(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
バストトップ点から脇部に向けて伸ばした水平線と、バストトップ点から前記前中心部分に向けた傾線と、バージスラインとで囲まれる領域において、前記土台部側から前記厚み最大部に向かう部分の前記一体成型部材の厚みは、前記バストトップ点側よりも厚みの変化が大きくなるように形成されていることを特徴とする請求項1記載のカップ部を有する衣類。
さらに、当て材を有し、前記当て材が、前記一体成型部材における前記カップ部のストラップ取り付け位置、バストトップ点、前中心部分の上端部を結ぶラインの下側領域の全部または一部に取り付けられていることを特徴とする請求項1または2記載のカップ部を有する衣類。
【背景技術】
【0002】
従来から、ファッション性を重視し、アウター感覚で着用することのできる、いわゆる「三角ブラ」に代表されるカップ部を有する衣類が使用されている。このタイプの衣類は、ファッション性とともに楽に着用できることも求められているため、ワイヤーを使用しないノンワイヤータイプのものが多い。
【0003】
このタイプのカップ部を有する衣類の例を
図10に示す。
図10(a)は、三角ブラの斜視図であり、
図10(b)は、前記三角ブラの背面図である。前記両図において、同一部分には同一符号を付している。図示のように、この三角ブラ120は、一対のカップ部121の両端に、一対のバック布123が取り付けられている。一対のバック布123の他端は、連結係止部125およびホック127により、係止可能になっている。カップ部121の上部とバック布123の背中側の上端には、ストラップ122の各端が、係止具126aにより取り付けられている。ストラップ122には、長さを調節する調節部126bが取り付けられている。同図では、調節部126bとして、エイト環(8環)が使用されている。
【0004】
このタイプの衣類は、カップ部121の両端に取り付けられているバック布123の取り付け部分(着用時の脇の部分)の幅が狭くなっていることが特徴の一つである。このような構成を有することで、露出度の高い服装においても、着こなしの幅を広げることができていた。その一方で、カップ部が三角形状であるとともにバック布の脇部分の幅が狭く、さらにノンワイヤータイプであるため、バストの脇の部分を抑えることが十分ではなく、脇部分からバストがはみ出しやすく、安定感およびバストの造形性に欠けがちであった。
そこで、カップ部にパッドを付加したり(例えば、特許文献1参照。)、ワイヤーをカップの外側から下側にかけての縁部に配置することで、バストの造形性を向上させることが提案されてきた(例えば、特許文献2参照。)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、単にパッドを付加しても、カップ部を有する衣類が浮き上がってしまい却って不自然な外観となったり、また、ワイヤーを配置することでデザイン上の制約や、着用時の締め付け感が生じ、本来のニーズに沿わない結果となりがちであった。
【0007】
そこで、本発明は、「三角ブラ」に代表されるカップ部を有する衣類であって、ノンワイヤーであり、バック布の幅が狭いにもかかわらず、バストの造形性に優れ、安定感のあるカップ部を有する衣類を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するために、本発明のカップ部を有する衣類は、
ノンワイヤー型のカップ部、土台部、ストラップ、およびバック布を備えたカップ部を有する衣類であって、
前記カップ部および前記土台部が一体成型された一体成型部材であり、
前記カップ部の上部に、前記ストラップの一端が取り付けられ、
前記一体成型部材の脇部に前記バック布が取り付けられ、
前記バック布の取り付け幅が、前記一体成型部材の脇部長さの1/2以下であり、
前記一体成型部材を、前記土台部、下記の上カップ部および下記の下カップ部に分けた場合、前記土台部の厚み、下記上カップ部の厚みおよび下記の下カップ部の厚みが、
土台部<上カップ部<下カップ部の関係を有し、
バストトップ点から脇部に向けて伸ばした水平線と、バストトップ点から前記前中心部分に向けた傾線と、バージスラインとで囲まれる領域において、前記一体成型部材の厚みが、バストトップ点からバージスラインに向かい、徐々に厚くなり、バストトップ点からバージスラインに向かう方向の厚み最大部を経て徐々に薄くなる
ことを特徴とする。
上カップ部:前記カップ部のストラップ取り付け位置とバストトップ点と前中心部分の
上端部とを結ぶラインの上側の部分
下カップ部:前記カップ部のストラップ取り付け位置とバストトップ点と前中心部分の
上端部とを結ぶラインの下側の部分
また、本発明のカップ部を有する衣類は、
ノンワイヤー型のカップ部、土台部、ストラップ、およびバック布を備えたカップ部を有する衣類であって、
前記カップ部および前記土台部が一体成型された一体成型部材であり、
前記カップ部の上部に、前記ストラップの一端が取り付けられ、
前記一体成型部材の脇部に前記バック布が取り付けられ、
前記バック布の取り付け幅が、前記一体成型部材の脇部長さの1/2以下であり、
前記一体成型部材を、前記土台部、下記の上カップ部および下記の下カップ部に分けた場合、前記土台部の厚み、下記上カップ部の厚みおよび下記の下カップ部の厚みが、
土台部<上カップ部<下カップ部の関係を有し、
バストトップ点から脇部に向けて伸ばした水平線と、バストトップ点から前記前中心部分に向けた傾線と、バージスラインとで囲まれる領域において、前記一体成型部材の厚みが、バージスラインの方向に沿って徐々に厚くなり、バージスラインに従った方向の厚み最大部を経て徐々に薄くなることを特徴とする。
上カップ部:前記カップ部のストラップ取り付け位置とバストトップ点と前中心部分の
上端部とを結ぶラインの上側の部分
下カップ部:前記カップ部のストラップ取り付け位置とバストトップ点と前中心部分の
上端部とを結ぶラインの下側の部分
また、本発明のカップ部を有する衣類は、
ノンワイヤー型のカップ部、土台部、ストラップ、およびバック布を備えたカップ部を有する衣類であって、
前記カップ部および前記土台部が一体成型された一体成型部材であり、
前記カップ部の上部に、前記ストラップの一端が取り付けられ、
前記一体成型部材の脇部に前記バック布が取り付けられ、
前記バック布の取り付け幅が、前記一体成型部材の脇部長さの1/2以下であり、
前記一体成型部材を、前記土台部、下記の上カップ部および下記の下カップ部に分けた場合、前記上カップ部の厚みおよび前記土台部の厚みが前記下カップ部の厚みよりも薄くなる関係を有し、
バストトップ点から脇部に向けて伸ばした水平線と、バストトップ点から前記前中心部分に向けた傾線と、バージスラインとで囲まれる領域において、前記一体成型部材の厚みが、バストトップ点側から少しずつ厚くなり、バージスラインに沿うようにして厚み最大部が形成されていることを特徴とする。
上カップ部:前記カップ部のストラップ取り付け位置とバストトップ点と前中心部分の
上端部とを結ぶラインの上側の部分
下カップ部:前記カップ部のストラップ取り付け位置とバストトップ点と前中心部分の
上端部とを結ぶラインの下側の部分
【発明の効果】
【0009】
本発明のカップ部を有する衣類は、前記のような構成であるため、ノンワイヤーでありバック布の幅が狭いにもかかわらず、バストの造形性に優れ、安定感のあるカップ部を有する衣類を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明のカップ部を有する衣類において、前記バック布の取り付け幅が、前記一体成型部材の脇部長さの1/5〜1/2の範囲にあることが好ましい。前記取り付け幅は、より好ましくは1/4〜1/3の範囲である。本発明のカップ部を有する衣類は、前記バック布の取り付け幅が狭く、着用時の脇部分をあけることができるので、脇ぐりの深いノースリーブのアウターにも合わせることができるなど、アウターを選ばず着用できる。
【0012】
本発明のカップ部を有する衣類において、前記前中心部分における上端部の前記土台部の最下部からの高さが5cm以下の範囲であることが好ましい。前記高さは、より好ましくは、3cm以下である。前記高さの下限は、特に限定されないが、例えば、0.5cm以上である。したがって、前記高さは、例えば、0.5cmから5cmの範囲が好ましく、より好ましくは、2cmから3cmの範囲である。本発明のカップ部を有する衣類は、前中心が極めて低いので、例えば、アウターの胸元がV字状に開いたデザインであっても、好適に着用することができる。
【0013】
前述のとおり、本発明のカップ部を有する衣類において、前記一体成型部材を、前記土台部、下記の上カップ部および下記の下カップ部に分けた場合、前記土台部の厚み、下記の上カップ部の厚みおよび下記の下カップ部の厚みが、土台部<上カップ部<下カップ部の関係を有する。また、前述のとおり、本発明のカップ部を有する衣類において、前記一体成型部材を、前記土台部、下記の上カップ部および下記の下カップ部に分けた場合、前記上カップ部の厚みおよび前記土台部の厚みが前記下カップ部の厚みよりも薄くなる関係を有する。ここで、上カップ部とは、前記カップ部のストラップ取り付け位置とバストトップ点と前中心部分の上端部とを結ぶラインの上側の部分を指し、下カップ部とは、前記ラインの下側の部分を指す。
【0014】
前述のとおり、本発明のカップ部を有する衣類において、バストトップ点から脇部に向けて伸ばした水平線と、バストトップ点から前記前中心部分に向けた傾線と、バージスラインとで囲まれる領域において、前記一体成型部材の厚みが、バストトップ点からバージスラインに向かい、徐々に厚くなり、バストトップ点からバージスラインに向かう方向の厚み最大部を経て徐々に薄くなる。
また、前述のとおり、本発明において、バストトップ点から脇部に向けて伸ばした水平線と、バストトップ点から前記前中心部分に向けた傾線と、バージスラインとで囲まれる領域において、前記一体成型部材の厚みが、バストトップ点側から少しずつ厚くなり、バージスラインに沿うようにして厚み最大部が形成されている。この場合、前記土台部側から前記厚み最大部に向かう部分の前記一体成型部材の厚みは、前記バストトップ点側よりも厚みの変化が大きくなるように形成されていることが好ましい。
【0015】
前述のとおり、本発明のカップ部を有する衣類において、バストトップ点から脇部に向けて伸ばした水平線と、バストトップ点から前記前中心部分に向けた傾線と、バージスラインとで囲まれる領域において、前記一体成型部材の厚みが、バージスラインの方向に沿って徐々に厚くなり、バージスラインに従った方向の厚み最大部を経て徐々に薄くなる。
【0016】
本発明のカップ部を有する衣類において、前記バストトップ点からバージスラインに向かう方向の厚み最大部が、バストトップ点からバージスラインに向かう方向の略中央部分を横断するバージスラインの相似曲線上にあり、前記バージスラインに従った方向の厚み最大部が、前記水平線と前記傾線とで形成される角度を略等分する線上にあることが好ましい。
【0017】
本発明のカップ部を有する衣類において、さらに、当て材を有し、前記当て材が、前記一体成型部材における前記カップ部のストラップ取り付け位置、バストトップ点、前中心部分の上端部を結ぶラインの下側領域の全部または一部に取り付けられていることが好ましい。この場合において、前記当て材は、布帛であることが好ましい。また、前記当て材が、曲げ剛性が0.1〜1.6gf・cm
2/cmの範囲内にあることが好ましい。
【0018】
本発明のカップ部を有する衣類において、衣類がブラジャーであることが好ましい。
【0019】
本発明のカップ部を有する衣類において、衣類が、さらに衣類本体部を有し、前記衣類本体部が前記土台部の下に取り付けられていることが好ましい。
【0020】
つぎに、本発明のカップ部を有する衣類について、例をあげて説明する。ただし、本発明は、以下の例に限定および制限されない。
【0021】
図1に、本発明のカップ部を有する衣類の一例としてブラジャーを示す。本例においては、バック布13は、着脱自在な連結係止部15を背中心付近に有している。
図1(a)は、バック布を係止した状態の本例のブラジャーの斜視図であり、
図1(b)は、バック布を係止した状態の本例のブラジャーの側面図であり、
図1(c)は、バック布を開いた状態の本例のブラジャーの背面図である。前記三図において、同一部分には、同一符号を付している。図示のように、本例のカップ部を有する衣類10(ブラジャー)は、一対の一体成型部材11、一対のストラップ12、一対のバック布13、および一対の当て材14を主要構成要素とする。
図2には、一体成型部材11の一例の模式図を示す。一体成型部材11は、ノンワイヤー型のカップ部が土台部と一体成型されたものである。前記一体成型部材11は、カップ部のストラップ取り付け位置44、バストトップ点42、前中心部分の上端部43を結ぶライン45aの上側の部分である上カップ部11a、前記ライン45aの下側の部分である下カップ部11bおよび土台部11cからなる。前記下カップ部11bと前記土台部11cとの仮想境界線は、バージスラインと略一致する。前記土台部11cがあることで、着用時に前記一体成型部材11がバージスラインにフィットして、バック布の脇部分の幅が狭いデザインであっても、バストを安定に保持することができる。
【0022】
前記一体成型部材11を構成する上カップ部11aの上部には、ストラップ12の一端が取り付けられている。カップ部を有する前記一対の一体成型部材11は、土台部11cで連結されている。前記土台部11cの両端には、バック布13の一端が取り付けられている。バック布13の取り付け幅Aは、前記一体成型部材11の脇部長さBの1/2以下である。一対のバック布13の他端は、連結係止部15が取り付けられて、着脱自在になっている。本例のブラジャーでは、連結係止具として、ホック31(例えば、フック・アンド・アイ(鈎ホック))を使用しているが、他の種類の係止具を使用してもよく、また、バック布が係止部を有さないフロントホックタイプや、係止部がないタイプ、バック布を結んで係止するタイプであってもよい。ストラップ12の他端は、バック布13の上辺に取り付けられた円環の係止具16aを通って反転し、エイト環からなる長さ調節具16bに導入されることによって、ストラップ12の長さ調整が可能な状態で、ストラップ12の他端側が、バック布13の上辺に取り付けられている。ストラップの態様はこれに限定されず、例えば、カップ部のみにストラップが取り付けられている、いわゆる「ホルターネック」タイプであってもよい。
【0023】
本例のブラジャーでは、前記一体成型部材11は、乳房41に
図2に図示するような位置となる状態で着用される。このときに、カップ部のストラップ取り付け位置44、バストトップ点42、前中心部分の上端部43を結ぶライン45aの下側の領域に前記当て材14が設けられている。
図3に当て材14の一例の模式図を示す。
図3(a)は、前記一体成型部材における前記カップ部のストラップ取り付け位置、バストトップ点、前中心部分の上端部を結ぶラインの下側領域の全部に取り付けられる場合の当て材の形状を示したものである。この場合、前記ライン45aが土台部下線に対する傾斜角θは、45°付近であることが好ましい。また、
図3(b)は、前記ラインの下側領域の一部に取り付けられる場合の当て材の形状の一例である。この場合、当て材は、略L字形状であることが好ましい。
【0024】
前記当て材14の前中心部分の取り付け高さは任意であるが、より高い位置から取り付けられていることが好ましく、前記一体成型部材11の前中心部分の上端部43を含む領域で取り付けられていると、バストの造形力を安定して高めることができるため、より好ましい。なお、前記当て材14は、前中心部分の上端部43から上部に延長した仮想点43bとバストトップ点42とを結ぶライン45bと、前記一体成型部材11の上線との交点46を覆うように取り付けられていることも好ましい。この態様の当て材の形状の一例を
図3(c)に示す。前中心部分の上端部43の土台部の最下部からの高さが低いデザインの場合であっても、このような形状の当て材14を用いると、バストの造形力を安定して高めることができる。
【0025】
前記当て材14は、カップ部を構成する素材に比べて形状安定性が高い素材を含んでいる。このような素材で構成することで、カップ部に張りやこしを付与し、バストの造形性や安定感を得ることができる。前記当て材14は、布帛を使用することができ、この場合、具体的には、パワーネット、サテンネット、トリコネット等の素材がより好ましいが、これらに限定されない。形状安定性が高い素材であれば、伸縮性の素材であっても非伸縮性の素材であってもよい。一体成型部材の成型時に、成型材料と前記当て材とを重ねた状態で成型を行う場合には、伸縮性の素材を用いると、前記当て材のしわ等の発生を防ぐことができるので好ましい。
【0026】
前記当て材14は、曲げ剛性が、0.1〜1.6gf・cm
2/cmの範囲内にあると、形状を保持する力と衣類としての柔軟性とを両立させることができるため、好ましい。曲げ剛性は、0.5〜1.0gf・cm
2/cmの範囲内にあることがより好ましい。曲げ剛性は、長さ20cm、幅1cmの試料Sを1cmの間隔でチャックで把持して曲げ、曲率K=−2.5〜+2.5(cm
−1)の範囲で等速度曲率の純曲げを行い、その際の変形速度0.5(cm
−1)/secとして、単位長さ当たりの曲げ剛性を測定して求める。この測定試験機としてカトーテック株式会社製のKES−FB2−AUTO−A(自動化純曲げ試験機)を用いることができる。
【0027】
前記一体成型部材11の厚みは、前記土台部11c、前記上カップ部11a、前記下カップ部11b、の順に厚くなっている、すなわち、厚みが、土台部11c<上カップ部11a<下カップ部11bの関係を有することが好ましい。
【0028】
さらに、前記ライン45aの下側の部分である下カップ部11b部分において、バストトップ点42から脇部に向けて伸ばした水平線と、バストトップ点42から前記前中心部分に向けた傾線と、バージスラインとで囲まれる領域において、前記一体成型部材11の厚みが、バストトップ点42からバージスラインに向かい、徐々に厚くなり、バストトップ点42からバージスラインに向かう方向の厚み最大部を経て徐々に薄くなることが好ましい。特に、
図6に示すように、バストトップ点42から前中心部分に向けて45°の角度で下した傾線と、バストトップ点42から脇部に向けて伸ばした水平線とで囲まれる範囲で、バストトップ点42から前記下カップ部11bの下辺が形成するバージスライン81に向かう方向の略中央部分を横断するバージスラインの相似曲線82上に、前記一体成型部材のバストトップ点42からバージスライン81に向かう方向の厚み最大部83が形成されていることが好ましい。
【0029】
前記バストトップ点42から脇部に向けて伸ばした水平線と、バストトップ点42から前記前中心部分に向けた傾線と、バージスライン81とで囲まれる領域において、前記一体成型部材11の厚みが、バージスラインの方向に沿って徐々に厚くなり、バージスラインに従った方向の厚み最大部を経て徐々に薄くなることが好ましい。前記バージスラインに従った方向の厚み最大部84は、前記水平線と前記傾線とで形成される角度を略等分する線上にあることがより好ましい。
【0030】
前記一体成型部材の厚みは、バストトップ点からバージスラインに向かう方向の厚み最大部83と、前記バージスラインに従った方向の厚み最大部84との交点85付近において、最も厚くなっていることが好ましい。最も厚い部分の厚みは、着用者のサイズや求める造形性に応じて設計可能であるが、20mm程度あることが好ましい。最も厚い部分を前記の位置にすることにより、単なるボリュームアップ効果にとどまらず、バストを寄せて谷間を作るという良好な造形性を実現することができる。また、前記一体成型部材は、連続的に厚みが変化していることが、着用時のフィット感を高めることができ、また違和感や異物感を防ぐことができるので、好ましい。
【0031】
また、前記一体成型部材11の硬さは、前記土台部11c、前記上カップ部11a、前記下カップ部11bの順に柔らかいことが好ましい。すなわち、硬さが、下カップ部11b<上カップ部11a<土台部11cの関係を有することが好ましい。前記土台部11cが比較的硬い構成をとることで、前記一体成型部材11のバージスラインへのフィット性、固定性を高めることができる。そのため、ワイヤーがなく、かつ、バック布の脇部分の幅が狭いデザインであっても、着用時のずり上がりや、乳房の脇方向への広がりを防ぐことができる。また、上記のような段階的な硬さを有することで、着用時の違和感や異物感がなく、バストを安定に保持することができる。
【0032】
上記の厚みと柔らかさを同時に実現するためには、前記一体成型部材11を、例えば次の方法で作製することができる。前記一体成型部材11は、ウレタンフォーム、不織布、あるいはポリウレタンなどの高弾性糸から編成された厚手シート状の丸編素材(ダンボールニット)等を使用することができるが、成型性、耐久性等の点からウレタンフォームが好ましい。均一な厚みの前記素材を用意し、所望の形状の金型を用いて圧縮成型を行う。成型後の厚みが薄い部分は、強く圧縮されるため硬く、成型後の厚みが厚い部分は、弱い圧縮であるため柔らかくなり、好適な厚みと柔らかさを備えた一体成型部材11を得ることができる。
【0033】
図4に、前記一体成型部材に当て材を設けた状態の一例を示す。
図4(a)は、前記一体成型部材を背面(着用側)から見た模式図であり、
図4(b)は、
図4(a)のΙ−Ιにおける断面図である。
図4(b)に示すように、本例においては、前記一体成型部材11の中に挟み込まれた状態で、前記当て材14が設けられている。このような構成とすることで、当て材が、直接肌に接するよりは、着用感を良くすることができる。本例の場合、一体成型部材の成型時に、部材の形成材料の中に当て材を挟み込んでおき、成型してもよい。
【0034】
図5には、前記一体成型部材に当て材を設けた状態のその他の例を示す。
図5(a)は、前記一体成型部材を背面(着用側)から見た模式図であり、
図5(b)は、
図5(a)のΙΙ−ΙΙにおける断面図である。
図5(b)に示すように、本例においては、前記一体成型部材11の内側表面に、前記当て材14が設けられている。このような構成とすることで、当て材の有する形状安定力を、バストに直接に作用させることができる。
【0035】
前記当て材は、下カップ部11bの凹凸形状に沿わせて設けることが好ましい。この場合、例えば当て材にダーツ部を設ける等の方法を採用することができる。バストの造形力をより高めるためには、平面状の当て材を使用するとバストを押さえる力が強くなり、好ましい。
【0036】
つぎに、本例のブラジャーの使用方法について、
図7に基づき説明する。
図7において、
図1と同一部分には同一符号を付している。
【0037】
図7は、本例のカップ部を有する衣類であるブラジャーの使用状態を示す斜視図であり、91は使用者を示す。図示のように、通常のブラジャーと同様に、カップ部を有する一体成型部材11で乳房が覆われている。本例のブラジャーでは、ワイヤーを使用していないものの、形状安定性が高い素材を含む前記当て材14が設けられているため、前記一体成型部材11で乳房を覆うことで優れたバストの造形性が得られる。また、ワイヤーがないため、乳房に違和感がない。
【0038】
さらに、
図1に示すタイプのブラジャーを作製し、モニターによる着用評価を行った。このブラジャーには、曲げ剛性が0.6gf・cm
2/cmのパワーネットを、当て材として使用した。モニターはC70とし、BSI(ボディステージI)が19〜24歳の3名、BSIIが27〜36歳の5名について、試作品、従来品のワイヤー入りブラジャーおよび従来品のワイヤーなし三角ブラの着用試験を行った。
図8に、前記3種類のブラジャーを着用した状態で写真撮影し、モアレ干渉縞による立体的な造型性を等高線で示し比較した結果を示す。
図8(a)は本実施形態に係る試作品のブラジャー、
図8(b)は従来品のワイヤー入りブラジャー、
図8(c)は従来品のワイヤーなし三角ブラを、それぞれ同一モニターが着用した際の等高線である。本実施形態に係る試作品のブラジャーは、従来品のワイヤー入りブラジャーと比較して遜色ない程度のボリュームアップと寄せ上げ効果があることがわかる。また、モニターに着用感のコメントを求めたところ、8名中7名が「胸が造形できている」、8名中6名が「着用感が総合的に快適」と回答し、ワイヤーを使用していないにもかかわらず、ワイヤーブラジャーと同程度の造形感、安定感が実現されていることがわかった。
【0039】
図9(a)には、本発明のカップ部を有する衣類のその他の例として、ボディスーツの斜視図を示す。
【0040】
このボディスーツのブラジャー相当部分の態様は、
図1で説明したブラジャーとほぼ同一の概念のもとに設計されているボディスーツである。本態様においては、一体成型部材11の下側に、衣類本体部であるボディ部101とクロッチ部102を有している。本例では、ボディ部101の一部が本発明におけるバック布となっているが、バック布を別途設けてその下に衣類本体部を取りつけてもよい。その他の態様は
図1に示したブラジャーと実質上同一であり、同一部分には同一の符号を付して、重複説明を省略している。
図9(a)に示したボディスーツの実施の形態例においても、当て材14が設けられており、好ましくは前記一体成型部材11における厚みや硬さが前述の態様となっていることで、よりバストの造形性と着用安定性を高めることができる。
【0041】
次に、
図9(b)に本発明のカップ部を有する衣類のその他の例として、ブラスリップの斜視図を示す。
【0042】
このブラスリップのブラジャー相当部分の態様は、
図1で説明したブラジャーとほぼ同一の概念のもとに設計されているブラスリップである。本態様においては、一体成型部材11の下側に、胸下部身頃111と、さらにそれに連なってスカート部112を有している。本例では、胸下部身頃111が本発明におけるバック布である。バック布を別途設けてその下に胸下部身頃とスカート部を取りつけてもよいし、バック布の下に直接スカート部を取りつけてもよい。その他の態様は
図1に示したブラジャーと実質上同一であり、同一部分には同一の符号を付して、重複説明を省略している。
図9(b)に示したブラスリップの実施の形態例においても、当て材14が設けられており、好ましくは前記一体成型部材11における厚みや硬さが前述の態様となっていることで、よりバストの造形性と着用安定性を高めることができる。
【0043】
以上、実施の形態の具体例として、ブラジャー、ボディスーツ、ブラスリップをあげて本発明を説明したが、本発明のカップ部を有する衣類は、これらの具体例で記載されたもののみに限定されるものではなく、ブラジャー、ボディスーツ、ブラスリップ、ブラキャミソール、セパレートタイプの水着のトップ部、その他各種のカップ部を有する衣類に適用できる。