特許第5904877号(P5904877)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5904877
(24)【登録日】2016年3月25日
(45)【発行日】2016年4月20日
(54)【発明の名称】炭化珪素除去方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/205 20060101AFI20160407BHJP
   C23C 16/44 20060101ALI20160407BHJP
   H01L 21/3065 20060101ALI20160407BHJP
【FI】
   H01L21/205
   C23C16/44 J
   H01L21/302 101H
【請求項の数】3
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2012-121874(P2012-121874)
(22)【出願日】2012年5月29日
(65)【公開番号】特開2013-247331(P2013-247331A)
(43)【公開日】2013年12月9日
【審査請求日】2015年5月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000231235
【氏名又は名称】大陽日酸株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100094400
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 三義
(74)【代理人】
【識別番号】100152146
【弁理士】
【氏名又は名称】伏見 俊介
(72)【発明者】
【氏名】宮澤 譲
【審査官】 小川 将之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−343026(JP,A)
【文献】 特開2001−131753(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/205
C23C 16/44
H01L 21/3065
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に炭化珪素を含む付着物が付着した炭化珪素成膜装置の部材を炭化珪素除去装置の処理チャンバー内に収容後、プラズマ化したフッ素含有ガス、及びプラズマ化した酸素含有ガスを前記処理チャンバー内に供給して、前記付着物を除去する第1の除去処理、及び前記第1の除去処理後、前記炭化珪素成膜装置の部材の表面に不活性ガスを吹き付けて、前記付着物を除去する第2の除去処理を順次繰り返し行う付着物除去工程と、
前記処理チャンバー内から排出される排ガスに含まれる所定のガスの濃度を分析する工程と、
を有し、
前記所定のガスの濃度が所定の閾値以下になった際、前記付着物除去工程を終了することを特徴とする炭化珪素除去方法。
【請求項2】
前記第2の除去処理では、前記処理チャンバー内の圧力を大気圧下にした後、前記炭化珪素成膜装置の部材の表面に前記不活性ガスを吹き付けることを特徴とする請求項1記載の炭化珪素除去方法。
【請求項3】
前記第1の除去処理では、前記処理チャンバーを250〜300℃に加熱することを特徴とする請求項1または2記載の炭化珪素除去方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭化珪素除去方法に関する。
【背景技術】
【0002】
珪素と炭素とからなる炭化珪素は、重要なセラミックス材料として多方面で使用されている。特に、半導体としての性質を有し、低消費電力、高温で動作する素子を製造できることから、例えば、自動車用の電子部品の基幹材料として期待されている。
【0003】
上記炭化珪素を形成する際に使用する炭化珪素成膜装置では、炭化珪素を形成後、炭化珪素成膜装置の部材のうちの1つである成膜チャンバー(反応容器)の内壁(内面)にも炭化珪素が堆積し、該炭化珪素がパーティクルの発生源となる恐れがあった。
このため、定期的なガスクリーニングによって成膜チャンバーの内壁に堆積した炭化珪素(堆積層或いは付着物)を除去する方法が提案されている。
【0004】
特許文献1には、炭化珪素成膜装置の処理容器の内壁に付着した炭化珪素を三フッ化塩素ガスにより除去することが開示されている。
特許文献2には、上記炭素を選択的に除去する方法として、酸素含有ガスを用いて、炭化珪素に含まれる炭素を二酸化炭素又は一酸化炭素として除去することが開示されている。
また、特許文献3,4には、リモートプラズマを使用した成膜装置のクリーニング方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−129724号公報
【特許文献2】特開2009−117399号公報
【特許文献3】特開2002−280376号公報
【特許文献4】特許3693798号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の方法では、炭化珪素に含まれる珪素(珪素成分)を効率よく除去することは可能であるが、炭素(炭素成分)が残留してしまうという問題があった。
【0007】
また、特許文献1,2に記載の方法を組み合わせて、炭化珪素の除去を行なったとしても炭化珪素に含まれる珪素と炭素とを同じように除去することは困難であった。
さらに、特許文献1,2に記載の方法では、炭化珪素の除去ができたか否かの判断ができない(言い換えれば、終点検知のシステムがない)ため、処理時間を長くして炭化珪素の除去処理を行なった場合、処理容器(言い換えれば、炭化珪素成膜装置を構成する部材)が破損する虞があった。
【0008】
また、炭化珪素成膜装置の場合、1500℃程度の高温で成膜するため、装置部材の大部分が炭化珪素や炭素等の高耐熱材料が使用されている。そのため、炭化珪素成膜装置内において、例えば、特許文献3,4に記載のリモートプラズマを用いて、炭化珪素が付着した部材のクリーニングを行なうと、炭化珪素が付着していない部材が損傷する恐れがあった。
【0009】
そこで、本発明は、炭化珪素成膜装置の部材の損傷を抑制した上で、炭化珪素成膜装置の部材に付着した付着物を効率良く除去可能な炭化珪素除去方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、請求項1に係る発明によれば、表面に炭化珪素を含む付着物が付着した炭化珪素成膜装置の部材を炭化珪素除去装置の処理チャンバー内に収容後、プラズマ化したフッ素含有ガス、及びプラズマ化した酸素含有ガスを前記処理チャンバー内に供給して、前記付着物を除去する第1の除去処理、及び前記第1の除去処理後、前記炭化珪素成膜装置の部材の表面に不活性ガスを吹き付けて、前記付着物を除去する第2の除去処理を順次繰り返し行う付着物除去工程と、前記処理チャンバー内から排出される排ガスに含まれる所定のガスの濃度を分析する工程と、を有し、前記所定のガスの濃度が所定の閾値以下になった際、前記付着物除去工程を終了することを特徴とする炭化珪素除去方法が提供される。
【0011】
また、請求項2に係る発明によれば、前記第2の除去処理では、前記処理チャンバー内の圧力を大気圧下にした後、前記炭化珪素成膜装置の部材の表面に前記不活性ガスを吹き付けることを特徴とする請求項1記載の炭化珪素除去方法が提供される。
【0012】
また、請求項3に係る発明によれば、前記第1の除去処理では、前記処理チャンバーを250〜300℃に加熱することを特徴とする請求項1または2記載の炭化珪素除去方法が提供される。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、表面に炭化珪素を含む付着物が付着した炭化珪素成膜装置の部材を収容する処理チャンバー内に、プラズマ化したフッ素含有ガス、及びプラズマ化した酸素含有ガスを供給することで、プラズマ化したフッ素含有ガスにより付着物を構成する炭化珪素に含まれる珪素成分を除去することが可能になると共に、プラズマ化させた酸素含有ガスにより炭化珪素に含まれる炭素成分を除去することが可能となる。
つまり、付着物を構成する炭化珪素に含まれる炭素及び珪素の両方の成分を除去することが可能となる。
【0015】
また、炭化珪素成膜装置の部材の表面に不活性ガスを吹き付けて、付着物を除去することで、炭化珪素成膜装置の部材の表面に付着した付着物のうち、炭化珪素成膜装置の部材の表面に対する密着性の低下した付着物を炭化珪素成膜装置の部材の表面から剥がすことが可能となる。
【0016】
つまり、プラズマ化したフッ素含有ガス、及びプラズマ化した酸素含有ガスにより、化学的に付着物を除去する第1の除去処理と、炭化珪素成膜装置の部材の表面に不活性ガスを吹き付けて物理的に付着物を除去する第2の除去処理と、を組み合わせ、繰り返し行うことで、炭化珪素よりなる付着物を効率良く除去できる。
【0017】
また、処理チャンバー内から排出される排ガスに含まれる所定のガスの濃度を分析し、該所定のガスの濃度が所定の閾値以下になった際、付着物除去工程(第1及び第2の除去処理を繰り返し行う工程)を終了させることにより、付着物が除去された後に、さらに、第1の除去処理を行うことを抑制可能となる。
これにより、プラズマ化したフッ素含有ガス、及びプラズマ化した酸素含有ガスに起因する炭化珪素成膜装置の部材の表面の損傷を抑制できる。
【0018】
また、処理チャンバー内から排出される排ガスに含まれる所定のガスの濃度を分析し、該所定のガスの濃度が所定の閾値以下になった際、付着物除去工程を終了させることにより、必要以上に付着物除去工程を行うことがなくなるため、付着物除去工程の処理時間を短くすることができる。
【0019】
つまり、本発明によれば、炭化珪素成膜装置の部材の表面の損傷を抑制した上で、炭化珪素成膜装置の部材の表面に付着した付着物を短時間で効率良く除去できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の実施の形態に係る炭化珪素除去方法を行う際に使用する炭化珪素除去装置の概略構成を示す図である。
図2図1に示す炭化珪素除去装置を用いた本実施の形態の炭化珪素除去方法を説明するためのフローチャートを示す図である。
図3】第1及び第2の除去処理の繰り返し回数と排ガスに含まれる四フッ化ケイ素の濃度と二酸化炭素の濃度との関係、及び第1の除去処理の繰り返し回数と排ガスに含まれる四フッ化ケイ素の濃度と二酸化炭素の濃度との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して本発明を適用した実施の形態について詳細に説明する。なお、以下の説明で用いる図面は、本発明の実施形態の構成を説明するためのものであり、図示される各部の大きさや厚さや寸法等は、実際の炭化珪素除去装置の寸法関係とは異なる場合がある。
【0022】
(実施の形態)
図1は、本発明の実施の形態に係る炭化珪素除去装置の概略構成を示す図である。
図1を参照するに、炭化珪素除去装置10は、処理チャンバー11と、図示していない加熱器と、フッ素含有ガス供給部13と、酸素含有ガス供給部14と、プラズマ発生部15と、不活性ガス供給部18と、ノズル部19と、真空ポンプ22と、ガス管23と、排ガス分析器25と、制御部26と、を有する。
炭化珪素除去装置10は、炭化珪素を成膜する炭化珪素成膜装置とは、別の装置である。
【0023】
処理チャンバー11は、表面29aに図示していない炭化珪素を含む付着物(図示せず)が付着した炭化珪素成膜装置の部材29を収容する。
処理チャンバー11内には、上記付着物を除去する際、後述する図2のSTEP2に示す第1の除去処理において、プラズマ化されたフッ素含有ガス、及びプラズマ化された酸素含有ガスが供給される。
このため、処理チャンバー11の内面11aを構成する部材は、フッ素含有ガス及び酸素含有ガスに対して十分な耐性を有した材料により構成されている。
【0024】
炭化珪素成膜装置の部材29としては、例えば、炭化珪素成膜装置(図示せず)の処理容器やサセプタ等を例に挙げることができる。
【0025】
加熱器(図示せず)は、処理チャンバー11内に収容された炭化珪素成膜装置の部材29を加熱するためのヒーターである。
炭化珪素は、化学的に非常に安定しているため、単にプラズマ化したフッ素含有ガス及びプラズマ化した酸素含有ガスと炭化珪素よりなる付着物とを接触させただけでは付着物を十分な除去能力で除去することは難しい。
【0026】
そこで、炭化珪素成膜装置の部材29を加熱する加熱器(図示せず)を設けることで、プラズマ化したフッ素含有ガス及びプラズマ化した酸素含有ガスと付着物を構成する炭化珪素との反応を促進させることが可能となるため、十分な除去能力で炭化珪素よりなる付着物を除去できる。
【0027】
この場合、炭化珪素成膜装置の部材29の温度が250〜300℃の範囲内となるように加熱するとよい。
炭化珪素成膜装置の部材29の温度が250℃よりも低いと、炭化珪素よりなる付着物を十分に除去することができない。
また、炭化珪素成膜装置の部材29の温度が300℃よりも高いと、プラズマ化したフッ素含有ガスと付着物に含まれる炭素(炭素成分)との反応が生じ始めるため、クリーニングの終点管理(付着物が除去された時点(終点)の管理)を的確に行う観点からあまり好ましくない。
【0028】
また、プラズマ化したフッ素含有ガス、及びプラズマ化した酸素含有ガスを使用する場合、炭化珪素成膜装置の部材29の温度が250〜300℃の範囲内において、付着物の構成要素である炭化珪素のうちの珪素成分が四フッ化珪素として反応性良く除去が行え、炭素成分については二酸化炭素として反応性良く除去が行える。
【0029】
フッ素含有ガス供給部13は、プラズマ発生部15と接続されており、プラズマ発生部15にフッ素含有ガスを供給する。プラズマ化されたフッ素含有ガスは、処理チャンバー11内の雰囲気の温度が300℃程度の状態において、付着物を構成する炭化珪素に含まれる珪素(珪素成分)を主に除去する。
【0030】
また、フッ素含有ガスは、該雰囲気温度が350以上の温度なると、付着物に含まれる炭素(炭素成分)とも反応するため、フッ素含有ガスのみで珪素成分及び炭素成分の除去が可能となるが、プラズマ化されたフッ素含有ガスのみを使用する場合よりも、後述する図2で説明するように、プラズマ化された酸素含有ガスも使用することで、炭化珪素よりなる付着物を効率良く除去できる。
【0031】
上記フッ素含有ガスとしては、フッ素(F−GWP:0)、フッ化水素(HF−GWP:0)、ハイドロフルオロカーボン(CxHyFz(x,y,zは1以上の整数)、例えば、CHF−GWP−97)のうち、少なくとも1つを含むものを用いることができる。
【0032】
なお、フッ素含有ガスとしては、例えば、フルオロカーボン(CF−GWP:7,390,C−GWP:12,200)や六フッ化硫黄(SF−GWP:22,800)、三フッ化窒素(NF−GWP:17,200)、三フッ化塩素(ClF−GWP:0)、二フッ化カルボニル(COF−GWP:1)等を使用することも可能である、
しかしながら、これらのガスは温暖化係数(GWP)の大きなガスであるため、温暖化の観点からあまり好ましくない。フッ素含有ガスとしては、GWP値の小さいFやHF等の低環境負荷ガスが好ましい。
【0033】
酸素含有ガス供給部14は、プラズマ発生部15と接続されており、プラズマ発生部15に酸素含有ガスを供給する。酸素含有ガス供給部14から供給された酸素含有ガスは、プラズマ発生部15の手前において、フッ素含有ガス供給部13から供給されたフッ素含有ガスと混合される。
つまり、プラズマ発生部15には、酸素含有ガスとフッ素含有ガスとが混合された混合ガスが供給される。
【0034】
酸素含有ガスは、付着物を構成する炭化珪素に含まれる炭素(炭素成分)を除去するガスである。酸素含有ガスとしては、例えば、酸素(O)、オゾン(O)、窒素酸化物(NxOy(x,yは1以上の整数))、水蒸気(HO)のうち、少なくとも1つのガスを含むガスを用いることができる。
【0035】
プラズマ発生部15は、フッ素含有ガス供給部13、及び酸素含有ガス供給部14と接続されている。プラズマ発生部15には、フッ素含有ガスと酸素含有ガスとが混合された混合ガスが供給される。
プラズマ発生部15は、フッ素含有ガス及び酸素含有ガスをプラズマ化させると共に、プラズマ化したフッ素含有ガス、及びプラズマ化した酸素含有ガスを処理チャンバー11内に供給する。
【0036】
プラズマ発生部15としては、市販の一般的なプラズマ発生装置を用いることが可能である。プラズマ発生部15としては、200kHz〜2.45GHzの発振器であればよい。プラズマ発生部15の仕様は、プラズマ発生部15に供給されるガスの組成、流量、圧力等によって決定される。
【0037】
安定したプラズマを放電するためには、プラズマ発生部15に供給されるフッ素含有ガス及び酸素含有ガスよりなる混合ガスの圧力は、10torr以下がよい。
また、該混合ガスを多く流すことでラジカル等を多く発生させることが可能となるが、該ラジカル等を十分に利用するためには、ラジカルの衝突による消滅を避けるために圧力を下げる必要がある。
【0038】
このため、プラズマ発生部15に供給されるフッ素含有ガス及び酸素含有ガスよりなる混合ガスの流量を少なめにして1torr以下で処理する場合と、プラズマ発生部15に供給される該混合ガスの流量を多めにして10torr以下で処理する場合と、の2通りの処理が考えられる。
プラズマ発生部15に供給されるフッ素含有ガス及び酸素含有ガスよりなる混合ガスの流量及び圧力は、実際にサンプルを処理した時の結果やプラズマ発生条件に伴う各種条件、及び設備等周りの状況等を考慮して、最適な条件を適宜選択することができる。
【0039】
このように、フッ素含有ガスを供給するフッ素含有ガス供給部13と、酸素含有ガスを供給する酸素含有ガス供給部14と、フッ素含有ガス供給部13及び酸素含有ガス供給部14と接続され、フッ素含有ガス及び酸素含有ガスをプラズマ化させると共に、プラズマ化したフッ素含有ガス及びプラズマ化した酸素含有ガスを、表面29aに炭化珪素よりなる付着物が付着した炭化珪素成膜装の部材29を収容する処理チャンバー11内に供給するプラズマ発生部15と、を有することにより、プラズマ化したフッ素含有ガスにより付着物を構成する珪素成分を除去することが可能になると共に、プラズマ化させた酸素含有ガスにより付着物を構成する炭素成分を除去することが可能となる。
つまり、付着物を構成する炭化珪素に含まれる炭素及び珪素の両方の成分を除去することが可能となる。
【0040】
また、処理チャンバー11の内面11aとプラズマ発生部15との間の距離は、20cm以下にするとよい。これにより、付着物を構成する炭化珪素のエッチング速度を十分に確保することが可能となる。
【0041】
なお、図1では、1つのフッ素含有ガス供給部13、及び1つの酸素含有ガス供給部14に対して、1台のプラズマ発生部15(2つのガス供給部に対して共通のプラズマ発生部)を設けた場合を例に挙げてが、フッ素含有ガス供給部13及び酸素含有ガス供給部14のそれぞれに対してプラズマ発生部15を設けてもよい。つまり、炭化珪素除去装置10に、2台のプラズマ発生部15を設けてもよい。
【0042】
また、クリーニングガス(付着物を除去するためのガス)であるフッ素含有ガス及び酸素含有ガスを効率良くプラズマ化させるために、フッ素含有ガス及び酸素含有ガスに放電ガスとして、Ar,He,Ne等の不活性ガスを添加してもよい。
【0043】
不活性ガス供給部18は、処理チャンバー11の外部に配置されている。不活性ガス供給部18は、ノズル部19と接続されており、ノズル部19に不活性ガス(例えば、Ar,He,N)を供給する。
【0044】
ノズル部19は、処理チャンバー11内に配置されている。ノズル部19は、移動及び/または回転可能な構成とされており、不活性ガス供給部18から供給された不活性ガスを炭化珪素成膜装置の部材29の表面29aに付着した付着物に吹き付ける。
【0045】
このように、不活性ガスを供給する不活性ガス供給部18と、不活性ガス供給部18と接続され、炭化珪素成膜装置の部材29の表面29aに付着した付着物に不活性ガスを吹き付けるノズル部19と、を有することにより、炭化珪素成膜装置の部材29の表面29a付着した付着物のうち、炭化珪素成膜装置の部材29の表面29aに対する密着性の低下した付着物を炭化珪素成膜装置の部材29の表面29aから剥がすことが可能となる。
【0046】
したがって、プラズマ化したフッ素含有ガス、及びプラズマ化した酸素含有ガスを用いて化学的に付着物を除去する方法と、不活性ガスを吹き付けることで物理的に付着物を除去する方法と、を組み合わせることにより、プラズマ化したフッ素含有ガス、及びプラズマ化した酸素含有ガスを用いた除去方法のみを用いて、付着物を除去した場合と比較して、効率良く付着物を除去できる。
【0047】
なお、図1では、1つのノズル部19のみを図示しているが、処理チャンバー11内に複数のノズル部19を配置してもよい。
また、ノズル部19の配設位置は、図1に示すノズル部19の配設位置に限定されない。ノズル部19は、炭化珪素成膜装置の部材29の表面29aに付着した付着物に不活性ガスを効率良く吹き付けることが可能な位置に配置すればよい。
【0048】
また、ノズル部19から噴射される不活性ガスの流量及び噴射速度は、炭化珪素成膜装置の部材29の表面29aに対する密着力の低下した付着物を剥がすことの可能な流量及び噴射速度でよい。
具体的には、ノズル部19から噴射される不活性ガスの供給圧力は、例えば、0.1〜0.2MPaGとすることができる。また、この時ノズル部19から噴射される不活性ガス流量は、配管径が1/4inchの場合、およそ40〜60L/minとなる。
【0049】
また、不活性ガスを用いた付着物の除去は、処理チャンバー11内が真空の状態で行ってもよいが、処理チャンバー11内が大気圧の状態で行うことが好ましい。
プラズマ化したフッ素含有ガス、及びプラズマ化した酸素含有ガスを用いた付着物の除去では、処理チャンバー11内の圧力が10torr以下で効率の良いエアブローを行おうとすると不活性ガスの流量を多くする必要がある。
このため、一度、処理チャンバー11内の圧力を大気圧に戻してから不活性ガスを用いた付着物の除去処理を行うことが好ましい。
【0050】
真空ポンプ22は、処理チャンバー11及びガス管23と接続されている。真空ポンプ22は、処理チャンバー11内のガスを排気して、ガス管23に排ガスを導出させる。ガス管23は、真空ポンプ22及び排ガス分析器25と接続されている。
【0051】
排ガス分析器25は、ガス管23と接続されると共に、制御部26と電気的に接続されている。排ガス分析器25としては、例えば、非分散式赤外線式分析計を用いるとよい。
このように、排ガス分析器25として非分散型赤外線式分析計を用いることにより、簡便、かつ低コストで、四フッ化珪素、二酸化炭素、及び四フッ化炭素の濃度を測定することができる。
【0052】
排ガス分析器25は、排ガスに含まれる四フッ化珪素、二酸化炭素、四フッ化炭素のうち、少なくとも1つのガスの濃度を測定し、測定した該ガスの濃度に関するデータを制御部26に送信する。
【0053】
なお、排ガス分析器25として、例えば、フーリエ変換型赤外分光計、紫外線吸収計、質量分析計、ガスクロマトグラフ等の分析計を用いてもよい。
【0054】
制御部26は、フッ素含有ガス供給部13、酸素含有ガス供給部14、プラズマ発生部15、加熱器(図示せず)、不活性ガス供給部18、ノズル部19、真空ポンプ22、及び排ガス分析器25と電気的に接続されている。
【0055】
制御部26は、炭化珪素除去装置10の制御全般を行なう。制御部26は、排ガス分析器25から送信された四フッ化珪素、二酸化炭素、四フッ化炭素のうち、少なくとも1つのガス(所定のガス)の濃度に基づいて、フッ素含有ガス供給部13、酸素含有ガス供給部14、プラズマ発生部15、加熱器(図示せず)、不活性ガス供給部18、ノズル部19、真空ポンプ22、及び排ガス分析器25の制御を行う。
【0056】
制御部26は、図示していない記憶部や演算部(図示せず)を有する。該記憶部には、予め入力された所定のガスの濃度の閾値である四フッ化珪素の濃度の閾値、二酸化炭素の濃度の閾値、及び四フッ化炭素の濃度の閾値が格納されている。
【0057】
また、該演算部では、排ガス分析器25から排ガスに含まれる四フッ化珪素、二酸化炭素、四フッ化炭素のうち、少なくとも1つのガスの濃度に関するデータを受信した際、該ガスの濃度に関するデータが、予め入力された該ガスの濃度の閾値(具体的には、四フッ化珪素の濃度の閾値、二酸化炭素の濃度の閾値、四フッ化炭素の濃度の閾値)以下になったか否かの判定を行う。制御部26は、該判定に基づいて、炭化珪素除去装置10を制御する。
具体的には、測定した所定のガスの濃度が予め格納された閾値よりも大きい場合には、付着物除去工程の実施を継続し、測定したガスの濃度が予め格納された閾値以下の場合には、付着物除去工程の実施を終了させる。
【0058】
このように、処理チャンバー11内から排出される排ガスに含まれる所定のガスの濃度を測定する排ガス分析器25と、排ガス分析器25の測定結果に基づき、フッ素含有ガス供給部13、酸素含有ガス供給部14、プラズマ発生部15、加熱器(図示せず)、不活性ガス供給部18、ノズル部19、真空ポンプ22、及び排ガス分析器25を制御する制御部26と、を有することにより、処理チャンバー11内から排出される排ガスに含まれる所定のガスの濃度を分析し、該所定のガスの濃度が所定の閾値以下になった際、付着物除去工程(図2に示すSTEP2,4を含む工程)を終了させることにより、炭化珪素成膜装置の部材29の表面29aに付着した付着物が除去された後に、さらに、第1の除去処理を行うことを抑制可能となる。
これにより、プラズマ化したフッ素含有ガス、及びプラズマ化した酸素含有ガスを用いた第1の除去処理に起因する炭化珪素成膜装置の部材29の表面29aの損傷を抑制できる。また、付着物除去工程の処理時間を短くすることができる。
【0059】
上記炭化珪素除去装置によれば、フッ素含有ガスを供給するフッ素含有ガス供給部13と、酸素含有ガスを供給する酸素含有ガス供給部14と、フッ素含有ガス供給部13及び酸素含有ガス供給部14と接続され、フッ素含有ガス及び酸素含有ガスをプラズマ化させると共に、プラズマ化したフッ素含有ガス及びプラズマ化した酸素含有ガスを、表面29aに炭化珪素を含む付着物が付着した炭化珪素成膜装置の部材29を収容する処理チャンバー11内に供給するプラズマ発生部15と、を有することで、プラズマ化したフッ素含有ガスにより付着物を構成する炭化珪素に含まれる珪素成分を除去することが可能になると共に、プラズマ化させた酸素含有ガスにより炭化珪素に含まれる炭素成分を除去することが可能となる。
つまり、付着物を構成する炭化珪素に含まれる炭素及び珪素の両方の成分を除去することが可能となる。
【0060】
また、不活性ガスを供給する不活性ガス供給部18と、不活性ガス供給部18と接続され、炭化珪素成膜装置の部材29の表面29aに付着した付着物に不活性ガスを吹き付けるノズル部19と、を有することにより、炭化珪素成膜装置の部材29の表面29aに付着した付着物のうち、炭化珪素成膜装置の部材29の表面29aに対する密着性の低下した付着物を炭化珪素成膜装置の部材29の表面29aから剥がすことが可能となる。
【0061】
したがって、プラズマ化したフッ素含有ガス、及びプラズマ化した酸素含有ガスを用いて化学的に付着物を除去する方法(第1の除去処理)と、不活性ガスを吹き付けることで物理的に付着物を除去する方法(第2の除去処理)と、を組み合わせることにより、プラズマ化したフッ素含有ガス、及びプラズマ化した酸素含有ガスを用いた除去方法のみを用いて、付着物を除去した場合と比較して、効率良く付着物を除去できる。
【0062】
さらに、処理チャンバー11内から排出される排ガスに含まれる所定のガスの濃度を測定する排ガス分析器25と、排ガス分析器25の測定結果に基づき、フッ素含有ガス供給部13、酸素含有ガス供給部14、プラズマ発生部15、加熱器(図示せず)、不活性ガス供給部18、ノズル部19、真空ポンプ22、及び排ガス分析器25を制御する制御部26と、を有することにより、処理チャンバー11内から排出される排ガスに含まれる所定のガスの濃度が所定の閾値以下になった際、付着物除去工程(図2に示すSTEP2,4を含む工程)を終了させることにより、炭化珪素成膜装置の部材29の表面29aに付着した付着物が除去された後に、さらに、第1の除去処理が行われることを抑制可能となる。
これにより、プラズマ化したフッ素含有ガス、及びプラズマ化した酸素含有ガスを用いた第1の除去処理に起因する炭化珪素成膜装置の部材29の表面29aの損傷を抑制できる。
【0063】
また、処理チャンバー内から排出される排ガスに含まれる所定のガスの濃度を分析し、該所定のガスの濃度が所定の閾値以下になった際、付着物除去工程を終了させることにより、必要以上に付着物除去工程を行うことがなくなるため、付着物除去工程の処理時間を短くすることができる。
【0064】
つまり、本実施の形態の炭化珪素除去方法によれば、炭化珪素成膜装置の部材29の表面29aの損傷を抑制した上で、炭化珪素成膜装置の部材29の表面29aに付着した付着物を短時間で効率良く除去することができる。
【0065】
図2は、図1に示す炭化珪素除去装置を用いた本実施の形態の炭化珪素除去方法を説明するためのフローチャートを示す図である。
【0066】
次に、図1及び図2を参照して、本実施の形態の炭化珪素除去方法について説明する。
始めに、図2に示す処理が開始されると、STEP1では、炭化珪素成膜装置(図示せず)から表面29aに炭化珪素を含む付着物が付着した炭化珪素成膜装置の部材29を取り出す。
次いで、炭化珪素除去装置10の処理チャンバー11内に、炭化珪素成膜装置の部材29を収容する。その後、処理はSTEP2へと進む。
【0067】
次いで、STEP2では、第1の除去処理を行う。具体的には、処理チャンバー11の温度が250〜300℃の範囲内の所定の温度となるように加熱し、その後、プラズマ化したフッ素含有ガス、及びプラズマ化した酸素含有ガスを処理チャンバー11内に供給しすることで、炭化珪素成膜装置の部材29の表面29aに付着した付着物を除去する。
【0068】
これにより、プラズマ化したフッ素含有ガスにより付着物を構成する炭化珪素に含まれる珪素成分が除去されると共に、プラズマ化させた酸素含有ガスにより付着物を構成する炭素成分が除去される。つまり、付着物を構成する炭化珪素に含まれる炭素及び珪素の両方の成分を除去できる。
【0069】
なお、炭化珪素成膜装置の部材29の温度が250℃よりも低いと、炭化珪素よりなる付着物を十分に除去することができない。また、炭化珪素成膜装置の部材29の温度が300℃よりも高いと、プラズマ化したフッ素含有ガスと付着物に含まれる炭素(炭素成分)との反応が生じ始めるため、クリーニングの終点管理(付着物が除去された時点(終点)の管理)を的確に行う観点からあまり好ましくない。
上記STEP2の処理(第1の除去処理)が終了すると、処理はSTEP3へと進む。
【0070】
次いで、STEP3では、第1の除去処理の開始から終了までの間、ガス分析器25により、処理チャンバー11内から排出される排ガス(処理チャンバー11内から排出されたガス)に含まれる所定のガス(具体的には、四フッ化珪素、二酸化炭素、四フッ化炭素のうち、少なくとも1つのガス)の濃度を分析する。
その後、該所定のガスの濃度に関するデータは、制御部26に送信され、処理はSTEP4へと進む。
なお、STEP3では、第1の除去処理の終了時のみ上記所定の濃度を分析してもよい。
【0071】
次いで、STEP4では、制御部26において、ガス分析器25により分析された所定のガスの濃度が、所定の閾値(具体的には、四フッ化珪素の濃度の閾値、二酸化炭素の濃度の閾値、四フッ化炭素の濃度の閾値))以下になったか否かの判定が行われる。
STEP4において、Yes(分析された所定のガスの濃度が所定の閾値以下になった)と判定された場合、付着物除去工程の処理は停止され、処理はSTEP6へと進む。
【0072】
また、STEP4において、No(分析された所定のガスの濃度が所定の閾値よりも大きい)と判定された場合、処理はSTEP5(第2の除去処理)へ進む。
【0073】
このように、処理チャンバー11内から排出される排ガスに含まれる所定のガスの濃度を分析し、該所定のガスの濃度が所定の閾値以下になった際、付着物除去工程(STEP2,5により構成される工程)を終了させることにより、炭化珪素成膜装置の部材29の表面29aに付着した付着物が除去された後に、さらに、第1の除去処理を行うことを抑制可能となるので、プラズマ化したフッ素含有ガス、及びプラズマ化した酸素含有ガスに起因する炭化珪素成膜装置の部材29の表面29aの損傷を抑制できる。
【0074】
また、処理チャンバー11内から排出される排ガスに含まれる所定のガスの濃度を分析し、該所定のガスの濃度が所定の閾値以下になった際、付着物除去工程を終了させることにより、必要以上に付着物除去工程を行うことがなくなるため、付着物除去工程の処理時間を短くすることができる。
【0075】
次いで、STEP5では、第2の除去処理を行う。具体的には、付着物が付着した炭化珪素成膜装置の部材29の表面29aに不活性ガス(例えば、アルゴン(Ar),ヘリウム(He),水素(N))を吹き付けることで、付着物を除去する。
これにより、炭化珪素成膜装置の部材29の表面29aに付着した付着物のうち、炭化珪素成膜装置の部材29の表面29aに対する密着性の低下した付着物を炭化珪素成膜装置の部材29の表面29aから剥がすことが可能となる。
【0076】
また、第2の除去処理では、ノズル部19を移動や回転させながら、炭化珪素成膜装置の部材29の表面29aに不活性ガスを吹き付けるとよい。これにより、炭化珪素成膜装置の部材29の表面29a全体に不活性ガスを吹き付けることが可能となる。
【0077】
また、プラズマ化したフッ素含有ガス、及びプラズマ化した酸素含有ガスを用いて化学的に付着物を除去する第1の除去処理と、不活性ガスを吹き付けることで物理的に付着物を除去する第2の除去処理と、を組み合わせることにより、第1の除去処理のみを用いて、付着物を除去した場合と比較して、短時間で、かつ効率良く付着物を除去することができる。
【0078】
また、ノズル部19から噴射される不活性ガスの流量及び噴射速度は、炭化珪素成膜装置の部材29の表面29aに対する密着力の低下した付着物を剥がすことの可能な流量及び噴射速度でよい。
具体的には、ノズル部19から噴射される不活性ガスの供給圧力は、例えば、0.1〜0.2MPaGとすることができる。また、この時ノズル部19から噴射される不活性ガス流量は、配管系1/4inchの場合、およそ40〜60L/minとなる。
【0079】
また、第2の除去処理(炭化珪素成膜装置の部材29の表面29aに不活性ガスを吹き付ける処理)は、処理チャンバー11内が真空の状態で行ってもよいが、処理チャンバー11内を大気圧下にした後で行うとよい。
プラズマ化したフッ素含有ガス、及びプラズマ化した酸素含有ガスを用いた付着物の除去では、処理チャンバー11内を10torr以下の圧力にするが、この圧力で効率の良いエアブローを行おうとすると不活性ガスの流量を多くする必要がある。
このため、第2の除去処理を行う際は、一度、処理チャンバー11内の圧力を大気圧に戻してから第2の除去処理を行うとよい。
【0080】
本実施の形態の付着物除去工程は、第1及び第2の除去処理を繰り返し交互に行うことで構成されている。このように、第1及び第2の除去処理を繰り返し交互に行うことで、炭化珪素成膜装置の部材29の表面29aに付着した付着物の除去効率を向上させることができる。
上記STEP5の処理(第2の除去処理)が終了すると、処理はSTEP2へと戻る。
【0081】
次いで、STEP6では、付着物除去工程が終了後、処理チャンバー11内を水素(H)で加熱パージする。
これにより、処理チャンバー11の内面11a及び炭化珪素成膜装置の部材29の表面29aに付着するフッ素含有ガス成分や酸素含有ガス成分(STEP2で使用した付着物を除去するためのガス)の除去を行うことができる。
【0082】
処理チャンバー11内を水素(H)で加熱パージする際の、加熱温度としては、STEP2の第1の除去処理時の処理チャンバー11の温度をそのまま継続してもよいし、第1の除去処理時の処理チャンバー11の温度よりも多少高い温度に設定してもよい。
なお、加熱パージに使用する水素(H)をArやHe等の希ガスで希釈してもよいし、希ガスのみで加熱パージしてもよい。
【0083】
また、STEP6において、処理チャンバー11内を水素(H)で加熱パージする際には、プラズマ化させた水素(H)を用いるとよい。これにより、処理チャンバー11の内面11a及び炭化珪素成膜装置の部材29の表面29aに付着するフッ素含有ガス成分や酸素含有ガス成分の除去を効率良く行うことができる。
この際、プラズマ化した水素(H)をArやHe等の希ガスで希釈してもよいし、プラズマ化した希ガスのみで加熱パージしてもよい。
【0084】
また、STEP6において、処理チャンバー11内を加熱パージする場合、水素(H)以外のガスを使用することも可能であり、例えば、NH、SiH等のガスを用いてもよい。
この場合も、加熱パージする際の、加熱温度としては、STEP2の第1の除去処理時の処理チャンバー11の温度をそのまま継続してもよいし、第1の除去処理時の処理チャンバー11の温度よりも多少高い温度に設定してもよい。
なお、加熱パージ処理で使用するNH、SiH等のガスをArやHe等の希ガスで希釈してもよい。
上記STEP6の処理が終了すると、図2に示す処理は終了する。
【0085】
本実施の形態の炭化珪素除去方法によれば、表面29aに炭化珪素を含む付着物が付着した炭化珪素成膜装置の部材29を収容する処理チャンバー11内に、プラズマ化したフッ素含有ガス、及びプラズマ化した酸素含有ガスを供給することで、プラズマ化したフッ素含有ガスにより付着物を構成する炭化珪素に含まれる珪素成分を除去することが可能になると共に、プラズマ化させた酸素含有ガスにより炭化珪素に含まれる炭素成分を除去することが可能となる。
つまり、付着物を構成する炭化珪素に含まれる炭素及び珪素の両方の成分を除去することが可能となる。
【0086】
また、炭化珪素成膜装置の部材29の表面29aに不活性ガスを吹き付けて、付着物を除去することで、炭化珪素成膜装置の部材29の表面29aに付着した付着物のうち、炭化珪素成膜装置の部材29の表面29aに対する密着性の低下した付着物を炭化珪素成膜装置の部材29の表面29aから剥がすことが可能となる。
【0087】
つまり、プラズマ化したフッ素含有ガス、及びプラズマ化した酸素含有ガスにより、化学的に付着物を除去する第1の除去処理と、炭化珪素成膜装置の部材の表面に不活性ガスを吹き付けて物理的に付着物を除去する第2の除去処理と、を組み合わせ、繰り返し行うことで、炭化珪素よりなる付着物を効率良く除去することができる。
【0088】
また、処理チャンバー11内から排出される排ガスに含まれる所定のガスの濃度を分析し、該所定のガスの濃度が所定の閾値以下になった際、付着物除去工程(第1及び第2の除去処理を繰り返し行う工程)を終了させることにより、付着物が除去された後に、さらに、第1の除去処理を行うことを抑制可能となる。
これにより、プラズマ化したフッ素含有ガス、及びプラズマ化した酸素含有ガスに起因する炭化珪素成膜装置の部材29の表面29aの損傷を抑制できる。
【0089】
また、処理チャンバー内から排出される排ガスに含まれる所定のガスの濃度を分析し、該所定のガスの濃度が所定の閾値以下になった際、付着物除去工程を終了させることにより、必要以上に付着物除去工程を行うことがなくなるため、付着物除去工程の処理時間を短くすることができる。
【0090】
つまり、本実施の形態の炭化珪素除去方法によれば、炭化珪素成膜装置の部材29の表面29aの損傷を抑制した上で、炭化珪素成膜装置の部材29の表面29aに付着した付着物を短時間で効率良く除去できる。
【0091】
以上、本発明の好ましい実施の形態について詳述したが、本発明はかかる特定の実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲内に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【0092】
例えば、本実施の形態では、第1の除去処理(STEP2の処理)、排ガスに含まれる所定のガスの濃度を分析する工程(STEP3)、第2の除去処理(STEP4)の順で処理を行う場合を例に挙げて説明したが、第2の除去処理(STEP4)、第1の除去処理(STEP2の処理)、排ガスに含まれる所定のガスの濃度を分析する工程(STEP3)の順に処理を行ってもよい。
この場合も、本実施の形態と同様な効果を得ることができる。
【0093】
(実施例)
始めに、基板に炭化珪素膜を成膜する工程を繰り返し行った後、図示していない炭化珪素成膜装置の処理チャンバーの内面を構成する部材(表面29aに炭化珪素よりなる付着物が付着した炭化珪素成膜装置の部材29に相当する)を3cm□の大きさの評価用サンプルAを切り出した。
次いで、図1に示す炭化珪素除去装置10の処理チャンバー11内に、評価サンプルAを収容する(図2のSTEP1に相当する工程)。
その後、図2のSTEP2に示す第1の除去処理を行った。
【0094】
第1の除去処理では、処理チャンバー11内の圧力を2torrにすると共に、処理チャンバー11内の温度を300℃に保持した後、処理チャンバー11内に、フッ素含有ガスである三フッ化窒素(流量が100sccm)及び酸素含有ガスである酸素(流量が500sccm)を混合した混合ガスをプラズマ化させて3分間供給することで、評価サンプルAの付着物の除去を行った。
このとき、プラズマ発生部15の条件としては、2.45GHz(印加電力1000W)を用いた。
【0095】
また、第1の除去処理の開始から終了までの間、排ガス分析器25により、処理チャンバー11内から排出された排ガスに含まれる四フッ化珪素(所定のガス)の濃度、及び二酸化炭素(所定のガス)の濃度を測定し、付着物除去工程の終点をモニターした(図2に示すSTEP3に相当する工程)。
排ガス分析器25としては、MIDAC社製のフーリエ変換型赤外分光を用いた。このとき、セル長を10cmとし、波数分解能を1cm−1とし、スキャン回数を64回とした。また、第1の除去処理間のインターバルは10分間に設定した。
【0096】
なお、付着物除去工程の終点となる四フッ化珪素の濃度、及び二酸化炭素の濃度については、予め付着物のついていない処理チャンバー11の内面11aを構成する部材を3cm□の大きさに切り出し、この切り出した評価サンプルBに対して、第1の除去処理を行った際に、排ガス分析器25が検出する四フッ化ケイ素及び二酸化炭素の濃度を参考に決定した。
具体的には、上記終点に使用する四フッ化ケイ素の濃度を3vol.ppmとし、上記終点に使用する二酸化炭素の濃度を3vol.ppmとした。
【0097】
次いで、図2のSTEP5に示す第2の除去処理を行った。該第2の除去処理では、第1の除去処理が終了後、処理チャンバー11内の圧力を一度大気圧に戻し、その後、評価サンプルAの表面にノズル部19(図1参照)から不活性ガスである窒素を吹き付けた。
このとき、窒素を吹き付ける時間は、10秒とした。また、上記第2の除去処理における窒素の供給圧力は、0.1MPaGとした。
【0098】
その後、処理チャンバー11内の圧力を第1の除去処理を行った際の圧力(具体的には、2torr)に戻した。
また、窒素による第2の除去処理を行わない間は、不活性ガス(例えば、窒素、アルゴン等)にて真空パージを行なった。
【0099】
実施例において、第1及び第2の除去処理を繰り返し行った際の排ガスに含まれる四フッ化ケイ素の濃度、及び二酸化炭素の濃度の測定結果を図3に示す。
図3は、第1及び第2の除去処理の繰り返し回数と排ガスに含まれる四フッ化ケイ素の濃度と二酸化炭素の濃度との関係、及び第1の除去処理の繰り返し回数と排ガスに含まれる四フッ化ケイ素の濃度と二酸化炭素の濃度との関係を示す図である。
【0100】
(参考例)
参考例では、始めに、基板に炭化珪素膜を成膜する工程を繰り返し行った後、図示していない炭化珪素成膜装置の処理チャンバーの内面を構成する部材(表面29aに炭化珪素よりなる付着物が付着した炭化珪素成膜装置の部材29に相当する)を3cm□の大きさの評価用サンプルCを切り出した。評価用サンプルCとしては、実施例の評価サンプルAと同程度の付着物が付着しているものを用いた。
【0101】
参考例では、実施例で行った第2の除去処理を除いたこと以外は、実施例と同様な処理を行った。つまり、参考例では、評価用サンプルCに付着した付着物を除去する第1の除去処理を繰り返し行うと共に、排ガスに含まれる四フッ化ケイ素の濃度と二酸化炭素の濃度を測定した。この結果を図3に示す。
【0102】
(実施例及び参考例のガス濃度の測定結果について)
次に、図3を参照して、実施例及び参考例のガス濃度の測定結果について説明する。
参考例の場合、第1の除去処理を13回繰り返し行うことで、四フッ化ケイ素の濃度及び二酸化炭素の濃度が終点の濃度である3vol.ppm以下になることが確認できた。
また、参考例の場合、付着物の除去処理を開始してから終了までの時間は、169分かかることが確認できた。
【0103】
一方、実施例では、第1及び第2の除去処理を7回繰り返し行うことで、四フッ化ケイ素の濃度及び二酸化炭素の濃度が終点の濃度である3vol.ppm以下になることが確認できた。
また、実施例の場合、付着物の除去処理を開始してから終了までの時間は、91分であることが確認できた。
【0104】
上記結果から、プラズマ化したフッ素含有ガス、及びプラズマ化した酸素含有ガスにより付着物を除去する第1の除去処理と、付着物に不活性ガスが吹き付ける第2の除去処理と、を組み合わせ、かつ繰り返し行う実施例の付着物除去方法は、第1の除去処理のみを繰り返し行う参考例の付着物除去方法よりも短い時間で効率良く付着物を除去できることが確認できた。
【0105】
また、上記結果から、実施例の付着物除去方法は、参考例の付着物除去方法よりも少ない回数の第1の除去処理で、付着物を除去できることが分かった。このことから、実施例の付着物除去方法を用いることで、プラズマ化したフッ素含有ガス、及びプラズマ化した酸素含有ガスに起因する炭化珪素成膜装置の部材29の表面29aの損傷を抑制した上で、付着物を精度良く除去できることが確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0106】
本発明は、炭化珪素成膜装置の部材の表面に付着した付着物を除去する炭化珪素除去方法に適用可能である。
【符号の説明】
【0107】
10…炭化珪素除去装置、11…処理チャンバー、11a…内面、13…フッ素含有ガス供給部、14…酸素含有ガス供給部、15…プラズマ発生部、18…不活性ガス供給部、19…ノズル部、22…真空ポンプ、23…ガス管、25…排ガス分析器、26…制御部29…炭化珪素成膜装置の部材、29a…表面
図1
図2
図3