特許第5905070号(P5905070)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5905070
(24)【登録日】2016年3月25日
(45)【発行日】2016年4月20日
(54)【発明の名称】悪臭中和組成物
(51)【国際特許分類】
   A61L 9/01 20060101AFI20160407BHJP
   C07C 323/52 20060101ALN20160407BHJP
【FI】
   A61L9/01 K
   A61L9/01 V
   !C07C323/52
【請求項の数】13
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-500387(P2014-500387)
(86)(22)【出願日】2012年3月22日
(65)【公表番号】特表2014-514041(P2014-514041A)
(43)【公表日】2014年6月19日
(86)【国際出願番号】EP2012055073
(87)【国際公開番号】WO2012126981
(87)【国際公開日】20120927
【審査請求日】2015年3月10日
(31)【優先権主張番号】1104766.9
(32)【優先日】2011年3月22日
(33)【優先権主張国】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】501105842
【氏名又は名称】ジボダン エス エー
(74)【代理人】
【識別番号】100102842
【弁理士】
【氏名又は名称】葛和 清司
(74)【代理人】
【識別番号】100135943
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 規樹
(74)【復代理人】
【識別番号】100201961
【弁理士】
【氏名又は名称】武田 恵枝
(72)【発明者】
【氏名】ブルックス,マシュー,ピーター
【審査官】 神田 和輝
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭52−031832(JP,A)
【文献】 特開昭49−042837(JP,A)
【文献】 特開昭54−113440(JP,A)
【文献】 特開平05−038358(JP,A)
【文献】 特表2010−537749(JP,A)
【文献】 欧州特許出願公開第02524704(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L9/00−9/22
A61K8/00−8/99
A61Q1/00−90/00
B01D53/34−53/85
C11B1/00−15/00
C11C1/00−5/02
C07C 323/52
JSTPlus(JDreamIII)
Mintel GNPD
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アミン類および/またはチオール類を除去するための悪臭中和組成物であって、
(i)一般式(I)
(I)
式中、R、R、R、Rは独立して、C1−4アルキルから選択され、またはR、R、R、Rは一緒に、窒素含有環系を構成してもよく、ここで、窒素は、ピリジニウムまたはイミダゾリニウム環の一部であり、およびXは、1および6の間にある酸性度定数(pKa)を有するそのプロトン化形態を特徴とする対イオンである、
で表される塩;および
(ii)一般式
C=CRC(=O)YR (II)
式中、R、R、RおよびRは独立して、水素、および飽和、不飽和、芳香族、環状、分枝状または非分枝状であってもよく、任意に置換される、C1−10ヒドロカルビル残基から選択され、またはR、R、RおよびRは一緒に、環系を構成してもよく、ならびにYは、酸素または単共有結合であり、ただし、Yは、Rが水素であるとき、共有結合である、
で表されるアルファ、ベータ−不飽和カルボニル化合物
を含む、前記組成物。
【請求項2】
一般式(I)の塩のpKaが、2および5の間である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
塩が、テトラブチルアンモニウムアセタートおよびテトラエチルアンモニウムベンゾアートから選択される、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
式IIで表される化合物の任意の置換基が、ヒドロキシ、アルコキシ、ケト、アルコキシカルボニル、カルボアルコキシおよびエーテルから選択される、請求項2に記載の組成物。
【請求項5】
式IIで表される化合物が、
(a)Rが水素であり、Yが存在しない;および
(b)化合物がジエステルまたはトリエステルであるよう、RおよびRの少なくとも1つがエステル基であり、Yが酸素原子である、
のうちの1つである、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
式IIで表される化合物が、シトラール、シンナムアルデヒド、ダマスコンおよびフマラートから選択される、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
式IIで表される化合物が、ジヘキシルフマラートを含む、請求項5に記載の組成物。
【請求項8】
アミン類および/またはチオール類を除去するための悪臭吸収香料であって、前記香料に基づき少なくとも0.075%w/wの、少なくとも1つの式II
C=CRC(=O)YR (II)
式中、R、R、RおよびRは独立して、水素、および飽和、不飽和、芳香族、環状、分枝状または非分枝状であってもよく、任意に置換される、C1−10ヒドロカルビル残基から選択され、またはR、R、RおよびRは一緒に、環系を構成してもよく、ならびにYは、酸素または単共有結合であり、ただし、Yは、Rが水素であるとき、共有結合である、
で表されるアルファ、ベータ−不飽和カルボニル化合物を、少なくとも1つの式I
(I)
式中、R、R、R、Rは独立して、C1−4アルキルから選択され、またはR、R、R、Rは一緒に、窒素含有環系を構成してもよく、ここで、窒素は、ピリジニウムまたはイミダゾリニウム環の一部であり、およびXは、1および6の間にある酸性度定数(pKa)を有するそのプロトン化形態を特徴とする対イオンである、
で表される化合物と一緒に含有し、式Iで表される化合物が、前記香料におけるその溶解度が25℃で少なくとも100重量ppmであるよう選択される、前記香料。
【請求項9】
式Iで表される化合物対式IIで表される化合物の重量比が、1:1000〜1:5である、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
式Iで表される化合物が、テトラブチルアンモニウムアセタートおよびテトラエチルアンモニウムベンゾアートの少なくとも1つであり、式IIで表される化合物が、ジヘキシルフマラートであり、重量比が、1:300〜1:30である、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
大気中または基材上のアミン類および/またはチオール類を含む悪臭を中和する方法であって、
(i)一般式(I)
(I)
式中、R、R、R、Rは独立して、C1−4アルキルから選択され、またはR、R、R、Rは一緒に、窒素含有環系を構成してもよく、ここで、窒素は、ピリジニウムまたはイミダゾリニウム環の一部であり、およびXは、1および6の間にある酸性度定数(pKa)を有するそのプロトン化形態を特徴とする対イオンである、
で表される塩;および
(ii)一般式
C=CRC(=O)YR (II)
式中、R、R、RおよびRは独立して、水素、および飽和、不飽和、芳香族、環状、分枝状または非分枝状であってもよく、任意に置換される、C1−10ヒドロカルビル残基から選択され、またはR、R、RおよびRは一緒に、環系を構成してもよく、ならびにYは、酸素または単共有結合であり、ただし、Yは、Rが水素であるとき、共有結合である、
で表されるアルファ、ベータ−不飽和カルボニル化合物
を含む組成物の大気または基材への適用を含む、前記方法。
【請求項12】
直接的なまたは間接的な空気の処理を含み、後者は、基材を空気と接触させる処理を介する、空気からアミン類および/またはチオール類を含む悪臭を除去する方法であって、有効量の請求項1に記載の悪臭中和組成物を取り込んだ消費者製品の空気への曝露または基材への適用を含む、前記方法。
【請求項13】
消費者製品ベースおよび有効量の請求項1に記載の悪臭中和組成物を含む、消費者製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、悪臭中和組成物、これらの組成物を使用する方法およびそれらを取り込む香料に関する。
【背景技術】
【0002】
悪臭の問題は、文明が続く限り人類と共にあり続けている。自身に伴ういくつかのにおいを有しない品物または物はほとんどない。しばしば、タバコの煙のにおい、調理のにおい、ならびに例えばかび、バスルームおよびペットのにおいなどのにおいは、望ましくない。悪臭の原因となる化合物はしばしば、高揮発性であり、空気中ならびに繊維、硬い表面、皮膚および髪などの基材上で遭遇する。
【0003】
多くのフレグランス組成物は単に、望ましくないにおいをより強力な望ましいにおいでマスクするのみである。臭気剤分子は、香料が存在しても残る。
【0004】
悪臭を低減させるいくつかの手段があり、例えば、重炭酸ナトリウム、活性炭、リシノール酸亜鉛、ゼオライト、シクロデキストリンなどの吸収体を使用するものである。これらの組成物は、部分的にのみ有効であり、悪臭およびフレグランスの両方を除去する不都合がある。
【0005】
提案されてきた悪臭を低減する他のアプローチは、空気中の悪臭の部分的蒸気圧を低減または消去する、化学的中和法を含む。
上述のすべてのアプローチが、悪臭を緩和するために設計される一方、それらのいずれも、悪臭の不適切な消去、または悪臭効果をもたらすのに時間がかかり過ぎるなどの欠点なしではなく、許容できない性能につながる。
【発明の概要】
【0006】
特定の第四級アンモニウム塩のアルファ、ベータ−不飽和エステル、アルデヒドおよびケトンへの添加が、空気から悪臭を除去するそれらの能力を有意に改善し得ることが、今や見出された。したがって、(i)一般式(I)
(I)
式中、R、R、R、Rは独立して、C1−4アルキルから選択され、またはR、R、R、Rは一緒に、窒素含有環系を構成してもよく、ここで、窒素は、ピリジニウムまたはイミダゾリニウム環の一部であり、およびXは、1および6の間にある酸性度定数(pKa)を有するそのプロトン化形態を特徴とする対イオンである、
で表される塩;および
(ii)一般式
C=CRC(=O)YR (II)
式中、R、R、RおよびRは独立して、水素、および飽和、不飽和、芳香族、環状、分枝状または非分枝状であってもよく、任意に置換される、C1−10ヒドロカルビル残基から選択され、またはR、R、RおよびRは一緒に、環系を構成してもよく、ならびにYは、酸素または単共有結合であり、ただし、Yは、Rが水素であるとき、共有結合である、
で表されるアルファ、ベータ−不飽和カルボニル化合物
を含む、悪臭中和組成物を提供する。
【0007】
上記組成物の大気または基材への適用を含む、大気中または基材上の悪臭を中和する方法を、さらに提供する。
【0008】
式Iで表される化合物(以下「化合物I」という)の非限定の例は、テトラブチルアンモニウムアセタート(CAS No: 10534-59-5)およびテトラエチルアンモニウムベンゾアート(CAS No: 16909-22-1)を含む。プロトン化対イオンの酸性度定数(pKa)は、具体的には2および5の間、より具体的には3および5の間である。
【0009】
式IIで表される化合物(以下「化合物II」という)の任意の置換基は、ヒドロキシ、アルコキシ、ケト、アルコキシカルボニル、カルボアルコキシおよびエーテルを含む。
化合物IIの具体的な態様は、
(a)Rが水素であり、Yが存在しない;および
(b)化合物がジエステルまたはトリエステルであるよう、RおよびRの少なくとも1つがエステル基であり、Yが酸素原子である、
ものである。
化合物IIの非限定の例は、シトラール、シンナムアルデヒドおよびダマスコンを含む。
【0010】
化合物I対化合物IIの重量比は有利に、1:1000〜1:5、具体的には1:500〜l:20、およびより具体的には1:300〜1:30の範囲内にある。
【0011】
悪臭中和組成物はまた、当該技術分野において既知の他の添加物、例えば、グリコール類およびグリコールエーテル類などの溶媒、メチルパラベン、プロピルパラベン、ブチルパラベン、エチルパラベン、イソプピルパラベン、イソブチルパラベン、ベンジルパラベンなどのパラベンおよびそれらの塩などの保存剤;ベンジルアルコール、フェニルエチルアルコールなどのアルコール;ホウ酸;2,4,4’−トリクロロ−2’−ヒドロキシ−ジフェニルエーテル;フェノール、2−メチルフェノール、4−エチルフェノールなどのフェノール化合物;ソルビン酸、安息香酸などの有機酸およびそれらの塩;ペンタエリスリトールテトラキス(3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオナート)、2,6−ジ(tert−ブチル)−4−)−4−メチルフェノール、para−メトキシけい皮酸2−エチルヘキシルなどの抗酸化剤および/またはUVスクリーン;エチレンジアミンテトラアセタート、ペンテト酸、エチドロン酸、ジエチレントリアミンペンタアセタートおよびエチレンジアミンジスクシナートなどの安定化剤/キレート剤を含有してもよい。
【0012】
本開示の一態様は、少なくとも0.075%w/wの少なくとも1つの化合物IIを、少なくとも1つの化合物Iと一緒に含有し、化合物Iが、香料におけるその溶解度が25℃で少なくとも100重量ppm、具体的には少なくとも200ppmであるよう選択される、悪臭吸収香料を含む。さらなる具体的な態様において、香料中に、香料に基づき少なくとも0.1%w/w、具体的に0.25%w/w、より具体的に0.5%w/w、より具体的に2%w/wの少なくとも1つの化合物IIが存在する。
【0013】
本願の目的のために、香料は、2巻構成で出版された、Steffen Arctander著“Perfume and Flavour Materials” (Montclair, N.J., 1969)、S. Arctander著“Perfume and Flavor Materials of Natural Origin”(Elizabeth, N.J., 1960)などの標準的な教科書に記載された臭気のある香料成分と、フタル酸ジエチル、ジプロピレングリコール、ミリスチン酸イソプロピル、クエン酸トリエチル、ならびにカルビトールおよび「Dowanol」ブランド(例えば、Dowanol DPM、Dowanol TPM、Dowanol DPnP、Dowanol DPMAなど)の下で販売されるものなどのグリコールエーテル類などの溶媒と一緒にした混合物として扱われる。一般的に、香料の含水量は、通常1%より下であり、より典型的には0.3%未満であり、しばしば0.1%より下であり、これは、香料中の塩の溶解度を劇的に制限する傾向がある。
【0014】
具体的な低度のにおいの態様において、化合物IIは、フマラート(すなわち、trans−ブタン−1,4−二酸のジエステル)を含む。ジヘキシルフマラートなどのあるフマラートは、求核性臭気剤、例えばアミン類およびチオール類(米国特許第6610648号および米国特許第3077457号)の中和剤として知られている。化合物Iとかかるフマラートとの組み合わせが、いくつかの場合、既知の組成物よりも一桁、有意に増強された悪臭低減能力を有することが見出された。具体的な組み合わせは、テトラブチルアンモニウムアセタートおよびテトラエチルアンモニウムベンゾアートの少なくとも1つとジヘキシルフマラートとの、1:300〜1:30の比率での混合物である。
【0015】
本開示の別の側面は、直接的なまたは間接的な空気の処理を含み、後者は、硬い表面、繊維、髪または皮膚などの基材を空気と接触させる処理を介する、空気から悪臭を除去する方法であって、有効量の上記悪臭中和組成物を取り込んだ消費者製品の空気への曝露または基材への適用を含む、前記方法に関する。悪臭中和組成物は、消費者製品中に直接的添加してもよく、または本明細書中に記載の香料を介して取り込んでもよい。
【0016】
本発明の組成物を、さまざまな製品、例えば消費者製品、例えば以下に詳細に示す製品などの中に取り込んでもよい。したがって、消費者製品ベースおよび有効量の上述の悪臭中和組成物を含む消費者製品を提供する。
【0017】
本明細書中で使用される「消費者製品」は、例えば、パーソナルケア、ならびに繊維、硬い表面、トイレ、およびエアフレッシュナーに向けられたより機能的な製品のために設計された製品を含む。皮膚に適用するのに好適な製品は、例えば、タルカムパウダー、デオドラントおよび制汗剤であって、スプレー、柔らかい固形、および固形、ローション、およびオイルの形態のもの、および石鹸、合成および組合せ石鹸および合成パーソナルウォッシュバー、パーソナル洗浄液、およびパーソナルワイプを含んでもよい。髪用製品は、例えば、シャンプー、コンディショナー、スタイリングスプレー、ムース、ジェル、髪用ワイプ、ヘアースプレー、およびヘアーポマードを包含する。家庭用製品は、繊維用液体および粉末洗剤、柔軟剤、ワイプ、食器用液体および粉末洗剤、硬い表面用液体クリーニング剤およびパウダー、水性および非水性スプレーを含む。用語「エアフレッシュナー」は、例えば、スプレー、キャンドル、ジェル、プラグイン型電気デバイス、組成物を空間に取り込む電池式であって他の形態のデバイス、および液体ウィッキングシステムを含んでもよい。
【0018】
「消費者製品ベース」は、悪臭中和組成物以外の消費者製品を調製するのに必要なすべての成分全体を意味する。これらは、組成物の性質に依存して当然さまざまであるが、当該技術分野において知られ、使用される種類および割合と異ならない。
【0019】
本明細書中で使用される、組成物、例えば消費者製品、の「有効量」は、用途、使用する組成物、周囲条件、および他の周知の変数に依存してさまざまである。以下の提供する例を使用して、当業者であれば、例えば消費者製品の有効量を空間に分配するために、使用する悪臭低減組成物の適当な量を判断することができる。以下の表は、消費者製品の代表的な範囲として好適な化合物IおよびIIの量をまとめている。
【0020】
【表1】
【0021】
本開示はここで、具体的な態様を描写する以下の非限定の例を参照し、さらに説明する。
【0022】
例1
ジヘキシル2−(プロピルスルファニル)スクシナート(A1)の合成
ジヘキシルフマラート(DHF)およびプロパンチオール間で作り出した1,4−付加体A1の参照サンプルを、以下のとおり調製する。
【0023】
炭酸リチウム(l00mg、1.35mmol)、ジヘキシルフマラート(0.5g.1.76mmol)およびエタノール(4.5g、5.7mL)を、丸底フラスコ中にマグネチックスターラーバーと共に入れ、密封した。プロパンチオール(180μL、2.0mmol)を、懸濁液に添加し、反応の進行を、酢酸エチル(1mL)中に希釈した一定分量の反応混合物(10μL)を使用して、ガスクロマトグラフィーによって監視した。反応が平衡に達した後、懸濁液を、ろ過し(0.2μm)、得られた溶液を、ロータリーエバポレーターを使用して減少させた(付加体A1の収率は、約100%であった)。NMRおよび質量分光分析により、所望の付加体の存在を確認した。
【0024】
例2
ジヘキシルフマラート(DHF)およびプロパンチオール間の反応に対するテトラブチルアンモニウムアセタートの効果
自然界にみられる多くのメルカプタン類の典型例である揮発性臭気剤であるプロパンチオールを、ガスクロマトグラフィーにより都合よく監視する。
【0025】
プロパンチオール(100マイクロリットル)を、2種類の市販の香料の1種中ジヘキシルフマラートの希釈物(9%)(すなわち、合計0.6g)に22℃で添加し、系を、1.5分間そのままにした。一定分量を、除去し、ガスクロマトグラフィーによる分析の前に酢酸エチル中に希釈し、付加体形成の程度を、測定した(百分率として)。実験を、少量(0.2%w/w)の塩であるテトラブチルアンモニウムアセタート(TBAA)が存在する中で反復した。
【0026】
15分後、付加体は、塩の不存在下で検出されなかった。表1に示す結果は、TBAAが、香料に大いに希釈されたときでさえ、DHF−チオール付加体の形成を大幅に増加させることを示す。
【0027】
テトラブチルアンモニウムメトスルファート、テトラブチルアンモニウムブロミドおよびテトラメチルアンモニウムブロミドなどのより強い酸(pKa<1)からの対イオンを有する他の第四級アンモニウム塩からは、15分のインキュベーション後に検出可能な生成物が得られなかった。
【0028】
【表2】
【0029】
例3
ジヘキシルフマラート(DHF)による空気からのプロパンチオールの捕集に対するテトラブチルアンモニウムアセタート(TBAA)の効果
ジヘキシルフマラートの液相サンプルと接触して空気からチオールを除去する能力を、標準のヘッドスペースガスクロマトグラフィー(HOC)により評価した。液体サンプル(0.5g)を、ヘッドスペースバイアル(20mLの容量)に入れ、PTFEセプタムを装着したマグネチックキャップを使用して密封した。ヘキサデカン(化学的に不活性な液体)を、対照として使用した。ヘキサデカンサンプル上のヘッドスペースからチオールを除去するメカニズムのみが、物理的可溶化であると予想される。気相の悪臭課題物(challenge)(プロパンチオール、30℃での水を含まない(neat)プロパンチオール上の1mlの飽和蒸気)を、(HP 7890ガスクロマトグラフに適したGerstel MPS 2XLオートサンプラーを介して)各バイアルに自動的に注入し、それを(攪拌しながら)40℃で30分間インキュベートした。プロパンチオールのヘッドスペースからの除去(捕集)を、ヘッドスペースガスクロマトグラフィーを使用して測定した。結果を、以下の方程式に示すとおり、ヘキサデカンのものと比較したヘッドスペースの減少(HSR)に関して表現した。
【0030】
【数1】
【0031】
HSRを、表2に示す。
【表3】