特許第5905013号(P5905013)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5905013
(24)【登録日】2016年3月25日
(45)【発行日】2016年4月20日
(54)【発明の名称】ハイブリッド駆動装置
(51)【国際特許分類】
   B60W 10/08 20060101AFI20160407BHJP
   B60W 20/00 20160101ALI20160407BHJP
   B60W 10/06 20060101ALI20160407BHJP
   B60W 10/26 20060101ALI20160407BHJP
   B60K 6/46 20071001ALI20160407BHJP
   B60L 7/24 20060101ALI20160407BHJP
   B60L 11/18 20060101ALI20160407BHJP
【FI】
   B60K6/20 320
   B60K6/20 310
   B60K6/20 330
   B60K6/46
   B60L7/24 D
   B60L11/18 A
【請求項の数】15
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-532094(P2013-532094)
(86)(22)【出願日】2011年8月26日
(65)【公表番号】特表2013-544693(P2013-544693A)
(43)【公表日】2013年12月19日
(86)【国際出願番号】EP2011064725
(87)【国際公開番号】WO2012045522
(87)【国際公開日】20120412
【審査請求日】2013年4月4日
【審判番号】不服2014-26441(P2014-26441/J1)
【審判請求日】2014年12月25日
(31)【優先権主張番号】102010042183.9
(32)【優先日】2010年10月8日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】390023711
【氏名又は名称】ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(74)【代理人】
【識別番号】100112793
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 佳大
(72)【発明者】
【氏名】オリヴァー ケーファー
【合議体】
【審判長】 中村 達之
【審判官】 金澤 俊郎
【審判官】 梶本 直樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開平8−79911(JP,A)
【文献】 特開2005−253126(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 6/20 - 6/547
B60L 7/24
B60L 11/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レンジ・エクステンダとしての内燃機関発電機ユニット(6)と、ハイブリッド車両(1)を駆動及び減速させるための少なくとも一つの電気機械(3)と、バッテリ(4)とを備えているハイブリッド駆動装置(12)を動作させるための方法であって、
前記内燃機関発電機ユニット(6)の内燃機関(7)において機械エネルギを形成するステップと、
前記内燃機関発電機ユニット(6)の発電機(8)において、前記機械エネルギを電気エネルギに変換するステップと、
前記発電機(8)からの電気エネルギを用いて前記バッテリ(4)を充電すると共に、回生モードにある前記電気機械(3)からの電気エネルギを用いて前記バッテリ(4)を充電するステップとを備えている、ハイブリッド駆動装置(12)を動作させるための方法において、
前記回生モードにある前記少なくとも一つの電気機械(3)の動作中に、前記ハイブリッド車両(1)を減速させるため、及び、前記回生モードにある前記少なくとも一つの電気機械(3)からの電気エネルギを用いて前記バッテリ(4)を充電するために、該バッテリ(4)を充電するための充電電力として、前記内燃機関発電機ユニット(6)の前記発電機(8)から供給される電力を、前記内燃機関(7)の回転数及び前記内燃機関発電機ユニット(6)の前記発電機(8)の回転数のうちの少なくとも一つを制御することによって制御し、かつ、前記バッテリ(4)を充電するための充電電力として、前記回生モードにある前記少なくとも一つの電気機械(3)から供給される電力を制御し、それにより、前記発電機(8)及び前記電気機械(3)から供給される前記バッテリ(4)の前記充電電力が所定の限界値を下回るようにし、
前記ハイブリッド車両(1)の制動ペダルの操作による減速過程の開始後、前記内燃機関発電機ユニット(6)の前記発電機(8)から供給される前記電力が当該電力の前記制御によって少なくとも5%低減されるまで、前記電気機械(3)は回生モードでは動作せず、前記内燃機関発電機ユニット(6)の前記発電機(8)から供給される前記電力が当該電力の前記制御によって少なくとも5%低減された後に前記電気機械(3)は回生モードで動作する、
ことを特徴とする、ハイブリッド駆動装置(12)を動作させるための方法。
【請求項2】
前記バッテリ(4)の前記充電電力の所定の限界値は前記内燃機関発電機ユニット(6)の前記発電機(8)から供給される最大電力の0.9倍から2.5倍の間にある、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記バッテリ(4)の前記充電電力の所定の限界値は前記内燃機関発電機ユニット(6)の前記発電機(8)から供給される最大電力の0.9倍から1.5倍の間にある、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記バッテリ(4)の前記充電電力を、前記内燃機関発電機ユニット(6)の前記発電機(8)から供給される電力と、前記電気機械(3)から供給される電力の和から形成する、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記内燃機関発電機ユニット(6)の前記発電機(8)から供給される前記電力を、前記電気機械(3)の回生トルクが大きくなるほど小さくなるように制御し、前記電気機械(3)の回生トルクを、前記内燃機関発電機ユニット(6)の前記発電機(8)から供給される電力が大きくなるほど小さくなるように制御する、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
総制動トルクを、回生トルクと少なくとも一つのハイブリッド車両ブレーキ(14)の制動トルクの和から形成する、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記内燃機関発電機ユニット(6)の前記発電機(8)及び/又は前記電気機械(3)によって形成される交流電流を、整流器(11)によって、前記バッテリ(4)を充電するための直流電流に変換する、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記整流器(11)は、非制御の整流器である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
車両制御ユニット(18)によって前記電気機械(3)の目標トルクを設定し、
電子制御ユニット(19)によって前記電気機械(3)の実際トルクを制御し、
レンジ・エクステンダ制御ユニット(20)によって前記内燃機関発電機ユニット(6)の前記発電機(8)から供給される前記電力を制御する、請求項1乃至8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記目標トルクとして目標回生トルク及び目標駆動トルクのうちの少なくとも一つを設定し、
前記実際トルクとして実際回生トルク及び実際駆動トルクのうちの少なくとも一つを制御する、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
ハイブリッド車両(1)を駆動及び減速させるための電気機械(3)と、
バッテリ(4)と、
前記バッテリ(4)を充電するための、及び、前記電気機械(3)のための電気エネルギを形成するためのレンジ・エクステンダとしての内燃機関発電機ユニット(6)とを備えている、ハイブリッド車両(1)用のハイブリッド駆動装置(12)において、
請求項1乃至10のいずれか一項に記載の方法を実施することを特徴とする、ハイブリッド駆動装置(12)。
【請求項12】
前記ハイブリッド駆動装置(12)は、前記内燃機関発電機ユニット(6)の前記発電機(8)及び前記電気機械(3)のうちの少なくとも一つによって形成される交流電流を、前記バッテリ(4)を充電するための直流電流に変換するための整流器(11)を備えている、請求項11に記載のハイブリッド駆動装置。
【請求項13】
前記整流器(11)は、非制御の整流器である、請求項12に記載のハイブリッド駆動装置。
【請求項14】
前記ハイブリッド駆動装置(12)は、前記電気機械(3)の目標トルクを設定することができる車両制御ユニット(18)を備えており、
前記ハイブリッド駆動装置(12)は、前記電気機械(3)の実際トルクを制御するための電子制御ユニット(19)を備えており、
前記ハイブリッド駆動装置(12)は、前記内燃機関発電機ユニット(6)の前記発電機(8)から供給される電力を制御するためのレンジ・エクステンダ制御ユニット(20)を備えている、請求項11乃至13のいずれか一項に記載のハイブリッド駆動装置。
【請求項15】
前記車両制御ユニット(18)、前記電子制御ユニット(19)及び前記レンジ・エクステンダ制御ユニット(20)は一つの制御装置(13)に統合されている、請求項14に記載のハイブリッド駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の上位概念に記載されているハイブリッド駆動装置を動作させるための方法及び請求項12の上位概念に記載されているハイブリッド駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車産業においては、電気機械を用いて駆動される自動車がますます開発及び/又は製造されている。そのような自動車においては、電気自動車を駆動されるための電気機械の動作用の電気エネルギは電気自動車内に配置されているバッテリに由来する。バッテリは電気自動車の停止中に電流網において充電される。電気自動車はこのために充電装置を備えている。バッテリの電気エネルギの蓄積容量は制限されているので、電気自動車は約50kmから200kmまでの範囲の距離しか到達することはできない。電気自動車の到達距離を延長するために、電気自動車にはレンジ・エクステンダ(Range Extender)としての内燃機関発電機ユニットが設けられている。電気自動車でもって比較的長い区間を走行し、その区間においては電流網によってバッテリを充電できない、又は十分には充電できない場合には、内燃機関発電機ユニットを用いてバッテリが充電される、及び/又は、内燃機関発電機ユニットを用いて電気機械に電流が供給される。これによって、レンジ・エクステンダを備えているその種の電気自動車の実現可能な到達距離を、内燃機関のみを用いて駆動される従来の自動車の実現可能な到達距離に相当する到達距離に延長することができる。
【0003】
自動車の電気機械は電気モータとしても発電機としても駆動される。電気モータとして動作する場合には、電気機械は自動車の駆動に使用され、回生モードにおいて電気機械が発電機として動作する場合には、電気機械が自動車又はハイブリッド車両を減速させるために使用される。ハイブリッド車両の走行中に、内燃機関発電機ユニットの動作が必要である場合には、内燃機関発電機ユニットによって供給される電気エネルギでもって、電気機械が電気モータとして動作し、またバッテリも充電される。その種の動作中に、ハイブリッド車両は減速するか、又は制動過程が行なわれる。ハイブリッド車両の減速過程の間に、電気機械は電気モータとしての動作から、発電機としての動作に切り替えられ、それに伴いバッテリを充電するための電気エネルギを形成する。しかしながら、内燃機関発電機ユニットも依然として動作状態にあるので、バッテリの充電電力は発電機としての電気機械の電気エネルギと、内燃機関発電機ユニットから供給される電気エネルギとから成るものである。これによって、バッテリの充電電圧の過電圧又は高い充電電流が生じる可能性があり、これはハイブリッド車両の高電圧コンポーネント、特にバッテリを損傷させる虞がある。
【0004】
特許文献1には、エネルギ源と、電気的なエネルギ蓄積部と、電気エネルギを形成し、また電気的なエネルギ蓄積部を充電するよう構成されている発電機と、電気的なトラクションモータと、エネルギ源をオン及び/又はオフするよう構成されている起動装置とを備えている車両が開示されており、この車両においては、起動装置によるエネルギ源のスイッチオン及び/又はスイッチオフを開始する制御素子を備えているスタート装置が設けられており、制御素子はドライバが始動時点に車両内に居なくても始動を実現できるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】DE 10 2008 039 907
【発明の概要】
【発明の効果】
【0006】
レンジ・エクステンダとしての内燃機関発電機ユニットと、ハイブリッド車両を駆動及び減速させるための少なくとも一つの電気機械と、バッテリとを備えているハイブリッド駆動装置を動作させるための本発明による方法は、内燃機関において機械エネルギを形成するステップと、内燃機関発電機ユニットの発電機において、機械エネルギを電気エネルギに変換するステップと、内燃機関発電機ユニットの発電機からの電気エネルギを用いてバッテリを充電するステップ、及び/又は、回生モードにある電気機械からの電気エネルギを用いてバッテリを充電するステップとを備えており、少なくとも一つの電気機械が発電機として動作している間に、ハイブリッド車両を減速させるため、また、回生モードにある少なくとも一つの電気機械からの電気エネルギを用いてバッテリを充電するために、このバッテリを充電するための、内燃機関発電機ユニットの発電機から供給される電力及び/又は回生モードにある少なくとも一つの電気機械から供給される電力は、バッテリの充電電力が所定の限界値を下回るように開ループ制御及び/又は閉ループ制御される。
【0007】
ハイブリッド車両の減速過程又は制動過程の間に、少なくとも一つの電気機械は回生モードで動作し、発電機として、バッテリ、特に高圧バッテリを充電するための電気エネルギを供給する。回生モードにある少なくとも一つの電気機械のこの動作中に、少なくとも一つの電気機械から供給される、バッテリを充電するための電力は、内燃機関発電機ユニットが同時に動作している場合には、差し当たり低い値に維持されるか又は遮断され、それにより、少なくとも一つの電気機械から供給される電力と、内燃機関発電機ユニットから供給される電力の和は所定の限界値を上回らず、従ってハイブリッド駆動装置の高圧コンポーネントの損傷、特にバッテリの損傷は生じない。
【0008】
特に、内燃機関発電機ユニットの発電機から供給される電力が、内燃機関の回転数及び/又は内燃機関発電機ユニットの発電機の回転数を用いて開ループ制御及び/又は閉ループ制御される、及び/又は、バッテリの充電電力の所定の限界値は内燃機関発電機ユニットの最大電力の0.9倍から2.5倍の間、特に0.9倍から1.5倍の間にある、及び/又は、所定の限界値は、ハイブリッド装置のコンポーネント、例えばバッテリのパラメータ、例えば温度に依存する。
【0009】
別の一つの実施の形態においては、バッテリの電力が、内燃機関発電機ユニットの発電機から供給される電力と、電気機械から供給される電力の和から形成され、有利には、副次的な装置、例えば空調装置又は暖房装置の所要(負荷)電力が考慮される。補助コンポーネントは電力を消費するので、それによってバッテリの充電電力は、補助コンポーネントの(負荷)電力を減算した、内燃機関発電機ユニットの発電機から供給される電力と、電気機械から供給される電力の和に相当する。
【0010】
補完的な実施の形態においては、内燃機関発電機ユニットの発電機から供給される電力が、電気機械の回生トルクに依存して開ループ制御及び/又は閉ループ制御される、及び/又は、電気機械の回生トルクが、内燃機関発電機ユニットの発電機から供給される電力に依存して開ループ制御及び/又は閉ループされる。回生トルクを用いて、ハイブリッド車両が回生モードにある電気機械によって制動乃至減速され、また回生トルクを用いて電気機械が発電機として駆動され、電流を形成する。従って、回生トルクは電気機械から供給される電力に直接比例する。
【0011】
有利には、内燃機関発電機ユニットの発電機から供給される電力は電気機械の回生トルクに間接比例して開ループ制御及び/又は閉ループ制御される、及び/又は、電気機械の回生トルクは内燃機関発電機ユニットの発電機から供給される電力に間接比例して開ループ制御及び/又は閉ループ制御される。
【0012】
付加的な実施の形態においては、電気機械の回生トルクが大きくなればなるほど、レンジ・エクステンダの発電機から供給される電力は小さくなるように開ループ制御及び/又は閉ループ制御され、また、レンジ・エクステンダの発電機から供給される電力が大きくなればなるほど、電気機械の回生トルクは小さくなるように開ループ制御及び/又は閉ループ制御される。
【0013】
一つのヴァリエーションにおいては、減速過程の開始以降、回生トルクが高められる。
【0014】
好適には、減速過程の初期段階の間、電気機械からは回生トルクは供給されない、及び/又は、総制動トルクは回生トルクと少なくとも一つのハイブリッド車両ブレーキの制動トルクの和から形成される。ハイブリッド車両は、総制動トルクによって制動又は減速され、この総制動トルクは電気機械の回生トルクと、少なくとも一つのハイブリッド車両ブレーキの制動トルクの和から形成される。ハイブリッド車両ブレーキは例えばハイブリッド車両におけるディスクブレーキ又はドラムブレーキである。
【0015】
一つの別の実施の形態においては、減速過程の初期段階の間には、レンジ・エクステンダの発電機から供給される電力が低減されるまで、例えば少なくとも5%、10%又は20%低減されるまで、電気機械から回生トルクは供給されない。減速過程の初期段階の間に、レンジ・エクステンダは依然として動作状態にあり、また付加的に、回生モードにある電気機械の動作に基づき、充電電力がバッテリに供給されることを回避するために、この初期段階の間は総制動トルクが専ら少なくとも一つのハイブリッドブレーキから供給される。内燃機関発電機ユニットの電力が低減されたときに初めて、同程度に、回生トルク又は電気機械から供給される電力を相応に高めることができる。
【0016】
特に、内燃機関発電機ユニットの発電機及び/又は電気機械によって形成される交流電流が、整流器、有利には非制御整流器によって、バッテリを充電するための直流電流に変換される。
【0017】
一つの別の実施の形態においては、バッテリを充電するための、内燃機関発電機ユニットの発電機から供給される電流及び/又は回生モードにある電気機械から供給される電流が、バッテリの充電電流は所定の電流限界値を下回るように開ループ制御及び/又は閉ループ制御される。
【0018】
一つの補完的なヴァリエーションにおいては、車両制御ユニット(Vehicle Control Unit)によって電気機械の目標トルク、特に回生トルク及び/又は駆動トルクが設定される、及び/又は、電子制御ユニット(Electronic Control Unit)によって電気機械の実際トルク、特に回生トルク及び/又は駆動トルクが開ループ制御及び/又は閉ループ制御される、及び/又は、レンジ・エクステンダ制御ユニット(Range Extender Control Unit)によって内燃機関発電機ユニットの発電機から供給される電力が開ループ制御及び/又は閉ループ制御される。
【0019】
ハイブリッド車両用の本発明によるハイブリッド駆動装置は、ハイブリッド車両を駆動及び減速させるための電気機械と、バッテリと、バッテリを充電するための、及び/又はモータとしての電気機械のための電気エネルギを形成するためのレンジ・エクステンダとしての内燃機関発電機ユニットとを備えており、本明細書において記述する方法を実施することができる。
【0020】
別の一つのヴァリエーションにおいては、ハイブリッド駆動装置は、レンジ・エクステンダの発電機及び/又は電気機械によって形成される交流電流を、バッテリを充電するための直流電流に変換するための整流器、有利には非制御整流器を備えている。
【0021】
別の一つの実施の形態においては、ハイブリッド駆動装置が車両制御ユニットを含んでおり、この車両制御ユニットによって電気機械の目標トルクを設定することができる、及び/又は、ハイブリッド駆動装置は電気機械の実際トルクを開ループ制御及び/又は閉ループ制御するための電子制御ユニットを含んでいる、及び/又は、ハイブリッド駆動装置は内燃機関発電機ユニットの発電機から供給される電力を開ループ制御及び/又は閉ループ制御するためのレンジ・エクステンダ制御ユニットを含んでいる。
【0022】
特に、車両制御ユニット、電子制御ユニット及びレンジ・エクステンダ制御ユニットは一つの制御装置に統合されている。
【0023】
一つのヴァリエーションにおいては、発電機が同期機械、有利には永久磁石励起式同期機械である。
【0024】
以下では添付の図面を参照しながら本発明の実施例を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】レンジ・エクステンダとしての内燃機関発電機ユニットの概略的なシステム図を示す。
図2】ハイブリッド駆動装置の概略的なシステム図を示す。
図3】複数のチャートを示す。
図4】ハイブリッド車両の外観を示す。
【発明を実施するための形態】
【0026】
バッテリ4からの電気エネルギを用いて電気機械3によって運転される、自動車2としてのハイブリッド自動車1においては、ハイブリッド車両1の到達距離を延長するために、内燃機関発電機ユニット6が使用される。いわゆるレンジ・エクステンダとしての内燃機関発電機ユニット6を用いることにより、燃料タンク5から燃料管16を介して案内される燃料から、内燃機関7によって機械エネルギが形成され、この機械エネルギは永久磁石励起式の同期機械9としての発電機8によって電気エネルギに変換される。内燃機関7は駆動軸15を用いて発電機8と機械的に接続されている。発電機8は交流電流を形成し、この交流電流は非制御整流器11によって直流電流に変換される。従って、内燃機関発電機ユニット6はパルスインバータを有しておらず、それにより、内燃機関発電機ユニット6から供給される電力Pは内燃機関7の回転数n又は発電機8の回転数nに直接比例する。発電機8に由来する電気エネルギを用いて、バッテリ4が充電される、及び/又は、電気機械3が運転される。これによって、ハイブリッド車両1の到達距離を著しく延長することができ、例えば約300kmから600kmの範囲の到達距離にまで延長することができる。バッテリ4に由来する電気エネルギを用いるハイブリッド車両1の到達距離は例えば50kmから150kmの範囲である。ハイブリッド駆動装置12は内燃機関発電機ユニット6、電気機械3及びバッテリ4を備えている。
【0027】
同期機械9としての発電機8、非制御整流器11及びバッテリ4は電流線路17によって相互に接続されている。ハイブリッド車両1(図4を参照されたい)のバッテリ4を充電するためには、整流器11から供給される直流電流の電圧がバッテリ4の電圧よりも高いことが必要である。バッテリ4の電圧はバッテリ4の充電状態又は負荷状態に依存する。制御装置13は図示されていない制御線路を用いて、バッテリ4を充電するための直流電流の電圧に関する目標値を受信する。この目標値を用いて、直流電流の電圧の開ループ制御装置10としての制御装置13によって、内燃機関7の回転数nが開ループ制御及び/又は閉ループ制御される。
【0028】
駆動軸15のみを用いる機械的な結合に基づき、内燃機関7の回転数、従ってまた発電機8の回転数が高くなればなるほど、発電機8から供給される交流電流の電圧もいっそう高くなる。発電機8から供給される交流電流の電圧が高くなればなるほど、整流器11から供給される直流電流の電圧も高くなり、またその逆も当てはまる。つまり、内燃機関7の回転数の開ループ制御及び/又は閉ループ制御、従って発電機8の回転数の開ループ制御及び/又は閉ループ制御によって、バッテリを充電するための、整流器11によって整流される電流の電圧を開ループ制御及び/又は閉ループ制御することができる。
【0029】
内燃機関発電機ユニット6の図示されていない別の実施例においては、内燃機関7が伝動装置を用いて発電機8と接続されている。この伝動装置を用いて、発電機8の回転数を、内燃機関7の回転数に依存せずに開ループ制御及び/又は閉ループすることができ、従って、整流器11から供給される直流電流の電圧も開ループ制御及び/又は閉ループすることができる。制御装置13は図示されていない伝動装置を用いて発電機8の回転数を開ループ制御し、従って整流器11から供給される直流電流の電圧も開ループ制御する。
【0030】
図4にはハイブリッド車両1が示されている。ハイブリッド車両1は専ら電気機械3によって駆動される。電気自動車1を駆動させるための電気エネルギはバッテリ4及び/又は内燃機関発電機ユニット6に由来する。電気自動車1の到達距離を延長するために、ハイブリッド車両1には図1による内燃機関発電機ユニット6が組み込まれている。これによって、ハイブリッド車両1の到達距離を例えば約300kmから600kmの範囲の到達距離に延長することができる。発電機8から供給される電流を用いて、バッテリ4を充電することができる、及び/又は、ハイブリッド車両1の駆動又は牽引のために電気機械3を動作させることができる。
【0031】
ハイブリッド車両1を駆動させるための電気機械3を、回生モードにおいてはハイブリッド車両1を減速又は制動させるための発電機としても使用することができる。従って電気機械3は電気モータとしても発電機としても動作する。回生モードにおいては、電気機械3が回生トルクをハイブリッド車両1に対する負のトルクとして供給するので、それによってハイブリッド車両1は制動される。この回生トルクを用いて電気機械3は駆動され、またバッテリ4を充電するための電流を形成する。有利には、バッテリ4は例えば50ボルト又は100ボルトを上回る電圧を有する高圧バッテリである。ハイブリッド車両1の停止中に、このハイブリッド車両1を、図示していない外部又は内部の充電装置を用いて、外部の電流網、例えば230ボルトの家庭用電源網を介して充電することができる。
【0032】
図3には五つのタイムチャートが示されている。全てのチャートにおいて横軸には時間がプロットされている。図3の一番上に示されているチャートにおいては、縦軸にハイブリッド車両1の速度vがプロットされている。ハイブリッド車両1は先ず、一定の速度で走行し、時点t1以降にはハイブリッド車両1の速度が低減され、従って時点t1以降はハイブリッド車両1の減速過程又は制動過程が行なわれている。
【0033】
図3の上から2番目のチャートにおいては、縦軸に電気機械3のトルクMEがプロットされている。時点t1までは、電気機械3がハイブリッド車両1を駆動させるための駆動トルクとしての正のトルクMEを供給し、時点t1以降では電気機械3が負のトルク、即ち、ハイブリッド車両1を減速させるための回生トルクを供給する。従って、電気機械3は時点t1までは電気モータとして動作し、時点t1以降は発電機として動作する。回生トルクは時点t1から時点t2までは一定に上昇し、時点t2以降は電気機械3が一定の回生トルクMEを供給する。図3に示されている3番目のチャートには、内燃機関発電機ユニット6の電力Pが示されている。時点t1までは、即ち、電気モータとしての電気機械3からの機械エネルギを用いてハイブリッド車両1が走行している間は、内燃機関発電機ユニット6からは電力Pが供給され、これにより一方では電気機械3に電気エネルギが供給され、他方ではバッテリ4が充電される。図3における4番目のチャートには、内燃機関発電機ユニット6の内燃機関7の回転数nがプロットされている。内燃機関発電機ユニット6から供給される電気エネルギは内燃機関発電機ユニット6の内燃機関7の回転数又は発電機8の回転数に直接比例する。何故ならば、非制御整流器11は発電機8によって形成される交流電流の直流電流への変換に使用されるからである。ハイブリッド車両1は4つの車輪にそれぞれディスクブレーキとしてのハイブリッド車両ブレーキ14を有している。時点t1以降では、ハイブリッド車両1のドライバが図示していないブレーキペダルを操作することによって制動過程が開始される。従って、ドライバは総制動トルクを設定し、この総制動トルクを用いてハイブリッド車両1を減速させることができる。しかしながら、時点t1における制動ペダルの操作によって、内燃機関発電機ユニット6から供給される電力を非常に短い時間、例えば1秒未満又は数ミリ秒では0に低減することができない。従って、バッテリ4を充電するための、内燃機関発電機ユニット6から供給される電力と電気機械3から供給される電力の和から成るバッテリ4の充電電力は所定の限界値を上回らない。この理由から時点t1においては、総制動トルクが専ら、制動トルクMBをもたらすハイブリッド車両ブレーキ14によって提供され、電気機械3は回生トルクを供給しない。時点t1から時点t2までは、ハイブリッド車両ブレーキ14の制動トルクMBが線形に低減され、それと同時に同じ範囲では電気機械3の回生トルクが高められる。付加的に、時点t1から時点t2までは、内燃機関発電機ユニット6によって提供される電力が0に低減される。これによって、時点t1と時点t2との間の減速過程の間においても、バッテリ4の全体の充電電力は、この実施例において時点t1までの内燃機関発電機ユニット6の電力に相当する所定の限界値を下回ったままである。時点t2以降は、内燃機関発電機ユニット6からは電力は供給されない。即ち、内燃機関発電機ユニット6はスイッチオフされ、ハイブリッド車両1の減速は専ら電気機械3から供給される回生トルクによって実施される。
【0034】
図3に示されている経過を多様に変化又は変更することができる。例えば、時点t2以降は、ハイブリッド車両1のドライバがハイブリッド車両1のより大きい減速を所望するような場合には、総制動トルクを電気機械3だけから供給するのではなく、電気機械3の他にもハイブリッド車両ブレーキ14からも供給することができる。図3における3番目のチャートに応じて、バッテリ4の充電電力の所定の限界値が時点t1までの内燃機関発電機ユニット6の電力よりも大きい場合には、既に時点t1において、電気機械3は(小さい)回生トルクを供給することができ、それによって、バッテリ4の電力の所定の限界値を上回ることなく、バッテリ4を充電するための電力も供給することができる。減速過程の間に、ハイブリッド車両1のドライバによって非常に小さい総制動トルクしか要求されない場合には、時点t2以降においても更に、内燃機関発電機ユニット6を僅かな電力で動作させることができ、それによって、時点t2以降はバッテリ4が、電気機械3から供給される電力によっても、内燃機関発電機ユニット6から供給される電力によっても充電することができる。従って、減速過程の間にハイブリッド車両のドライバによって要求される、異なる大きさの制動トルクは、ハイブリッド駆動装置12のコンポーネントのプロセス乃至駆動様式の変化をもたらす。
【0035】
車両制御ユニット18は電気機械3の所要目標トルクを設定する。電子制御ユニット19は電気機械3を開ループ制御及び/又は閉ループ制御するので、それにより電気機械3の実際トルクは車両制御ユニット18によって設定される目標トルクに対応する。レンジ・エクステンダ制御ユニット20によって、内燃機関発電機ユニット6の発電機8から供給される電力が開ループ制御及び/又は閉ループ制御される。車両制御ユニット18、電子制御ユニット19及びレンジ・エクステンダ制御ユニット20は制御装置13に統合されている。
【0036】
全体を考察すると、本発明によるハイブリッド駆動装置12と重要な利点は結びついている。減速過程中、特に減速過程の開始時に、電気機械3は回生モードでは動作せず、又は僅かな範囲でのみ回生モードで動作し、それによりバッテリ4に供給される充電電力は所定の限界値を下回る。何故ならば、減速過程中、特に減速過程の開始時に内燃機関発電機ユニット6から供給される電力を非常に短い時間では0、又は比較的小さい値に低減することができないからである。これによって、バッテリ4に供給される最大の充電電力を小さくすることができ、またバッテリ4の損傷を回避することができる。
図1
図2
図3
図4