特許第5905025号(P5905025)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5905025
(24)【登録日】2016年3月25日
(45)【発行日】2016年4月20日
(54)【発明の名称】廃コーティング塗料の再生利用
(51)【国際特許分類】
   D21H 17/01 20060101AFI20160407BHJP
   D21H 17/69 20060101ALI20160407BHJP
   D21H 23/14 20060101ALI20160407BHJP
【FI】
   D21H17/01
   D21H17/69
   D21H23/14
【請求項の数】12
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-546357(P2013-546357)
(86)(22)【出願日】2011年12月21日
(65)【公表番号】特表2014-504682(P2014-504682A)
(43)【公表日】2014年2月24日
(86)【国際出願番号】US2011066378
(87)【国際公開番号】WO2012088221
(87)【国際公開日】20120628
【審査請求日】2013年7月9日
(31)【優先権主張番号】12/975,596
(32)【優先日】2010年12月22日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】507248837
【氏名又は名称】ナルコ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】チェン ウェイグオ
【審査官】 長谷川 大輔
(56)【参考文献】
【文献】 特表2000−514510(JP,A)
【文献】 特開2005−273048(JP,A)
【文献】 特開平04−245998(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D21B 1/00−1/38
D21C 1/00−11/14
D21D 1/00−99/00
D21F 1/00−13/12
D21G 1/00−9/00
D21H 11/00−27/42
D21J 1/00−7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
製紙プロセスの紙シートに廃コーティングを組み込む方法であって、以下の、
少なくともセルロース繊維及び水、充填剤粒子、ならびに以前の製紙コーティングプロセスからの廃コーティングを含む製紙原料を提供すること、
混合物を形成するために廃コーティング及び未使用の充填剤粒子を混合すること、
任意に、この混合物に消泡剤を加えること、
陽イオン性試薬をこの混合物に添加すること、
充填剤及びコーティング廃棄物の、凝集を引き起こすことなく、均一に混合するのに十分な量の第一の凝集剤をこの混合物に加えることであって、第一の凝集剤は綿状凝集剤であり、
第一の凝集剤を加えた後に、第一の凝集剤の存在下で、充填剤及びコーティング廃棄物の綿状凝集を開始するのに十分な量の第二の凝集剤を、前記混合物に加えることであって、この第二の凝集剤は、第一の凝集剤の反対の電荷のものであり、未使用の充填剤及びコーティング廃棄物の綿状凝集した混合物が、充填剤の材料を規定し、
任意に、所望の粒径を持つ綿状塊を提供するために、未使用の充填剤及びコーティング廃棄物の綿状凝集した混合物をせん断すること、及び、
充填剤材料を製紙原料中に混合すること、
を含む方法。
【請求項2】
前記廃コーティングが、前記廃コーティングの質量の20%〜50%の水を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記コーティング廃棄物が、以下の、沈降炭酸カルシウム、粉末炭酸カルシウム、カオリン粘土、酸化チタン、プラスチック顔料、及びそれらの任意の組み合わせより成るリストからの少なくとも1つの顔料を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記コーティング廃棄物が、以下の、デンプン、スチレン−ブタジエン樹脂、スチレン−アクリレート共重合体、スチレン−アクリル酸樹脂、及びそれらの任意の組み合わせより成るリストから選ばれる1つである結合剤を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記陽イオン性試薬が、以下のデンプン、凝集剤、凝固剤、及びそれらの任意の組み合わせより成るリストから選ばれる、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記第一の凝集剤が、陽イオン性、及び陰イオン性ポリマより成る群から選ばれ、前記第一の凝集剤は綿状凝集剤である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記第二の凝集剤が、微小粒子;凝固剤;陽イオン性、及び陰イオン性ポリマ;並びにそれらの混合物より成る群から選ばれる、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記第一の凝集剤が陰イオン性であり、及び前記第二の凝集剤が陽イオン性である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記綿状凝集したコーティング廃棄物及び未使用の充填剤の混合物が、10〜70μmの粒径中央値を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記コーティング廃棄物が、少なくとも1つの顔料及び少なくとも1つの結合剤を含み、100%の前記顔料及び結合剤が、充填剤物質と綿状凝集した、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記コーティング廃棄物中の固体含有量が、0.5%〜10%である請求項2に記載の方法。
【請求項12】
充填剤粒子及びコーティング粒子の相対的な量が、50〜98%の充填剤粒子、及び2%〜50%の廃コーティング粒子である、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃コーティング塗料の再生利用に関する。
【背景技術】
【0002】
(関連出願の相互参照)
本出願は、係属中の2007年9月12日に出願された米国特許出願第11/854,044号の部分係属出願である。
【0003】
(連邦により補助を受けた研究又は開発の言明)
該当せず。
【0004】
本発明は、紙のコーティングプロセスにおいて発生する、廃コーティング塗料の処理、及び再生利用において有用な方法及び組成物に関する。コーティングは、生成する紙の光学的及び印刷特性を改善するために、通常は製紙プロセスの間に用いられる。コーティング塗料又は製剤は、通常は顔料、結合剤、及び他の微量添加物を含む。顔料は、コーティング製剤中の固体の95%程度存在することができ、及び炭酸カルシウム、カオリン粘土、チタニア、タルク、プラスチック顔料、シリカ、アルミナ、又はそれらの混合物を含む。結合剤は典型的にはコーティング製剤中の固体の5%〜25%存在し、及びコーティングに結合力及び可撓性を与えるためにコーティング中の顔料粒子を架橋する天然又は合成ポリマである。最も典型的な天然結合剤は、デンプンであり、一方、典型的な合成結合剤は、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−アクリレート共重合体、ポリビニルアルコール、及びポリ酢酸ビニルである。微量添加物は、普通はコーティング製剤中の固体の約1%を構成し、及びコーティング中で多くの目的のために機能するさまざまな化学物質を含む。可能な添加物は、不溶化剤、光学的漂白剤、分散剤、消泡剤、レオロジ修飾剤、染料、及び殺微生物剤である。前記コーティングは、紙シートの外側の層を形成する。これは、コートされないシートと比べて、その不透明性、輝度、平滑さ、及び印刷品質を改善する。
【0005】
残念なことに、かなりの量の廃コーティング塗料が、典型的な紙のコーティングプロセスの間に発生する。この廃棄物は、プロセスに添加されたが、ひとつ又は他の理由のために、紙の表面のコーティングにならないで終わったコーティングの結果である。ある場合には、この廃棄物は、塗装されたコーティングの合計の4%程度になり得る。一般的な方法は、水を除き、及びこの廃コーティングを圧縮し、及び単に埋め立てするか、または焼却することである。多くの製紙工場が、百万トンではないにしても、数百、数千トンのコーティングを使用し、年間、数万トンの廃棄物の発生をもたらしている。このことは、巨大な環境費用と同時に、大幅な量の経済資源の廃棄をもたらしている。
【0006】
この章に記述される技術は、具体的にそのように指定されない限り、本明細書において参照される、特許、刊行物、又は他の情報が、本発明に関する「先行技術」であることを受け入れることを構成することを意図していない。加えて、このセクションは、検索が行われたか、又は米国特許施行規則(37CFR)第1.56条(a)に定義される関連情報が存在しないと解釈されるべきではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第5,830,364号明細書
【特許文献2】米国特許第6,159,381号明細書
【特許文献3】米国特許第6,214,166号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、製紙プロセスで発生したコーティング廃棄物物の再生利用方法への明白な需要およびその新規の実用性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の少なくとも1つの実施形態は、製紙プロセスの紙シート中の廃コーティングを組み込む方法を指向する。この方法は以下の工程を含む:1)少なくともセルロース繊維及び水、充填剤粒子、及び以前の製紙コーティングプロセスからの廃コーティングを含む製紙原料を提供すること、2)混合物を形成するために廃コーティング及び新鮮な充填剤粒子を混合すること、3)任意に、この混合物に消泡剤を加えること、4)陽イオン性試薬をこの混合物に添加すること、5)充填剤及びコーティング廃棄物の顕著な凝集を引き起こすことなく均一に混合するのに十分な量の第一の凝集剤をこの混合物に加えること、第一の凝集剤は綿状凝集剤であり;6)第一の凝集剤を加えた後に、第一の凝集剤の存在下で、充填剤及びコーティング廃棄物の綿状凝集を開始するのに十分な量の第二の凝集剤を前記混合物に加えることであって、この第二の凝集剤は、第一の凝集剤の反対の電荷のものであり、新鮮な充填剤及びコーティング廃棄物の綿状凝集した混合物が、充填剤の材料を規定し、7)任意に、所望の粒径を持つ綿状塊を提供するために、新鮮な充填剤及びコーティング廃棄物の綿状凝集した混合物をせん断すること、及び8)充填剤材料を製紙原料中に混合すること。
【0010】
廃コーティングは、水を含むことができ、及び水は、廃コーティングの質量の大部分であることができる。このコーティング廃棄物は、以下のものより成るリストの少なくとも1つの顔料を含むことができる:沈降炭酸カルシウム、粉末炭酸カルシウム、カオリン粘土、酸化チタン、プラスチック顔料、及びそれらの任意の組み合わせ。このコーティング廃棄物は、以下ものより成るリストの少なくとも1つの結合剤を含むことができる:デンプン、スチレン−ブタジエン樹脂、スチレン−アクリレート共重合体、スチレン−アクリル酸樹脂、及びそれらの任意の組み合わせ。前記陽イオン性試薬は、以下のものより成るリストから選ばれることができる:デンプン、綿状凝集剤、凝固剤、及びそれらの任意の組み合わせ。前記第一の凝集剤は、陽イオン性、陰イオン性、非イオン性、双性イオン性及び両性イオン性ポリマより成る群から選ばれることができる。前記第二の凝集剤は、微小粒子、凝固剤、及び陽イオン性、陰イオン性、非イオン性、双性イオン性及び両性イオン性ポリマ並びにそれらの混合物より成る群から選ばれることができる。前記第二の凝集剤及び第一の凝集剤は反対に荷電することができる。前記第一の凝集剤は陰イオン性であることができ、及び第二の凝集剤陽イオン性であることができる。事前に綿状凝集した、コーティング廃棄物及び新鮮な充填剤の混合物は、10〜70μmの粒径中央値を持つことができる。実質的に100%のコーティング顔料及び結合剤が、充填剤材料中で綿状凝集できる。コーティング廃棄物の固体含有量は、0.5%〜10%であることができる。充填剤粒子及びコーティング粒子の相対的な量は、50〜98%充填剤粒子及び2%〜50%の廃コーティング粒子であることができる。
【0011】
本発明の少なくとも1つの実施形態は、上記の方法に従い、製紙プロセスで製造される紙シートを指向する。
【0012】
本発明の詳細な説明は以下に図面との具体的な参照により記載される:
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明で用いられる廃コーティングの粒径分布を示すグラフである。
図2】本発明に従って作成された紙の物理的特性の表である。
図3】未処理混合物の上澄みの中に含まれる粒子を示すグラフである。
図4】本発明に従って作成した紙の中のOBAからの相対的蛍光を示すグラフである。
図5】本発明で用いられる充填剤材料の電子顕微鏡写真である。
図6】本発明の中で存在する堆積物の量を示すグラフである。
図7】本発明に従って作成された紙の相対的強度を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下の定義は、本出願、特に請求項において用いられる用語がどのように解釈されるかを決定するために提供され、定義の編成は便宜のみのためであり、それらの定義を特定の範疇に限定することを意図していない。
【0015】
本出願の目的のための、これらの用語の定義は以下の通りである。
【0016】
「結合剤」は、コーティングに結合力及び可撓性を与えるために、コーティング中の顔料粒子を架橋する天然又は合成ポリマを意味する。
【0017】
「コーティング、コーティング製剤、又はコーティング塗料」は、水、顔料、結合剤、及び他の微量添加物の混合物を意味する。
【0018】
「凝固剤」は、イオン電荷の中和によって、不安定化させ、及び固体を凝集させる、綿状凝集剤より高い電荷密度、及びより小さい分子量を有する物質の組成物を意味する。
【0019】
「消泡剤」は、コーティング塗料又は製紙プロセスに添加される、泡の生成及び/又は泡の粘着を低減する物質を意味する。消泡剤は、通常は、以下のものの任意のもの、又は全ての混合物である:有機又は無機疎水性微粒子、展着剤、及び油中又は水キャリア中の界面活性剤。消泡剤製剤でしばしば用いられる特定の化学物質は、シリカ粒子、疎水性に修飾されたシリカ粒子、ポリエチレングリコール(PEG)エステル及びアミド、脂肪酸、脂肪酸アミド、脂肪族アルコール、及びアルコキシル化された非イオン性界面活性剤である。
【0020】
「充填剤」は、より高価な繊維成分を置換することによりコストを削減する目的のために、製紙プロセスの結果として、生成される紙の中に配置されることになる物質を意味する。充填剤は、しばしば、生成される紙の、不透明性を増加させ、輝度を増加させ、及び/又は平滑性を増加させる。
【0021】
「凝集剤」とは、低い電荷密度、及び高分子量(1,000,000を超過する)を有する物質の組成物であり、細かく分割され懸濁された粒子を含む液体に添加されたときに、粒子間の結合により、固体を不安定化して凝集させるものを意味する。
【0022】
「綿状塊凝集剤」とは、液体に添加されたときに、液体中のコロイド状の細かく分割され懸濁された粒子を、不安定化して凝集させる物質の組成物を意味する;凝集剤及び凝固剤綿状凝集剤であることができる。
【0023】
「GCC」とは、粉末化された炭酸カルシウムを意味し、天然の炭酸カルシウム塊を粉末化して製造される。
【0024】
「PCC」は合成的に製造される沈降炭酸カルシウムを意味する。
【0025】
「顔料」は、生成する紙の光学的及び印刷特性を改善する目的のために、製紙プロセスの結果として、生成する紙の外側に係合することになる、コーティング製剤の最大95%程度までを構成する、固体、微粒子材料を意味する。
【0026】
万一、上記の定義又は本出願の他の箇所で言明される記載が、辞書又は参照により本願に組み込まれた引用源において通常使用される意味(明示的な、又は暗示的な)と一致しない場合は、本出願、及びとりわけ特許請求範囲の用語は、本出願の定義に従い解釈されるべきものと理解され、及び通常の定義、辞書の定義、又は参照により組み込まれた定義に従うべきではない。
【0027】
上記を考慮すると、もし用語が辞書によってのみ理解され得ると解釈される場合、もしその用語がKirk−Othmer Encyclopedia of Chemical Technology,第5版,(2005),(Wiley,John&Sons,Inc.発行)により定義されている場合は、その定義が、その用語が請求項においてどのように定義されるかを支配する。
【0028】
膨大な物質が、通常、顔料、結合剤、及び充填剤として用いられている。顔料は、コーティング製剤中の固体の95%程度を占めることができ、及びしばしば、炭酸カルシウム、カオリン粘土、チタニア、タルク、プラスチック顔料、シリカ、アルミナ、又はそれらの混合物である。炭酸カルシウムは、例えば、顔料又は充填剤として用いることができる。従来技術の出願では、充填剤(炭酸カルシウムなどのような)は、典型的には粒径において1〜8μmの粒子である。この粒径は、しばしば光をより効率的に散乱する微細な粒子、及び紙の強度を妨害することの少ない大きな粒子との間の妥協を表す。コーティングに用いられる顔料粒子は、充填剤よりも小さい傾向があり、質量によって95%程度で2μmよりも小さい。結合剤は、典型的にはコーティング製剤中の固体の5%〜25%を占め、及びコーティングに結合力及び可撓性を与えるために、コーティング中で顔料粒子を架橋する天然又は合成ポリマである。最も典型的な天然結合剤はデンプンであるが、典型的な合成結合剤としては、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−アクリレート共重合体、ポリビニルアルコール、及びポリ酢酸ビニルが挙げられる。微量添加物は、普通はコーティング製剤中の固体の約1%を構成し、及びコーティング中で多くの目的のために機能するさまざまな化学物質より成る。可能な添加物は、不溶化剤、光学的漂白剤、分散剤、消泡剤、レオロジ修飾剤、染料、及び殺微生物剤である。前記コーティングは、紙シートの外側の層を形成する。コーティング製剤は質量により20%〜50%の水を含む。この水のほとんどは、コーティングのプロセス中に紙構造中への吸収及び放射乾燥により除かれなければならない。コーティングは、紙シートの外側に層を形成する。これは、コートされていない紙と比較して、その不透明性、輝度、滑らかさ、及び印刷品質を、改善する。
【0029】
膨大な技術的問題が、充填剤又はコーティングのいずれかとしての、廃コーティングの再使用を妨げている。紙コーティングプロセスの後、廃コーティングは、洗浄水のさまざまな量の中での希釈物として存在する。廃コーティングは、高い泡立ち傾向を持ち、強度に陰イオン性であり、及び製紙ウエブに保持することが困難であり、及び白水中で凝塊する傾向があり、及び製紙装置に堆積する大量の疎水性結合剤粒子を含むために、充填剤の候補としては不良である。さらに、それらは小さな粒径を持ち、及び紙を大幅に弱くする傾向がある。低く、及び一貫性のない濃度のために、それらはコーティングのための不良な候補である。これは、塗工機の不良な操業性及びコーティングの不良な品質につながる一貫性のないレオロジをもたらす。米国特許第5,830,364号、6,159,381号、及び6,214,166号は、製紙プロセスからの廃コーティングの1つ以上の部分を回収する試みを記載しているが、廃コーティングに固有のこの問題を、適切には解決しておらず、及び費用対効果の高い回収プロセスを教示していない。
【0030】
少なくとも1つの実施形態では、廃コーティングは製紙プロセスにおける充填剤として用いられる。これは、廃コーティングを新鮮な充填剤と混合し、及びさまざまな技術的問題を打ち消すためにその混合物を処理することにより達成される。少なくとも1つの実施形態では、この混合物は50〜98%の新鮮な適正に寸法付けられた充填剤粒子、及び2%〜50%のより小さい廃コーティング固体を含む。
【0031】
少なくとも1つの実施形態では、この処理は、消泡剤を混合物に加えること、陽イオン性凝固剤を混合物に加えること、及び混合物を事前に綿状凝集させることを含む。綿状凝集したときに、この混合された廃コーティング及び新鮮な充填剤粒子は、凝固剤及び/又は綿状凝集剤処理により凝塊する。
【0032】
少なくとも1つの実施形態では、少なくともコーティングのいくらかは、結合剤であり、及び前記事前の綿状凝集は、廃コーティング中に存在していた全てのラテックスを実質的に含む集塊をもたらす。これは、廃ラテックスの負債から資産への変換をもたらす。本来高度に疎水性の物質であるため、廃ラテックスは、希薄溶液から凝塊することができ、及び最終的に製紙装置に堆積し、低い製紙効率及び最終紙に品質問題をもたらす。しかしながら、この場合には、ラテックスの全てが集塊に組み込まれているために、プロセス装置が詰まることはなく、及びその代わりにラテックスは、物質粒子が互いに、及び紙繊維に対して結合することを助けることにより、さらに紙の強度的特性を増進する。
【0033】
少なくとも1つの実施形態では、前記処理は、消泡剤を混合物に加えること、陽イオン性凝固剤を混合物に加えること、及び混合物を、以下のものより成るリストから選ばれる少なくとも1つの物件と混合することを含む:デンプン、凝固剤、綿状凝集剤及びそれらの任意の組み合わせ。
【0034】
少なくとも1つの実施形態では、前記事前の綿状凝集プロセスは以下の工程を含む:
a)充填剤及び廃コーティングの水性分散物を提供すること;
b)充填剤及びコーティング粒子の顕著な凝集を引き起こすことなく、均一に混合するのに十分な量の第一の凝集剤を分散物に加えることであって、第一の凝集剤は綿状凝集剤であり;
c)第一の凝集剤を加えた後に、第一の凝集剤の存在下で、充填剤及びコーティング廃棄物の綿状凝集を開始するのに十分な量の第二の凝集剤を前記混合物に加えることであって、この第二の凝集剤は、第一の凝集剤の反対の電荷のものであり;及び
d)任意に、所望の粒径を持つ綿状塊を提供するために、新鮮な充填剤及びコーティング廃棄物の綿状凝集した混合物をせん断すること。
【0035】
少なくとも1つの実施形態では、前記事前の綿状凝集プロセスは以下の工程を含む:
a)陰イオン性に分散されたコーティング廃棄物及び分散されていない又は分散された充填剤粒子の水性スラリを提供すること;
b)低分子量組成物をこの分散物に加えることであって、添加される低分子量組成物は、少なくとも部分的にこの分散物の電荷を中和し;
c)高度の混合下に、第一の凝集剤をこの分散物に加えることであって、この第一の凝集剤は綿状凝集剤であり;
d)高度の混合下に、第二の凝集剤をこの分散物に加えることであって、この第二の凝集剤は、以下のものより成るリストから選ばれる1物件を含み:綿状凝集剤、凝固剤、微小粒子、及びそれらの任意の組み合わせ;及び
e)任意に、所望の粒径を持つ綿状塊を提供するために、新鮮な充填剤及びコーティング廃棄物の綿状凝集した混合物をせん断すること。
【実施例】
【0036】
以下の実施例は、本発明の実施形態及び有用性を記載するために提供され、及び請求項においてそのように言明されない限り、発明を限定することを意味しない。
【0037】
<実施例1>
廃コーティング塗料サンプルが製紙工場から得られた。廃コーティング塗料の固体分は5.76%であった。18%の固体を含む新鮮な充填剤も、同じ製紙工場から得られ、及びそれは、Specialty Minerals社(SMI)により製造されたAlbacar LOであった。この廃コーティング塗料は、次いで新鮮な充填剤と、20/80の質量比率で混合された。固体含有量を10%にするために、水道水を混合物に加えた。300mLの混合物を800rpmで撹拌した。撹拌によりかなりの量の泡が発生した。十分な量のシリコンを主成分とする消泡剤が、泡を消すために加えられた。5.5ポンド/トンのNalco凝固剤DEV120がゆっくりと混合物に加えられ、次いで、5ポンド/トンのNalco凝集剤DEV115が加えられた。次いで、3.0ポンド/トンのNalco凝集剤DEV125がゆっくりと混合物中に加えられた。全ての化学物質の用量は、廃コーティング/充填剤混合物中の固体の1トン当たりの生成物の質量に基づく。凝固剤及び凝集剤の用量は、発泡を最小化するように注意深く選ばれた。凝集剤DEV125の添加後に、この混合物を1500rpmで2分間撹拌した。図1は、廃コーティング塗料だけの場合、新鮮な充填剤だけの場合、廃コーティング塗料及び新鮮な充填剤の混合物の場合、及び処理された混合物の粒径分布を示す。処理後に、この粒径は顕著に大きくなり、このことはシート強度を改善するために有益であると考えられる。凝固剤DEV120は、約0.7dL/gのRSVを持つ陽イオン性ポリ(ジアリルジメチルアンモニウムクロリド)であり、Nalco社(ネーパービル(Naperville)、イリノイ州、アメリカ合衆国)から入手可能である。凝集剤DEV115は、約32dL/gのRSVを持ち、及び電荷量が29モル%である、陰イオン性アクリル酸ナトリウム−アクリルアミド共重合体であり、Nalco社(ネーパービル(Naperville)、イリノイ州、アメリカ合衆国)から入手可能である。凝集剤DEV125は、約25dL/gのRSVを持ち、及び電荷量が10モル%である、陽イオン性アクリルアミド−ジメチルアミノエチルアクリレート−メチルクロリド4級塩共重合体であり、Nalco社(ネーパービル(Naperville)、イリノイ州、アメリカ合衆国)から入手可能である。
【0038】
実施例2、3及び4は、廃コーティング塗料に含まれる結合剤が、処理後に、顔料又は充填剤表面上に堆積することを実証するために行われた。
【0039】
<実施例2>
実施例1に記載されている、処理前及び処理後の廃コーティング塗料及び新鮮な充填剤の20/80の混合物のサンプルを1500rpmで15分間遠心分離した。遠心分離後に、未処理の混合物の上澄みは濁っており、一方、処理後の混合物の上澄みは澄明であった。未処理混合物の上澄みに含まれる粒子の粒径分布が図3に示される。この粒子の粒径は、廃コーティング塗料からの結合剤と一致すると考えられる。
【0040】
<実施例3>
3μLの0.1%ナイルレッド(Nile red)エタノール溶液を、実施例2に記載されている、遠心分離された未処理混合物からの3mLの上澄みに加え及び蛍光スペクトルを測定した。溶液に含まれていたOBA(光学的光沢剤)の蛍光を差し引いた後に、図4に示されるように顕著な蛍光の発光があった。実施例2に記載されている、遠心分離された処理済混合物の上澄みについても同じ実験を行った。この場合には、検出できる蛍光はなく、及びその結果も図4に示されている。ナイルレッド染料は、疎水性固体に吸着されたときに蛍光を放射する。したがって、この結果は、廃コーティング顔料に含まれていた疎水性物質の実質的に全てが、処理後には上澄みに含まれないことを示す。
【0041】
<実施例4>
10μLの0.1%ナイルレッドエタノール溶液を、実施例1に記載されている処理済混合物のスラリ3mLと混合した。共焦点レーザ走査型顕微鏡を用いて、488nmでのレーザ励起で、放射光に530nm以上の波長の光を通すロング・パス・フィルタを使用して、粒子の蛍光イメージを測定した。同時に、同じ充填剤粒子の反射光イメージも測定した。結果が図5に示されている。このイメージは、疎水性結合剤粒子が充填剤表面に堆積していることを明確に示している。
【0042】
<実施例5>
実施例5の目的は、実施例1に記載されている、廃コーティング塗料及び新鮮な充填剤の処理済混合物が、堆積物をまったく引き起こさないことを実証することである。1400mLの0.6%固体セルロース繊維製紙原料が300rpmで撹拌された。この製紙原料は、25%の軟材及び75%硬材から成っていた。質量により30%の充填剤が、次いで製紙原料に加えられた。この実験で試験されたこの充填剤は100%廃コーティング塗料、20/80の質量比率の廃コーティング塗料及び新鮮な充填剤の混合物、及び処理済の20/80の質量比率の廃コーティング塗料及び新鮮な充填剤の混合物であった。この処理プロセスは実施例1に述べられている。プローブ表面上への堆積物の量を記録するためにNalcoDRMプローブが製紙原料中に挿入された。TheNalcoDRMプローブは、米国特許第7,842,165号に記載されているような、堆積量をμg単位で測定するための処理済石英結晶の微量天秤である。約30分後に、廃コーティング塗料に付随する陰イオン性電荷の中和を助けるために、5ポンド/トンのNalco凝固剤N−2030が製紙原料に加えられた(このことは、これらの成分の抄紙機への保持を改善するためにも行われるであろう)。Nalco凝固剤N−2030は、約0.7dL/gのRSVを有する、陽イオン性ポリ(ジアリルジメチルアンモニウムクロリド)であり、Nalco社(ネーパービル(Naperville)、イリノイ州、アメリカ合衆国)から入手可能である。N−2030の用量は製紙原料中の固体全体のトン当たりの生成物の質量に基づく。結果は図6に示される。5ポンド/トンのN−2030を、100%廃コーティング塗料を含む製紙原料に注入後、堆積物は顕著であった。20/80の質量比率の廃コーティング塗料及び新鮮な充填剤を含む製紙原料では、堆積物はより少なかったが、いまだに顕著であった。しかしながら、廃コーティング塗料及び新鮮な充填剤の処理済混合物を含む製紙原料では、顕著な量の堆積は記録されなかった。
【0043】
<実施例6>
実施例6の目的は、廃コーティング塗料及び新鮮な充填剤の処理済混合物の手漉き紙の物理的特性に与える影響を実証することである。この実施例で研究された充填剤及び廃コーティングは、実施例1に記載されているものと同一である:未処理の20/80の質量比率の廃コーティング塗料及び新鮮な充填剤、処理済の20/80の質量比率の廃コーティング塗料及び新鮮な充填剤、及び100%の新鮮な充填剤である。20/80の質量比率の廃コーティング塗料及び新鮮な充填剤を処理するプロセスは、実施例1に記載されている。2.5%稠度の濃い紙料は、75%ユーカリ硬材ドライラップパルプ及び25%松軟材ドライラップパルプから調製された。硬材及び軟材の両方はバレー・ビーター(Valley Beater)(Voith Sulzerより、アップルトン(Appleton)、ウイスコンシン州)により、400mLカナダ標準ろ水度(Canadian Standard Freeness)(TAPPI試験方法T227om−94)まで精製した。この濃い紙料は水道水で0.6%稠度まで希釈された。手漉き紙は、適正な量の0.6%稠度製紙原料及び充填剤を、排水を防ぐために、プラスチックの固体シートにより、底部スクリーンを覆ったDynamic Drainage Jar中で、800rpmで撹拌して調製した。手漉き紙の目的の秤量80gsmであった。手漉き紙の充填剤含有量を変化させるために、異なる量の充填剤が、製紙原料中に加えられた。このDynamic Drainage Jar及びミキサーはPaper Chemistry Consulting Laboratory社(カーメル(Carmel)、ニューヨーク州)から入手可能である。混合後30秒で、12ポンド/トンのStalok400デンプン(Tate and Lyle,(ジケーター(Decatur)、イリノイ州)から入手可能)及び2ポンド/トンのNalsize(登録商標)7542(Nalco社(ネーパービル(Naperville)、イリノイ州、アメリカ合衆国)から入手可能である)ASAエマルションが製紙原料に加えられた。ASAエマルションは、以下の手順により調製された:300mLのOster(登録商標)混合カップ中で、28gのNalsize(登録商標)7542を、186gの6.0%固体Stalok 400デンプン溶液に加え、及び66gの脱イオン水により溶液の全重量を280gとした。Osterizer(登録商標)混合機により、この混合物を高速で90秒間撹拌した。このエマルションを、Stalok 400デンプン溶液で事後希釈しデンプン対ASAの質量比率を3:1にした。45秒間混合し、1ポンド/トンの陽イオン性綿状凝集剤Nalco61067を加えた。綿状凝集剤Nalco61067は、約25dL/gのRSV、及び10モル%の電荷量を持つ、陽イオン性アクリルアミド−ジメチルアミノエチルアクリレート−メチルクロリド4級塩共重合体であり、Nalco社(ネーパービル(Naperville)、イリノイ州、アメリカ合衆国)から入手可能である。20/80の廃コーティング塗料/新鮮な充填剤の混合物については、混合後15秒で、2ポンド/トンのNalco凝固剤2030(Nalco社(ネーパービル(Naperville)、イリノイ州、アメリカ合衆国)から入手可能である。)も加えた。
【0044】
75秒で混合を停止し、及びこの製紙原料を、手漉き紙金型の型枠ボックス(Adirondack Machine社、クイーンズバリー(Queensbury)、ニューヨーク州)に移した。次いで100メッシュのフォーミングワイヤを通して排水することにより、8インチx8インチの手漉き紙を作成した。この手漉き紙は、2枚の吸い取り紙、及び金属板を湿った手すき紙の上に配置することにより、シート金型ワイヤから形成(couch)し、及び25ポンドの金属ローラを6回通過させて、ロール圧搾を行った。このフォーミングワイヤ、及び上の吸い取り紙が取り除かれ、次いで手漉き紙及び吸い取り紙を、2枚の新しい吸い取り紙の上に配置した。金属板を、次いで手漉き紙のワイヤ側に面するように配置した。5枚の作成された手漉き紙を、この様式でそれぞれの上面に積み重ね(新しい吸い取り紙、吸い取り紙、形成された手漉き紙、及び金属板)及び手漉き紙プレス(Lorentzen&Wettre、キスタ(Kista)、スエーデン)の中に0.565Mpaで5分間入れた。この手漉き紙のラベルが、シートのワイヤ側の右下に配置され、及びこの面を乾燥機表面に接触させた。電気的に加熱された回転式ドラム乾燥機(Adirondack Machine社、クイーンズバリー(Queensbury)、ニューヨーク州)を使い、シートを220°Fで90秒間、単回通過させた。
【0045】
完成した手漉き紙を、50%相対湿度及び23oCのTAPPI標準条件下に一晩置いた。手漉き紙の秤量(TAPPI試験方法T410om−98)、PCC含有量決定のための無機分含有量(TAPPI試験方法T211om−93)、輝度(ISO試験方法2470:1999)、不透明性(ISO試験方法2471:1998)、構成、引っ張り強度(TAPPI試験方法T494om−01)、及びZ軸方向引っ張り強度(ZDT、TAPPI試験方法T541om−89)が試験された。構成、秤量の均一性の測定は、MetsoAutomation(ヘルシンキ(Helsinki)、フィンランド)からのKajaani(登録商標)FormationAnalyzerを用いて行った。
【0046】
5枚の再現手漉き紙が調製され、及びそのシート特性が平均化され、表1に示されている。両方の未処理の廃コーティング塗料及び新鮮な充填剤の20/80混合物及び100%未処理PCC、処理済廃コーティング塗料及び新鮮な充填剤の20/80混合物は、顕著にシート強度を増加させ(引っ張り強度に対する図6にも示されている)、及びシートの光学的特性をわずかに減少させた。シート形成は混合物の処理により改善された。
【0047】
本明細書に記載される本発明の組成物、操作、及び方法の編成における変化は、特許請求の範囲において定義される本発明の概念及び範囲を逸脱することなく行うことができる。本発明は、多くの異なる形態において実施可能であるが、本発明の具体的な好適な実施形態が本明細書に詳細に記載されている。本開示は本発明の原理の例示であり、及び本発明を説明された特定の実施形態に限定することを意図するものではない。更に、本発明は、本願に記載され及び組み込まれた、さまざまな実施形態のいくつか、又は全ての、可能な任意の組み合わせを包含する。本明細書のいずれかの部分、又は引用された特許、引用された特許出願、又は他の引用物で言及された、全ての特許、特許出願、及び他の引用物は、参照によりその全体が本願に組み込まれる。
【0048】
上記に開示されたものは、説明的であることを意図しており、網羅的なものを意図していない。この記載は当業者に多くの変形及び代替物を示唆するであろう。全てのこれらの代替物及び変形も、「comprising」が「including、but not limited to〜:含むが、〜に制限されない」を意味する、請求範囲に含まれることが意図される。当業者は、本明細書に記載された特定の実施形態に対して、他の等価物を認識し得るであろうが、それらもまた請求範囲に包含されることが意図される。
【0049】
このことは、本発明の好適な、及び変更された実施形態の記述を完成する。当業者は、本明細書に記載された具体的な実施形態の等価物を認識するであろうが、そのような等価物も本明細書に添付された特許請求の範囲に包含されることが意図される。
図1
図2
図3
図4
図6
図7
図5