特許第5905088号(P5905088)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5905088車両の走行状態を表示するための方法および表示装置、およびこれに対応するコンピュータプログラム製品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5905088
(24)【登録日】2016年3月25日
(45)【発行日】2016年4月20日
(54)【発明の名称】車両の走行状態を表示するための方法および表示装置、およびこれに対応するコンピュータプログラム製品
(51)【国際特許分類】
   G01D 7/04 20060101AFI20160407BHJP
   G08G 1/16 20060101ALI20160407BHJP
   B60R 21/00 20060101ALI20160407BHJP
   B60K 35/00 20060101ALI20160407BHJP
   G01D 7/00 20060101ALI20160407BHJP
【FI】
   G01D7/04
   G08G1/16 C
   B60R21/00 626E
   B60K35/00 Z
   G01D7/00 302Z
   G01D7/00 302Q
【請求項の数】11
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2014-515213(P2014-515213)
(86)(22)【出願日】2012年6月15日
(65)【公表番号】特表2014-519612(P2014-519612A)
(43)【公表日】2014年8月14日
(86)【国際出願番号】EP2012061480
(87)【国際公開番号】WO2012172067
(87)【国際公開日】20121220
【審査請求日】2014年2月13日
(31)【優先権主張番号】102012210128.4
(32)【優先日】2012年6月15日
(33)【優先権主張国】DE
(31)【優先権主張番号】102011077767.9
(32)【優先日】2011年6月17日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】501125231
【氏名又は名称】ローベルト ボッシュ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100177839
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 玲児
(74)【代理人】
【識別番号】100172340
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 始
(72)【発明者】
【氏名】シュテファン・ジモン
【審査官】 藤田 憲二
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−205117(JP,A)
【文献】 独国特許出願公開第19800202(DE,A1)
【文献】 独国特許出願公開第102009048285(DE,A1)
【文献】 米国特許第04095551(US,A)
【文献】 欧州特許出願公開第2143587(EP,A2)
【文献】 特開2002−163798(JP,A)
【文献】 特開2012−018566(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01D 7/00−7/12
B60K 35/00
B60R 21/00
G08G 1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の表示装置(200)によって車両の走行状態を表示するための制御情報を決定する方法において、前記方法は次の各ステップを含んでおり、すなわち、
物体との衝突の危険がない車両の安全な走行状態を判定し(101)、
前記安全な走行状態と関連づけたうえで、車両の最新の走行状態を判定し(103)、
前記安全な走行状態と前記最新の走行状態とに基づいて前記表示装置(200)を制御するための制御情報を決定し(105)、
前記制御情報は、前記安全な走行状態に関する情報と前記最新の走行状態に関する情報を関連づけたうえで前記最新の走行状態に関する情報を前記表示装置により惹起するために構成されており、
前記最新の走行状態に関する情報は車両と物体との衝突までの時間に関する情報を含んでおり、
前記表示装置は、前記車両と物体との衝突までの時間に関する情報が記された、円形の目盛(202)を有していることを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記車両と物体との衝突までの時間に関する情報は数値で表示されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記表示装置(200)は前記安全な走行状態に割り当てられたマーキングを有しており、前記方法は前記安全な走行状態と前記最新の走行状態との比較を実行するステップを含んでおり、前記制御情報は、前記最新の走行状態に関する情報を前記比較に依存して前記マーキングと関連づけたうえで表示するために構成されている、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記表示装置は、車両と物体との距離が少なくとも近似的に一定に保たれる第1の走行状態に割り当てられた第1のセクタ(210)と、車両と物体との距離が減っていく第2の走行状態に割り当てられた第2のセクタ(214)と、車両と物体との距離が増えていく第3の走行状態に割り当てられた第3のセクタ(212)とを含んでおり、前記制御情報は、比較に依存して前記第1、前記第2、または前記第3のセクタで前記最新の走行状態を表示するために構成されている、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記制御情報は、前記第1、前記第2、および前記第3のセクタ(210,212,214)のサイズ比率を車両の速度に関する情報に依存して調整するために構成されている、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
車両の走行状態を表示するための表示装置(200)において、次の各構成要件を有しており、すなわち、
車両と物体との距離が少なくとも近似的に一定に保たれる第1の走行状態に割り当てられた第1の表示領域(210)と、
車両と物体との距離が減っていく第2の走行状態に割り当てられた第2の表示領域(214)と、
車両と物体との距離が増えていく第3の走行状態に割り当てられた第3の表示領域(212)と、
車両の安全な走行状態に関する情報と車両の最新の走行状態に関する情報を関連づけたうえで前記車両の最新の走行状態に関する情報の表示を惹起するために、前記表示装置(200)を制御するための制御情報を受信するためのインターフェースと、
前記最新の走行状態に関する情報は車両と物体との衝突までの時間に関する情報を含んでおり、
前記表示装置は、前記車両と物体との衝突までの時間に関する情報が記された、円形の目盛(202)を有している表示装置。
【請求項7】
前記最新の走行状態を表示する指針(220)が保たれるべき前記第1の表示領域(210)は、前記円形の目盛の上方にある、請求項6に記載の表示装置(200)。
【請求項8】
前記物体の結像(830)を表示するための表示領域を有している、請求項6または7に記載の表示装置(200)。
【請求項9】
走行課題にあたって表示装置(200)により車両の運転者を支援する方法において、次の各ステップを含んでおり、すなわち、
請求項1から5のいずれか1項に記載の制御情報を決定し、
請求項6から8のいずれか1項に記載の表示装置に前記制御情報を提供し(107)、
前記制御情報に対する応答として、車両の安全な走行状態に関する情報と車両の最新の走行状態に関する情報を関連づけたうえで前記最新の走行状態に関する情報を前記表示装置(200)によって表示する方法。
【請求項10】
請求項1から5または9に記載の方法の各ステップを実行するために構成されている機構。
【請求項11】
プログラムが情報システムで実行されたときに請求項1から5または9に記載の方法の各ステップを実行するためのプログラムコードを有しているコンピュータプログラム製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の走行状態を表示する方法、車両の走行状態を表示するための表示装置、これに対応する機構、ならびにこれに対応するコンピュータプログラム製品に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車のインストルメントパネルは、多くの場合、スピードメータとタコメータという2つの表示計器が主体となっている。
【0003】
特許文献1は、一方では、車両に対応する速度を表示することができるとともに、他方では、他車両に関わる速度を表示することができる、車両用の表示計器を記載している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第6,922,139B2号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
以上を背景としたうえで、本発明により、車両の走行状態を表示する方法、車両の走行状態を表示するための表示装置、走行課題にあたって表示装置により車両の運転者を支援する方法、さらにはこれらの方法を適用する機構、ならびに最後にこれに対応するコンピュータプログラム製品が、それぞれ主請求項に基づいて提供される。好ましい実施形態は、それぞれの従属請求項および以下の説明から明らかとなる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の取組みにより、車両の運転者は、たとえば先行車両との距離を維持するときに支援を受けることができる。そのために、状況によっては先行車両との衝突の恐れがある車両の現在の走行状態を、衝突の恐れがない車両の安全な走行状態と関連づけたうえで運転者に表示することができる。それによって運転者は、最新の走行状態から安全な走行状態への移行に関して支援を受けることができる。表示装置は、他車両や物体と車両との衝突が起こる時点を表示する、いわゆる衝突余裕時間スピードメータとして具体化されていてよい。この表示装置は、車両のインストルメントパネルの追加の計器として、または、タコメータの代わりに設けられていてよい。
【0007】
スピードメータには、速度制限を守るという理由からしてすでに常に注意を払わなければならないのに対して、タコメータの表示は多くの運転者にとって関心外である。このことは、オートマチックトランスミッションや無段階変速装置を備える車両の運転者に特別に当てはまる。もともとシフトチェンジの役割から解放されているからである。あるいはマニュアルトランスミッション車両の多くの運転者も、タコメータよりむしろ聴覚に基づいてシフトチェンジを行っている。
【0008】
本発明の1つの実施形態では、タコメータはTime to Collision(衝突余裕時間)スピードメータ(略してTTCスピードメータ)によって置き換えられる。TTCスピードメータは、想定される衝突までの時間を表示することができる。
【0009】
当然ながら、TTCスピードメータを既存のインストルメントの補足とすることもできる。
【0010】
自動車ドライバーがTTCスピードメータを非常に有用なものとして直観的に感じる理由は、その表示量である「衝突余裕時間」すなわち想定上の衝突までの時間が、先行車両との間隔調整という走行課題を果たすために、厳密には部分的課題を果たすために、人間が視覚システムを用いて形成する量に非常に近いからである。
【0011】
TTCスピードメータは、1つまたは複数の先行車両との距離をコントロールするACCドライバー支援システム(ACC=Adaptive Cruise Controlアダプティブクルーズコントロール)との組み合わせで採用するのに格別に適している。ACCシステムはすでに周知であり、多くの場合、レーザーセンサ装置に依拠するものであり、部分的にはレーザレーダセンサ装置にも依拠している。近年では、ACC機能を改良、拡張するために、たとえばレーダとビデオのような複数のセンサが融合される。
【0012】
いわゆる目標物体の後方での通常のACC追従走行中、運転者はアクセルやブレーキを操作する必要がない。システムが物体を追跡することができない状態になると、走行課題を引き継ぐように運転者への要請がなされる。ACCシステムの利用中、運転者は多くの場合、ACCコントロールのシステム状態に関してわずかしか情報を知らされず、もしくはまったく情報を知らされない。その理由は部分的に測定データの不確実性にあり、ACCコントローラは、そのような測定データを用いて作動しなくてはならない。
【0013】
しかしながら最新の開発成果は、一眼カメラを用いるビデオに基づいたトラッキングすなわち物体追跡が、従来には知られていなかった品質で可能になることを示している。
【0014】
こうした画像に基づくトラッキングは、どの時点においても画像撮影のサイクルで、典型的には1秒あたり25枚の画像で、あるいはこれ以外のサイクルで、1つまたは複数の目標物体との衝突余裕時間(TTC)を決定できるようにするという可能性を開くものである。
【0015】
運転者としての人間も、前方車両との距離をコントロールするためには、視覚情報だけに頼らざるを得ない。前方車両との典型的な距離範囲では、まだ立体視が役割を果たすことはほとんどできないので、人間は、目標物体が相対的に見て近づいているか遠ざかっているかを認識するために、特に目標物体の結像の大きさの変化を目によって断定する。したがって、この課題はただ1つの目でも良好に果たすことができ、このことは経験が裏づけている。
【0016】
画像に基づくトラッキング方式も、同じくただ1つのカメラしか必要とすることがなく、人間が可能であるよりもはるかに高い精度で、物体の大きさの変化を測定する。
【0017】
したがって測定結果の高い品質に基づき、TTCスピードメータのような表示計器を制御して正しい信号を表示するために、異常な外乱が含まれないようにすることが可能である。
【0018】
たとえばレーダないしレーザレーダのようなこれまで通常用いられているセンサの信号を、TTCスピードメータの制御のために、場合により適当にフィルタリングした後で利用することも可能である。
【0019】
本発明は、車両の表示装置によって車両の走行状態を表示するための制御情報を決定する方法を提供するものであり、この方法は次の各ステップを含んでいる:
【0020】
物体との衝突の危険がない車両の安全な走行状態を判定し、
【0021】
安全な走行状態と関連づけたうえで車両の最新の走行状態を判定し、
【0022】
安全な走行状態と最新の走行状態とに基づいて表示装置を制御するための制御情報を決定し、制御情報は、安全な走行状態に関する情報と関連づけたうえで最新の走行状態に関する情報の表示を表示装置によって惹起するために構成されている。
【0023】
表示装置は車両のインストルメントパネルに配置されていてよく、たとえばTCCスピードメータとして製作されていてよい。物体は、定置の物体、定置の他車両、または先行もしくは後続する他車両であってよい。表示装置は目盛を有することができ、その追加もしくは代替として、さまざまなセクタを有することができる。表示装置により、安全な走行状態との関係で最新の走行状態がどのように推移しているかを、運転者に表示することができる。安全な走行状態では、車両と他車両の距離が変化しておらず、もしくは所定の許容範囲内でのみ変化している。したがって衝突の危険がない。最新の走行状態が安全な走行状態に相当しているとき、最新の走行状態を安全な走行状態として表示することができ、それは、たとえば最新の走行状態を表示する指針が、安全な走行状態に割り当てられている表示装置のセクタの内部にあることによって行われる。他車両との距離が変化すると、最新の走行状態は安全な走行状態に相当しなくなる。その場合には表示装置により、最新の走行状態と安全な走行状態との差異を表示することができ、それは、たとえば最新の走行状態を表示する指針が、安全な走行状態に割り当てられている表示装置のセクタの外部にあることによって行われる。このように最新の走行状態は、車両と他車両との間に衝突の危険がある状態か、または、車両と他車両との間の衝突の危険がない状態かのいずれかに相当している。衝突の危険がない状態は、安全な走行状態と、車両と他車両との距離が継続的に増している別の状態とに下位区分することができる。追加情報により、最新の車両状態を前提としたうえで、速度の低下または速度の上昇によって車両を安全な走行状態に移行させることができることを、運転者に表示することができる。安全な走行状態と最新の走行状態をどちらも判定できるようにするために、最新の測定データを評価することができる。これらの測定データは、車両のセンサのインターフェースを介して受信することができる。測定データは車両に関わるデータを含むことができ、たとえば車両の速度を含むことができる。測定データは他車両に関わるデータも含むことができ、たとえば、車両と他車両との間の距離または相対速度を含むことができる。車両と他車両との間の距離の変化または維持は、車両の画像検出装置により検出される、時間的に連続する他車両の画像撮影の評価によって決定することもできる。たとえば第1の画像撮影では、画像撮影で結像された他車両の構造部の第1の寸法を決定することができ、時間的にその後に検出された第2の画像撮影では、画像撮影で結像された他車両の同一の構造部の第2の寸法を決定することができる。これらの寸法を比較することで、これらの車両が互いに近づきつつあるか、互いに離れつつあるか、それとも一定の距離を維持しているかを判定することができる。最新の走行状態を判定するために、このような仕方またはこれ以外の仕方で判定される車両と他車両の間の距離変化を、時間を通じて評価することができる。車両と他車両との間の最新の速度差も評価することができる。距離が一定に保たれているときには、または速度差が生じていないときには、安全な走行状態が成立する。距離が変化しているときには、または速度差が生じているときには、最新の走行状態は安全な走行状態に相当していない。安全な走行状態に割り当てられていてよい速度は、それを遵守していれば衝突の危険がない速度である。相対速度が最新の走行状態に割り当てられていてよい。それぞれの車両の相対速度と距離とに基づく値も、最新の走行状態に割り当てられていてよい。相対速度がゼロに等しくないときには衝突の危険があり、または場合により、それぞれの車両間の距離が意図せず広がっていく危険がある。相対速度は車両の速度に依存して決まる。したがって表示装置を通じて、安全な速度に対する最新の速度の差異に相当する、もしくはこれに基づく、差異を表示することができる。このとき差異は、適当なスケーリングで表示することができる。制御情報は電気信号として、インターフェースを介して表示装置へと提供することができる。
【0024】
1つの実施形態では、最新の状態に関する情報は、車両と物体が衝突するまでの時間に関する情報を含むことができる。そのために時間の値を直接表示することができ、または、最新の走行状態を表示する指針が相応の値を示すことができる。このことは、安全な走行状態に達するにはどれだけ迅速に反応しなければならないかの示唆を運転者に与える。
【0025】
表示装置は、安全な走行状態に割り当てられたマーキングを有することができる。このケースでは本方法は、安全な走行状態と最新の走行状態との間の比較を実行するステップを含むことができ、制御情報は、この比較に依存してマーキングと関連づけたうえで、最新の走行状態に関する情報を表示するために構成されていてよい。たとえば安全な走行状態には、衝突の危険がない車両の安全な速度が割り当てられていてよい。比較のときには、安全な速度を車両の最新の速度と比較することができる。比較によって判定された速度差を、表示装置で表示することができる。関連づけは、たとえばマーキングと、最新の走行状態を示すたとえば指針のような表示部材との間の間隔によって表すことができる。たとえば速度差が大きくなるほど、この間隔も広がるようにすることができる。安全な走行状態に割り当てられたマーキングは、運転者にとって最新の走行状態の見積りを容易にする。
【0026】
このとき表示装置は、車両と物体との距離が少なくとも近似的に一定に保たれる第1の走行状態に割り当てられた第1のセクタと、車両と物体との距離が減っていく第2の走行状態に割り当てられた第2のセクタと、車両と物体との距離が増えていく第3の車両状態に割り当てられた第3のセクタとを含むことができる。制御情報は、比較に依存して第1、第2、または第3のセクタで最新の走行状態を表示するために構成されていてよい。各セクタは色分けされて構成されていてよい。たとえば第2のセクタは警告色を含むことができる。各セクタによって運転者は、表示装置に表示された情報をいっそう容易に理解することができる。これに代えて、表示装置はこれ以外の適当な数のセクタを有することもできる。表示装置は、セクタに代えて線または点を有することもできる。たとえば表示装置は、2 1/2セクタすなわち2つのセクタと1つの点、4つのセクタ、または5つのセクタを有することもできる。それぞれ異なるセクタ、線、または点が、適当な走行状態にそれぞれ割り当てられていてよい。
【0027】
このとき制御情報は、第1、第2、および第3のセクタのサイズ比率を、車両の速度に関する情報に依存して調整するために構成されていてよい。それにより、表示装置で利用することができる表示スペースを、関連する情報の表示のために最善に活用することができる。
【0028】
さらに本発明は、車両の走行状態を表示するための表示装置を提供するものであり、次の構成要件を有している:
【0029】
車両と物体との距離が少なくとも近似的に一定に保たれる第1の走行状態に割り当てられた第1の表示領域;
【0030】
車両と物体との距離が減っていく第2の走行状態に割り当てられた第2の表示領域;
【0031】
車両と物体との距離が増えていく第3の走行状態に割り当てられた第3の表示領域;
【0032】
車両の安全な走行状態に関する情報と関連づけたうえで車両の最新の走行状態に関する情報の表示を惹起するために、表示装置を制御するための制御情報を受信するためのインターフェース。
【0033】
表示装置はアナログ式の計器であってよく、たとえば指針型メータであってよい。表示装置は、関連する情報がフェードインされるスクリーンを有することもできる。各々の表示領域に、運転者にとって視認可能な表示装置の表面の1つの部分が割り当てられていてよく、または、表示装置により利用される表示部材の1つの部分が割り当てられていてよい。表示領域は面要素、線、または点を含むことができる。面要素は、たとえばセクタまたはストライプを表すことができる。
【0034】
1つの実施形態では、表示装置は物体の結像を表示するための表示領域を有している。このことは運転者にとって、実際の交通事情と表示された情報との間の関連性を見出すのを容易にする。
【0035】
さらに本発明は、走行課題にあたって表示装置により車両の運転者を支援する方法を提供するものであり、次の各ステップを含んでいる:
【0036】
本発明の1つの実施形態に基づいて制御情報を決定する;
【0037】
本発明の1つの実施形態に基づいて表示装置に制御情報を提供する;
【0038】
制御情報に対する応答として、車両の安全な走行状態に関する情報と関連づけたうえで最新の走行状態に関する情報を表示装置によって表示する。
【0039】
さらに本発明は、本発明による方法の各ステップを相応の装置で実施ないし具体化するために構成された機構を提供する。このような機構の形態での本発明の実施態様によっても、本発明の根底にある課題を迅速かつ効果的に解決することができる。機構とは本件においては、センサ信号を処理し、これに依存して制御信号を出力する電気機器であると解することができる。この機構は、ハードウェアおよび/またはソフトウェアとして構成されていてよいインターフェースを有することができる。ハードウェアとしての構成では、インターフェースはたとえば本機構の種々の機能を含む、いわゆるシステムASICの一部であってよい。しかしながら、インターフェースが独立した集積回路であり、または、少なくとも部分的に離散したデバイスで成り立っていることも可能である。ソフトウェアとしての構成では、インターフェースは、たとえばマイクロコントローラにその他のソフトウェアモジュールと並んで存在するソフトウェアモジュールであってよい。
【0040】
半導体メモリ、ハードディスクメモリ、または光学メモリのような機械読取可能な担体に格納されていてよく、コンピュータに相当する機器でプログラムが実行されたときに、上に説明した実施形態のうちの1つに基づく方法を実施するために利用される、プログラムコードを有するコンピュータプログラム製品も好ましい。
【0041】
次に、添付の図面を参照しながら本発明を一例として詳しく説明する。図面は次のものを示している:
【図面の簡単な説明】
【0042】
図1】本発明の1つの実施例に基づく、車両の安全な走行状態を表示する方法のフローチャートである。
図2】本発明の1つの実施例に基づく表示装置を示す図である。
図3】本発明の1つの実施例に基づく別の表示装置を示す図である。
図4】表示装置の一部分を示す図である。
図5】表示装置の一部分を示す別の図である。
図6】本発明の1つの実施例に基づく表示装置を示す図である。
図7】本発明の1つの実施例に基づく別の表示装置を示す別の図である。
図8】本発明の1つの実施例に基づく別の表示装置を示す別の図である。
図9】本発明の1つの実施例に基づく表示を示す別の図である。
図10】本発明の1つの実施例に基づく別の表示装置を示す別の図である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
本発明の好ましい実施例についての以下の説明では、異なる図面に示されていて類似の作用をする部材には同一または類似の符号が使われており、当該部材について繰り返して説明することはしない。
【0044】
図1は、本発明の1つの実施例に基づく、車両の安全な走行状態を表示する方法のフローチャートを示している。ステップ101では、他車両との衝突の危険がない車両の安全な走行状態が判定される。ステップ103では、車両の最新の走行状態が判定される。ステップ105では、安全な走行状態と最新の走行状態とに基づいて、安全な走行状態に関する情報と関連づけたうえで最新の走行状態に関する情報の表示を表示装置により惹起するのに適した、表示装置を制御するための制御情報が決定される。ステップ107では、安全な走行状態に関する情報と関連づけたうえで最新の走行状態に関する情報を表示装置により表示するために、制御情報が表示装置に出力される。このとき表示装置は、以下の実施例においてさまざまな態様で説明するようなTTCスピードメータであってよい。
【0045】
1つの実施例では、表示装置は、衝突余裕時間TTCすなわち考えられる衝突までの時間を表示する。
【0046】
TTCは一般に周知ではあるが、それにもかかわらず、特に視覚またはカメラに基づく判定という観点からここでも簡略に説明しておく。
【0047】
自己車両と、衝突に関連する物体との間の一定の速度差v=vEgo−vObjを有する簡略化したシナリオについて考察する。負の速度差は、物体が近づきつつあることを意味している。最新の距離をdとする。すると、衝突までの時間は次式となる。
【0048】
【数1】
【0049】
自己車両と結合されたカメラが、カメラ平面Wに対して間隔が平行である2つの点で物体を追跡しているとする。すると、ピンホールカメラモデルに基づく焦点距離fのカメラの画像には、次の間隔が生じる。
【0050】
【数2】
【0051】
それに対して、時間差Tの分だけ先行する時点については次式が成り立つ。
【0052】
【数3】
【0053】
区間Wのそれぞれ異なる大きさの結像の間のスケーリング係数としてs=w/wpを定義すると、次式が得られる。
【0054】
【数4】
【0055】
または
【0056】
【数5】
【0057】
次に、いくつかの典型的な状況について考察する。
【0058】
一定の距離を置いて追従走行をしているとき、画像の大きさは変わらないまま保たれており、w=wまたはs=1が成り立つ。したがって衝突までの時間は無限であり、TTC=∞である。すなわち、加速度と制動とを制御する、物体の後方での追従走行のための前後方向コントローラが、この点TTC=∞を目指して作用する。
【0059】
物体に近づいているときには、w>wまたはs>1が成り立つ。それに応じてTTCは正の値をとる。数字の例を挙げると、T=40msの画像周期とw=102ピクセルおよびw=100ピクセルの距離では、TTC=2.0sが得られる。
【0060】
たとえば追い越し車両のような物体が遠ざかっていくとき、w<wまたはs<1が成り立つ。TTCは負の値をとる。
【0061】
衝突の時点TTC=0では、またはその直前もしくは直後には、スケーリング係数sが+∞または−∞に向かっていく。
【0062】
画像に基づいてTTCを決定するという選択肢は、以上までに述べた限りにおいて、数十年前から知られている。
【0063】
ここまでに説明したTTCは、物体が、厳密には物体に隣接する各点が、カメラと衝突する時点に関わるものである。しかし実際の適用については、自分の車両フロントとの衝突点が関心の対象となる。
【0064】
自己の速度vEgoが既知であることから、カメラに関わるTTCCamを、たとえばバンパのような車両フロントに関わるTTCFrontに換算することができる:TTCFront=TTCCam−l/vEgo。ここで長さlは、カメラと車両フロントとの間の縦方向すなわち走行方向における間隔である。例:l=2mかつvEgo=20m/sのとき、TTCFrontはTTCCamよりも0.1sだけ短い。
【0065】
このような計算は、物体の速度vObjを考慮に入れていないので、簡略化されたものである。自己車両が前進走行しているという考察しているシナリオでは、前方の車両の後退走行を度外視したとき、自己速度は数値的に速度差よりも常に大きいので、この簡略化は安全な側へと片寄った見積りである。つまりこうして決定されるTTCFrontは、通常、実際のTTCよりも若干短い。
【0066】
1つの実施例では、車両フロントよりも手前にある平面に関わるTTCFrontが運転者に表示され、場合によりTTCが表示され、それによって安全性の余裕がもたらされる。
【0067】
図2は、本発明の1つの実施例に基づく表示装置200の図面を示している。表示装置200は円形の目盛202を有している。目盛202には左側に数字0、右側にチェックマークの形態の記号が記されている。上半分には、数字0を起点として数字−1,−2,−3,−4および−8が目盛202に示されている。下半分には、数字0を起点として数字1,2,3,4および8が目盛202に示されている。これらの数字は、TTCの基本的な表示を可能にするものである。ここでは数字は衝突までの時間を秒単位で表している。目盛202は、3つのセクタ210,212,214に分割された円を囲んでいる。数字0のところに、セクタ212,214の間のセクタ境界がある。数字−4のところに、セクタ210,212の間のセクタ境界がある。数字4のところに、セクタ210,214の間のセクタ境界がある。セクタ210の内部には「追従」の文字が記されていてよい。セクタ212の内部には「加速!」の文字が記されていてよい。セクタ214の内部には「減速!」の文字が記されていてよい。別案として、「追従」、「減速」、および「加速」の要求は記号の形態で、いわゆるアイコンの形態で、有意義に表示することもできる。指針220は最新の走行状態を表している。指針220は現在、セクタ214で数字1および2の間の中央を示している。最新の走行状態が変化すると、または安全な走行状態が変化すると、指針220が配置を変化させる。図示した表示装置200の要素は全面的または部分的にスクリーンに表示することができ、あるいは、運転者の視界に投影することもできる。
【0068】
図2に示す表示装置200は、ここでは指針型計器としての、TTCスピードメータの1つの考えられる実施形態である。理想的な追従走行のためにはアクセルとブレーキを用いて、チェックマークが付されている目盛202の点まで、指針220を右方に向かって制御しなくてはならない。
【0069】
一定の距離を置いて追従走行をしているときは、TTC=∞である。この理想点は、自動式の距離コントローラ(ACC)によっても、人間の運転者によっても求められるべきものである。この点が、本例ではチェックマークで表示されている。この点は目標状態である。
【0070】
さらに、TTCが秒単位でプロットされた目盛202を見ることができる。点線は目盛202を、本例ではそれぞれ120°ごとの3つのセクタ210,212,214に下位区分している。
【0071】
TTCが0sから4sの「減速!」と記された左下のセクタ214に指針220があるときには、指針が数字のゼロに近いほど緊急に制動の介入が必要である。
【0072】
TTCが0sから−4sの「加速!」と記された左上のセクタ212では、物体に追従したいときには加速をすればよい。
【0073】
「追従」と記された右のセクタ210に指針があるとき、行動を緊急に起こす必要はなく、もしくはまだない。
【0074】
他の両方のセクタ212,214について本例では線形の目盛202が選択されおり、すなわち指針角によるTTCの線形の推移が選択されており、それに対して、右側の区域210では著しく非線形となっている。図面に見られるとおり、目盛202は無限点を通って延びており、厳密に言えば本例では−∞と+∞が一致する。TTCについての非線形の目盛220は、少なくともこのセクタ210には必要である。
【0075】
ただし、こうした技術的な細部を運転者は知らなくてよく、理解もしなくてよい。運転者にとって重要なのは、アクセルとブレーキで指針220の位置にどのような影響を及ぼすことができるかを知り、指針220をできるだけ目標点の近くに保つのがよいことを知ることだけであり、目標点は、当然ながら、チェックマーク以外のものによって表示ないし強調されていてもよい。
【0076】
図3は、本発明の別の実施例に基づくTTCスピードメータ200を示している。無限点または目標点は、本例では上側にある。図2に示すTTCスピードメータとのさらに別の違いは、セクタ210,212,214が色付きで構成されているという点にある。たとえばセクタ210は緑色、セクタ212は青色、セクタ214は赤色に表示されている。セクタ210,212,214の内部はやはり「追従」、「減速!」、「加速!」の文字が表示されていてよい。セクタ210,212,214は本例でも環状の領域で表現されている。
【0077】
このように図3は、TTCスピードメータ200の別案の形態を示している。このTTCスピードメータ200が、図2に示すTTCスピードメータ200と相違しているのは、まず目盛202の向きにある。指針220が保たれるべき点は、本例では上方にある。
【0078】
これは直感的な実施形態であるといえるかもしれない。というのも、速度用のスピードメータとの類似性が本例では大きいからである。指針220が左下にあれば加速することができ、大きく右側にあれば危険が増す。
【0079】
これに加えてセクタ210,212,214は、本実施例では意図的に選択された色が背景となっている。
【0080】
青色は「自由走行」を表しており、たとえばハイビームの青色の表示灯を連想させる。
【0081】
赤色は「制動」を表しており、前方車両の赤色のブレーキランプや赤信号、あるいは赤色の停止記号などと同様である。
【0082】
緑色は「正しい」走行を表しており、「経済的な」走行形態も表している。緑色の領域を意図的に活用し、その中で指針を「往復運動」させる運転者は、すなわち頻繁な加速と減速を回避する運転者は、自動的に経済的な移動をすることになる。
【0083】
図4図5は、本発明の1つの実施例に基づくアダプティブなセクタ210,212,214を備えた表示装置の一部分の図面をそれぞれ示している。本実施例では、セクタ210,212,214の大きさを車両速度に合わせて適合化することができる。図5に示す高い速度のとき、追従走行のためには、図4に示す速度が低いときよりも狭い緑色の領域がセクタ210の形態で生じる。それ以外のセクタ212,214も大きさに関して相応に適合化される。セクタ212は青色、セクタ214は赤色で表示される。セクタ210,212,214の内部には、同じく「追従」、「減速!」、「加速!」の文字が表示されていてよい。
【0084】
本実施例では、図4に示すように、速度に依存してセクタの大きさが変化する。その理由は、一定の最大減速を想定したとき、停止するまでに制動に要する時間がvEgoにともなってほぼ線形に増加することにある。
【0085】
目標物体も通常時にはこれに類似した制動時間を必要とし、このことは追加の安全性余裕を与える。しかし、このような安全性余裕は活用しないほうがよい。というのも、たとえば目標物体が渋滞の最後尾に衝突した場合や多重衝突に巻き込まれた場合のように、あらゆる状況で利用できるものではないからである。
【0086】
緑色の領域210は、たとえば減速時間と、人間の反応時間と、ブレーキシステムの潜在的状態の時間との合計から求めた総時間から開始されるように設計することができる。
【0087】
図6図7は、本発明の1つの実施例に基づく目盛202のアダプティブな拡張を有する表示装置200の図面をそれぞれ示している。本実施例では、セクタ210,212,214のセクタの大きさに代えて、車両速度に合わせて目盛202を適合化することができる。図6では、目盛202は低い速度について適合化されている。図7では、目盛202は高い速度について適合化されている。それに応じて図7の目盛202の数字は0,2,4,6,8,15および−2,−4,−6,−8,−15である。セクタ210,212,214の内部には、同じく「追従」、「減速!」、「加速!」の文字が表示されていてよい。数字0のところに、セクタ212,214の間のセクタ境界がある。数字−8のところに、セクタ210,212の間のセクタ境界がある。数字8のところに、セクタ210,214の間のセクタ境界がある。
【0088】
本実施例では、セクタ210,212,214の適合化の別案として、目盛202の目盛値を変更することもでき、それは、たとえば目盛の線と数字が自己速度に依存して「変動」することによって行われる。TTCスピードメータ200が部分的または全面的にディスプレイとして製作されていれば、目盛202のこのような拡張を容易に具体化することができる。図6図7は、このような目盛適合化の一つの例を示している。
【0089】
本発明の1つの実施例では、運転者またはドライブダイナミックプログラムが表示装置の表示へ介入することが可能となる。
【0090】
表示への介入手段を運転者に与えるのが有意義な場合がある。そうすれば、たとえば運転者は、セクタ210,212,214の大きさや目盛202の拡張を、操作部材の手動操作によって変更できるようになる。そのために表示装置200を制御するための制御装置は、1つまたは複数の操作部材への適当なインターフェースを有することができ、インターフェースを介して受信したデータに、表示装置200で表示される情報の構成への影響を与えさせるように構成されていてよい。
【0091】
このような実施例は運転者にとって、たとえば「経済的」から「ノーマル」を経て「スポーティ・ダイナミック」まで、表示計器200を自分の走行スタイルに合わせて適合化できるという利点がある。
【0092】
TTC表示の種類も、現在すでに多くの車両モデルについて利用可能であるような、ドライブダイナミックプログラムの選択のための選択スイッチの位置と連動していてよい。
【0093】
図8は、本発明のさらに別の実施例に基づくTTCスピードメータ200を示している。図3に示す実施例とは異なり、TTCスピードメータ200には追加情報として、現在追従されている物体すなわち目標物体の画像830が表示される。指針220のうち、表示されるのは主要な部分すなわち先端部だけである。セクタ210,212,214は、目盛202の内部で環状に配置されている。画像830は、セクタ210,212,214で取り囲まれた円形の内部領域に表示されている。画像830は、車両に配置されたカメラによって検出されたものであってよく、適当なインターフェースを介して、TTCスピードメータ200を制御するための制御装置へ提供することができる。それに応じて表示装置200は、画像部分830が自動的に選択される一体型のビデオディスプレイを有することができる。
【0094】
従来のACCシステムでは、システムが現在どの目標物体に合わせてコントロールしているのかを、運転者が明確に知ることはない。カメラに基づくシステムでは、または他のセンサに追加して少なくとも1つのカメラを有するシステムでは、技術的な前提条件が整っていれば、ここでは特に画像表示の手段があれば、たとえば図8に示すような形態で目標物体を運転者に画像830として表示することができる。
【0095】
カメラ画像から正しい目標物体を「切り取る」ために必要な一切の情報が、このようなシステムには存在している。
【0096】
選択的に、オリジナル画像の一部分830は常に一定の大きさを有することができ、その場合、表示される物体は通常どおり距離に反比例するようにスケーリングされる。他方では、切り取られた物体をスケーリング変更し、それにより、たとえば物体の表示サイズを距離に関わりなくほぼ等しく保つことも可能である。
【0097】
さらに、表示される物体の画像830を意図的に表示計器200の中央から横にずらして表示することもでき、それは、たとえばその物体に引き続き追従するにはハンドルを切るか、場合により車線を変更すべきであることを運転者に示唆するためである。たとえば画像830の物体が右方へずれていることは、それによって運転者が右方へハンドルを切るよう要請されることを意味することができる。
【0098】
特定の状況のもとで、たとえば目標物体の変更中に、複数の物体が同時に関与しているときには、任意選択で、これらの物体を同時に表示することもできる。
【0099】
図9は、本発明のさらに別の実施例に基づく、1つまたは複数のTTCスピードメータ200の表示の可能性を示している。ここでは関与する各々の物体について、それぞれ1つのTTCスピードメータ200がカメラ画像830にフェードインされている。すなわち図8に示す実施例とは異なり、物体の画像がTTCスピードメータの表示に埋め込まれるのではなく、TTCスピードメータ200の表示が物体の画像830に埋め込まれる。このときTTCスピードメータ200は簡略化して表示されていてよい。たとえば目盛202は数字なしに表示されて、セクタ210,212,214に組み込まれていてよい。セクタ210,212,214は環状に、かつそれぞれ異なる色で表示されていてよい。セクタ210,212,214で取り囲まれる領域には、そのTTCスピードメータ200が割り当てられた物体と衝突するまでの時間を表示することができる。この時間表示は、自分の車両の速度と他車両の速度が変わらないという想定のもとで決定される。時間表示は背景が色つきになっていてよく、色の選択は、時間表示によって示された値の大きさに依存して決まる。たとえば時間表示の値をまず算出し、次いで、この値に対応する色を時間表示の背景色のために選択することができる。
【0100】
図9には、2つのTTCスピードメータ200が示されている。第1のTTCスピードメータ200は、すぐ前を走行する第1の車両に割り当てられており、時間表示として5.8sの値を表示している。この時間表示は、注意を喚起する黄色の色を背景色としている。第1のTTCスピードメータ200の寸法は、第1の車両の表示サイズに合わせて適合化されている。
【0101】
第2のTTCスピードメータ200は、第1の車両の前方にある第2の車両に割り当てられており、11sの値を時間表示として示している。この時間表示は、安全を示唆する緑色を背景色としている。第2のTTCスピードメータ200の寸法は、第2の車両の表示サイズに合わせて適合化されている。ここでは第2のTTCスピードメータ200は、第1のTTCスピードメータ200よりも小さく表示され、それにより、第2の車両が第1の車両よりも遠くにいることが運転者に明瞭となる。
【0102】
さらに別のTTCスピードメータも表示することができる。複数のTTCスピードメータを表示するための十分なスペースが用意できないときは、2つまたはそれ以上のTTCスピードメータを相互に部分的または全面的に重ねることができる。このとき、走行課題にとって重要なほうのTTCスピードメータが、重要でないほうを隠すのが好ましい。通常、TTCの値が小さいTTCスピードメータのほうが、値が大きいものよりも重要である。
【0103】
本実施例では、TTCスピードメータ200の表示はカメラ画像830の中で行われる。TTCスピードメータの内部にカメラ画像断片を表示する代わりに、逆に1つまたは複数のTTCスピードメータ200を、運転者に表示されるカメラ画像830にフェードインすることもできる。
【0104】
図9の例では、2つの物体がちょうど関与しているところである。したがってこの両者について、それぞれ1つのTTCスピードメータ200が表示されており、本例では物体とともに動き、大きさに関しても画像830中の物体に合わせて適合化される。
このシステムの1つの大きな利点は、視線を外したときに明らかとなる。それは、運転者が交通状況から視線を一時的に外してから、再び新たな状況の全体像をつかまなくてはならない場合である。運転者はこうした状況のとき、TTCまたはこれに類似する量のような最新の距離変化を良く見積ることができるようになるまでに、まず、ある程度の時間をかけて物体を自分の目で観察しなくてはならない。
【0105】
それに対して、運転者がTTCスピードメータ200を見れば、自分にとって重要な量をただちに読み取ることができる。こうした時間的な利得は安全上の利得でもある。
【0106】
さらに運転者としての人間は、物体の距離までの大きい距離と、ダッシュボードまでの距離に相当する短い距離とに合わせて、目の焦点を交互に合わせなければならないという問題を抱えている。こうした焦点変更のプロセスは遠近調節と呼ばれる。遠近調節はある程度の時間を必要とし、この時間は、年齢が高くなるにつれて長くなる。
その点でTTCスピードメータ200は、たとえば他の表示計器やナビゲーション情報やオンボードコンピュータの表示を読み取るために、目が近領域に焦点を合わせているとき、その間を通じて常にTTCを読み取ることができ、すなわち、前後方向の介入にとって最重要の量を読み取ることができるという利点を提供する。運転者はTTCを見て、再び交通を直接観察するべきときまでにあと何秒残されているかを、ほぼ読み取ることさえできる。
【0107】
本発明の1つの実施例では、光学表示と音声出力との組み合わせが行われる。
【0108】
ドライバーの中には、全員ではないものの、TTCスピードメータ表示器200と適当な音声出力との組み合わせを好ましいと考える者もあるであろう。
【0109】
このようなTTCスピードメータ200の任意選択の補足をすれば、最新のTTCに依存して、加速するべきか減速するべきか、どれくらいの強さで介入を行うべきか、現在介入なしで引き続き追従できるかどうかなどを運転者に示唆する、さまざまな音声信号を出力することができる。
【0110】
この点で、パイロットが機体を相応に操縦できるようにするために昇降に関する情報をたえず音声で知らせる、グライダーの音声式のバリオメーターとの類似性がある。
【0111】
たとえば目標物体がちょうど切り替わるとき、消えたとき、現れたときなどに、状態の変化に関して音声の短い応答メッセージを自動車ドライバーに与えるのも有意義である。
【0112】
音声情報の音量と種類を選択する可能性を運転者に与えるのが有意義である。
【0113】
運転者は、音声メッセージの頻度を調節する可能性も有しているのがよい。たとえば、システムが通常は音を出さないが、非常に高い蓋然性で介入が必要になった状況では、音声情報を出力するのが望ましい場合がある。
【0114】
そのような状況ではシステムは、運転者に必要な場合にだけ警告を出す警告システムになる。
【0115】
上に掲げた図面は、TTCスピードメータ200をそれぞれ丸型インストルメントとして示している。これは好ましい表示形態でもある。TTC目盛には−∞から∞までのすべての数値が現れ、この両方の無限点が互いに重なり合うからである。
【0116】
図10は、本発明のさらに別の実施例に基づく別案の構成でTTCスピードメータ200を示している。図示されているのは、ここでは円形目盛に代わる直線目盛202による、TTCの考えられる別の視覚化である。この目盛220には衝突までの時間TTCがプロットされている。中央には、たとえば「O.K.」の文字が記されていてよいセクタ210がある。下側領域には、たとえば「減速!」の文字が記されていてよいセクタ214がある。上側領域には、たとえば「加速!」の文字が記されていてよいセクタ212がある。表示はカラーの背景が付いていてよく、下から上に向かって、赤から紫の光のスペクトル色を一周させることができる。最新の走行状態は、円形のマーキング220によって表示することができる。
【0117】
物体への追従をするとき、実際には、目盛202のすべての点を通過するケースが生じる可能性がある。TTC=0の位置で正負記号の転換が起こる可能性さえあり、すなわちそれは、TTCがカメラ平面前方の平面、すなわちたとえばフロント平面を対象としている場合である。たとえばボンネットよりも上の高さでフロント平面を動き続ける物体があれば、そうしたTTCの正負記号の転換を引き起こすことになる。しかし、そうしたケースは稀にしか該当しないので、目盛202のこのような位置TTC=0は、ここで区切るために特別に適している。すなわち、従来の全円目盛から必要に応じて4分の3円目盛、半円目盛、3分の1円目盛、直線目盛などを形成することができる。
【0118】
図10は、直線目盛202に沿ってTTC=0のところで区切られる、そのような視覚化の一例を示している。
【0119】
これに加えて本例では連続的な色変化の背景が付されている。赤色の領域ではTTCが正であり、すなわち衝突が目前に迫っている。およそ2sから0sまでの深紅の領域では、ブレーキ介入が緊急に必要である。TTC=0.8s付近にある黒白のリングは最新の実際状態を表しており、その背後の薄いリングは短時間の履歴を表している。データは、vEgo=20m/sで定置の物体に近づくときのビデオに基づく相対的な測定をもとにしており、このとき回避操作によって衝突がぎりぎり防止される。緑色と青色の背景色の領域ではTTC<0であり、これは、前方車両との距離が広がっていることを意味している。
【0120】
追従走行のために到達されるべき「無限点」は、「O.K.」および定置の星印で表されている。
【0121】
1つの実施例では、発光信号と色との組み合わせが可能である。たとえばTTCスピードメータ200に、発光信号のための出力手段を追加することができる。たとえば図2にはTTCスピードメータ200を囲む外側の円環が示されており、ここに発光ダイオードが設けられている。ここではTTCが短いので、円環がここで赤色に表示されていてよい。
【0122】
このような光源が、時間的に変化する光信号または色に関して変化する光信号を出せば、TTC出力の認識可能性をそれによって向上させることができる。たとえば、ブレーキ介入が必要なときには光源を赤色に点滅させることができ、介入が緊急になると、点滅頻度を高くすることができる。
【0123】
それにより、運転者の注意力に対する影響も及ぼされる:発光信号は、特にそれが時間的に変化するとき、運転者によってその視野の周辺領域でも知覚することができ、すなわち、TTCスピードメータ200を直接見ていなくても知覚することができる。
【0124】
発光色が変化し、その変化が連続的または切換式に行われることで、たとえば現在どのモードになっているのかを(追従、減速!、加速!)、運転者に表示することができる。このとき発光色は、図3を参照して説明した好ましい色の選択に従って選択することができる。
【0125】
発光ダイオードの円環に代えて、たとえば指針220の交互の発光など、その他にも光源を考慮に含めるための可能性は数えきれないほどある。
【0126】
さらに、光源によってたとえば発光ベルトとしてインターバルをTTCスピードメータ200で運転者に表示するのが有意義である。このことは特に、図4および図5を参照して説明した可変の大きさの区域210「追従」について当てはまる。
【0127】
光源は、たとえばフロントガラスの下側縁部など、TTCスピードメータ200の外部で別の場所に取り付けられていてもよい。
【0128】
本発明の1つの実施例では、TTCスピードメータを備えるヘッドアップディスプレイが具体化される。
【0129】
ダッシュボードへのTTCスピードメータ200の取付の別案として、TTCスピードメータ表示器200をヘッドアップディスプレイを介して表示し、すなわち、フロントガラスや追加のディスクを介して投影によって運転者に表示するという選択肢もある。
【0130】
本発明の別の実施例では、加速度の考慮が行われる。このとき、TTCの決定にあたっても加速度を考慮することができる。これは速度信号の微分によって算定される、または加速度センサにより計測される自車の加速度であり、あるいは、たとえばレーダセンサにより測定される相対的な加速度であってもよい。
【0131】
従来、TTCの決定は一定の速度という想定に依拠するという想定が主として前提とされてきたのに対し、加速度を考慮に含めることは、一般に、TTC信号のいっそうダイナミックな挙動を生じさせる。
【0132】
こうしたいっそう高いダイナミックさは運転者にとって、TTCスピードメータ200を通じての表示との組み合わせにおいて、アクセルペダルやブレーキペダルの操作に関わる応答をいっそう迅速に得られるという利点がある。つまり自分の操作の影響に関して、いっそう直接的に情報が与えられる。このことは非常に好ましいものと感じられる可能性がある。
【0133】
1つの実施例では、後退走行、後方の交通、および側方の交通について応用が実施される。
【0134】
前方を向くカメラを取り上げてここで説明した考察はすべて、後方を向くカメラにも、たとえばバックカメラにも、そのまま適用することができる。考えられる用途は、たとえば車庫入れ、駐車のような後退走行のときの支援であり、そのようにして、障害物や他の車両との考えられる衝突に関する情報を、TTCを通じて運転者に与えられるようにするためである。
【0135】
さらにTTCを通じて、後ろから来ている車両に関しても情報を知らせることができ、それは特に、自己車両が後ろから来る物体よりも低速で前に進んでおり、衝突のリスクがある場合である。
【0136】
このことは、自己車両が追い越されるべき追い越しプロセスについても当てはまる。その運転者は、車線変更のために時間があるかどうか、どれだけの時間があるかを、TTC表示器200を用いてより良く見積ることができる。
【0137】
特に後方や側方の交通についてのTTC値の表示については、TTCスピードメータ200または複数のTTCスピードメータを別の場所に格納するのが好ましい場合がある。側方の交通についてのTTCスピードメータ200の特別に好適な場所は、それぞれ側方のバックミラーの周辺である。
【0138】
それに応じて後方の視界についてのTTCスピードメータ200については、バックカメラのモニタの近傍が特別に好都合である。
【0139】
衝突余裕時間の表示の代替または追加として、TTCに類似する量を表示することもでき、たとえばTTCと目標物体との距離との数学的な組み合わせを表示することができる。これはもっとも一般的なケースでは、運転者が前方車両の後での追従走行をコントロールし、特にブレーキ介入により衝突を回避することを可能にするあらゆる量である。
【0140】
本発明による取組みは、カメラに基づく物体追跡方式を土台とすることができ、この方式は、画像から画像へのスケーリング変化を、およびこれに伴ってTTCを、同時に是認できる計算コストで、高い精度で決定することができるアルゴリズムを提供するものである。したがってビデオをベースとする結果の品質を、TTCスピードメータを含むドライバーアシスト製品に利用することができる。
【0141】
このときTTCスピードメータは、カメラをベースとする物体追跡方式と組み合わせるのに適しているのが理想的である。これに加えて、ビデオ以外のセンサに、たとえばレーダやレーザレーダに、TTCスピードメータを適用することも考えられる。
【0142】
このようなTTCスピードメータは、安全性の追加利得をもたらすとともに経済的な走行を促進する、直感的に理解しやすい有用な計器である。
【0143】
図面に示して説明した各実施例は、一例として選択したものにすぎない。それぞれ異なる実施例を全面的に、または個々の構成要件に関して、相互に組み合わせることができる。1つの実施例を他の実施例の構成要件によって補完することもできる。さらに本発明による方法ステップは反復して実行することができ、ならびに、記載されているのとは異なる順序で実行することができる。
【符号の説明】
【0144】
101 判定のステップ
103 判定のステップ
105 決定のステップ
200 表示装置
210 セクタ
212 セクタ
214 セクタ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10