(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、
図18に示すように、対象物8において、ねじ7の締結対象となるねじ穴80に近接して、高さが比較的高い(例えば、59mmの)部品81が配置される場合がある。このようなねじ穴80にねじ7を締結する場合には、自動ねじ締め機と部品81との接触を回避する必要がある。
【0010】
しかしながら、
図16に示すような従来の自動ねじ締め機90においては、自動ねじ締め機90の先端部(ドライバビット93の先端部)の近傍にチャック95が移動する。したがって、チャック95、ホース99及び連結具97などの比較的大きな部位が、自動ねじ締め機90の先端部の近傍に位置する状態が生じる。このため、ねじ7を締める作業を行う場合に、自動ねじ締め機90のこれらの部位が、対象物8に配置された部品81と接触する可能性が高い。
【0011】
このような接触を回避するためには、自動ねじ締め機90の先端部の近傍にチャック95が移動するタイミングで、作業者が自動ねじ締め機90の全体を持ち上げる必要がある。しかしながら、作業者がこのような作業を行った場合には作業効率が大幅に低下するため、改善策が求められていた。
【0012】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、ねじ穴と部品とが近接する場合であっても、自動ねじ締め機と部品とを接触させることなく、ねじを締めることができる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するため、請求項1の発明は、自動ねじ締め機であって、直線的に延びる円筒状の外スリーブと、前記外スリーブの先端部とは逆側の基端部の近傍に設けられる供給口を介して、前記外スリーブの内部へねじを配送する配送部材と、前記外スリーブの内部における前記供給口から前記先端部までのいずれかの位置において、前記配送部材によって配送された前記ねじを保持する保持部材と、前記外スリーブの内部を前記先端部へ向かう方向に移動し、前記保持部材に保持された前記ねじと係合し、前記先端部から前記ねじの少なくとも軸部を突出させて前記ねじを締めるドライバビットと、
前記ドライバビットを内包し、エアの吸引により前記外スリーブの内部に吸引力を生じさせて、前記保持部材に保持された前記ねじを吸引により前記ドライバビットに接触させる内スリーブと、を備える。
【0014】
また、請求項2の発明は、請求項1に記載の自動ねじ締め機において、
前記内スリーブは、前記ドライバビットとともに前記外スリーブの内部を移動
する。
【0015】
また、請求項3の発明は、請求項2に記載の自動ねじ締め機において、前記保持部材は、前記外スリーブの先端部の近傍に設けられる。
【0016】
また、請求項4の発明は、請求項2または3に記載の自動ねじ締め機において、前記内スリーブの少なくとも一部の断面は、前記ドライバビットの外周の複数の位置に接触する形状である。
【0017】
また、請求項5の発明は、請求項1ないし4のいずれかに記載の自動ねじ締め機において、前記保持部材は、板バネである。
【0018】
また、請求項6の発明は、請求項1ないし5のいずれかに記載の自動ねじ締め機において、前記外スリーブの前記基端部が固定される筐体と、前記ドライバビットを回転するとともに、前記外スリーブの軸方向に沿って前記筐体の内部を移動する回転駆動源と、をさらに備えている。
【0019】
また、請求項7の発明は、請求項6に記載の自動ねじ締め機において、前記配送部材は、ねじ供給装置から前記自動ねじ締め機へのねじの供給経路となるホースと接続する接続配管、を備え、前記接続配管は、前記筐体における前記外スリーブが固定される側とは逆側に設けられる。
【0020】
また、請求項8の発明は、ドライバシステムであって、請求項1ないし7のいずれかに記載の自動ねじ締め機と、前記自動ねじ締め機の動作を制御する制御装置と、を備えている。
【0021】
また、請求項9の発明は、ねじ締め方法であって、(a)直線的に延びる円筒状の外スリーブの先端部とは逆側の基端部の近傍に設けられる供給口を介して、前記外スリーブの内部へねじを配送する工程と、(b)前記外スリーブの内部における前記供給口から前記先端部までのいずれかの位置
の保持部材において、前記工程(a)で配送された前記ねじを保持する工程と、(c)ドライバビットが前記外スリーブの内部を前記先端部へ向かう方向に移動し、前記工程(b)で保持された前記ねじと係合し、前記先端部から前記ねじの少なくとも軸部を突出させて前記ねじを締める工程と、
(d)前記ドライバビットを内包する内スリーブが、エアの吸引により前記外スリーブの内部に吸引力を生じさせて、前記保持部材に保持された前記ねじを吸引により前記ドライバビットに接触させる工程と、を備える。
【発明の効果】
【0022】
請求項1ないし9の発明によれば、外スリーブの先端部とは逆側の基端部の近傍に設けられる供給口を介してねじが供給され、ねじが外スリーブの内部に保持される。したがって、自動ねじ締め機の先端部の近傍に比較的大きな部位が配置されないため、ねじ穴と部品とが近接する場合であっても、自動ねじ締め機と部品とを接触させることなく、ねじを締めることができる。
また、ねじを吸引によりドライバビットに接触させる内スリーブが外スリーブの内部に設けられる。このため、外スリーブの内部に吸引力を生じさせることができ、保持部材に保持されたねじの姿勢を正してから、ドライバビットとねじとを接触させることができる。
【0024】
また、特に請求項3の発明によれば、保持部材が外スリーブの先端部の近傍に設けられるため、ねじがドライバビットと接触するまでにねじの姿勢を適切に正すことができる。
【0025】
また、特に請求項4の発明によれば、内スリーブの少なくとも一部の断面はドライバビットの外周の全体ではなく、外周の複数の位置に接触する形状である。このため、内スリーブは、ドライバビットの振動を抑制するとともに、吸引したエアを通すことができる。
【0026】
また、特に請求項5の発明によれば、保持部材が比較的軽い板バネであるため、自動ねじ締め機を軽量化することができる。
【0027】
また、特に請求項6の発明によれば、ドライバビットを回転する回転駆動源が、外スリーブの基端部が固定される筐体の内部を移動する。このため、外スリーブとドライバビットとを相対的に移動させる機構を筐体とは別に用意する必要がなく、自動ねじ締め機をコンパクトにすることができる。
【0028】
また、特に請求項7の発明によれば、接続配管が筐体における外スリーブが固定される側とは逆側に設けられるため、筐体を扱う際にねじの供給経路となるホースが邪魔にならない。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について説明する。
【0031】
<1.システム構成>
図1は、本実施の形態の自動ねじ締め機1を含むドライバシステム100の概略構成図である。ドライバシステム100は、自動ねじ締め機1とともに、制御装置50、ドライバコントローラ51、電磁弁52、及び、ねじ供給装置53を備えている。
【0032】
ドライバコントローラ51は、自動ねじ締め機1に含まれる電子部品の制御を行う。例えば、ドライバコントローラ51は、信号ケーブル51aを介して自動ねじ締め機1に電気信号を送信して、自動ねじ締め機1が備えるモータの回転及び停止を指示する。
【0033】
電磁弁52は、自動ねじ締め機1に係るエアの流れの制御を行う。電磁弁52は、自動ねじ締め機1に接続された複数のエアホース52aそれぞれのバルブを磁力を用いて開閉する。これにより、電磁弁52は、自動ねじ締め機1へのエアの加圧、及び、自動ねじ締め機1からのエアの吸引を制御する。エアの吸引(負圧の発生)は、真空発生器または真空ポンプを利用することで実行できる。
【0034】
ねじ供給装置53は、自動ねじ締め機1にねじを供給する。ねじ供給装置53は、エアの圧力を利用して、供給ホース53aを介してねじを自動ねじ締め機1に圧送する。ねじ供給装置53は、自動ねじ締め機1に連続的に複数のねじを供給することが可能である。
【0035】
制御装置50は、ドライバシステム100の全体を制御する。制御装置50は、例えば、プログラマブルロジックコントローラ(PLC)であり、プログラムに従って処理を行うことによって、ドライバコントローラ51、電磁弁52及びねじ供給装置53の動作を統括的に制御する。制御装置50は、ドライバコントローラ51の制御によるモータの回転あるいは停止、電磁弁52の制御によるエアの加圧あるいは吸引、及び、ねじ供給装置53によるねじの供給などのタイミングを調整して、自動ねじ締め機1の動作を制御する。
【0036】
自動ねじ締め機1は、制御装置50の制御によって所定の動作を行う。自動ねじ締め機1は、ねじ供給装置53からねじの供給を受け、モータによって回転するドライバビットを用いて、基板などの対象物にねじを連続的に締めることが可能である。
【0037】
<2.自動ねじ締め機の構成>
次に、自動ねじ締め機1の構成について説明する。以降の説明に用いる図は、自動ねじ締め機1の構成の把握を容易にするため、自動ねじ締め機1の断面の構成を示している。また、
図1に示すように、自動ねじ締め機1は通常その先端部を下側に向けて用いるため、以降の説明では、自動ねじ締め機1の先端部の側を「下」、その逆側を「上」という。
【0038】
図2及び
図3は、自動ねじ締め機1の全体構成を示す図である。図に示すように、自動ねじ締め機1は、ユーザとなる作業者が把持する筒状の筐体11を備えている。筐体11の下側の面は中央部に向かって傾斜しており、その下側の面の中央部には円筒状の外スリーブ12が突出するように設けられている。外スリーブ12は、上下方向に直線的に延びるように配置され、その基端部(上側の端部)が筐体11の内部に固定されている。したがって、外スリーブ12の先端部は下側に向けられる。
【0039】
また、筐体11は、シリンダとしての機能を備えており、その内部には円柱状の内部空間19が設けられている。この筐体11の内部空間19は、外スリーブ12の内部と連通している。そして、筐体11の内部空間19には、上下方向に往復移動するピストンロッド21が設けられている。
図2は、ピストンロッド21が移動可能範囲の上端まで移動した様子を示し、
図3は、ピストンロッド21が移動可能範囲の下端まで移動した様子を示している。
【0040】
筐体11の上側の面には、電磁弁52とエアホース52aを介して接続される2つの接続配管15,16が設けられている。ピストンロッド21は、電磁弁52の制御によって一方の接続配管15へのエアが加圧された場合には下側に移動し(
図3参照。)、他方の接続配管16へのエアが加圧された場合には上側に移動する(
図2参照。)。
【0041】
また、筐体11の内部空間19の上端には、接触を検知する接触センサ14が設けられている。接触センサ14は、ピストンロッド21が移動可能範囲の上端まで移動した場合に、ピストンロッド21と接触してオンとなる。接触センサ14がオンとなった場合は、その旨を示す電気信号が、信号ケーブル51a(
図1参照。)を介してドライバコントローラ51及び制御装置50に送信される。自動ねじ締め機1とドライバコントローラ51との間で電気信号を送信する信号ケーブル51aは、筐体11の上側の面に設けられる電気端子に接続される。
【0042】
ピストンロッド21は、その下側に、円筒状の内スリーブ22と、ねじと係合してねじを締めるドライバビット23とを備えている。内スリーブ22はドライバビット23を内包しており、これら内スリーブ22及びドライバビット23は上下方向に直線的に延びるように配置される。内スリーブ22の先端部及びドライバビット23の先端部も下側に向けられる。これらの内スリーブ22及びそれに内包されたドライバビット23は、外スリーブ12の内部をその軸方向に沿って移動することができる。
【0043】
また、ピストンロッド21は、その内部に、ドライバビット23を軸周りに回転する回転駆動源となるモータ24を備えている。ピストンロッド21が備える内スリーブ22、ドライバビット23及びモータ24の相対的な位置関係は固定されている。したがって、内スリーブ22、ドライバビット23及びモータ24は、外スリーブ12の軸方向(上下方向)に沿って一体的に往復移動する。モータ24は、筐体11の内部空間19を上下方向に移動することになる。
【0044】
モータ24は、ドライバコントローラ51からの電気信号に基づいて回転/停止する。また、モータ24は、その回転トルクをねじの締付トルクとして検出することが可能である。モータ24は、回転トルクが所定の閾値を超えた場合は、所定の電気信号であるトルクアップ信号を信号ケーブル51aを介してドライバコントローラ51及び制御装置50に送信する。
【0045】
内スリーブ22は、その先端部に吸引力を生じさせ、ねじを吸引によりドライバビット23に接触させる。
図4は、ピストンロッド21の下部を拡大して示す図である。前述のように、内スリーブ22はドライバビット23を内包している。そして、内スリーブ22の基端部(上側の端部)の近傍には、内スリーブ22の内部と連通する接続具25が取り付けられている。この接続具25は、筐体11の上側の面に設けられる接続配管26(
図2,
図3参照)及びエアホース52a(
図1参照。)を介して、電磁弁52に接続されている。電磁弁52の制御によりこれら接続具25、接続配管26及びエアホース52aを介したエアの吸引がなされることにより、内スリーブ22の先端部からエアの吸引が行われる。この吸引力によって、ねじが吸引されてドライバビット23の先端部にねじが接触する。
【0046】
また、ドライバビット23は基端部(上側の端部)のみが固定された状態で回転運動するため、ドライバビット23の先端部(下側の端部)の軸心は振動する可能性がある。内スリーブ22の内部にはドライバビット23の外周に接触して、このようなドライバビット23の振動を抑制する振動抑制部27が設けられている。このような振動抑制部27は、内スリーブ22の全体ではなく、軸方向の少なくとも一部に設けられればよい。本実施の形態では、振動抑制部27は、内スリーブ22の先端部(下側の端部)の近傍となる、先端部から所定の距離(例えば、10mm)離れた位置に所定の長さ(例えば、10mm)で設けられている。
【0047】
振動抑制部27は、内スリーブ22の断面の形状を変形して形成されたものである。
図5は、振動抑制部27における内スリーブ22の断面(
図4のV−V線における断面)の形状を示す図である。
【0048】
図5に示すように、振動抑制部27における内スリーブ22の断面は、ドライバビット23の外周の複数の位置に接触する形状となっている。具体的には、振動抑制部27には、ドライバビット23の外周に接触する複数の当接部27aが等角度で設けられている。これらの複数の当接部27aがドライバビット23の外周に接触することで、ドライバビット23の振動が抑制される。
【0049】
また、内スリーブ22は、ドライバビット23の外周の全体ではなく複数の位置に接触することから、ドライバビット23の外周と接触しない部分が存在する。したがって、このような接触しない部分とドライバビット23との相互間には空間27bが形成される。内スリーブ22の先端部から吸引したエアは、このような空間27bを介して通すことができる。したがって、内スリーブ22は、ドライバビット23の振動を抑制しつつ、先端部に吸引力を生じさせることができる。
【0050】
次に、
図2及び
図3に戻って説明する。自動ねじ締め機1は、筐体11の上下中央付近にユーザが操作可能な操作スイッチ13を備えている。ユーザは、自動ねじ締め機1を用いてねじ締め作業を行う場合には、この操作スイッチ13をオンとする。操作スイッチ13がオンとなった場合は、その旨を示す電気信号が、信号ケーブル51a(
図1参照。)を介してドライバコントローラ51及び制御装置50に送信される。この電気信号に応答して、制御装置50がドライバシステム100の制御を行うことにより、自動ねじ締め機1がねじを締めるための所定の動作を行うことになる。
【0051】
また、自動ねじ締め機1は、ねじ供給装置53から供給されたねじを受け取り、外スリーブ12の内部へねじを配送する配送部材4を備えている。配送部材4は、接続配管44と、内部パイプ43と、外部パイプ42と、スイングパイプ41とを備えている。
【0052】
接続配管44は、ねじ供給装置53からのねじの供給経路となる供給ホース53a(
図1参照。)と接続して、ねじを受け取る。接続配管44は、筐体11における外スリーブ12が固定される下側とは逆側の面である、筐体11の上側の面に設けられている。このように、接続配管44は筐体11の上側の面に設けられることから、ユーザが自動ねじ締め機1の筐体11を把持して作業を行う際に、供給ホース53aが邪魔になることが防止される。
【0053】
また、上述のように、エアホース52aと接続される接続配管15,16,26、及び、信号ケーブル51aと接続される電気端子も、筐体11の上側の面に設けられる。このため、エアホース52aや信号ケーブル51aが、ユーザの作業において邪魔になることも防止することができる。
【0054】
内部パイプ43は、筐体11の内部に、筐体11の上下方向に沿って設けられる。内部パイプ43は、その上側の端部に接続された接続配管44が受け取ったねじを、その下側の端部に接続された外部パイプ42まで配送する。外部パイプ42は、ゴムなどの弾性素材で構成される。外部パイプ42は、内部パイプ43からねじを受け取り、筐体11の外部を経由して、スイングパイプ41まで配送する。このような弾性素材の外部パイプ42を設けることで、揺動動作を行うスイングパイプ41に対して、ねじをスムーズに配送することができる。
【0055】
スイングパイプ41は、上側の端部が外部パイプ42に接続される一方、下側の端部は開放されている。スイングパイプ41は、この下側の端部から外スリーブ12の内部へねじを配送する。スイングパイプ41は、外スリーブ12の基端部の近傍から外スリーブ12の内側へねじを配送する。
【0056】
図6及び
図7は、外スリーブ12の近傍を拡大して示す図である。前述のように、外スリーブ12は、上下方向に直線的に延びるように配置される。そして、内スリーブ22及びドライバビット23は、この外スリーブ12の内部をその軸方向(上下方向)に沿って移動する。
図6は、内スリーブ22及びドライバビット23が移動可能範囲の上端まで移動した様子を示し、
図7は、内スリーブ22及びドライバビット23が移動可能範囲の下端まで移動した様子を示している。
【0057】
外スリーブ12の基端部(上側の端部)の近傍には、ねじ7を供給するための供給口12aが設けられている。この供給口12aは、筐体11の内部における筐体11の下側の面の近傍に位置する。
図6に示すように、スイングパイプ41の下側の端部は、この供給口12aから外スリーブ12の内部に侵入することができる。この状態で、スイングパイプ41は外スリーブ12の内部にねじ7を配送する。
【0058】
スイングパイプ41は、スイングパイプ41の上部に設けられる軸41aを中心に揺動できるように筐体11に対して支持されている。また、スイングパイプ41の下側の端部は、板バネ45によって、外スリーブ12の内部に侵入する方向に付勢されている。
【0059】
図6に示すように、内スリーブ22が移動可能範囲の上端に移動している場合は、スイングパイプ41の下側の端部は、板バネ45の付勢力により、供給口12aから外スリーブ12の内部に侵入する。一方で、
図7に示すように、内スリーブ22が下側へ移動して内スリーブ22がスイングパイプ41と接触すると、スイングパイプ41の下側の端部は、板バネ45の付勢力に逆らって供給口12aから外れた位置に移動する。
【0060】
この状態においては、
図7に示すように、スイングパイプ41は、その下側の端部に、外スリーブ12の内部に配送すべきねじ7を待機させることができる。この状態から再び、
図6に示すように、内スリーブ22が供給口12aよりも上側へ移動した場合は、板バネ45の付勢力によりスイングパイプ41の下側の端部が外スリーブ12の内部に侵入する。このため、スイングパイプ41の下端に待機させていたねじ7は、外スリーブ12の内部に投入されることになる。
【0061】
また、外スリーブ12の内部における、外スリーブ12の先端部の近傍には、ねじ7を保持する保持部材3が設けられている。スイングパイプ41から外スリーブ12の内部に投入されたねじ7は、この保持部材3によって保持される(
図6参照。)。
【0062】
図8は、保持部材3の構造を示す図である。保持部材3は、所定の形状に屈曲された4つの板バネ30で構成されている。
図8では、互いに対向する2つの板バネ30のみを示しているが、図面に直交する方向にも互いに対向する2つの板バネ30が存在している。
【0063】
これらの板バネ30の上端部は、環状の保持リング31によって外スリーブ12に固定されている。一方、板バネ30の下端部は固定されておらず、外スリーブ12の内部に配置されている。また、板バネ30はそれぞれ、外スリーブ12の軸方向に対して傾斜する2つの傾斜部3a,3bを備えている。
【0064】
このような保持部材3の下部の空間幅(4つの板バネ30の下端部同士の幅)は、ねじ7の頭部7aの径よりも狭くなっている。このため、保持部材3は、ねじ7を保持することができる。
図8に示すように、通常、保持部材3は、ねじ7の軸部7bが外スリーブ12の軸方向(上下方向)に沿うように保持する。ただし、ねじ7が傾いた姿勢(軸部7bが外スリーブ12の軸方向に沿わない姿勢)になったとしても、保持部材3がねじ7を保持できるように、保持部材3の下部の空間幅が調整されている。
【0065】
また、保持部材3の下部は、保持部材3と内スリーブ22とが接触することによって開放されるようになっている。
図9は、保持部材3の下部が開放される様子を示す図である。
【0066】
まず、内スリーブ22は、板バネ30の上側の第1傾斜部3aに接触する(状態ST1)。この状態ST1から内スリーブ22が下側へ移動すると、第1傾斜部3aが内スリーブ22に押圧されて板バネ30が外側へ弾性変形し、保持部材3の下部が開いていく。そして、内スリーブ22は、板バネ30の下側の第2傾斜部3bに接触する(状態ST2)。同様に、この状態ST2から内スリーブ22が下側へ移動すると、第2傾斜部3bが内スリーブ22に押圧されて板バネ30が外側へ弾性変形し、保持部材3の下部がさらに開くことになる。そして、最終的に、内スリーブ22が通過可能となるまで保持部材3の下部が開放されることになる(状態ST3)。
【0067】
また、この状態ST3から、内スリーブ22が上昇して、内スリーブ22と板バネ30とが接触しなくなると、保持部材3は、板バネ30の付勢力によって元の形状(状態ST1の形状)に戻ることになる。
【0068】
このように、保持部材3の下部は、板バネ30の2つの部分(第1傾斜部3a及び第2傾斜部3b)それぞれにおいて内スリーブ22と接触することで開放される。したがって、保持部材3の下部を開放する場合において、板バネ30において変形する箇所が一箇所に集中しない。このことから、比較的薄い厚み(例えば、0.1mm)の金属で構成される板バネ30の耐久性を大きく向上することができる。なお、外スリーブ12には、板バネ30が開いた場合に接触する位置に接触を避けるための溝を形成することが、外スリーブ12及び板バネ30の耐久性を向上させるために望ましい。
【0069】
このように、保持部材3は、外スリーブ12の内部における、外スリーブ12の先端部の近傍に設けられる。そして、保持部材3の下部が開放された場合であっても、保持部材3は、外スリーブ12の外径よりも広がることはない。また、
図6,
図7に示すように、配送部材4は、外スリーブ12の基端部の近傍に設けられる供給口12aを介して外スリーブ12の内部へねじ7を配送する。さらに、内スリーブ22及びドライバビット23は、外スリーブ12の内部をその軸方向に沿って移動する。
【0070】
したがって、自動ねじ締め機1の可動部材はいずれも、筐体11から露出する外スリーブ12の部分(供給口12aの直下から外スリーブ12の先端部まで)において、外スリーブ12の外径よりも外側に位置することはない。このため、
図18に示すようにねじ穴80に近接して部品81が配置される場合であっても、直線的に延びる外スリーブ12を挿入可能な空間がねじ穴80の直上にあれば、自動ねじ締め機1と部品81とを接触させることなくねじ7を締めることができる。
【0071】
外スリーブ12の外径D(
図6,
図7参照。)は、ねじ穴80と、ねじ穴80に近接して配置することが想定される部品81との距離に基づいて決定すればよい。例えば、外スリーブ12の外径Dは、8.6mmである。また、筐体11から露出する部分の外スリーブ12のサイズLは、ねじ穴80に近接して配置することが想定される部品81の最大の高さに基づいて決定すればよい。例えば、部品81の最大の高さが59mmであれば、外スリーブ12のサイズLは59mmより大きくすればよい。外スリーブ12のサイズLは、40mm以上80mm以下であることが望ましく、50mm以上70mm以下であることがさらに望ましい。
【0072】
これにより、ねじ穴80の直上に、外スリーブ12の外径Dよりも広い径、かつ、外スリーブ12のサイズLよりも短い長さの空間があれば、自動ねじ締め機1と部品81とを接触させることなくねじ7を締めることができることになる。
【0073】
<3.自動ねじ締め機の動作>
次に、自動ねじ締め機1の動作について説明する。前述のように、自動ねじ締め機1は、対象物8に対してねじ7を連続的に締めることが可能となっている。
図10は、自動ねじ締め機1の動作の流れを示す図である。
図10に示す自動ねじ締め機1の動作は、制御装置50の制御によって、繰り返し実行される。
【0074】
図10の動作の開始時点は、一のねじ7の締結が完了した時点としている。したがって、
図10の動作の開始時点においては、
図11に示すように、ピストンロッド21、並びに、ピストンロッド21に含まれる内スリーブ22及びドライバビット23が移動可能範囲の下端まで移動している。また、スイングパイプ41の下側の端部は、内スリーブ22に押圧されて供給口12aから外れた位置に移動しており、スイングパイプ41の下側の端部には次に締結すべきねじ7が待機している。
【0075】
この
図11に示す状態から、まず、ピストンロッド21が上側への移動を開始する(ステップS11)。ピストンロッド21は、電磁弁52が接続配管16へのエアの加圧を開始することによって上側に移動する。これにより、内スリーブ22及びドライバビット23も、外スリーブ12の内部を上側に移動する。
【0076】
そして、内スリーブ22の先端部が供給口12aよりも上側へ移動すると、
図12に示すように、内スリーブ22によるスイングパイプ41の押圧が解放され、板バネ45の付勢力によってスイングパイプ41の下側の端部が供給口12aから外スリーブ12の内部に侵入する。これにより、スイングパイプ41は、その下側の端部に待機させていたねじ7を、外スリーブ12の内部に配送する(ステップS12)。外スリーブ12の内部に配送されたねじ7は、外スリーブ12の先端部に近傍にある保持部材3によって保持される。
【0077】
ピストンロッド21が、移動可能範囲の上端まで移動すると(ステップS13にてYes)、接触センサ14がオンとなり、その旨を示す電気信号が制御装置50に送信される。制御装置50は、この電子信号により、ピストンロッド21が上端へ移動したことを検出する。この時点で、電磁弁52が接続配管16へのエアの加圧を停止し、ピストンロッド21の上側への移動が停止される。
【0078】
次に、制御装置50は、自動ねじ締め機1からの電気信号に基づいて、操作スイッチ13がオンとなっているか否かを判定する。
【0079】
そして、操作スイッチ13がオンの場合は(ステップS14にてYes)、ピストンロッド21が下側への移動を開始する(ステップS15)。ピストンロッド21は、電磁弁52が接続配管15へのエアの加圧を開始することによって下側に移動する。これにより、内スリーブ22及びドライバビット23も、外スリーブ12の内部を下側、すなわち、外スリーブ12の先端部へ向かう方向へ移動する。この時点で、モータ24の駆動力を受け、ドライバビット23が所定方向への回転を開始する。これとともに、電磁弁52の制御により接続配管26からのエアの吸引が開始されることで、内スリーブ22の先端部からエアの吸引が開始される。
【0080】
そして、内スリーブ22の先端部が供給口12aよりも下側へ移動すると、内スリーブ22が供給口12aを塞ぐことで、内スリーブ22の先端部より下側となる外スリーブ12の内部においても、内スリーブ22の先端部への吸引力が生じる。この吸引力を受けて、
図13に示すように、保持部材3に保持されていたねじ7が保持部材3から浮き上がり、外スリーブ12の内部を上昇してドライバビット23の先端部に接触する。ドライバビット23は回転しているため、ドライバビット23の先端部は回転しながら、接触したねじ7の頭部の溝と係合することになる(ステップS16)。このようにドライバビット23がねじ7と接触する際においては、ねじ7の周囲のエアの流量を均等にする力が働き、ねじ7の姿勢が正される。すなわち、ねじ7は、エアの流れによって軸部7bが外スリーブ12の軸方向に沿う姿勢に正され、この姿勢でドライバビット23の先端部に接触することになる。
【0081】
また、内スリーブ22の下側への移動により内スリーブ22がスイングパイプ41と接触すると、内スリーブ22がスイングパイプ41を押圧して、スイングパイプ41の下側の端部が供給口12aから外れた位置に移動する。この時点で、次に締結対象となるねじ7がねじ供給装置53から自動ねじ締め機1に供給される。供給されたねじ7はスイングパイプ41の下端に待機される。
【0082】
内スリーブ22及びドライバビット23がさらに下側へ移動すると、
図14に示すように、内スリーブ22の先端部が保持部材3に接触する。そして、内スリーブ22は、保持部材3と接触しつつ下側へ移動することにより、保持部材3の下部を開放する(ステップS17)。これにより、ねじ7を係合したドライバビット23は、ねじ7とともに保持部材3の位置を通過する。
【0083】
そして、ドライバビット23はさらに下側へ移動して、最終的に、外スリーブ12の先端部からねじ7を突出させる。この際、ドライバビット23は、ねじ7を締結できるように、少なくともねじ7の軸部を外スリーブ12の先端部から突出させればよい。もちろん、ドライバビット23は、ねじ7の全体を外スリーブ12の先端部から突出させてもよい。
【0084】
そして、
図15に示すように、外スリーブ12の先端部からねじ7が突出された状態で、ユーザが自動ねじ締め機1の先端部のねじ7を対象物8のねじ穴80に押し当てることで、対象物8にねじ7が締められる(ステップS18)。
【0085】
そして、ねじ7の締付トルク(すなわち、モータの回転トルク)が所定の閾値を超えた場合は、モータ24からトルクアップ信号が制御装置50に送信される。制御装置50は、このトルクアップ信号に基づいて、ねじ7の締結が完了したことを検出する(ステップS19)。この時点で、ドライバビット23の回転が停止されるとともに、内スリーブ22の先端部からのエアの吸引、及び、接続配管15へのエアの加圧が停止される。その後、動作はステップS11に戻り、上記の動作が繰り返されることになる。
【0086】
以上のように、本実施の形態の自動ねじ締め機1は、直線的に延びる円筒状の外スリーブ12を備えている。配送部材4は、外スリーブ12の先端部とは逆側の基端部の近傍に設けられる供給口12aを介して外スリーブ12の内部へねじを配送する。また、保持部材3は、外スリーブ12の内部における先端部の近傍の位置において、配送部材4によって配送されたねじ7を保持する。そして、ドライバビット23は、外スリーブ12の内部を先端部へ向かう方向に移動しつつ保持部材3に保持されたねじ7と係合し、外スリーブ12の先端部からねじ7の少なくとも軸部を突出させてねじ7を締めるようになっている。
【0087】
このように、自動ねじ締め機1では、外スリーブ12の基端部の近傍に設けられる供給口12aを介してねじ7が供給されるとともに、ねじ7が外スリーブ12の内部に保持される。したがって、自動ねじ締め機1の動作中において、自動ねじ締め機1の先端部の近傍に比較的大きな部位が配置されない。このため、ねじ穴80と部品81とが近接する場合であっても、自動ねじ締め機1と部品81とを接触させることなく、ねじ7を締めることができる。
【0088】
また、ねじ7を吸引によりドライバビット23に接触させる内スリーブ22が外スリーブ12の内部に設けられる。このため、外スリーブ12の内部に吸引力を生じさせることができ、保持部材3に保持されたねじ7の姿勢を正してから、ドライバビット23とねじ7とを接触させることができる。また、保持部材3からねじ7を浮かせてからドライバビット23と接触させるとともに、内スリーブ22が保持部材3を開放することから、金屑の発生を抑制することができる。従来技術のように、チャックに保持された状態のねじ7とドライバビットとを係合した場合(
図17の状態ST92)には、チャックとねじとの摩擦により金屑が発生することになる。
【0089】
また、保持部材3が比較的軽い板バネ30で主に構成されるため、従来の自動ねじ締め機が備えるチャック等と比較して、保持部材3を大幅に軽量化することができる。また、従来の自動ねじ締め機ではチャック等がねじ7を正しい姿勢で保持する必要がある。これに対して、本実施の形態の自動ねじ締め機1では保持部材3からドライバビット23にねじ7を受け渡す際にねじ7の姿勢を正すことができるため、保持部材3は必ずしもねじ7を正しい姿勢で保持する必要はない。このため、保持部材3として、本実施の形態のような複数の板バネを組み合わせた構造などの簡便な構造を採用することができる。
【0090】
また、ドライバビット23を回転する回転駆動源であるモータ24が、外スリーブ12の基端部が固定される筐体11の内部を移動する。このため、従来技術のように、外スリーブ12とドライバビット23とを相対的に移動させる機構(
図16に示すエアシリンダ96など)を筐体11とは別に用意する必要がなく、自動ねじ締め機1をコンパクトにすることができる。また、ピストンロッド21がモータ24を内蔵しているため、ピストンとモータとを別部品として連結する場合と比較して、連結部材を削減でき、自動ねじ締め機1をコンパクトにすることができる。
【0091】
<4.変形例>
以上、本発明の実施の形態について説明してきたが、この発明は上記実施の形態に限定されるものではなく様々な変形が可能である。以下では、このような変形例について説明する。上記実施の形態及び以下で説明する形態を含む全ての形態は、適宜に組み合わせ可能である。
【0092】
上記実施の形態では、自動ねじ締め機1は、外スリーブ12の先端部を下側に向けて用いるものとして説明を行ったが、外スリーブ12の先端部を水平方向など、下側以外に向けて用いてもよい。外スリーブ12の先端部を下側以外に向けて用いたとしても、エアの流れによって、ねじ7は軸部7bが外スリーブ12の軸方向に沿う姿勢でドライバビット23の先端部に接触することになる。
【0093】
また、上記実施の形態では、ユーザが把持して自動ねじ締め機1を用いるものとして説明を行ったが、所定の動作を行うロボットなどに固定して上記の自動ねじ締め機1を用いるようにしてもよい。
【0094】
また、上記実施の形態では、保持部材3は、外スリーブ12の先端部の近傍に設けられていたが、外スリーブ12の内部における供給口12aの直下から先端部までであれば、いずれの位置に設けられてもよい。ただし、エアの流れによってねじ7の姿勢を適切に正すためには、保持部材3に保持されたねじ7がドライバビット23に接触するまでの距離が十分に離れていることが望ましい。このため、上記実施の形態のように、保持部材3が外スリーブ12の先端部の近傍に設けられることが好ましい。
【0095】
また、上記実施の形態では、保持部材3が板バネ30で主に構成されていたが、樹脂などの他の材質で構成されてもよい。保持部材3は、内スリーブ22との接触/非接触により開閉できるように、弾性材であることが好ましい。