【実施例】
【0044】
詳細な説明
PTZモデル−実施例1〜実施例3
PTZモデルに関する一般手法
動物
雄性ウイスターラット(P24−29、75g〜110g)を使用して、全般発作を有するPTZモデルに対するカンナビノイド(THCV(BDS及び純粋)及びCBD)の効果を評価した。実験の前に、試験環境、ケージ、注射プロトコル、取り扱いに動物を慣らした。動物を、21℃、12時間の明暗サイクル(0900に明るくする)、湿度50%の部屋に収容し、飼料及び水を自由に摂取できる状態にした。
【0045】
実験設定
5個の6L容蓋付パースペクス製タンクを、タンクの間に仕切りを設けた単一のベンチ上に配置した。ラットの挙動を観察するために、その仕切り上に閉回路テレビ(CCTV)カメラを取り付けた。Sony Topica CCDカメラ(Bluecherry, USA)を、BNCケーブルを介して、Brooktree デジタルキャプチャカード(Bluecherry, USA)を用いる低ノイズPCと接続した。Zoneminder(http://www.zoneminder.com)のソフトウェアを使用して、ラットをモニタリングし、録画を開始及び終了させ、ビデオファイルを管理した。組織内(In-house)Linux(登録商標)スクリプトを使用して、ビデオファイルを、The Observer(Noldus Technologies)を使用する更なるオフライン解析に好適な形式へとエンコードした。
【0046】
用量
広範な用量のPTZ(体重1kg当たり50mg〜100mg)を使用して、発作の誘導に最良の用量を決定した(以下を参照されたい)。結果として、腹腔内に(IP;0.9%の生理食塩水中50mg/mlのストック溶液)注射する70mg/kg及び80mg/kgの用量を、カンナビノイドをスクリーニングするために使用した。
【0047】
実験プロトコル
試験日に、動物に、カンナビノイド(低用量、中用量又は高用量)、又は陰性対照群の役割を果たす同体積のカンナビノイドビヒクル(エタノール:Cremophor:0.9%(w/v)のNaCl溶液=1:1:18)のIP注射を行った。それから動物を30分間観察し、その後動物に70mg/kg又は80mg/kgのPTZのIP注射を行った。陰性ビヒクル対照の実験を、カンナビノイドを投与した被験体と並行して行った。PTZを投与した後、動物を観察しビデオ録画して、発作の重症度、及び複数の発作挙動タイプまでの潜時を決定した(以下のin vivo解析を参照されたい)。動物を、発作の最後の徴候の後30分間フィルムに収め(filmed)、それからそれぞれのケージに戻した。
【0048】
In vivo解析
実験手順中に動物を観察したが、全ての解析は、The Observer挙動解析ソフトウェア(Noldus, Netherlands)を使用して、録画したビデオファイルによりオフラインで行った。発作の重症度のスコア化システムを使用して、被験体が経験した発作のレベルを決定した(Pohl & Mares, 1987)。全ての動物に関して、発作の全ての徴候を詳細に記載した。
【0049】
【表1】
【0050】
PTZの注射から発作の発生の特定の指標までの潜時:
PTZの注射から第一ミオクローヌス反射(FMJ;スコア1)までの、及び動物が「強直性要素及び身体のねじれを伴う前肢間代」(スコア3.5)に到達するまでの潜時(単位:秒)を記録した。FMJは、発作活動の開始の指標であるが、90%を超える動物がスコア3.5を生じるため、より重度の発作の発生の良好なマーカーである。データを、実験群内の平均±S.E.M.として示す。
【0051】
発作の最大重症度:
これは、以下のスコア化尺度に基づき、各実験群に関する中央値として示す。
【0052】
致死率(%):
PTZにより誘導される発作の結果として死んだ動物の実験群内における百分率。THCV(BDS)研究において強直間代発作(スコア4及びスコア5)を発生した動物の大部分が結果的に死んだこと、及びスコア6(致死)は動物が強直間代発作も経験したことを自動的に示すことに留意されたい。
【0053】
発作の持続時間:
発作の最初の徴候(通常はFMJ)から(生存した動物と生存しなかった動物とに分けて)発作の最後の徴候までの時間、又は死んだ被験体の場合には死んだ時間までの時間(単位:秒)。これは、各実験群に関して平均±S.E.M.として示す。
【0054】
統計:
潜時及び持続時間の差異を、チューキーの事後検定を伴う一方向分散分析(ANOVA)により評価した。P≦0.05を有意とみなした。
【0055】
実施例1−THCV(BDS)
THCV BDSは、THCVが優勢なカンナビノイドである(すなわち、THCVが、総カンナビノイド含有量の80重量%で抽出物に存在する主要なカンナビノイドである)化学変種(chemovar)の全抽出物を含むものであった。THCは、2番目に多く含まれるカンナビノイドであり、相当量存在しており(すなわち、THCが総カンナビノイド含有量の10重量%超含まれており、約16%で存在する)、同定された多数の微量カンナビノイドが存在しており、その各々がHPLC分析により測定されるように総カンナビノイド含有量の2重量%未満含まれていた。この抽出物におけるTHCV対THCの比率は、約5:1である。
【0056】
実際には、THCV含有量は抽出物の67.5重量%であり、THC含有量は抽出物の13.6重量%であり、他の同定されたカンナビノイドは合計で抽出物の約3重量%含まれており、残りの16%は非カンナビノイドを含んでいた。
【0057】
PTZ予備研究
ラットにおいて或る範囲のPTZ濃度(50mg/kg〜100mg/kg;文献に記載のある範囲)により誘導される発作を、カンナビノイドの効果の調査の前に最適な用量を決定するために調査した。
50mg/kg及び60mg/kgの用量のPTZにより誘導された発作様の活動はほとんどなかった(n=4)。
70mg/kgの用量のPTZにより典型的に、間代発作が誘導された(スコア3.5;13匹の被験体のうち8匹)。
80mg/kgの用量のPTZにより通常(regularly)、強直間代発作が誘導された(スコア4及びスコア5;10匹の被験体のうち6匹)。
【0058】
加えて、PTZの投与の繰り返しにより経時的な感受性の増大がもたらされることが見出された。このため、或る用量のPTZの投与を既に受けた動物に対しては実験を行わなかった。
【0059】
最初に、PTZにより誘導される発作に対するTHCV BDSの効果を、70mg/kgの用量のPTZに対して評価した。以下で記載するように、これにより、典型的に重度の発作スコアが得られないビヒクル対照群がもたらされた。したがって、THCV BDSを、80mg/kgの用量のPTZに対してもスクリーニングした。80mg/kgのPTZに曝露したビヒクル対照動物が経験する発作の重症度の増大が、潜在的な抗痙攣活性のより適切な試験であると考えられた。
【0060】
中程度の重度の(70mg/kg)PTZにより誘導される発作に対するTHCV BDSの効果
3種類の用量のTHCV BDSを、ラットにおいて中程度の発作を誘導することが分かったPTZの濃度(70mg/kg;上の予備研究を参照されたい)に対して評価した。使用したTHCV BDSの低用量、中用量及び高用量はそれぞれ、0.37mg/kg、3.70mg/kg及び37.04mg/kgであり、実際のTHCVの用量としてそれぞれ0.25mg/kg、2.5mg/kg及び25mg/kgをもたらした。これらの用量を、THCV含有量により、PTZにより誘導される発作に対する純粋なTHCVのスクリーニングに使用される用量と一致させた。
【0061】
THCV BDSは、第一ミオクローヌス反射までの潜時に対して、又は発作の重症度の尺度上で重症度スコア3.5に到達するまでの潜時に対して、何らの有意な効果をも有しなかった(
図1)。これらの変数の両方に関する値は中用量及び高用量のTHCV BDSで処理した動物では対照と比較して高かったが、有意には到達しなかった(P>0.05)ことに留意するものとする。同様に、発作の持続時間に対して有意な影響は見られなかった(
図2)。
【0062】
70mg/kgの用量のPTZの投与を受けた動物における発作の重症度(
図3)及び致死率(
図4)に対するTHCV BDSの効果は、単純なパターンに適合しなかった。ビヒクルを単独で注射した動物で、その群に関して重症度スコアの中央値が3.5を超えたものはなく、死んだ動物もいなかった(n=10)。
【0063】
対照的に、70mg/kgのPTZにより、低用量のTHCV BDSを注射した動物の50%において重度の強直間代発作及び死が誘導され、重症度スコアの中央値が4.75を示した。重症度のこの増大は、有意ではなかった。しかしながら、中用量及び高用量のTHCV BDSを注射した動物は、低用量に曝露した動物よりも低い重症度スコアの中央値及び低い致死率を示した(
図3及び
図4)。中用量及び高用量での致死率はビヒクル群の致死率より高かったが、有意に高くはなかった(P>0.05;
図4)。しかしながら、重症度スコアの中央値は、中用量及び高用量の間で同じであった(
図3)。この結果のパターンにより、対照(ビヒクルで処理した)動物において重度の発作を誘導する用量のPTZに対してTHCV BDSをスクリーニングする更なる実験のセットが必要とされることが示唆された。
【0064】
重度の(80mg/kg)PTZにより誘導される発作に対するTHCV BDSの効果
80mg/kgのPTZにより誘導される発作に対する同じ3種類の用量のTHCV BDSの効果を評価した。80mg/kgが、ビヒクル対照群において70mg/kgより有意に(P=0.009)重度の発作を誘導した(発作の重症度スコアの中央値はそれぞれ6及び3.5であった)ことは注目に値する。THCV BDSは、FMJ又は重症度スコア3.5までの潜時に対して有意な効果を有しなかった(
図5)。同様に、発作の持続時間に対しても効果は観察されなかった(
図6)。
【0065】
低用量のTHCV BDSにより、80mg/kgの用量のPTZの投与を受けた動物における発作の重症度(
図7)及び致死率(
図8)の両方が減少した。低用量のTHCV BDSの投与を受けた動物の重症度スコアの中央値は、ビヒクル対照より低かった(6と比較して3.5)。しかしながら、この差異は有意ではなかった(P>0.5)。また、低用量のTHCV BDS群の致死率は、ビヒクル対照群の半分であった(60%に対して30%)。
【0066】
中用量及び高用量のTHCV BDSで処理した群は、それぞれ6及び60%と比較して、より低い発作の重症度スコア4.75(対照に対してP>0.5)、及びより低い致死率50%を有していた。
【0067】
in vivoでの要約及び結論
PTZモデルでのTHCV BDSのスクリーニングは、PTZにより誘導される中程度又は重度の発作に対して何らの有意な抗痙攣効果又は痙攣促進効果も示さないように思われた。しかしながら、重度の(80mg/kgのPTZ)発作の誘導の前に低用量のTHCV BDSの投与を受けた動物においては、ビヒクル対照と比較して、より低い重症度及び致死率に向かう傾向が見られた。
【0068】
より高用量のTHCV BDSでは、THCV BDSの非THCV内容物中に存在する、より高いレベルの他のカンナビノイド成分(例えばTHC)により、この効果が妨げられている可能性がある。より高用量のTHCV BDSは、THCVの任意の有望な正の効果を妨害し得る、漸増用量の非THCV内容物(例えばTHC)を含有する。
【0069】
実施例2−THCV(純粋)
PTZにより誘導される発作に対する純粋なTHCVの効果
低用量(0.025mg/kg)、中用量(0.25mg/kg)及び高用量(2.5mg/kg)の純粋なTHCVを、PTZにより誘導される発作に対するその効果に関して評価した。この点で、実施例1(THCV BDS)との比較に関して、異なる用量の純粋なTHCVをTHCV BDSと比較して使用したことは注目に値する。以下の表2を参照されたい。
【0070】
【表2】
【0071】
80mg/kgのPTZにより、4つの全実験群(1群当たりn=16)由来の動物において種々の重症度の発作が首尾よく誘導された。PTZにより誘導される発作により、ビヒクルを単独で投与された動物のうち44%の死が引き起こされた。低用量、中用量及び高用量のTHCVの投与を受けた群の全てが、それぞれ41%、33%及び38%という、より低い致死率を示した。しかしながら、これらの値は、ビヒクル群の値と有意に異なってはいなかった(p>0.05、二項検定)。
【0072】
最初の発作の徴候までの、並びに使用した発作のスコア化尺度でのスコア[3]及びスコア[5]までの潜時、並びに生存した動物に関する発作の持続時間に関する平均値を、
図9A〜
図9Dに記載する。
【0073】
ビヒクル対照と比較して、THCVの投与を受けた動物においては、発作様の挙動の最初の顕在化までの潜時の増大により示される(
図9A)ように、発作の開始がより遅れたと見ることができる。
【0074】
開始の遅れは、最高用量のTHCVでは有意であった(p=0.02)。スコア[3]及びスコア[5]までの潜時に関して同様のパターンが見られ(
図9B及び
図9C)、全ての用量のTHCVで潜時の増大が示され、最高用量のTHCVで有意なレベルに到達した([3]及び[5]に関して、それぞれp=0.017及びp=0.013)。
【0075】
ビヒクル対照と比較して、中用量のTHCVの投与後では、実験期間中生存した動物におけるPTZにより誘導される発作の持続時間が有意に短いことも観察された(
図9D;p=0.03)。
【0076】
以下の表3は、各実験群における発作の重症度の中央値に関する値を示す。
【0077】
【表3】
【0078】
各実験群に関して最大重症度の中央値、及び発作の何らの徴候もなかった動物の%を示す(各々の値に対してn=16)。
*は、ビヒクル群からの有意差を示す(有意性の二項検定、P<0.05)。
【0079】
ビヒクル対照動物が4.25という発作の重症度の中央値を示したが、THCVの投与を受けた全ての群の重症度スコアの中央値は3.5であった。この減少は、有意に異なるものではなかった。
【0080】
12.5%のビヒクル対照動物が発作の指標を示さず、これらの動物はPTZ投与後に発作を発生しないことが示唆された。0.25mg/kgの投与を受けた群においては、有意に多数の動物(33.3%)が発作の徴候を示さなかった(表3;p=0.031)。このデータにより、中用量の0.25mg/kgのTHCVが発作の発生を防いだことが示唆される。
【0081】
in vivoでの要約及び結論
潜時の値に対する高用量のTHCVの効果により、THCVが開始及び発作の発生の両方を遅らせることができることが示唆され、中用量(0.25mg/kg)のTHCVでの発作の発生率に対する中用量のTHCVの有意な効果により、PTZにより誘導される発作に対する有意な抗痙攣作用が示唆される。
【0082】
実施例3−CBD(純粋)
THCVに加えて、CBDもPTZモデルにおいてスクリーニングした。結果は、このモデルにおける(100mg/kgのレベルの)CBDが、ビヒクル対照動物と比較して、致死率、及び最も重度の発作の発生率を有意に減少させたため、これが抗痙攣性であることを強く示唆している。
【0083】
PTZにより誘導される発作に対する純粋なCBDの効果
純粋なCBDを、同体積のビヒクルを単独で投与された動物と平行して、1mg/kg、10mg/kg及び100mg/kgの用量で、標準ビヒクル(エタノール:Cremophor:0.9%(w/v)NaCl=1:1:18)において腹腔内に(IP)注射した(各群に関してn=15)。60分後にPTZ(80mg/kg、IP)を投与した。
【0084】
ビヒクルを単独で投与した対照動物の46.7%が、PTZ投与後30分以内に死んだ(
図10)。対照的に、100mg/kgのCBDの投与を受けた動物の6.7%しか(15匹のうち1匹のみ)死なず、顕著な低減が有意であることが分かった(p<0.001)。
【0085】
加えて、ビヒクル対照動物の53.3%と比較して、100mg/kgのCBDの投与を受けた動物の6.7%でしか最も重度の発作(スコア5)が起こらず、この減少も有意なものであった(p<0.001;in vivoでの
図10)。
【0086】
純粋なTHCVと対照的に、発作の発生の潜時の有意な増大は観察されなかった。しかしながら、顕著かつ有意な低減により、PTZにより誘導される発作に対する著しい抗痙攣効果が示される。
【0087】
致死率レベル、及び最も重度の発作の発生率に対する、高用量(100mg/kg)のCBDでのPTZモデルにおける純粋なCBDのスクリーニング及び分析により、CBDが、PTZにより誘導される発作の重症度を減弱することができることが示唆される。
【0088】
ピロカルピンモデル−実施例4及び実施例5
実施例4−純粋なTHCV
ピロカルピンにより誘導される発作に対する純粋なTHCVの効果
純粋なTHCVを、同体積のビヒクルを単独で投与された動物と平行して、0.025mg/kg、0.25mg/kg及び2.5mg/kgの用量で、標準ビヒクル(エタノール:Cremophor:0.9%(w/v)NaCl=1:1:18)において腹腔内に(IP)注射した(各群に関してn≧14)。15分後にメチルスコポラミン(1mg/kg;ピロカルピンの末梢性ムスカリン効果を低減するために)を投与し、その45分後にピロカルピン(380mg/kg、IP)を投与した。
【0089】
結果
発作の開始までの潜時に対するTHCVの有意な効果は、いずれの用量でも観察されなかった(対照に対して全ての用量に関してP>0.5;チューキーの事後検定を伴う一方向ANOVA)。いずれの用量のTHCVについても、対照に対する致死率(百分率)の有意な変化は見られなかった(
図11)。
【0090】
加えて、THCVは、動物群ごとに到達した発作の平均最大重症度に対する効果を有しなかった(
図12)。
【0091】
特定の発作状態(片側前肢間代、両側前肢間代、起立及び転倒(rearing and falling)を伴う両側前肢間代、並びに強直間代発作)に達した動物の各群における百分率も評価した(
図13A〜
図13D)。
【0092】
THCVは、いずれの用量でも、片側前肢間代、両側前肢間代又は強直間代発作を示す動物の百分率における有意な変化をもたらさなかった。興味深いことに、0.25mg/kgのTHCVが、起立及び転倒を伴う両側前肢間代を示す動物の百分率において有意な増大をもたらしたが、この効果は他のいずれの用量でも見られなかった。
【0093】
実施例5−純粋なCBD
ピロカルピンにより誘導される発作に対する純粋なCBDの効果
純粋なCBDを、同体積のビヒクルを単独で投与された動物と平行して、1mg/kg、10mg/kg及び100mg/kgの用量で、標準ビヒクル(エタノール:Cremophor:0.9%(w/v)NaCl=1:1:18)において腹腔内に(IP)注射した(各群に関してn≧14)。15分後にメチルスコポラミン(1mg/kg;ピロカルピンの末梢性ムスカリン効果を低減するために)を投与し、その45分後にピロカルピン(380mg/kg、IP)を投与した。
【0094】
結果
発作の開始までの潜時に対するCBDの有意な効果は、いずれの用量でも観察されなかった(対照に対して全ての用量に関してP>0.5;チューキーの事後検定を伴う一方向ANOVA)。10mg/kgの用量のCBDについては、
図14に示されるように、対照に対する致死率(百分率)の有意な増大が見られた。
【0095】
図15は、CBDが、動物群ごとに達した発作の平均最大重症度に対する効果を有しなかったことを詳しく示している。
【0096】
図16A〜
図16Dは、特定の発作状態(片側前肢間代、両側前肢間代、起立及び転倒を伴う両側前肢間代、並びに強直間代発作)に達した動物の各群における百分率を詳しく示している。
【0097】
CBDは、1mg/kgを超えるCBDの用量で、片側前肢間代を示す動物の百分率の有意な減少をもたらした。興味深いことに、両側前肢間代を示す動物の百分率に有意差は見出されなかったが、起立及び転倒を伴う両側前肢間代を示す動物の百分率は1mg/kgを超える全てのCBDの用量で有意に低減した。強直間代発作を示す動物の百分率は、1mg/kg及び100mg/kgのCBDの用量で有意に低減したが、10mg/kgでは低減しなかった(
図14を参照されたい)。
【0098】
図17に示されるような、強直間代事象の平均頻度を検証することによる強直間代発作事象に対するCBDの効果。CBDは、試験した全ての用量で、強直間代事象の平均頻度の有意な低減をもたらした。他の全ての発作スコアの平均頻度に対するCBDの効果も同様の方法で評価したが、対照に対する有意差は見出されなかった(全てに関してP>0.5)。
【0099】
発作期間の総持続時間と比較した強直間代状態に費やされた持続時間(百分率)を検証した(
図18)。CBDは、1mg/kg及び100mg/kgの用量で持続時間(百分率)を有意に低減させたが、10mg/kgでは有意には低減させなかった。
【0100】
実施例6
ペニシリンモデル−実施例6(のみ)
実施例6−純粋なCBD
ペニシリンにより誘導される発作に対する純粋なCBDの効果
CBD(1mg/kg、10mg/kg及び100mg/kg)、又はCBDビヒクル(エタノール:Cremophor:0.9%(w/v)NaCl=1:1:18)を、成体の雄性ウイスターラット(>250g)にi.p.投与した。この1週間前に、動物に対して、麻酔下でカニューレを右側脳室中に外科的に埋め込んだ。CBD投与の1時間後、生理食塩水溶液1.5μl中で150IUのペニシリンを1分かけて右側脳室中に注入し、発作挙動を2時間ビデオ録画した。
【0101】
ビヒクル対照群から得られたデータを使用する、ペニシリン単独に対する動物の応答の詳細な検証の後、ペニシリンにより誘導される部分発作に関する最終的な発作のスコア化尺度を得た。したがって、このモデルに関して複数の既存及び公開済みのスコア化システムから得られた以下のスコア化システムを、かかる発作に対する薬剤の効果の分析に使用する。
【0102】
【表4】
【0103】
12匹のビヒクルで処理した動物のうち7匹が、最も重度の発作(姿勢制御を失った強直間代発作;
図19A)を発生したが、100mg/kgのCBDの投与により、これらの発作の発生が、有意性のある形で(p=0.001)完全に防止された。これらの発作の発生の近有意な(Near-significant)減少が、1mg/kg及び10mg/kgのCBDで処理した動物において観察された(
図16A、両方についてp=0.076)。動物が最も重度の発作を経験した頻度も有意に影響され(ANOVA、p=0.009;
図19B)、100mg/kgのCBDでのビヒクル群と比較した有意な減少(p=0.006)、及び10mg/kgでの近有意な効果(p=0.071)が示された。
【0104】
発作の重症度、及び動物の致死率に対するCBD処理の効果を、
図20A〜
図20Cにおいて説明する。100mg/kgの用量のCBDにより、ビヒクルで処理した動物と比較して、ペニシリンにより誘導される発作の重症度の中央値が有意に低減した(ANOVA、p=0.024;ビヒクルと100mg/kgのCBDとの間の差異、p=0.012;
図20A)。興味深いことに、全ての用量(1mg/kg、10mg/kg及び100mg/kg)のCBDが、無発作のままであった動物の割合を有意に増大させた(全ての用量に関してp<0.001;
図20B)。最後に、100mg/kgの用量が、ビヒクルと比較して、致死率に対する近有意な効果を有していた(p=0.057)。
【0105】
全体的な結論
これらの研究から、THCV(純粋)及びCBD(純粋)の両方が、全般発作、特に間代/強直発作に対する抗てんかん薬としての展望を示すようであると考えられる。相当量のTHCを含む他のカンナビノイドを含有するTHCVが豊富な抽出物に関して得られたデータにより、THCがTHCVの効果を打ち消している可能性があること、及び主要な又は優勢なカンナビノイドとしてTHCVを含有し、また極めて少ないTHCを含有する、又はTHCを実質的に含有しないカンナビノイド抽出物が、てんかんの治療に望ましいと考えられることが示唆される。
【0106】
さらに、純粋なCBDによる結果により、THCV及びCBDの両方を相当量含有し、さらに、極めて少ないTHCを含有する、又はTHCを実質的に含有しない抽出物が、最適な組合せを提供し得ることが示唆される。したがって、THCが(数パーセント未満のレベルまで)選択的に及び実質的に除去された、THCVが優勢な抽出物を調製することが望ましいことが分かり得る。これを、CBDが主要な及び優勢なカンナビノイド(これもTHCのレベルが低い)であるCBDが豊富な抽出物(はるかに低いレベルのTHCを含有する)と混合して、明確に規定された相当のレベルのTHCV及びCBDの両方を含むが、THCのレベルは僅かである抽出物を作製することができると考えられる。かかる抽出物は、国際公開第04/016277号に開示されるような、例えば二酸化炭素による抽出により得られる他のカンナビノイド、及び非カンナビノイド成分を含有していてもよく、これらの成分は、内在性カンナビノイド系において「補助的な(entourage)」効果を支持し得る。
【0107】
投与量については、ラット/ヒトの換算係数(×6)により、少なくとも600mg(及び任意に400mg〜800mg)というCBDの1日量、及びTHCVに関しては少なくとも1.5mg(中用量)〜好ましくは少なくとも15mg(高用量)が示唆される。
【0108】
フィトカンナビノイド抽出物を使用する場合、低い又は無視できるレベルのTHC、並びに治療上有効なレベルのTHCV及び/又はCBDを含む抽出物が望ましい。
【0109】
上の実施例に記載したデータは、CBDが、試験した3種類のモデルの全てにおいて或る程度の抗痙攣特性を示し、全般発作又は部分発作の治療において最良と考えられることを明確に示している。対照的に、THCVはPTZモデルでのみ効果的であった。この知見により、これら2つのカンナビノイドが異なる作用メカニズムを有する可能性があること、及びその組合せがより包括的な治療をもたらすことができることが示唆される。この観点から、THCVは全身発作、より具体的には強直間代発作に対して選択的であると考えられ、CBDは全般発作及び部分発作において最も効果的と考えられる。
【0110】
【表5-1】
【0111】
【表5-2】