(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
近年、印刷用塗工紙は、チラシ、カタログ、パンフレット、ダイレクトメール等の広告、宣伝を目的とした商業印刷分野での需要が伸びている。これら商業印刷物は、それ自体の商品価値は低いが、宣伝媒体としての目的が達成されることが重要であるので、低コストで印刷仕上がりの良いものが求められてきている。このような旺盛な塗工紙の需要に対応するため、紙メーカーでは高品質を維持したまま、生産性を上げ、コストダウンを図るべく、塗工設備の広幅、高速化を進めている。そのため、印刷用塗工紙に関しては、高品質を維持したまま生産性を上げることが重要な技術課題である。
【0003】
一般に、製造処方の観点からコストダウンを図る手段の一つに、低塗工量化があるが、塗工量を減らすと、白紙光沢度、平滑度等の表面性、印刷適性の低下が避けられない。また、その他の手段として、顔料塗工液中に安価な炭酸カルシウムを多く配合することが考えられるが、一定量以上配合すると、顔料配向性に劣るため白紙光沢度、平滑度が出難くなる問題が生じる。さらに、安価な顔料を含む下塗り塗工液を塗工することにより、原紙被覆性を向上させ、コストダウンと品質改善を同時に図る目的で、多層塗工方式を採用する試みもなされている。
【0004】
一方、装置の観点から生産性を向上させる手段としては、高温でのソフトカレンダー処理がある。これは、コーターで顔料塗工した後、そのままオンラインでかつ高温でソフトカレンダー処理することにより生産性を飛躍的に高めようとするものである。
【0005】
従来、各種塗工装置(以下コーターと称す)で顔料塗工した塗工紙を一端巻取った後、低温(約50〜70℃)かつ通常10〜14段の多段ニップ条件でスーパーカレンダー処理して光沢を付与し、製品化していた。しかし、従来のスーパーカレンダーに使用するコットンロールは、内部発熱の問題で耐熱性が劣り、耐圧・耐久性も劣るため高速化に限界があり、現状で操業可能な最高速度は約800m/分程度である。従って、近年の1000m/分を越えるコーターと併用するためには2台のスーパーカレンダーが必要となり省力、省スペース化という意味でも問題となる。
【0006】
これに対し、耐熱、耐圧性に優れるプラスチックの弾性ロールを有するソフトカレンダーの場合には、1000m/分を越える速度の操業も可能となり、コーターにオンラインで設置できることから生産性が向上する。また、高温でより少ないニップ数で処理することが可能であるために、省スペース化でき、品質的にも、高温により紙表層部のみを可塑化した状態で金属ロールの鏡面を紙表面に転写させるため、嵩高(低密度)で、腰が強い紙が得られ、白紙光沢度、平滑度等表面性、印刷適性も向上する。
【0007】
しかし、ソフトカレンダーの処理温度が高くなるにしたがい、原紙の坪量ムラや塗工量ムラ、顔料の配向ムラ等が微小な光沢ムラとなって現れ易くなるため、あまり高い温度での処理は塗工紙の外観を損なう結果となる。
【0008】
この問題を解決するため、高温でソフトカレンダー処理する直前に軽度の蒸気を付与す
る方法により、光沢ムラに起因すると思われるトラッピングムラの改善を行っている(特許文献1)。しかしながら、微少な光沢ムラの改善については十分な効果は得られていない。
【0009】
また、炭酸カルシウム配合量を限定し、特定のラテックスを含有する上塗り顔料塗工液を使用し、ソフトカレンダーを構成する弾性ロールがショアD硬度84〜90、金属ロール温度が130℃以上の高温で処理する方法により、微小光沢ムラの改善を行なっている(特許文献2)。しかしながら、近年、生産性を更に向上するため、生産設備としてはオンマシン塗工装置で、より高速で製品化する試みがなされており、この方法で使用される弾性ロール硬度では、より高速な1300m/分以上の操業速度においては、弾性ロール表面の傷つき耐性等に対して不十分であり、特に紙切れなどが発生した場合、弾性ロールが著しく損傷するため、交換頻度が多く、また、予備ロールを必要以上に用意しておく必要があるため、コストがかかり、改善が求められていた。一方、操業性を重視し、90より硬い弾性ロールを使用した場合、塗工紙の凸部を硬いロールでつぶしてしまうため、微小光沢ムラが発生しやすい問題があった。
【0010】
一方、装置の観点から生産性を向上させる別の手段として、オンマシンコーターを用いる塗工がある。従来の塗工紙の生産方式としては、抄紙と塗工を別々の工程で行うオフマシン塗工方式と、一台のマシンで抄紙と塗工を同時に行うオンマシン塗工方式があり、オンマシン塗工方式の方が製品の製造原価を抑えることが可能で、価格競争力のある製品を製造できる特徴がある。
【0011】
近年、生産性を更に向上するため、オンマシン塗工装置で、より高速で製品化する試みがなされている。オンマシン塗工装置には一般に、フィルムトランスファー方式であるゲートロールコーターやロッドメタリングサイズプレスコーターが用いられ、これらのコーターを用いて、通常は顔料と接着剤を含有する顔料塗工液を塗工して微塗工紙、塗工紙を得るか、あるいは更にそれらの塗工紙の上にブレード塗工方式のコーターを用いて、更に顔料塗工液を塗工するダブル塗工紙を高速で生産されることが求められている。フィルムトランスファー方式においては、高速時にミスト、ボイリングなどが発生しやすい問題があるが(特許文献3〜5)、ボイリングの問題がないことから、ロッドメタリングサイズプレスコーターを好ましく用いられてきている。
【0012】
しかしながら、このような顔料塗工液をオンマシン塗工装置で、より高速塗工すると、短時間でアプリケーターロール表面が傷つき、塗工紙表面の平滑性が損なわれるためロール交換を余儀なくされ、操業性に問題がある場合があった。これまでにフィルムトランスファー方式のロッドメタリングサイズプレスコーターで顔料塗工を行い、表面平滑性や印刷適性に優れた塗工紙を製造する方法としては種々の方法が提案されている(特許文献6〜10)。しかしながら、これらの方法では、特に1300m/分以上の操業速度においては、アプリケーターロール表面の傷つきの耐性等に対して不十分であり、より改善することが求められていた。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明は、抄紙した原紙上に顔料と接着剤を含有する塗工液を塗工して塗工層を1層以上設けた後にソフトカレンダー処理を行なう塗工紙の製造方法であって、操業速度が1300m/分以上の塗工紙を得た後に、塗工紙の最表層表面を、金属ロールと弾性ロールで構成されるソフトカレンダーを用いて、少なくとも2ニップ以上で表面処理するものであり、この際、該弾性ロールのショア硬度がD90〜96であり、1ニップ目の金属ロールの表面温度が130℃未満である塗工紙の製造方法である。
【0024】
したがって、本発明においては、抄紙した原紙上に、顔料と接着剤を含有する塗工液を塗工して塗工層を1層以上設けた後、ソフトカレンダー処理が行われる。
【0025】
塗工原紙
塗工原紙のパルプ原料としては、特に限定されるものではなく、機械パルプ(MP)、脱墨パルプ(DIP)、広葉樹クラフトパルプ(LKP)、針葉樹クラフトパルプ(NKP)など、印刷用紙の抄紙原料として一般的に使用されているものであればよく、適宜、こ
れらの1種類または2種類以上を配合して使用される。機械パルプとしては、砕木パルプ(GP)、リファイナー砕木パルプ(RGP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)、ケミサーモメカニカルパルプ(CTMP)、ケミグランドパルプ(CGP)、セミケミカルパルプ(S
CP)などが挙げられる。脱墨パルプとしては、上質紙、中質紙、下級紙、新聞紙、チラ
シ、雑誌などの選別古紙やこれらが混合している無選別古紙を原料とする脱墨パルプであれば良く、特に限定はない。本発明においては、脱墨パルプが対パルプ20重量%以上、更には30重量%以上配合しても、表裏差がなく、層間強度が良好であるなどの効果を発揮することができる。強度の点から脱墨パルプの配合量は、80重量%以下であることが好ましい。
【0026】
本発明においては、公知の填料を使用することができる。例えば、重質炭酸カルシム、軽質炭酸カルシウム、クレー、シリカ、軽質炭酸カルシウム−シリカ複合物、カオリン、焼成カオリン、デラミカオリン、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化亜鉛、酸化亜鉛、酸化チタン、ケイ酸ナトリウムの鉱産による中和で製造される非晶質シリカ等の無機填料や、尿素―ホルマリン樹脂、メラミン系樹脂、ポリスチレン樹脂、フェノール樹脂などの有機填料を単用又は併用できる。この中でも、中性抄紙やアルカリ抄紙における代表的な填料である炭酸カルシウムや軽質炭酸カルシウムーシリカ複合物が好ましく使用される。紙中填料率は1〜40固形分重量%である。抄紙においては紙中填料率が高いほど歩留りは低下する。従って、紙中填料率が高い印刷用塗工原紙の製造に本発明を適用したほうが本発明の効果が大きい。この観点から、紙中填料率は10〜40固形分重量%が好ましく、12〜35固形分重量%が更に好ましい。
【0027】
本発明においては、内添薬品として、乾燥紙力向上剤、湿潤紙力向上剤、濾水性向上剤、染料、中性サイズ剤などの薬品を必要に応じて使用しても良い。乾燥紙力向上剤としてはポリアクリルアミド、カチオン化澱粉が挙げられ、湿潤紙力向上剤としてはポリアミドアミンエピクロロヒドリンなどが挙げられる。これらの薬品は地合や操業性などの影響の無い範囲で添加される。中性サイズ剤としてはアルキルケテンダイマーやアルケニル無水コハク酸、中性ロジンサイズ剤などが挙げられる。これらの内添薬品は、必要に応じてパルプ、填料と共に使用され紙料を調製することができる。
【0028】
本発明の塗工原紙の製造においては、オントップフォーマー、ギャップフォーマなどのフォーマ部を有する通常の抄紙機を用いることができる。特に本発明においては、ヘッドボックスから噴射された紙料が2枚のワイヤーに挟まれて走行し、湿紙の両側からほぼ均等に脱水するギャップフォーマ型抄紙機を用いることが好ましく、特にフォーミングロールによる初期脱水の直後に脱水ブレードによる脱水機構を有したロールアンドブレードフォーマ形式のギャップフォーマ型抄紙機を用いると、表裏差の少ない表面性が良好な紙が得られ、1300m/分以上の高速の抄紙速度においてより適している。ロールアンドブレード形式のギャップフォーマでは、最初の脱水はバキュームを有したフォーミングロールのラップエリアで行われ、その直後に加圧ブレードモジュールによるブレード脱水が行われる。この機構より従来のフォーマよりも緩慢な脱水が可能となるため、より均一な紙層構造や地合を有した紙が得られる。この時に使用されるフォーミングロールはその径が小さいと十分な抱き角度を得ることができず脱水の調整が不十分となるため、フォーミングロール径は1500mm以上が望ましい。フォーミングロールやブレードによる脱水機構に加えて、その後段にサクションユニットやハイバキュームサクションボックスなどの脱水装置を適宜用いることでドライネスの調整を行うことができる。
【0029】
本発明で使用する抄紙機は、プレスパートにシュープレスを用いることが好ましく、抄紙速度が高速の場合、プレス後水分を鑑みてタンデムタイプのシュープレスを用い1段以上で処理することが好ましく、より好ましくは2段以上で処理することにより、層間強度
、耐ブリスター性が向上する。本発明のシュープレスはニップ幅が概ね150〜250mmが好適であり、回転駆動するプレスロールと油圧で押し上げる加圧シューの間を通紙させるもので、フェルトと加圧シューの間にスリーブを走行させるタイプが適している。プレス圧はプレス出口水分や表裏差を加味して適宜調整できるが、好ましくは100kN/m〜1100kN/m、より好ましくは500kN/m〜1100kN/mである。
【0030】
また、前記シュープレスを2基以上使用する場合、ドライヤーパート側のシュープレスにトランスファーベルトが接触するように通紙すると、断紙等が起こりにくく、高速操業性に優れるものである。
【0031】
本発明においては、プレドライヤー、アフタードライヤーも公用の装置を用いることができ、乾燥条件も特に限定はなく、通常の操業範囲で適宜設定できる。
【0032】
下塗り塗工(クリア塗工)
本発明の塗工原紙は、調製した紙料を上記の如く抄造することにより製造することができる。本発明の塗工原紙においては、必要に応じて澱粉などの接着剤を主体とするクリアー塗工液を塗工して表面処理することで、塗工原紙の表面性改善に加えて、接着剤の浸透による層間強度を向上することができる。
【0033】
クリアー塗工層の接着剤量は、固形分重量で80重量%以上が好ましく、また、クリアー塗工層の塗工量は、固形分重量で0.5〜3.0g/m
2が好ましい。クリアー塗工液の主成分として使用する接着剤としては、生澱粉や、酸化澱粉、エステル化澱粉、カチオン化澱粉、酵素変性澱粉、アルデヒド化澱粉、エーテル化澱粉(湿式低分子化ヒドロキシエチル化澱粉、乾式低分子化ヒドロキシエチル化澱粉等)などの変性澱粉や、イオン性を有するポリアクリルアミド、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコールなどが使用される。クリアー塗工液には、接着剤以外にサイズ剤、界面活性剤、保湿剤、消泡剤などを併用することもできる。
【0034】
本発明の塗工装置としては、ロッドメタリングサイズプレスコーター、ブレードメタリングサイズプレスコーター、ゲートロールコーター、2ロールサイズプレスが使用できるが、特に高速時における層間強度向上の点からロッドメタリングサイズプレスコーターを使用することが好ましい。
【0035】
本発明の好ましい態様において、ロッドメタリングサイズプレス(RMSP)コーターを使用して、澱粉などの接着剤を含んでなるクリアー塗工液を塗工できる。上述したように、オンマシンコーターを用いて、抄速1300m/分以上の高速で抄紙し、クリアー塗工液を比較的多量に塗工する場合、ミストが発生しやすいという問題があった。この問題を解決するため、ロッドの形状に関して検討を重ねた結果、クリアー塗工液を両面合計で0.5g/m
2以上、抄紙速度が1300m/分以上の高速条件下で操業する際、0.3
0mm以下の溝幅のロッドか溝なしロッド(プレーンロッド)を使用することで、ミストが発生せず、断紙が起こりにくく、乾燥負荷が軽減され、操業性が向上した。
【0036】
これらのメカニズムは完全には明らかでないが、溝幅の狭いロッドを使用する場合、アプリケーターロールに形成される塗料の膜厚が薄く、アプリケーターロール上の塗膜が原紙にほぼ100%転写されるため、ミストがほとんど発生しないと推測される。一方、溝幅が広いとアプリケーターロール上に形成される塗料の膜厚が大きくなり、原紙に転写されない余剰量が発生しやすく、これがミストとなって発生していると推測される。
【0037】
本発明においては、RMSPで用いるロッドとして、溝幅が0.30mm以下のロッドか溝なしロッド(プレーンロッド)が好ましい。特に、ミストの抑制、クリアー塗工層の
つき易さ、強度向上の点から、ロッドの溝幅は、好ましくは0.05〜0.30mm、より好ましくは0.05〜0.20mm、更に好ましくは0.05〜0.15mmである。また、ロッド径は10〜50mmが、塗工適性の点から好ましい。10mmより小さい径のロッドでは、澱粉のフィルム形成能が低下し、面状に劣る傾向にある。
【0038】
本発明においては、上記のクリアー塗工された塗工原紙、あるいはクリアー塗工されない塗工原紙に、顔料塗工液を塗工する前にチルドカレンダ、ソフトカレンダー等によるプレカレンダ処理を施しても良い。
【0039】
下塗り塗工(顔料塗工)
本発明においては、原紙にクリアー塗工の代わりに、顔料と接着剤を含有する顔料塗工液を下塗り塗工して塗工紙を得ることもできる。後述するように、本発明においては、上記の如く抄造した原紙上に、顔料と接着剤を含有した塗工液を塗工、乾燥して塗工層を設けた後、ソフトカレンダーに通紙して平滑化仕上を行う。
【0040】
顔料と接着剤を主成分とする顔料塗工液に使用する顔料については、重質炭酸カルシウムが主に使用されるが、要求品質に応じて軽質炭酸カルシウム、カオリン、クレー、タルク、サチンホワイト、プラスチックピグメント、二酸化チタン等を併用する。また、顔料塗工液に使用する接着剤としては、スチレン・ブタジエン系、スチレン・アクリル系、エチレン・酢酸ビニル系等の各種共重合体エマルジョン及びポリビニルアルコール、無水マレイン酸共重合体等の合成系接着剤、酸化デンプン、エステル化デンプン、酵素変性デンプン、エーテル化デンプンやそれらをフラッシュドライして得られる冷水可溶性デンプン等を用いる。本発明の顔料塗工液には分散剤、増粘剤、保水剤、消泡剤、耐水化剤等通常の塗工紙用顔料に配合される各種助剤を使用しても良い。
【0041】
特に本発明において、ロッドメタリングサイズプレス(RMSP)方式の塗工装置を用い、顔料と接着剤を配合した塗工液を両面合計で5g/m
2以上塗工する場合、顔料による磨耗をなくすため、JISK6253規定のタイプAデュロメータ硬さが89以上のカバー材を有するアプリケーターロール2本からなるロッドメタリングサイズプレス方式の塗工装置を使用することが好ましい。塗工装置のロッドについては特に、ロッドによるアプリケーターロールの磨耗を防ぐために、ロッドの溝幅が0.30mm以下のロッドか溝なしロッド(プレーンロッド)が好ましい。特に溝ありロッドについては、0.05〜0.30mmであっても、ロールの摩耗を防ぐことができる。また、ロッド径は10〜50mmが、塗工適性の点から好ましい。
【0042】
本発明においては、炭酸カルシウムを顔料100重量部当たり50重量部以上含有することで良好な白紙面感の塗工紙を得ることができる。炭酸カルシウムの平均粒子径は0.1μm以上0.8μm以下の炭酸カルシウムを用いれば、アプリケーターロールの傷がつ
きにくく、白紙面感が良好になるため望ましい。また、高速塗工適性の点からは、重質炭酸カルシウムを使用することが好ましい。
【0043】
本発明においては、酸化澱粉、陽性澱粉、尿素燐酸エステル化澱粉、ヒドロキシエチルエーテル化澱粉などのエーテル化澱粉、デキストリンなどの澱粉類を顔料100重量部当り10重量部以上使用することにより、塗料に高い保水性を持たせることができ、塗料のしみこみを抑えることができ、表面性が向上する。特に澱粉としては、酸化澱粉、尿素燐酸エステル化澱粉、ヒドロキシエーテル化澱粉が好ましい。
【0044】
顔料と接着剤を含めた塗工液の塗工量は両面合計で5g/m
2以上にすることにより、塗工紙の表面性が良好でラフニングの少ない塗工紙を得ることができる。塗工量を上げるため濃度の高い塗料で塗工すると塗工液のレベリングが進まず、塗工面の平滑性がむしろ
低下するため、塗工量は両面合計で好ましくは5g/m
2〜25g/m
2であり、より好ましくは5g/m
2〜20g/m
2である。
【0045】
本発明においては、原紙上に、ロッドメタリングサイズプレス方式の塗工装置を用いて顔料と接着剤を含めた塗工液を両面合計で5g/m
2以上塗工した後、更に顔料と接着剤
を有する上塗り塗工液を塗工することにより、塗工紙の表面性などの品質をさらに向上させることができる。また、顔料塗工層が1層の場合、上塗り塗工層は塗工せずに上記の下塗り塗工層を最表層の顔料塗工層としてもよい。
【0046】
下塗り顔料塗工液の塗工量は、好ましくは、原紙片面当たり固形分で1〜12g/m
2の範囲で両面に塗工するものであり、より好ましくは1〜10g/m
2、さらに好ましくは2〜8g/m
2、最も好ましくは2〜5g/m
2である。1g/m
2より少ない量は塗工しにくく、塗工液濃度を下げた場合には、塗工液の原紙内部への浸透が大きくなり表面性が低下しやすい。12g/m
2より多い量を塗工する場合は、塗工液濃度を高くする必要があり、装置上塗工量のコントロールがしにくい。
【0047】
塗工後乾燥された塗工紙は、上塗り顔料塗工液の塗工前にチルドカレンダ、ソフトカレンダー等によるプレカレンダ処理を施しても良い。
【0048】
塗工工程
本発明においては、上記のクリアー塗工した塗工原紙、あるいは、クリアー塗工の代わりに顔料と接着剤を含有する顔料塗工液を原紙に下塗り塗工した紙の上に、更に顔料と接着剤を含有する顔料塗工液を上塗り塗工して塗工紙を製造する。
【0049】
本発明の塗工紙の最表層表面を形成する塗工液に使用する顔料としては、通常の塗工紙製造分野で用いられる顔料が適宜使用できる。具体的には、カオリン、クレー、焼成カオリン、無定形シリカ、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、炭酸カルシウム、サチンホワイト、珪酸アルミニウム、珪酸マグネシウム、炭酸マグネシウム、プラスチックピグメント等のうち、最終製品の品質特性を考慮して、1種又は2種以上を適宜混合して使用する。
【0050】
また、塗工液に使用する接着剤としては、通常の塗工紙製造分野で使用される接着剤が適宜使用でき、例えば澱粉や酸化澱粉等の各種澱粉類、カゼイン、大豆蛋白、合成蛋白等の蛋白質類、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロースやメチルセルロース等のセルロース誘導体、スチレン−ブタジエン共重合体、メチルメタクリレート−ブタジエン共重合体の共役ジエン系重合体ラテックス、アクリル系重合体ラテックス、エチレン−酢酸ビニル共重合体等のビニル系重合体ラテックス等を単独、あるいは2種以上併用して用いる。なお、接着剤の配合量は顔料100重量部に対し、5〜50重量部、より好ましくは10〜30重量部で調節する。
【0051】
さらに、塗工液中には顔料や接着剤のほかに、一般塗工紙の製造分野で使用される分散剤、増粘剤、消泡剤、着色剤、帯電防止剤、防腐剤等の各種助剤を適宜添加することもできる。
【0052】
上記材料を用いて調製された塗工液は、ブレードコーター、バーコーター、ロールコーター、エアナイフコーター、リバースロールコーター、カーテンコーター、ロッドメタリングサイズプレスコーター、ブレードメタリングサイズプレスコーター、ゲートロールコーター、スプレーコーター、フラデッドニップ式ブレードコーター、ジェットファウンテン式ブレードコーター、ショートドウェルタイムアプリケート式ブレードコーター等を用いて、原紙上、または、顔料及び接着剤を主成分とする顔料塗工液を塗工したて表面性改善を改善した下塗り塗工紙上に片面あるいは両面塗工して乾燥する。特に高速塗工適性の
観点からジェットファウンテン式ブレードコーターを採用することが好ましい。塗工液の固形分濃度は、30〜68重量%程度に調整するものである。
【0053】
最表層の片面当たりの塗工量については、3〜15g/m
2が好ましく、より好ましくは、4〜12g/m
2、更に好ましくは4〜10g/m
2において、本発明の効果をより発揮するものである。
【0054】
ソフトカレンダー処理
本発明においては、上記のように抄造および塗工した紙に、ソフトカレンダーによる表面処理を施す。本発明者らは、ソフトカレンダー処理の際の1ニップ目の弾性ロールの硬度と金属ロールの温度を特定の範囲とすることにより、白紙光沢度と表面性に優れ、インキ着肉性が高い塗工紙を、操業性に影響を与えることなく製造できることを見出し、本発明を完成した。本発明においては、塗工紙の最表層表面を、金属ロールと弾性ロールで構成されるソフトカレンダーを用いて、少なくとも2ニップ以上で表面処理し、この際、該弾性ロールのショア硬度がD90〜96であり、1ニップ目の金属ロールの表面温度が130℃未満である。
【0055】
本発明におけるソフトカレンダーの1ニップ目の金属ロール表面温度は、130℃未満という比較的低温であり、好ましくは50℃以上130℃未満、より好ましくは60〜120℃、更に好ましくは60〜110℃である。ソフトカレンダーの1ニップ目の金属ロール表面温度が130℃より高いと、微小光沢ムラが発生しやすくなってしまう。本発明においては、ソフトカレンダーの1ニップ目の金属ロール表面温度が50℃以上であると白紙光沢度が高くなるため、特に好適である。また、2〜6ニップ目の金属ロール表面温度は、100〜250℃であることが好ましく、より好ましくは100〜200℃である。1〜6ニップ目までのカレンダー線圧は100〜600kN/mであることが好ましく、より好ましくは150〜400kN/mである。
【0056】
ソフトカレンダーの金属ロールと対をなして使用される弾性ロールの材質については特に限定されないが、一般に変性ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂、フェノール樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリアクリレート樹脂等の高温高圧で耐久性を示す樹脂ロールが好ましく利用される。また、樹脂ロールの硬度としては、シェア硬度がD90〜96、好ましくはD92〜96のものを使用することにより問題なく操業することができる。
【0057】
本発明で使用するソフトカレンダーの型式は、通紙の容易さ、省スペースを考慮してタンデムタイプの2ロールで4〜8スタックが好ましく、より好ましくは6スタックである。タンデムタイプとは、一対の金属ロールと弾性ロールを重ねた2ロールを並列に並べたタイプのソフトカレンダーであり、好ましくは塗工からオンラインで処理するソフトカレンダーある。
【0058】
本発明において、ソフトカレンダー処理の1ニップ目の弾性ロールの硬度と金属ロールの温度を特定の範囲とすることにより優れた塗工紙が得られる理由の詳細は定かではないが、高速の熱ソフトカレンダーの処理工程において、1ニップ目は最も水分が高い状態で処理されるため、それ以降のニップより表面が可塑化しやすくなり、白紙光沢度や平滑度の発現への影響が大きい一方、塗工紙の塗工層の厚みムラ、水分ムラが影響しやすく、微小な光沢ムラが最も発生しやすいニップであることが関係していると考えられる。
【0059】
操業速度
本発明は、抄紙した原紙上に顔料と接着剤を含有する塗工液を塗工して塗工層を1層以上設けた後にソフトカレンダー処理を行なう塗工紙の製造方法であって、抄紙工程および塗工工程の操業速度が1300m/分以上で塗工紙を得た後に、塗工紙の最表層表面を、
特定の条件でソフトカレンダー処理を行う塗工紙の製造方法であり、また好ましくは、抄紙した原紙上に顔料と接着剤を含有する塗工液を塗工して塗工層を1層以上設けた後にソフトカレンダー処理を行なう、操業速度が1300m/分以上である塗工紙の製造方法である。本発明は、1300m/分以上の高速での操業性に優れており、微小光沢ムラが少なく面状に優れ、かつインキ着肉ムラが少ない印刷用塗工紙を得ることができる。本発明の操業速度は、好ましくは1500m/分以上、より好ましくは1600m/分以上であり、例えば、1800m/分、更には2500m/分程度での操業に本発明を適用することも可能である。特に、抄紙、塗工及びカレンダー処理を連続的に行い、オンラインで通紙して塗工紙を得ることにより、操業性と塗工紙の微小光沢ムラを解決する本発明の効果をより享受することができ、好適である。
【0060】
本発明においては、特にプレスパートにシュープレスを用いたギャップフォーマ型抄紙機)を用いて抄紙した原紙上に、顔料と接着剤を含有する塗工液を塗工・乾燥して塗工層を1層以上設けた後、ソフトカレンダーで表面処理する仕上げ工程を連続して行う、速度が1300m/分以上の高速での塗工紙を製造することにより、微小光沢ムラが少なく面
状に優れ、かつインキ着肉ムラが少ない、高速操業性に優れる塗工紙を製造することができ、特に軽量の塗工紙において、より効果を発揮することができる。
【0061】
本発明において、塗工紙の坪量が30〜80g/m
2が好ましく、より好ましくは、40〜65g/m
2において、本発明の効果をより発揮するものである。
【実施例】
【0062】
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に示す。なお、例中の部数及び%はそれぞれ重量部、重量%を示す。品質評価方法は次に示す通りである。
【0063】
実験例1
<品質評価方法>
(1)白紙光沢度
JIS P−8142に従い角度75度で測定した。
(2)高速操業性
高速操業時の操業性を、プレスパートでの断紙が起こりにくいこと、塗工時のミストなどの発生が少ないこと、カレンダー時の収縮シワの発生が少ないこと、弾性ロールの耐久性が高いことという観点から、以下の4段階で評価した。
◎=非常に良好、○=良好、△=やや不良、×=不良
(3)微小光沢ムラ
最終製品の微小光沢ムラを以下の4段階で目視評価した。
◎=無、○=ほとんど無、△=若干在り、×=光沢ムラ非常に目立つ
(4)インキ着肉ムラ
ローランド平判印刷機(4色)にて、印刷用インキ(東洋インキ製ハイユニティM)を用いて藍→紅→黄→墨の順に印刷速度8000枚/分で印刷し、得られた印刷物の特に2色(藍、紅)印刷部および藍単色ベタ印刷部およびハーフトーン(50%)印刷部の印刷面感(着肉ムラ、光沢度ムラなど)を、以下の4段階で目視評価した。
◎=非常に良好、○=良好、△=やや劣る、×=劣る
[実施例1]
古紙パルプ30部とLBKP70部とからなるパルプスラリーに、填料として軽質炭酸カルシウムを紙中灰分が11%になるように添加し、内添紙力剤としてカチオン化澱粉を3部添加して紙料を調整した。
【0064】
この紙料を用いて、抄紙速度が1600m/分のロールアンドブレードフォーマ形式のギャップフォーマ型抄紙機でプレスパートに2基のタンデムシュープレス(プレス線圧1
000kN/m、2基目の紙のワイヤー面側にトランスファーベルトが接触)を用いて湿紙を搾水して乾燥した原紙を抄紙して、引き続き、オンマシンのロッドメタリングサイズプレスコーターを用いて、固形分濃度6%の酸化澱粉溶液を両面で1.6g/m
2塗工し、乾燥して、45.6g/m
2の中質塗工原紙を得た。
【0065】
次に、重質炭酸カルシウム73部及びカオリン27部を含有する顔料100部に対して、接着剤として酸化デンプン4.5部とカルボキシ変性スチレン・ブタジエン共重合ラテックスを8.2部配合して固形分濃度64%の塗工液を調製し、塗工量が原紙片面当たり8.3g/m
2となるようにジェットファウンテン方式のブレードコーターで両面に上記塗工液を連続して塗工し、乾燥した。
【0066】
引き続き、仕上げ工程にてショア硬度がD94の弾性ロールを有する2ロール・6スタックのソフトカレンダーを使用し、塗工紙の表面処理を行った。1ニップ目の金属ロール表面温度を120℃、2〜6ニップが金属ロール表面温度を130℃、1〜6ニップ目の線圧を250kN/mとして連続カレンダー処理した。
【0067】
抄紙、塗工、カレンダー処理を連続して行ったため、塗工速度、カレンダー速度も1600m/分であった。
【0068】
[実施例2]
仕上げ工程にて1ニップ目の金属ロール表面温度が60℃に変更した以外は上記実施例1と全く同様に塗工紙を製造した。
【0069】
[実施例3]
仕上げ工程にて1ニップ目の金属ロール表面温度が30℃に変更した以外は上記実施例1と全く同様に塗工紙を製造した。
【0070】
[比較例1]
仕上げ工程にてショア硬度がD88の弾性ロールに変更した以外は上記実施例1と全く同様に塗工紙を製造した。
【0071】
[比較例2]
仕上げ工程にてショア硬度がD98の弾性ロールに変更した以外は上記実施例1と全く同様に塗工紙を製造した。
【0072】
[比較例3]
仕上げ工程にて1ニップ目の金属ロール表面温度が140℃に変更した以外は上記実施例1と全く同様に塗工紙を製造した。
【0073】
【表1】
結果を表1に示す。表1に示されるように、本発明によって塗工紙を製造すると、高速
操業性が良好であり、塗工紙の白紙光沢度、微小光沢ムラ、インキ着肉ムラが優れていた(実施例1〜3)。さらに、ソフトカレンダーの1ニップ目の金属ロール温度を50℃〜130℃にした実施例1、2は、金属ロール温度が30℃である実施例3と比べて、白紙光沢度が良好だった。
【0074】
一方、ソフトカレンダーの弾性ロールの硬度をD88とした比較例1は、高速操業性が低く、弾性ロールの硬度をD98とした比較例2は、微小光沢ムラや印刷着肉ムラが大きかった。また、ソフトカレンダーの1ニップ目の金属ロール温度を140℃と高温にした比較例3は、高速操業性は優れるものの、塗工紙表面の微小光沢ムラや印刷着肉ムラが大きかった。
【0075】
実験例2
<品質評価方法>
(1)顔料の平均粒子径
レーザー回折/散乱式粒度分布測定器(マルバーン(株)製、機器名:マスターサイザーS)を用いて、体積累積分布の50%点を平均粒子径として測定した。
(2)アプリケーターロール表面状態
24時間塗工した後、塗工前後でアプリケーターロール表面を目視比較した。
◎:塗工前と同じ状態、○:ほぼ塗工前と同じ状態、△:やや表面性が悪化、×:大幅に表面性が悪化
(3)塗工紙白紙面感
塗工紙の白紙面の凹凸ムラ、微小光沢むらを目視比較した。
◎:良好、○:平均的、△:やや劣る、×:劣る
(4)塗工紙表面性
JIS P 8151表面粗さ及び平滑度試験方法(エア・リーク法)−プリント・サーフ試験機法により塗工紙表面性を評価した。バッキングはハードバッキングを使用し、クランプ圧力は980kPaで行った。尚、F(フェルト面)/W(ワイヤー面)の平均値を表面性とした。
(5)耐ブリスター性
RI−I型印刷機(明製作所)を用い、オフセット印刷用インキ(東洋インキ製:TKマークV617)を使用し、インキ量0.8cc一定で両面印刷して一昼夜調湿度した後、この試験片を温度140℃に設定した恒温オイルバスに浸し、ブリスターの発生状況を目視判定した。
◎=全く発生しない、○=ほとんど発生しない、△=発生する、×=発生が著しい
[実施例4]
LBKP70部、DIP(TMP35重量%含有)30部からなるパルプスラリーに填料として軽質炭酸カルシウムを紙中灰分が11%になるように添加し、内添紙力剤としてカチオン化澱粉を0.4部添加して紙料を調整した。
【0076】
この紙料を用いて、2基のタンデムシュープレスを有するロールアンドブレードフォーマ形式のギャップフォーマ型抄紙機で、1600m/分で抄紙した。
【0077】
引き続きオンマシンコーターとして、JISK6253規定のタイプAデュロメータ硬さ90のカバー材を有するアプリケーターロール2本とそれぞれのロールに溝なしロッド(ロッド径25mm)を装備したロッドメタリングサイズプレスを用いて、平均粒径0.64μmの重質炭酸カルシウム100部に対して、接着剤として酸化デンプン15部とカルボキシ変性スチレン・ブタジエン共重合ラテックスを2部配合した固形分濃度46%の塗工液を両面で6g/m
2下塗り塗工・乾燥して、坪量が50g/m
2の下塗り塗工紙を得た。
【0078】
次に、ブレード方式の塗工装置で重質炭酸カルシウム100部に対して、接着剤として酸化デンプン7部とカルボキシ変性スチレン・ブタジエン共重合ラテックスを8部配合して固形分濃度64%の塗工液を調製し、片面当たり8g/m
2の顔料塗工層を両面に、塗工速度1600m/分で上塗り塗工・乾燥した。
【0079】
さらに引き続き、仕上げ工程にてショア硬度がD94の弾性ロールを有する2ロール・6スタックのソフトカレンダーを使用し、塗工紙の表面処理を行った。1ニップ目の金属ロール表面温度を60℃、2〜6ニップ目の金属ロール表面温度を130℃、1〜6ニップ目の線圧を250kN/mとしてカレンダー処理し、オフセット印刷用塗工紙を得た。
【0080】
抄紙、塗工、カレンダー処理を連続して行ったため、塗工速度、カレンダー速度も1600m/分であった。
【0081】
[実施例5]
実験例4において、溝なしロッドの代わりに溝幅0.10mmのロッドを装備したロッドメタリングサイズプレスを用い、平均粒径0.64μmの重質炭酸カルシウム100部に対して、接着剤として酸化デンプン15部とカルボキシ変性スチレン・ブタジエン共重合ラテックスを2部配合した固形分濃度40%の塗工液を両面で6g/m
2塗工した以外は上記実施例4と同様にオフセット印刷用塗工紙を得た。
【0082】
[比較例4]
実施例4において、仕上げ工程にて1ニップ目の金属ロール表面温度を140℃に変更した以外は上記実施例4と同様にオフセット印刷用塗工紙を得た。
【0083】
[比較例5]
比較例4において、JISK6253規定のタイプAデュロメータ硬さ90のカバー材を有するアプリケーターロール2本を装備したオンマシンのロッドメタリングサイズプレスを用いる代わりに、JISK6253規定のタイプAデュロメータ硬さ84のカバー材を有するアプリケーターロール2本を用いたオンマシンのロッドメタリングサイズプレスを用いた以外は上記比較例4と同様にオフセット印刷用塗工紙を得た。
【0084】
【表2】
表2から明らかなように、実施例4,実施例5の印刷用塗工紙は、アプリケーターロール表面状態が良好であり、微小光沢ムラやインキ着肉ムラがなく、塗工紙の白紙面感及び表面性、並びに、操業性がともに良好であった。これに対し、比較例4は、塗工紙の白紙面感、インキ着肉ムラや微小光沢ムラに劣った。比較例5はアプリケーターロール表面状態が塗工前と比べて悪化し、塗工紙の白紙面感及び表面性が悪くなり、インキ着肉ムラや微小光沢ムラに劣った。
【0085】
[実施例6]
LBKP70部、DIP(TMP35重量%含有)30部からなるパルプスラリーに填料として軽質炭酸カルシウムを紙中灰分が11%になるように添加し、内添紙力剤として
カチオン化澱粉を0.4部添加して紙料を調整した。
【0086】
この紙料を用いて、2基のタンデムシュープレスを有するロールアンドブレードフォーマ形式のギャップフォーマ型抄紙機で、1600m/分で抄紙して、引き続きオンマシンコーターであるJISK6253規定のタイプAデュロメータ硬さ90のカバー材を有するアプリケーターロール2本とそれぞれのロールに溝なしロッド(ロッド径25mm)を装備したロッドメタリングサイズプレスを用いて、平均粒径0.64μmの重質炭酸カルシウム55部、平均粒径0.4μmのクレー45部に対して、接着剤として酸化デンプン13部とカルボキシ変性スチレン・ブタジエン共重合ラテックスを4部配合した固形分濃度57%の塗工液を両面で15g/m
2塗工・乾燥した。
【0087】
さらに引き続き、仕上げ工程にてショア硬度がD94の弾性ロールを有する2ロール・6スタックのソフトカレンダーを使用し、塗工紙の表面処理を行った。1ニップ目の金属ロール表面温度を60℃、2〜6ニップ目の金属ロール表面温度を130℃、1〜6ニップ目の線圧を250kN/mとしてカレンダー処理して、坪量70g/m
2のオフセット印刷用塗工紙を得た。抄紙、塗工、カレンダー処理を連続して行ったため、塗工速度、カレンダー速度も1600m/分であった。
【0088】
[実施例7]
実施例6において、溝なしロッドの代わりに溝幅0.10mmのロッドを装備したロッドメタリングサイズプレスを用い、平均粒径0.64μmの重質炭酸カルシウム55部、平均粒径0.4μmのクレー45部に対して、接着剤として酸化デンプン13部とカルボキシ変性スチレン・ブタジエン共重合ラテックスを4部配合した固形分濃度53%の塗工液を両面で15g/m
2塗工・乾燥した以外は上記実施例6と同様にオフセット印刷用塗工紙を得た。
【0089】
[比較例6]
実施例6において、仕上げ工程にて1ニップ目の金属ロール表面温度を140℃に変更した以外は上記実施例6と同様にオフセット印刷用塗工紙を得た。
【0090】
[比較例7]
比較例6において、JISK6253規定のタイプAデュロメータ硬さ90のカバー材を有するアプリケーターロール2本を装備したオンマシンのロッドメタリングサイズプレスを用いる代わりに、JISK6253規定のタイプAデュロメータ硬さ84のカバー材を有するアプリケーターロール2本を用いたオンマシンのロッドメタリングサイズプレスを用いた以外は上記比較例6と同様にオフセット印刷用塗工紙を得た。
【0091】
【表3】
表3から明らかなように、実施例6、実施例7の印刷用塗工紙は比較例6、7に対し、アプリケーターロール表面状態が良好であり、塗工紙の微小光沢ムラやインキ着肉ムラがなく、塗工紙の白紙面感及び表面性、操業性がともに良好であった。これに対し、比較例
6は、塗工紙の白紙面感、インキ着肉ムラや微小光沢ムラに劣った。比較例7はアプリケーターロール表面状態が塗工前と比べて悪化し、塗工紙の白紙面感及び表面性が悪くなり、インキ着肉ムラや微小光沢ムラに劣った。
【0092】
実験例3
<品質評価方法>
(1)高速操業性
塗工時にミストなどの発生がなく、乾燥負荷も低い高速操業性の適性を評価した。
◎非常に良好、○良好、△やや不良、×不良
(2)耐ブリスター性
RI−I型印刷機(明製作所)を用い、オフセット印刷用インキ(東洋インキ製造製:TKマークV617)を使用し、インキ量0.8cc一定で両面印刷して一昼夜調湿度した後、この試験片を温度140℃に設定した恒温オイルバスに浸し、ブリスターの発生状況を目視判定した。
◎=全く発生しない、○=ほとんど発生しない、△=発生する、×=発生が著しい
[実施例8]
LBKP70部、DIP(TMP35重量%含有)30部からなるパルプスラリーに填料として軽質炭酸カルシウムを紙中灰分が11%になるように添加し、内添紙力剤としてカチオン化澱粉を4部添加して紙料を調整した。この紙料を用いて、2基のタンデムシュープレスを有するロールアンドブレードフォーマ形式のギャップフォーマ型抄紙機で、1700m/分で抄紙し、引き続き、ロッド溝幅0.10mmのロッド(ロッド径15mm)を装備したオンマシンのロッドメタリングサイズプレスを用いて、両面に固形分濃度10
%の酸化澱粉溶液を1.6g/m
2塗工・乾燥し、45.6g/m
2の塗工原紙を得た。
【0093】
次に、重質炭酸カルシウム73部及びカオリン27部を含有する顔料100部に対して、接着剤として酸化デンプン4.5部とカルボキシ変性スチレン・ブタジエン共重合ラテックスを8.2部配合して固形分濃度64%の塗工液を調製し、原紙片面当たり8.3g/m
2を両面に上塗り塗工・乾燥した。
【0094】
更に、引き続き、仕上げ工程にてショア硬度がD94の弾性ロールを有する2ロール・6スタックのソフトカレンダーを使用し、塗工紙の表面処理を行った。1ニップ目の金属ロール表面温度を60℃、2〜6ニップ目の金属ロール表面温度を130℃、1〜6ニップ目の線圧を250kN/mとしてカレンダー処理した。抄紙、塗工、カレンダー処理を連続して行ったため、塗工速度、カレンダー速度も1700m/分であった。
【0095】
[実施例9]
実施例8において、ロッド溝幅0.10mmを使用する代わりに、ロッド溝幅0.30mmを用いて酸化澱粉を1.6g/m
2塗工した以外は上記実施例8と同様に塗工紙を製造した。
【0096】
[比較例8]
実施例8において、仕上げ工程にて1ニップ目の金属ロール表面温度を140℃に変更した以外は上記実施例8と同様に塗工紙を製造した。
【0097】
[比較例9]
比較例8において、ロッド溝幅0.10mmを使用する代わりに、ロッド溝幅0.40mmを用いて酸化澱粉を1.6g/m
2塗工した以外は上記比較例8と同様に塗工紙を製造した。
【0098】
【表4】
表4から明らかなように、本願発明の印刷用塗工紙は比較例8、9に対し、ミストの発生もほとんど見られず、高速操業性に優れ、塗工紙の微小光沢ムラやインキ着肉ムラがなく、耐ブリスター性が良好であった。これに対し、比較例8は、塗工紙の微小光沢ムラやインキ着肉ムラに劣っていた。比較例9は耐ブリスター性には優れるものの、ミストの発生が顕著であり高速操業性に劣り、塗工紙の微小光沢ムラやインキ着肉ムラに劣っていた。