(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5904900
(24)【登録日】2016年3月25日
(45)【発行日】2016年4月20日
(54)【発明の名称】水ポンプ用羽根車およびそれを備えた水中モータポンプ
(51)【国際特許分類】
F04D 7/04 20060101AFI20160407BHJP
F04D 13/08 20060101ALI20160407BHJP
F04D 29/24 20060101ALI20160407BHJP
【FI】
F04D7/04 D
F04D7/04 J
F04D13/08 W
F04D29/24 B
【請求項の数】16
【全頁数】31
(21)【出願番号】特願2012-174884(P2012-174884)
(22)【出願日】2012年8月7日
(65)【公開番号】特開2014-34884(P2014-34884A)
(43)【公開日】2014年2月24日
【審査請求日】2015年2月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000150844
【氏名又は名称】株式会社鶴見製作所
(72)【発明者】
【氏名】吉田 慎吾
(72)【発明者】
【氏名】田中 裕之
【審査官】
佐藤 秀之
(56)【参考文献】
【文献】
特開2006−291937(JP,A)
【文献】
特開昭60−032997(JP,A)
【文献】
特開2008−202587(JP,A)
【文献】
特開2006−090279(JP,A)
【文献】
特開2010−014047(JP,A)
【文献】
特開2011−163263(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04D 7/04
F04D 13/08
F04D 29/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水中モータの下端に装着されたポンプケーシングに内装された水ポンプ用羽根車において、主板に形成された凹部の中心部分に、水中モータ軸の導下先端部に取付けるためのボス部を設け、凹部上端には主板上端面から突出しないように蓋を蓋装するための環状溝を設け、該蓋は締結具で環状溝に固定され、蓋の中心部分にボス部外縁よりも大きい孔を穿設し、該孔とボス部外縁間には凹部内外を連通させて水位が上昇してポンプ部が浸漬されると、凹部内に水を導入すると共に、凹部内に滞留する空気を排気するための隙間を形成し、蓋と環状溝の接合部にシール材を用いて封止構成されていることを特徴とする水ポンプ用羽根車。
【請求項2】
請求項1に記載の水ポンプ用羽根車であって、前記羽根車のボス部外縁に形成される隙間が同心状であることを特徴とする水ポンプ用羽根車。
【請求項3】
請求項1に記載の水ポンプ用羽根車であって、前記羽根車のボス部外縁に形成される隙間が偏心状であることを特徴とする水ポンプ用羽根車。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか一項に記載の水ポンプ用羽根車であって、前記羽根車のボス部外縁に形成される隙間が環状で形成されていることを特徴とする水ポンプ用羽根車。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか一項に記載の水ポンプ用羽根車であって、前記凹部の外周壁凸部の下流低圧発生部の蓋に、凹部内外を連通する空運転時の水抜き孔を穿設させたことを特徴とする水ポンプ用羽根車。
【請求項6】
請求項1ないし4のいずれか一項に記載の水ポンプ用羽根車であって、前記凹部の外周壁に縦設された溝の下流低圧発生部の蓋に、凹部内外を連通する空運転時の水抜き孔を穿設させたことを特徴とする水ポンプ用羽根車。
【請求項7】
請求項1ないし4のいずれか一項に記載の水ポンプ用羽根車であって、前記蓋の凹部側の外周側において外周から内周に向かって垂下状態に遮蔽板を垂設することで、該遮蔽板の下流低圧発生部の蓋に、凹部内外を連通する空運転時の水抜き孔を穿設させたことを特徴とする水ポンプ用羽根車。
【請求項8】
請求項5または6に記載の水ポンプ用羽根車であって、前記下流低圧発生部の羽根車回転方向に対する上流側の凹部の外側面に整流ガイドを形成することで、該下流低圧発生部の羽根車回転方向に対する下流側の低圧発生部の形成を促進することを特徴とする水ポンプ用羽根車。
【請求項9】
請求項1ないし8のいずれか一項に記載の水ポンプ用羽根車であって、前記蓋の上面に、前記羽根車の回転によって外周から内周に向かって水が掻込まれるような形態の掻込ガイドを二ヶ所以上で等配置されていることを特徴とする水ポンプ用羽根車。
【請求項10】
請求項1ないし9のいずれか一項に記載の水ポンプ用羽根車を用いた遠心式の水中モータポンプであって、前記主板が収まるような伏鉢状部が設けられたポンプケーシングに内装された羽根車を水中モータ軸の導下先端に装着し、該主板外側壁とそれに対向する該伏鉢状部の内側壁間に3mmないし10mmの環状隙間を設けると共に、前記蓋上端面とそれに対向する該伏鉢状部の上端面間に5mmないし15mmの軸方向隙間が設けられていることを特徴とする水中モータポンプ。
【請求項11】
請求項10に記載の水中モータポンプであって、前記蓋上端面とそれに対向する前記伏鉢状部の上端面間の軸方向隙間で形成された空間と、ポンプケーシングの揚水流路とを連通する溝が該伏鉢状部の内周壁に刻設されていることを特徴とする水中モータポンプ。
【請求項12】
請求項11に記載の水中モータポンプであって、前記溝の内周側を開放したコの字状或いは、溝の側壁を羽根車回転方向に対して上流側や下流側のいずれか一方または双方を傾斜させた、各態様の溝形状に構成したことを特徴とする水中モータポンプ。
【請求項13】
請求項12に記載の水中モータポンプであって、前記溝がポンプケーシングのボリュート巻き始めから45°以内に刻設されていることを特徴とする水中モータポンプ。
【請求項14】
請求項12に記載の水中モータポンプであって、前記溝を180°対称位置に2つで1セットとして、1セット以上刻設されていることを特徴とする水中モータポンプ。
【請求項15】
請求項10ないし14のいずれか一項に記載の水中モータポンプであって、前記軸方向隙間が外方向に向かって順次広がるように、前記蓋上端面または伏鉢状部の上端面のいずれか一方または双方を傾斜面に形成されていることを特徴とする水中モータポンプ。
【請求項16】
請求項10ないし15のいずれか一項に記載の水中モータポンプであって、前記蓋上端面とそれに対向する前記伏鉢状部の上端面間の軸方向隙間で形成された空間内に、前記羽根車の回転によって発生する旋回流を内周に向かって誘導する案内羽根を、該伏鉢状部の上端面に1箇所以上凸設されていることを特徴とする水中モータポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水ポンプ用羽根車およびそれを備えた水中モータポンプに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、水ポンプ用羽根車には様々な種類があり、汚水などを送水するクローズド型羽根車においては、汚水に含まれる固形物を羽根車の通水路に詰ることなく通過排出させなけばならないことから、JISB0131番号1323「ノンクロッグポンプ」(付
図25参照。)や、番号1324「スクリューインペラ渦巻ポンプ」(付
図12参照。)や、番号1325「ブレードレスポンプ」などで定義されているような、通水路すなわち羽根幅の大きな軸方向に大きな重い羽根車の構成となってしまうことから、羽根車の軽量化を図るために主板や側板に肉盗みの凹部を設けるが、該凹部を開放した状態でポンプを運転すると、凹部内に異物が侵入することで振動や騒音が発生したり、該凹部が抵抗となって流れが乱されることで動力損失が発生するため、ポンプ効率の低下などという問題を招来することから、該凹部を蓋装することで凹部内への異物の侵入や旋回抵抗などを防止しなけばならないことから、特に一枚羽根などの凹部形状が不均一な羽根車においては、蓋装により蓋と凹部との空間内に空気が滞留した状態で羽根車が浸漬されることで、不均一な形状の凹部内の滞留空気によって羽根車自体に不均衡な浮力が作用されることで、羽根車がアンバランスとなって運転時に過大振動が発生するため、凹部内の滞留空気を全て凹部外へ排出していなければならないことから、ポンプ運転中は空気よりも比重の大きい水は遠心作用により凹部内の外周側へ移動させることで、その水の移動に伴って比重の小さな空気は凹部内の内周側に置換移動させて、蓋の回転軸中心から半径の1/2以下の位置に異物侵入を考慮した小径に穿設させた複数の孔の一部より凹部内に水が導入されれば、他の孔より気泡が押し出され、凹部内の空気を円滑に排出する手法は公知である(例えば、下記の特許文献1参照)。
【0003】
また、これとは別に羽根車の凹部を覆う板状の蓋部材の、例えば、蓋部材の外周縁に設けた切り欠きで構成する凹部内の侵入物を排出するための排出口によって、水ポンプ用羽根車が水中で使用されると、水が蓋部材の排出口から凹部内に侵入して凹部内が水で満たされるが、凹部内の水の密度と凹部外の水の密度とが同じであるので、質量バランスは維持されると共に、水位が低下するなどにより、水ポンプ用羽根車が空気中にさらされると、水ポンプ用羽根車にかかる遠心力により、凹部内の水が排出口から排出されて空洞となるが、凹部内の空気の密度と凹部外の空気の密度とが同じであるので、質量バランスは維持されるので、予め凹部内に侵入した水を、該羽根車を装備したポンプを空運転したり、或いは傾斜させたりすることにより排出口から排出させておけば、出荷時や運搬時などに凹部から水が漏れ出すという不具合は発生しないよう構成されたものも公知である(例えば、下記の特許文献2参照)。
【0004】
更に、別の従来技術として異物などが混入し得る汚水の排出に適している遠心ポンプの羽根車として、ノンクロッグポンプに用いられる一枚羽根の羽根車も周知であり、通常このような羽根車は羽根形状が回転軸に対して非軸対称であり、機械的バランスが取り難くなることから、羽根車の回転軸周りにおいて、比較的質量の大きい部分の肉を盗むことで機械的バランスを保っているが、肉を盗むことでその部分に凹部が生じ、その凹部が抵抗となって流れを乱すので動力損失が発生するため、通常該凹部は蓋で覆われており、蓋で凹部を覆うと凹部に水が浸入し難くなり、内部に空洞部が形成され易くなることから、そのままでは外水圧により蓋に大きな圧力がかかることを回避するために、凹部の内外を連通する孔を蓋に穿設した羽根車を備えたノンクロッグポンプが用いられていることから、固形物がポンプ室に留まることなく排出されるよう、一般的に羽根車の主板とケーシングで構成される半径方向隙間および軸方向隙間は、羽根車が回転するのに必要な最小限に構成され、例えばJISB8307:2009 遠心ポンプの技術仕様−クラスIの第19頁「表2−最小運転隙間」に規定されているように、回転側直径が250mmの最小直径隙間は0.555mmとなると共に、ケーシングの内壁に摺動しないよう羽根車(主板)の端面の内側に取付けられた蓋上端面とケーシングの内壁との対向空間に形成される空気溜りに、該蓋に穿設された孔を通って凹部から排気された空気が溜ってしまうことから、該空気溜りは該狭小の半径方向隙間および軸方向隙間によってケーシング内の排出流路と実質的に隔絶されてしまうために、空気溜りに溜った空気は排気されることなく溜り続けることになり、ポンプの運転振動を大きくさせるという問題を解決するため、該羽根車を用いた汚水用の遠心ポンプにおいて、ケーシングの上端壁に空気溜りに開口するエア抜き用の連通孔を形成することで、空気溜りに空気が滞留することを抑制するよう意図された汚水用の遠心ポンプは公知である(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−291937号公報 (段落0046−0047、
図3、
図4)
【特許文献2】特開2006−090279号公報 (
図2−
図7)
【特許文献3】特開2008−202587号公報 (段落0006−0009、
図1−
図19)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記特許文献1ないし3の構成を用いて検証実験を行った結果、次の問題点があることが判明した。
【0007】
先ず、前記特許文献1の段落0046−0047の記載および
図3,4に示すように、羽根車の凹部内に異物を侵入させないよう、該凹部に蓋を3箇所のボルトにより固定させており、蓋の中心から半径の1/2以下の位置に異物侵入を考慮した小径に穿設させた5個の孔から凹部内に水が導入されても、ポンプ運転中にこれがそのまま蓋と羽根車本体との隙間、即ち蓋外周に形成された隙間から漏れ出てしまうので、遠心作用により凹部内周に形成される水の層である封水層が求心方向に厚みを増すのが遅くなるので、内周側の空気の層を押す力が弱く、凹部内の空気の排気速度は極めて遅いことから、該蓋外周隙間からの漏水量と該小径に穿設させた5個の孔からの流入量が均衡される過程において、該外周隙間からの漏水量分を補うように凹部内に5個の孔から水が流入されるので、該孔より気泡が押し出されることは全くなく、やがて漏水量と流入量が均衡状態となって、凹部内の空気が羽根車ボス部の外周部にすり鉢状の空洞となって排気することができなくなり、空気の浮力によって生じる機械的バランスの崩れを回避できずに、当初目的の振動を防ぐという効果を奏することができずに、ポンプ運転時の致命的な問題を有している。
【0008】
また、前記特許文献2の構造だけでは、水ポンプ用羽根車が空気中の空運転時は凹部内の水が排出口から排出されて、前記の如く不具合は発生しないが、水中で水が蓋部材の排出口から凹部内に侵入して水が満たされた状態において、水中で運転した場合には、凹部内の水に遠心力の作用と重量の軽量化のために内部の螺旋状通路の形態にあわせた、羽根車のブレードのような大きな凹部内の螺旋形状の肉ヌスミ形態によるポンプ作用と相俟って、凹部内を満たしている水が該排出口から排出されて凹部内が空洞化されてしまうことから、凹部内外の重量バランスが崩壊されてしまい、当初目的の凹部内の侵入物を排出して重量バランスを保ち、振動を防ぐという効果を奏することができずに、本来のポンプ水中運転時には全くの逆効果の致命的な問題を有している。
【0009】
更に、前記特許文献3の構造では、前記半径方向隙間および軸方向隙間は固形物がポンプ室に留まることなく排出されるように、羽根車が回転するのに必要な最小限にとどめられて狭小であるため、固形物の侵入は抑制できるが、一般的に人間ではφ0.05〜0.1mm、猫ではφ0.01〜0.08mmといわれる細く長い体毛などの繊維や、小さな磨耗粒子であるスラリーポンプ0.3mm以下,サンドポンプ0.3mm以上{下記文献「ポンプとその使用法」(以降、文献1と呼ぶ)第150頁中段の(2)スラリーポンプ,サンドポンプと第267頁の表5・6を参照。}、凝固した油分、長尺異物などの侵入を完全に防止することはできないため、前記の狭小な隙間に詰って羽根車の拘束(ロック)や過度の磨耗および振動や騒音などを招来する恐れを有すると共に、停止状態において遠心ポンプが水中に浸漬されたとき、凹部内の空気を排出するには蓋に開口された連通孔の付近に水が存在して、それと空気が置換される必要があるが、水の通り道である羽根車の主板とケーシングで構成される半径方向隙間および軸方向隙間は、羽根車が回転するのに必要な最小限にとどめられており、また、狭小な隙間が連続しているため、水が羽根裏へ侵入する際の流動(通水)抵抗が非常に大きく、実質的に揚水流路と隔離されていることから、凹部から空気を排出するためには、羽根裏の空気溜りの空気が、自身の浮力によりエア抜き孔から排出されることから、該空気溜りの圧力低下により、羽根車の主板とケーシングで構成される半径方向および軸方向の狭小な隙間より少量の水が空気溜りに導入されることで、該空気溜りの圧力が回復するとともに水が蓋の孔より凹部に侵入することで、凹部より空気が押し出されて空気溜りに溜った空気は、該エア抜き孔から再び排出されという手順を繰り返しながら、あたかも呼吸の如く脈動を生じながら、空気溜りおよび凹部の空気排出に長い時間がかかるため、残留空気のアンバランスによる振動が長く継続されてポンプを破損するという重大な問題を有している。
<文献1.「ポンプとその使用法」の出典>
<文献1.「ポンプとその使用法」の第150頁中段の(2)スラリーポンプ,サンドポンプ>
<文献1.「ポンプとその使用法」の第267頁の表5・6>
【0010】
また、ポンプ運転中の羽根裏の空気溜りにおいては、前記半径方向隙間および軸方向隙間が狭小であるため水の出入りが少なく、ポンプ圧による羽根裏の空気溜りへの水の侵入も全周において均等に行われ、またボリュートの周方向圧力変化による圧力差による羽根裏への循環流れもほとんどないため、空気溜りの内周付近に集まった空気を循環流に巻き込んで排出することも出来ないと共に、羽根裏には循環流れが無いため、凹部内と同様に空気が内周側に移動するので、蓋に開口された孔がその空気で塞がれることで、所謂エアーロック現象のために水が凹部に侵入することが出来ずに、凹部内に残留した空気は排出されることはなく、仮にポンプ外へ空気を排出するためのエア抜き孔をポンプ室上端面の内周側に設けたとしても、羽根車の回転によって内周側は低圧となっているため空気はほとんど排出されないことから、内周側に異物の侵入を防止するオイルシールが設置されている場合は、エア抜き孔は設け難くなり、逆に無理やりオイルシールを配置した場合には、オイルシール固定部に孔を開口すると長尺異物が絡まったり詰まったりして過負荷や異常振動が発生することになる。
【0011】
いずれにしても、水に混入する異物により蓋に開口された孔やポンプ外へ空気を排出するためのエア抜き孔またはエアバルブが閉塞した場合、凹部内や空気溜りの空気がほとんど排出されないため、残留空気のアンバランスによる振動を生じてポンプを破損する危険性を払拭することが出来ない。
【0012】
更に、ボリュート内の圧力の周方向変化によって生じる羽根裏への循環流れについて詳述すると、遠心ポンプに用いられるポンプケーシングには通常、回転に伴って羽根車から吐出される揚液を効率よく集めて吐出し口へ導くため、吐出し口に向かって徐々に断面積が大きくなる揚水流路を羽根車の吐出し口の外周に周方向に渦を巻いて形成したJISB0131の用語の番号4102に定義され付
図3に示されるような「渦巻ケーシング」が採用され、特に渦巻状の部分はJISB0131の用語の番号5101に定義される「ボリュート」と呼ばれ、JISB0131の用語の番号2105に定義される「最高効率点」となるJISB0131の用語の番号2129に定義される「設計吐出し量」または文献によっては正規吐出し量とも呼ばれる吐出し量において、下記文献「ターボポンプ(新改訂版)」(以降、文献2と呼ぶ)第68頁上段の
図5.11(b)正規流量の上のボリュート図に描画される周方向に時計回りに旋回する矢印の長さが巻き終わりに向かって全て等しい長さであることによって示されるように揚水流路内の流速が変化しないように「ボリュート」の断面積が決定されているため、「最高効率点」より少ない吐出し量の運転域としてJISB0131の用語の番号2168に定義される「部分流量域」または文献によっては低流量域と呼ばれる流量域では、回転に伴って羽根車から吐出されて集められる揚液の量が前記正規吐出し量より少ないため、前記正規吐出し量によって決定された「ボリュート」断面積に対する揚液の量の比率が吐出し口に向かって徐々に小さくなるため、文献2の第68頁上段の
図5.11(a)低流量の上のボリュート図に描画される周方向に時計回りに旋回する矢印の長さが巻き終わりに向かって短くなるように示されていることから、揚水流路内の流速が吐出し口に向かって漸次減速されることで、文献2の第68頁中段の
図5.12「ボリュート内の圧力の周方向変化」の線図のQ/Qn=0.10の特性曲線に示されるように、同図左側(θ°=0)の巻き始めから右側(θ°=360)の巻き終わりに向かって圧力は徐々に増加する一方、「最高効率点」より多い吐出し量の運転域としてJISB0131の用語の番号2169に定義される「過大流量域」と呼ばれる流量域では、回転に伴って羽根車から吐出されて集められる揚液の量が前記正規吐出し量より多いため、前記正規吐出し量によって決定された「ボリュート」断面積に対する揚液の量の比率が吐出し口に向かって徐々に大きくなるため、文献2の第68頁上段の
図5.11(c)過大流量の上のボリュート図に描画される時計回りに周方向に旋回する矢印の長さが巻き終わりに向かって長くなるように示されていることから、揚水流路内の流速が吐出し口に向かって漸次増速されることで、文献2の第68頁中段の
図5.12の線図のQ/Qn=1.28の特性曲線に示されるように、同図左側(θ°=0)の巻き始めから右側(θ°=360)の巻き終わりに向かって圧力は徐々に低下される。
<文献2.「ターボポンプ(新改訂版)」の出典>
<文献2.「ターボポンプ(新改訂版)」の第68頁>
【0013】
そして、本来ならばボリュート内の圧力は周方向に変化するのでその圧力差が原動力となり、圧力の高い周方向位置から圧力の低い周方向位置に向かって流れ(以降、循環流れと呼ぶ)が発生すべきところですが、その循環流れは羽根車から吐出される流れに押し返されることにより、羽根車内を通過することができずに羽根裏へ流れようとしますが、前記半径方向隙間および前記軸方向隙間が狭小なために流動抵抗が大きくなるために、該循環流れはほとんど生じることはありませんが、前記半径方向隙間および軸方向隙間が広大だと流動抵抗が小さいことから、ボリュート内の揚水圧力差によって羽根裏への循環流のリーク流れが形成されることで、液体の速度エネルギーを圧力エネルギーに変化するボリュートケーシングの機能が低下されてしまうために、ポンプ揚程が低下するという問題があった。
【0014】
そこで、本発明は前記問題点に鑑み、水中でのポンプ運転時には凹部内を速やかに水で満たし、ポンプ設置段階においても凹部内の空気を排出することができ、凹部内外の連通路は閉塞することがないためこれらの機能を損なうことはなく、空気によるアンバランスで発生する振動を抑制するとともに、梱包や搬送前にはポンプを倒したり分解することなく凹部内に溜まった水を排出し得ることに加えて、ポンプ揚程の低下を必要最小限に留めうる、水ポンプ用羽根車およびそれを備えた水中モータポンプを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
前記課題を達成するために、先ず透明なアクリル板で作製された蓋部材を羽根車の凹部を覆うように装着して、該羽根車の凹部に滞留する空気の状況を視認できる可視化装置を用いて、前記特許文献1,2の蓋に孔や切欠きを穿設した状態において、羽根車の凹部内の空気の滞留状況を検証したところ、前記段落番号0007の記載の如く、羽根車の凹内の空気は孔から排気されることなく、羽根車ボス部の外周部にすり鉢状の空洞となって滞留しており、また、前記段落番号0008の記載の如く、蓋の外周に穿設された切欠き部から凹部内を満たしている水は排出されて、凹部内が空洞化されてしまうことから、特許文献1,2のいずれの場合も凹部内の空洞化による振動を防ぐことはできないことから、蓋外周に切欠きを設けずに、羽根車ボス部近くの蓋の内周の対称位置に2個の長孔を穿設して検証を試みたが、ある程度は該長孔より排気されるが全ての空気を凹部外に排気することはできずに振動を防げなかったので、次に羽根車ボス部外周と蓋内周間に隙間を設けて再び検証を試みたところ、該対称位置に2個の長孔を穿設した場合に比べて凹部内の空気の排気状況は改善されたものの、やはり全ての空気を凹部外に排気することはできなかったことから、該隙間を少しずつ広げながら再度検証を繰り返したが、やはり全ての空気を凹部外に排気することはできなかったが、幾度と検証を繰り返すうちに偶然凹部内の微細気泡が蓋の外周部から排気されたのを見かけたことで、凹部を満たす水が蓋の外周部の接合隙間から微量の漏水が発生していることに気付く切っ掛けを得たことにより、蓋の外周部をシールしたところ、
図1に示すように羽根車の回転に伴って該隙間から水が導入されて凹部を満たす水に遠心力が作用することにより、該水が凹部外周側へ移動され前記封水層が形成されて、該シールの止水作用で行場の無くなった封水層は求心方向に成長されることにより、比重の小さな空気が凹部内周側に置換移動される作用によって、ボス部外縁近傍の凹部内周側に集められてくる空気は、該隙間から円滑且つ迅速に凹部外へ残らず排気され、更に同心状の隙間を偏心状の隙間に形成したところ、該同心状の隙間の場合よりも更に迅速に凹部外へ残らず排気される構成に辿り着いたが、該シール構成により工場などで出荷前のポンプ性能確認試験を行った後で出荷する際、ポンプを気中運転しただけでは凹部内に溜まった水が蓋の外周部の接合隙間から排出されないため、梱包時や搬送時に凹部内の水を排出するためにはポンプを倒したり分解したりする必要が生じるという新たな課題が生じることとなり、そこで、本願発明者らは、流動解析結果より凹部内の圧力分布を把握することで、凹部外周部において最も圧力の低下する低圧発生部位を見出し、その部位上方の蓋に凹部内外を連通する孔を設けることで、ポンプ運転時は凹部内の水が羽根車回転による遠心力によって凹部外に出ようとする作用が、凹部内の圧力の低い低圧発生部位と外力のポンプ水圧の抗力作用によって抑えられ、気中運転時は該孔に外力のポンプ水圧が作用しないため遠心力によって凹部内の水は凹部外へと排出させることで、ポンプ運転時の凹部内の空気排出と気中運転時の凹部内の水の排出という矛盾する課題を両立させることに成功した訳であります。
【0016】
また、前記循環流れがボリュート内の高圧部から羽根裏を通ってボリュート内の低圧部に流れることに着目し、前記該凹部内に水を導入すると共に凹部内に滞留する空気を排気するために、前記羽根車ボス部外周と前記蓋内周間で形成された隙間へ循環流れを用いて水を供給して凹部内に滞留する空気を排気させて羽根裏の空気と共に循環流れに巻き込ませることにより、羽根裏の空間および凹部内の空気をボリュート内へ移送させ、最終的にポンプケーシングの吐出し口よりポンプ外に排気するという新たな構成を創出するに至った。
【0017】
そして、
図2に示すように前記構成のボリュート内と羽根裏の空間を繋ぐ通水路となる羽根車の主板外側壁に対向するポンプケーシングの伏鉢状部内側壁間の環状隙間G1の大きさおよび、蓋上端面と対向する前記伏鉢状部の上端面間の軸方向隙間G2の大きさによってはボリュート内の揚水圧力差によって羽根裏の空間への循環流のリーク流れが形成されることで、液体の速度エネルギーを圧力エネルギーに変化するボリュートケーシングの機能が低下されてしまうために、ポンプ揚程が低下したり、環状隙間および軸方向隙間に異物が詰るのではという懸念があることから、羽根裏の空間および凹部内に滞留する空気の排出速度が速く、且つポンプ揚程の維持効果が高い最適な環状隙間G1および軸方向隙間G2の寸法を求めるために、空気が排気されたか否かは、ポンプに加速度計を取付けて振動値を測定し、その振動値がポンプ始動時より小さく安定するまでの時間を計測することで判断することとして、環状隙間を様々に変化させて多くの実験を行った際、先ず該軸方向隙間G1は狭小でない8mmの寸法に設定した状態で、下記表1に示すように環状隙間G1を1mmから12mmまで順に1mm間隔毎に広げながら空気排出速度改善効果とポンプ揚程の維持効果を確認し、環状隙間G1が2mm以下では環状隙間G1が狭過ぎて、空間8への循環流れが不十分となることに加えて、羽根車の回転に伴って主板外側壁によって生じる環状隙間内の旋回流の旋回作用がボリュート内と羽根裏間の流通の阻害要因となって、空気排出速度改善効果が小さくなってその改善効果は発揮されず、逆に環状隙間G1が11mm以上に広がれば、ボリュート内の揚水圧力差によって羽根裏の空間への循環流のリーク流れが形成されることで、液体の速度エネルギーを圧力エネルギーに変化するボリュートケーシングの機能が低下されてしまうため、特にポンプ揚程の高い部分流量域においてはボリュート内の揚水圧力差による漏れが多くなるため、ポンプ揚程が顕著に低下したことで、下記表1の結果となった。
<表1.環状隙間G1による凹部の空気排出速度改善およびポンプ揚程維持の効果>
【0018】
次に、軸方向隙間G2の変化による空気排出速度改善効果とポンプ揚程の維持効果を環状隙間G1を先ず7mmに設定した状態で、下記表2に示すように軸方向隙間G2を4mmから17mmまで順に1mm間隔毎に広げながら空気排出速度改善効果とポンプ揚程の維持効果を確認し、軸方向隙間G2が4mm以下では空間8の容積が少な過ぎて、空間8への循環流れが不十分となることで、空気排出速度改善効果が小さくなってその改善効果は発揮されず、逆に軸方向隙間G2が16mm以上では空間8の容積が大き過ぎて羽根裏の空間に内在する空気量も増加することに加えて、『流速=流量÷流路断面積』の関係により、羽根裏の空間を流れる循環流れの流速が遅くなって、凹部内に水を導入すると共に凹部内に滞留する空気を排気するために前記羽根車ボス部外周と前記蓋内周間で形成された隙間への水の供給および該隙間からの空気の排気が遅くなってしまうことで、空気排出速度改善効果が小さくなってその改善効果は発揮されないことから、下記表2の結果となった。
<表2.軸方向隙間G2による凹部の空気排出速度改善およびポンプ揚程維持の効果>
【0019】
そして、前記良好な効果が確認された表1と表2の太枠で示す、環状隙間G1を3mmから10mmと軸方向隙間G2を5mmから15mmの夫々1mm間隔毎に各隙間状態を組み合わせて、空気排出速度改善効果とポンプ揚程の維持効果を検証した結果、前記表1と表2の太枠で示した効果と略同一の効果が得られることが確認された。
【0020】
更に、前記環状隙間および前記軸方向隙間を表1および表2で「▲」および「×」の付いていない最適な範囲として別途行った異物通過試験や磨耗試験において、環状隙間および軸方向隙間は狭小では無いと共に前記循環流れの流量が適切に制御されているので、当初懸念されていたように異物が環状隙間および軸方向隙間へ詰ることも羽根裏の空間へ滞留することもほとんど無く、また、磨耗粒子の滞留による過度の磨耗が無いことが確認され、実用上問題の無いレベルであることが判明したが、本願発明者らは更なる改善を目指して、環状隙間および軸方向隙間を最適な範囲としたまま前記伏鉢状部の内側壁に羽根裏の空間とポンプケーシングの揚水流路とを連通する溝を刻設したところ、ポンプ揚程の低下を伴うことなく羽根裏および前記凹部内に滞留する空気の排出速度が速くなることを見出したことで、環状隙間の通水抵抗に対して溝内の通水抵抗が小さくなることで、溝以外の環状隙間においてボリュート内の揚水圧力が羽根裏に漏れる量が減少してポンプ揚程の低下が抑えられるとともに、溝に流れが集中して大きな流れが形成されることで羽根裏への液体の流入および空気の排出が促進されることに加えて、羽根裏への流入および流出が環状隙間より広い溝で行われるため、環状隙間のみの場合に比べて異物の詰りが抑制されるという相乗効果を奏すると共に、溝の内周側開放部が広がるように溝の上流側側壁または下流側側壁のいずれか一方あるいは双方を傾斜させた形状とすれば、羽根車の回転に伴って主板外側壁によって生じる環状隙間内の旋回流の旋回作用が該溝に流入および流出することで、より速やかに水の流入と、水および空気の排出を行うことができると共に、下流側側壁への長尺異物の絡みも抑制され、また、ポンプは始動時の流量ゼロの状態から運転流量となるまでの間、必ず「部分流量域」を通過することになるので、前記「部分流量域」において圧力の低くなるボリュート巻き始めから所定の範囲、例えば0°ないし45°の範囲に該溝を刻設すれば、水および空気の排出を迅速に行うことが出来る。
【0021】
そして、前記溝2つを180°位置に刻設すれば、前記凹部内に水を導入すると共に凹部内に滞留する空気を排気するために前記羽根車ボス部外周と前記蓋内周間で形成された隙間が溝間に挟まれることになるため、凹部内への水の流入と、凹部内からの空気の排出をより速やかに行うことができ、さらに、前記伏鉢状部の上端面を外方向に向かって上り勾配の傾斜面とすれば、ポンプ停止時には、隙間より排出された凹部内の空気の気泡が浮力により上昇しながら該傾斜面に沿って速やかに外周側へ移動するため、その空気と入れ替わりに水が隙間へと導入されるので、凹部内の空気が速やかに排出され、また、ポンプ運転時には、該傾斜面により外周から内周に向かって軸方向にも断面積が減少してあたかも楔のような形状となることから、隙間に水が押し込まれると共に、隙間付近の前記循環流の流速が速くなるので、より速やかに凹部内の空気と水の置換を行うことが出来ることに加えて、羽根車の回転によって発生する旋回流を内周に向かって誘導する案内羽根を、伏鉢状部の上端面に凸設すれば、隙間への水の供給が促進されて凹部内の空気が排出され易くなり、また、該凹部内より排出された空気は、案内羽根の羽根車回転方向に対する下流側側壁の低圧部に引込まれて外周側へ排出されるため排出速度が速くなり、案内羽根は羽根車側にも形成できるが(以降、区別のため、羽根車側の該案内羽根は掻込ガイドと呼称)、バランス調整の必要があるため二ヵ所以上で等配置とすることが望ましい。
【0022】
以上このように、試行錯誤の末に辿り着いた構成に基づいた、具体的手段は以下の通りです。
【0023】
本発明の請求項1に係る発明では、水中モータの下端に装着されたポンプケーシング内に内装された水ポンプ用羽根車において、主板に形成された凹部の中心部分に、水中モータ軸の導下先端部に取付けるためのボス部を設け、凹部上端には主板上端面から突出しないように蓋を蓋装するための環状溝を設け、該蓋は締結具で環状溝に固定され、蓋の中心部分にボス部外縁よりも大きい孔を穿設し、該孔とボス部外縁間には凹部内外を連通させて水位が上昇してポンプ部が浸漬されると、凹部内に水を導入すると共に、凹部内に滞留する空気を排気するための隙間を形成し、蓋と環状溝の接合部にシール材を用いて封止構成されていることを最も主要な特徴とする。
【0024】
本発明の請求項1の水ポンプ用羽根車において、本発明の請求項2に係る発明は、前記羽根車のボス部外縁に形成される隙間が同心状である。
【0025】
また、本発明の請求項1の水ポンプ用羽根車において、本発明の請求項3に係る発明は、前記羽根車のボス部外縁に形成される隙間が偏心状である。
【0026】
更に、本発明の請求項1ないし3のいずれか一項に記載の水ポンプ用羽根車において、本発明の請求項4に係る発明は、前記羽根車のボス部外縁に形成される隙間が環状で形成されている。
【0027】
また、本発明の請求項1ないし4のいずれか一項に記載の水ポンプ用羽根車において、本発明の請求項5に係る発明は、前記凹部の外周壁凸部の下流低圧発生部の蓋に、凹部内外を連通する空運転時の水抜き孔を穿設している。
【0028】
また、本発明の請求項1ないし4のいずれか一項に記載の水ポンプ用羽根車において、本発明の請求項6に係る発明は、前記凹部の外周壁に縦設された溝の下流低圧発生部の蓋に、凹部内外を連通する空運転時の水抜き孔を穿設している。
【0029】
また、本発明の請求項1ないし4のいずれか一項に記載の水ポンプ用羽根車において、本発明の請求項7に係る発明は、前記蓋の凹部側の外周側において外周から内周に向かって垂下状態に遮蔽板を垂設することで、該遮蔽板の下流低圧発生部の蓋に、凹部内外を連通する空運転時の水抜き孔を穿設している。
【0030】
更に、本発明の請求項5または6に記載の水ポンプ用羽根車において、本発明の請求項8に係る発明は、前記下流低圧発生部の羽根車回転方向に対する上流側の凹部の外側面に整流ガイドを形成することで、該下流低圧発生部の羽根車回転方向に対する下流側の低圧発生部の形成を促進している。
【0031】
更にまた、本発明の請求項1ないし8のいずれか一項に記載の水ポンプ用羽根車において、本発明の請求項9に係る発明は、前記蓋の上面に、前記羽根車の回転によって外周から内周に向かって水が掻込まれるような形態の掻込ガイドを二ヶ所以上で等配置している。
【0032】
次に、本発明の請求項1ないし9のいずれか一項に記載の水ポンプ用羽根車を用いた遠心式の水中モータポンプにおいて、本発明の請求項10に係る発明は、前記主板が収まるような伏鉢状部が設けられたポンプケーシング内に内装された羽根車を水中モータ軸の導下先端に装着し、該主板外側壁とそれに対向する該伏鉢状部の内側壁間に3mmないし10mmの環状隙間を設けると共に、前記蓋上端面とそれに対向する該伏鉢状部の上端面間に5mmないし15mmの軸方向隙間が設けられている。
【0033】
そして、本発明の請求項10の水中モータポンプにおいて、本発明の請求項11に係る発明は、前記蓋上端面とそれに対向する前記伏鉢状部の上端面間の軸方向隙間で形成された空間と、ポンプケーシングの揚水流路とを連通する溝を該伏鉢状部の内周壁に刻設している。
【0034】
また、本発明の請求項11の水中モータポンプにおいて、本発明の請求項12に係る発明は、前記溝の内周側を開放したコの字状或いは、溝の側壁を羽根車回転方向に対して上流側や下流側のいずれか一方または双方を傾斜させた、各様態の溝形状に構成している。
【0035】
更に、本発明の請求項11または12に記載の水中モータポンプにおいて、本発明の請求項13に係る発明は、前記溝がポンプケーシングのボリュート巻き始めから45°以内に刻設している。
【0036】
更にまた、本発明の請求項11または12に記載の水中モータポンプにおいて、本発明の請求項14に係る発明は、前記溝を180°対称位置に2つで1セットとして、1セット以上刻設している。
【0037】
また、本発明の請求項10ないし14のいずれか一項に記載の水中モータポンプにおいて、本発明の請求項15に係る発明は、前記軸方向隙間が外方向に向かって順次広がるように、前記蓋上端面または伏鉢状部の上端面のいずれか一方または双方を傾斜面に形成している。
【0038】
また、本発明の請求項10ないし15のいずれか一項に記載の水中モータポンプにおいて、本発明の請求項16に係る発明は、前記蓋上端面とそれに対向する前記伏鉢状部の上端面間の軸方向隙間で形成された空間内に、前記羽根車の回転によって発生する旋回流を内周に向かって誘導する案内羽根を、該伏鉢状部の上端面に1箇所以上凸設している。
【発明の効果】
【0039】
請求項1の発明に係る水ポンプ用羽根車によれば、
図2と
図3に示すように主板に形成された凹部の中心部分に、水中モータ軸の導下先端部に取付けるためのボス部を設け、凹部上端には主板上端面から突出しないように蓋を蓋装するための環状溝を設け、該蓋は締結具で環状溝に固定され、蓋の中心部分にボス部外縁よりも大きい孔を穿設し、該孔とボス部外縁間には凹部内外を連通させて水位が上昇してポンプ部が浸漬されると、凹部内に水を導入すると共に、凹部内に滞留する空気を排気するための隙間を形成し、蓋と環状溝の接合部にシール材を用いて封止構成されているため、水中でのポンプ運転時にはポンプケーシング内の水が昇圧されることにより、前記隙間より空気が残留する圧力の低い凹部内に水が導入されることで、
図1に示すように空気よりも比重の大きい水は羽根車の回転による遠心力の作用により凹部外周側へ移動され前記封水層が形成されて、該シールの止水作用で行場の無くなった封水層は求心方向に成長されることにより、比重の小さな空気が凹部内周側に置換移動される作用によって、ボス部外縁近傍の凹部内周側に集められてくるた空気は、該隙間から円滑且つ迅速に凹部外へ残らず排気されることで、凹部内に残留した空気のアンバランスに起因した振動の発生を抑止すると共に、前記封止構成により水中でのポンプ運転時を含めて凹部外周縁からの漏出がないことから、一度凹部内が水で満たされれば、凹部内外は同一比重の水によって水がそれ以上凹部内へ流入されることがないことから、長尺物を含めた凹部内への異物侵入も阻止されることで、凹部内への異物堆積のアンバランスに起因した振動の発生も防止することができることに加えて、本願発明では蓋中心部分に穿設されたボス部外縁よりも大きな孔の内周縁にボス部外周縁が接触しないように遊嵌されているので、ボス部外周縁にインローや座部を機械加工する必要はなく、またボス部貫通孔や空気排出と水流入のための孔を複数設けた従来品と比べて、加工工数が少なく加工コストと時間を抑えることができるという利点を有している。
【0040】
本発明の請求項1に基づいた請求項2の発明に係る水ポンプ用羽根車によれば、
図2と
図3に示すように前記羽根車のボス部外縁に形成される隙間が同心状に構成させることで、該隙間はボス部外縁の全周に開口された均等巾の間隙となることで、ポンプ本体の設置状態が水平でなくても、ポンプ設置後に水位が上昇して主板上端面を越えて浸漬される際に、該隙間の一方向から凹部内に水が流入すれば、間隙の他方向から凹部内の空気が排気されるので、ポンプ設置時の傾き方向の制約を受けることなく、自動的に該間隙の最も流入と排気し易い夫々の最適な方向から、凹部内に流入と排気が円滑かつ迅速に行なわれることで、凹部内の残留空気のアンバランスによる振動を防止することができる。
【0041】
本発明の請求項1に基づいた請求項3の発明に係る水ポンプ用羽根車によれば、
図2と
図4ないし
図8に示すように前記羽根車のボス部外縁に形成される隙間が偏心状に構成させれることで、該隙間巾には広い部分と狭い部分が形成されるので、水没状態でポンプが運転されると、該隙間を周方向に展開した隙間巾の変化の
図5ないし
図8に示すように、該ボス部の回転方向に対して隙間巾が広い箇所から次第に狭くなる圧縮作用の領域を流れる水は増圧されることから、残留空気の存在する圧力の低い凹部内に強制的に水が流入されながら、隙間巾が狭い箇所から次第に広くなる膨張作用の領域を流れる水は減圧されることから、凹部内の空気が圧力の低い該膨張作用の領域の間隙から強制的に吸引排気されることで、極めて短時間に凹部内の空気が排気処理されるため、該凹部内の残留空気のアンバランスによる振動を迅速に防止することができることに加えて、ポンプ設置後に水位が上昇して主板上端面を越えて浸漬される際に、空気に較べて密度の大きな水では、該隙間巾の狭いところでは顕著に流通抵抗が大きくなるので、水は隙間巾の広いところから凹部内に流入され、該流入の対称位置となる隙間巾の狭いところから、該水の流入量に対応した容量の空気が凹部内から排気されるので、水の流入と空気の排気に係る凹部内の入口と出口の位置と面積の関係を、自動的に最も互いに干渉の少ない対称の180°離れた位置で互いに最適な開口面積の隙間領域から流入と排気がされることで、段落0040に示す請求項2の同心状の場合よりも、更に凹部内に流入と排気が円滑かつ迅速に行なわれるため、該凹部内の残留空気のアンバランスによる振動防止の効果を大きくすることができる。
【0042】
本発明の請求項1ないし3のいずれか一項に基づいた請求項4の発明に係る水ポンプ用羽根車によれば、
図2と
図3に示すように前記羽根車のボス部外縁に形成される隙間を環状に構成させることで、該隙間の旋回時の抵抗を最小限に抑えられることから、段落0039ないし0041に示す請求項1ないし3のいずれか一項に記載のポンプ運転時において、該隙間を流通する水の流入と空気の排気を極めて円滑に行なうことができるので、該凹部内の残留空気のアンバランスによる振動防止の効果をより一層向上させることができる。
【0043】
本発明の請求項1ないし4のいずれか一項に基づいた請求項5の発明に係る水ポンプ用羽根車によれば、
図2および
図9ないし
図11に示すように前記凹部の外周壁凸部の下流低圧発生部の蓋に、凹部内外を連通する空運転時の水抜き孔を穿設させたことにより、本来ならば水中でのポンプ運転時には前記隙間より空気が残留する圧力の低い凹部内に水が導入されることで、空気よりも比重の大きい水は羽根車の回転による遠心力の作用により凹部外周側へ移動された水は、水抜き孔より凹部外に流出するところ、該水抜き孔には二次側水流の渦作用により凹部内に引き戻そうとする低圧と凹部外の外圧の相乗作用による対抗圧力の止水効果によって、前記封止構成が維持されることで、該凹部内の残留空気のアンバランスによる振動を防止することができると共に、出荷時の該凹部内の残留水の除去に多くの時間と労力が必要な煩わしい作業がポンプを気中運転するだけで、遠心力の作用によって凹部内の残留水が水抜き孔から極めて容易に排水されるので、出荷時の該凹部内の残留水の除去作業を容易にすると共に、気中運転状態における凹部内残留水のアンバランスによる振動を防止することができると共に、
図13に示すように蓋上端面の流れが蓋締結具の頭部の遮蔽作用により、水抜き孔より離隔された流れが形成されることから、該水抜き孔への異物侵入に対して極めて大きな効果を奏する。
【0044】
本発明の請求項1ないし4のいずれか一項に基づいた請求項6の発明に係る水ポンプ用羽根車によれば、
図2と
図12に示すように前記凹部の外周壁に縦設された溝の下流低圧発生部の蓋に、凹部内外を連通する空運転時の水抜き孔を穿設させたことにより、段落0043に示す請求項5の発明と同様の効果を奏することができると共に、
図13に示すように蓋上端面の流れが蓋締結具の頭部の遮蔽作用により、水抜き孔より離隔された流れが形成されることから、該水抜き孔への異物侵入に対して極めて大きな効果を奏する。
【0045】
本発明の請求項1ないし4のいずれか一項に基づいた請求項7の発明に係る水ポンプ用羽根車によれば、
図2および
図14と
図15に示すように前記蓋の凹部側の外周側において外周から内周に向かって垂下状態に遮蔽板を垂設することで、該遮蔽板の下流低圧発生部の蓋に、凹部内外を連通する空運転時の水抜き孔を穿設させたことにより、段落0043または0044並びに請求項5または6に示すように、凹部の外周壁に凸部または縦設溝を設ける必要がないことから、凹部内をシンプルな無駄のない形態に構成することができることから、必然的に造形型もシンプルで且つ造形性にも秀でていると共に、羽根車を軽量化することができることに加えて、羽根車の凹部内の形態に制約されることがないので、蓋の任意位置に一体不可分に垂設された遮蔽板の下流低圧発生部の水抜き孔の位置も自由に穿設できることから、最適な水抜き孔の位置と個数を極めて容易に選定加工することができると共に、実施例5ないし7に記載のように水抜き孔を複数のネジ孔に構成しておけば、不要な水抜き孔はビスネジなどを螺合することで極めて容易に止水できることに加えて、水抜き孔位置の組立間違いによる水没状態のポンプ運転時における凹部内の排気不良を来たすことがない。
【0046】
本発明の請求項5または6に基づいた請求項8の発明に係る水ポンプ用羽根車によれば、
図2および
図11と
図12に示すように前記下流低圧発生部の羽根車回転方向に対する上流側の凹部の外側面に整流ガイドを形成することで、該下流低圧発生部の速度の遅い渦流が整流ガイド終端の流れが整えられた速い流れの誘引作用によって、該低圧発生部の圧力をより一層低下することができる。
【0047】
本発明の請求項1ないし8のいずれか一項に基づいた請求項9の発明に係る水ポンプ用羽根車によれば、
図16と
図17に示すように前記蓋の上面に、前記羽根車の回転によって外周から内周に向かって水が掻込まれるような形態の掻込ガイドを二ヶ所以上で等配置されていることで、水没状態でポンプが運転されると、該掻込ガイドによって水が求心方向に掻込まれるため、前記隙間から空気が残留する圧力の低い凹部内に水が強制的に流入されることで、極めて短時間に凹部内の空気を排気することができる。
【0048】
本発明の請求項1ないし9のいずれか一項に基づいた請求項10の発明に係る水ポンプ用羽根車を用いた遠心式の水中モータポンプによれば、
図2ないし
図17に示すように前記主板が収まるような伏鉢状部が設けられたポンプケーシングに内装された羽根車を水中モータ軸の導下先端に装着し、該主板外側壁とそれに対向する該伏鉢状部の内側壁間に3mmないし10mmの環状隙間を設けると共に、前記蓋上端面とそれに対向する該伏鉢状部の上端面間に5mmないし15mmの軸方向隙間を設けることで、前記循環流れにより、前記羽根裏の空間および前記凹部内に滞留する空気が速やかに排出されて空気によるアンバランスで発生する振動を抑制すると共に、ポンプ揚程の低下も極力抑えられ、該環状隙間および該軸方向隙間は狭小では無いと共に該循環流れの流量が適切に制御されているので、異物が該環状隙間へ詰ることも羽根裏の空間へ滞留することもほとんど無く、また、磨耗粒子の滞留による過度の磨耗が無いためこれらの機能を損なうことが無い水中モータポンプを提供することが出来る。
【0049】
本発明の請求項10に基づいた請求項11の発明に係る水中モータポンプによれば、
図18と
図19に示されるように前記蓋上端面とそれに対向する前記伏鉢状部の上端面間の軸方向隙間で形成された空間と、ポンプケーシングの揚水流路とを連通する溝が該伏鉢状部の内周壁に刻設されていることで、該環状隙間の通水抵抗に対して前記溝内の通水抵抗が小さくなり、該溝以外の該環状隙間において「ボリュート」内の揚水圧力が羽根裏の空間に漏れる量が減少してポンプ揚程の低下が抑えられると共に、該溝に流れが集中して大きな流れが形成されることで羽根裏の空間への水の流入および空気の排出が促進されるため、ポンプ揚程の低下を伴うことなく前記羽根裏の空間および前記凹部内に滞留する空気の排出速度が速くなり、くわえて、羽根裏の空間への流入および流出が該環状隙間より広い該溝で行われるため、さらに異物の詰りが抑制される。
【0050】
本発明の請求項11に基づいた請求項12の発明に係る水中モータポンプによれば、
図18および
図19ないし
図22に示されるように、溝の内周側を開放したコの字状或いは、溝の側壁を羽根車の回転方向に対して上流側や下流側のいずれか一方または双方を傾斜させた、各態様の溝形状に構成したことで、羽根車の回転に伴って主板外側壁に同伴する旋回流が該溝に流入および流出することで、より速やかに水の流入と、水および空気の排出を行うことができると共に、下流側側壁への長尺異物の絡みも抑制される。
【0051】
本発明の請求項12に基づいた請求項13の発明に係る水中モータポンプによれば、
図23に示されるように前記溝が「部分流量域」において圧力の低くなるポンプケーシングのボリュート巻き始めから45°以内に刻設されていることで、ポンプ始動時の流量ゼロの状態から運転流量となるまでの間も、水および空気の排出を迅速に行うことが出来る。
【0052】
本発明の請求項12に基づいた請求項14の発明に係る水中モータポンプによれば、
図24ないし
図33に示されるように180°位置に前記溝を2つで1セットとして、1セット以上刻設されていることで、該凹部内に水を導入すると共に凹部内に滞留する空気を排気するために該羽根車と該蓋で形成された隙間が該溝間に挟まれることになるため、該凹部内への水の流入と、該凹部内からの空気の排出をより速やかに行うことができる。
【0053】
本発明の請求項10ないし14のいずれか一項に基づいた請求項15の発明に係る水中モータポンプによれば、
図34ないし
図39に示されるように前記軸方向隙間が外方向に向かって順次広がるように、前記蓋上端面または伏鉢状部の上端面のいずれか一方または双方を傾斜面に形成されていることで、前記隙間より排出された該凹部内の空気の気泡が浮力により上昇しながら該傾斜面に沿って速やかに外周側へ移動するため、その空気と入れ替わりに水が該隙間へと導入されるので、該凹部内の空気が速やかに排出され、また、該傾斜面により外周から内周に向かって軸方向にも断面積が減少してあたかも楔のような形状となることから、該隙間に水が押し込まれると共に、該隙間付近の該循環流の流速が速くなるので、より速やかに凹部内の空気と水の置換を行うことが出来る。
【0054】
本発明の請求項10ないし15のいずれか一項に基づいた請求項16の発明に係る水中モータポンプによれば、
図40ないし
図44に示されるように前記蓋上端面とそれに対向する前記伏鉢状部の上端面間の軸方向隙間で形成された空間内に、前記羽根車の回転によって発生する旋回流を内周に向かって誘導する案内羽根を、該伏鉢状部の上端面に1箇所以上凸設されていることで、該隙間への水の供給が促進されて該凹部内の空気が排出され易くなり、また、該凹部内より排出された空気は、該案内羽根の羽根車回転方向に対する下流側側壁の低圧部に引込まれて外周側へ排出されるため排出速度が速くなる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【
図1】本発明の羽根車回転時の凹部内の空気排出状況を示す説明図である。
【
図2】本発明の実施例1ないし8および10の水中モータポンプの構成を示した縦断側面図である。
【
図3】
図1における、本発明の実施例1,2,4の環状の隙間を同心状に羽根車に蓋を装着した状態を示す平面図である。
【
図4】
図1における、本発明の実施例3の隙間を偏心状に羽根車に蓋を装着した状態を示す平面図である。
【
図5】
図4の詳細Xにおいて、蓋中心部の孔を偏心させた態様で、隙間を偏心状に羽根車に蓋を装着した状態を示す要部拡大平面図である。
【
図6】
図5の偏心による隙間巾の容積変化に伴う圧力の増減作用による、凹部内への強制流入・排気状態を説明するための説明図。
【
図7】
図4の詳細Xにおいて、ボス部外縁を偏心させた態様で、隙間を偏心状に羽根車に蓋を装着した状態を示す要部拡大平面図である。
【
図8】
図7の偏心による隙間巾の容積変化に伴う圧力の増減作用による、凹部内への強制流入・排気状態を説明するための説明図。
【
図9】
図1における、本発明の実施例5の水抜き孔を穿設した蓋を羽根車に装着した状態を示す平面図である。
【
図10】
図9における、本発明の実施例5の羽根車の凹部外周壁の凸部の下流の低圧発生部位を示した羽根車平面図である。
【
図11】
図9における、本発明の実施例5の他の事例による羽根車の凹部外周壁の凸部の下流の低圧発生部位と、実施例8の凹部外側面の整流ガイドを示した羽根車平面図である。
【
図12】
図9における、本発明の実施例6の凹部外周壁に縦設された溝の下流の低圧発生部位と、実施例8の凹部外側面の整流ガイドを示した羽根車平面図である。
【
図13】
図9における、本発明の実施例5の水抜き孔への異物侵入防止効果を説明するための説明図である。
【
図14】
図1における、本発明の実施例7の蓋の凹部側の外周側において外周から内周に向かって垂設する遮蔽板の下流低圧発生部に、水抜き孔を穿設した蓋を羽根車に装着した状態を示す平面図である。
【
図15】
図14のS−S線における、水抜き孔と遮蔽板の垂下状態を示した、要部拡大の断面矢視図である。
【
図16】本発明の実施例9の水中モータポンプの構成を示した縦断側面図である。
【
図18】本発明の実施例11の水中モータポンプの構成を示した縦断側面図である。
【
図19】
図18のS1−S1線における、実施例12の溝の内周側を開放したコの字状の溝形状を示した断面矢視図である。
【
図20】
図18のS1−S1線における、実施例12の他の事例による溝の内周側を開放した溝の側壁を羽根車の回転方向に対して、上流側を傾斜させた溝形状を示した断面矢視図である。
【
図21】
図18のS1−S1線における、実施例12の他の事例による溝の内周側を開放した溝の側壁を羽根車の回転方向に対して、下流側を傾斜させた態様を示した断面矢視図である。
【
図22】
図18のS1−S1線における、実施例12の他の事例による溝の内周側を開放した溝の側壁を羽根車の回転方向に対して、上下流側の双方を傾斜させた態様を示した断面矢視図である。
【
図23】
図18のS2−S2線における、実施例13の溝位置を示した断面矢視図である。
【
図24】
図18のS1−S1線における、実施例14の溝の内周側を開放した、双方をコの字状の溝形状とした、互いの溝の位置関係を示した断面矢視図である。
【
図25】
図18のS1−S1線における、実施例14の他の事例による溝の内周側を開放した、一方をコの字状の溝形状として、他方を羽根車の回転方向に対して上流側の溝側壁を傾斜させた各態様の溝形状とした、互いの溝の位置関係を示した断面矢視図である。
【
図26】
図18のS1−S1線における、実施例14の他の事例による溝の内周側を開放した、一方をコの字状の溝形状として、他方を羽根車の回転方向に対して下流側の溝側壁を傾斜させた各態様の溝形状とした、互いの溝の位置関係を示した断面矢視図である。
【
図27】
図18のS1−S1線における、実施例14の他の事例による溝の内周側を開放した、一方をコの字状の溝形状として、他方を羽根車の回転方向に対して上下流側の溝側壁を傾斜させた各態様の溝形状とした、互いの溝の位置関係を示した断面矢視図である。
【
図28】
図18のS1−S1線における、実施例14の他の事例による溝の内周側を開放した、羽根車の回転方向に対して上流側の溝側壁を傾斜させた溝形状の、互いの溝の位置関係を示した断面矢視図である。
【
図29】
図18のS1−S1線における、実施例14の他の事例による溝の内周側を開放した、羽根車の回転方向に対して下流側の溝側壁を傾斜させた溝形状の、互いの溝の位置関係を示した断面矢視図である。
【
図30】
図18のS1−S1線における、実施例14の他の事例による溝の内周側を開放した、羽根車の回転方向に対して上下流側の双方の溝側壁を傾斜させた溝形状の、互いの溝の位置関係を示した断面矢視図である。
【
図31】
図18のS1−S1線における、実施例14の他の事例による溝の内周側を開放した、羽根車の回転方向に対して溝側壁を、一方は上流側に他方は下流側に傾斜させた溝形状の、互いの溝の位置関係を示した断面矢視図である。
【
図32】
図18のS1−S1線における、実施例14の他の事例による溝の内周側を開放した、羽根車の回転方向に対して溝側壁を、一方は上流側に他方は上下流側の双方を傾斜させた溝形状の、互いの溝の位置関係を示した断面矢視図である。
【
図33】
図18のS1−S1線における、実施例14の他の事例による溝の内周側を開放した、羽根車の回転方向に対して溝側壁を、一方は下流側に他方は上下流側の双方を傾斜させた溝形状の、互いの溝の位置関係を示した断面矢視図である。
【
図34】本発明の実施例15の水中モータポンプの構成を示した縦断側面図である。
【
図35】
図34の詳細Xにおいて、実施例15の他の事例の伏鉢状部の上端面を外周方向に向けて上り勾配の傾斜面として、ポンプケーシングの揚水流路とを連通する溝を伏鉢状部の内周壁に刻設させた態様の要部断面図である。
【
図36】
図34の詳細Xにおいて、実施例15の他の事例の蓋上端面を外周方向に向けて下り勾配の傾斜面とした態様の要部断面図である。
【
図37】
図34の詳細Xにおいて、実施例15の他の事例の蓋上端面を外周方向に向けて下り勾配の傾斜面として、ポンプケーシングの揚水流路とを連通する溝を伏鉢状部の内周壁に刻設させた態様の要部断面図である。
【
図38】
図34の詳細Xにおいて、実施例15の他の事例の伏鉢状部の上端面を外周方向に向けて上り勾配の傾斜面と、蓋上端面を外周方向に向けて下り勾配の傾斜面とした態様の要部断面図である。
【
図39】
図34の詳細Xにおいて、実施例15の他の事例の伏鉢状部の上端面を外周方向に向けて上り勾配の傾斜面と、蓋上端面を外周方向に向けて下り勾配の傾斜面として、ポンプケーシングの揚水流路とを連通する溝を伏鉢状部の内周壁に刻設させた態様の要部断面図である。
【
図40】本発明の実施例16の水中モータポンプの構成を示した縦断側面図である。
【
図41】
図40のS3−S3線における、実施例16の案内羽根の態様を示した断面矢視図である。
【
図42】
図40の詳細Xにおいて、実施例16の他の事例の伏鉢状部の上端面を水平として、ポンプケーシングの揚水流路とを連通する溝を伏鉢状部の内周壁に刻設した形態の要部断面図である。
【
図43】
図40の詳細Xにおいて、実施例16の他の事例の伏鉢状部の上端面を傾斜面とした形態の要部断面図である。
【
図44】
図40の詳細Xにおいて、実施例16の他の事例の伏鉢状部の上端面を傾斜面として、ポンプケーシングの揚水流路とを連通する溝を伏鉢状部の内周壁に刻設した形態の要部断面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0056】
以下、本発明の水中モータの下端に装着されたポンプケーシング内に内装された水ポンプ用羽根車において、主板に形成された凹部の中心部分に、該水中モータ軸の導下先端を取付けるためのボス部を設け、該凹部上端には主板上端面から突出しないように蓋を蓋装するための環状溝を設け、該蓋は締結具で前記環状溝に固定され、該蓋の中心部分にボス部外縁よりも大きい孔を穿設し、該孔とボス部外縁間には凹部内外を連通させて水位が上昇してポンプ部が浸漬されると、凹部内に水を導入すると共に、凹部内に滞留する空気を排気するための隙間を形成し、該蓋と環状溝の接合部にシール材を用いて封止構成される実施形態として、以下の如く本願発明の実施例に基づき、図面を参照して詳細に説明する。なお、この実施例の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【実施例1】
【0057】
図2と
図3において、1は水中モータポンプのモータ部であり、該水中モータ1の下端に装着されるポンプケーシング7との間に介在する、潤滑オイルが封入されたオイル室3内を貫通し、該ポンプケーシング7内に導下される水中モータ軸2の導下先端に、水ポンプ用羽根車4の主板4aに形成された凹部4bの中心部分に設けられたボス部4eを装着し、該凹部4b上端には主板上端面4dから突出しないように、望ましくは蓋上端面5cと面一状に蓋5を蓋装するための環状溝4gを設け、該蓋5は締結具12で該環状溝4gに固定され、該締結具12は異物の絡みつきの防止効果から
図13に示すように頭部が半球状のなべこねじなどを用いることが好ましく、該蓋5の中心部分にボス部外縁4ebよりも大きい孔5aを穿設し、該孔5aとボス部外縁4eb間には凹部4b内外を連通させて水位が上昇してポンプ部が浸漬されると、凹部4b内に水を導入すると共に、凹部4b内に滞留する空気を排気するための隙間6を形成し、該蓋5と環状溝4gの接合部にシール材11を用いて封止構成されている。
【実施例2】
【0058】
前記実施例1に基づいて、例えば
図2と
図3を用いて説明すると、前記羽根車4のボス部外縁4ebに形成される隙間6を同心状に構成する。
【実施例3】
【0059】
前記実施例1に基づいて、例えば
図2と
図4ないし
図8を用いて説明すると、前記羽根車4のボス部外縁4ebに形成される隙間6を偏心状に構成し、該隙間6の幅広部分から凹部4b内の空気が排気され易いことから、該幅広部分を凹部4bの最深部位に位置するように構成することが好ましく、また水中モータ軸2中心とボス部4e中心を同心として該ボス部4e中心位置より蓋5に穿設された孔5aの中心を偏心させてもよいが、水中モータ軸2中心よりボス部4e中心を偏心させて該隙間6を偏心状に構成されることが望ましい。
【実施例4】
【0060】
前記実施例1ないし3のいずれかの実施例に基づいて、例えば
図2と
図3を用いて説明すると、前記羽根車4のボス部外縁4ebに形成される隙間6を環状に構成する。
【実施例5】
【0061】
前記実施例1ないし4のいずれかの実施例に基づいて、例えば
図2および
図9ないし
図11用いて説明すると、前記凹部外周壁の凸部4hの下流低圧発生部14の蓋5に、凹部4b内外を連通する空運転時の水抜き孔5bを穿設するように構成し、望ましくは水抜き孔5bを複数のネジ孔として不要な水抜き孔5bはビスネジなど(図示せず。)を螺合することで容易に止水できるように構成する。
【実施例6】
【0062】
前記実施例1ないし4のいずれかの実施例に基づいて、例えば
図2と
図12を用いて説明すると、前記凹部外周壁に縦設された溝4jの下流低圧発生部14の蓋5に、凹部4b内外を連通する空運転時の水抜き孔5bを穿設するように構成し、望ましくは水抜き孔5bを複数のネジ孔として不要な水抜き孔5bはビスネジなど(図示せず。)を螺合することで容易に止水できるように構成する。
【実施例7】
【0063】
前記実施例1ないし4のいずれかの実施例に基づいて、例えば
図2および
図14と
図15を用いて説明すると、前記蓋5の凹部4b側の外周側において外周から内周に向かって垂下状態に遮蔽板5eを垂設することで、該遮蔽板5eの下流低圧発生部14位置の蓋5に、凹部4b内外を連通する空運転時の水抜き孔5bを穿設するように構成し、望ましくは水抜き孔5bを複数のネジ孔として不要な水抜き孔5bはビスネジなど(図示せず。)を螺合することで容易に止水できるように構成する。
【実施例8】
【0064】
前記実施例5または6の実施例に基づいて、例えば
図2および
図11と
図12を用いて説明すると、前記下流低圧発生部14の羽根車4の回転方向に対する上流側の凹部4bの外側面に整流ガイド4iを形成することで、該下流低圧発生部14の羽根車4の回転方向に対する下流側の低圧発生部の形成を促進するように構成する。
【実施例9】
【0065】
前記実施例1ないし8のいずれかの実施例に基づいて、例えば
図16と
図17を用いて説明すると、前記蓋5の上面に、前記羽根車4の回転によって外周から内周に向かって水が掻込まれるような形態の掻込ガイド5dを二ヶ所以上で等配置されるように構成し、該掻込ガイド5dは凹設としてもよいが、望ましくは
図17に示すように該掻込ガイド5dは凸設として掻込側外周のコーナエッジ部を丸みを持たせた形状とすることで、強力な掻込作用を有しながら該掻込ガイド5dへの長尺異物の絡みつきを抑制することができる。
【実施例10】
【0066】
前記実施例1ないし9のいずれかの実施例に基づいて、例えば
図2ないし
図17を用いて説明すると、前記主板4aが収まるような伏鉢状部7bが設けられたポンプケーシング7に、前記羽根車4を内装して水中モータ軸2の導下先端に装着し、該主板外側壁4cとそれに対向する前記伏鉢状部7bの内側壁7c間に3mmないし10mmの環状隙間G1を設けると共に、前記蓋5の上端面5cとそれに対向する前記伏鉢状部7bの上端面7d間に5mmないし15mmの軸方向隙間G2を設けるように構成し、望ましくは段落0017の表1に記載の如く該環状隙間G1は7mmないし10mmに形成すると共に、望ましくは段落0018の表2に記載の如く該軸方向隙間G2は7mmないし12mmに形成する。
【実施例11】
【0067】
前記実施例10に基づいて、例えば
図18と
図19を用いて説明すると、前記蓋5の上端面5cとそれに対向する前記伏鉢状部7bの上端面7d間の軸方向隙間G2で形成された空間8と、ポンプケーシング7の揚水流路7aとを連通する溝9を該伏鉢状部7bの内周壁7cに刻設されるように構成する。
【実施例12】
【0068】
前記実施例11に基づいて、例えば
図18および
図19ないし
図22を用いて説明すると、前記溝9の内周側を開放したコの字状或いは、該溝9の側壁を羽根車4の回転方向に対して上流側や下流側のいずれか一方または双方を傾斜させた、各態様の溝形状に構成する。
【実施例13】
【0069】
前記実施例12に基づいて、例えば
図23を用いて説明すると、ポンプケーシング7のボリュート巻き始め7eから45°以内に、前記溝9の内周側を開放した該溝9の側壁を羽根車4の回転方向に対して下流側を傾斜させた溝形状を刻設されるように構成しているが、本実施例の溝形状に換えて段落0068に記載の他の溝形状を刻設する構成としてもよい。
【実施例14】
【0070】
前記実施例12に基づいて、例えば
図24ないし
図33を用いて説明すると、前記溝9を180°対称位置に内周側を開放したコの字状或いは、該溝9の側壁を羽根車4の回転方向に対して上流側や下流側のいずれか一方または双方を傾斜させた各態様の溝形状を、同一溝形状同士或いは夫々異なった溝形状同士を組合せて、該溝9を2つで1セットとして、1セット以上刻設されるように構成する。
【実施例15】
【0071】
前記実施例10ないし14のいずれかの実施例に基づいて、例えば
図34ないし
図39を用いて説明すると、前記軸方向隙間G2が外方向に向かって順次広がるように、前記蓋5の上端面5cまたは伏鉢状部7bの上端面7dのいずれか一方または双方を傾斜面5fまたは7fに形成されるように構成し、望ましくは該傾斜面5fまたは7fの傾斜角度は水平に対して2°ないし5°とすることで、前記羽根裏の空間8の容積を必要以上に大きくすることなく、空気が傾斜面に沿って速やかに外周側へ移動するため、空気と水の置換作用が適正に行われることから、該凹部内の空気が速やかに排出される。
【実施例16】
【0072】
前記実施例10ないし15のいずれかの実施例に基づいて、例えば
図40ないし
図44を用いて説明すると、前記蓋5の上端面5cとそれに対向する前記ポンプケーシング7の伏鉢状部7bの上端面7d間の軸方向隙間G2で形成された空間8内に、前記羽根車4の回転によって発生する旋回流を内周に向かって誘導する案内羽根7gを、該伏鉢状部7bの上端面7dに1箇所以上凸設されるように構成し、望ましくは
図41に示すように該案内羽根7gの内周端に丸みを持たせた形状とすると共に、該案内羽根7gの外周と伏鉢状部7bの内側壁7cの内周間を組立に必要な最小隙間を隔てて近接させることにより、該案内羽根7gへの長尺異物の絡みつきをより一層抑制することができる。
【符号の説明】
【0073】
1 水中モータ
2 水中モータ軸
3 オイル室
4 羽根車
4a 主板
4b 凹部
4c 主板外側壁
4d 主板上端面
4e ボス部
4eb ボス部外縁
4g 環状溝
4h 凹部の外周壁凸部
4i 整流ガイド
4j 凹部の外周壁に縦設された溝
5 蓋
5a 孔
5b 水抜き孔
5c 蓋上端面
5d 掻込ガイド
5e 遮蔽板
5f 蓋の上端傾斜面
6 隙間
7 ポンプケーシング
7a 揚水流路
7b 伏鉢状部
7c 内側壁
7d 上端面
7e ボリュート巻き始め
7f 傾斜面
7g 案内羽根
8 空間
9 溝
11 シール材
12 蓋締結具
14 下流低圧発生部
G1 環状隙間
G2 軸方向隙間