(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記格納されているエコー信号に対する前記処理は、前記フィールド点におけるそれぞれの送信ビームのピーク送信強度を使用することによってそれぞれの格納されているエコー信号の利得を補償することを含む、請求項1に記載の方法。
前記送信ビームの集合は、集束しない送信ビームを使用して送受信収集が64未満である視野に高周波音波を当てることによってフレームレートを最大化するように構成される、請求項1に記載の方法。
前記送信ビームの集合は、前記集合内の前記送信ビームのオーバーラップの量を制御することによって最適な空間及びコントラスト分解能をもたらすように構成される、請求項1に記載の方法。
組織又は血流速度に対する受信したエコー信号の処理では、入射送信ビーム属性の格納されている角度を使用して、ドップラー周波数偏移に基づき速度計算を補正し、それぞれのフィールド点における運動の大きさと運動の方向を求めるように構成される、請求項1に記載の方法。
前記格納されているエコー信号に対する前記処理は、前記フィールド点におけるそれぞれの送信ビームのピーク送信強度を使用することによってそれぞれの格納されているエコー信号の利得を補償することを含む、請求項8に記載のシステム。
前記送信ビームの集合は、集束しない送信ビームを使用して送受信収集が64未満である視野に高周波音波を当てることによってフレームレートを最大化するように構成される、請求項8に記載のシステム。
前記送信ビームの集合は、前記集合内の前記送信ビームのオーバーラップの量を制御することによって最適な空間及びコントラスト分解能をもたらすように構成される、請求項8に記載のシステム。
組織又は血流速度に対する受信したエコー信号の処理では、入射送信ビーム属性の格納されている角度を使用して、ドップラー周波数偏移に基づき速度計算を補正し、それぞれのフィールド点における運動の大きさと運動の方向を求めるように構成される、請求項8に記載のシステム。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下の説明では、さまざまな開示されている実施形態を完全に理解できるように、いくつかの具体的詳細が述べられている。しかし、当業者であれば、実施形態は、これらの具体的詳細の1つ以上がなくても、又は他の方法、コンポーネント、材料などを使用しても、実施できることを理解するであろう。
【0017】
文脈上他の意味に解すべき場合を除き、本明細書及び添付の特許請求の範囲全体を通して、「含む」、「備える」、及びこれらの活用形は、開いた包含的意味で解釈されるべき、つまり、「限定はしないが・・・を含む」という意味で解釈すべきである。
【0018】
本明細書全体を通して「一実施形態」又は「実施形態」と記述されている場合、これは、その実施形態に関して説明されている特定の特徴、構造、又は特性が少なくとも一つの実施形態に含まれることを意味する。そのため、「一実施形態では」又は「実施形態では」という語句が本明細書全体のさまざまな箇所に記載されていても、必ずしもすべて同じ実施形態を指しているとは限らない。さらに、特定の特徴、構造、又は特性は、1以上の実施形態において適当な任意の方法で組み合わせられうる。
【0019】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用されているように、「一つの(又は使わない場合もある)」及び「その(使わない場合もある)」(英語原文の冠詞「a」、「an」、及び「the」に対応する)で示される単数形は、文脈上明らかにそうでないことを示していない限り、複数形の指示対象を含む。「又は」という言い回しは、一般的に、内容が明らかに別のことを示していない限り最も広い意味で、つまり「及び/又は」を意味するものとして使用されることにも留意されたい。
【0020】
本明細書の見出し及び「要約」は、便宜上のものにすぎず、実施形態の範囲又は意味を解釈することはしない。
【0021】
媒体に高周波音波を当てるために、深さで集束又は弱集束(weakly focused)されるか、又は完全に集束されない送信ビームを含む、さまざまなビーム特性を持つ部分的に又は完全にオーバーラップする送信ビームの集合を使用することができる超音波画像形成の方法及び対応するシステムが説明される。本開示の一態様によれば、方法は、送信ビームの関連する特性を予めシミュレーション又は測定を通じてあらかじめ決定することを伴い、ここで、送信ビームは、この集合内の与えられたビームに対する送信パルスがフィールド点を通過するときにそれぞれの画像フィールド点において生成される。
【0022】
このような特性として、フィールド点において結果として生じるピーク音響強度、フィールド点においてピーク音響強度が生じる時間、特定のレベルより大きい強度の持続時間(パルス持続時間)、ピーク強度とフィールド点において送信イベントの発生時に生じるビーム強度の他のピークとの間の比、及びフィールド点とのピーク送信強度波の入射角が挙げられる。次いで、画像形成に適している送信フィールドの領域の適格性評価(qualify)を行うためにこれらの特性の1以上が使用されうる。これらの送信フィールド特性は、コンピューティングシステムのメモリに格納され、次いで、すでに特徴付けられている送信ビーム集合を使用する超音波走査のために画像形成処理時に取り出されうる。どのフィールド点が送信ビームの適格と評価される領域(qualified region)内に入るか、またそれぞれのフィールド点において与えられた送信ビームについて戻されるエコー信号がどのように処理されるべきかを決定するためにビーム特性が使用されうる。フィールド点における最終音響画像パラメータは、集合内の送信ビームの1以上を基に処理済み信号の組み合わせから導き出される。
【0023】
本開示では、それぞれの送信ビームから生成される複数のエコー信号を利用し、画像形成プロセスで複数のオーバーラップする送信ビームからの信号を組み合わせて画像分解能を改善し、及び/又はフレーム収集時間を短縮する。
図1に示されているように、個別の送信ビーム32は、トランスデューサの視野のかなり大きな領域に高周波音波を当てることができる。さらに、典型的な順次走査で高周波音波を当てられた領域はかなりオーバーラップし、同じフィールド点がこの集合内の複数の送信ビームによる高周波音波で当てられる。それぞれのビームの軸にそってのみ画像パラメータを再構成する代わり、送信ビームに含まれる他のフィールド点を処理し、フィールド点におけるそれぞれのオーバーラップするビームからの結果を組み合わせることが可能である。このような再構成法を実行するために、われわれは、送信ビームの高周波音波を当てられる領域を決定し、領域内のフィールド点に対する最良の種類の処理を決定するのを補助する領域のパラメータを測定する何らかの方法を必要としている。
【0024】
送信ビームによる高周波音波を当てられる領域の範囲を決定する一方法では、
図2に示されているように、グリッド42内のそれぞれのフィールド点40における送信ビームの最大強度を、ビームシミュレーション技術を使用して、又は直接測定によって、計算する。媒体中の音速に依存する、ある知られている時刻において、パルス送信ビームは、ビームの高周波音波を当てられた領域内のフィールド点で強度ピークを発生する。この強度ピークは、ビームの軸に関してフィールド点の位置とともに変化し、典型的には、ビーム軸からの距離が長くなるにつれ減少する。フィールド点における強度ピークの大きさは、
図2のフィールド点の灰色の陰によって示される。ビーム軸からある距離のところで、ピーク強度は、フィールド点から戻るエコー信号が、バックグラウンドノイズ及び音波散乱と混じるので、検知不可能又は使用不可能になるくらい弱くなる。したがって、カットオフ閾値は、最大ピーク強度のある比で設定することができ、これに対して、その閾値より低い強度を持つフィールド点は送信ビームの高周波音波を当てられる領域の外部にあると指定される。異なるフィールド点で異なるカットオフ閾値を有するように選択することができるが、それは、フィールド点における送信パルスの全強度が深さ、組織減衰、及び他のファクタとともに変化しうるからである。次いで、さまざまな閾値が、ビームの主要な高周波音波を当てられる領域の境界43を画成するが、これは、適格と評価される領域(qualified region)とここでは称している(
図2を参照)。送信ビームの高周波音波を当てられる領域内のフィールド点に対し、画像形成操作でピーク強度値を使用してそれぞれのフィールド点から戻るエコーを正規化することもできる。これにより、送信ビームの主要な高周波音波を当てられる領域の上に画像パラメータの均一な強度再構成を行うことができる。
【0025】
送信パルスのピーク強度と異なる送信ビーム特性は、画像形成にどのフィールド点を使用できるのかという適格性評価を行うために重要である場合がある。ビームの焦点から移動されたいくつかの距離のところにあるフィールド点に対して、送信パルスの持続時間は延長されうるが、それは、トランスデューサ内の個別の素子からの送信パルスについての到来時間が同時でないからである。焦点のビームの軸上のフィールド点53におけるパルス強度の持続時間を見た場合、焦点から遠い、軸外れのフィールド点54におけるパルス強度の持続時間と比較すると、
図3に示されているように、波形50及び波形51であることがわかるであろう。
【0026】
焦点におけるフィールド点に対する強度波形51は、適切な振る舞いをし、特異ピーク55を形成する。軸外れ点における強度波形50は、より広がっており、二次ピーク52を有する。中央のピークの広がり、及びフィールド点における強度波形の二次ピークの存在により、フィールド点からの画像形成に対するエコー信号の処理において分解能が低下し、散乱が増大する。したがって、強度波形の中央のピークが指定された量を超えて広がっているか、又は中央のピークのある指定された比より高い二次ピークがあるフィールド点を除外すると都合がよい。
図3において、二次ピークは、主ピークの比αであり、高い二次ピークを有するフィールド点を除去するために使用されうるαの最大値を設定することができる。二次ピークの低い寄与を保証するのに望ましいαの値は、0.1(−20dB)未満となるであろう。
【0027】
次いで、送信ビームの上述の特性の一部又は全部を使用してどのフィールド点がその特定のビームによる画像形成に使用されうるかの適格性評価を行うことで、フィールド点について計算された画像パラメータが正確であり、不要信号によって損なわれていないことを確認することができる。したがって、この集合内のそれぞれの送信ビームについて、ビーム軸のみに沿うのではなく、送信ビームの実質的領域を覆うフィールド点にわたって画像形成操作を実行することが可能である。これにより、ビーム軸のみが再構成されるときに必要な多数のビームではなく、少数の部分的に、又は完全にオーバーラップする送信ビームのみで注目する所望の画像フィールドを覆う送信ビームの集合を設計することが可能になる。64本より少ないビームを使用することで、収集時間を短縮し、フレームレートを高めることができる。それに加えて、同じフィールド点は、集合内の複数の送信ビームに対する適格と評価されたフィールド点であってよいので、画像形成処理では、1本だけなくそれ以上の数の送信ビームからのエコー信号を利用することができる。
【0028】
特定の一例について、
図4に示されているように、複数の送信ビームT
1−Nの集合によって高周波音波を当てられる与えられたフィールド点P(63)を考える。
図4には、四つのオーバーラップするビーム、三つのオーバーラップするビーム、及び四つのオーバーラップするビームを持つフィールド点を含む三つの領域60、61、62が示されている。さらに完全に説明されているように、複数のオーバーラップする送信ビーム領域を使用する画像形成では、空間分解能が高められる。それぞれの送信ビームについて、以下の特性が、シミュレーション又は直接測定によってフィールド点Pにおいて決定される。
I(T
n)−Pにおけるピーク音響強度。
tp(T
n)−Pにおける送信開始からピーク音響強度の発生までの時間。
tb(T
n)−tp(T
n)の指定された数分の一よりも大きい音響強度の持続時間。
r(T
n)−二次強度ピークの強度とI(T
n)との比。
θ(T
n)−トランスデューサの軸に関する音波の波面の入射角。
【0029】
エコー画像形成のために、個別のトランスデューサ素子受信信号を遅延させ、総和してフィールド点で反射体によって生成されるエコー信号を再構成することによって、集合内の送信ビーム毎にフィールド点Pに対する複素信号値Snを求めることができる。これは、ビーム形成のよく知られている方法であるけれども、この場合、信号再構成は、それぞれの送信ビームの軸に沿って配置されている点ではなく、特定のフィールド点で実行されている。信号再構成で使用するさまざまなトランスデューサ素子信号に対する時間遅延を計算することを目的として、送信の開始からフィールド点におけるピーク音響強度tp(Tn)の発生までの時間が使用されうる。
【0030】
この事例では、われわれのフィールド点Pにおいてある程度の音響エネルギーを発生する8本ほどの送信ビームを有し、八つの複数信号値S
1〜8を計算することが可能である。送信ビームの集合に対してPにおける全部の複素信号値を得るために、以下のように個別の信号値を組み合わせることができる。
【0031】
S
P=(S
1*N
1+S
2*N
2+S
3*N
3+S
4*N
4+S
5*N
5+S
6*N
6+S
7*N
7+S
8*N
8)/8
ただしN
1〜8は、ピーク音響強度値I(T
1〜8)の逆数を計算することによって得られる正規化定数である。例えば、送信ビームT
1のPにおける強度が0.5(任意の何らかの単位)であり、送信ビームT
4のPにおける強度が1.0である場合、N
1=2及びN
4=1と計算することが可能である。この場合、信号値S
1は信号値S
4の強度の半分であると予想し、信号値S
1に2を乗算して、これに信号値S
4と同等の総和への寄与を与える。
【0032】
上の組み合わせる式では、複数のファクタを考慮していない。特定の送信ビームに対するピーク音響強度I(T
n)は、組み合わされた信号にノイズを加えるだけであればそのように弱い場合がある。これを防ぐために、S
nについて正規化定数N
nをゼロに設定するが、ただし、I(T
n)は、Pにおける最大音響強度の0.05倍などの、指定された閾値より小さい。それに加えて、点Pにおける送信パルスの持続時間tb(T
n)は、いくつかの送信ビームT
nについて延長されるものとしてよく、ただし、フィールド点Pはビーム軸に沿って配置されない。これらの送信ビームからの信号を使用することで、画像分解能は低下し、そこでtb(T
n)の値が最短の送信パルス持続時間の1.2倍などの、指定された量より大きい場合にこれらのビームに対する正規化定数をゼロに設定する。最後に、いくつかの送信ビームについて、Pにおける送信パルスは、一次ピークからしばらくして発生する二次ピークなどの、望ましくない特性を発現させている可能性がある。この場合、二次ピークの強度の比r(T
n)を使用してこれらのビームの適格性評価を行うことができる。r(T
n)の値が0.02などの、特定の閾値より高い(二次ピークは、一次ピークの強度の2%超である)場合、正規化定数はゼロに設定されうる。これらの制約条件が追加されると、われわれの組み合わせ公式は以下のように修正されうる。
【0033】
I(T
n)に適用される強度閾値によって適格性評価がなされる場合:
【数1】
【0034】
持続時間閾値tb(T
n)及び/又は二次ピークの比r(T
n)によってさらに適格性評価がなされる場合:
【数2】
【0035】
そこで、Pに対するこれらの組み合わされた複素信号は、寄与する8本のビームのうちの4本に基づくが、選択に対するわれわれの基準では、十分な強度及び適切に形成された送信パルスを有するビームのみが寄与することを許容している。適格と評価された送信ビーム領域が、それらの適格と評価された領域がオーバーラップしている領域に沿った形で
図4に示されている。Pでその結果得られる組み合わされた信号は、典型的には、単一のビームからの信号と比較したフィールド点から戻るエコーのより正確な推定をもたらす。次いで、複素信号値S
pがさらに処理され、これによりエコー強度などの音響画像パラメータ、又はドップラー速度測定に対する位相情報を得ることができる。
【0036】
次いで、トランスデューサの視野内のさまざまなフィールド点における音響画像パラメータを集めて画像フレームを組み立てる。ディスプレイデバイスへの表示、プリンタでのプリントアウト、他のコンピューティングシステムへの送信、及び同様の操作のため、コンピューティングシステム内でフレームが処理されうる。この方法は、それぞれのフィールド点に高周波音波を当てる複数の送信ビームからさまざまなフィールド点における追加の音響情報を抽出するが、これは従来のビーム形成方法に勝る利点をもたらす。つまり、従来の処理で使用されるビームの数以下のビームの数で改善された画質が得られるか、又は画質を落とすことなくより少ない送信ビームで超音波画像フレームが形成され、これにより、より高い収集フレームレートを達成することができるということである。
【0037】
より少ない送信ビームを使用してより高いフレームレートで注目するフィールドを覆う代わりにより小さな強度フィールドを持つ送信ビームのより大きな集合を使用することもできる。強度フィールドが小さければ、送信ビームは画像形成における散乱増大に寄与しうる大きな軸外れ反射面からのより少ないエコーを含む、トランスデューサの視野全体からのより少ないエコーを発生する。強度フィールドの小さい送信ビームは、それでも、オーバーラップする適格と評価された画像形成領域を有し、空間分解能が高められるという利点を維持しうる。散乱のレベルが低ければ、コントラスト分解能の増強も得られる。
【0038】
複数の送信ビームからのフィールド点に対する信号を組み合わせるために、われわれは、それぞれの送信ビームに対する送信パルス波面が到来する正確な時間を知る必要がある。この時間とフィールド点で生成されるエコーから個別のアレイ素子に戻るまでの時間を知ることで、位相同期して個別の素子信号を組み合わせてフィールド点からの信号を再構成することができる。与えられた送信ビームに対するフィールド点における送信パルスの到来時間は、ピーク強度及びピーク強度持続時間と同様に、シミュレーションによって、又は実際の測定によって、決定されうる。送信ビームのそれぞれの適格と評価されたフィールド点に対する送信パルスの到来時間は、送信ビームによって生成されるエコー信号の画像形成処理時に使用するため予め決定され、メモリデバイス内に格納されうる。画像形成時に、パルスの到来時間が、フィールド点から特定のトランスデューサ素子までの移動時間に加えられ、これにより素子がエコー信号を受信した時刻を決定し、その信号と他の送信ビームから得られた信号と組み合わせるために使用する。
【0039】
複数のオーバーラップする送信ビームによって高周波音波を当てられたフィールド点に対するエコー信号を組み合わせることで、フィールド点における画像空間及びコントラスト分解能を改善することができる。これは、それぞれのビームがフィールド点上でのわずかに異なる入射角を有することがあるという事実によるものであり、この結果、焦点での送信ビームの幾何学的集束によく似た合成送信集束の一形態が得られる。したがって、オーバーラップする送信ビームからの信号を組み合わせることは、画像の焦点が合わされる被写界深度を広げる効果を有し、複数の送信焦点深度を組み合わせたのと同じ結果をもたらすが、走査に沿ったそれぞれのビーム位置で複数回送信しなくてよい。これにより、フレーム収集時間を延ばさなくても画像分解能を改善できる。
【0040】
それに加えて、画像形成において複数の送信ビームを組み合わせることで、コントラスト分解能を改善することができる。コントラスト分解能は、散乱及びスペックルのアーチファクトの低減により改善される。散乱は、フィールド点からのエコーと同時に受信素子に到来するフィールド点におけるエコーとは別のターゲットからのエコーによる。これらのエコーは、他の発生源に由来し、送信ビームのサイドローブ又はグレーティングローブによって生じることが多い。
【0041】
異なる発生源(origin)及び入射角の送信ビームからのいくつかのエコー信号をフィールド点で組み合わせることによって、フィールド点における散乱信号は変動し、非コヒーレントに組み合わさる傾向を有する。フィールド点からのエコーは、コヒーレントに組み合わされ、したがって、複数のビームからの信号を加えることで信号対散乱比を増大させうる。超音波画像中のスペックルパターンは、送信ビーム特性にも部分的に依存し、複数のビームからの信号の組み合わせは、これらの変動も同様に平均する傾向を有する。
【0042】
オーバーラップする送信ビームの集合による画像形成は、実装するにはかなり複雑な場合があり、好ましくは、以下でさらに詳しく説明されている、ソフトウェアによるピクセル指向の処理を使用して実行される。フィールド点は、画像表示のピクセル位置にあるか、又は仮想画像のピクセル位置にあるものとしてよく、最終的には、補間されて高分解能表示を形成する。それぞれのフィールド点において、受信されたエコー信号が画像形成に使用されうるオーバーラップする適格と評価された送信ビーム領域の数を決定しなければならない。集合内のそれぞれの送信ビームは、与えられたフィールド点で異なる強度を発生することができるため、戻される信号は、組み合わせる前に強度の差を補正するため正規化されるべきである。組み合わせるプロセスは、これが信号強度にも影響を及ぼすので、それぞれの送信ビームについて受信プロセスに加わるトランスデューサ素子の数を追跡し、正規化することもすべきである。これらの正規化ファクタは、注目する画像フィールド内のそれぞれのフィールド点について無関係であり、画像形成処理が進行するとともにリアルタイムで計算されるか、又はそれぞれの画像フレームの処理中にパラメータを取り出せる格納テーブルに保持されるかのいずれかとしなければならない。
【0043】
画像形成処理が注目する画像フィールド内の運動を測定することを目指している場合、オーバーラップする適格と評価された送信ビーム領域の集合を使用することには、いくつかの独自の利点がある。ビームのシミュレーション又は直接測定を通じて、それぞれのフィールド点とともに送信パルス波面の入射角を計算することができるため、フィールド点における運動ベクトルから戻されるドップラー周波数偏移の大きさを知ることができる。オーバーラップする集合内の異なる送信ビームは、それぞれのフィールド点で異なる入射角を生成するように設計することができ、それぞれの入射角による測定された運動ベクトル成分の変化から、運動ベクトルの大きさの絶対値及び方向を計算することができる。次いで、これは、単一の送信ビームの入射角を使用する従来の運動撮像技術に比べてかなり正確な血流速度及び組織運動検知を行える。
【0044】
従来のドップラー撮像法では、走査におけるそれぞれの送信ビーム位置に対する複数の送信及び受信信号収集を利用して、ビーム軸に沿った運動を検知するために使用されうるそれぞれの位置における受信信号の集合体を生成する。従来のアプローチでは、絶対速度ではなく、ビームの軸に沿った速度ベクトルの成分を測定する。従来のドップラー撮像方法で使用される送信ビームが、注目するフィールド点で何らかのオーバーラップをもたらすように十分に広いものである場合、同じ走査順序で絶対速度情報が得られる。送信ビーム位置における収集のそれぞれの集合体(ensemble)により、それぞれのフィールド点における運動ベクトルの単一成分を、送信ビームのすでに決定されている入射角とともに測定することができる。次の送信ビーム位置における収集の次の集合体は、前のビームとオーバーラップするフィールド点における運動ベクトルの追加の成分をもたらす。次いで、知られている送信ビームの入射角とともにそれぞれのフィールド点における複数のオーバーラップする送信ビームから得られる複数の成分を組み合わせることによって、運動ベクトルの大きさの絶対値及び方向を計算することができる。
【0045】
上記の説明において、ここでは与えられた用途に対するオーバーラップする送信ビームの集合の幾何学的形状を明示的に指定してはいない。これは、オーバーラップするビームの集合の設計が、超音波用途と測定される所望の画像形成パラメータの両方に依存するからである。典型的には、送信ビームは、送信開口(transmit aperture)のサイズ、その開口に収容される送信素子の重み付け又はアポダイゼーション、及びそれぞれの送信素子の波形の開始までの時間遅延を制御することによって整形される。個別の送信機の波形も、ほとんどのシステムにおいて制御されうる。
【0046】
増強された画像形成に対する送信ビームの集合を設計するための一般的ルールは、以下のとおりである。a)注目する画像フィールド内に運動がほとんど、又は全くなく、明るい鏡面反射体が最小数である場合、広く、実質的なオーバーラップのあるビームの集合を設計し、それぞれのフィールド点が5本を超えるビームによって触れられるようにする。アポダイゼーションを通じて送信ビームの焦点をソフトにするか、又は非常に深い焦点を使用して、ビームの最も狭い部分に十分なオーバーラップが生じるようにする。それに加えて、送信ビームの集合を、フィールド点の過半数において送信パルス波面の異なる入射角を与えるように設計する。b)注目するフィールド内に実質的な運動があり、及び/又は鏡面反射体が大きい場合、運動が予想される領域に少量のオーバーラップを有する比較的狭い送信ビームの集合を設計し、領域内のフィールド点におけるオーバーラップしたビーム数を2本又は3本のビームに減らす。これにより、媒体の運動による複数のビームを使用するコヒーレントな画像形成における誤差を最小にする。
【0047】
上記の画像形成方法の主な利点は、これにより、超音波画像エンジニアが異なる撮像用途及び測定に合わせてシステムの撮像性能を最適化することができる点である。フレーム毎にわずかな送信ビームのみを使用して、非常に高いフレームレートを有することができ(毎秒100フレームを超える)、それでも、妥当な画質を得られるか、又はより多くのビームで典型的なフレームレート(毎秒約30フレーム)を得られ、最良の画像空間及びコントラスト分解能を得られる。ドップラー撮像では、血流又は組織運動の大きさ及び方向は、フレームレートを犠牲にすることなく得ることができる。
【0048】
ピクセル指向の処理
前記の方法は、本開示の一実施形態によるソフトウェアベースの方法及びシステムアーキテクチャを利用するコンピューティングシステムで実装されうる。このシステムでは、すべてのリアルタイム処理機能をソフトウェアで実行する。提案されているアーキテクチャは、
図5に概略として示されている。
【0049】
ソフトウェアベースのシステムにおける唯一のカスタムハードウェアコンポーネントは、パルス発生及び信号収集回路、並びに信号データを格納するために使用される拡張メモリの大きなブロックを収容するコンピュータの拡張バスに接続する収集モジュールである。信号収集プロセスは、送信パルスに続いてトランスデューサ素子のそれぞれから戻された信号を増幅し、2値化することからなる。典型的には、トランスデューサそれ自体が備える自然なバンドパスフィルタリング以外の、2値化の前の信号のフィルタリングだけが、A/D変換を行うためのローパスアンチエイリアス処理フィルタリングである。信号は、関わっている超音波周波数と一致する一定のレートでサンプリングされ、2値化されたデータは、最小の信号処理によりメモリに格納される。信号収集の直截的(straight-forward)な設計により、回路は、比較的少ないボード面積で市販のコンポーネント使って実装することができる。
【0050】
収集モジュールのより詳細な外観は、
図6に概略が示されている。複数の収集チャネルが図示されており、それぞれ送信器、受信器プリアンプ、A/Dコンバータ、及びメモリブロックから構成されている。受信時に、トランスデューサ信号が2値化され、個別のメモリブロックに直接書き込まれる。メモリブロックはデュアルポートであり、これは、収集データがA/Dコンバータ側から書き込まれるのと同時にコンピュータ側から読み出されうることを意味する。メモリブロックは、システムのCPU(複数可)には通常の拡張メモリとして見える。システムは好ましくはカスタムエンクロージャ内に収納されるので、収集モジュールのサイズは、標準のコンピュータ拡張カードの通常のサイズに限定されないことに留意されたい。また、多数のトランスデューサ素子に対応できるように複数の収集モジュールが使用され、それぞれのモジュールはトランスデューサ開口の部分集合を処理することができる。
【0051】
増幅器、A/Dコンバータ及び関連するインターフェース回路、並びに送信パルス発生及び信号収集に必要なコンポーネントを含む、収集モジュール用のコンポーネントは、容易に入手できる市販のコンポーネントであり、本明細書では詳しく説明しない。受信されたエコーから得られるエコー信号のRFデータの格納に必要なメモリブロックは、市販の拡張メモリカードに見られるのと本質的に同じ回路であるが、ただし、2値化された信号データを書き込むために第2のダイレクトメモリアクセスポートが加えられている。(受信されたエコー信号データは、トランスデューサによって生成される高周波電気振動からなるため、RFデータと一般的に称される。)
【0052】
メモリは、中央演算処理装置のアドレス空間内にマッピングされ、コンピュータのマザーボード上に配置されている他のCPUメモリと同様にしてアクセスされうる。或いは、RFデータは、ダイレクトメモリアクセスを使って収集モジュールからホストコンピュータに転送することもできる。収集モジュール上のメモリのサイズは、最大256以上の別々の送信/受信サイクルに対して個別のチャネル受信データを受け入れることができるようなサイズである。人体内の超音波パルスの往復に対する最大の実用的な浸透深さは、波長約500個分なので、中心周波数の4倍の標準サンプリングレートは、個別のトランスデューサ素子からの4000サンプル程度のストレージを必要とする。16ビット及び128個のトランスデューサチャネルのサンプリング精度では、最大深さの受信データ収集は、それぞれの送信/受信イベントについて約1メガバイトのストレージを必要とする。したがって、256個のイベントを格納するには、256MBのストレージが必要であり、総計で、128個のチャネルシステムを一つ又は二つと少ない収集モジュール上に構築することが可能である。
【0053】
ソフトウェアベースの超音波システムの別の態様は、コンピュータのマザーボード及びその関連するコンポーネントである。提案されている設計に対するマザーボードは、好ましくは、必要な処理能力を得るために、マルチプロセッサCPU構成をサポートすべきである。電源、メモリ、ハードディスクストレージ、DVD/CD−RWドライブ、及びモニターを完備した、完全なマルチプロセッサコンピュータシステムは、当業者に知られており、容易に市販のものを購入できるので、これ以上詳しく説明することはしない。
【0054】
ソフトウェアベースの超音波システムは、「高性能」、つまり、健康産業に著しいメリットをもたらすために、既存のハイエンドシステムに匹敵する画質を真に達成しなければならない。このレベルの性能は、現在のシステムのフロースルー処理方法をソフトウェア実装に単純に変換することでは達成できないが、それは、フロースルーアーキテクチャでは1秒分のリアルタイム撮像に必要なすべての処理演算を単純に追加すると、数は複数の汎用プロセッサで現在達成可能な1秒あたりの演算数を超えるからである。その結果、フロースルー方法に比べてはるかに効率のよい新しい処理方法が求められている。
【0055】
本発明のソフトウェアベースの超音波システムアーキテクチャの一実施形態では、信号及び画像処理の入力データは、1以上の送信イベントに続く個別のトランスデューサチャネルから得られたRFサンプルの集合からなる。そこで、例えば、
図8に示されているように、128素子線形トランスデューサアレイによる典型的な2D撮像走査モードを考える。
【0056】
この場合、「送信イベント」は、媒体内で組み合わされる複数の音波を生成し特定の素子位置においてトランスデューサ上の原点から外へ放射される集束超音波ビームを形成する複数のトランスデューサ素子からの、時間が指定されているパルス(timed pulse)からなる。複数の送信イベント(全部で128個)は、トランスデューサ面の幅にわたって徐々に順次放射される超音波ビームを生成し、これにより、画像フレーム全体のインテロゲーションを行う。これらの送信ビームのそれぞれについて、受信エコーデータは、トランスデューサ内の128個の受信器素子のそれぞれから集められて、それぞれの列が対応するトランスデューサ素子によって受信されるサンプリングされたエコー信号を表すデータ配列にまとめられる。こうして、それぞれの配列は、128個のトランスデューサ素子に対応する128個の列と、取り出された深さのサンプルの数に対応する多数の行(この場合、4096個の行を仮定するとサンプルは4096となる)を有する。次いで、これらの128個のデータ配列は、一つの完全な画像フレームを生成するのに十分なRFデータセットを構成する。
【0057】
フロースルーアーキテクチャでは、上述のRFデータセットは、ビーム及び画像形成がトランスデューサからのデータストリームとして行われるので、存在することすらしない(少なくとも一度には全くない)ことに注目すべきである。言い換えると、データが送信イベントの後にそれぞれの素子に戻ると、これらは処理され、組み合わされて(ビーム形成と称される)、単一のビーム(走査ライン)にそって集束戻り信号を表す単一のRF信号を生成する。このRF信号は、エコー振幅サンプルに処理され(ここでもリアルタイムで)、メモリアレイ内に格納される。すべてのビーム方向が処理されたときに、エコー振幅データは表示できるように補間されてピクセル画像にフォーマットされる。すべての処理がリアルタイムで行われるので、処理回路は、トランスデューサ素子から入るデータストリーミングに「遅れずについてくる」ことができなければならない。
【0058】
本発明のソフトウェアベースのアーキテクチャでは、すべての入力データは、処理前に格納される。これは、収集レートを処理レートから切り離し、したがって、必要ならば、処理時間を収集時間よりも長くとることができる。これは、収集の深さが短く、サンプルレートが高い、高周波走査でははっきりと有利である。例えば、10MHzの走査ヘッドは、約4センチメートルの撮像の使用可能な深さを有するものとしてよい。この場合、組織中の音速により、128個の送信/受信イベントのそれぞれは、52マイクロ秒でデータを取得して格納することを命令することになるが、これは非常に高速な収集データ転送速度である。フロースルーアーキテクチャでは、これらの収集データは、高処理速度でリアルタイムで走査ラインに形成される。本発明のソフトウェアベースのアーキテクチャでは、RFデータを格納することにより、処理の時間を、組織移動のリアルタイムの可視化のために典型的には33ミリ秒(30フレーム/秒)である、表示のフレーム期間と同程度の時間とすることを可能にする。128個のピクセル列(走査ラインにおおよそ類似している)について、これは、フロースルーアーキテクチャの52マイクロ秒ではなく、1列あたり258マイクロ秒の処理を可能にする。この格納戦略は、典型的な走査深さに対してフロースルーアーキテクチャと比較して処理の最大速度を実質的に下げる効果を有する。
【0059】
入力データの格納により、最大処理速度は低下するが、必ずしも処理ステップの数が減るわけではない。これを達成するために、超音波データ処理に対する新しいアプローチがとられる。第1のステップは、撮像モードに入っているときのシステムの最終的な目標は、出力ディスプレイ上に画像を生成することであることを認識することである。超音波画像は、周波数及び配列次元などの、収集システムの物理的パラメータに依存する基本的分解能を有し、エコー振幅又は他の何らかの組織(音響)特性を符号化したピクセル値の矩形配列として表されうる。この矩形ピクセルの密度は、画像分解能の適切な空間サンプリングを行えるものでなければならない。表示画像は、ピクセルの矩形配列のみからなる必要はないが、異なる幾何学的形状を表す、ピクセルの任意の集合からなるものとしてよいことは理解されるであろう。
【0060】
次のステップは、この画像配列内のピクセルの一つから始めて、RFデータセット内のどのサンプル点がこのピクセルの強度の計算に寄与するかを考慮し、これらにアクセスし処理する最も効率のよい方法を決定することである。このアプローチは、現在のフロースルーアーキテクチャによって利用されているものと完全に異なるアプローチであるが、それは、ディスプレイ上のピクセルに寄与する情報のみが処理されればよいからである。本発明のアプローチでは、表示画像上の小さな領域では大きな画像領域に比べて全体的処理時間が短縮されるが、それは、小さな領域に含まれるピクセルの数が少ないからである。対照的に、フロースルー処理方法は、画像領域のサイズと無関係に、最大データストリーム帯域幅を取り扱えるように設計されなければならない。
【0061】
超音波画像を適切に表すために必要なピクセル配列を処理した後、この配列をコンピュータのディスプレイに対して、表示に適したサイズでレンダリングすることができる。追加CPU処理を必要としない、コンピュータのグラフィックスプロセッサは、典型的には、この演算を実行することができ、これは単純なスケーリングと補間からなる。
【0062】
次に、われわれの超音波画像の単一ピクセルに対する処理戦略を考える。この説明では、トランスデューサアレイに関してピクセルの対応する空間位置でエコー強度を得ることが目的であると仮定する。他の音響パラメータも同様に得ることができる。われわれの第1のステップは、エコー強度計算に寄与するサンプルを含む収集RFデータの領域を見つけることである。
図7の操作方法に対してこれを遂行するために、最初に、ピクセル位置との交差点に最も近くなる収集走査ラインを見つけて、対応する個別の素子データ配列を使用する。
【0063】
図8は、超音波画像内の例示的なピクセルに対するこのマッピングプロセスを示している。
図8では、指し示されているピクセルは、走査の最も近い収集ラインにマッピングされ、この場合これは走査ライン4であり、RFデータは第4の個別の素子RFデータ配列(第4の送信/受信イベントから集められたデータを表す)内に置かれている。1以上のRFデータ配列が、ピクセル信号に寄与するものとして選択されうるが、この例では、単一のデータ配列のみを考察する。
【0064】
われわれの次のステップは、ピクセルの強度計算に寄与するサンプルを含む個別の素子配列内の領域をマッピングすることである。このマッピングプロセスは、かなり複雑であり、複数のファクタに依存する。トランスデューサ素子はそれぞれ、画像フィールド内の特定の点から戻る信号にどのように応答するかを決定する感度(sensitivity)の領域を有する。与えられた画像点に対して、所定の閾値より高い感度を有する素子のみを考察すればよいが、それは、感度が低すぎると、素子はピクセルの量に有用な情報を付与しない。次いで、この感度閾値は、マッピングされた領域に含める素子データ列の数を決定する。
【0065】
マッピングされたデータ領域の始まりの深さは、それぞれの個別のトランスデューサ素子における戻るエコーの到着時間によって決定される。
図8に示されているように、画像点からさらに離れる素子に対する画像点信号は、時間的に後で捕捉され、したがって、データセットの開始点は、メモリ内のより深くにある。最後に、マッピングされるデータ領域に必要な深さ範囲は、生成される送信パルスの持続時間に依存する。より長い送信パルスは、より長い期間に画像点を励起し、RFメモリのより大きな深さ範囲にわたるエコー信号を発生する。
【0066】
幸いなことに、マッピングされたデータの領域を決定することになるファクタの多くは、与えられたピクセルグリッドついて事前に計算されうるが、それは、このグリッドがリアルタイムの画像列の複数のフレームにわたって変化しないからである。事前に計算されたファクタを使用することで、与えられたピクセルに対するマッピングされたデータ領域は、素早く、効率的に決定されうるため、リアルタイムの撮像の際にかなりの計算を削減できる。
【0067】
ピクセルマッピングRFデータを選び出した後、これを以下に示されているように行列RFP
nmに構成することができる。
【0068】
「P
nm」という記法は、第n行、第m列の画像ピクセルを指す。行列の列は、
図11の垂直バーであり、
【数3】
であると仮定し、それぞれの垂直バー内のサンプルの数jは、同じである。サンプルの数jは、送信パルスによって生成される信号を捕捉するのに必要な時間内でRFデータの範囲に依存する。インデックスkは、強度計算に関わる画像点からの適切な信号強度を有するRFデータ配列内のチャネルの数である。ピクセルP
nmの信号強度値を計算するプロセスは、一連の行列演算からなり、最終的に単一の値が得られる。
【0069】
図9は、本開示のプロセスを実装するように適合可能なシステムアーキテクチャの高水準表現の図であり、
図10は、一実施形態のソフトウェアベースのアーキテクチャの概略図である。それに加えて、
図11は、上で説明されているピクセル指向処理に従って形成されたプラグインモジュールの線図である。
【0070】
より具体的には、
図9は、本開示のプロセスを実装する高水準システムアーキテクチャ70を表すシステムレベルのブロック図を示している。これは、単に代表的な一実施形態にすぎず、例示されているアーキテクチャ70は、本開示のすべての実施形態に対する要件ではないことは理解されるであろう。
【0071】
アーキテクチャ70は、ホストコンピュータ72を備え、ホストコンピュータ72は、PCI−express74を介してマルチチャネルトランシーバ及びデータ収集システム76に結合されている。ホストコンピュータ72は、ユーザーインターフェース及び制御装置78、並びにディスプレイ80を有し、両方ともピクセルベースのアプリケーション処理ソフトウェア84を利用するプロセッサ82に結合されている。マルチチャネルトランシーバ及びデータ収集システム76のハードウェアは、超音波トランスデューサ86に結合されており、この超音波トランスデューサ86は、モニター、プロジェクターなどのディスプレイ80上に表示するか、又はデバイスの表示若しくは操作若しくはその両方のため別のデバイスに送信することを目的として音響媒体内の領域88を撮像するために使用されるものである。これらのコンポーネントは、容易に市販のものが入手可能であるため、本明細書では詳しく説明しない。
【0072】
ピクセル指向の処理を使用することで、オーバーラップする送信ビームを利用するすでに述べられている種類の複素エコー信号再構成を行うことができる。この方法では、トランスデューサの視野に関して位置決めされた点のグリッドのそれぞれにおいて送信ビームの集合内のそれぞれの送信ビームの計算された又は測定されたビーム特性を格納するためにルックアップテーブルメモリが使用される。ピクセル指向の信号再構成は、点のグリッド内のそれぞれの点で実行され、それぞれの送信ビームのエコー信号の寄与は、再構成点に対応するルックアップテーブルパラメータを使用して計算され、組み合わされる。
【0073】
上で説明されているさまざまな実施形態は、さらなる実施形態を実現するために組み合わされうる。実施形態の態様は、さらなる実施形態を実現するためにさまざまな特許、出願、及び公開の概念を採用する必要がある場合に、修正されうる。
【0074】
上述の説明に照らしてこれら及び他の変更を実施形態に加えることができる。一般に、添付の特許請求の範囲において、使用されている用語は、特許請求の範囲を明細書及び特許請求の範囲で開示されている特定の実施形態に限定するものとして解釈すべきでなく、そのような特許請求の範囲が関わる均等物の全範囲とともにすべての可能な実施形態を含むものとして解釈すべきである。したがって、特許請求の範囲は、開示によって限定されない。