特許第5905027号(P5905027)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5905027可撓性オイル輸送管における耐摩耗テープ用ポリフェニルスルホン−ポリテトラフルオロエチレンブレンド
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5905027
(24)【登録日】2016年3月25日
(45)【発行日】2016年4月20日
(54)【発明の名称】可撓性オイル輸送管における耐摩耗テープ用ポリフェニルスルホン−ポリテトラフルオロエチレンブレンド
(51)【国際特許分類】
   C08J 3/20 20060101AFI20160407BHJP
   C08L 81/06 20060101ALI20160407BHJP
   C08L 27/18 20060101ALI20160407BHJP
【FI】
   C08J3/20 ZCEZ
   C08L81/06
   C08L27/18
【請求項の数】6
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-548763(P2013-548763)
(86)(22)【出願日】2011年12月1日
(65)【公表番号】特表2014-502661(P2014-502661A)
(43)【公表日】2014年2月3日
(86)【国際出願番号】EP2011071453
(87)【国際公開番号】WO2012095214
(87)【国際公開日】20120719
【審査請求日】2014年11月5日
(31)【優先権主張番号】102011002687.8
(32)【優先日】2011年1月14日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】390009128
【氏名又は名称】エボニック レーム ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Evonik Roehm GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】デートレフ ブーマン
(72)【発明者】
【氏名】アルベアト ドレクスラー
(72)【発明者】
【氏名】リカルド ルイス ヴィレマン
【審査官】 大村 博一
(56)【参考文献】
【文献】 特表平05−500986(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0190507(US,A1)
【文献】 特開2002−284883(JP,A)
【文献】 特開2009−138074(JP,A)
【文献】 特開2001−055478(JP,A)
【文献】 特表2006−519911(JP,A)
【文献】 特開平03−252457(JP,A)
【文献】 DuPont(TM) Zonyl MP1300 [online],米国,DuPont ,2015年 6月17日,[平成27年6月17日検索],インターネット,URL,http://www2.dupont.com/Teflon_Industrial/en_US/assets/downloads/DuPont_Zonyl_MP1300_Product_Info_K27015.pdf
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 3/00−3/28;99/00
C08K 3/00−13/08
C08L 1/00−101/14
C08J 5/00−5/02;5/12−5/22
B29C 47/00−47/96
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリフェニルスルホン(PPSU)およびポリテトラフルオロエチレン(PTFE)製のプラスチック体の製造方法であって、
混合物のPTFE含有率が4.0質量%〜6.0質量%であり、
混合物のPPSU含有率が94.0質量%〜96.0質量%であり、
PTFEが押出前に、粒径3μm未満のものを8〜12容積%の割合で有し、且つ粒径25μm未満のものを少なくとも88容積%の割合で有し、
PTFEおよびPPSUが温度340℃〜390℃で、押出機内で混合され、且つ、第二の押出機内でバンドへと加工されることを特徴とする、前記方法。
【請求項2】
PTFEが、1.5〜3.0m2/gの比表面積を有することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
混合物のPTFE含有率が4.5質量%〜5.5質量%であり、且つ、混合物のPPSU含有率が95.5質量%〜94.5質量%であることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
顆粒を、スクリュー温度345〜390℃でバンドへと押出すことを特徴とする、請求項1からまでのいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
請求項1からまでのいずれか1項に記載の方法によって製造されたバンドの、耐摩耗テープとしての使用。
【請求項6】
流体用輸送管における、請求項に記載の耐摩耗テープの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の技術分野
本発明は、可撓性流体輸送管、例えばオイル輸送管の摩擦低減中間層として用いられる、摩擦を減少するバンド(耐摩耗テープ「anti−wear−tape」)を製造するための、ポリフェニルスルホン(PPSU)およびポリテトラフルオロエチレン(PTFE)製の改善された混合物に関する。
【0002】
背景技術
GB2441066号(Technip France)は、炭化水素輸送用の、多層に構成された可撓性の管を記載している。少なくとも部分的に対向して動く金属バンドの間には、摩擦低減プラスチックバンドが配置されており、このプラスチックバンドは、ガラス転移温度が175℃〜255℃の非晶質ポリマーからなる。このバンドは、ポリフェニルスルホン(PPSU)、および過フッ素化ポリマー、およびポリエーテルエーテルケトン(PEEK)からなる。本発明の特定の実施態様においては、85%のポリフェニルスルホン(PPSU)と15%のポリテトラフルオロエチレン(PTFE)との混合物を混合し、厚さ1.5mm、幅約1mのバンドに押出される。使用されるプラスチックの分子量については、何ら述べられていない。
【0003】
US2005/0229991号は、GB2441066号と類似した構成を記載しており、この場合、中間層の材料はエラストマーの熱可塑性ポリマー、例えばスチレン−ブタジエン−スチレンゴム(SBS)、スチレン−エチレン−ブタジエン−スチレン−コポリマー(SEBS)、またはEPDM(エチレン−プロピレン−ジエン)コポリマーであり、さらにはポリブタジエン、ポリイソプレン、またはポリエチレン−ブチレンコポリマーである。
【0004】
ドイツの特許出願DE102009027659.9号においては、1〜15質量%、好ましくは5〜10質量%のPTFE割合を有するPTFE含有PPSUが開示されている。しかしながら、かかる組成物は上記の範囲において、非常にばらつきのある機械的特性を有することが判明した。さらには、DE102009027659.9号内には、機械的特性を改善するために、どのように押出を最適化できるのかについて示されていない。
【0005】
発明が解決しようとする課題
従って、上述の従来技術を考慮して、オイル輸送管における摩擦低減バンド用の材料および/または材料混合物であって、その場で支配的な条件(温度約130℃、圧力300〜400bar)に、従来技術の材料よりも良く適合されているものを見つけるという課題が存在した。
【0006】
殊に、該課題は、ポリフェニルスルホン(PPSU)およびポリテトラフルオロエチレン(PTFE)製のプラスチック成形体を含む摩擦低減バンドであって殊に押出方向にも、押出方向を横切る方向にも、良好且つバランスのとれた機械的特性を有するものを製造するための改善された方法を提供することであった。
【0007】
課題を解決するための手段
該課題は、ポリフェニルスルホン(PPSU)およびポリテトラフルオロエチレン(PTFE)製のプラスチック体を製造するための改善された方法によって解決された。その際、PTFE粒子がPPSUマトリックス内に特に微細に分散していることが保証されている場合、特にバランスのとれた機械的特性を、押出方向にも押出方向を横切る方向にも確保できることが判明した。PPSUと混合されないPTFEの微細な分散をみちびく、意外にも単純な方法が開発された。
【0008】
殊にDE102009027659.9の教示に鑑みて意外なことに、PPSU中のPTFEの微細な分散は、オイル輸送管における摩擦低減バンドとしてのこのブレンドの機械的特性および長寿命に関してとりわけ特に大きな重要性を有することが判明した。分布が粗悪な場合、比較的大きなPTFE相が生じ、その境界部ではバンド内で結合力が特に悪化する。
【0009】
バンドとは、本発明によれば、プラスチック成形体のさらに好ましい実施態様であると理解される。
【0010】
それと共に、PPSUマトリックスの断面全体にわたる非常に微細に分割されたPTFEの非常に均質な分布のみが、例えばテープの厚さが低減された際に、使用期間にわたる望ましい効果、および特にバランスのとれた機械的特性を、押出方向にも押出方向を横切る方向にも確保することが見出された。
【0011】
本発明による方法は、殊に、混合物のPTFE含有率が4.0質量%〜6.0質量%、好ましくは4.5質量%〜5.5質量%であることを特徴とする。相応して、PPSUの含有率は、94.0質量%〜96.0質量%、好ましくは95.5質量%〜94.5質量%である。
【0012】
さらにまた、非常に微細な粒子状のPTFEを使用することが重要である。しかしながら、他方で押出技術上の理由から、粉塵の割合が高すぎてはならない。本発明による方法に殊に適しているのは、押出前に粒径3μm未満のものを12容積%未満、好ましくは8〜11容積%の割合で有し、且つ、粒径25μm未満のものを少なくとも88容積%、好ましくは少なくとも90容積%の割合で有するPTFEである。さらに、比表面積1.5〜3.0m2/gを有するPTFEがとりわけ特に適している。
【0013】
粒径は、Microtrac社の装置を用いてレーザー回折によって測定される。比表面積は、窒素吸着を用いて測定される。
【0014】
殊に、本発明による方法はさらにまた、PTFEおよびPPSUを温度340〜390℃、好ましくは345〜385℃で、第一の押出機内で混合し、且つ第一の押出機によって得られた顆粒を第二の押出機内で、温度345〜390℃、好ましくは375〜390℃でプラスチック成形体へと加工することによって特徴付けられる。PPSU中のPTFEの特に微細な分散を確保するように、顆粒にするための第一の押出を周囲圧力500〜700mbar、回転数220〜270分-1、溶融温度340〜390℃、好ましくは375〜390℃、且つトルク50%〜80%、好ましくは60%〜75%で、好ましくは二軸スクリュー押出機内で実施することが好ましい。
【0015】
意外なことに、PTFEは、PPSUの溶融範囲のような高い温度で、分解することなく押出可能であることが判明した。
【0016】
プラスチック成形体へのさらなる加工である第二の押出段階は、通常、回転数40〜60分-1を有する一軸スクリュー押出機内での押出である。
【0017】
さらにまた、本発明は、本発明による方法によって製造された混合物もしくはプラスチック成形体の、耐摩耗テープの製造のための使用に関する。
【0018】
本発明は、殊に、流体の輸送管におけるこの耐摩耗テープの使用にも関する。この輸送管は、特に長寿命および機械的な負荷容量によって特徴付けられる。
【0019】
ポリフェニルスルホン(PPSU)
PPSUとしては、名称RADEL(登録商標)R、例えばRADEL R5000ntとして、Solvay Advanced Polymers社から市販されているポリフェニルスルホンを用いる。
【0020】
ポリマーの繰返単位は、以下の式を有する:
【化1】
【0021】
これは、透明であり、且つ応力亀裂感受性が特に僅かな高性能プラスチックであって、耐ノッチ衝撃性が非常に高く、また熱によるエージング後も、優れた化学耐性を有するものである。
【0022】
これは、医療技術、化学産業、および衛生設備における部品を製造するために使用される。このポリマーの密度は、ISO 1183に準拠して測定して1.29g/cm3、降伏応力は、ISO 527に準拠して測定して70MPa、破断点伸びは、ISO 527に準拠して測定して60%、引張弾性率は、ISO 527に準拠して測定して2,340MPa、アイゾッド耐ノッチ衝撃性は、ISO 180/1Aに準拠して測定して摂氏23度で49.4KJ/m2、シャルピー耐ノッチ衝撃性は、ISO 179/1eAに準拠して測定して摂氏23度で58.3KJ/m2である。
【0023】
50Hzでの誘電率は、IEC60250に準拠して測定して3.4であり、1MHzでの誘電率は、IEC60250に準拠して測定して3.5であり、50Hzでの誘電損失係数は、IEC60250に準拠して測定して6×10-4であり、1MHzでの誘電損失係数は、IEC60250に準拠して測定して76×10-4であり、絶縁耐力は、IEC60243−1に準拠して測定して、ASTMに準拠して測定して15kV/mmである。絶縁耐力のための厚さは3.2mmであり、IEC60093に準拠した比体積抵抗は、9×1015Ωmである。
【0024】
流れ方向に沿う方向/横切る方向での線膨張は、ISO11359に準拠して測定して55×10-6Kであり、溶融温度もしくはガラス転移温度は、ISO11357に準拠して測定して摂氏215度であり、熱変形耐性Aは、ISO75HDT/A(1.8MPa)に準拠して測定して摂氏207度であり、熱変形耐性Bは、ISO75HDT/A(0.45MPa)に準拠して測定して摂氏214度であり、最高温度(短時間)は、摂氏180度であり、最高温度(継続)は、摂氏160度(UL746 (RTI) (Mechanical W/O Imp.、40000時間)に準拠する熱によるエージング)である。最低使用温度は、摂氏マイナス100度である。
【0025】
ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)
本発明によれば、好ましくは中等度の分子量および小さな粒径、並びに特に好ましくは狭い粒径分布を有するポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を使用しなければならない。特に、かかるPTFEは、非常に高い溶融温度で加工され、且つ良好な機械的特性、並びに化学物質、例えば鉱油に対する高い耐性を有するエンジニアリングプラスチック中への組み込みのために適している。
【0026】
高分子のポリテトラフルオロエチレン(PTFE)としては、例えばZonyl(登録商標)MP 1300型の、非常に微粒子状のポリテトラフルオロエチレンが用いられる。このPTFEは、HT熱可塑性樹脂に基づくポリマー混合物中の添加剤として特に適している。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】実施例1による顆粒のSEM写真(右)およびEDS写真(左)
図2】比較例1による顆粒のSEM写真およびEDS写真
図3】比較例2による顆粒のSEM写真およびEDS写真
【実施例】
【0028】
コンパウンディング例
PPSU95質量%〜60質量%と、PTFE40質量%〜5質量%との混合物を、以下のとおりコンパウンドした:
二軸スクリュー押出機(製造元および型番: Werner & Pfleiderer ZSK25 WLE (K4))内でPPSUを溶融し且つ脱気し、PTFEを側方の供給開口部を介して供給する。PPSUとして、Raedel R−5000を使用し、且つPTFEとしてZonyl MP1300を使用した。
【0029】
【表1】
【0030】
得られたコンパウンドを顆粒化した。
【0031】
本発明によるプレートを、自体公知のとおり、押出によって、第一の段階で得られた顆粒から製造できる。
【0032】
このために、熱により可塑化された溶融物を、一回の押出の場合には1つの押出機によって、もしくは、共押出の場合には複数の押出機によって製造し、押出型へと供給する。押出機と押出ノズルとの間には、自体公知のとおり、さらなる装置、例えば溶融ポンプおよび/または溶融フィルターが配置されていてよい。押出された帯状物を引き続き、スムーザまたはキャリブレータ装置に供給してよい。
【0033】
顆粒を再度溶融し、且つ、長さ1.000mm、幅150mm、厚さ1.5mmの寸法のバンドへと押出した。溶融温度は摂氏約385度であった。
【0034】
比較例3: 回転数200分-1を用いた実施例1と同様。この場合、トルクは均質な押出がもはや可能ではないぐらい大きい。
【0035】
比較例4: 押出温度320℃での実施例1と同様。得られる顆粒において、既に視覚的に相分離が確認された。
【0036】
押出
実施例1並びに比較例1〜2から得られた顆粒を、380℃でバンドへと押出す。図1〜4において、相分離に関して、本発明によって製造されたブレンドと、本発明によらないで製造されたブレンドとの違いが識別される。
【0037】
第一の押出で得られたブレンドを、それぞれ存在する微細な相分離を測定するために顕微鏡で検査した。このために、それぞれSEM/EDS測定を実施した。SEMは、「走査型電子顕微鏡」、またはドイツ語のREM(Rasterelektronenmikroskopie)である。EDSは、「エネルギー分散型X線分光法」である。両方の測定を、顆粒表面で実施した。SEMでの測定をそれぞれ右に示す。
【0038】
本発明による図1を、本発明によらない図2および図3と比較すると、PTFE相(明るい箇所)が明らかにより小さいことがわかる。これと共に、より高い機械的強度を生じるより良好な均質化が達成されている。
【0039】
これに対し、比較例1および2による材料は、とりわけ押出方向において、長く且つ相対的に大きなPTFE相を有し、それはさらなる加工後にバンドの不安定性の上昇をもたらす。
図1
図2
図3