工程を1つ加えるだけで、非常に効率的に製品を製造することができる。また、塗面コート剤の状態を選ばず、液状、クリーム状、固形状等の非常に広範囲の塗面コート剤に適用することができる。
【0017】
なお、電源として使用するホワイトノイズの発生器は通常市販されているものを使用できるほか、処理コイルの構造も無誘導巻き配置としたコイルを使用する等簡易な構成で製造することができる等優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本実施形態のコート剤処理装置の構成を示す分解斜視図
図2】本実施形態のコート剤処理装置の処理コイルの部分拡大説明図
図3】本実施形態のコート剤処理装置の電源回路の説明図
図4】(a)は本実施形態の塗面コート剤をテストパターンの表面に塗布したときの被膜の状態の電子顕微鏡写真、(b)は一般的な無機系塗面コート剤をテストパターンの表面に塗布したときの被膜の状態の電子顕微鏡写真
図5】(a)は本実施形態の塗面コート剤をテストパターンの表面に塗布したときの被膜の状態のイメージ図、(b)は一般的な無機系塗面コート剤をテストパターンの表面に塗布したときの被膜の状態のイメージ図
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本実施形態の塗面コート剤の処理装置、塗面コート剤の処理方法並びにその塗面コート剤について、図1乃至図5に基づき説明する。
【0020】
本実施形態の塗面コート剤処理装置1は、図1に示すように、電磁誘導を阻害しない材料からなり、塗面コート剤を収納する収納容器2と、無誘導巻き配置とされ、収納容器2に接して配設される処理コイル3と、その処理コイル3に電力を供給する電源4とから構成される。
【0021】
ここで、本実施形態の塗面コート剤の処理装置、塗面コート剤の処理方法は、塗面コート剤の本来の効能をより持続させるためのもの、耐久性を付与するためのものである。よって、本実施形態の処理に供する塗面コート剤は、本実施形態による処理を行う前においても、その効果の持続性の面では本実施形態の成果物に比して劣るものの、塗面コート剤としての所定の効果を奏し、製品として成立するものを用いる。
【0022】
また、塗面コート剤は、その成分に水分等の液体を含有していることが必要である。これは、処理コイル3により電磁誘導作用を与えても、比較的自由に移動可能な水分等が存在しなければ、電磁誘導が有効に作用しないからである。なお、塗面コート剤に含まれる液体の成分量は多いほどよい。しかし、その状態は液状に限らず、例えば、ゲル状、ゾル状、クリーム状等であってもよい。
【0023】
なお、本実施形態においては、塗面コート剤として、ケイ素(Si)、窒素(N)、水素(H)のみから構成され、炭素(C)などの有機成分を含まない無機ポリマーであるパーヒドロポリシラザン(SiHNH)を主成分とされた液状のものを用いる。
【0024】
この塗面コート剤は、パーヒドロポリシラザンが大気中に含まれる水の分子分(HO)と反応して加水分解し、窒素(N)はやがてアンモニア(NH)となって大気中に揮発し、残ったケイ素(Si)と水の分子中の酸素(O)が結合してシリカガラス(SiO)に転化する原理を応用し、塗装面をガラスコートするものである。
【0025】
ここで、有機質のコート剤は、Siと塗装膜中のOHとの間にCHが介在することとなり、SiとOHとの結合が弱く、さらには、CHは汚れを引き寄せ、しかも、一度CHに引き寄せられた汚れは、逆にSiOの被膜に保護される形になり、除去し難くなる。これに対し、本実施形態において使用する塗面コート剤のように、100%の無機質成分とすることで、塗膜と溶剤の結合をアンカー効果により強固とすることができる。また、仮に、この塗面コート剤の上面に別のコート剤を塗布するような場合には、その別のコート剤との結合も強固なものとなる。
【0026】
また、本実施形態の塗面コート剤の処理を施す際に塗面コート剤を収容しておく収納容器2は、電磁誘導作用を阻害しない非導電性の材料からなるものを用いる。例えば、ポリスチレン、ポリエチレン等、適宜プラスチック等の合成樹脂を用いることが好ましい。これは、導電性材料を用いた場合には、一種の静電シールド的に収納容器2が働き、電磁誘導作用が内部の収容物に影響を及ぼさないためである。また、収納容器2の外形状は処理コイル3と密に接する形状とする。例えば、処理コイル3を平面に形成した場合には、この処理コイル3に面状に近接(当接も可)させて配置可能に、収納容器2の側面を処理コイル3と同様に平面に形成する。
【0027】
そして、処理コイル3は、図2に示すように基板材3Aの上下端部にそれぞれ一列にコイル支持棒3Bを配列し、そのコイル支持棒3B間で九十九状に折り返すように等間隔に導線3Cが張られた、平面的な処理コイル3として形成する。つまり、一種の無誘導巻き的な配置構成の導線3Cの張り方とする。このように無誘導巻き的な配置とすることで、処理コイル3の導線3Cの磁場が打ち消された後に残るなにがしかのインダクタンスと、高い共振周波数による電磁誘導作用を、処理コイル3に近接する表面内部の塗面コート剤に加えてその成分を活性化・微小化させることができる。なお、処理コイル3に使用する導線は、通常市販されている導線を用い、単線、より線であってもよい。
【0028】
また、本実施形態の塗面コート剤の処理装置、塗面コート剤の処理方法に用いる電源4は、図3に示すように、交流電源4Aを有し、整流回路4B、4Cで整流し、ホワイトノイズ発生器4D及び増幅器4Eの作動に使用する。そして、ホワイトノイズ発生器4Dで発生させたホワイトノイズ波形を増幅器4Eで増幅し、処理コイル3に供給するように構成されている。
【0029】
ここで、一般に、水は3KHz程度の周波数帯で運動が大きくなることが知られている。そこで、3KHzの周波数における、波形による塗面コート剤への影響の有無を調べた。波形の生成にあたっては、市販されている任意波形発生装置を用いている。
【0030】
なお、結果(評価)は、処理後の塗面コート剤のテストピースに対する濡れ易さ、濡れにくさについての体感テストの結果を示したもので、◎は非常に良い、○は良い、△はやや良い、×は変化が無い、もしくは悪い、を示す(以下、同じ)。
【0031】
【表1】
【0032】
この表1に示すように、サイン波について良好な結果を得ることができた。
【0033】
そこで、本実施形態では、サイン波を基本とするホワイトノイズ発生器を電源として用いることとする。
【0034】
続いて、前述の塗面コート剤の処理装置を用いた塗面コート剤の処理方法における周波数域と処理時間、出力電流等について説明する。
【0035】
本発明時に、本実施形態に用いる前述の塗面コート剤の未処理のもの(ブランク)、3KHzのサイン波を処理コイル3に供給して処理するもの、周波数20Hz〜20MHzのホワイトノイズを処理コイル3に供給して処理するものを3種用意し、それぞれ、処理時間12時間、24時間、48時間で、テストピースに対する濡れ易さ、濡れにくさの官能試験を実施した。
【0036】
波形の生成にあたっては、リオン(株)製のホワイトノイズ発生器を利用した。このホワイトノイズ発生器によれば、サイン波を基本としつつ、周波数20Hz〜20MHzのすべての周波数帯を含んだ状態でホワイトノイズを発生することができる。
【0037】
なお、本実施形態に使用する周波数域の範囲の下限を周波数20Hzとしたのは、ホワイトノイズ発生器等の簡易なノイズ生成器で使用できる下限であるからである。また、上限を20MHzとしたのは、例えば、電流が流れる速度は約30万キロメートル/秒であり、200MHzの交流電流ではコイルの長さ約1.5mにしか流れないため、コイル長が取れず加工効率が悪いためであり、周波数20MHz程度が適切であるからである。
【0038】
なお、ホワイトノイズ発生器40からは出力電流0.3A、電圧±15Vで処理コイルに供給した。
【0039】
【表2】
【0040】
この試験の結果、表2に示すように、3KHzのサイン波についても、処理時間を少なくとも24時間以上とすることで良好な結果を得ることができ、ホワイトノイズであれば、24時間以上の処理時間とすることで非常に良好な効果を得ることができることがわかった。
【0041】
よって、本実施形態の塗面コート剤の処理においては、24時間以上の処理時間とする。
【0042】
また、出力試験として、塗面コート剤の処理装置1において、ホワイトノイズ発生器40の出力電流を変化させ、周波数20Hz〜20MHzのホワイトノイズを処理コイル3に供給した処理後の塗面コート剤のテストピースに対する濡れ易さ、濡れにくさについて官能試験を行った。電圧は±15Vを用い、処理時間は48時間で処理した結果を表3に示す。
【0043】
【表3】
【0044】
この試験の結果、0.25A以上の電流で効果が出ることが判った。この電流値に関しては、微少電力では収納容器2内の被処理物である塗面コート剤に電磁誘導作用が及ばないためと思われる。よって、本実施形態の塗面コート剤の処理においては、ホワイトノイズ発生器40の出力電流を0.25A以上とし、好ましくは、0.3A以上とする。なお、上限については、特に規定していないが、大きな電流を流したとしても、処理コイル3が、いわゆる無誘導巻きにしている為、コイルから離れた部分では電磁誘導の作用が打ち消されるため、大電流を流す意義はあまりない。
【0045】
また、コイル間隔については、被処理物の物性と関係するため、その物性に応じて適宜調整することが望ましい。
【0046】
以上の各種試験の結果から、本実施形態の塗面コート剤の処理方法においては、被処理物である液状の塗面コート剤を、収納容器2としてのポリスチレン製20L矩形ペール缶に収納し、この収納容器2の側面に、基板材3Aに配設された処理コイル3を当接させるようにして、基板材3Aを配置した状態で電源4のホワイトノイズ発生器4Dで発生させたホワイトノイズ波形を増幅器4Dで増幅し、出力電流0.3A、電圧±1.5Vとして、周波数20Hz〜20MHzのホワイトノイズを処理コイルに48時間供給して処理する。
【0047】
このように、特殊なコイル巻きによって磁力が消し合うように設計された空間に、ホワイトノイズのような、いくつかの周波数が合成された電流を供給して収納容器2を介して電磁誘導作用を加え、塗面コート剤を超高速振動させて攪拌することにより、塗面コート剤の成分を分子レベルにまで微小化させたり、活性化させることができる。
【0048】
複合されたいくつもの成分が超高速振動によりバランスよく混ざり合った結果、処理前に比して滑らかで、柔らかくなる。動粘度に関しては,分子レベルでの微細化が行われた結果、剪断力が強くなり、動粘度は上昇する。
【0049】
処理後の塗面コート剤は、分子レベルでの微細化が行われた結果、このように、粘りは強いが、浸透力も頗る良好な塗面コート剤となる。
【0050】
そして、このようにして処理された塗面コート剤を塗装面に塗布すれば、水等の成分のクラスタが活性化され、微小化された塗面コート剤を毛細管現象により塗装面における塗料分子間に奥深くまで浸透させることができ、結果として、塗膜と塗面コート剤の溶剤との結合をより強固なものとすることができ、その塗面コート剤の撥水性、親水性の別や、光沢処理、防汚処理、塗膜保護等の主たる目的を問わず、耐久性に優れたものとすることができる。また、コート表面の平滑性も増し、高い光沢を実現できる。
【0051】
次に、前述の塗面コート剤の処理装置を用い、前述の処理方法によって処理された本実施形態の塗面コート剤と、市販されている一般的な無機系塗面コート剤とについて、自動車ボディを想定して、鉄板の表面にカラー塗料を塗布して塗装したテストパターンを用い、その表面に同様に塗布したときの被膜の状態を電子顕微鏡にて観察し、比較した。
【0052】
その結果を、図4の顕微鏡写真、図5のイメージ図に示す。なお、図4及び図5においては、(a)が本実施形態の処理に供した後の無機質の塗面コート剤を用いた場合を示し、(b)が前述の塗面コート剤の処理をしていない無機質の塗面コート剤を用いた場合を示している。
【0053】
この結果、(a)に示す本実施形態の処理に供した後の無機質の塗面コート剤は、(b)に示す前述の塗面コート剤の処理をしていない無機質の塗面コート剤に比べ、シリカガラス(SiO)が、クラスタを微小化された溶剤とともに毛細管現象によって塗装分子の奥深くまで浸透していることが確認された。
【0054】
加えて、無機質の塗面コート剤を用いる本実施形態は、被覆する塗膜と該塗面コート剤の溶剤との結合がアンカー効果により強固となる。よって、本実施形態の処理に供した後の塗面コート剤は、該コート剤の効果持続(耐久性)が頗る向上することが想定される。
【0055】
また、本実施形態の処理に供した後の塗面コート剤の塗布面は凹凸が極めて微細なものとなり、平滑性も向上するため、塗面コート剤の塗布面上にさらに別のコート剤等を塗布するような場合においても、その別のコート剤等が均一の厚さに塗布され、仕上がり状態が極めて良好なものとなることが期待できる。
【0056】
なお、表4は、未処理の撥水性の塗面コート剤でコートしたテストピース(未処理試料)3枚と、本実施形態の塗面コート剤の処理方法を施した前記撥水性の塗面コート剤でコートしたテストピース(処理試料)3枚とについて、48時間経過させて完全に塗面コート剤が硬化した状態から、サンシャインウェザーメーター(スガ試験機株式会社製)を用い、50時間後と、100時間後から400時間後まで100時間毎に各テストピースの接触角を測定した平均値の結果を示す。なお、テストピースのコート剤塗布面にはトヨタ黒色ソリッド 202号の塗装が施されている。
【0057】
【表4】
【0058】
この結果から、未処理の塗面コート剤をコートしたテストピースの撥水力低下が、初期値に比して、1年経過相当時(400時間後)に16%低下しているのに対し、本実施形態の塗面コート剤の処理方法を施した前記撥水性の塗面コート剤でコートしたテストピースについては8%の低下であり、しかも、1年経過相当時(400時間後)であっても92°という高い接触角を維持できており、本実施形態の塗面コート剤の処理方法と塗面コート剤の持続性、耐久性を確認することができた。
【0059】
なお、本実施形態の塗面コート剤の処理方法を施した親水性の塗面コート剤でコートしたテストピース(参考試料)3枚について、48時間経過させて完全に塗面コート剤が硬化した状態から、サンシャインウェザーメーター(スガ試験機株式会社製)を用い、50時間後と、100時間後から400時間後まで100時間毎に各テストピースの接触角を測定した平均値の結果を示す。
【0060】
この結果から、本実施形態の塗面コート剤の処理方法を施した親水性の塗面コート剤においても、初期段階で40°という良好な親水性が、9ヶ月経過相当(300時間後)で36°で10%の低下であり、1年経過相当時(400時間後)であっても、33°という接触角であり、本実施形態の塗面コート剤の処理方法が親水性の塗面コート剤においても良好な効果を奏することが確認できた。
【0061】
また、比較例として、処理コイルを、例えば一方向から流れるように、無誘導巻きとならないように形成し、ホワイトノイズを流し、電磁場を収納容器内部に形成させ、電磁作用を被処理物に加え、上記と同様の処理、即ちホワイトノイズは、ホワイトノイズ発生器から、出力は0.3A、0.4A、0.5Aの三種類で、±15V、周波数20〜20MHzで処理コイルに48時間供給してみたが,いずれも被処理物の前記官能テストによる評価は×であった。よって、処理コイルは、無誘導巻き配置とすることが必須であることが確認された。
【0062】
なお、本実施形態の塗面コート剤は、作業者が手作業によって塗面に塗布する場合のみならず、例えば、自動のワックス洗車機において自動車の塗面に噴射させて用いる場合においても、未処理の同塗面コート剤に比して持続性は向上する。
【0063】
なお、本発明は、前述の実施形態に限るものではない。例えば、前記処理コイルの無誘導巻き配置の構成は、本実施形態に限るものではない。
【0064】
また、収容容器2の側壁を前記処理コイル3の基板材3Aとして用い、処理容器2の外壁に導線を無誘導巻き配置にて形成するようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明の塗面コート剤の処理方法は、各種の塗面コート剤に応用でき、塗面コート剤の改質に適用できる。使用可能な塗装面は、前述の自動車ボディに限ること無く、船舶、航空機などのあらゆる車両の表面はもちろんのこと、建造物などの表面であってもよい。
【符号の説明】
【0066】
1 塗面コート剤処理装置
2 収納容器
3 処理コイル
3A 基板材
3B コイル支持棒
3C 導線
4 電源
4A 交流電源
4B、4C 整流回路
4D ホワイトノイズ発生器
4E 増幅器
図1
図2
図3
図4
図5