特許第5904963号(P5904963)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5904963
(24)【登録日】2016年3月25日
(45)【発行日】2016年4月20日
(54)【発明の名称】スクリューインプラント
(51)【国際特許分類】
   A61C 8/00 20060101AFI20160407BHJP
   F16B 33/02 20060101ALI20160407BHJP
   F16B 39/30 20060101ALI20160407BHJP
【FI】
   A61C8/00 Z
   F16B33/02 A
   F16B39/30 Z
【請求項の数】2
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-55917(P2013-55917)
(22)【出願日】2013年3月19日
(65)【公開番号】特開2014-180366(P2014-180366A)
(43)【公開日】2014年9月29日
【審査請求日】2015年8月7日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】511280250
【氏名又は名称】デジタルソリューション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100146020
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 善光
(74)【代理人】
【識別番号】100062328
【弁理士】
【氏名又は名称】古田 剛啓
(72)【発明者】
【氏名】上田 寛治
(72)【発明者】
【氏名】川岡 拓司
(72)【発明者】
【氏名】荒古江 圭嗣
(72)【発明者】
【氏名】田中 栄二
(72)【発明者】
【氏名】黒田 晋吾
【審査官】 川島 徹
(56)【参考文献】
【文献】 特表2006−514840(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/008870(WO,A1)
【文献】 特開2010−057743(JP,A)
【文献】 特表2006−512122(JP,A)
【文献】 特表2007−531604(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3026125(JP,U)
【文献】 米国特許第04863383(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61C 8/00
F16B 33/02
F16B 39/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
歯科矯正用として使用するネジタイプのスクリューインプラントであって、ネジ山の進み側フランク角を5°〜20°及び追い側フランク角を20°〜40°とし、かつ追い側フランク角を進み側フランク角より大きく設定することによって、ネジ山を形成する追い側フランク面の面積を進み側フランク面の面積よりも広くし、ネジ谷底に円筒形状を形成し、
及び、ネジ先側を先細りとしたテーパー形状のテーパー角度を2°〜5.0°としたことを特徴とするスクリューインプラント。
【請求項2】
前記テーパー形状部のそれぞれのネジ山の高さを頭部直近のネジ山の外径の10〜25%未満として、追い側フランク面の面積を進み側フランク面の面積よりも広くすることを特徴とする請求項1に記載のスクリューインプラント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯科矯正用や歯科補綴用インプラント等の固定用として使用することのできるスクリューインプラントに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、歯科矯正用や歯科補綴用としてのスクリューインプラントが急速に使用されるようになっている。このスクリューインプラントはネジ状であり、歯茎の上から歯を支持している歯槽骨に埋入し(ネジ込み)、ワイヤー等の矯正部材によって歯を強制的に正常な位置に移動させるために、当該矯正部材の固定源として使用されたりされている。
【0003】
例えば、特許文献1には、上部にヘッドが形成されており、その下部には弾性部材を固定する固定部と、工具を結合する工具固定部と、歯槽骨に植立される植立部と、所定の長さを有するネジとが順次に形成されたインプラントであって、前記ネジは、上広下狭の円錐形からなり、該円錐形からなるネジ山のうち、上部1層又は2層以上のネジ山先端は所定の幅を有する面が形成され、その下部のネジ山先端は鋭角が形成されているスクリューインプラントが開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、歯に移動力を加えてその歯の位置を矯正するための付勢部材を固定するための歯科矯正用インプラントアンカーであって、先端から末端方向に、順に、ネジ部、第一嵌合部、中間部、第二嵌合部、および頭部を具備してなり、前記二つの嵌合部は、それぞれ先端側端部の外径が末端側端部の外径よりも小さい円錐台状の形状であり、前記中間部は、第一嵌合部の末端側端部断面と、第二嵌合部の先端側端部断面とで画成される円錐台状の空間内部に構成されている歯科矯正用インプラントアンカーが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2006−514840号公報
【特許文献2】特開2011−135910号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
歯科矯正用に使用されるスクリューインプラントは、歯列を矯正する際の矯正部材(ワイヤー等)等の固定源として使用されるため、食事などにおける顎を繰り返し動かすときに生ずる振動などによって、スクリューインプラントが埋入された状態で歯槽骨との接触面に隙が生じてきて緩むことなく、また埋入していたスクリューインプラントが歯槽骨から抜けるのでなく、強固に固定される必要がある。また、歯間などの狭い箇所に設ける必要があるため、安定姿勢で正確かつ容易に埋入される必要がある。さらに、歯列の矯正が完了した後には、スクリューインプラントを容易に外すことができる必要がある。
【0007】
しかし、特許文献1に記載されたような従来からの歯科矯正用スクリューインプラントは、例えば2年にわたる治療等の長期間にわたる矯正治療中に破断や脱落してしまうという問題や、繰り返し振動による影響で治療中に緩みが生じ歯科矯正具がしっかりと治療対象の歯を固定できないという問題が発生しており、その割合は埋入した歯科矯正用スクリューインプラントのうちの23.2%にも上るという報告もある。
【0008】
スクリューインプラントが脱落してしまうと、歯列の矯正を的確に行うことができない。また、スクリューインプラントが破断した場合には、歯槽骨に残存する断片を除去するための手術が必要であり、また、その手術は極めて困難であるため歯槽骨を損傷してしまい易い等の深刻な問題が発生する。
【0009】
そこで、特許文献2に記載の発明が開示されたが、特許文献2に記載された発明は歯の噛み合う方向に対して略直角方向である略水平方向に埋入しているため、歯の噛み合い方向と同じ方向の振動を繰り返し受けると螺子部の長さが短いなどから上下方向で取り付けなければならないときには緩みや抜けが生じやすいのが懸念されるという問題があった。
【0010】
本発明はこうした問題に鑑み創案されたもので、歯科矯正用などとして使用することのできるスクリューインプラントにおいて、歯槽骨等などの骨に緩むことなく長期間にわたって強固に固定することができ、埋入又は取り外しを容易に行うことのできるスクリューインプラントを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1に記載のスクリューインプラント1は、歯科矯正用として使用するネジタイプのスクリューインプラント1であって、ネジ山2aの進み側フランク角βを5°〜20°及び追い側フランク角αを20°〜40°とし、かつ追い側フランク角を進み側フランク角より大きく設定することによって、ネジ山2aを形成する追い側フランク面F1の面積を進み側フランク面F2の面積よりも広くし、ネジ谷底に円筒形状を形成し、
及び、ネジ先側を先細りとしたテーパー形状のテーパー角度を2°〜5.0°としたことを特徴とする。
【0012】
それぞれのネジ山2aのフランク面の面積Wは、式1により求められる。式1において、d1は外径、d2は谷の底の径、hはネジ山の高さHにtan(フランク角(追い側フランク角α又は進み側フランク角β))を乗じた値を意味する。
【0013】
【数1】
【0014】
【数2】
【0015】
[数1]及び[数2]より、ネジ山2aのフランク面の面積Wは、外径を示すd1、谷の底の径を示すd2、ネジ山の高さH、追い側フランク角α又は進み側フランク角βにより決定されることがわかる。
【0016】
請求項2に記載のスクリューインプラント1は、請求項1において、前記テーパー形状部のそれぞれのネジ山2aの高さHを頭部3直近のネジ山2aの外径の10〜25%未満として、追い側フランク面F1の面積を進み側フランク面F2の面積よりも広くすることを特徴とする。
【0017】
請求項2に記載のスクリューインプラント1は、請求項1において、ネジ山2aの進み側フランク角βを5°〜20°及び追い側フランク角αを20°〜40°とし、かつテーパーネジのそれぞれのネジ山2aの高さHを頭部3直近のネジ山2aの外径の10〜25%未満として、追い側フランク面F1の面積を進み側フランク面F2の面積よりも広くすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
請求項1に記載のスクリューインプラント1は、ネジの進行方向の歯槽骨との接触面の面積をネジの抜け方向の歯槽骨との接触面の面積よりも狭くし(すなわち、ネジの抜け方向の歯槽骨との接触面積(追い側フランク面F1)を、ネジの進行方向の歯槽骨との接触面積(進み側フランク面F2)よりも大きくし)、かつネジ先側が先細りするテーパーを設けたことから、長期にわたる矯正治療中の顎運動による繰り返し振動が生じ、歯の矯正具等による繰り返し引っ張り荷重を受けても、あるいは骨吸収による顎とスクリューネジ部との空隙が生じても、歯槽骨から抜けにくく、かつ歯槽骨との接触面に隙が生じにくいので緩みにくいという効果が生じ、数年という長期にわたり歯槽骨に埋入したままで固定することができる。
【0019】
すなわち、このスクリューインプラント1のネジ本体2は先細りテーパー状に形成されているため、あらかじめドリルで穿設された小穴に埋入されたネジ本体2のネジ山2aのフランク面が、その全長にわたって常に歯槽骨に強く接触するからである。すなわち、ネジ本体2の先端部分によって形成されるいわゆるネジ道を、それより後続の大径であるネジ山2aが少しずつ拡げるようにして埋入され、そのネジ山2aの外周面であるフランク面の全体が歯槽骨を押圧した状態となるからである。
【0020】
ちなみに、ネジ本体2をストレート状に形成すると、その先端部分を除く部分は、当該先端部分によって形成されたネジ道を拡げることなく埋入されるため、歯槽骨に強く接触しない。従って、歯槽骨に対する組付き力は、本発明に係る先細り状のスクリューインプラント1と比較して弱くなる。
【0021】
また、ネジ本体2のテーパー角度θを0.5°〜5.0°の範囲に設定したことによって、歯槽骨に強固に固定することができる。すなわち、テーパー角度θを0.5°以下に設定すると、ネジ本体2がストレート状である従来のスクリューインプラントとの違いが微少となり、その逆に、5.0°以上に設定すると歯槽骨への埋入が困難となってしまうからである。
【0022】
さらに、ネジ山2aを形成する進み側フランク面F2の面積を追い側フランク面F1の面積よりも狭くしている。ネジ山2aの山の頂から谷底までの外面であるフランク面は埋入させたときに歯槽骨と直接に接触する面であることから、前記フランク面の面積が大きい方がネジ山2aと歯槽骨との接触抵抗が高くなり、かつ歯槽骨に対するネジ山2aのフランク面の押圧力が大きくなる。
【0023】
本発明のスクリューインプラント1のネジ本体2はネジ先側を先細りさせたテーパーネジであるので、スクリューインプラント1を進み方向側に動かそうとする外力に対しては歯槽骨に螺入させるときに形成された孔が進み側にいくほど小さいし、ネジ山2aはネジ先側から頭側にいくほど大きいので、歯槽骨の面にネジ山2aの進み側のフランク面F2が強く干渉する。これにより、スクリューインプラント1を進み方向側に動かそうとする外力に対しては、スクリューインプラント1は動かないので、緩みが生じにくいという効果を奏する。
【0024】
しかし、スクリューインプラント1を頭側に動かそうとする外力に対しては歯槽骨に螺入させるときに形成された孔が頭側にいくほど大きいし、ネジ山2aは頭側からネジ先側にいくほど小さいので、歯槽骨の面にネジ山2aの追い側のフランク面F1は弱い干渉をする。これにより、スクリューインプラント1を頭側に動かそうとする外力に対しては、スクリューインプラント1は動きやすいので、緩みが生じやすいという問題があったが、ネジ山2aを形成する追い側フランク面F1の面積を広く設定するので、ネジ山2aと歯槽骨との接触抵抗が高くなり、かつ歯槽骨に対するネジ山2aのフランク面の押圧力が大きくなるようにしたので、スクリューインプラント1を頭側に動かそうとする外力に対しては、スクリューインプラント1は動かないので、緩みが生じにくいという効果を奏する。
【0025】
また、上記の構成としたことによって、当該スクリューインプラント1の埋入又は取り除きを容易に行うことができる。すなわち、スクリューインプラント1は、先細りテーパー状に形成されたネジ本体2の外周面が、前記したように、その先端部から後端部に向かって、歯槽骨にすでに形成されているネジ道を少しずつ拡げるように接触して螺入させていきながら埋入されるからである。
【0026】
さらに、当該スクリューインプラント1を取り除く際には、ネジ本体2によって先細りのテーパー状に形成されたネジ道を逆方向に回転させながら引き抜くため、上端部を除く部分は引き抜かれるに従って歯槽骨との接触力が徐々に弱くなる。従って、極めて容易に取り外すことができる。
【0027】
請求項2に記載のスクリューインプラント1は、請求項1に記載の発明と同じ効果を奏するとともに、特に歯槽骨からスクリュープラント1を抜けにくくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明に係るスクリューインプラントを示す概要正面図である。
図2図1に示すスクリューインプラントのネジ山部の拡大断面図である。
図3】本発明に係るスクリューインプラントの頭部の他の形状を示す概要正面図である。
図4】本発明のスクリューインプラントを歯槽骨に埋入した状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明に係るスクリューインプラント1は、図1に示すように、歯科矯正用や歯科補綴用として使用するネジタイプのスクリューインプラント1であって、ネジ山2aを形成する追い側フランク面F1の面積を進み側フランク面F2の面積よりも1倍超〜2倍広くし、かつ、ネジ先側を先細りとしたテーパー形状のテーパー角度θを0.5°〜5.0°とする。
【0030】
スクリューインプラント1は、ネジ本体2と、頭部3と、その間に設けられた連設部4を備え、材質はステンレスやチタン等で造られる。歯科矯正用や歯科補綴用の全長は一般的に約5〜20mmである。そして、図4に示すように、歯Tの近傍において歯茎Cの上から歯槽骨に埋入して、歯列を矯正するワイヤー等の矯正部材Mの固定源となる。
【0031】
頭部3は、図1に示すように、その上端部に形成された平面円形状の頂部3bと、その下位に連設された平面正六角形状の操作部3cと、頂部3bと操作部3cとの間に形成された締結部3aからなる形態、又は、図3に示すように、頭部3に形成した締結部3aに穴部を設けた形態などがある。前記平面正六角形状の形態及び前記穴部を設けた形態とも、いずれも歯列を矯正する場合に使用される。
【0032】
連設部4は円柱状のストレート状に形成され、その外径はネジ本体2のネジ山2aの山の頂の直径と同じ外径に設定され、連設部4の長さはスクリューインプラント1を埋入完了したときにスクリューインプラント1のネジ本体2に歯肉が巻き込まない長さに設定される。
【0033】
次に、ネジ本体2について説明する。ネジ本体2はオネジであり、軸部の形態及びネジ部の形態から構成される。本発明の軸の形態はテーパー形状である。そして、本発明のテーパー形状は、ネジ先側を先細りとしたテーパー形状のテーパー角度θを0.5°〜5.0°とする。
【0034】
ネジ本体2の軸部の形態の特徴である、ネジ本体2を先細りのテーパー状にしたことによって緩み難くすることができる。すなわち、ネジ本体2の先端部分によって形成されるいわゆるネジ道を、それより後続の大径であるネジ山が少しずつ拡げるようにして埋入され、そのネジ山の外周面であるフランク面の全体が歯槽骨を押圧した状態となり、フランク面(進み側フランク面F2と追い側フランク面F1)がその全長にわたって常に歯槽骨に強く接触するからである。
【0035】
また、ネジ本体2を先細りのテーパー状に形成したことにより、埋入時における接触抵抗を小さくすることができさらに容易に螺入を行うことができる。
【0036】
さらに、ネジ本体2を先細りのテーパー状に形成したことにより、引き抜きの際には、当該ネジ本体2の外周面と歯槽骨との接触抵抗を徐々に軽減することができる。これにより、歯槽骨からの撤去も容易に行うことができる。
【0037】
次に、図2に示すように、ネジ部の形態について説明する。ネジ部の形態は一般的にピッチP、外径、谷の径、ネジ山2aの角度で規定できる。外径と谷の径の差の1/2をネジ山の高さHと呼び、ネジ山2aの角度は追い側フランク角α及び進み側フランク角βの合計で規定される。そして、ネジの抜け方向の歯槽骨と接触する斜面を追い側フランク面F1と表し、ネジの進行方向の歯槽骨と接触する斜面を進み側フランク面F2と表している。
【0038】
ネジ山2aのフランク面の追い側フランク面F1又は進み側フランク面F2の面積は、外径、谷の底の径、ネジ山の高さH、追い側フランク角α又は進み側フランク角βにより決定される。したがって、上記要素の大きさによってフランク面の追い側フランク面F1と、進み側フランク面F2の面積
との比較ができ、それぞれの面積を求めることができる。
【0039】
本発明のスクリューインプラント1は、追い側フランク面F1の面積を進み側フランク面F2の面積よりも1倍超〜2倍広くすることとし、ネジ山の進み側フランク角を5°〜20°及び追い側フランク角を20°〜40°とし、かつテーパーネジのそれぞれのネジ山2aの高さを頭部3直近のネジ山2aの外径の10〜25%未満としている。
【0040】
歯科矯正用や歯科補綴用として使用するネジタイプのスクリューインプラントは、一般的にネジの進行方向側(進み側)の接触面積(フランク面の面積)が抜け方向側(追い側)の接触面積(フランク面の面積)と同一に設定されていることから、本発明の追い側フランク面F1の面積を進み側フランク面F2の面積よりも1倍超とし、螺入のしやすさを考慮して追い側フランク面F1の面積を進み側フランク面F2の面積よりも2倍以下とした。
【0041】
ネジ山の進み側フランク角は、5°未満であると螺入しにくくなり、20°超であるとネジ山の角度が大きくなり過ぎるため螺入しにくくなる。
【0042】
テーパーネジのそれぞれのネジ山の高さが頭部直近のネジ山の外径の10%未満になると、接触面積(フランク面の面積)が小さくなるので、締付力、締付トルク又は緩みトルクが減少するからであり、テーパーネジのそれぞれのネジ山の高さを頭部直近のネジ山の外径の25%以上になると、ネジ本体2の軸部の直径すなわち谷の径が小さくなり過ぎネジ本体2が折損しやすいからである。
【0043】
ネジ部の形態の特徴として、ネジの抜け方向の歯槽骨との接触面積(追い側フランク面F1)を、ネジの進行方向の歯槽骨との接触面積(進み側フランク面F2)よりも大きくしたので、長期にわたる矯正治療中の顎運動による繰り返し振動が生じ、歯の矯正具等による繰り返し引っ張り荷重を受けても、あるいは骨吸収による顎とスクリューネジ部との空隙が生じても、歯槽骨から抜けにくく、かつ歯槽骨との接触面に隙が生じにくいので緩みにくい。これにより、数年という長期にわたり歯槽骨に埋入したままで固定することができる。
【0044】
本発明に係るスクリューインプラント1の性能を確認するために、第一にテーパー角を同一にして進行方向側のネジ山と歯槽骨との接触面積を抜け方向側のネジ山と歯槽骨との接触面積より小さくした形態の場合、第二に進行方向側のネジ山と歯槽骨との接触面積を抜け方向側のネジ山と歯槽骨との接触面積より小さくしその接触面積比率を同一にしてテーパー角を設けた形態とストレートの形態の場合の比較を試験した。
【0045】
第一の試験について説明する。試験に供するスクリューインプラントについては、同一設定として、テーパー角を1°、ピッチを0.5、頭の直近のネジ本体の外径を1.4mm、ネジ山の高さを0.2mmとし、材質をステンレスとし、異なる設定として、比較対象のスクリューインプラントの進み側フランク角及び追い側フランク角をともに22.5°とし、本発明のスクリューインプラント1の進み側フランク角を10°及び追い側フランク角を35°とした。ネジ山の高さが同一の場合においては進み側フランク角を追い側フランク角より小さくした方が進行方向側のネジ山と歯槽骨との接触面積を抜け方向側のネジ山と歯槽骨との接触面積より小さくすることになる。
【0046】
そして、人工骨に対してスクリュープラントを埋め込み、埋め込み完了後の直後において、締付方向の締付トルクと緩み方向の緩みトルクを測定した。締付トルク及び緩みトルクとも高トルクの方が人工骨に対して固着性が高いことを示し、顎の運動による繰り返し振動によって緩みにくいことを示す。その結果を表1に示す。
【0047】
【表1】
【0048】
表1より、テーパー角が同一でも、進行方向側のネジ山と歯槽骨との接触面積を抜け方向側のネジ山と歯槽骨との接触面積より小さくした形態の本発明の方が、進行方向側のネジ山と歯槽骨との接触面積を抜け方向側のネジ山と歯槽骨との接触面積を同一とする比較品より、締付方向側で締付トルクが約35%高くなり、緩み方向側で緩みトルクが約30%高くなっていることが示されている。これにより、本発明のスクリューインプラント1は顎の運動による繰り返し振動によって緩みにくいことが示された。
【0049】
次に、第ニの試験についてシミュレーションした結果を説明する。シミュレーションの対象としたスクリューインプラントについては、同一設定として、ピッチを0.5、頭の直近のネジ本体の外径を1.4mm、ネジ山の高さを0.2mm、進み側フランク角を10°、追い側フランク角を35°、材質をステンレスとし、異なる設定として、ネジ本体2の形態を、比較対象のスクリューインプラントは円柱状のストレート形状とし、本発明のスクリューインプラント1は円錐状のテーパー形状とした。
【0050】
そして、ネジ山の歯槽骨に対する進行方向側又は抜け方向側の締付力をシミュレーションした。締付力が高い方が繰り返し振動に対して緩みにくさが増加する。なお、本発明に係るスクリューインプラント1は、テーパー角度θが1°のものと2°のものを使用した。その結果を、表2に示す。
【0051】
【表2】
【0052】
表2より、ネジ本体2がストレート形状である形態に対して、本発明であるテーパー形状の方が、テーパー角1°で締付力が約20%高く、テーパー角2°で約60%高くなることが示されている。これより、ネジ本体2の形状は、テーパー形状にした方がストレート形状に対して、顎の運動による繰り返し振動によって緩みにくいことが示された。
【符号の説明】
【0053】
1 スクリューインプラント
2 ネジ本体
2a ネジ山
2b ネジ溝
2c 切欠部
3 頭部
3a 締結部
3b 頂部
3c 操作部
4 連設部
C 歯茎
H ネジ山の高さ
L 中心線
M 矯正部材
P ピッチ
S 傾斜線
T 歯
F1 追い側フランク面
F2 進み側フランク面
R 曲率半径
θ テーパー角度
α 追い側フランク角
β 進み側フランク角
図1
図2
図3
図4