(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記プロセスガス流路の高さが、測定条件から決められた高さと異なることが検知された時に、前記プロセスガス流路に供給する前記プロセスガスの流量を制御する制御部を有することを特徴とする請求項1に記載の気相成長装置。
前記プロセスガス流路の高さが前記測定条件から決められる高さ±10%の範囲を超えた時に、前記制御部により前記プロセスガスの流量を制御させることを特徴とする請求項5〜請求項7のうちのいずれかの請求項に記載の気相成長装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に開示されているMOCVD装置においては、原料ガスが流れる流路は、サセプタと、石英製のサセプタカバーと、石英製の天井板により形成されている。
原料ガスを含むプロセスガスが流れる流路(以降、プロセスガス流路と称する)の高さは、プロセスガス流路に供給されるプロセスガスの総流量から基板上に到達するプロセスガス流速を算出する上で重要なファクターである。当該流速を参考にして、チャンバー1内に導入するプロセスガスの最適な流量を決めることができる。
【0008】
しかしながら、発明者らの検討により、同じMOCVD装置を用いて成膜しても、成膜プロセス中に経時的にプロセスガス流路の高さが変動してしまうことが判明した。特に、プロセスガス流路の高さの変動は、基板の交換前後に生じることが多い。
プロセスガス流路の高さが経時的に変動するとプロセスガスの流速が変動することになり、半導体薄膜の膜質等の再現性を劣化させることになる。また、同じMOCVD装置を複数用いて同じ半導体薄膜を成膜する場合、MOCVD装置間の成膜条件のばらつき(機差)を増大させてしまう問題があった。
【0009】
そこで本発明は、プロセスガス流路の高さの変動を常時把握することが可能な気相成長装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、請求項1に係る発明によれば、チャンバーと、前記チャンバー内に
回転軸を中心として回転可能に設けられた
円盤状のサセプタと、前記サセプタ
と平行となるように当該サセプタの上面と相互に間隔をあけて
、前記回転軸と同軸上に対向して配置され
た対向板と
、前記サセプタと前記対向板との間の空間であるプロセスガス流路と、前記サセプタの
中央側の上方に設けられ、プロセスガスを前記プロセスガス流路
の中央側から外周側に向けて吹き出させるノズルと、前記サセプタと前記対向板との
前記回転軸方向の前記間隔
を前記プロセスガス流路の高さ
として測定する流路高さ測定手段と、を具備してなり、前記流路高さ測定手段は、前記対向板の
前記回転軸方向の高さの位置を取得する第1レーザ測長機と、前記サセプタの
前記回転軸方向の高さの位置を取得する第2レーザ測長機と、前記対向板の
前記回転軸方向の高さの位置と前記サセプタの
前記回転軸方向の高さの位置との差分から前記プロセスガス流路の流路高さを決定する計算部と、から構成されることを特徴とする気相成長装置が提供される。
【0011】
また、請求項2に係る発明によれば、前記対向板が、前記ノズル上に配置された対向板受台に支持されており、前記第1レーザ測長機は、前記対向板受台の上面の
、前記回転軸方向の高さの位置を測定するものであることを特徴とする請求項1に記載の気相成長装置が提供される。
【0012】
また、請求項3に係る発明によれば、基板は、前記サセプタに載置されており、前記第2レーザ測長機は、前記基板の上面の
、前記回転軸方向の高さの位置を測定するものであることを特徴とする請求項1に記載の気相成長装置が提供される。
【0013】
また、請求項4に係る発明によれば、前記第1レーザ測長機は、前記対向板の
、前記回転軸方向の高さ
の位置を測定するものであることを特徴とする請求項1に記載の気相成長装置が提供される。
【0014】
また、請求項5に係る発明によれば、前記プロセスガス流路の高さが、測定条件から決められた高さと異なることが検知された時に、前記プロセスガス流路に供給する前記プロセスガスの流量を制御する制御部を有することを特徴とする請求項1に記載の気相成長装置が提供される。
【0015】
また、請求項6に係る発明によれば、前記制御部は、前記プロセスガスの流速を増減させることにより、前記プロセスガスの流量を制御するものであることを特徴とする請求項5に記載の気相成長装置が提供される。
【0016】
また、請求項7に係る発明によれば、前記対向板が、前記制御部と接続された対向板昇降機構に連結されており、前記制御部は、前記対向板昇降機構によって、前記対向板の
、前記回転軸方向の高さ
の位置を制御して前記流路の高さを変更することにより、前記プロセスガスの流量を制御するものであることを特徴とする請求項5または請求項6に記載の気相成長装置が提供される。
【0017】
また、請求項8に係る発明によれば、前記プロセスガス流路の高さが前記測定条件から決められる高さ±10%の範囲を超えた時に、前記制御部により前記プロセスガスの流量を制御させることを特徴とする請求項5〜請求項7のうちのいずれかの請求項に記載の気相成長装置が提供される。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、対向板の高さ方向の位置が第1レーザ測長機により取得されるとともに、サセプタの高さ方向の位置が第2レーザ測長機により、取得される。また、対向板の高さ方向の位置とサセプタの高さ方向の位置との差分からプロセスガス流路の高さが計算部で決定される。これにより、種々の外的要因により生じるMOCVD装置のプロセスガス流路の高さの変動を常時検知できる。特に、基板の交換前後に生じることが多いプロセスガス流路の高さの変動も確実に検知できる。
結果として、プロセスガス流路の高さの変動に起因する経時的な半導体薄膜の再現性の低下を防止できる。また、MOCVD装置間の成膜条件のばらつきの増大を防ぐことができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を適用した気相成長装置について、
図1及び
図2を参照し、説明する。なお、以下の説明で用いる図面は模式的なものであり、長さ、幅、および厚みの比率等は実際のものと同一とは限らない。
【0021】
(第1実施形態)
本発明を適用した
図1に示すMOCVD装置(気相成長装置)200の構成について、説明する。
【0022】
本実施形態のMOCVD装置200は、チャンバー1と、中空回転機構をなす中空シャフト2と、サセプタ3と、対向板4と、対向板4を支える対向板受台46と、プロセスガス供給管5と、ノズル16と、流路高さ測定手段40と、を有する。
【0023】
チャンバー1は、化学気相成長により基板50上に半導体薄膜を成膜するための反応炉である。例えば、チャンバー1は、
図1に示すように、反応炉の蓋である上部チャンバー1Aと、反応炉の容器である下部チャンバー1Bと、を有する。
【0024】
上部チャンバー1Aは、成膜中は下部チャンバー1Bに密着しているが、成膜間における基板50やサセプタ3の脱着時には、図示略の上部チャンバー駆動機構により、上方に持ち上げられる。
【0025】
下部チャンバー1Bは固定されている。また、下部チャンバー1Bは、上部チャンバー1Aとの密着時に、MOCVD法による半導体薄膜の成膜が行われる空間を形成する凹部を有する。また、下部チャンバー1Bには、
図1に示すようなサセプタ昇降機構12が設けられている。サセプタ3の着脱時には、サセプタ昇降機構12により、サセプタ3が下部チャンバー1Bの上面より上方に持ち上げられた後、着脱される。なお、サセプタ昇降機構12は省略してもよい。
チャンバー1の材質には、耐食性に優れたステンレスを用いることができる。
【0026】
中空シャフト2は、回転可能な状態でチャンバー1の中央に設けられ、サセプタ3に接続されている。具体的には、
図1に示すように、中空シャフト2は下部チャンバー1Bの底面中央から上下方向に突出して設けられている。中空シャフト2には、図示略の回転機構が接続されており、中空シャフト2を回転させることでサセプタ3を回転できるようになっている。
中空シャフト2の材質には、ステンレスを用いることができる。
【0027】
サセプタ3は、チャンバー1内に回転可能に設けられている。具体的には、
図1に示すように、円盤状のサセプタ3の内周部分が中空シャフト2の上端部2aに接合されている。このような構成により、サセプタ3が中空シャフト2の回転により、下部チャンバー1Bの凹部空間内で回転する。
サセプタ3の材質には、例えばSiCコートカーボンを用いることができる。また、サセプタ3の材質にSiCコートカーボンを用いる場合には、SiCコートカーボンに石英からなるカバーが設けられる。
【0028】
サセプタ3には、周方向に間隔を隔てて複数の開口部7が設けられている。開口部7は等間隔に設けてもよく、非等間隔に設けてもよい。
各開口部7には、図示略のステージが回転可能に設けられる。具体的には、開口部7に、自転用モータ、あるいは歯車部材等の回転機構が設けられる。ステージは、開口部7に設けられた回転機構に嵌合されることにより、サセプタ3上で回転する。
【0029】
基板50は、成膜面50aを上にしてサセプタ3の外周方向に設置される。具体的には、基板50は、各開口部7のステージ上に載置される。
【0030】
基板50の材料としては、成膜する半導体薄膜の原料に適合する半導体が選択される。成膜する半導体薄膜が窒化ガリウムである場合には、サファイア基板、あるいはシリコン基板を用いることができる。
また、基板50としては、例えば直径4インチ〜8インチの半導体基板を用いることができる。ステージ及び開口部7の直径は、基板50の直径より大きく設定されるため、ステージ、サセプタ3、チャンバー1の大きさは、基板50の大きさによって決まる。基板50の直径が大きくなる程、ステージ、サセプタ3、チャンバー1が大きくなり、MOCVD装置200が大型化する。
【0031】
MOCVD装置200で基板50の成膜面50aに薄膜を気相成長させる際には、中空シャフト2を所定速度で回転させてサセプタ3を回転させると、このサセプタ3の回転と連動して開口部7の(図示しない)基板保持部材が自転し、これによって基板50が自公転する状態となる。
【0032】
チャンバー1には、加熱手段8が設けられている。具体的には、
図1に示すように、サセプタ3の開口部7の下方に電熱ヒータ等が設置される。MOCVD法は、気相エピタキシャル成長法(気相エピタキシー)であって、原料となる有機金属を気相で反応領域まで運び、反応領域において有機金属に熱エネルギーを与え、該熱エネルギーを与えられた有機金属が熱分解反応することで、基板の表面に結晶を成長させる方法である。
【0033】
対向板4は、サセプタ3の上面3aと相互に間隔をあけて対向して配置されている。具体的には、
図1に示すように、対向板受台46に支持されて設けられている。
対向板受台46は、次に説明するプロセスガス供給管5のパージガス供給路13内の支持部(図示略)の上端に設置されている。また、対向板4は、サセプタ3とともにプロセスガス流路15を区画形成する。なお、対向板受台46の設置箇所及び支持方法は、サセプタ3との間にプロセスガス流路15を形成するように対向板4を支持できれば、前述の支持部上端に限定されない。対向板受台46の設置箇所及び設置方法によっては、支持部を省略できる。
対向板4の材質には、石英を用いることができる。
【0034】
プロセスガス供給管5は、
図1に示すように、中空シャフト2の中部に挿入されて、その先端がチャンバー1内に達している。
図2は、前記先端及び後に詳しく説明するノズル16周辺の拡大断面図である。
また、プロセスガス供給管5は、
図2に示すように多重管構造を有している。すなわち、内管5Aと外管5Bで構成されている。外管5Bは、中空シャフト2の内管から離間しており、中空シャフト2と外管5Bとの間に隙間が設けられている。この隙間が後述するアンモニアガス供給路11Aとなる。また、内管5Aの内部がパージガス供給路13となり、内管5Aと外管5Bとの間の隙間が有機金属ガス供給路11Bとなる。
【0035】
成膜する半導体薄膜が窒化ガリウムである場合には、化学気相成長における原料として、有機金属とアンモニアを用いる。これらの原料はそれぞれ、有機金属ガス供給路11Bと、アンモニアガス供給路11Aと、を介してチャンバー1内に供給される。
常温では液体又は固体である有機金属は、水素、窒素等をキャリアガスに用いた恒温下でのバブリングにより、半導体薄膜の成膜に充分な量の有機金属ガスとして生成される。
【0036】
有機金属ガス供給路11Bには、
図1に示すように、プロセスガス供給管5の下部のプロセスガス導入部5dより、バブリングにて生成された有機金属ガスと、水素と窒素からなるキャリアガスとの混合ガスが導入される。また、アンモニアガス供給路11Aには、アンモニアガスとキャリアガスとの混合ガスが導入される。
また、
図2に示すように、有機金属ガス供給路11Bとアンモニアガス供給路11Aとを区画する外管5Bの内部には、アンモニアガス供給路11A、有機金属ガス供給路11Bの温度を調整するための温度調整流体を流通させる温度調整流路14が設けられている。なお、温度調整流路14は省略してもよい。
【0037】
パージガス供給路13には、プロセスガス導入部5dよりパージガスが導入される。パージガスは、中空シャフト2とプロセスガス供給管5との間の空隙からチャンバー1内に不純物が侵入する、あるいは、チャンバー1から原料ガスが外部に漏れることを防ぐ。
前述のように、原料ガスとして有機金属ガスとアンモニアガスが用いられる場合、パージガスとしては、例えば窒素を用いることができる。
MOCVD装置200におけるプロセスガスとは、上記の原料ガス、キャリアガス等、半導体薄膜の化学気相成長による成膜を行うために用いられるガスのことをいう。
【0038】
内管5Aは、その先端部5A
1が対向板4に平行になるように折り曲げられてプロセスガス流路15に向けられている。同様に、外管5Bは、その先端部5B
1が内管5Aの先端部5A
1に沿って折り曲げられてプロセスガス流路15に向けられている。これにより、プロセスガス供給管5を通じてチャンバー1に向けて上昇してきた各ガスがそれぞれプロセスガス流路15に向けて供給されるようになっている。
なお、内管5A及び外管5Bは、
図1に示すように中空シャフト2と接続せずに回転停止状態で設置されてもよく、中空シャフト2と接合されて中空回転機構によりサセプタ3と同期して回転可能に設置されてもよい。
【0039】
具体的には、先端部5A
1と対向板4との間には、パージガス供給路13に連通する隙間が設けられており、この隙間のプロセスガス流路15側にパージガスノズル16aが形成されている。また、内管5Aと外管5Bとの間の有機金属ガス供給路11Bが、各先端部5A
1,5B
1によってプロセスガス流路15に向けられており、この有機金属ガス供給路11Bの出口が有機金属ガスノズル16bとなっている。さらに、先端部5B
1とサセプタ3との間には、アンモニアガス供給路11Aに連通する隙間が設けられており、その隙間のプロセスガス流路15側にアンモニアガスノズル16cが形成されている。これらの各ノズル16b,16cをこのように形成することにより、各ガスが各ノズル16b,16cの中心から放射状に拡がって流れ、かつ、プロセスガス流路15に供給されるプロセスガスの流れを円滑にすることができる。そのため、各基板50の成膜面50aに均一に原料ガスを供給することが可能になる。
【0040】
また、パージガス供給路13は、対向板4に突き当たった後、対向板受台46と先端部5A
1との間の隙間に連通している。その隙間のプロセスガス流路15側にパージガスノズル16aが形成されている。これにより、パージガスはプロセスガスと同様にノズル16の中心から放射状に拡がって流れる。その後、吹き出された各ガスがプロセスガス流路15内において相互に拡散し、各ガスが基板50上で反応する。以降では、ノズル16a,16b,16c全体を示す際には、単に「ノズル16」と記載する。
【0041】
プロセスガス流路15に吹き出されたプロセスガスは、化学反応により基板50の成膜面50aに堆積して半導体薄膜を形成する。円盤状のノズル16の延在方向が、基板50の成膜面50aと平行であるとともに、前述のように基板50が自公転することにより、成膜面50aに均一な膜厚の半導体薄膜が形成される。半導体薄膜の形成に用いられなかった残りのプロセスガスは、下部チャンバー1Bに設けられたガス排出部27から、チャンバー1の外に排出される。
【0042】
ノズル16の合計の高さBは、
図2に示すように、プロセスガス流路15へのプロセスガスの流速を制御する。MOCVD装置200における高さBは、周方向でほぼ一定になるように設計されている。
【0043】
流路高さ測定手段40は、第1レーザ測長機41と第2レーザ測長機42から構成されている。
図1に示すように、第1レーザ測長機41は、対向板4の高さ方向の位置を取得する。具体的には、第1レーザ測長機41は、対向板受台46の上方に設けられており、対向板受台46の上面46aの位置を測定する。また、第2レーザ測長機42は、基板50またはサセプタ3の上方に設けられ、サセプタ3の高さ方向の位置を取得する。
【0044】
図示しない計算部43は、第1レーザ測長機41により取得された対向板4の高さ方向の位置と、第2レーザ測長機42により取得されたサセプタ3の高さ方向の位置との差分から、
図1に示すプロセスガス流路15の高さYを決定する。
【0045】
具体的には、第1及び第2のレーザ測長機41,42は、
図1に示すように、上部チャンバー1A外部に設けられた天板45に設置されている。これにより、第1及び第2のレーザ測長機41,42は、同一の高さに位置することになる。第1及び第2のレーザ測長機41,42のレーザ出射部が同一の高さになる場合は、第1レーザ測長機41により取得された対向板4の高さ方向の位置と、第2レーザ測長機42により取得されたサセプタ3の高さ方向の位置との差分が、プロセスガス流路15の高さYとなる。
【0046】
なお、第1及び第2のレーザ測長機41,42の設置位置は
図1に示す位置に限定されない。第1レーザ測長機41の設置位置と第2レーザ測長機42の設置位置の高さに差がある場合は、計算部43にその高さの差を予め入力しておくことが好ましい。これにより、プロセスガス流路15の高さYを正確に決定することができる。
また、対向板4の上面4aと対向板受台46の上面46aとの高さに差がある場合は、第1レーザ測長機41により取得された対向板受台46の高さ方向の位置と、第2レーザ測長機42により取得されたサセプタ3の高さ方向の位置との差分から、対向板4の上面4aと対向板受台46の上面46aとの高さ方向の差を引いた値が、プロセスガス流路15の高さYとなる。
【0047】
第1及び第2のレーザ測長機41,42には、一般に使用されているレーザ測長機、レーザ変位計を用いることができる。また、第1及び第2のレーザ測長機41,42の距離分解能は、プロセスガス流路15の高さYを決定する精度を勘案して設定することが好ましい。
【0048】
第1及び第2のレーザ測長機41,42は、例えば可視域のレーザ光を
図1に示す高さ方向の下方に向けて出射し、対向板4あるいはサセプタ3での正反射により戻ってくるレーザ光を受光することにより、対向板4の高さ方向の位置及びサセプタ3の高さ方向の位置を取得する。
したがって、第1及び第2のレーザ測長機41,42の直下の上部チャンバー1Aには、
図1に示すように、第1窓61と第2窓62が設けられている。第1及び第2の窓61,62は、例えば石英で構成される。第1及び第2の窓61,62の材質として、石英のように透明度の高い材質を用いることにより、プロセスガス流路15の高さYを決定するための第1及び第2のレーザ測長機41,42のそれぞれにおける対向板4の高さ方向の位置及びサセプタ3の高さ方向の位置の取得精度が高くなる。
【0049】
第1レーザ測長機41は、
図1に示すように、対向板4の上方の位置P´に設置してもよい。これにより、第1レーザ測長機41は、直接対向板4の高さ方向の位置を取得することができる。
【0050】
なお、第1及び第2のレーザ測長機41,42は、それぞれ対向板4の高さ方向の位置及びサセプタ3の高さ方向の位置を測定できれば、
図1に示す設定位置に限定されない。例えば、第1及び第2のレーザ測長機41,42をチャンバー1の側方に設置してもよい。
【0051】
本実施形態のMOCVD装置200においては、対向板4の高さ方向の位置が第1レーザ測長機41により取得されるとともに、サセプタ3の高さ方向の位置が第2レーザ測長機42により、取得される。また、対向板4の高さ方向の位置とサセプタ3の高さ方向の位置との差分からプロセスガス流路15の高さYが計算部43で決定される。
半導体薄膜の成膜時に、プロセスガス流路15の高さYを把握することにより、プロセスガス流路15の高さYの変動に起因する経時的な半導体薄膜の再現性の低下を防止できる。また、MOCVD装置間の成膜条件のばらつきの増大(装置間の機差)を防ぐことができる。
【0052】
なお、チャンバー1は、窒素雰囲気のグローブボックス内に設置される場合がある。グローブボックスには、チャンバー1とともに、搬送ロボットと、基板交換テーブルが設置される。また、グローブボックスには、パスボックスが備え付けられる。このような構成においては、搬送ロボットのアームが基板交換テーブルとパスボックスとの間を適宜移動し、半導体薄膜の成膜工程毎に成膜済の基板を伴う後述のサセプタ3と、対向板4をパスボックスから脱着することが可能となっている。成膜済のサセプタをパスボックスで冷却し、チャンバー1と基板交換テーブルとの間でサセプタを交換することにより、2セットのサセプタを大気に触れさせることなく、連続的かつ効率的に運用することができる。
グローブボックス内の動作については、基板の設置及び回収を手動で行い、その他の動作は全て自動化されている。これにより、半導体薄膜の成膜作業の信頼性とスループットが高まる。
【0053】
しかしながら、上記のように成膜工程間のサセプタ3及び基板50の着脱時に、プロセスガス流路15の高さYの変動が大きくなることが判明している。
本実施形態のMOCVD装置200においては、上記説明したように、第1レーザ測長機41により取得された対向板4の高さ方向の位置と、第2レーザ測長機42により取得されたサセプタ3の高さ方向の位置との差分から、プロセスガス流路15の高さYが決定される。
これにより、サセプタ3や基板50の着脱等の外的要因により生じるMOCVD装置200のプロセスガス流路15の高さYの変動も把握できる。特に、基板50の交換前後に生じることが多いプロセスガス流路15の高さYも確実に把握できる。
【0054】
次いで、MOCVD装置200を用いた半導体薄膜の製造方法について説明する。本実施形態では、基板50としてサファイア基板を用いて、サファイア基板上にGaN薄膜を成膜する。
【0055】
先ず、サセプタ3の各ステージ上に基板50を設置する。その後、加熱手段8により、基板50を所定の温度に加熱する。
この後、流路高さ測定手段40を用いて、プロセスガス流路15の高さYを決定してもよい。計算部43により、プロセスガス流路15の高さYが測定条件から決められた高さと異なる場合には、ノズル16からのプロセスガスの流速は、高さYと測定条件から決められた高さとの差を勘案して設定することが好ましい。
【0056】
続いて、中空シャフト2を駆動させ、サセプタ3を回転させるとともに、サセプタ3のステージを回転させる。これにより、サファイア基板が中空シャフト2を中心として自転及び公転を行う。
【0057】
次に、プロセスガス導入部5dより、プロセスガス供給管5のパージガス供給路13、有機金属ガス供給路11A、アンモニアガス供給路11Bにそれぞれ、窒素からなるパージガスと、トリメチルガリウム等の有機金属ガスと水素と窒素との混合ガスと、アンモニアガスと水素と窒素との混合ガスを供給する。
続いて、ノズル16から、有機金属ガスと、アンモニアガスと、水素及び窒素とを混合したプロセスガスをプロセスガス流路15のサセプタ3中央側から外周側に吹き出させる。ノズル16におけるプロセスガスの流速は、成膜するGaN薄膜の厚みを勘案して設定することが好ましい。
【0058】
成膜中は常に、流路高さ測定手段40を用いて、プロセスガス流路15の高さYを把握することが好ましい。これにより、成膜中に外的要因または内的要因により、サセプタ3あるいは対向板4の高さ方向の位置が変動した場合は、プロセスガス流路15の高さYが変動する。この変動を把握することにより、プロセスガス供給管5に導入するプロセスガスの調整等を行い、プロセスガス流路15へのプロセスガスの流量の経時的なばらつきを低減することができる。
【0059】
基板50上のGaN薄膜が目標とする厚みに達した際に、プロセスガス供給管5への窒素からなるパージガスと、有機金属ガスと水素と窒素との混合ガスと、アンモニアガスと水素と窒素との混合ガスの供給を中止する。また、中空シャフト2及びサセプタ3のステージの回転を停止させる。
その後、基板50及び基板50a上に成膜された半導体膜を適温になるまでチャンバー1内で自然冷却した後、上部チャンバー1Aを開放して基板50を取り出す。
【0060】
(第2実施形態)
本発明を適用した気相成長装置の別の例として、図示略のMOCVD装置(気相成長装置)201(図示略)の構成について、説明する。
【0061】
本実施形態のMOCVD装置201は、第1実施形態のMOCVD装置200の構成に加え、制御部65を有する。制御部65は、計算部43により決められたプロセスガス流路15の高さYが、測定条件から決められた高さと異なることが検知された時に、プロセスガス流路15に供給するプロセスガスの流量を制御する。
具体的には、プロセスガス流路15の高さYが、測定条件から決められた高さと異なることが検知された時に、ノズル16から吹き出させるプロセスガスの流速を制御するために、プロセスガス供給管5への原料ガス、パージガスの供給流量を変更してもよい。
【0062】
さらに、制御部65は、計算部43により決められたプロセスガス流路15の高さYが、測定条件から決められた高さ±10%の範囲を超えた時に、前述のようにノズル16から吹き出させるプロセスガスの流速を変える、あるいは対向板4の高さを制御することにより、プロセスガス流路15に供給するプロセスガスの流量を制御してもよい。
【0063】
MOCVD装置201を用いた半導体薄膜の製造方法においては、計算部43により決められたプロセスガス流路15の高さYが、測定条件から決められた高さと異なることを検知した時に、制御部65により、ノズル16から吹き出させるプロセスガスの流速を変える、あるいは対向板4の高さを制御しながら、MOCVD装置200を用いた半導体薄膜の製造方法と同一の工程を行う。
これにより、種々の要因により生じるプロセスガス流路15の高さYの変動を常時検知できるとともに、ノズル16からのプロセスガスの流量を制御し、プロセスガス流路15の高さYの変動に起因する経時的な半導体薄膜の再現性を高められる。また、MOCVD装置201間の成膜条件のばらつきを低減することができる。
【0064】
以上、本発明の好ましい実施形態について詳述したが、本発明は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲内に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【実施例】
【0065】
(実施例1)
図1及び
図2に示すMOCVD装置200を用いて、ドープなしのGaN系半導体薄膜を製造した。基板には、6インチのサファイア基板を用い、サセプタの温度は1300℃程度とした。
サセプタの開口部は、外周上に等間隔に11個(各開口部をST1〜ST11と称する)設けて各開口部にサファイア基板(以降、単に「基板」と記載する)を載置した。
なお、成膜時間はいずれの場合も同一とした。
【0066】
<基板を自転させないでGaN薄膜を成膜する場合>
先ず、MOCVD装置200の対向板を基準高さに設定し、基板を自転させずにGaN薄膜を成膜した。このときの基板上のGaN薄膜の厚さ分布を
図3(A)に示す。
次いで、対向板の高さは、対向板受台の高さを変えることにより調整が可能であるから、対向板を基準高さから1.0mm移動させてプロセスガス流路の高さを小さくして基板を自転させずにGaN薄膜を成膜した。このときの基板上のGaN薄膜の厚さ分布を
図3(B)に示す。また、
図3(A),(B)における基板の下流端からの距離に対するGaN薄膜の膜厚の変化を
図3(C)に示す。
図3(A),(B),(C)から、基板の自転を停止している場合は、プロセスガス流路の高さが小さくなると、基板上で薄膜厚さ分布が均一にならない傾向が顕著になることがわかる。
【0067】
<基板を自転させてGaN薄膜を成膜する場合>
<基板を自転させないでGaN薄膜を成膜する場合>と同様に、MOCVD装置200の対向板を基準高さに設定し、基板を自転させながらGaN薄膜を成膜した。このときの基板上のGaN薄膜の厚さ分布を
図4(A)に示す。
次いで、対向板を基準高さから1.0mm移動させてプロセスガス流路の高さを小さくして基板を自転させながらGaN薄膜を成膜した。このときの基板上のGaN薄膜の厚さ分布を
図4(B)に示す。また、
図4(A),(B)における基板の下流端からの距離に対するGaN薄膜の膜厚の変化を
図4(C)に示す。
図4(A),(B),(C)から、プロセスガス流路が狭くなっても、基板上で薄膜厚さ分布がほぼ均一になることがわかる。また、プロセスガス流路を狭くすることで、基板上で平均した成膜速度が19%向上した。
【0068】
<基板を自転させてAlN薄膜を成膜する場合>
<基板を自転させてGaNを成膜する場合>と同様の条件で、GaNではなくAlNを成膜した。
図5はAlN薄膜の膜厚とプロセスガス流路の高さとの関係を示すグラフである。
図5に示すように、プロセスガス流路の高さが基準高さの場合は、平均膜厚は271nmであり、膜厚のばらつき(Δ)は±4.6%であった。これに対して、プロセスガス流路の高さが基準高さより1.0mm小さい場合は、平均膜厚は277nmであり、膜厚のばらつき(Δ)は±2.9%に低減された。
以上の結果より、対向板の高さの調整によりプロセスガス流路の高さが変動し、プロセスガス流路の高さがGaN薄膜またはAlN薄膜の成膜速度及び膜厚に影響を与えることを確認した。
【0069】
<基板を自転させてGaN薄膜を連続して成膜する場合>
<基板を自転させてGaNを成膜する場合>と同様の条件で、GaN薄膜の製造を連続して8回(1Run〜8Run)行った際のプロセスガス流路の基準高さからのずれ(Run毎のプロセスガス流路の高さ)と、補正ガス流量を表1に示す。また、補正ガス流量とは、ドープなしのGaN薄膜の製造におけるプロセスガスの標準流量(例えば、390SLM)に対する、プロセスガス流路の高さの変化に起因したガス流速の変動を補正するために必要なガス流量を示す。
なお、表1における1Run〜8Runまでのプロセスガス流路の高さは、チャンバー1における同一箇所で測定した。即ち、流路高さ測定手段の第1及び第2のレーザ測長機の位置を固定して、GaN薄膜の製造を行った。第1レーザ測長機の設定位置は、
図1に示すように、対向板受台の上方とした。
【0070】
【表1】
【0071】
表1に示すように、本発明を適用したMOCVD装置において、プロセスガス流路の高さがRun毎に数十〜数百μmの幅で変動していることを確認した。そして、流路高さ測定手段で取得したプロセスガス流路の高さの変動に応じてプロセスガスの流量を調整することで、経時的な半導体薄膜の再現性の低下を防止できることを確認した。また、Run毎のみでなく、MOCVD装置間においても機差によるプロセスガス流路の高さに関係なく安定した成膜を行うことができる。