特許第5905022号(P5905022)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5905022コヒーレント検出受信機と直接検出受信機の両方を含む光ネットワークの分散管理
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5905022
(24)【登録日】2016年3月25日
(45)【発行日】2016年4月20日
(54)【発明の名称】コヒーレント検出受信機と直接検出受信機の両方を含む光ネットワークの分散管理
(51)【国際特許分類】
   H04B 10/2513 20130101AFI20160407BHJP
【FI】
   H04B9/00 253
【請求項の数】10
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-544723(P2013-544723)
(86)(22)【出願日】2011年12月14日
(65)【公表番号】特表2014-504482(P2014-504482A)
(43)【公表日】2014年2月20日
(86)【国際出願番号】US2011064796
(87)【国際公開番号】WO2012082833
(87)【国際公開日】20120621
【審査請求日】2014年9月30日
(31)【優先権主張番号】61/422,995
(32)【優先日】2010年12月14日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】502101180
【氏名又は名称】タイコ エレクトロニクス サブシー コミュニケーションズ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100094112
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 讓
(74)【代理人】
【識別番号】100106183
【弁理士】
【氏名又は名称】吉澤 弘司
(74)【代理人】
【識別番号】100128657
【弁理士】
【氏名又は名称】三山 勝巳
(72)【発明者】
【氏名】アンダーソン,ウィリアム
(72)【発明者】
【氏名】ピリペトスキイ,アレッキシィ エヌ.
【審査官】 前田 典之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−153200(JP,A)
【文献】 特開2006−245706(JP,A)
【文献】 特開2010−226254(JP,A)
【文献】 欧州特許出願公開第01675285(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 10/2513
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
波長の信号帯域内のそれぞれ異なる関連する波長で複数の光信号を送信するように構成された送信機と、
前記複数の光信号を受信するように構成された受信機であって、少なくとも1つのコヒーレント検出受信機と少なくとも1つの直接検出受信機を含む受信機と、
前記複数の光信号のうちの少なくとも第1の光信号を前記送信機から前記少なくとも1つのコヒーレント検出受信機へ結合させ、前記複数の光信号のうちの少なくとも第2の光信号を前記送信機から前記少なくとも1つの直接検出受信機へ結合させるために、前記送信機と前記受信機との間に延在する伝送路であって、分散の累積を、前記信号帯域の前記波長のそれぞれに対して、前記伝送路の少なくとも一部において少なくとも10,000ps/nmの最大累積分散にし、前記信号帯域の前記波長の少なくとも1つに対する前記最大累積分散を前記受信機でほぼゼロに戻すために前記信号帯域の前記波長のそれぞれに対して前記最大累積分散を補償するように構成された伝送路と
を含む光通信システムであって、
前記送信機から前記少なくとも1つのコヒーレント検出受信機へ結合される前記複数の光信号のうちの前記少なくとも第1の光信号が少なくとも10,000ps/nmの前記最大累積分散を有し、前記送信機から前記少なくとも1つの直接検出受信機へ結合される前記複数の光信号のうちの前記少なくとも第2の光信号が少なくとも10,000ps/nmの前記最大累積分散を有する、光通信システム
【請求項2】
前記最大累積分散は、少なくとも20,000ps/nmである、請求項1に記載の光通信システム。
【請求項3】
前記最大累積分散は、30,000ps/nmを超える、請求項1に記載の光通信システム。
【請求項4】
前記システムは、前記伝送路と分岐端末との間で結合される少なくとも1つの分岐経路をさらに含み、前記伝送路は、前記分岐経路が前記伝送路に結合される場所で、前記信号帯域の前記波長の前記少なくとも1つに対する前記最大累積分散をほぼゼロに戻すようにさらに構成される、請求項1に記載の光通信システム。
【請求項5】
前記システムは、複数の分岐経路をさらに含み、前記分岐経路のそれぞれは、前記伝送路と個別の関連する分岐端末との間で結合され、前記伝送路は、前記分岐経路の1つが前記伝送路に結合される各場所で、前記信号帯域の前記波長の前記少なくとも1つに対する前記最大累積分散をほぼゼロに戻すようにさらに構成される、請求項1に記載の光通信システム。
【請求項6】
伝送路を通じて送信機から受信機に波長の信号帯域内でそれぞれ異なる関連する波長で複数の光信号を送信するステップであって、前記受信機は、少なくとも1つのコヒーレント検出受信機と少なくとも1つの直接検出受信機を含み、前記伝送路は、前記複数の光信号のうちの少なくとも第1の光信号を前記送信機から前記少なくとも1つのコヒーレント検出受信機へ結合させ、かつ前記複数の光信号のうちの少なくとも第2の光信号を前記送信機から前記少なくとも1つの直接検出受信機へ結合させる、ステップと、
前記送信機から前記少なくとも1つのコヒーレント検出受信機へ結合される前記複数の光信号のうちの前記少なくとも第1の光信号と、前記送信機から前記少なくとも1つの直接検出受信機へ結合される前記複数の光信号のうちの前記少なくとも第2の光信号を含む、前記信号帯域の前記波長のそれぞれに対して、前記伝送路の少なくとも一部において少なくとも10,000ps/nmの最大累積分散へ色分散累積させるステップと、
前記信号帯域の前記波長の少なくとも1つに対する前記最大累積分散を前記受信機でほぼゼロに戻すために前記信号帯域の前記波長のそれぞれに対して前記最大累積分散を補償するステップと
を含む光通信システムの分散を管理する方法。
【請求項7】
前記最大累積分散は、少なくとも20,000ps/nmである、請求項に記載の方法。
【請求項8】
前記最大累積分散は、30,000ps/nmを超える、請求項に記載の方法。
【請求項9】
前記方法は、分岐経路が前記伝送路に結合される場所で、前記信号帯域の前記波長の前記少なくとも1つに対する前記最大累積分散をほぼゼロに戻すステップをさらに含む、請求項に記載の方法。
【請求項10】
関連する分岐経路が前記伝送路に結合される複数の場所のそれぞれで、前記信号帯域の前記波長の前記少なくとも1つに対する前記最大累積分散をほぼゼロに戻すステップをさらに含む、請求項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、参照によりその教示が本明細書に組み込まれている、2010年12月14日に出願した米国仮出願第61/422,995号の出願日の利益を主張するものである。
【0002】
本開示は、光ネットワークに関し、より詳細には、コヒーレント検出受信機と直接検出受信機の両方を含む光ネットワークの分散管理に関する。
【背景技術】
【0003】
直接検出型の光信号受信機は、光信号で変調され、光路で受信機に伝送されるデータを再作成するために光ネットワークで使用されてきた。一般的に、直接検出受信機は、伝送されたデータを表す受信されたシンボルの位相および/または振幅を検出することによって、データを復調することができる。検出された位相および/または振幅は、送信機の信号で変調されたデータを表す出力ビット・ストリームを生成するために、硬判定および/または硬判定検出構成、ならびに順方向誤り訂正(FEC)回路に提供することができる。
【0004】
直接検出受信機を含む波長分割多重(WDM)光ネットワークの課題の1つは、光ファイバ内を伝播する光が色分散を受けることがあり、すなわち、異なる波長の光が異なる群速度で移動し、伝送において様々な波長依存の遅延が生じ得るということである。光ファイバによって受ける色分散は、伝送されたパルスを拡散させ、重複させる。伝送されたデータを確実に検出するために、受信機の前に色分散を取り除くべきである。しかし、分散が数千ps/nmを超える場合、伝送路によって受ける分散を取り除くことは非実用的な場合がある。
【0005】
この問題に取り組むために、既知のシステムでは、受信機で分散を実用的なレベルまで減らすために、分散管理技術を組み込んでいる。ある既知の分散管理技術は、光通信システムの伝送セグメントで分散を管理するために、光ファイバのタイプが選択および配置される分散マッピングを含む。分散マッピングされた伝送区分の一例では、ノンゼロ分散シフト・ファイバ(NZDSF)のスパンまたはノンゼロ分散を用いる分散フラット・ファイバ(DFF)のスパンを分散補償ファイバ(DCF)のスパンと併用して、光伝送セグメントの長さを通じて定期的な分散補償を実現する。そのような定期的な分散マップの各期間の長さは、1期間当たり約500kmの範囲でもよい。
【0006】
図1は、たとえば、DFFファイバを使用したそのような定期的な分散マップに関連する距離に対する累積分散(ps/nm)のプロット10を示している。図示するように、分散は、受信機、つまり約8500kmではほぼゼロであり、システムに沿ってゼロではないが小さい(たとえば約1500ps/nmの最大累積分散)。直接検出を使用する従来のシステムでは、そのような分散マッピング技術は、エンドツーエンドの経路平均分散を低く維持し、ファイバの非線形性を抑制する際に有用であった。
【0007】
しかし、コヒーレント検出受信機は、直接検出受信機よりも利点を提供できることが認識されている。一般的に、コヒーレント受信機は、変調された光信号を検出するために、コヒーレント検出(たとえばホモダインまたはヘテロダイン検出)を利用する。受信機に関して本明細書で使用する場合、「コヒーレント」という用語は、受信された信号を復調するための局部発振器(LO)を含む受信機に言及している。デジタル信号処理(DSP)は、復調されたデータを提供するために受信された信号を処理するために、そのようなシステムに実装することができる。受信された信号のデジタル信号処理によって、速度および柔軟性が提供され、また、様々な機能を実行するために使用することができる。DSPにより、多くの色分散を取り除くことができ、符号間干渉および偏波分散の補正など他の機能を実行することができる。したがって、直接検出受信機とは違い、コヒーレント検出受信機は、分散管理を必要としない。残念なことに、直接検出とコヒーレント検出の両方の受信機構成をサポートするように構築されたシステムは、実用的な直接検出受信機構成の使用を可能にするために、分散管理される必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第7,333,732号
【特許文献2】米国特許出願公開第2010/0232809号
【発明の概要】
【0009】
本開示によるシステムの特徴および利点は、図面とともに、以下の詳細な記述を読むことによって、より一層理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】従来技術システムの一実施形態による累積分散対距離を示す分散マップである。
図2】本開示の一実施形態による光通信システムの概略図である、
図3】本開示の一実施形態による累積分散対距離を示す分散マップである。
図4】本開示の3つの異なる実施形態による累積分散対距離を示す分散マップである。
図5A】コヒーレント検出受信機に関する本開示によるシステムのパフォーマンスを示す平均Q値対出射パワー(launch power)のプロットを含む図である。
図5B】直接検出受信機に関する本開示によるシステムのパフォーマンスを示す平均Q値対出射パワーのプロットを含む図である。
図6A】コヒーレント受信機、および40Gb/sデータ転送速度に関する本開示によるシステムのパフォーマンスを示すQ値対スペクトル効率のプロットを含む図である。
図6B】コヒーレント受信機、および100Gb/sデータ転送速度に関する本開示によるシステムのパフォーマンスを示すQ値対スペクトル効率のプロットを含む図である。
図7】本開示の一実施形態による分岐した光通信システムの概略図である。
図8図7に示すシステムの累積分散対距離を示す例示的な分散マップである。
図9】本開示による光通信システムの分散を管理する1つの方法を示すブロック流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
一般的に、本開示によるシステムおよび方法に結びつく実験において、コヒーレント受信機を使用する光ネットワークは、光路において分散補償を必要としないことが発見された。むしろ、その影響を受信機のDSPで取り除くことができるため、コヒーレント検出システムでは、ファイバ経路において多くの分散を累積することが、やや有利な場合がある。これは、一般的に、受け入れ可能なパフォーマンスを達成するために分散管理を必要とする直接検出システムと全く対照的である。
【0012】
この違いは、直接検出受信機を現在使用しているがコヒーレント検出受信機を使用するように将来的にアップグレードする可能性があるシステムの構造、および直接検出とコヒーレント検出の受信機を併用するシステムにおいて、課題をもたらす可能性がある。しかし、本開示によるシステムおよび方法は、直接検出とコヒーレント検出の受信機の両方の使用を促進する光ネットワークにおいて分散管理を提供することによって、これらの問題を解決する。
【0013】
一般的に、本開示によるシステムおよび方法では、補償の前にWDM信号の複数の波長のそれぞれについて、伝送路において多くの分散を累積することができる。本開示によるシステムでの分散は、少なくとも10,000ps/nm(ピコセカンド/ナノメートル)の最大累積分散、および一部の実施形態では100,000ps/nm以上をも達成することができ、受信機または分岐経路でほぼゼロに修正することができる。本明細書で使用する場合、「ほぼゼロ」は、5000ps/nm未満の分散を指している。そのような分散管理方式では、直接検出とコヒーレント検出の両方の受信機にとって高い伝送パフォーマンスが可能になり、システムの複雑さが軽減され、図1に示すような従来技術で実施されるような分散管理と比較して直接検出のシステム・パフォーマンスに深刻な損失は生じないことが発見されている。
【0014】
ここで図2を参照すると、本開示による例示的な光通信システム100が示されている。システム100は、説明を容易にするために非常に簡素化されたポイントツーポイント・システムとして描写されていることを当業者は認識されよう。本開示の分散管理方式は、様々な光ネットワークおよびシステムに組み込むことができることを理解されよう。
【0015】
図示する例示的な光通信システム100は、光伝送経路104を介して接続された送信機102および受信機106を含む。システムは、光情報チャネル104を通じて伝送するために、たとえば、差動位相シフトキーイング(DPSK)変調フォーマットを使用するなど、送信機102で複数の波長のそれぞれで変調されたデータを用いるWDM伝送システムでもよい。受信機106は、直接検出および/またはコヒーレント検出の受信機を含むことができる。直接検出受信機の一例は、米国特許第7,333,732号に記述されており、コヒーレント検出受信機の一例は、米国特許出願公開第2010/0232809号に記述されており、特許および特許出願の教示は、参照することによって本明細書に組み込まれている。システム100は個別の送信機102および受信機106を含むものとして示されているが、光情報チャネルを通じて双方向通信を促進するために、送信機102および受信機106は、それぞれ送受信装置として構成できることを当業者は認識されよう。
【0016】
システムの特性および要件に基づいて、光伝送経路104は、光伝送ファイバ110、光学増幅器/中継器108−1、108−2、108−3、108−(N−1)、108−N、光学フィルター、ならびに他の能動素子および受動素子を含むことができる。これらの要素のそれぞれに対する様々な構成を当業者は認識されよう。明瞭さのために、光学増幅器/中継器108−1、108−2、108−3、108−(N−1)、108−N、および光伝送ファイバ110だけが、光情報チャネル104に示されている。
【0017】
システム100は、水域112に渡るように用いることができる。たとえば海などの水域に渡るように使用される場合、増幅器/中継器108−1、108−2、108−3、108−(N−1)、および108−Nは、海底114に据え付けることができ、送信機102および受信機106に結合するために、水域112から延在するように、伝送路104を海岸地点116と118との間に広げることができる。複数の光伝送コンポーネントを伝送路104に結合することができ、水面下および/または陸上を通じて配置できることを理解されるであろう。
【0018】
一般的に、光増幅器の間の距離は伝送スパンの長さを規定する。たとえば、水域に渡るように構成されたシステムは、少なくとも第1の120および第2の122の海岸スパンを含む。図示する例示的な実施形態では、第1の海岸スパン120は、送信機102と第1の増幅器/中継器108−1との間に延在し、第2の海岸スパン122は、最後の増幅器/受信機108−Nから受信機106へと延在する。スパンの長さは、特定のシステムでは著しく変化する場合があることを当業者なら認識されるだろう。長距離のシステムでは、たとえば、スパンは長さ20キロメートルしかない場合もあれば、システムの特性および要件に基づいて、平均的なスパンが約50キロメートルから約100キロメートル以上の場合もある。スパンの長さの変化のために、信号減衰および分散はスパンによって変動する。
【0019】
本開示によるシステムでは、データは、WDM方式で複数の波長で変調することができ、分散管理は、システム帯域幅のすべての波長に対して、少なくとも10,000ピコセカンド/ナノメートル(ps/nm)、および一部の実施形態では少なくとも20,000ps/nmへの分散の累積を可能にする分散マップにより達成することができる。図3を参照すると、たとえば、本発明による例示的なシステム100について、プロット200によって表される例示的な分散マップが示されており、海岸スパン120、122、およびそれに隣接するスパンは、SLAFファイバ(超大規模ファイバ)など正分散ファイバを含み、経路の中央のスパン、たとえば、約2000kmから7000kmは、IDF(逆分散ファイバ)などの負分散ファイバ、HDF(高分散ファイバ)、または正および負の分散を用いるファイバの組み合わせから構成される。伝送ファイバは、一般的に、波長の帯域を横切って本質的に一定の累積分散を受ける分散フラット・ファイバ(DFF)でもよく、または波長の帯域を横切って分散の変動を許す従来のファイバでもよいことを当業者は認識されるだろう。
【0020】
プロット200には、複数の部分202、204、206がある。第1の部分202は、海岸スパン120およびそれに隣接するスパンの正分散ファイバによる正の分散補償を示し、30,000ps/nmを超える累積分散を達成する。プロットの第2の部分204は、−30,000ps/nmより負に向けて、経路の中央のスパン(送信機から約2000kmから約7000km)を通じた負分散の累積を示している。プロット200の第3の部分206は、最小分散波長(λ)についてゼロまたはほぼゼロの分散レベルに、累積分散を戻すための海岸スパン122およびそれに隣接するスパンの正分散ファイバによる正の分散補償を示している。最小分散波長λは、部分206の信号帯域幅の内側または外側でもよい。比較のために、図3は、また、直接検出受信機のみの使用のために構成された従来システムの一実施形態に関連する分散のプロット208を含む。図示するように、本開示によるシステムでの分散累積は、直接検出受信機のみの使用のために設計されたシステムに関連する分散累積より大規模でもよい。
【0021】
特定のシステムのパフォーマンスを最適化するための分散累積は、システムの特性および要件に基づいて変動させることができる。しかし、一般的に、本開示によるシステムおよび方法は、補償の前に少なくとも10,000ps/nmへの分散の累積を可能にする。図4は、たとえば、コヒーレントおよび直接検出のシステムの両方に優れたパフォーマンスを提供する本開示による分散マップ402、404、406の3つの異なる例を示している。分散マップ402は、図3に示すマップに類似している。分散マップ404は、分散マップ402と比較して反対に構成されている。つまり、負分散は、海岸スパン120および122、ならびにその近くで累積され、正分散は伝送路の中央で累積される。分散マップ406は、マップ402および404に示すより頻繁な補償を含むが、それでも約20,000ps/nmへの分散の累積を可能にする。
【0022】
図5Aおよび図5Bは、それぞれコヒーレント検出および直接検出の受信機に関して使用されたときの本開示によるシステムのパフォーマンスを示すQ値対(送信機からの)出射パワーのプロットを含む。特に、図5Aは、それぞれ、補償されないシステムを備えたコヒーレント検出受信機(つまり、分散補償なし)と、本開示による分散補償を含むシステムと、直接検出受信機のみを使用するフラット・マップ(flat map)で設計されたシステム(たとえば、図3のプロット208に類似)とを使用するQ値のパフォーマンス対出射パワーを示すプロット502、504、506を含む。図5Bは、それぞれ、本開示による分散補償を含むシステムおよび直接検出受信機のみを使用するフラット・マップで設計されたシステム(たとえば、図3のプロット208に類似)を備えた直接検出受信機を使用するQ値のパフォーマンス対出射パワーと示すプロット508および510を含む。
【0023】
図5Bに示すように、本開示による分散補償を含むシステム(プロット508)は、直接検出受信機について、従来技術のフラット分散マップ(flat dispersion map)(プロット510)と同等またはそれ以上のパフォーマンスを有する。図5Aに示すコヒーレント検出システムについて、本開示による分散補償を含むシステム(プロット504)は、従来技術のフラット分散マップ・システム(プロット506)よりパフォーマンスが優れているが、補償されないシステム(プロット502)ほどは優れていない。したがって、コヒーレント検出システムのパフォーマンスは、伝送路で分散補償が提供されない場合に最善であるが、コヒーレントおよび/または直接の検出を含むことができるシステムでは、本開示による方法で分散が補正される場合、両方のシステムにおいてパフォーマンスは最善である。
【0024】
さらに、本開示によるシステムにおいてスペクトル効率が増えると(つまり、伝送された波長の空間がより近くなると)、本開示によるシステムのパフォーマンスの利点が増加する。図6Aおよび図6Bは、それぞれ40Gb/sおよび100Gb/sのシステムでコヒーレント検出に関して使用されたときの本開示によるシステムのパフォーマンスを示すQ値(dbQ)対スペクトル効率のプロットを含む。具体的には、図6Aは、それぞれ、補償されないシステム(つまり、分散補償なし)と、本開示による分散補償を含むシステムと、直接検出受信機のみを使用するフラット・マップで設計されたシステム(たとえば、図3のプロット208に類似)とを備えた40Gb/sのコヒーレント検出受信機を使用するQ値のパフォーマンス対スペクトル効率を示すプロット602、604、606を含む。図6Bは、それぞれ、補償されないシステム(つまり、分散補償なし)と、本開示による分散補償を含むシステムと、直接検出受信機のみを使用するフラット・マップで設計されたシステム(たとえば、図3のプロット208に類似)とを備えた100Gb/sのコヒーレント検出受信機を使用するQ値のパフォーマンス対スペクトル効率を示すプロット608、610、612を含む。図示するように、本開示による分散補償を含むシステム(プロット604および610)は、40Gb/sおよび100Gb/sのシステムの両方についてスペクトル効率が増加する従来技術のフラット分散マップ(プロット606および612)と比較して、ますますパフォーマンスが優れている。
【0025】
また、本開示によるシステムは、分岐する光ネットワークに関しても役に立つ。一般的に、分岐する光ネットワークは、基幹経路に沿って位置する1つまたは複数の分岐ユニットを含むことができる。各分岐ユニット(BU)は、伝送および/または受信する分岐端末で終端となる分岐経路(たとえば光ファイバ)に接続することができる。各BUは、1つまたは複数の光分岐挿入装置(OADM:optical add/drop multiplexer)を含むことができる。チャネルまたは波長は、分岐端末との間で選択されたチャネルで光信号を導くために、OADMを介して光通信システムの基幹経路に対して追加かつ/または削除することができる。
【0026】
本開示による分岐する光ネットワークの一実施形態では、分岐経路間の伝送路を通じて大量の分散を累積できるが、分散は、各分岐経路でほぼゼロに修正することができる。図7は、たとえば、本開示による例示的な分岐する光ネットワークを示し、光情報チャネル104によって結合された送信機102および受信機106(中継器および情報通信路の他の要素は、明瞭さのために省略する)、ならびに関連する分岐経路706および708によって情報通信路104に結合された第1の702および第2の分岐端末704を含む。図示する実施形態は、送信機102、受信機106、および分岐経路706、708の間の例示的な距離を示している。しかし、これらの特定の距離は例示のため、および説明を容易にするためのみに提供されるものであり、本開示によるシステムは、様々な構成およびシステム要素間の距離を持つ分岐ネットワークに組み込むことができることを理解されるだろう。
【0027】
本開示によると、送信機102から受信機106までの図示する8600kmの光情報チャネル104は、3つの異なる区分として処理することができ、それぞれは、本開示による分散補償を含むことができる。つまり、直接検出のみを使用するために設計された従来技術のフラット・マップ手法と比較して、区分ごとに大量の累積分散を提供することができる。図8は、たとえば、ポイントツーポイント・システムに関連する本開示による分散マップ802(図3に示すマップに類似)および図7に示す分岐するネットワークで使用する本開示による分散マップ804を示す累積分散対距離のプロットを含む。図示するように、分岐するネットワークで使用する本開示によるマップは、分岐経路706と708(つまり5160kmおよび7740km)との間で大きな分散累積を可能にするが、分岐経路でほぼゼロに分散を戻す。特に、図7に示す経路104の区分Aにおいて、分散は約20,000ps/nmへと累積するが、分岐経路706が経路104に結合される場所(つまり送信機から5160km)でほぼゼロに戻り、経路104の区分Bにおいて、分散は約10,000ps/nmへと累積し、分岐経路708が経路104に結合される場所(つまり送信機から7740km)でほぼゼロに戻る。
【0028】
図9は、本開示による光通信システムの分散を管理する方法のための1つの方法900を示すブロック流れ図である。図示するブロック流れ図は、特定のステップの順序を含むものとして示され、記述することができる。しかし、ステップの順序は、本明細書に記述した一般的な機能がどのように実装されるかの例を提供するためだけのものであることを理解されるだろう。特に記述しない限り、提示された順序でステップを実行する必要はない。
【0029】
図9に示す例示的な実施形態では、波長の信号帯域内にある異なる関連する波長の複数の光信号は、伝送路を通じて受信機に伝送される(902)。信号帯域のすべての波長の伝送路の少なくとも1つの部分において、少なくとも10,000ps/nmの最大累積分散に色分散を累積することが可能になる(904)。信号帯域の波長の少なくとも1つに対する最大累積分散は、受信機でほぼゼロに戻される(906)。
【0030】
したがって、本開示によるシステムおよび方法は、高い伝送パフォーマンスを備えた直接検出とコヒーレント検出の受信機の両方の使用を促進する光ネットワークの分散マップを提供することを含む。一般的に、分散は、既知の直接検出システム向けに設計された従来技術のマップよりはるかに大きな量に累積される。一実施形態では、たとえば、本開示によるシステムの分散は、受信機または分岐経路でほぼゼロに修正される前に、少なくとも10,000ps/nmへ、および一部の実施形態では数万ps/nmに累積することが可能になる場合がある。そのような分散マップは、大きな分散累積によりコヒーレント検出に優れたパフォーマンスを提供するが、分散が受信機でほぼゼロに戻る限り、直接検出のパフォーマンスに大きな影響を与えない。
【0031】
したがって、有利なことに、直接検出とコヒーレント検出の両方に関して役に立つシステムは、非線形のパフォーマンスにおいて深刻な損失を受けずに、本開示により構成することができる。また、システムは、高い分散スパンおよび/または構成ファイバを使用して構成し、修理および製造を容易にすることもできる。さらに、本開示によるシステムでは、分散のために(伝送端末において)事前補償は必要なく、このため、直接検出受信機だけを使用するように設計された従来技術システムと比較してパフォーマンスの損失を受けることなく、端末の設計が簡素化し、コスト低下が可能になる。
【0032】
したがって、本開示の一態様によると、波長の信号帯域内のそれぞれ異なる関連する波長で複数の光信号を送信するように構成された送信機と、複数の光信号を受信するように構成された受信機と、送信機と受信機との間に延在する伝送路とを含む光通信システムが提供される。伝送路は、分散の累積を、信号帯域のすべての波長の伝送路の少なくとも一部において少なくとも10,000ps/nmの最大累積分散にし、信号帯域の波長の少なくとも1つに対する最大累積分散を受信機でほぼゼロに戻すように構成される。
【0033】
本開示の他の態様によると、光通信システムで分散を管理する方法が提供され、この方法は、伝送路を通じて受信機に波長の信号帯域内でそれぞれ異なる関連する波長で複数の光信号を送信するステップと、信号帯域のすべての波長の伝送路の少なくとも一部において少なくとも10,000ps/nmの最大累積分散への色分散の累積を可能にするステップと、信号帯域の波長の少なくとも1つに対する最大累積分散を受信機でほぼゼロに戻すステップとを含む。
【0034】
本発明の原理について本明細書に記述されているが、この記述は、例示を目的とするものであり、本発明の範囲を限定するものではないことを当業者は理解されるだろう。本明細書に示し記述した例示的な実施形態に加えて、他の実施形態は本開示の範囲内にあると考えられる。当業者による変更および置き換えは、本開示の範囲内にあると考えられ、以下に示す特許請求の範囲による場合を除き限定されるものではない。
図2
図7
図9
図1
図3
図4
図5A
図5B
図6A
図6B
図8