(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第一領域と第二領域との間に多段に設けられている前記複数の孔の大きさが、前記第一領域側の孔と同等あるいは、前記第二領域側ほど小さく形成されている請求項3に記載の作動油貯留装置。
前記戻し配管が複数設けられ、該複数の戻し配管のうち作動油の流量が相対的に多い戻し配管の流路出口が、前記第一領域の内部に臨むように配置されている請求項1から4の何れか一項に記載の作動油貯留装置。
前記複数の戻し配管は、前記サブタンクの壁部よりも剛性の高い配管連結部材に一体的に接続され、前記サブタンクの上部開口部が、前記配管連結部材により閉塞されている請求項5に記載の作動油貯留装置。
【背景技術】
【0002】
従来、大型の射出成型装置にあっては、移送、組立て等を容易にするため、射出ユニットと型締ユニットとに分離可能なものが知られている。
上記大型の射出成型機の場合、配置スペースの都合上、作動油の貯留タンクおよび作動油を圧送するポンプが射出ユニット側に配置されており、このポンプにより圧送された作動油が、射出ユニットおよび型締ユニットに設けられた制御要素である油圧シリンダーに供給されるようになっている。そして、各油圧シリンダーから排出される作動油は、互いの背圧が油圧制御に悪影響を及ぼさないように、それぞれ個別の戻し配管を介して貯留タンクに戻される。
そのため、射出ユニットと型締ユニットとの間に、型締ユニット側に送出した作動油を射出ユニット側に戻す多数の戻し配管が配索されることとなり、配管設計は射出ユニット側の狭いスペースの中に全ての配管を集中レイアウトしなければならず、迷路のような複雑なレイアウトが必要となり設計できるのが配管設計に熟練したベテラン設計者に限定せざるを得ないと共に、配管継手を接続する作業により組立て作業が煩雑化してしまっていた。
【0003】
そこで、射出ユニットと型締ユニットとの間に亘る配管数を低減させるために、射出ユニット側にメインタンクを設けるとともに型締ユニット側にサブタンクを設けてメインタンクとサブタンクとを連結管により連通させることが行われている。つまりは、型締ユニット側から作動油を戻す戻し配管を、射出ユニット側に設けられたメインタンクに直接接続するのではなく、型締ユニット側に設けられたサブタンクに連結させる構造とする。このようにすることで、型締ユニットに圧送された作動油を、一旦、サブタンクに戻した後に連結管を介してメインタンクに戻すことができるため、射出ユニットと型締ユニットとの間に亘って配索される配管数を減少させるができる。
【0004】
しかし、上記型締ユニットに設けるサブタンクは、配置スペースの都合などによりメインタンクよりも小型のものしか配置することができない。一方、型締ユニットは、型締シリンダーや型開閉シリンダーなど、大流量の作動油を必要とする油圧シリンダーを有しているため、油圧シリンダーから大流量の作動油がサブタンクに戻される。サブタンクからメインタンクへの作動油の移動は、主にサブタンクの液面上昇に伴うメインタンクとの圧力変動によるため、大流量で高圧の作動油が流入した場合、サブタンクの油面上昇にメインタンクへの作動油の移動が追いつかず、サブタンクの上面に設けられるエアブリーザーなどから作動油が溢れる虞があった。
【0005】
特許文献1には、作動油の流量が大きい戻し配管の流路出口を、メインタンクとサブタンクとを連結する連結管内に挿入することで、戻し配管から吐出する作動油を有効利用して連結管の作動油の流れを増速させる技術が提案されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記のように、戻し配管の流路出口を連結管に挿入する場合、連結管内の作動油を十分に押し流すためには、戻し配管口径(配管口面積)を連結管口径に近づける必要があるので、実用的には連結管一本に対して戻し配管を一本だけ挿入する構成となるため、複数の戻し配管がサブタンクに接続される場合には、戻し配管の数と同数の複数の連結管が必要になり、部品点数や組立て工数が増加してしまう。さらに、
図5に示すように、戻し配管328の先端側を水平方向に略90度屈曲して形成していることで、サブタンクの蓋に戻し配管328を取り付たままの状態で、サブタンクの蓋を上方から単に取り付けるだけでは、戻し配管328を連結管323内に挿入できない。このため戻し配管328を取り付ける際に、サブタンク322の内部に作業者が入って、戻り配管328の先端を連結管323の内部に挿入した後、戻り配管328の取付端部をサブタンクの蓋に内側からの締結作業が必要になり、作業性が悪化するという課題がある。
【0008】
また、サブタンク322の上方から戻し配管328をサブタンク322内部に導く場合、戻し配管328の流路出口338を横方向に延びる連結管323内部に挿入させるためには、戻し配管328をサブタンク322の底面近傍に設けられている連結管328まで長尺化するとともに、戻し配管328をサブタンク322内で屈曲した配管形状とする必要がある。そのため、流路出口338からの作動油の吐出反力により戻し配管328に曲げモーメントが作用したり、流路出口338の周辺に発生する渦により過度の振動が誘発されたりする虞があり、曲げモーメントにより戻し配管328のフランジ337など固定部材への負荷が増大し破損が発生したり、振動により締結用のネジの緩みや破損の虞がある。
【0009】
更に、戻し配管328を連結管323内に導く場合、戻し配管328の外径と連結管323の内径との間が、戻し配管328から吐出される作動油のベンチュリー効果によって減圧されるために、流路出口338の近傍で気泡が発生し、この気泡が油圧ポンプ内に至った場合に、キャビテーションが発生して油圧ポンプが破損する虞がある。
更に、戻し配管328が、制御要素毎に個別にサブタンク322に接続されるため、流入する作動油の流量や圧力の違いにより、サブタンク322内の油面が波立って安定せず、サブタンク322内の特に連結管323の近傍において作動油の圧力変動が生じて、この連結管323の近傍の圧力変動が脈動としてメインタンク321の作動油へ波及して、油圧制御が不安定になる虞がある。
【0010】
この発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、組立てに係る作業者の負担および、戻し配管を固定する固定部材への負荷を軽減しつつ、戻し配管からの作動油を、サブタンクを介して安定的にメインタンクに戻すことが可能な作動油貯留装置、および、この作動油貯留装置を備える射出成型装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するために以下の構成を採用する。
この発明に係る作動油貯留装置は、作動油を吸引する吸引配管が接続されるメインタンクと、前記吸引配管により吸引された作動油を戻す戻し配管が接続されるサブタンクと、前記メインタンクと前記サブタンクとを連通する1つあるいは複数の連結管と、を備え、前記サブタンクは、該サブタンクの貯留領域を、前記連結管の流路開口部を含む第一領域と、該第一領域以外の第二領域とに区画する区画部を備え、該区画部は、前記第一領域と第二領域とを連通し、前記連結管の圧力損失と同等または該圧力損失よりも大きい圧力損失を生じさせる内部領域連通部を備え、前記戻し配管は、該戻し配管の流路出口が前記第一領域内に臨むように、前記サブタンクに接続されていることを特徴としている。
【0012】
このようにすることで、吸引配管により吸引されたメインタンクの作動油が、戻し配管を介してサブタンクの第一領域に流入可能となる。そして、メインタンクとサブタンクとが連結管により連通されることで、メインタンクの油面とサブタンクの油面との高さに応じて生じる圧力差によりサブタンクの作動油を、連結管を介してメインタンクに移動させることができる。
【0013】
さらに、区画部によってサブタンクの貯留領域を連結管の流路開口部を含む第一領域とそれ以外の第二領域に区分して、第一領域に戻し配管の作動油を流入させるようにすることで、作動油の流入により第一領域の油圧を上昇させて、この油圧の上昇を利用して、連結管を介してサブタンクからメインタンクへ移動する作動油の流速を増速させることができる。
【0014】
また、内部領域連通部の圧力損失が連結管の圧力損失と同等または該圧力損失よりも大きく設定されているので、サブタンクの作動油が連結管を介してメインタンクへ移動するよりも緩やかに、第一領域内の作動油を、内部領域連通部を介して第二領域へと移動させることができる。このため連結管内に流入できずに第一領域内で溢れた比較的少量の作動油を緩やかに第二領域に移動させることができる。これにより、サブタンク内の油面の上昇を緩やかに行うことができるので、サブタンクの上面に設けられるエアブリーザーなどから作動油が溢れるのを防止できる。
【0015】
また、戻し配管が第一領域の内部へ流路出口が臨むようにサブタンクに接続されるので、戻し配管を屈曲する必要がなく、作動油の吐出反力により戻し配管に曲げモーメントが作用するのを防止できる。さらに、戻し配管を連結管内に導入する場合と比較して、戻し配管の長さを短縮することができるため、作動油の吐出により生じる渦によって戻し配管に振動が誘発された場合においても、振動による曲げモーメントを小さく抑えることができるので、戻し配管のフランジなど固定部材や締結用のネジの破損を防止することができる。
【0016】
また、戻し配管の流路出口の周囲に連結管が配置されないので、戻し配管からの作動油が吐出される際に、ベンチュリー効果により減圧が生じるのを抑制することができる。
【0017】
さらに、この発明に係る作動油貯留装置は、上記作動油貯留装置において、前記内部領域連通部が、前記区画部に形成された複数の孔からなるようにしてもよい。
このようにすることで、サブタンク内の第一領域から第二領域へ移動する作動油の流速を低減させることができる。
【0018】
さらに、この発明に係る作動油貯留装置は、上記作動油貯留装置において、前記内部領域連通部が、前記第一領域と第二領域との間に多段に設けられるようにしてもよい。
このようにすることで、作動油が第一領域から第二領域へ移動する際に急減圧されて気泡が発生するのを防止することができる。
【0019】
さらに、前記第一領域と第二領域との間に多段に設けられる前記複数の孔の大きさは、上流側の孔と同等あるいは前記第二領域側ほど小さく形成されるようにしてもよい。
このようにすることで、サブタンク内において、第一領域に吐出された作動油の振動波を段階的に減衰させることができるため、振動波がサブタンク内の作動油に伝搬して作動油が脈動するのを防止することができる。
【0020】
さらに、この発明に係る作動油貯留装置は、上記作動油貯留装置において、前記戻し配管が複数設けられ、該複数の戻し配管のうち作動油の流量が相対的に多い戻し配管の流路出口が、前記第一領域の内部に臨むように配置されているようにしてもよい。
このようにすることで、流量が相対的に多い大流量の戻し配管の作動油は、第一領域内で高い圧力を維持し易くなる一方、小流量の戻し配管の作動油を、流動抵抗および圧力の上昇が少ない第二領域に戻すことができるため、小流量で低圧の戻し配管が接続される制御要素の背圧を低く保つことができ、小流量制御を容易にすることができる。
【0021】
さらに、この発明に係る作動油貯留装置は、上記作動油貯留装置において、前記複数の戻し配管は、前記サブタンクの壁部よりも剛性の高い配管連結部材に一体的に接続され、前記サブタンクの上部開口部が、前記配管連結部材により閉塞されるようにしてもよい。
このようにすることで、配管連結部材に戻し管を組み付けた状態で、配管連結部材をサブタンクに取り付けることで、戻し管を容易にサブタンクに取り付けることができる。
また、剛性の高い配管連結部材に一体的に戻し配管が接続されているので、戻し配管の組み付け剛性を向上させて、戻し配管の振れを防止することができる。
【0022】
さらに、この発明に係る作動油貯留装置は、上記作動油貯留装置において、前記配管連結部材が、油圧マニホールドであってもよい。
このようにすることで、油圧マニホールドとサブタンクとを繋ぐ配管を省略することができるとともに、配管継ぎ手の数を削減することができる。
また、戻し配管が剛性の高い大型の金属ブロックである油圧マニホールドに組み付けられることから、戻し配管の取付部が安定し、戻し配管が隣接した配管などと干渉するような揺動や、取付締結部に緩みが発生するような揺動が戻し配管に発生することを防止できる。
また、重量物の油圧マニホールドをサブタンクに組み付けるので、単純箱構造で固有振動数の比較的低いサブタンクや戻し配管などの固有振動数を高周波数化することができ、作動油の流動により生じる低周波数の脈動との共振を防止できる。さらに、油圧マニホールドの重量によって、下方に吐出される作動油の吐出反力に対抗することができるため、サブタンクの壁に発生する繰り返し応力を圧縮応力側にすることができる。これによりサブタンクの壁に発生する引っ張り応力を抑制でき、疲労強度において許容応力の低下する引張り・圧縮モードを回避することが容易になるので、強度設計に係る自由度を向上することができる。
【0023】
この発明に係る射出成型装置は、上記作動油貯留装置を備えることを特徴としている。
このようにすることで、作動油の脈動等が低減されるので、油圧により駆動する制御要素を精度良く動作させることができる。
【発明の効果】
【0024】
この発明に係る作動油貯留装置および射出成型装置によれば、組立てに係る作業者の負担および、戻し配管を固定する固定部材への負荷を軽減しつつ、戻し配管から吐出される作動油を、サブタンクを介して安定的にメインタンクに戻すことが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
次に、この発明の第一実施形態における作動油貯留装置20、および、作動油貯留装置20を備えた射出成型装置1について図面を参照して説明する。
図1は、この実施形態の射出成型装置1の概略構成を示す構成図である。
図1に示すように、射出成型装置1は、射出ユニット2と型締ユニット3とを備えている。
射出ユニット2は、成形材料を加熱して高い圧力で金型内に射出充填する加熱筒部4が水平方向に延設され、この加熱筒部4の基部側の上部に、成形材料を投入するためのホッパ5が取り付けられている。また、加熱筒部4の型締ユニット3側の一端には、射出ノズル6が形成されおり、加熱筒部4の射出ノズル6と反対側の他端には、加熱筒部4の内部に設けられたスクリュー(図示せず)を型締ユニット3側に押圧するアクチュエータである油圧シリンダー7と、当該スクリューを回転駆動する図示しない油圧モータとが取り付けられている。なお、当該スクリューを型締ユニット3側に押圧するアクチュエータは、電動モータ駆動のボールねじや、リニアモータなどの電動アクチュエータでも支障ない。また当該スクリューを回転駆動する図示しないモータは、回転数制御が可能なインバータモータ、サーボモータ、IPMモータなどの電動モータでも支障ない。
【0027】
上記加熱筒部4内部のスクリューは、図示しない油圧モータにより回転駆動されることでホッパ5から投入された成形材料を徐々に射出ノズル6側へと搬送し、この搬送の途中で成形材料を加熱して可塑化溶融させる。そして、油圧シリンダー7によりスクリューが型締ユニット3側へ押圧されると、可塑化された成形材料に圧縮力が作用して、射出ノズル6から型締ユニット3の金型内部へと成形材料が射出される。
【0028】
型締ユニット3は、互いに対向する固定金型11と可動金型12との開閉を行う装置である。固定金型11は、型締ユニット3の射出ユニット2側に立設された固定型盤13に支持される一方、可動金型12は、射出ユニット2側に立設された可動型盤14に支持されている。固定型盤13は、ベース部15に対して固定的に支持されており、可動型盤14は、ベース部15上に延設されたガイド(図示せず)に沿ってスライド可能に支持されている。
【0029】
固定型盤13と可動型盤14との間には、水平方向に延在する複数本のタイバー16が設けられている。これらタイバー16は、一端に図示しないピストンヘッドを備え、当該ピストンヘッドを備えた端部が、固定型盤13の4隅に設けられた型締シリンダー17に嵌挿されている。この型締シリンダー17によって、タイバー16は、その延在方向に変位可能とされている。なお、本実施形態では型締シリンダー17は固定型盤13の4隅に設けた例を示したが、型締シリンダー17は、可動型盤14の背面(固定型盤に対して反対側面)に配置される直圧式の型締シリンダーとしてもよい。
【0030】
また、タイバー16の可動型盤14側には、外周面に複数の溝状の凹凸が形成された被把持部(図示せず)が形成されており、可動型盤14には、タイバー16の被把持部に係合して把持可能なタイバー把持装置50が取り付けられている。更に、可動型盤14には、射出成型後の成型体を押圧して可動金型12から離型するためのエジェクター18が取り付けられている。このエジェクター18は、エジェクター用シリンダー27の伸縮動作によるロッド18aの進退によって成型体を押圧して離型させる。なお、本実施形態では、このエジェクター18は油圧シリンダーにて示してあるが、このエジェクター18は油圧シリンダーによる駆動でも、電動アクチュエータによる駆動でもどちらでも良い。
【0031】
固定型盤13の下部と可動型盤14の下部との間には、可動型盤14をスライド移動させるためのアクチュエータとして型開閉シリンダー19が取り付けられている。型開閉シリンダー19が伸び方向に変位することで固定型盤13と可動型盤14との間隔が広がり、型開閉シリンダー19が縮み方向に変位することで固定型盤13と可動型盤14との間隔が狭まるようになっている。このとき、可動型盤14をスライド移動させるアクチュエータは、油圧シリンダーに代えて電動モータ駆動のボールねじなどの電動アクチュエータを用いても支障ない。
【0032】
次に、上述した射出成型装置1における動作の概略を説明する。
まず、型開閉シリンダー19を縮み方向に変位させて、可動型盤14を固定型盤13側に移動し、可動金型12を固定金型11に当接させる。この後、あるいは可動金型12を固定金型11に当接させるのに並行して、タイバー16と可動型盤14とをタイバー把持装置50により連結する。この後、型締シリンダー17によりタイバー16を変位させて可動金型12を固定金型11に圧接させる。そして、射出ユニット2から可塑化された成形材料を金型内へと射出するとともに、保圧を加えながら成形材料を冷却し成型する。
【0033】
次いで、型締シリンダー17により固定金型11から可動金型12を微小距離離間させた後、タイバー把持装置50を開放して、タイバー16と可動型盤14の連結を解き、型開閉シリンダー19により可動型盤14を固定型盤13と反対方向に高速移動させて固定金型11と可動金型12とを、成形品を取り出すために十分な距離に開く。
その後、エジェクター18により可動金型12側に密着している成型体を内側から押圧して離型させて、成形品を取り出す。
【0034】
上記各工程により、成形材料から成型体を形成する1サイクルが終了する。そして、成型体の量産にあたって、上記サイクルが繰り返されることとなる。
【0035】
次に、上述した射出成型装置1の作動油貯留装置20について説明する。射出成型装置1は、射出ユニット2ならびに型締ユニット3にそれぞれ油圧により駆動する、多数の制御要素を備えている。
図2を併せて参照し、射出ユニット2には、油圧制御系の作動油を貯留するメインタンク21が設けられており、型締ユニット3には、油圧制御系の作動油を貯留し、メインタンク21よりも容量の小さいサブタンク22が設けられている。これらメインタンク21とサブタンク22とは、作動油貯留装置20の主要部をなすものであり、メインタンク21内部の貯留領域21aと、サブタンク22内部の貯留領域22aとを連通する流路を形成する連結管23によって接続されている。この連結管23によりメインタンク21の内部とサブタンク22の内部とが連通されることで、サブタンク22の作動油がメインタンク21に移動可能となっている。
【0036】
このとき、連結管23内の作動油の移動に波立ちなどの油面の変動の影響を受けないように、連結管23は油面上面から最も離れたメインタンク21とサブタンク22とのそれぞれの底面付近に設けることが好ましい。
【0037】
メインタンク21からサブタンク22に渡す連結管23の本数はメインタンク21からサブタンク22の間のスペースに対応して、1本でも複数本でも良い。具体的にはメインタンク21からサブタンク22の間に、大口径の連結管を通すスペースが無い場合は、スペースに入るように小口径で複数本の連結管に代えてもよい。またメインタンク21からサブタンク22を連結する連結管23は
図6(a)のように1つの連結管でも、
図6(b)のように複数に分割した配管をフランジやカップリング部材などの継ぎ手部材51を用いた継ぎ構造の連結管23でも良い。また連結管23の材質は金属でもゴム系あるいは織布系の弾性体によるホースなどでも良い。連結管23が分割した配管をカップリングで継ぎ合わせた場合や、連結管23の材質に弾性体を用いた場合は、射出成形装置1の据え付け時などにおいて、メインタンク21とサブタンク22の連結管取付孔の位置がズレた場合でも、連結管23を油漏れがないようにメインタンク21とサブタンク22とに容易に取りつけることが出来る。
【0038】
この実施形態の一例におけるサブタンク22は、型締ユニット3における型締機構が占めるスペースが大きいなどの都合等により、一般的にはメインタンク21の1/3〜1/5程度、好ましくは1/4程度の小容量に設定されている。また、メインタンク21とサブタンク22とが連結管23によって接続されていることで、それぞれメインタンク21とサブタンク22との油面が同じレベルとなるように作動油が連結管23を介して移動するようになるため、メインタンク21とサブタンク22との底面高さは略同一に設定されている。サブタンク22内の作動油が容易にメインタンク21内に移動できるようするには、メインタンク21とサブタンク22との底面高さは略同一に設定されることが好ましいが、サブタンク22の設置スペース上、メインタンクとサブタンク21と略同一の底面高さにすることが出来ない場合は、サブタンク22の底面位置をメインタンク21よりも低くあるいは高くしてもよい。
【0039】
メインタンク21には、メインタンク21内に貯留された作動油を吸引配管25aを介して吸引して、射出ユニット2や型締ユニット3の制御要素へ作動油を圧送するポンプ24が接続されている。このポンプ24の出力側には、圧送用の圧力配管25bが接続されており、この圧力配管25bが、射出ユニット2から型締ユニット3に亘って配索されている。
【0040】
圧力配管25bは、射出ユニット2側において油圧シリンダー7を含む複数の制御要素にそれぞれ分岐接続されており、これら制御要素には、それぞれ制御要素から排出される作動油をメインタンク21に戻す第一戻し配管(図示せず)が接続されている。また、圧力配管25bには、型締ユニット3側において、型締シリンダー17、型開閉シリンダー19、エジェクター用シリンダー27などに分岐する分岐配管26が接続されている。各分岐配管26の途中には、各制御要素への作動油の供給を制御する制御弁(図示せず)がそれぞれ設けられており、各制御弁が閉弁状態から開弁されることで、各分岐配管26に分流された作動油が型締シリンダー17、型開閉シリンダー19、及び、エジェクター用シリンダー27などの制御要素に圧送されることとなる。
【0041】
このとき、射出ユニット2と型締ユニット3との間に亘る圧力配管25bの本数を抑制し、射出ユニット2と型締ユニット3との組み付けに係る圧力配管25bの接続作業の負担を低減するためには、圧力配管25bを射出ユニット2から型締ユニット3に亘って配索された後に、型締シリンダー17、型開閉シリンダー19、エジェクター用シリンダー27などに分岐接続させることが好ましい。
【0042】
型締シリンダー17、型開閉シリンダー19、及び、エジェクター用シリンダー27には、サブタンク22に作動油を戻すための第二戻し配管28a,28b,28cが接続されている。上述した第一戻し配管および、第二戻し配管28a〜28cは、メインタンク21又はサブタンク22に接続されている。
図2に示したように、第二戻し配管28a〜28cはそれぞれの背圧が影響し合わないように、合流することなく個別にサブタンク22に接続するのが好ましいが、サブタンク22の蓋に戻し配管を個別に接続する十分なスペースが無い場合は、第二戻し配管28aおよび第二戻し配管28bを合流後にサブタンク22に接続してもよい。なお、
図2においては、図示都合上、サブタンク22近傍のみ第二戻し配管28a〜28cを断面で示し、それ以外を簡略化している。
【0043】
ここで、型締シリンダー17は、エジェクター用シリンダー27などと比較して、大口径且つ小ストロークに設定されており、型締シリンダー17から排出される作動油が、高圧(例えば、160kgf/cm2程度)且つ大流量となる。また、型開閉シリンダー19は、型締シリンダー17と比較して小径のシリンダーとなっているものの、高速且つ大ストロークで作動されるため、エジェクター用シリンダー27などと比較して排出される作動油が大流量となる。例えば、1000〜2000t程度の型締力を有した型締ユニット3の場合、型締シリンダー17からの作動油の排出量は、毎分1000〜2000リットル程度、2000〜3500t程度の型締力を有した型締ユニット3の場合、型締シリンダー17からの作動油の排出量は、毎分1500〜2500リットル程度となる。このように毎分1000〜2500リットル程度の大流量がサブタンク22に流入するため、従来の構造による戻し配管構造では、前述のような配管の破損や作動油流動状態の変動などの不具合の原因となる。
【0044】
サブタンク22は、その内部に、第二戻し配管28a〜28cから排出される作動油を貯留する貯留領域22aを有し、この貯留領域22aに貯留されている作動油の油面よりも下方に、中空で略直方体状の接続箱30が形成されている。この接続箱30によって上記貯留領域22aが第一領域22bと第二領域22cとに区画する区画部が構成されている。このように接続箱30により貯留領域22aが区画されることで、貯留領域22aのうち接続箱30の内側に第一領域22bが形成され、接続箱30の外側に第二領域22cが形成される。
【0045】
サブタンク22は、その側壁31に連結管23の流路開口部23aが形成され、この流路開口部23aが接続箱30内の第一領域22bに臨んでいる。つまり、第一領域22bは、流路開口部23aを介して連結管23と直接的に連通されている。また、連結管23の流路開口部23aが形成される側壁31は、上述した接続箱30の側壁を兼用している。なお、この実施形態の一例においては、流路系後部23aを備える側壁31が接続箱30の側壁そして兼用される場合について説明したが、兼用しないように個別に形成してもよい。
【0046】
接続箱30には、上記第一領域22bと第二領域22cとを連通する内部領域連通部32が形成されている。この内部領域連通部32は、接続箱30の側壁33を貫通する複数の孔34により形成されており、これら複数の孔34は、上記連結管23の流路開口部23aが形成される側壁31を除く接続箱30の側壁のうち、少なくとも一つの側壁33に形成されている。そして、内部領域連通部32の複数の孔34は、これら複数の孔34のそれぞれに生じる圧力損失が、上記連結管23により生じる圧力損失と同等または該圧力損失よりも大きくなるように設定されている。つまり、第一領域22bからメインタンク21に作動油が流出する抵抗よりも、第一領域22bから第二領域22cに作動油が流出する抵抗を高くすることによって、内部領域連通部32を通じて第二領域22cに移動する作動油よりも、連結管23を通じてメインタンク21へ移動する作動油量が多くなるように設定されている。
【0047】
サブタンク22の上壁35には、油面の変位に伴う大気の出入口としてのエアブリーザ(図示せず)が設けられるとともに、上記第二戻し配管28a〜28cが貫通する開口部36a〜36cが形成されている。第二戻し配管28a〜28cは、それぞれサブタンク22に固定するためのフランジ37を備えており、これらフランジ37が開口部36a〜36cの周縁に締結されることで、開口部36a〜36cの上下において鉛直方向に延在された状態で第二戻し配管28a〜28cがサブタンク22に固定されている。
【0048】
第二戻し配管28a〜28cのうち、作動油の流量が相対的に大流量となる型締シリンダー17と型開閉シリンダー19とに接続される第二戻し配管28a,28bは、その下端の流路出口38a,38bが、接続箱30の内部の第一領域22bに臨むように配置されている。より具体的には、接続箱30の上壁39には、第二戻し配管28a,28bの鉛直下方に、第二戻し配管28a,28bよりも僅かに大径の開口部40a,40bが形成され、第二戻し配管28a,28bの下端すなわち流路出口38a,38bが、開口部40a,40bと略同じ高さ位置に配置されている。これにより、第二戻し配管28a,28bから排出される作動油は、開口部40a,40bをそれぞれ介して第一領域22b内に流入することとなる。
【0049】
一方、第二戻し配管28a〜28cのうち、作動油の流量が相対的に小流量となるエジェクター用シリンダー27に接続されている第二戻し配管28cは、上述した第二戻し配管28a,28bと同様に、鉛直方向に延設されている。この第二戻し配管28cは、その下端の流路出口38cが、第二領域22c内に配置されている。そして、第二戻し配管28cの流路出口38cは、その作動油の吐出する方向に接続箱30が配置されない位置に配置されている。これにより、第二戻し配管28cから排出される作動油は、第一領域22bを介さずに直接的に第二領域22c内に流入することとなる。
【0050】
したがって、上述した第一実施形態における作動油貯留装置20によれば、吸引配管25aにより吸引されたメインタンク21の作動油が、第二戻し配管28a〜28cを介してサブタンク22の第一領域22bに流入可能となる。そして、メインタンク21とサブタンク22とが連結管23により連通されることで、メインタンク21の油面とサブタンク22の油面との高さに応じて生じる圧力差により、サブタンク22の作動油を、連結管23を介してメインタンク21に移動させることができる。
【0051】
さらに、接続箱30によってサブタンク22の貯留領域22aを連結管23の流路開口部23aを含む第一領域22bとそれ以外の第二領域22cに区分して、第一領域22bに第二戻し配管28a,28bの作動油を流入させるようにすることで、作動油の流入により第一領域22bの内圧を上昇させて、この内圧の上昇を利用して、連結管23を介してサブタンク22からメインタンク21へ移動する作動油の流速を増速させることができる。
【0052】
また、内部領域連通部32による圧力損失が連結管23の圧力損失と同等または該圧力損失よりも大きく設定されているので、サブタンク22の作動油が連結管23を介してメインタンク21へ移動するよりも緩やかに、第一領域22b内の作動油を、内部領域連通部32を介して第二領域22cへと移動させることができるため、サブタンク22内の油面の急上昇を抑制して、油面変化による圧力変動を抑制することができる。
【0053】
また、第一領域22b内に流路出口38a,38bが臨むように第二戻し配管28a,28bがサブタンク22に接続されるので、第二戻し配管28a,28bを屈曲する必要がなく、作動油の吐出反力により第二戻し配管28a,28bに曲げモーメントが作用するのを防止できる。さらに、第二戻し配管28a,28bを連結管23内に導入する場合と比較して、第二戻し配管28a,28bの長さを短縮することができるため、作動油の吐出により生じる渦によって第二戻し配管28a,28bに振動が誘発された場合においても、振動による曲げモーメントを小さく抑えることができる。その結果、曲げモーメントや過度の振動により第二戻し配管28a,28bを固定するフランジ37などの固定部材の負荷が増大し破損が発生したり締結用のネジ(図示せず)に緩みや破損が発生したりするのを防止することができる。また、エアブリーザーから油が溢れるのを防止できる。
【0054】
また、第二戻し配管28a,28bの流路出口38a,38bの周囲に連結管23が配置されていないので、第二戻し配管28a,28bから作動油が吐出される際に、ベンチュリー効果により流路出口38a,38bの周囲が減圧されるのを抑制することができ、その結果、キャビテーションの発生を防止することができる。
【0055】
さらに、内部領域連通部32が、側壁33に形成された複数の孔34により形成されていることで、サブタンク22内の第一領域22bから第二領域22cへ移動する作動油の流速を低減させることができるため、サブタンク22内における作動油の巻き上がりなどに起因する油面変動を抑制することができる。
【0056】
また、複数の第二戻し配管28a〜28cのうち、第二戻し配管28a,28bの流路出口38a,38bのみが、第一領域22b内に臨むように配置されていることで、第二戻し配管28a,28bの作動油により、第一領域22b内を高い圧力に維持し易くなる。一方、第二戻し配管28cの作動油を、流動抵抗および圧力の上昇が少ない第二領域22cに戻すことができるため、第二戻し配管28cが接続されている制御要素であるエジェクター用シリンダー27の背圧を低く保つことができ、その結果、小型の制御要素を精度良く動作させることができる。
【0057】
そして、流路出口38a,38bが、接続箱30の開口部40a,40bと略同じ高さ位置に配置され、第二戻し配管28a,28bが接続箱30に固定されていないため、第二戻し配管28a,28bの取り付け作業や接続箱30のメンテナンス作業を容易に実施することができる。
【0058】
また、サブタンク22をメインタンク21よりも小型に形成することで、作動油の流入によってサブタンク22の油面が急上昇しやすくなるが、上述した接続箱30の構成を設けることでサブタンク22における油面の急上昇を抑制することができる。そして、このようにサブタンク22をメインタンク21よりも小型に形成することで、メインタンク21において必要な油面高さを維持しつつ、射出成型装置1全体で用いる作動油量を抑制することが可能になる。
【0059】
次に、この発明の第二実施形態における作動油貯留装置120について図面を参照して説明する。なお、この第二実施形態における作動油貯留装置120は、上述した第一実施形態の作動油貯留装置20に対して、内部領域連通部32の構成のみが異なるため、同一部分に同一符号を付して説明するとともに、重複する説明を省略する。
図3に示すように、この実施形態における作動油貯留装置120のサブタンク22には、貯留領域22aを第一領域22bと第二領域22cとを区画する接続箱130が設けられている。この接続箱130は、上述した第一実施形態の接続箱30と同様に、第二戻し配管28a〜28cのフランジ37が上壁35の開口部36a〜36c周縁に固定されており、開口部36a〜36cの上下において鉛直方向に延在された状態で第二戻し配管28a〜28cがサブタンク22に固定されている。
【0060】
接続箱30の上壁39には、第二戻し配管28a,28bの鉛直下方に、第二戻し配管よりも僅かに大径の開口部40a,40bが形成され、これら開口部40a,40bと略同じ高さ位置に、上記第二戻し配管28a,28bの流路出口38a,38bが配置されている。
【0061】
接続箱30には、多段壁133が形成されている。この多段壁133は、厚さ方向に所定間隔で離間して配置された複数の側壁133a〜133cにより構成されており、複数の側壁133a〜133cには、それぞれ内部領域連通部132を構成する複数の孔34が形成されている。そして、複数の孔34は、多段壁133の外側に形成されるものほど一つ当たりの流路面積が小さく形成されている。すなわち、側壁133aに形成される孔34の流路面積が最も大きく、側壁133cに形成される孔34の流路面積が最も小さく形成される。そして、この多段壁133に形成される孔34による圧力損失は、連結管23に生じる圧力損失と同等または該圧力損失よりも大きくなるように設定されている。なお、多段壁133と孔34とによって、第一領域22bと第二領域22cとを連通する内部領域連通部132が構成されている。
【0062】
ここで、各側壁133a〜133cに形成される孔34は、側壁133a〜133c毎に孔34の合計流路面積が略同一に設定されるか、又は、外側の側壁133cに形成されるものほど大きく形成されるのが好ましい。このようにすることで、多段壁133の側壁間における作動油の抵抗を抑制し、作動油の流動を安定化させることができる。さらに、多段壁133の各段に係る圧力が均されるので、多段壁133の各側壁133a〜133cを低剛性化することが可能となり、その結果、多段壁133の側壁一枚当たりの板圧を薄くして低コスト化を図ることができる。なお、
図3においては、図示都合上、多段壁133が3枚の側壁133a〜133cによって構成される場合を示しているが、3枚に限られるものではなく、2枚や、4枚以上の側壁を設けるようにしても良い。
【0063】
また、多段壁133の各側壁133a〜133cにおける各孔34の位置は、できるだけ異なる位置に設けることが好ましい。すなわち、側壁133aの孔34から流出する作動油は側壁133bの孔34に直接流入することなく、一度、側壁133bの壁に当たってから近隣の孔34に流入する。同様に、側壁133bの孔34から流出する作動油は側壁133cの孔34に直接流入することなく、一度、側壁133cの壁に当たってから近隣の孔34に流入した後、第二領域22cへ噴出する。このようにすることで、第一領域22bから多段側壁133での作動油の速度を緩和すると共に、作動油を十分に整流した後に、第二領域22cに噴出させることができる。
【0064】
したがって、上述した第二実施形態の作動油貯留装置120によれば、内部領域連通部132によって第二領域22cに噴出する作動油の勢いを抑制することができるとともに、第二領域22cに噴出する作動油の勢いがばらつくのを防止することができるため、とりわけ、内部領域連通部132が形成された接続箱130の側壁133cと、サブタンク22の側壁との間隙が小さい場合であっても、孔34から噴出する作動油が巻き上がってサブタンク22の油面が変動するのを抑制することができる点で有利となる。
【0065】
また、内部領域連通部132が多段に形成されることで、接続箱30内に流入する作動油による振動波を接続箱30内で減衰させることができるため、振動波が第二領域22cの作動油に伝搬して作動油に脈動などの変動要因が残るのを防止することができる。
さらに、内部領域連通部132が多段に形成されることで、作動油の圧力損失を各段に分散させることができるため、作動油が各孔34を通過する際の急減圧を抑制し、作動油内に気泡が発生するのを防止することができる。
【0066】
次に、この発明の第三実施形態における作動油貯留装置20について図面を参照して説明する。なお、この第三実施形態における作動油貯留装置20は、上述した第一実施形態の作動油貯留装置20に対して、第二戻し配管28a〜28cの取り付け構造が異なるだけであるため、同一部分に同一符号を付して説明する。
【0067】
図4に示すように、この実施形態の作動油貯留装置220のサブタンク222には、上述した第一実施形態と同様に、貯留領域22aを第一領域22bと第二領域22cとに区画する接続箱30が形成されている。そして、この接続箱30には、側壁33に複数の孔34が形成された内部領域連通部32が形成されている。
一方、サブタンク222には、上部開口部236が形成され、この上部開口部236が配管連結部材である油圧マニホールドMによって閉塞されている。
【0068】
油圧マニホールドMは、型締ユニット3側の油圧回路を金属ブロック内に一体的に形成したものであり、油圧配管や制御弁(例えば、圧力制御弁、流量制御弁など)を含んで構成されている。そして、油圧マニホールドMには、圧力配管25b、および、型締シリンダー17や型開閉シリンダー19のロッド側の油室およびヘッド側に接続される種々の分岐配管26がそれぞれ接続されている。油圧マニホールドMとサブタンク222とは、ボルトの締結部材(図示せず)により固定され、油圧マニホールドMによって上部開口部236が閉塞されている。
【0069】
さらに、油圧マニホールドMには、型締シリンダー17、型開閉シリンダー19、および、エジェクター用シリンダー27などに接続される第二戻し配管28a,28b,28cが上下方向に延設されている。なお、
図4においては、第二戻し配管28a〜28cが油圧マニホールドMの上面部に接続されているが、流路出口38a〜38cが油圧マニホールドMの下方に配置されていれば、第二戻し配管28a〜28cは油圧マニホールドMの側面部に接続しても良い。この場合、油圧マニホールドMの作動油流路は側方から下方に屈曲する形状となる。
【0070】
これら第二戻し配管28a,28b,28cは、それぞれ油圧マニホールドMがサブタンク222に取り付けられる前に、油圧マニホールドMに対して取り付けられる。つまり、油圧マニホールドMをサブタンク222に取り付ける作業を完了した時点で、第二戻し配管28a〜28cはサブタンク222に取り付けられた状態となる。なお、第二戻し配管28a〜28cの配置や流路出口38a〜38cの配置は、上述した第一実施形態と同様であるので、詳細説明を省略する。
【0071】
ここで、油圧マニホールドMは、上述したサブタンク222の上壁235と比較して肉厚で剛性の高い金属ブロックで形成され、同一表面積を有する上壁235よりも重量が大きくなっている。なお、上記油圧マニホールドMの重量は、例えば、型締力が1000〜2000t程度の場合には、800kg程度の重量となり、型締力が2500〜3500t程度の場合には、1100kg程度となっている。更に、第二戻し配管28a,28bの配管径は、例えば、型締力が1000〜2000t程度の場合にはφ60〜80程度、型締力が2500〜3500t程度の場合にはφ80〜100程度となっている。このとき、第二戻し配管28a,28bの配管径は、上記油圧マニホールドMの重量による押圧力が、作動油の吐出反力を上回るように設定することが好ましい。
【0072】
したがって、上述した第三実施形態における作動油貯留装置20によれば、油圧マニホールドMをサブタンク22に取り付けるだけで第二戻し配管28a〜28cをサブタンク22に接続できるため、サブタンク22内における組み付け作業が不要となり、第二戻し配管28a〜28cの組み付け作業の負担を軽減することができる。
【0073】
さらに、剛性の高い油圧マニホールドMに一体的に第二戻し配管28a,28bが接続されているので、第二戻し配管28a,28bの組み付け剛性を向上させて、第二戻し配管28a,28bに振れが生じるのを防止することができる。また、油圧マニホールドMとサブタンク22とを接続する外部配管や継手を省略することができるため、作動油の漏れ防止、部品点数削減による低コスト化、および、小型化を図ることができる。
【0074】
そして、種々の制御弁が組み付けられた重量物である油圧マニホールドMをサブタンク22に組み付けることで、サブタンク22や第二戻し配管28a〜28cなどの固有振動数を高周波数化することができため、作動油の流動で生じる低周波数の脈動による共振を防止できる。
【0075】
さらに、油圧マニホールドMの重量によって、作動油の吐出反力に対抗することができるため、とりわけ、作動油の吐出反力によるサブタンク22の上部開口部236周縁への負荷が軽減するため、サブタンク22の強度設計に係る設計自由度を向上することができる。
【0076】
なお、この発明は上述した各実施形態の構成に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で設計変更可能である。
例えば、上述した各実施形態では、接続箱30が略直方体状の場合について説明したが、この形状に限られず、例えば、曲面を有した箱状に形成されていても良い。
【0077】
また、上述した各実施形態においては、第二戻し配管28a,28bの流路出口38a,38bを第一領域22bに臨むように配置する場合について説明したが、この構成に限られず、例えば、相対的に小流量となる第二戻し配管28cの流路出口38cを第一領域22bに臨むように配置しても良い。
【0078】
また、上述した各実施形態においては、流路出口38a,38bが、接続箱30,130の開口部40a,40bと同じ高さ位置に配置されている場合について説明したが、この構成に限られるものではない。例えば、流路出口38a,38bの位置は開口部40a,40bの近傍でもよい。また、流路出口38a,38bを、開口部40a,40bよりも第一領域22bの内側に配置するようにしてもよい。開口部40a,40bよりも第一領域22bの内側に流路出口38a,38bを配置した場合、サブタンク22,122に戻される作動油が、流路出口38a,38bから第一領域22bに確実に流れ込むようになるため、第一領域22bを確実に正圧にすることができ、その結果、連結管23内の作動油の流速を確実に増加させることができる。
【0079】
そして、上述した各実施形態においては、接続箱30の側壁33、多段壁133に内部領域連通部32,132の孔34を形成する場合について説明したが、接続箱30の上壁39に内部領域連通部32の孔34を形成するようにしても良い。また、小型の制御要素としてエジェクター用シリンダー27を一例に説明したが、エジェクター用シリンダー27以外に、作動油の排出流量が小さい他の制御要素の作動油を第二領域22cに戻すようにしても良く、さらにエジェクター用シリンダー27など排出流量の小さい複数の制御要素の作動油を第二領域22cに戻すようにしても良い。
【0080】
さらに、上述した第二実施形態においては、多段壁133の外側の側壁に形成される孔34ほど小さくなる一例について説明したが、全ての孔34を同等の大きさに設定しても良い。
また、上述した第三実施形態において、サブタンク22内に、第二実施形態の接続箱130を適用するようにしても良い。
【0081】
さらに、第三実施形態においては、複数の第二戻し配管28a〜28cを一体的に接続する配管連結部材として油圧マニホールドMを用いる場合について説明したが、複数の第二戻し配管28a〜28cを一体的に接続してサブタンク22の上壁235よりも剛性が高くなるものであれば油圧マニホールドMに限られるものではなく、例えば、単なる金属ブロックを用いてもよい。
【0082】
さらに、上述した各実施形態においては、作動油貯留装置20を射出成型装置1に設ける一例について説明したが、射出成型装置1以外の装置に適用しても良い。