特許第5905382号(P5905382)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5905382
(24)【登録日】2016年3月25日
(45)【発行日】2016年4月20日
(54)【発明の名称】搬送チェーン
(51)【国際特許分類】
   B65G 17/38 20060101AFI20160407BHJP
【FI】
   B65G17/38 J
   B65G17/38 L
【請求項の数】3
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-285204(P2012-285204)
(22)【出願日】2012年12月27日
(65)【公開番号】特開2014-125341(P2014-125341A)
(43)【公開日】2014年7月7日
【審査請求日】2015年6月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003355
【氏名又は名称】株式会社椿本チエイン
(74)【代理人】
【識別番号】100111372
【弁理士】
【氏名又は名称】津野 孝
(74)【代理人】
【識別番号】100112298
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 光春
(74)【代理人】
【識別番号】100168538
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 来
(72)【発明者】
【氏名】横谷 虎彦
(72)【発明者】
【氏名】木原 正揮
【審査官】 大谷 光司
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−280734(JP,A)
【文献】 特開2006−194274(JP,A)
【文献】 特開平09−250600(JP,A)
【文献】 特開昭55−107148(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G17/00−17/48
F16G13/02−13/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右に離間配置した一対の内プレートと、該内プレートの両外側に配置した一対の外プレートと、前記内プレートのブシュ穴に圧入されるブシュと、該ブシュに回転自在に挿通されて外プレートのピン穴に圧入される連結ピンと、前記外プレートの外側にチェーン長手方向で所定間隔あけて回転自在に配設されチェーン長手方向に延びたレール上を走行する走行用ローラとを備えスプロケットから搬送手段に動力を伝達して搬送物を搬送する搬送チェーンにおいて、
前記一対のうちの一方の内プレートが、前記一対のうちの一方の外プレートと当接する内プレート側当接部を有するとともに、前記一対のうちの一方の外プレートが、前記内プレート側当接部と当接して連結ピンを中心とした連結ピン周方向の一方への所定姿勢以上の屈曲を規制する外プレート側当接部を有し、
前記所定姿勢が、前記走行用ローラ間で走行用ローラ間を結ぶ直線に対してチェーン外周側へ凸となる湾曲姿勢であり、
前記一対の内プレートおよび一対の外プレートが、
前記一対のうちの一方の内プレートのピッチP1 > 一対のうちの他方の内プレートのピッチP3、かつ、一対のうちの一方の外プレートのピッチP2 ≧ 一対のうちの他方の外プレートのピッチP4、
または、前記一対のうちの一方の内プレートのピッチP1 ≧ 一対のうちの他方の内プレートのピッチP3、かつ、一対のうちの一方の外プレートのピッチP2 > 一対のうちの他方の外プレートのピッチP4
を満たす関係を有していることを特徴とする搬送チェーン。
【請求項2】
前記ブシュと連結ピンとの間のクリアランス量をCとしたとき、
前記一対の内プレートおよび一対の外プレートが、
前記クリアランス量C > ピッチP1−ピッチP3、および、クリアランス量C > ピッチP2−ピッチP4
を満たす関係を有していることを特徴とする請求項1に記載の搬送チェーン。
【請求項3】
前記一対の内プレートおよび一対の外プレートが、
前記ピッチP3 = ピッチP4
を満たす関係を有していることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の搬送チェーン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外プレートの外側にチェーン長手方向で所定間隔あけて回転自在に配設されチェーン長手方向に延びたレール上を走行する走行用ローラを備えスプロケットから搬送手段に動力を伝達して搬送物を搬送する搬送チェーンに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、レール上を走行する走行用ローラを備えスプロケットから搬送手段としてのウィケットに動力を伝達して搬送物を搬送する搬送チェーンが知られている(例えば、特許文献1および特許文献2)。
このような従来の搬送チェーンとして、例えば、図5乃至図7(B)に示すような搬送チェーン700がある。
【0003】
ここで、図5は、従来技術の搬送チェーン700の問題点を示す概略平面図であり、図6(A)は、図6(B)の符号6Aから視た従来技術の搬送チェーン700を示す側面図であり、図6(B)は、図6(A)の符号6Bから視た従来技術の搬送チェーン700を示す平面図であり、図6(C)は、図6(B)の符号6Cから視た従来技術の搬送チェーン700を示す側面図であり、図7(A)は、図6(A)に示す側のブシュ740と連結ピン730との接触状態を示す図であり、図7(B)は、図6(C)に示す側のブシュ740と連結ピン730との接触状態を示す図である。
【0004】
従来の搬送チェーン700は、図5乃至図7(B)に示すように、左右に離間配置した一対の内プレート710と、一対の内プレート710の両外側に配置した一対の外プレート720と、一対の内プレート710のブシュ穴711A、711Bに圧入されるブシュ740と、ブシュ740に回転自在に挿通されて一対の外プレート720のピン穴721A、721Bに圧入される連結ピン730と、一対の外プレート720の外側にチェーン長手方向Yで所定間隔あけて回転自在に配設されチェーン長手方向Yに延びたレールR上を走行する走行用ローラ760とを備えていた。
さらに、ブシュ740の外周には、スプロケットと噛み合うローラ750が配設されていた。
【0005】
また、一方の内プレート710AのピッチP1と、一方の外プレート720AのピッチP2と、他方の内プレート710BのピッチP3と、他方の外プレート720BのピッチP4との全てが同じ長さだった。
ここで、「ピッチ」とは、1つのプレート(内プレート、外プレート)のチェーン長手方向両側に設けられたブシュ穴またはピン穴のそれぞれの中心間の長さをいう。
【0006】
また、一対のうちの一方の内プレート710Aが、内プレート側当接部712Aを有し、他方の内プレート710Bが、ウィケット取付部713Bを有していた。
同様に、一対のうちの一方の外プレート720Aが、内プレート側当接部712Aと当接して連結ピン730を中心とした連結ピン周方向の一方への所定姿勢以上の屈曲を規制する外プレート側当接部722Aを有し、他方の外プレート720Bが、ウィケット取付部723Bを有していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平9−280734号公報
【特許文献2】実開平6−24227号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上述した従来の搬送チェーン700は、チェーン幅方向Xの一方のみに内プレート側当接部712Aおよび外プレート側当接部722Aが設けられて、一方の内プレート710AのピッチP1と、一方の外プレート720AのピッチP2と、他方の内プレート710BのピッチP3と、他方の外プレート720BのピッチP4との全てが同じ長さとなる関係を有する構造であったため、内プレート側当接部712Aおよび外プレート側当接部722Aが互いに接触することによりチェーン長手方向以外の方向の力が生じて、チェーン幅方向Xで、内プレート側当接部712Aおよび外プレート側当接部722Aが設けられている一方側(図7(B)参照)と、内プレート側当接部712Aおよび外プレート側当接部722Aが設けられていない他方側(図7(A)参照)とでは、ブシュ740と連結ピン730との接触状態が異なり、内プレート側当接部712Aおよび外プレート側当接部722Aが設けられている一方側(図7(B)参照)のチェーン長手方向Yの搬送チェーン700の長さが、内プレート側当接部712Aおよび外プレート側当接部722Aが設けられていない他方側(図7(A)参照)のチェーン長手方向Yの搬送チェーン700の長さと比べて、チェーン長手方向Yのクリアランス量Cの範囲内で差(CとC’との差)が生じた分だけ短くなり、これが累積されて図5に示すように搬送チェーン700の横曲がりである所謂、うねりが生じるという問題があった。
【0009】
そこで、本発明は、前述したような従来技術の問題を解決するものであって、すなわち、本発明の目的は、うねりを抑制する搬送チェーンを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本請求項1に係る発明は、左右に離間配置した一対の内プレートと、該内プレートの両外側に配置した一対の外プレートと、前記内プレートのブシュ穴に圧入されるブシュと、該ブシュに回転自在に挿通されて外プレートのピン穴に圧入される連結ピンと、前記外プレートの外側にチェーン長手方向で所定間隔あけて回転自在に配設されチェーン長手方向に延びたレール上を走行する走行用ローラとを備えスプロケットから搬送手段に動力を伝達して搬送物を搬送する搬送チェーンにおいて、前記一対のうちの一方の内プレートが、前記一対のうちの一方の外プレートと当接する内プレート側当接部を有するとともに、前記一対のうちの一方の外プレートが、前記内プレート側当接部と当接して連結ピンを中心とした連結ピン周方向の一方への所定姿勢以上の屈曲を規制する外プレート側当接部を有し、前記所定姿勢が、前記走行用ローラ間で走行用ローラ間を結ぶ直線に対してチェーン外周側へ凸となる湾曲姿勢であり、前記一対の内プレートおよび一対の外プレートが、前記一対のうちの一方の内プレートのピッチP1>一対のうちの他方の内プレートのピッチP3、かつ、一対のうちの一方の外プレートのピッチP2≧一対のうちの他方の外プレートのピッチP4、または、前記一対のうちの一方の内プレートのピッチP1≧一対のうちの他方の内プレートのピッチP3、かつ、一対のうちの一方の外プレートのピッチP2>一対のうちの他方の外プレートのピッチP4を満たす関係を有していることにより、前述した課題を解決するものである。
【0011】
本請求項2に係る発明は、請求項1に記載された搬送チェーンの構成に加えて、前記ブシュと連結ピンとの間のクリアランス量をCとしたとき、前記一対の内プレートおよび一対の外プレートが、前記クリアランス量C>ピッチP1−ピッチP3、および、クリアランス量C>ピッチP2−ピッチP4を満たす関係を有していることにより、前述した課題をさらに解決するものである。
【0012】
本請求項3に係る発明は、請求項1または請求項2に記載された搬送チェーンの構成に加えて、前記一対の内プレートおよび一対の外プレートが、前記ピッチP3=ピッチP4を満たす関係を有していることにより、前述した課題をさらに解決するものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明の搬送チェーンは、左右に離間配置した一対の内プレートと、内プレートの両外側に配置した一対の外プレートと、内プレートのブシュ穴に圧入されるブシュと、ブシュに回転自在に挿通されて外プレートのピン穴に圧入される連結ピンと、外プレートの外側にチェーン長手方向で所定間隔あけて回転自在に配設されチェーン長手方向に延びたレール上を走行する走行用ローラとを備えていることにより、スプロケットから搬送手段に動力を伝達して搬送物を搬送することができるばかりでなく、以下のような特有の効果を奏することができる。
【0014】
本請求項1に係る発明の搬送チェーンによれば、一対のうちの一方の内プレートが、一対のうちの一方の外プレートと当接する内プレート側当接部を有するとともに、一対のうちの一方の外プレートが、内プレート側当接部と当接して連結ピンを中心とした連結ピン周方向の一方への所定姿勢以上の屈曲を規制する外プレート側当接部を有し、所定姿勢が、走行用ローラ間で走行用ローラ間を結ぶ直線に対してチェーン外周側へ凸となる湾曲姿勢であり、一対の内プレートおよび一対の外プレートが、一対のうちの一方の内プレートのピッチP1>一対のうちの他方の内プレートのピッチP3、かつ、一対のうちの一方の外プレートのピッチP2≧一対のうちの他方の外プレートのピッチP4、または、一対のうちの一方の内プレートのピッチP1≧一対のうちの他方の内プレートのピッチP3、かつ、一対のうちの一方の外プレートのピッチP2>一対のうちの他方の外プレートのピッチP4を満たす関係を有していることにより、所定姿勢のときにブシュと連結ピンとの接触状態で搬送チェーンの前記一方側の長さが他方側の長さより短くなるようにチェーン長手方向に差が生じるが、一対の内プレートおよび外プレートの前記一方側のピッチの合計の長さが一対の内プレートおよび外プレートの前記他方側のピッチの合計の長さより長くなり全体として搬送チェーンの前記一方側の長さと他方側の長さとの差が小さくなるまたは無になるため、搬送チェーンの横曲がりである所謂、うねりを抑制できる。
【0015】
本請求項2に係る発明の搬送チェーンによれば、請求項1に係る発明が奏する効果に加えて、ブシュと連結ピンとの間のクリアランス量をCとしたとき、一対の内プレートおよび一対の外プレートが、クリアランス量C>ピッチP1−ピッチP3、および、クリアランス量C>ピッチP2−ピッチP4を満たす関係を有していることにより、一対の内プレートおよび外プレートの前記一方側のピッチの合計の長さが一対の内プレートおよび外プレートの前記他方側のピッチの合計の長さよりクリアランス量Cの範囲内で長くなり全体として搬送チェーンの前記一方側の長さと他方側の長さとの差が小さくなるまたは無になるため、搬送チェーンのうねりをより抑制できる。
【0016】
本請求項3に係る発明の搬送チェーンによれば、請求項1または請求項2に係る発明が奏する効果に加えて、一対の内プレートおよび一対の外プレートが、ピッチP3=ピッチP4を満たす関係を有していることにより、全体として基本的なピッチが等間隔となるため、スプロケットと滑らかに噛み合うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施例である搬送チェーンを備えたウィケット式コンベヤ乾燥機の概略側面図。
図2図1の符号2A−2Aおよび符号2Bで視た概略図。
図3】本発明の実施例である搬送チェーンを示す側面図および平面図。
図4】本発明の実施例である搬送チェーンのブシュと連結ピンとの接触状態を示す図。
図5】従来技術の搬送チェーンの問題点を示す概略平面図。
図6】従来技術の搬送チェーンを示す側面図および平面図。
図7】従来技術の搬送チェーンのブシュと連結ピンとの接触状態を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明は、左右に離間配置した一対の内プレートと、内プレートの両外側に配置した一対の外プレートと、内プレートのブシュ穴に圧入されるブシュと、ブシュに回転自在に挿通されて外プレートのピン穴に圧入される連結ピンと、外プレートの外側にチェーン長手方向で所定間隔あけて回転自在に配設されチェーン長手方向に延びたレール上を走行する走行用ローラとを備えスプロケットから搬送手段に動力を伝達して搬送物を搬送する搬送チェーンにおいて、一対のうちの一方の内プレートが、一対のうちの一方の外プレートと当接する内プレート側当接部を有するとともに、一対のうちの一方の外プレートが、内プレート側当接部と当接して連結ピンを中心とした連結ピン周方向の一方への所定姿勢以上の屈曲を規制する外プレート側当接部を有し、所定姿勢が、走行用ローラ間で走行用ローラ間を結ぶ直線に対してチェーン外周側へ凸となる湾曲姿勢であり、一対の内プレートおよび一対の外プレートが、一対のうちの一方の内プレートのピッチP1>一対のうちの他方の内プレートのピッチP3、かつ、一対のうちの一方の外プレートのピッチP2≧一対のうちの他方の外プレートのピッチP4、または、一対のうちの一方の内プレートのピッチP1≧一対のうちの他方の内プレートのピッチP3、かつ、一対のうちの一方の外プレートのピッチP2>一対のうちの他方の外プレートのピッチP4を満たす関係を有していることにより、搬送チェーンのうねりを抑制するものであれば、その具体的な実施態様は、如何なるものであっても構わない。
【0019】
例えば、搬送手段は、ウィケットやバケットなど搬送物を搬送するものであれば如何なる形態でもよい。
また、搬送チェーンを構成するチェーン自体の素材は、通常温度で引張強度に優れたものであれば、鉄系あるいは被鉄系の金属材料などいかなる材料でも構わないが、相当の引張強度を要すること、内プレート、外プレート、連結ピン及びブシュなどの部品は、引張強度及び防蝕性などを考慮すると、鋼系の材料で形成することが望ましい。
さらに、搬送チェーンは、ブシュの外周にローラを有するものでもよいし、有さないものでもよい。
【実施例】
【0020】
以下に、本発明の実施例である搬送チェーン100について、図1乃至図4に基づいて説明する。
ここで、図1は、本発明の実施例である搬送チェーン100を備えたウィケット式コンベヤ乾燥機Aの概略側面図であり、図2(A)は、図1の符号2A−2Aで視た概略図であり、図2(B)は、図1の符号2Bで視た概略図であり、図3(A)は、図3(B)の符号3Aから視た本発明の実施例である搬送チェーン100を示す側面図であり、図3(B)は、図3(A)の符号3Bから視た本発明の実施例である搬送チェーン100を示す平面図であり、図3(C)は、図3(B)の符号3Cから視た本発明の実施例である搬送チェーン100を示す側面図であり、図4(A)は、図3(A)に示す側のブシュ140と連結ピン130との接触状態を示す図であり、図4(B)は、図3(C)に示す側のブシュ140と連結ピン130との接触状態を示す図である。
【0021】
本発明の実施例である搬送チェーン100を備えたウィケット式コンベヤ乾燥機Aは、図1に示すように、内部に配設された一対のスプロケットSと、この一対のスプロケットSに掛け回された搬送チェーン100とを備えている。
搬送チェーン100には、搬送手段としてのウィケット170が取り付けられている。
そして、ウィケット式コンベヤ乾燥機Aは、搬送物がウィケット170によって搬送されながら図示しない乾燥手段によって搬送物を乾燥するように構成されている。
なお、搬送チェーン100は、図2(A)および図2(B)に示すように、乾燥機幅方向両側で一対掛け回されており、一対の搬送チェーン100が、ウィケット170の両側を支持している。
【0022】
続いて、本発明の実施例である搬送チェーン100について詳しく説明する。
本発明の実施例である搬送チェーン100は、左右に離間配置した一対の内プレート110と、一対の内プレート110の両外側に配置した一対の外プレート120と、一対の内プレート110のブシュ穴111A、111Bに圧入されるブシュ140と、ブシュ140に回転自在に挿通されて一対の外プレート120のピン穴121A、121Bに圧入される連結ピン130と、一対の外プレート120の外側にチェーン長手方向Yで所定間隔あけて回転自在に配設されチェーン長手方向Yに延びたレールR上を走行する走行用ローラ160とを備えている。
【0023】
さらに、ブシュ140の外周には、スプロケットSと噛み合うローラ150が配設されていた。
また、一対のうちの一方の内プレート110Aが、一対のうちの一方の外プレート120Aと当接する内プレート側当接部112Aを有している。
同様に、一対のうちの一方の外プレート120Aが、内プレート側当接部112Aと当接して連結ピン130を中心とした連結ピン周方向の一方への所定姿勢以上の屈曲を規制する外プレート側当接部122Aを有している。
【0024】
さらに、所定姿勢が、走行用ローラ160間で走行用ローラ160間を結ぶ直線に対してチェーン外周側へ僅かに凸となる湾曲姿勢である。
ここで、所定姿勢を僅かに凸となる湾曲姿勢とした理由は、チェーン長手方向両側に引っ張る引っ張り荷重がかかったときや、ウィケット170や搬送物が載置されたときに真っ直ぐに矯正されるようにするためである。
【0025】
また、一対の内プレート110および一対の外プレート120が、
一対のうちの一方の内プレート110AのピッチP1>一対のうちの他方の内プレート110BのピッチP3、かつ、
一対のうちの一方の外プレート120AのピッチP2≧一対のうちの他方の外プレート120BのピッチP4
または、
一対のうちの一方の内プレート110AのピッチP1≧一対のうちの他方の内プレート110BのピッチP3、かつ、
一対のうちの一方の外プレート120AのピッチP2>一対のうちの他方の外プレート120BのピッチP4
を満たす関係を有している。
【0026】
これにより、所定姿勢のときにブシュ140と連結ピン130との接触状態で搬送チェーン100の前記一方側の長さが他方側の長さより短くなるようにチェーン長手方向Yに差が生じた場合であっても、一対の内プレート110および一対の外プレート120の前記一方側のピッチP1、P2の合計の長さが一対の内プレート110および一対の外プレート120の前記他方側のピッチP3、P4の合計の長さより長くなり、全体として搬送チェーン100の前記一方側の長さと他方側の長さとの差が小さくなるまたは無になる。
【0027】
具体的には、一対の内プレート110のうちの一方の内プレート110Aが、内プレート側当接部112Aを有し、他方の内プレート110Bが、ウィケット取付部113Bを有している。
同様に、一対の外プレート120のうちの一方の外プレート120Aが、外プレート側当接部122Aを有し、他方の外プレート120Bが、ウィケット取付部123Bを有している。
【0028】
そして、図4(A)および図4(B)に示すように、ブシュ140の内周面と連結ピン130の外周面との間にクリアランス(C)が設けられている。
なお、発明を容易に理解できるように、クリアランス量Cを実際の寸法よりも強調して図示する。
通常は、チェーン長手方向両側に引っ張る引っ張り荷重がかかるため、ブシュ140と連結ピン130との接触状態は図4(A)に示す状態となる。
【0029】
ところが、チェーン幅方向Xの一方のみに内プレート側当接部112Aおよび外プレート側当接部122Aが設けられており、内プレート側当接部112Aおよび外プレート側当接部122Aが互いに接触することにより、チェーン長手方向以外の方向の力が生じる。
この力により、内プレート側当接部112Aおよび外プレート側当接部122Aが設けられている側では、ブシュ140と連結ピン130との接触位置が図4(A)の接触位置と比べて図4(B)中の下方にずれた位置となり、チェーン長手方向Yのクリアランス量がCからC’に変化する。
【0030】
つまり、チェーン幅方向Xで、内プレート側当接部112Aおよび外プレート側当接部122Aが設けられている一方側(図4(B)参照)と、内プレート側当接部112Aおよび外プレート側当接部122Aが設けられていない他方側(図4(A)参照)とでは、ブシュ140と連結ピン130との接触状態が異なる。
そして、内プレート側当接部112Aおよび外プレート側当接部122Aが設けられている一方側(図4(B)参照)が、内プレート側当接部112Aおよび外プレート側当接部122Aが設けられていない他方側(図4(A)参照)と比べて、クリアランス量Cの範囲内で差(CとC’との差)が生じた分だけチェーン長手方向Yの長さが短くなる。
【0031】
そこで、本発明では、一対の内プレート110および一対の外プレート120が、上述した関係を有している。
これにより、上述したように、所定姿勢のときにブシュ140と連結ピン130との接触状態で搬送チェーン100の前記一方側の長さが他方側の長さより短くなるようにチェーン長手方向Yに差が生じた場合であっても、一対の内プレート110および一対の外プレート120の前記一方側のピッチP1、P2の合計の長さが一対の内プレート110および一対の外プレート120の前記他方側のピッチP3、P4の合計の長さより長くなり、全体として搬送チェーン100の前記一方側の長さと他方側の長さとの差が小さくなるまたは無になる。
【0032】
さらに、一対の内プレート110および一対の外プレート120が、クリアランス量C>ピッチP1−ピッチP3、および、クリアランス量C>ピッチP2−ピッチP4を満たす関係を有している。
これにより、一対の内プレート110および一対の外プレート120の前記一方側のピッチP1、P2の合計の長さが一対の内プレート110および一対の外プレート120の前記他方側のピッチP3、P4の合計の長さよりクリアランス量Cの範囲内で長くなり全体として搬送チェーン100の前記一方側の長さと他方側の長さとの差が小さくなるまたは無になる。
さらに、(C−C’)/2>ピッチP1−ピッチP3、(C−C’)/2>ピッチP2−ピッチP4の関係を有することで、搬送チェーン100の前記一方側の長さと他方側の長さとの差がより無に近づく。
【0033】
また、一対の内プレート110および一対の外プレート120が、ピッチP3=ピッチP4を満たす関係を有している。
これにより、全体として基本的なピッチが等間隔となる。
【0034】
このようにして得られた本発明の実施例である搬送チェーン100は、一対のうちの一方の内プレート110Aが、一対のうちの一方の外プレート120Aと当接する内プレート側当接部112Aを有するとともに、一対のうちの一方の外プレート120Aが、内プレート側当接部112Aと当接して連結ピン130を中心とした連結ピン周方向の一方への所定姿勢以上の屈曲を規制する外プレート側当接部122Aを有し、所定姿勢が、走行用ローラ160間で走行用ローラ160間を結ぶ直線に対してチェーン外周側へ凸となる湾曲姿勢であり、一対の内プレート110および一対の外プレート120が、一対のうちの一方の内プレート110AのピッチP1>一対のうちの他方の内プレート110BのピッチP3、かつ、一対のうちの一方の外プレート120AのピッチP2≧一対のうちの他方の外プレート120BのピッチP4、または、一対のうちの一方の内プレート110AのピッチP1≧一対のうちの他方の内プレート110BのピッチP3、かつ、一対のうちの一方の外プレート120AのピッチP2>一対のうちの他方の外プレート120BのピッチP4を満たす関係を有していることにより、所定姿勢のときにブシュ140と連結ピン130との接触状態で搬送チェーン100の前記一方側の長さが他方側の長さより短くなるようにチェーン長手方向Yに差が生じた場合であっても、搬送チェーン100の横曲がりである所謂、うねりを抑制できる。
【0035】
さらに、ブシュ140と連結ピン130との間のクリアランス量をCとしたとき、一対の内プレート110および一対の外プレート120が、クリアランス量C>ピッチP1−ピッチP3、および、クリアランス量C>ピッチP2−ピッチP4を満たす関係を有していることにより、搬送チェーン100のうねりをより抑制できる。
【0036】
また、一対の内プレート110および一対の外プレート120が、ピッチP3=ピッチP4を満たす関係を有していることにより、スプロケットSと滑らかに噛み合うことができるなど、その効果は甚大である。
【符号の説明】
【0037】
100、 700 ・・・ 搬送チェーン
110、 710 ・・・ 一対の内プレート
110A、710A ・・・ 一方の内プレート
110B、710B ・・・ 他方の内プレート
111A、711A ・・・ ブシュ穴
111B、711B ・・・ ブシュ穴
112A、712A ・・・ 内プレート側当接部
113B、713B ・・・ ウィケット取付部
120、 720 ・・・ 一対の外プレート
120A、720A ・・・ 一方の外プレート
120B、720B ・・・ 他方の外プレート
121A、721A ・・・ ピン穴
121B、721B ・・・ ピン穴
122A、722A ・・・ 外プレート側当接部
123B、723B ・・・ ウィケット取付部
130、 730 ・・・ 連結ピン
140、 740 ・・・ ブシュ
150、 750 ・・・ ローラ
160、 760 ・・・ 走行用ローラ
170 ・・・ ウィケット
A ・・・ ウィケット式コンベヤ乾燥機
C ・・・ ブシュと連結ピンとの間の最大クリアランス
C’ ・・・ ブシュと連結ピンとの間での変化したクリアランス
P1 ・・・ 一方の内プレートのピッチ
P2 ・・・ 一方の外プレートのピッチ
P3 ・・・ 他方の内プレートのピッチ
P4 ・・・ 他方の外プレートのピッチ
R ・・・ レール
S ・・・ スプロケット
X ・・・ チェーン幅方向
Y ・・・ チェーン長手方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7