(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
建物の開口部に設けられる電動シャッターにおいては、シャフトに巻き取られたスラットを随時巻き出すとともに、スラットが全閉となった状態でリミットスイッチを作動させることで、電動開閉機を自動停止させる構成が知られている。
【0003】
このような電動シャッターにおいて、電気系統に故障が生じるなどしてリミットスイッチが正常に作動しない状況が生じると、スラットが全閉になっても電動開閉機が停止せずに駆動され続けてしまい、シャフトに対してスラットが逆方向に巻き取られるという不具合が生じることが懸念される。
【0004】
なお、「スラットの逆方向巻き込み」とは、通常の巻き出し方向を正方向とすると、シャッターが完全に閉まった状態にも関わらずスラットを巻き出しし続けることで、シャフトとスラットの固定部を境にスラットが裏返って正方向とは逆方向へシャフトに巻き取られる状態のことを言う。
【0005】
そこで、特許文献1に開示されるように、電動開閉機を緊急停止させるための構造を設けることが一般的に行われている(特許文献1参照。)。特許文献1では、スラット(シャッタースラット)の裏面にバネにより起立する突起体を設け、スラットが正常な全閉位置に達した後も電動開閉機が動き続けたときに、突起体にてスイッチ(アクチュエータ)を作動して緊急停止させる構成を開示している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に開示されるような技術では、スラット巻き取り時には、バネにより起立する突起体がシャフトとスラットの隙間に収納される必要がある。
【0008】
このため、スラットの形状によっては突起体の取付が困難となる場合が生じる。例えば、スラット形状が波形(波型スラット)などである場合には、突起体をシャフトとスラットに収納するための隙間を確保することができないといった課題が生じる。
【0009】
また、突起体をシャフトとスラットに収納させるために、スラットに対する突起体の取付位置が制限されるという課題が生じる。また、突起体の取付位置が制限されることで、スイッチを作動させるタイミングの設定にも制約が生じ、逆方向の巻き込みが開始された直後にスイッチを作動させる設定が困難な場合も生じ得る。
【0010】
また、他の課題として、特許文献1の構成では、スラットが降下中に障害物に接触し、スラットの降下が規制された場合の対策として、上述のスイッチとは別の障害物検知センサーなどを設ける必要が生じることになる。
【0011】
そこで、本発明は、以上の点に鑑み、スラットが逆方向に巻き込む不具合を生じさせないための、新規な構造について提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0013】
即ち、請求項1に記載のごとく、
スラットをシャフトに巻き取る方式のシャッターであって、
前記シャフトに設けられ、前記スラットが巻き出された際に出現する作用体と、
出現した前記作用体が作用する第一作用部を有する異常検知用スイッチと、を備
え、
前記作用体は、前記シャッターが全閉となるまでスラットが巻き出された際に出現するように、前記シャフトの
外周面の所定の位置に設けられ、
前記シャッターが全閉となった状態よりもさらに前記スラットが巻き出された際に、前記作用体が前記第一作用部に作用して前記異常検知用スイッチを作動させる構成とし、
前記シャッターが全閉となった後における、前記スラットの逆方向の巻き込みを防止する
構成とし、
前記作用体は、可撓性を有する板状部材にて構成される、シャッターとする。
【0018】
また、請求項
2に記載のごとく、
前記異常検知用スイッチは、前記シャフトの長手方向に間隔をあけて複数箇所に設けられ、
前記シャフトの長手方向の複数箇所において、
前記スラットの逆方向の巻き込みの検
知がなされる構成とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0020】
即ち、請求項1に記載の発明においては、シャッターの過剰な巻き出しを検知することが可能となる。
また、従来技術のように、スラット側に突起体を設ける構成でないため、突起体の収容や取付位置に関する問題が生じることがない。また、スラットの逆方向の巻き込みを防止することが可能となり、スラットの損傷や、巻取装置の内部の損傷などの不具合発生が防がれる。
【0025】
また、請求項
2に記載の発明においては、長手方向の一箇所に異常検知用スイッチを設けて異常検知をする場合と比較して、より確実に異常検知をすることが可能となる。このような構成は、例えば、シャフトの長さが長大であって、シャフトの一端側にのみ異常検知用スイッチを設けただけでは、シャフトの他端側でも逆方向の巻き込みが検知されにくい構成である場合に、特に有効なものとなる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図1及び
図2に示すように、シャッター1は、長尺のスラット10を複数連結してなる一枚のシャッターカーテン11と、シャッターカーテン11を巻き取り、巻き出すための巻取装置40とを有して構成される。
【0028】
シャッターカーテン11の上端は巻取装置40のシャフト20に連結されている。シャフト20は電動開閉機30によって正逆方向に回転駆動され、シャフト20の回転に応じて、スラット10(シャッターカーテン11)の巻き出し、又は、巻き取りが行われる。シャフト20は設置用の壁部4に固定された左右のブラケット60・61の間に回転可能に設けられ、一方のブラケット61には電動開閉機30が支持されている。
【0029】
シャッターカーテン11の幅方向の両端は、床部分から天井部分にかけて立設されるガイドレール2・3によってガイドされ、シャッターカーテン11を構成する各スラット10の横ずれがガイドレール2・3によって規制される。シャフト20及びシャフト20に巻き取られたスラット10は、ケース42(
図2参照)内に収容されるようになっている。
【0030】
図3は、シャッターが全閉となり正常な状態で停止した場合について示す側面図である。この場合、電動開閉機30に設けたリミットスイッチ31によって規定の回転数だけシャフト20が回転されることによって、シャッターカーテン11の下端部が床部分に当着停止し、開口部がシャッターカーテン11によって閉じられた状態となる。
【0031】
そして、シャフト20の下方には、例えば、リミットスイッチ31が作動しないという異常が生じ、シャッターが全閉となった状態よりもさらにスラット10が巻き出されたことを異常として検知するための異常検知用スイッチ50が設けられている。異常検知用スイッチ50は、ブラケット60・61(
図1参照)に横架される横架部材55に固定された支持部材56に取り付けられている。
【0032】
図4に示すごとく、異常検知用スイッチ50には、シャフト20に設けられ、スラット10が巻き出された際に出現する作用体22が作用する第一作用部51が設けられており、作用体22が第一作用部51に作用することで、異常検知用スイッチ50が異常を検知し、この異常が制御装置70又は別に設けられる図示せぬ制御盤へと出力されるようになっている。
【0033】
本実施例では、異常検知用スイッチ50の第一作用部51は、針金状の金属部材を屈曲させてなるレバー状スイッチにて構成され、異常検知用スイッチ50の本体部53に対して回動可能に構成される。また、作用体22は、可撓性を有する板状部材にて構成され、その一端がシャフト20の外周面に固定され、他端が自由端となって、
図4に示されるように、シャフト20に対して垂れ下げられつつ、第一作用部51を押圧し、第一作用部51を回動させるように構成されている。
【0034】
作用体22の具体的な構成については特に限定されるものではないが、
図4に示すごとく、異常検知用スイッチ50の第一作用部51を確実に回動させること、シャフト20の任意の位置に対して一端が固定されること、さらには、
図3に示すごとく、異常時以外は、スラット10とシャフト20の間でシャフト20に巻きつくように収容されて、スラット10を巻き取った際の巻き径(ロール径)に影響しない、或いは、ほとんど影響をしないこと(作用体22の厚みを、スラット10の巻き状態が、通常の巻き状態と比較して変わらない程度の厚みとすること)、といった要求が満たされることが好ましい。
【0035】
作用体22の実施形態としては、例えば、1mm〜3mm程度の厚みを有する横幅5cm〜10cm程度のコシのあるゴム板で構成することが考えられ、これによれば、上記の要求を満たした上で実施することが可能である。
【0036】
また、シャフト20に対する作用体22の固定の形態は特に限定されるものではなく、接着剤による接着、作用体22に熱を加えることによる溶着、固定部材を用いた固定などが考えられる。ただし、固定部材を用いる場合には、固定部材の存在がスラット10を巻き取った際の巻き径(ロール径)に影響しない、或いは、ほとんど影響をしないことが望ましい。
【0037】
また、作用体22は長期間スラット10とシャフト20の間において、シャフト20の表面に沿うようにカーブした状態で収容されることが想定されるが、作用体22の素材をゴム(樹脂製なども考えられる)とすることで、作用体22は出現した際に弾性復帰することになり、異常時においては、確実に
図4に示されるようにシャフト20から垂れ下げられることになって、第一作用部51に対して確実に作用することが可能となる。
【0038】
作用体22は、
図3に示すごとく正常な状態からさらにスラット10が巻き出されてしまい、
図4に示すごとくスラット10が過剰に巻き出された際の「要検知タイミング」において、第一作用部51に作用するようにシャフト20に対して設けられる。シャフト20に対する作用体22の取付位置を調整することで、必要とされる「要検知タイミング」が実現することができる。
【0039】
シャフト20に対する作用体22の固定位置は、シャフト20の全表面、即ち、360度の範囲で選択することができるため、「要検知タイミング」となった際に、瞬時に作用体22を第一作用部51に作用させる設定が可能となる。
【0040】
これにより、スラット10の過剰な巻き出しがなされ、逆方向の巻き込みが生じ得る状況となった際には、タイムラグがなく、瞬時に異常が検知され、この際に電動開閉機30を瞬時に停止させることで、過剰な巻き出しに伴うスラット10の逆方向の巻き込み、ひいてはこれに伴うスラット10の損傷や、巻取装置40の内部の損傷などの不具合発生が防がれる。
【0041】
仮に、上述した従来技術におけるスラット側に突起体を固定する構造では、突起体の取付位置が限定されるため、「要検知タイミング」となった際に、瞬時に異常を検知させることができずタイムラグが生じる可能性がある。本実施例によれば、このようなタイムラグの発生を防ぐことが可能となるのである。
【0042】
さらに、
図5に示すごとく、第一作用部51は、シャッターが全閉となる前のスラット10の降下中において、スラット10が障害物5との接触により、スラット10の降下が規制された際にスラット10の緩みが生じ、スラット10の一部に接触して異常検知用スイッチ50を作動させる構成とし、シャッターが全閉となる前における、スラット10の逆方向の巻き込みを防止する構成となっている。
【0043】
図5では、障害物5に対し、最下部に配置されるスラット10に設けた座板12が接触し、その後のスラット10の降下が規制された状態となった後に、さらに、シャフト20が回転することで、シャフト20及びスラット10を収容するケース42内において巻き出された余剰のスラット10によって巻き径(ロール径)が膨らんでしまった状態が示されている。
【0044】
そして、このような状態においては、スラット10が異常検知用スイッチ50の第一作用部51を押圧することで、異常検知用スイッチ50による異常検知が行われ、電動開閉機30の駆動が停止される。つまり、スラット10の膨らみ(巻き径(ロール径)の膨らみ)という異常が異常検知用スイッチ50によって検知されることになる。
【0045】
これにより、シャフト20及びスラット10を収容するケース42内において、スラット10の過剰な巻き出しが生じた際には、まずは、スラット10の膨らみを検知することでシャフト20の回転を停止させることができ、ひいては、シャフト20が回転し続けることによるスラット10の逆方向の巻き込みの不具合発生を防止することができる。
【0046】
また、
図6に示すごとく、本実施例の異常検知用スイッチ50は、シャッターが全開となった状態よりもさらにスラット10が巻き取られた際に、スラット10の一部に接触して異常検知用スイッチ50を作動させるための第二作用部52を有する構成とし、シャッターが全開となった後における、スラット10の過剰な巻き取りを防止することとしている。
【0047】
図6では、例えば、リミットスイッチ31(
図3)が作動しないという異常が生じ、シャッターが全開となった後もなお巻き取りが継続された状態を示しており、スラット10の下部に設けた座板12(スラット10の一部)が通常の設定位置を超え、異常な位置まで上昇してしまったことが示されている。
【0048】
このような状況では、座板12が第二作用部52を押し上げることで、異常検知用スイッチ50が異常を検知する。
【0049】
これにより、シャフト20(
図5参照)の回転を停止させることができ、シャフト20が回転し続けることに伴うスラット10の逆方向の巻き込み、ひいてはこれに伴うスラット10の損傷や、巻取装置40(
図5参照)の内部の損傷などの不具合発生が防がれる。
【0050】
なお、本実施例では、
図6に示すごとく、第一作用部51と第二作用部52が連動する構成となっており、いずれかの作用部が動作することによって異常を検知できるようになっている。
【0051】
これにより、異常検知用スイッチ50においては、一つのスイッチを設けることにより、巻き出しの際の異常検知と、巻き取り際の異常検知の両方を実現することができ、異常検知用スイッチ50についての製作コストを低廉とすることや、また、省設置スペースの実現などが可能となる。
【0052】
図7(A)(B)に示すごとく、異常検知用スイッチ50は、異常検知用スイッチ50の位置を調整可能な調整部材57・58に設けられることとしてもよい。本実施例では、横架部材55に連結される調整部材57と、この調整部材57に連結され異常検知用スイッチ50を載置する調整部材58を有して構成される。横架部材55に対する調整部材57の連結位置、調整部材57・58同士の連結位置は、それぞれ変更可能に構成されており、これにより、異常検知用スイッチ50のシャフト20に対する相対位置を
図7(A)(B)のように調整できるようになっている。
【0053】
これによれば、上述した「要検知タイミング」の設定において、シャフト20に対する作用体22の取付位置を調整することで、必要とされる「要検知タイミング」を実現することとするほか、異常検知用スイッチ50の位置を調整することによっても、「要検知タイミング」の設定をすることが可能となり、調整の自由度を高めることが可能となる。
【0054】
以上のように、本実施例では、スラット10をシャフト20に巻き取る方式のシャッターであって、シャフト20に設けられ、スラット10が巻き出された際に出現する作用体22と、出現した作用体22が作用する第一作用部51を有する異常検知用スイッチ50と、を備える、シャッターとするものである。
【0055】
この構成により、シャッターの過剰な巻き出しを検知することが可能となる。また、従来技術のように、スラット側に突起体を設ける構成でないため、突起体の収容や取付位置に関する問題が生じることがない。
【0056】
なお、余分な長さのスラットを設け、逆方向の巻き込まれたスラットにより異常検知用スイッチを作動させる構成も考えられるが、この場合、スラットを余分に設ける必要があるため、コストを要することになる。本発明によれば、余分な長さのスラットを設けずに、作用体を設けるだけであるため、製作コストを安価に抑えられ、また、シャッター全体としての軽量化を図られるという効果も得られる。
【0057】
さらに、作用体22は、シャッターが全閉となるまでスラット10が巻き出された際に出現するように、シャフト20の所定の位置に設けられ、シャッターが全閉となった状態よりもさらにスラット10が巻き出された際に、作用体22が第一作用部51に作用して異常検知用スイッチ50を作動させる構成とし、シャッターが全閉となった後における、スラット10の逆方向の巻き込みを防止することとするものである。
【0058】
この構成により、スラット10の逆方向の巻き込みを防止することが可能となり、スラット10の損傷や、巻取装置40の内部の損傷などの不具合発生が防がれる。
【0059】
さらに、
図8は、パイプ型スラット10Aを備えるシャッターの実施形態について示す図であり、このようなパイプ型スラット10Aの場合であっても、作用体22がシャフト20側にのみ固定される形態であり、さらに、作用体22をパイプ型スラット10A側に固定する必要がないため、本発明を実施することが可能である。
【0060】
同様に、
図9は、波型スラット10Bを備えるシャッターの実施形態について示す図であり、このような波型スラット10Bの場合であっても、作用体22がシャフト20側にのみ固定される形態であり、さらに、作用体22を波型スラット10B側に固定する必要がないため、本発明を実施することが可能である。
【0061】
このように、本発明によれば、スラットの形態を選ぶことなく、あらゆる形態のスラットについて適用可能である。また、上記のようにスラットを連結してシャッターカーテンが構成されるものの他にも、可撓性を有するシートにてシャッターカーテンを構成する「シートシャッター」についても、本発明は適用可能であり、過剰な巻き取りや、過剰な巻き出しとそれに伴う逆方向の巻き込みが生じた際において、シートに過剰な応力がかかることによるシートの破損や、過剰に巻き出されたシートの余剰部分が他の部位に接触して損傷するなどの不具合発生を防止することが可能となる。
【0062】
さらに、
図10(A)(B)に示すごとく、異常検知用スイッチ50は、シャフト20の長手方向に間隔をあけて複数箇所に設けられ、シャフト20の長手方向の複数箇所において、スラット10の逆方向の巻き込みの検知、及び/又は、スラットの過剰な巻き取りの検知がなされる構成とするものである。
【0063】
図10(A)は、シャフト20の複数箇所に作用体22Aを間隔をあけて取り付けるとともに、各作用体22を作用させる位置に、異常検知用スイッチ50を配置する例であり、この例によれば、各作用体22が個別に各異常検知用スイッチ50に作用して、異常検知が行われる。
【0064】
図10(B)は幅広の一つの作用体22Bをシャフト20に設けることとし、各異常検知用スイッチ50を一つの作用体22にて作動させることで、異常検知が行われる。
【0065】
このように、シャフト20の長手方向の複数箇所において異常検知がなされることで、シャフト20の長手方向の一箇所に異常検知用スイッチ50を設けて異常検知をする場合と比較して、より確実に異常検知をすることが可能となる。このような構成は、例えば、シャフト20の長さが長大であって、シャフト20の一端側にのみ異常検知用スイッチ50を設けただけでは、シャフト20の他端側でも逆方向の巻き込みが検知されにくい構成である場合に、特に有効なものとなる。
【0066】
また、以上の実施形態において説明した状況の他、例えば、災害時などにおいて、電動開閉機のブレーキが解除されてスラットを自重降下させる状況において、スラット全閉時のシャフトの回転惰性による逆方向の巻き込みや障害物に接触して巻き径の膨らみが生じたことを、異常検知用スイッチで検出させるという利用形態も考えられる。
【0067】
また、以上の実施形態は電動シャッターにて構成することとしたが、電動開閉機を設けない手動シャッターにおいて作用体と異常検知用スイッチを設けることにより、意図せぬスラットの逆方向の巻き込みが生じた場合に異常検知がなされる構成とすることも考えられる。