(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
前記
図24に示す乾燥装置付き石炭搬送装置では、石炭粒202がバケット209内に収容された状態で排ガス207と接触する構成であるから、バケット209内に収容されている石炭粒子層の表面側は乾燥されるが、層内部や層底部の石炭粒202は乾燥しないか、乾燥が不十分である。
【0020】
また、前記
図25に示す乾燥装置付き石炭搬送装置は、石炭粒212をコンベア214上に層状に載せて移動し、そのコンベア214の下側から上側に向けて排ガス219を流して石炭粒212を乾燥しようとするものである。従ってこの石炭搬送装置においても、コンベア214上にある石炭粒子層の表面側は乾燥されるが、層内部や層底部の石炭粒212は乾燥が不十分である。
【0021】
さらに、これら
図24および
図25に示す乾燥装置付き石炭搬送装置は、排ガスを石炭粒と接触させて乾燥しているが、元々排ガスは水分含有率が高いため、石炭粒の乾燥には不向きである。
【0022】
これら乾燥装置付き石炭搬送装置において石炭粒の乾燥を促すためには、例えばコンベアの搬送速度を遅くしたり、コンベアの長さを長くすることが考えられるが、そのために乾燥時間が長くかかって効率が悪かったり、コンベアの設置スペースを大きくしなくてはいけないなどの問題が生じる。
【0023】
また、前記
図25に示す乾燥装置付き石炭搬送装置では、石炭粒212の乾燥時に計量ができないから、石炭搬送装置とは別に計量装置が必要であり、コストならびに設置スペースの点でも問題がある。
【0024】
本発明の目的は、このような従来技術の欠点を解消し、粗粒子の乾燥が効率的に、かつ、均等にできる乾燥コンベア装置ならびにそれを備えた火力発電システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0025】
前記目的を達成するため、本発明は、
所定の間隔をおいて配置された一組の例えば駆動プーリと従動プーリなどの駆動用軸体と、
その駆動用軸体間に
コンベアを架設して、前記駆動用軸体周りに周回させて例えば石炭などの被搬送物を収容して搬送する多数の例えばエプロンなどの搬送部材を備えた乾燥コンベア装置を対象とするものである。
【0026】
そして本発明の第1の手段は、
前記搬送部材が、それの底部に例えば温風(加熱空気)などの乾燥用気体を噴出させる例えば温風吹き出し孔などの気体噴出部を設け
、上方が開口し、内側に前記被搬送物を収容する収容空間が設けられている例えばエプロンなどの流動層形成搬送部材であって、
複数個の前記流動層形成搬送部材が前記コンベア上に整列して、回動可能に取り付けられており、
その移動する流動層形成搬送部材の下方から前記乾燥用気体を供給する風箱を設け、
前記流動層形成搬送部材
の収容空間内に前記被搬送物を収容して前記風箱の上を通過することにより、前記乾燥用気体が前記気体噴出部から流動層形成搬送部材内に噴出して、
前記被搬送物を浮かせて、無方向、不規則状に流動化して当該流動層形成搬送部材内で前記被搬送物の流動層を形成しながら前記被搬送物を乾燥させ、
前記流動層形成搬送部材が前記駆動用軸体周りを上側から下側に周回するときに、前記流動層形成搬送部材が個々に傾倒して逆さまになって乾燥された前記被搬送物を流動層形成搬送部材から落下させることを特徴とするものである。
【0027】
本発明の第2の手段は前記第1の手段において、
前記流動層形成搬送部材内の流動層の空塔速度が1.2〜3.0m/sの範囲に規制されていることを特徴とするものである。
本発明の第3の手段は前記第1の手段において、
前記被搬送物の乾燥状態に応じて前記風箱に供給される前記乾燥用気体の流量または温度が調整可能になっていることを特徴とするものである。
【0028】
本発明の第
4の手段は前記第1の手段において、
前記風箱が前記被搬送物の搬送方向に沿って複数個設けられており、前記被搬送物の搬送方向上流側に配置されている上流側風箱と、前記被搬送物の搬送方向下流側に配置されている下流側風箱に供給される前記乾燥用気体の流量または温度が異なっていることを特徴とするものである。
【0029】
本発明の第
5の手段は前記第1の手段において、
当該乾燥コンベア装置の本体を格納して外気と遮断するとともに、乾燥した前記被搬送物を取り出す排出口を有するハウジングを備え、
前記流動層形成搬送部材は、
バケットまたは、
前記気体噴出部を設けた底板と、その底板の流動層形成搬送部材の移動方向下流側端部から立設した背面板を有し、流動層形成搬送部材の移動方向上流側と流動層形成搬送部材の上方が開放しており、
前記一方の駆動用軸体側から他方の駆動用軸体側に向かって延びて、前記流動層形成搬送部材の左右側面に対応する吹き抜け防止部材を前記ハウジング内に設置して、
前記流動層形成搬送部材の移動方向上流側は、隣接する1つ前の流動層形成搬送部材の背面板で塞がれ、流動層形成搬送部材の左右側面は前記吹き抜け防止部材で覆われて、流動層形成搬送部材の内側に前記被搬送物の収容空間が形成されていることを特徴とするものである。
【0030】
本発明の第
6の手段は前記第1の手段において、
前記風箱の底板は一方の端部から他方の端部に向けて低く傾斜しており、その低くなった底板の端部あるいはその低くなった底板の端部と接続している側板の下端部に、前記流動層形成搬送部材から落下した前記被搬送物を風箱から排出する落下粒子排出口が形成されていることを特徴とするものである。
【0031】
本発明の第
7の手段は前記第1の手段において、
前記一組の駆動用軸体のうちの一方の駆動用軸体の上方に、前記被搬送物を前記流動層形成搬送部材内に投入する被搬送物供給手段が設けられ、
その被搬送物供給手段は、
前記被搬送物を貯留する乾燥前ホッパと、
その乾燥前ホッパの下部に設けられた第1のゲート弁と、
その第1のゲート弁の下部に設けられた計量管部と、
その計量管部の下部に設けられた第2のゲート弁を有し、
前記被搬送物供給手段の下に前記流動層形成搬送部材が到来したことを検出する位置センサーを設け、
前記第2のゲート弁を閉じて、前記第1のゲート弁を開けて、前記乾燥前ホッパに貯留されている被搬送物の一部を前記計量管部に装填して被搬送物の計量を行い、
前記第1のゲート弁と第2のゲート弁を閉じた状態で、前記位置センサーにより流動層形成搬送部材の到来を検出すると、前記第2のゲート弁を開いて計量管部内の被搬送物を前記流動層形成搬送部材内に投入する構成になっていることを特徴とするものである。
【0032】
本発明の第
8の手段は前記第1の手段において、
当該乾燥コンベア装置の本体を格納して外気と遮断するとともに、乾燥した前記被搬送物を取り出す排出口を有するハウジングを備え、
前記ハウジング内に滞留している乾燥用気体を導入して、その乾燥用気体に含まれている飛散粒子を捕集する例えばサイクロンセパレータなどの飛散粒子捕集手段が設けられ
、
前記飛散粒子捕集手段によって捕集された粒子が、前記ハウジングの排出口から取り出された乾燥済の被搬送物とともに乾燥後ホッパに貯留されることを特徴とするものである。
【0033】
本発明の第
9の手段は前記第
8の手段において、
前記飛散粒子捕集手段を通過した湿分を含む気体の中から湿分を除去する湿分除去手段と、
その湿分除去手段を通過した気体を加熱する気体加熱手段と、
前記飛散粒子捕集手段から湿分除去手段ならびに気体加熱手段を経て前記風箱に接続されて、前記気体加熱手段で加熱された気体を前記乾燥用気体として前記風箱に供給する循環配管を備えたことを特徴とするものである。
【0035】
本発明の第10の手段は前記
第8または第9の手段において、
前記乾燥後ホッパに、貯留した被搬送物の水分含有率を所定の範囲に維持するための伝熱管が配置されていることを特徴とするものである。
【0036】
本発明の第11の手段は前記第1の手段において、
前記一組の駆動用軸体のうちの一方の駆動用軸体の上方に、前記被搬送物を前記流動層形成搬送部材内に投入する被搬送物供給手段が設けられ、
その被搬送物供給手段の下に移動して来た前記流動層形成搬送部材の気体噴出部を塞ぐ供給側閉塞部材が設置されていることを特徴とするものである。
【0037】
本発明の第12手段は前記第11の手段において、
前記一組の駆動用軸体のうちの他方の駆動用軸体と、前記被搬送物の搬送方向最下流側に配置されている最下流側風箱の間に、移動して来た前記流動層形成搬送部材の気体噴出部を塞ぐ排出側閉塞部材が設置されていることを特徴とするものである。
【0038】
本発明の第13の手段は前記第1の手段において、
当該乾燥コンベア装置の本体を格納して外気と遮断するとともに、乾燥した被搬送物を取り出す排出口を有するハウジングと、
そのハウジングの内側底面に落下した前記被搬送物を集めて前記排出口から排出する清掃手段を設けたことを特徴とするものである。
【0039】
本発明の第14の手段は前記第1の手段において、
前記被搬送物が石炭であり、前記乾燥用気体が昇温された空気であって、
当該乾燥コンベア装置の本体を格納して外気と遮断するとともに、乾燥した被搬送物を取り出す排出口を有するハウジングと、
前記乾燥用気体内の酸素濃度を検出する酸素濃度計と、
少なくとも前記ハウジング内を不活性状態にする不活性状態形成手段を設けて、
前記酸素濃度計によって検出された酸素濃度が規定値を超えると、前記不活性状態形成手段で前記ハウジング内を不活性状態にする構成になっていることを特徴とするものである。
【0040】
本発明の第15の手段は前記第1の手段において、
前記被搬送物が石炭であり、前記乾燥用気体が昇温された空気であって、
当該乾燥コンベア装置の本体を格納して外気と遮断するとともに、乾燥した被搬送物を取り出す排出口を有するハウジングと、
前記乾燥用気体内の一酸化炭素濃度を検出する一酸化炭素濃度計と、
少なくとも前記ハウジング内を不活性状態にする不活性状態形成手段を設けて、
前記一酸化炭素濃度計によって検出された一酸化炭素濃度が規定値を超えると、前記不活性状態形成手段で前記ハウジング内を不活性状態にする構成になっていることを特徴とするものである。
【0041】
本発明の第16の手段は前記第1の手段において、
前記被搬送物が石炭であり、前記乾燥用気体が昇温された空気であって、
当該乾燥コンベア装置の本体を格納して外気と遮断するとともに、乾燥した被搬送物を取り出す排出口を有するハウジングと、
前記乾燥用気体の温度を検出する温度計と、
少なくとも前記ハウジング内を不活性状態にする不活性状態形成手段を設けて、
前記温度計によって検出された温度が規定値を超えると、前記不活性状態形成手段で前記ハウジング内を不活性状態にする構成になっていることを特徴とするものである。
【0042】
本発明の第17の手段は前記第14ないし第16の手段において、
前記ハウジング内に滞留している乾燥用気体を導入して、その乾燥用気体に含まれている
被搬送物の飛散粒子を捕集する飛散粒子捕集手段と、
前記ハウジングから排出された乾燥済み
被搬送物ならびに前記飛散粒子捕集手段で捕集した
被搬送物の微粒子を貯留する乾燥後ホッパを備え、
前記酸素濃度計、一酸化炭素濃度計、温度計のいずれかの検出値が規定値を超えると、前記不活性状態形成手段で前記飛散粒子捕集手段ならびに乾燥後ホッパ内を不活性状態にする構成になっていることを特徴とするものである。
【0043】
本発明の第18の手段は前記第1の手段において、
前記被搬送物が石炭であって、
前記一組の駆動用軸体のうちの一方の駆動用軸体の上方に、前記被搬送物を前記流動層形成搬送部材内に投入する被搬送物供給手段が設けられ、
その被搬送物供給手段は、前記被搬送物を粉砕する粉砕機と、粉砕された前記被搬送物を貯留する乾燥前ホッパを有し、
その乾燥前ホッパ内の一酸化炭素濃度を検出する一酸化炭素濃度計と、
前記乾燥前ホッパ内を不活性状態にする不活性状態形成手段を設けて、
前記一酸化炭素濃度計によって検出された一酸化炭素濃度が規定値を超えると、前記不活性状態形成手段で前記乾燥前ホッパ内を不活性状態にする構成になっていることを特徴とするものである。
【0044】
本発明の第19の手段は前記第1の手段において、
前記被搬送物の原料を粉砕して被搬送物とする粉砕機を備え、
その粉砕機は、
周壁に噴出口を形成したロータと、
そのロータの周囲を取り巻くように設置された例えば粉砕機ケーシングなどの衝突受け部材を備え、
回転している前記ロータ内に供給した前記原料が遠心力により前記噴出口から噴出され、前記衝突受け部材に衝突して粉砕される構成になっていることを特徴とするものである。
【0045】
本発明の第20の手段は前記第1の手段において、
前記風箱が前記被搬送物の搬送方向の上流側から下流側に向けて第1の風箱、第2の風箱、第3の風箱が順次配置され、
各風箱に送風機と熱交換器を付設した温風供給管が接続され、
前記第1の風箱、第2の風箱、第3の風箱の上方には、周回する前記流動層形成搬送部材を介して、第1の独立フード、第2の独立フード、第3の独立フードが前記第1の風箱、第2の風箱、第3の風箱と対応して配置されて、
各独立フードにそれぞれ排気管が接続され、
前記第1の独立フードに接続されている排気管の先端が、前記第2の風箱に付設されている送風機の吸い込み口に接続され、
前記第2の独立フードに接続されている排気管の先端が、前記第3の風箱に付設されている送風機の吸い込み口に接続されていることを特徴とするものである。
【0046】
本発明の第21の手段は前記第20の手段において、
前記独立フードと独立フードの間に柔軟な板材が移動する前記流動層形成搬送部材側に向けて吊り下げられていることを特徴とするものである。
【0047】
本発明の第22の手段は前記第20の手段において、
前記被搬送物の搬送方向下流側に配置されている風箱の大きさが、被搬送物の搬送方向上流側に配置されている風箱の大きさよりも大きいことを特徴とするものである。
【0048】
本発明の第23の手段は前記第1ないし第22の手段において、前記被搬送物を褐炭であることを特徴とするものである。
【0049】
本発明の第24の手段は、
石炭を搬送するコンベア装置と、
そのコンベア装置によって搬送された石炭を燃焼して蒸気を生成する石炭焚きボイラ装置と、
その石炭焚きボイラ装置からの蒸気で回転駆動する蒸気タービンを備えた火力発電プラントにおいて、
前記コンベア装置が前記第1ないし第22の手段の乾燥コンベア装置であって、
前記蒸気タービンから抽気した蒸気で昇温した空気を前記乾燥コンベア装置の乾燥用気体として用いることを特徴とするものである。
【0050】
本発明の第25の手段は、
石炭を搬送するコンベア装置と、
そのコンベア装置によって搬送された石炭を燃焼して蒸気を生成する石炭焚きボイラ装置と、
その石炭焚きボイラ装置からの蒸気で回転駆動する蒸気タービンを備えた火力発電プラントにおいて、
前記コンベア装置が前記第1ないし第22の手段の乾燥コンベア装置であって、
前記石炭焚きボイラ装置から排出される排ガスで昇温した空気を前記乾燥コンベア装置の乾燥用気体として用いることを特徴とするものである。
【0051】
本発明の第26の手段は前記第24または第25の手段において、前記石炭焚きボイラ装置が、火炉の後部に対流伝熱部(コンべクションパス)を配置し、前記火炉で上昇した燃焼ガスが前記対流伝熱部(コンべクションパス)で下降するように流れる2パス型ボイラ装置であることを特徴とするものである。
【0052】
本発明の第27の手段は前記第24ないし第26の手段において、前記石炭が褐炭であることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0053】
本発明は前述のような構成になっており、粗粒子の乾燥が効率的かつ均等にできる乾燥コンベア装置ならびにそれを備えた火力発電プラントを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0055】
次に本発明の実施形態を図と共に説明する。先ず、乾燥コンベア装置の構成について説明する。
(第1の乾燥コンベア装置の構成)
図1は、本発明の実施形態に係る乾燥コンベア装置全体の系統図である。
この乾燥コンベア装置は同図に示すように、乾燥コンベア装置本体1と、その乾燥コンベア装置本体1に例えば石炭(褐炭)などの未乾燥の粗粒子2を供給する粗粒子供給手段3と、乾燥コンベア装置本体1に乾燥用の温風を供給する温風供給手段4と、飛散した乾燥済みの微粒子を捕集する飛散粒子捕集手段5とから主に構成されている。
前記乾燥コンベア装置本体1の構成などについては、後で説明する。
前記粗粒子供給手段3は、粗粒子2に粉砕する前の原料6を貯留する原料サイロ7と、その下に設けられて前記原料6を所定の大きさに粉砕する粉砕機8と、粉砕されて生成した粗粒子2を貯留する乾燥前ホッパ9と、その下に設けられた第1のゲート弁10と、その下に設けられた第2のゲート弁11と、前記第1のゲート弁10と第2のゲート弁11の間に設けられた計量管部12(
図2参照)とを備えている。
【0056】
図2に示すように、前記第1のゲート弁10ならびに第2のゲート弁11は、それぞれシリンダ13で個別に駆動できるようになっている。また、前記計量管部12の下端部は、乾燥コンベア装置本体1(後述のハウジング20)内に挿入されている(
図2参照)。
【0057】
前記温風供給手段4は、吸引ダンパ14と送風機15と熱交換器16とを備え、熱交換器16に供給された空気は例えば蒸気タービン80(
図8参照)から抽気した蒸気などによって加熱される。
前記飛散粒子捕集手段5は、サイクロンセパレータ18と、その下に設けられたロータリーシール19を有している。
【0058】
図2は前記乾燥コンベア装置本体1の概略構成図、
図3はその乾燥コンベア装置本体1に用いるエプロンの斜視図、
図4は
図2A−A線上の拡大断面図、
図5は
図2B−B線上の拡大断面図、
図6はエプロンの配置状態を示す概略側面図である。
【0059】
この乾燥コンベア装置本体1は、粗粒子2の搬送方向に沿って延びたハウジング20の内側の高さ方向の略中間位置に、エプロンコンベア21が配置されている。このハウジング20は、エプロンコンベア21を格納して、外気と遮断されている。前記エプロンコンベア21は、所定の間隔をおいて配置された駆動プーリ22とテンションプーリ(従動プーリ)23の間に張架されている。エプロンコンベア21の張力はテンションプーリ23に付設されたテンション設定器24によって設定でき、これによってエプロンコンベア21の伸びや蛇行の調整ができる。
【0060】
エプロンコンベア21はチェーンコンベアから構成されており、その上には多数のエプロン25が整列して、回動可能に取り付けられている。このエプロン25は
図3に示すように、底板26と、その底板26のエプロン25の移動方向下流側端部から立設した背面板27と、補強のために底板26と背面板27を両側面から連結した側面形状が略三角形をした補強板28a,28bを有している。
【0061】
このエプロン25の移動方向上流側と、左右側面の大半と、上方が解放されている。
図3ないし
図6に示すように、前記エプロン25の移動方向上流側は、隣接する1つ前のエプロン25の背面板27で塞がれる。エプロン25の左右側面は、その左右側面に対応するようにハウジング20内に設けられた板状の吹き抜け防止部材41a,41bによって覆われている。この吹き抜け防止部材41は
図2や
図6に示すように、駆動プーリ22とテンションプーリ23の間隔と略同じ長さ延びている。なお、
図3では図面が複雑になるため、手前側の吹き抜け防止部材41bの図示を省略している。
【0062】
前記底板26と、その底板26から立設した背面板27と、隣接する1つ前のエプロン25の背面板27と、吹き抜け防止部材41a,41bによって、エプロン25の内側に粗粒子2を収容する収容空間32が形成される(
図4参照)。
図4や
図5に示すように、吹き抜け防止部材41a,41bの上端部は開放状態になっている。
【0063】
前記底板26には、多数の温風吹き出し孔29が形成されている。本実施形態では底板26として、多数の温風吹き出し孔29を形成したパンチングプレートを使用したが、金網などでもよい。さらに
図4に示すように各エプロン25の左側の補強板28aの下端部近くには、エプロン25の到来を検出するための板状の被検出部31が設けられている。また、エプロン25が計量管部12の下に来たことを検出するための位置センサー43が、エプロン25(被検出部31)の近くに固定されている。
【0064】
本実施形態の場合、テンションプーリ23が配置されている側が粗粒子2の供給側、駆動プーリ22が配置されている側が粗粒子2の排出側となっており、粗粒子2はテンションプーリ23から駆動プーリ22の方向に間欠的に搬送され、矢印X(
図2参照)がその搬送方向を示している。
【0065】
そのため
図2に示すように、テンションプーリ23の上方のハウジング部分では、前記粗粒子供給手段3の計量管部12の下端部が貫通して、エプロン25近くまで延びている。一方、駆動プーリ22の下方のハウジング部分には、乾燥済みの粗粒子2の排出口33が形成されている。
【0066】
後述するように前記計量管部12の下端部から粗粒子2を落下して、前記エプロン25の収容空間32に収容するとき、粗粒子2の一部がエプロン25の温風吹き出し孔29からエプロンコンベア21内に落下することがある。これを防止するため、
図2ならびに
図4に示すように、計量管部12の下側に来たエプロン25の温風吹き出し孔29を塞ぐための供給側閉塞板34aが、エプロン25の下に設置されている。また、駆動プーリ22の近傍にも、粗粒子2が温風吹き出し孔29から落下するのを防止するための排出側閉塞板34bが設置されている。
【0067】
図2に示すように、供給側閉塞板34aと排出側閉塞板34bの間には、粗粒子2の搬送方向Xに沿って複数個の風箱35がエプロン25の下側に連続して設置されている。風箱35は
図5に示すように、一方の端に向けて低く傾斜した底板36と、その底板36から立設した両側板37a,37bと、短い方の側板37aに取り付けられた温風導入管38を有し、風箱35の上方開口部はエプロン25の底板26と対向している。
【0068】
前記温風導入管38を有する短い方の側板37aとは反対側の長い方の側板37bの下端部付近あるいは底板36の低い方の端部には、落下粒子排出孔39が設けられている。また、
図1に示すように、各風箱35の温風導入管38には前記温風供給手段4から延びた温風供給管40がそれぞれ接続されている。
【0069】
さらにハウジング20の内側底面上には、清掃用チェーンコンベア44がハウジング20の長手方向に沿って配置されている。この清掃用チェーンコンベア44は駆動プーリ45と従動プーリ46によって、ハウジング20の内側底面を掃くように常時あるいは所定の時間間隔で矢印Y方向に回転駆動される。
【0070】
本実施形態では、ハウジング20の内側底面が水平状態になっているが、ハウジング20の内側底面を排出口33側に向けて若干低く傾斜するように設けると、前記清掃用チェーンコンベア44による清掃効率が良好になる。
【0071】
図2に示すように、ハウジング20の上面部には、サイクロンセパレータ18側に延びる微粒子捕集配管47が接続されている。一方、ロータリーシール19から延びた微粒子送り配管48は、ハウジング20の外から排出口33側に延びている。
【0072】
また
図1に示すように、サイクロンセパレータ18によって石炭微粒子から分離された空気は、空気戻し配管52と送風機53により熱交換器16の上流側に戻される。
【0073】
次にこの乾燥コンベア装置の動作について説明する。
(乾燥コンベア装置の動作)
図1に示すように、原料サイロ7に貯留されている例えば水分含有率が40〜50重量%程度の湿った褐炭からなる原料6が粉砕機8で粉砕されて、粒子の粒径が主に1〜10mmの粗粒子2を主体とする、平均粒径が2mm程度の粒子となり、乾燥前ホッパ9に貯留されている。
【0074】
なお、上述の粒子の粒径分布は、原料炭の性状や粉砕の程度等、種々の条件に応じて変動するが、粒径150μm以下の微粒子も含まれる。
【0075】
そして、下側の第2のゲート弁11を閉じた状態で上側の第1のゲート弁10を開けると、乾燥前ホッパ9内の粗粒子2の一部が第1のゲート弁10を通り、計量管部12(
図2参照)内に充填され、計量管部12の容積に相当する粗粒子2の計量がなされる。計量管部12内に粗粒子2を充填した後、第1のゲート弁10を閉じる。これらゲート弁10,11の開閉動作は、個別に付設されたシリンダ13(
図2参照)によってなされる。
【0076】
エプロンコンベア21は
図2に示すように、搬送方向Xに間欠的若しくは連続的に周回移動しており、計量管部12の下側にエプロン25が来たことを
図4に示すように、エプロン25に付設された被検出部31と位置センサー43の共働で検出する。エプロン25が計量管部12の下側に来たときには、
図4に示すように当該エプロン25の全ての温風吹き出し孔29は供給側閉塞板34で塞がれている。
【0077】
この状態で前記第2のゲート弁11を開くと、計量管部12内に貯留されていた粗粒子2がエプロン25の収容空間32内に落下する。粗粒子2の落下後、第2のゲート弁11は自動的に閉じ、次の計量に備えられる。前述のようにエプロン25の温風吹き出し孔29は閉塞板34で塞がれているから、投入された粗粒子2が温風吹き出し孔29から落ちることはなく、計測量が適正に維持されている。
【0078】
図4は、このように計量して切り出された粗粒子2をエプロン25内に収容した状態を示しており、この時点ではエプロン25内には後述する温風49は吹き込まれていないから、粗粒子2によって形成された層は静止層になっており、収容空間32の上部には十分な空間部50が残っている。
【0079】
図1ならびに
図5に示すように、温風供給手段4(
図1参照)によって生成、供給された温風49は各風箱35に吹き込まれている(
図5参照)。一方、前記エプロン25の移動に伴ってそれの底板26に形成されている温風吹き出し孔29が閉塞板34を通過すると風箱35内で温風吹き出し孔29が開放され、風箱35内に導入された温風49がエプロン25の底部から吹き込み、粗粒子2が流動化51し始める。
【0080】
単純に温風49が粗粒子2の間を通過するだけでは粗粒子2の一面だけしか乾燥されないが、本実施形態のように粗粒子2を浮かせて無方向、不規則状に流動化51することにより、粗粒子2の全面を均一にかつ迅速に乾燥させることができる。
流動化して吹き上がった粗粒子2がエプロン25から吹き出ないように、前記吹き抜け防止部材41a,41bが設けられている。
【0081】
乾燥する過程で粗粒子2は比重が徐々に低下して軽くなるから、
図2に示すように風箱35は粗粒子2の搬送方向Xに沿って複数に分割され、粗粒子2の比重に見合って温風49の風量の調整がなされている。この温風49の調整をしないと、乾燥途中で粗粒子2の一部が風箱35から吹き出して落下したり、自然発火の危険があるため好ましくない。粗粒子2の乾燥状態に見合った温風49の風量調整については、後で説明する。
【0082】
粗粒子2は複数の風箱35の上を通過することにより所望の水分含有率(本実施例に係る褐炭の場合は、5〜10重量%程度)まで乾燥され、
図2に示すようにエプロン25が駆動プーリ22の周囲を上側から下側に回るときに自動的に傾倒されて、最終的には逆さまの状態になるから、乾燥された粗粒子2は排出口33側に落下して、ハウジング20から取り出される。
【0083】
図2に示すように、駆動プーリ22の斜め下方には、エプロン25に残っている粗粒子2があるとそれを強制的に吹き落とすための複数本の空気噴出ノズル42が設けられている。そして逆さになったエプロン25がこの空気噴出ノズル42の下を通過するようになっており、空気噴出ノズル42から高速噴射された空気はエプロン25の底板26に形成されている温風吹き出し孔29を通ってエプロン25内に付着している粗粒子2を吹き落とす。この空気の高速噴射は温風吹き出し孔29ならびにエプロン25の内面の清掃も兼ねており、エプロン25内での粗粒子2の適正な流動化状態を常に維持することができる。
【0084】
このようにしてハウジング20の底面に落ちた粗粒子2、あるいは風箱35の落下粒子排出孔39からハウジング20の底面に落ちた粗粒子2は、清掃用チェーンコンベア44により排出口33側に掃き出される。前記風箱35の落下粒子排出孔39からハウジング20の底面に落ちる粗粒子2も温風49と十分に接触して乾燥しているから、他の乾燥した粗粒子2と一緒に排出口33から排出しても構わない。
【0085】
一方、温風49により舞い上がった微粒子は微粒子捕集配管47を通ってサイクロンセパレータ18で捕集され、ロータリーシール19を経て、微粒子送り配管48によりハウジング20の排出口33側に送られる。なお、温風49により舞い上がった微粒子は粗粒子2に較べて乾燥時間が速いので、サイクロンセパレータ18へ搬送される過程で乾燥は完了しているから、微粒子送り配管48から直接排出して、他の乾燥した粗粒子2と混合しても支障はない。
【0086】
図2に示すように、最終の風箱35(
図2において右端の風箱35)を駆動プーリ22に隣接することは構造上難しいから、最終の風箱35と駆動プーリ22の間には必然的に隙間ができる。そのため本実施形態では、最終の風箱35と駆動プーリ22の間に排出側閉塞板34bを設置して、その間を通るエプロン25の温風吹き出し孔29を塞ぐことにより、乾燥された粗粒子2が駆動プーリ22の近辺に落下することを防止している。
【0087】
図7は、底板に多数の温風吹き出し孔を形成し、上方が開口した流動層形成箱体を作成し、その箱体内で褐炭粒子を流動化させて乾燥した場合の、褐炭粒子の水分含有率の変化を示す特性図である。
【0088】
図中の黒丸印は乾燥前の水分含有率が53重量%で平均粒径が2mmのライン炭(ドイツ産)を使用し、黒四角印は乾燥前の水分含有率が43重量%で平均粒径が2mmのバツロナ炭(スマトラ/インドネシア産)を使用した場合を示している。両者とも温風を送給する前の前記箱体内での褐炭層厚は50mm、温風の温度は115℃、温風の流速は50L/minに設定して実験を行なった。
【0089】
この図に示すように褐炭の産地によって水分含有率は大きく異なるが、前述の温風を前記温風吹き出し孔から箱体内に吹き出しながら、箱体内の褐炭粒子を流動化させて乾燥すると、5分後には両方の褐炭粒子とも水分含有率は10重量%以下まで急激に下がり、乾燥時間10分後には水分含有率は5重量%まで下がった。これは褐炭粒子の流動化による乾燥の効果であると考えられる。
なお、本発明者らの他の実験で、温風(乾燥空気)の温度は約110〜160℃、温風の流速は約40〜100L/minの範囲が好ましいことが分かった。
【0090】
ところで、粒子(流動媒体)の流動状態に関する指標として、媒体が充填されていない塔内の断面平均流速、即ち、塔内を通過する空気の体積流量を塔断面積で除した値として示される空塔速度がある。
【0091】
この空塔速度が流動化開始速度(Umf)より小さい条件では、空気が媒体の隙間を流れるのみで媒体は静止状態となる。
【0092】
安定して圧力損失の小さい流動層を形成するため、一般的には空塔速度を0.8〜1.2m/sとすることが多い。
【0093】
一方、流動層における乾燥の観点からは、空塔速度を高めるほど短時間で乾燥することができ、装置のコンパクト化を図ることができる。
【0094】
空塔速度を粒子の粒子径と質量に依存する浮遊速度(Ut、以下、終末速度と称することもある)よりも高めると、粒子は浮遊状態となって飛散し始める。これに伴い、流動層の圧力損失も増大する。なお、その前段階で媒体全体が塊状での上昇・落下と崩壊を繰り返すスラッギングと呼ばれる状態となり、圧力が変動し不均一な状態となる場合がある。
【0095】
本発明の実施例に係る乾燥コンベア装置には、効率良く乾燥を行える粒子径として、平均粒径2mm、最大粒径10mm以下程度に粗粉砕した石炭を使用する。
【0096】
しかし、前記した流動層の一般的な空塔速度の範囲0.8〜1.2m/sでは、搬送部材であるエプロン25内に局部的に流動化しない流動停滞域が発生する場合があることを実験的に確認した。
【0097】
具体的には、粗粉砕されてコンベア上に供給された直後の粒子中の水分が多い段階において、エプロン25の底板26と背面板27および補強板28a,28bとが接合する隅部近傍に流動停滞域が発生した。
なお、搬送部材はエプロン25に限らず、他の形状、例えばバケット状のものでも同様である。
【0098】
この流動停滞域では、揮発分の多い褐炭などの石炭を使用する場合には、乾燥用空気の熱により石炭が蓄熱して自然発火する、所謂、熾火燃焼を発生する可能性がある。そこで、エプロン25内の粒子の流動状態に関し、流動停滞域を発生させない空塔速度で運用する。
【0099】
具体的には、収容空間32内の空塔速度を1.2〜3.0m/s、好ましくは1.8〜2.5m/sとすれば、流動停滞域の発生が防止でき、圧力損失の増大も最小限に抑制できる。
【0100】
このように一般的な流動層よりも高い空塔速度にすることで、収容空間32内の乾燥褐炭粒子を積極的に分級して、乾燥を促進することもできる。
【0101】
前述のように、粗粉砕された粒子には粒径150μm以下の微粒子も含まれ、特定の炭種について前記の平均粒径2mm、最大粒径10mm以下程度に粗粉砕した場合には全体の2重量%程度を占める。
【0102】
流動層内では、粒子が乾燥用気体と接触して乾燥が進行する過程で互いに衝突を繰り返しつつ、崩壊して粒径が小さくなっていく。このような微細化の進行により、最終的に乾燥コンベア装置から排出される乾燥炭(例えば、水分10重量%以下)のうち、粒径150μm以下の微粒子の割合は全体の約20重量%程度に達する。
【0103】
ここで、温風の空塔速度<終末速度である粒子は、収容空間32内で流動しながら乾燥される。水分が減少して軽くなり、温風の空塔速度>終末速度となった粒子は、収容空間32から飛散する。
【0104】
粒径の小さな粒子は、粒径の大きな粒子よりも乾燥され易く、水分の減少に伴い、短時間で温風の空塔速度>終末速度の条件に到達する。
【0105】
飛散する粒子は、収容空間32内での流動・乾燥に加えて、飛散移動過程でも温風の残熱で乾燥される。
【0106】
粒径の小さな粒子が飛散した後に、流動層に残留する粒径の大きな粒子は、粒径の小さな粒子が存在しない分、相対的により多くの温風で乾燥されることになる。従って、全体として乾燥時間の短縮に繋がる。
【0107】
図8は、本発明の実施形態に係る乾燥コンベア装置を火力発電システムに適用した場合の第1の適用例を示す系統図である。
【0108】
本発明は、火力発電システムのボイラ装置として、火炉の後部に対流伝熱部(コンべクションパス)を配置し、火炉で上昇した燃焼ガスがそのコンべクションパスで下降するように流れる、所謂、2パス型ボイラ装置と、火炉の上部にコンべクションパスを連続的に配置して一体的な構造とし、火炉で上昇した燃焼ガスがそのコンべクションパスでさらに上昇するように流れるタワー型ボイラ装置への適用が可能である。
【0109】
本図は、2パス型ボイラ装置に適用した例を示すものである。
従来、褐炭のように高水分の石炭を燃料として直接燃焼させるボイラ装置では、燃焼性・着火性の観点から、火炉内でファイヤーボールを形成させて燃焼を行う必要があった。従って、火炉水平断面が略正方形で、コーナ部にバーナを配置してファイヤーボールを形成させる燃焼方式のタワー型のボイラ装置が採用されてきた。
【0110】
高水分の石炭を燃料として直接燃焼させるボイラ装置では、石炭中の水分の蒸発により、排ガス量が増加する分、火炉とコンべクションパスの容量が大きくなる。
【0111】
タワー型のボイラ装置は、コンべクションパスと火炉が連続的・一体的に構成され、両者の断面積がほぼ同一であることから、コンべクションパスの断面積を最適なガス流速に合わせて設計できないため、全体としてさらにボイラ内容積が大きくなる傾向にある。
【0112】
これらのことから、高水分の石炭を燃料として直接燃焼させるタワー型のボイラ装置は、装置の高さが高く、1000MW級のボイラ装置では約160mに達する。
【0113】
一方、褐炭のような高水分の石炭でも本発明の乾燥コンベア装置を適用して水分を低減すれば、火炉内でファイヤーボールを形成しなくとも燃焼性・着火性が問題となることはない。従って、火炉水平断面を略正方形だけでなく、長方形とすることもできる。
【0114】
このため、火炉壁面の一面もしくは対向する2つの壁面に複数段・複数列のバーナを配置して個々のバーナ毎に火炎を形成する燃焼方式の2パス型ボイラ装置が可能となる。
【0115】
この2パス型ボイラ装置では、断面熱負荷を火炉幅方向で調整できる利点がある。さらに、コンべクションパスが火炉と一体化していないため、コンべクションパスの構造を燃焼ガス流速に応じて最適な寸法に設計できる。従って、ボイラ装置のコンパクト化を図れる利点がある。
【0116】
(第1の火力発電システムの概略構成)
乾燥により所望の水分含有率(本実施形態では、10重量%)に調整された乾燥済み褐炭粒子61は、乾燥後ホッパ62に貯留されている。この乾燥済み褐炭粒子61は、ロータリーシール63ならびにファンミル64を介して石炭焚きボイラ装置65のバーナ(図示せず)に気流搬送される。
【0117】
前記ロータリーシール63は2段式になっており、給炭指令信号に基づいて開閉するようになっている。
前記ファンミル64は装置内部に回転衝撃部材(粉砕子)としてファンを備えており、このファンは前述の粉砕子と気流搬送手段の機能を兼ねており、褐炭などの粉砕に好適なミルである。このファンミル64には高温の燃焼用空気66が供給され、ファンミル64によってさらに微粉になった褐炭粒子が燃焼用空気66に同伴されてボイラ装置65に搬送される。
【0118】
前記乾燥後ホッパ62から乾燥済み褐炭粒子61がファンミル64内に投入されると、それに伴ってファンミル64内の高温燃焼用空気66がロータリーシール63の出口ダンパ付近まで流れ込み、温度が上昇する。この温度上昇に伴い、乾燥後ホッパ62に貯留されている乾燥済み褐炭粒子61が自然発火する危険性がある。そのため本実施形態では、乾燥後ホッパ62とファンミル64の間の配管に冷空気115を供給して、乾燥済み褐炭粒子61の自然発火を防止している。
【0119】
一方、燃焼用空気66は、押し込み送風機(FDF)67により空気予熱器68を通ってボイラ装置65のウインドボックス69に供給され、前記褐炭粒子61の燃焼に関与する。この燃焼により生成した排ガスは前記空気予熱器68、第1熱交換器70、電気集塵機(EP)71、誘引送風機(IDF)72、第2熱交換器73ならびに脱硫装置74などを経て、煙突75から大気へ放出される。
【0120】
前記第1熱交換器70と、第2熱交換器73と、両者の間に設置された熱媒体タンク76と、加温循環ポンプ77と、後述する温風供給手段側に配置された第3熱交換器78と、熱媒体循環配管79と、これらの間を循環する熱媒体(図示せず)によって第1の温風熱源系統が構成されている。
【0121】
一方、低圧蒸気タービン80で仕事を終えた蒸気は復水器81に送られるが、その蒸気の一部を抽気して第4熱交換器82に送り、その第4熱交換器82を経由した後に前記復水器81に送られる。図中の83は、復水ポンプである。
【0122】
前記第4熱交換器82と、熱媒体タンク84と、加温循環ポンプ85と、後述する温風供給手段側に配置された第5熱交換器86と、熱媒体循環配管87と、これらの間を循環する熱媒体(図示せず)によって第2の温風熱源系統が構成されている。また、前記熱媒体循環配管87の途中には、前記ボイラ装置65で生成した加熱蒸気88の一部を使用して、前記熱媒体循環配管87中を循環する熱媒体の温度調整を行なう温度調整部89が設けられている。
【0123】
なお、前記熱媒体循環配管87の一部は伝熱管として前記乾燥後ホッパ62内に敷設されており、ホッパ62内に貯留されている乾燥済み褐炭粒子61の温度調節を行なうことにより、褐炭粒子61の再吸湿を抑制して水分含有率を所定の範囲内に維持している。特に褐炭は多孔質構造を有しているため、多くの水分を保有し易く、また、乾燥することにより吸湿性が現れる。
【0124】
本実施形態では前記第2の温風熱源系統を構成する熱媒体循環配管87の一部を前記乾燥後ホッパ62内に敷設したが、前記第1の温風熱源系統の熱媒体循環配管79の一部を前記乾燥後ホッパ62内に敷設することも可能である。
【0125】
原料サイロ7から供給された塊状の褐炭60は、複数の粉砕機8a,8b,8cならびに振動ふるい90によって1mm程度の粒径まで粉砕されて、粗粒子2として乾燥前ホッパ9に投入される。そして、乾燥コンベア装置1の搬送タイミングと同期するようにゲート弁10,11を個別に駆動して、前記乾燥前ホッパ9から粗粒子2の定量切り出しを行ってエプロン25内に投入する。
【0126】
一方、エプロン25の下部から供給された温風49によって流動化して乾燥(除湿)された乾燥済み褐炭粒子61は、乾燥コンベア装置本体1の排出口33から前記乾燥後ホッパ62に投入される。この乾燥後ホッパ62には褐炭粒子61の層高を検出するためのレベルセンサー91が設けられており、このレベルセンサー91からの検出信号に基づいて、乾燥コンベア装置本体1の駆動プーリ22を回転するモータ92の回転制御(ON/OFF制御)がなされている。前記褐炭粒子61の層高制御により、真空保持のためのホッパ62内の最低炭層厚が維持される。
【0127】
前記粗粒子2の乾燥(除湿)により湿分と微粒子を含んだ温風は微粒子捕集配管47によりサイクロンセパレータ18に導入され、微粒子はサイクロンセパレータ18で分離されて、前記乾燥後ホッパ62に供給される。
【0128】
サイクロンセパレータ18を出た温風は温風循環配管93により、第6熱交換器94を経由して熱回収され、その後に汽水分離器95に導入されて、循環する冷却水96により温風中の湿分は復水として回収される。符号97は復水タンクであり、この復水タンク97に溜められた復水は水処理装置(図示せず)に送られて適切な処理がなされる。
【0129】
汽水分離器95を通過した空気はミストセパレータ98により更に除湿され、その後、前記第6熱交換器94を経由して加熱され、温風循環ファン99で昇圧されて乾燥コンベア装置本体1に供給される。符号112は、前記ミストセパレータ98通過後の空気の一部を吸引する真空ポンプである。
【0130】
褐炭は自然発火の危険性があるから、窒素発生装置本体100と、発生した窒素ガスを溜める窒素リザーバ101と、窒素ガスを温風循環配管93ならびに前記ファンミル64に供給する窒素ガス供給配管102と、その窒素ガス供給配管102の途中に設けられた窒素ガス供給バルブ103と、温風循環配管93の途中に設けられた酸素濃度計104を備えている。
【0131】
そして褐炭を使用する場合、前記酸素濃度計104で温風中の酸素濃度を監視して、酸素濃度が規定値よりも高くなると、窒素ガス供給バルブ103を開いて窒素ガスを注入することにより、温風の循環系統ならびにファンミル64の内部を褐炭が自然発火しない不活性な状態にすることができる。
【0132】
また、例えば温風循環配管93などの温風の流通経路上にCO濃度計105aを設置するとともに、イナート蒸気106が必要な箇所、例えば乾燥コンベア装置本体1、乾燥前ホッパ9、サイクロンセパレータ18、乾燥後ホッパ62、ファンミル64などにイナート蒸気配管107を接続している。
【0133】
さらに、前記窒素ガス供給配管102の一部にバルブ108を介してイナート蒸気バックアップ配管109を接続し、さらにそのイナート蒸気バックアップ配管109の先端部を前記イナート蒸気配管107に接続している。
【0134】
さらにまた、乾燥前ホッパ9にもCO濃度計105bが設置されており、また、乾燥コンベア装置本体1の出口温風温度を計測するための出口温風温度計113が設置されている。前記CO濃度計105a,105bならびに出口温風温度計113の検出信号は切替器114で定期的に取り込まれるようになっている。
【0135】
例えば火力発電システムがトリップした際、先ず、系内の酸素濃度が所定の値に低下するまで前述の窒素ガス供給系統を用いて必要箇所に窒素ガスを注入して、系内を不活性な状態にする。万一、CO濃度が上昇した場合は、再度、窒素ガスを規定の酸素濃度になるまで注入する。
【0136】
また、乾燥コンベア装置本体1の出口温風温度が上昇した場合は、温度が所定の値に低下するまでイナート蒸気106を連続して注入する。このイナート蒸気106は、例えばボイラ装置65から得られた補助蒸気を減圧、減温して利用ことができる。
【0137】
図8に示すように褐炭60を粉砕機8で粉砕する際、原料中に混入している石や鉄鉱石などの不純物により火花が発生して、乾燥前ホッパ9に貯留されている粗粒子2が自然発火することも予想されるから、前述のように乾燥前ホッパ9にもCO濃度計105bが設置されている。そしてホッパ内のCO濃度を監視しており、粗粒子2の自然発火の予兆があると、乾燥前ホッパ9内にイナート蒸気106を注入して自然発火を未然に防止している。
【0138】
図9は、
図8で示した火力発電システムにおける温風の制御系統を説明するための要部拡大系統図である。
【0139】
前述のように粗粒子2の乾燥が進行する過程で、粗粒子2中の水分が徐々に少なくなって軽くなるから、風箱35の位置によって粗粒子2の乾燥程度(比重)に見合う風量の温風49を供給する必要がある。
【0140】
そこで本実施形態では、粗粒子搬送方向Xの上流側から下流側に向って風箱35が風箱35a,35b,35c,35dの4つに分かれており、その風箱35に温風を送る温風循環配管93も途中から第1温風循環配管93aと第2温風循環配管93bの2系統に分岐されている。そして前記第1温風循環配管93aが搬送方向下流側の2つの風箱35c,35dに接続され、前記第2温風循環配管93bが搬送方向上流側の2つの風箱35a,35bに接続されている。
【0141】
また、前記第1温風循環配管93aの途中には、排ガスの熱を利用する前記第3熱交換器78(
図5参照)と、その第3熱交換器78の温風流れ方向上流側に配置された第1バルブ110aと、第3熱交換器78の温風流れ方向下流側に配置された第1温度計111aが設けられている。同様に、前記第2温風循環配管93bの途中には、蒸気タービン80から抽気した蒸気の熱を利用する前記第5熱交換器86(
図5参照)と、その第5熱交換器86の温風流れ方向上流側に配置された第2バルブ110bと、第5熱交換器86の温風流れ方向下流側に配置された第2温度計111bが設けられている。
【0142】
このように本実施形態では、複数の風箱35を粗粒子搬送方向上流側の風箱35a,35bと下流側の風箱35c,35dの2つのグループに分け、上流側の風箱35a,35bに供給する温風49の風量制御は、第2温度計111bの検出信号を監視して第2バルブ110bの開度調整によって行なう。また、下流側の風箱35c,35dに供給する温風49の風量制御は、第1温度計111aの検出信号を監視して第1バルブ110aの開度調整によって行なう構成になっている。
下流側の風箱35c,35dに供給する温風49の風量は、上流側の風箱35a,35bに供給する温風49の風量よりも少なく設定されている。
【0143】
本実施形態では、温風49の熱源として排ガスの熱と蒸気タービン80から抽気した蒸気の熱を利用しており、一般に蒸気タービン80から抽気した蒸気の方が排ガスよりも高温であるから、蒸気タービン80から抽気した蒸気の熱を利用して、粗粒子搬送方向上流側の風箱35a,35bに供給する温風49の温度制御を行い、粗粒子搬送方向下流側の風箱35c,35dに供給する温風49の温度制御を排ガスの熱を利用して行なっている。
なお、本実施形態では前記第3熱交換器78と第5熱交換器86が、
図1に示す熱交換器16に対応している。
【0144】
本実施形態に係る乾燥コンベア装置本体1は1台の乾燥時間が数分程度となるように、粗粒子2の切り出し量、乾燥コンベア装置本体1の搬送速度、温風49の風量ならびに温度などの乾燥条件が設定されている。
また、乾燥コンベア装置本体1は1台ではなく複数台並設して、各乾燥コンベア装置本体1から得られた乾燥済み褐炭粒子61を乾燥後ホッパ62に集めるシステムになっている。
【0145】
図10は、本発明の実施形態に係る乾燥コンベア装置を火力発電システムに適用した場合の第2の適用例を示す系統図である。
【0146】
(第2の火力発電システムの概略構成)
乾燥後ホッパ62に貯留されている乾燥済み褐炭粒子61は、ロータリーシール63を介してファンミル64に供給される。このファンミル64には高温の燃焼用空気66が供給され、ファンミル64のファンによってさらに微粉になった褐炭粒子が燃焼用空気66に同伴されてボイラ装置65に搬送される。
【0147】
ファンミル64からの伝熱によってホッパ62内の乾燥済み褐炭粒子61が自然発火する虞があるため、ホッパ62とファンミル64の間の配管に冷空気115が供給される。
【0148】
一方、燃焼用空気66は、押し込み送風機(FDF)67により空気予熱器68を通ってボイラ装置65のウインドボックス69に供給され、前記褐炭粒子61の燃焼に関与する。この燃焼により生成した排ガスは前記空気予熱器68、第1熱交換器70、電気集塵機(EP)71、誘引送風機(IDF)72、第2熱交換器73ならびに脱硫装置74などを経て、煙突75から大気へ放出される。
【0149】
前記第1熱交換器70と、第2熱交換器73と、両者の間に設置された熱媒体タンク76と、加温循環ポンプ77と、後述する温風供給手段側に配置された第3熱交換器78と、熱媒体循環配管79と、これらの間を循環する熱媒体(図示せず)によって第1の温風熱源系統が構成されている。
【0150】
一方、低圧蒸気タービン80で仕事を終えた蒸気は復水器81に送られるが、その蒸気の一部を抽気して前記第3熱交換器78の温風供給方向下流側に配置された第6熱交換器116に送る。第6熱交換器116で熱交換されて生成したドレンはドレンタンク117、ドレンポンプ118ならびに低圧ヒータドレンタン119を経て、復水ポンプ83からの復水とともに系外に排出される。
【0151】
前記低圧蒸気タービン80から抽気した蒸気を第6熱交換器116に供給する蒸気供給配管120と、その第6熱交換器116によって第2の温風熱源系統が構成されている。
【0152】
原料サイロ7から供給された塊状の褐炭60は、複数の粉砕機8a,8bならびに振動ふるい90によって1mm程度の粒径まで粉砕されて、粗粒子2として乾燥前ホッパ9に投入される。
【0153】
前記振動ふるい90によって分けられた木片などのバイオマスはバイオクラッシャ121によって粉砕されて、粗粒子2とともに乾燥前ホッパ9に投入される。そして、乾燥コンベア装置1の搬送タイミングと同期するようにゲート弁10,11を個別に駆動して、前記乾燥前ホッパ9から粗粒子2の定量切り出しを行ってエプロン25内に投入する。
【0154】
一方、温風49用の空気は空気取り入れ口122から吸引ダンパ14と送風機15により取り入れられ、前記第3熱交換器78と第6熱交換器116によって加熱されて温風49となり、各エプロン25の下部から供給される。
【0155】
本実施形態では、温風49の熱源として、前記第3熱交換器78による排ガスの熱と、前記第6熱交換器116による蒸気タービン80から抽気した蒸気の熱の両方を利用しているが、一方の、例えば蒸気タービン80から抽気した蒸気の熱だけを利用して温風49を生成することも可能である。
【0156】
温風49によって流動化して乾燥された乾燥済み褐炭粒子61は、乾燥コンベア装置本体1の排出口33から前記乾燥後ホッパ62に投入される。この乾燥後ホッパ62には褐炭粒子61の層高を検出するためのレベルセンサー91が設けられており、このレベルセンサー91からの検出信号に基づいて、乾燥コンベア装置本体1の駆動プーリ22を回転するモータ92の回転制御(ON/OFF制御)がなされている。前記褐炭粒子61の層高制御により、真空保持のためのホッパ62内の最低炭層厚が維持される。
【0157】
前記粗粒子2の乾燥により微粒子を含んだ温風は微粒子捕集配管47によりサイクロンセパレータ18に導入され、微粒子はサイクロンセパレータ18で分離されて、前記乾燥後ホッパ62に供給される。
一方、サイクロンセパレータ18を出た温風は排気配管123ならびに排気ファン124を通リ、前記脱硫装置74の上流側配管に排気される。
【0158】
褐炭は自然発火の危険性があるから、窒素発生装置本体100と、発生した窒素ガスを溜める窒素リザーバ101と、窒素ガスを温風供給配管124ならびに前記ファンミル64に供給する窒素ガス供給配管102と、その窒素ガス供給配管102の途中に設けられた窒素ガス供給バルブ103と、排気配管123の途中に設けられた酸素濃度計104を備えている。
【0159】
そして褐炭を使用する場合、前記酸素濃度計104で温風中の酸素濃度を監視して、酸素濃度が規定値よりも高くなると、窒素ガス供給バルブ103を開いて窒素ガスを注入することにより、温風の供給系統ならびにファンミル64の内部を褐炭が自然発火しない不活性な状態にすることができる。
【0160】
また、例えば排気配管123などの温風の流通経路上にCO濃度計105aを設置するとともに、イナート蒸気106が必要な箇所、例えば乾燥コンベア装置本体1、乾燥前ホッパ9、サイクロンセパレータ18、乾燥後ホッパ62、ファンミル64などにイナート蒸気配管107を接続している。
【0161】
さらに、前記窒素ガス供給配管102の一部にバルブ108を介してイナート蒸気バックアップ配管109を接続し、さらにそのイナート蒸気バックアップ配管109の先端部を前記イナート蒸気配管107に接続している。
【0162】
さらにまた、乾燥前ホッパ9にもCO濃度計105bが設置されており、また、乾燥コンベア装置本体1の出口温風温度を計測するための出口温風温度計113が設置されている。前記CO濃度計105a,105bならびに出口温風温度計113の検出信号は切替器114で定期的に取り込まれるようになっている。
【0163】
例えば火力発電システムがトリップした際、先ず、系内の酸素濃度が所定の値に低下するまで前述の窒素ガス供給系統を用いて必要箇所に窒素ガスを注入して、系内を不活性な状態にする。万一、CO濃度が上昇した場合は、再度、窒素ガスを規定の酸素濃度になるまで注入する。
【0164】
また、乾燥コンベア装置本体1の出口温風温度が上昇した場合は、温度が所定の値に低下するまでイナート蒸気106を連続して注入する。このイナート蒸気106は、例えばボイラ装置65から得られた補助蒸気を減圧、減温して利用ことができる。
【0165】
図10に示すように褐炭60を粉砕機8で粉砕する際、原料中に混入している石や鉄鉱石などの不純物により火花が発生して、乾燥前ホッパ9に貯留されている粗粒子2が自然発火することも予想されるから、前述のように乾燥前ホッパ9にもCO濃度計105bが設置されている。そしてホッパ内のCO濃度を監視しており、粗粒子2の自然発火の予兆があると、乾燥前ホッパ9内にイナート蒸気106を注入して自然発火を未然に防止している。
【0166】
図11は、
図10で示した火力発電システムにおける温風の制御系統を説明するための要部拡大系統図である。
【0167】
前述のように粗粒子2の乾燥が進行する過程で、粗粒子2中の水分が徐々に少なくなって軽くなるから、風箱35の位置によって粗粒子2の乾燥程度(比重)に見合う風量の温風49を供給する必要がある。
【0168】
そこで本実施形態では、粗粒子搬送方向Xの上流側から下流側に向って風箱35が風箱35a,35b,35c,35dの4つに分かれており、その風箱35に温風を送る温風供給配管124も途中から第1温風供給配管124aと第2温風供給配管124bの2系統に分岐されている。そして前記第1温風供給配管124aが搬送方向下流側の2つの風箱35c,35dに接続され、前記第2温風供給配管124bが搬送方向上流側の2つの風箱35a,35bに接続されている。
【0169】
また、前記第1温風供給配管124aの途中には、第1バルブ110aと第1温度計111aが設けられている。同様に、第2温風供給配管124bの途中には、第2バルブ110bと第2温度計111bが設けられている。
【0170】
このように本実施形態では、複数の風箱35を粗粒子搬送方向上流側の風箱35a,35bと下流側の風箱35c,35dの2つのグループに分け、上流側の風箱35a,35bに供給する温風49の風量制御は、第2温度計111bの検出信号を監視して第2バルブ110bの開度調整によって行なう。また、下流側の風箱35c,35dに供給する温風49の風量制御は、第1温度計111aの検出信号を監視して第1バルブ110aの開度調整によって行なう構成になっている。
下流側の風箱35c,35dに供給する温風49の風量は、上流側の風箱35a,35bに供給する温風49の風量よりも少なく設定されている。
【0171】
本実施形態に係る乾燥コンベア装置本体1は1台の乾燥時間が数分程度となるように、粗粒子2の切り出し量、乾燥コンベア装置本体1の搬送速度、温風49の風量ならびに温度などの乾燥条件が設定されている。
また、乾燥コンベア装置本体1は1台ではなく複数台並設して、各乾燥コンベア装置本体1から得られた乾燥済み褐炭粒子61を乾燥後ホッパ62に集めるシステムになっている。
【0172】
前記実施形態では、エプロン(粗粒子を収容して搬送する搬送部材)の底面に多数の孔状の温風導入部、すなわち温風吹き出し孔を設けたが、温風導入部が網目あるいは多数のスリットから構成されていても構わない。
【0173】
前記実施形態では、風箱を上流側と下流側の2つのグループに分けて、各グループに2個の風箱を配置した例を示したが、グループの数ならびにグループ毎の風箱の数は必要に応じて変更可能である。
【0174】
図12ないし
図14は本発明で適用される粉砕機の他の例を示す図であり、
図12はその粉砕機の概略平面図、
図13はその粉砕機の側面図、
図14はその粉砕機の一部を切除した斜視図である。
【0175】
(粉砕機の他の例)
この粉砕機131は、回転式遠心粉砕方式の粉砕機(破砕機という場合もある)である。具体的な構成は、円筒状をして固定状態にあるケーシング132の内側には、
図14に示すようにケーシング132の底部133と間隔をおいて円筒状をしたロータ134が配置されている。
【0176】
ロータ134は回転軸135の上部に固定されて、回転軸135と一体に回転する。本実施形態では、ロータ134は周速度35〜75m/sの高速で矢印138方向に回転する。ロータ134の周壁136にはそれの周方向に沿って多数の噴出口137が形成されている。
【0177】
図14に示すように、ロータ134の天板139の中央部には、原料投入口140が設けられている。また、前記ケーシング132の底部133には粗粒子2の排出シュート141が連設されている。
【0178】
原料6である褐炭が原料投入口140からロータ134内に投入される。ロータ134は高速で回転しているから、ロータ134内に投入された原料6は遠心力により噴出口137から噴出されて、ケーシング132の周壁142に衝突し(
図12参照)、そのときの衝撃力により粉砕される。この粉砕によって生成した粗粒子2は、排出シュート141から取り出される(
図13,14参照)。
【0179】
この回転式遠心粉砕方式の粉砕機131は、
図12に示すようにロータ134の高速回転により生じた遠心力により原料6がロータ134から噴き出され、ケーシング132の周壁142に衝突して粉砕される際、実線矢印方向の原料6の流れに空気も同伴され、点線矢印方向の空気の流れ143が生じる。
【0180】
そして周壁142で粉砕・生成された粗粒子2は前記空気の流れ143と衝突し、原料6ならびに粗粒子2の1次乾燥(予備乾燥)がなされる。
【0181】
本実施形態は、ロータ134から噴出した原料6をケーシング132の周壁142に衝突させて粉砕する構成になっているが、ロータの周囲を取り囲むようにケーシング以外の衝突受け部材を設け、その衝突受け部材に原料を衝突させて粉砕する構成にしても構わない。
【0182】
図15は、前記回転式遠心粉砕方式の粉砕機の比較例として挙げたハンマークラッシャー方式の粉砕機の概略構成を示す正面図である。
【0183】
ハンマークラッシャー方式の粉砕機151は、ケーシング152内にロータ153が横置きに配置されており、ロータ153の外周部にはハンマー154がケーシング152の内周面側に向けて突出するように設けられている。
【0184】
ケーシング152に取り付けられる原料投入口155は、回転移動するハンマー154と対応する位置に配置されている。また、ケーシング152の下部には排出口156が設けられている。
【0185】
ロータ153(ハンマー154)は、矢印157方向に高速で回転している。原料投入口155から投入された原料6である褐炭は、ハンマー154で跳ね飛ばされて、粉砕される。そして粉砕によって生成した粗粒子2は、排出口156から取り出される仕組みになっている。
【0186】
このハンマークラッシャー方式の粉砕機151は、前述したような粉砕システムになっているが、空気の流れは殆ど生じないため、原料6ならびに粗粒子2は空気の流れによって1次乾燥(予備乾燥)されない。
【0187】
次に粉砕機による1次乾燥の効果について、具体的に説明する、
(粉砕機による1次乾燥の効果)
本実施形態に係る回転式遠心粉砕方式の粉砕機131を用いることで、前記乾燥コンベア装置だけで粗粒子2を乾燥させるのではなく、粉砕機131において予備的に乾燥(1次乾燥)させることができる。
【0188】
具体的には、回転式遠心粉砕方式の粉砕機131を用いることで、原料(褐炭)6を所定の大きさに粉砕するとともに、前述の空気の流れ144によって原料(褐炭)6の保有水分の8%程度を乾燥させることができる。
【0189】
さらにその後前記乾燥コンベア装置により、原料(褐炭)6の保有水分を15%程度まで乾燥させることができる。これにより、乾燥コンベア装置の熱効率が向上し、乾燥コンベア装置での乾燥時間が短縮でき、さらには乾燥コンベア装置のコンパクト化が可能となる。
【0190】
乾燥コンベア装置での2次乾燥の乾燥時間を1次乾燥がない場合と同じとすれば、乾燥コンベア装置へ供給するガス量を低減することができる。これは、下記の式が成立するためである。
【0191】
乾燥コンベア装置へ供給する熱量もしくは2次乾燥に必要な熱量Q(k)は、下式によって求められる。
【0192】
Q=H×V×t
式中Hはガスエンタルピー(k/m
3N)
Vはガス量(m
3N/h)
tは乾燥時間(h)である。
【0193】
図1に示した本発明の実施形態に係る乾燥コンベア装置において、粉砕機8として、回転式遠心粉砕方式の粉砕機131を使用した実験例1と、比較例としてハンマークラッシャー方式の粉砕機151を使用した比較例1について、褐炭保有水分量の割合、ならびに乾燥コンベア装置における必要エネルギーの割合の比較について説明する。
【0194】
図1を参照しながら説明すると、原料6である保有水分率53%の褐炭を原料サイロ7に貯留した後、その原料6を粉砕機8に供給し、粉砕して平均粒径が1mm程度の粗粒子2を得た。
【0195】
この粗粒子2を乾燥前ホッパ9に一時貯留した後、乾燥コンベア装置本体1の搬送タイミングと同期するようにゲート弁10,11を個別に駆動して、粗粒子2を速やかに乾燥コンベア装置本体1へ定量供給した。この乾燥コンベア装置本体1内を通すことにより粗粒子2を乾燥して、乾燥コンベア装置本体1の出口から乾燥済みの粗粒子2(乾燥炭)を回収した。
【0196】
原料6(褐炭)の供給量を100kg/h、原料6(褐炭)の乾燥前後の温度を20℃、50℃、乾燥済みの粗粒子2(乾燥炭)の保有水分率が15%となるように装置の運転条件を設定した。
【0197】
原料サイロ7から原料6(原炭)、乾燥前ホッパ9から粗粒子2(粉砕炭)、乾燥コンベア装置本体1の出口から乾燥済みの粗粒子2(乾燥炭)を、それぞれ抜き出した。そして原料6(原炭)、乾燥前粗粒子2(粉砕炭)、乾燥済みの粗粒子2(乾燥炭)が保有している水分量を、JIS M8811「石炭及びコークス類−サンプリング及び試料調整方法」に準拠して測定した。
【0198】
図16は、実験例1(回転式遠心粉砕方式の粉砕機使用)ならびに比較例1(ハンマークラッシャー方式の粉砕機使用)での原料6(原炭)、乾燥前粗粒子2(粉砕炭)、乾燥済みの粗粒子(乾燥炭)2が保有している水分量の割合を示した図である。なお、この図に示した水分量の割合は、原炭の水分量を基準(1)として、粉砕炭と乾燥炭の保有水分量の割合を示したものである。
【0199】
粉砕炭、乾燥炭に保有される水分量の割合は、下記のように定義される。
粉砕炭に保有される水分量の割合(−)
=粉砕炭の保有水分量(kg/h)/原炭の保有水分量(kg/h)
乾燥炭に保有される水分量の割合(−)
=乾燥炭の保有水分量(kg/h)/原炭の保有水分量(kg/h)
この
図16の結果から明らかなように、粉砕炭に保有される水分量の割合と乾燥炭に保有される水分量の割合との差は、実験例1の値の方が比較例1の値よりも小さい。即ち、同じ乾燥コンベア装置を用いても乾燥により脱水する水分量は、回転式遠心粉砕方式の粉砕機を使用した実験例1の方が、ハンマークラッシャー方式の粉砕機を使用した比較例1よりも少ないことになる。
【0200】
この条件の場合、乾燥コンベア装置での粗粒子の乾燥に必要なエネルギー(熱量)は、(水及び水蒸気を20℃から50℃へ昇温させるために必要な水の顕熱:125.4kJ/kg−脱水量)と、(水蒸気の顕熱:53.8kJ/kg−脱水量)と、(水を蒸発させるために必要な水蒸気の蒸発顕熱:2454kJ/kg−脱水量)の合計2633.2kJ/kg−脱水量である。
【0201】
従って、乾燥コンベア装置での脱水量が少なければ、これに伴って、必要なエネルギー(熱量)も少なくて済む。ここで述べる必要なエネルギー(熱量)とは、動力ならびに熱損失を考慮していない正味のエネルギーのことである。
【0202】
図17は、前記実験例1と比較例1での乾燥コンベア装置における必要エネルギー(熱量)を比較して示す図である。実験例1での必要エネルギー(熱量)は、比較例1での必要エネルギー(熱量)を1とした場合の相対値で示している。
【0203】
この図中の必要エネルギー(熱量):1とは、2次乾燥のみ(乾燥コンベア装置のみで粗粒子を乾燥させる)の場合の必要エネルギー(熱量)の理論値を示す。
【0204】
この
図17から明らかなように、実験例1での必要エネルギー(熱量)は、理論値よりも約30%少ない。これは回転式遠心粉砕方式の粉砕機を使用しているため、原料を粉砕して粗粒子を生成する過程で空気を巻き込み、空気の流れを形成して、副次的に粗粒子を乾燥しているためである。
これに対して比較例1での必要エネルギー(熱量)は、理論値よりも約3%大きくなっている。
【0205】
前述のように副次的に乾燥した粗粒子2は付着性が低く、それをコンベア装置に投入した場合にエプロン25の内面などに付着することがなく、また粗粒子2の流動化51が起きやすいため、エプロン25の下方から供給される温風49により効率よく乾燥が行われる。
【0206】
次に本発明の第2実施形態に係る乾燥コンベア装置の概略構成について
図18ならびに
図19を用いて説明する。
図18はその第2実施形態に係る乾燥コンベア装置の概略構成図、
図19は乾燥コンベア装置本体付近の斜視図である。
【0207】
(第2の乾燥コンベア装置の構成)
図2に示す第1実施形態に係る乾燥コンベア装置では、複数個の風箱35に対して1つのフード(ハウジング20がフードとして機能している)を設けたが、本実施形態ではエプロンコンベア21の搬送方向Xに沿って並んだ複数の風箱35a,35b,35c,35dの吹き出し位置に対応して、それぞれの位置にそれぞれ独立した独立フード161a,161b,161c,161dを設けている。
【0208】
本実施形態では各風箱35a〜35dの大きさが一律であることから、それらと対応する各独立フード161a〜161dの大きさも一律になっている。
【0209】
図18に示すように、各独立フード161a〜161dは実質的に隙間なく(後述する独立フード間にゴム板を介在した場合も含む)エプロンコンベア21の搬送方向Xに連続して設けられている。また、各独立フード161a〜161dの下端部はエプロン25との接触を避けるため、数十mmの隙間が設けられている。
【0210】
風箱35a,35b,35c,35dには
図18に示すように、送風機15a,15b,15c,15dと熱交換器16a,16b,16c,16dを個別に付設した温風供給管40a,40b,40c,40dが接続されている。
【0211】
独立フード161a,161b,161cの上部には排気管162a,162b,162cが設けられ、排気管162aの先端部は1つ下流側の送風機15bの吸い込み口Bに接続され、排気管162bの先端部は1つ下流側の送風機15cの吸い込み口Cに接続され、排気管162cの先端部は1つ下流側の送風機15dの吸い込み口Dに接続されている。
【0212】
独立フード161dの上部には微粒子捕集管47が接続され、微粒子捕集管47の先端部は
図1に示すようにサイクロンセパレータ18に接続されている。
【0213】
本実施形態の場合前述のような構成になっているから、
図2で示したような各風箱35共用の温風供給手段4は設けられていない。
【0214】
エプロンコンベア21の搬送方向Xの最上流側に配置された第1の風箱35aには送風機15aの吸い込み口Aで吸い込んだ大気(20℃)を熱交換器16aで150℃に加熱して供給し、第1の風箱35aの上方を通過している粗粒子2(粉砕炭)の第1段階の加熱・乾燥を行う。
【0215】
第1の風箱35aの上方に形成されている空間部分(乾燥室)で飽和湿度まで水分を含んだ湿り空気A´は第1の独立フード161aで吸引排気され、その湿り空気A´は排気管162aを通り1つ下流側の送風機15bの吸い込み口Bに供給される。
【0216】
吸い込み口Bに入った湿り空気A´は送風機15bで昇圧され、さらに熱交換器16bで加熱されて、乾燥空気となって第2の風箱35bに供給されて、第2の風箱35bの上方を通過している粗粒子2(粉砕炭)の第2段階の加熱・乾燥を行う。
【0217】
このような乾燥過程を順次繰り返して、最終段階の排気は独立フード161dで吸引され、微粒子捕集管47を通してサイクロンセパレータ18に送られて、排気中の石炭微粒子が回収されるシステムになっている。
【0218】
図19中の符号163は、粗粒子供給手段3の一部である計量部を示しており、図示していないが内部に第1のゲート弁10、第2のゲート弁11ならびに計量管部12を備えている。
【0219】
図20は本実施形態に係る乾燥コンベア装置内の湿り空気線図であり、横軸に空気の温度、縦軸に空気の絶対湿度をとっている。この湿り空気線図は空気乾燥の設計に標準的に用いられるもので、空気の温度と湿度との関係を示したものである。
【0220】
図20に示すように、大気(温度Ta、絶対湿度H
A)は絶対湿度一定のまま第1の熱交換器16aで温度T
hまで加熱される。この第1段階では、水分の授受はないので絶対湿度はH
Aのままである。
【0221】
第1の風箱35aの上方に形成されている空間部分(乾燥室)に供給された前記加熱空気は粗粒子(粉砕炭)の水分を吸収し、
図20に示す断熱冷却線に沿って温度T
A、絶対湿度H
Bとなる。
これを順次繰り返して、最終的には温度T
D、絶対湿度H
0(飽和湿度)の排気となる。
【0222】
これに対して前記
図25に記載されている従来の石炭搬送装置は、燃焼装置(図示せず)から送られて来た排ガス219がそのまま第2乾燥室217、第1乾燥室206へと順次通過されるだけの構成になっている。
【0223】
この石炭搬送装置を模擬して、熱交換器による空気の加熱を入口だけとして高温空気を作り(前記燃焼装置からの排ガス219を模擬)、この高温空気をそのまま複数の乾燥室に通過して粉砕炭を乾燥する比較例2の乾燥装置を製作した。そしてこの比較例2の乾燥装置と本実施形態に係る乾燥コンベア装置との具体的な比較について
図21を用いて説明する。
【0224】
この比較では、吸い込む空気は温度20℃、相対湿度75%(絶対湿度0.01kg
−水分/kg
−乾燥空気)の標準大気とした。
【0225】
図21に示すように、熱交換器による最初の加熱により空気は温度150℃、絶対湿度0.01kg
−水分/kg
−乾燥空気となり、第1乾燥室で粉砕炭を加熱する。その結果、第1乾燥室の出口では温度43℃、絶対湿度0.06kg
−水分/kg
−乾燥空気となる。比較例2では加熱は1回しか行わないので、出口排ガスはこの湿度のままである。
【0226】
これに対して本実施形態では加熱、乾燥4回を繰り返すため、最終的には出口温度は温度64℃、絶対湿度0.19kg
−水分/kg
−乾燥空気となり、同じ空気量を使用しても約3倍(0.19/0.06≒3)の乾燥を行うことができる。
【0227】
さらに、本実施形態は比較例2に比べると使用空気量を1/4に低減でき、そのためにダクトや排ガス除塵装置が大幅にコンパクト化でき、省スペース化ならびにコストの低減が図れる。
【0228】
本実施形態において、各風箱35は圧力制御しているため空気の漏れは定常的には無いが、多少の圧力変動は避けられない。そのため図示していないが、独立フード161と独立フード161の間に柔軟なゴム板が移動するエプロン25側に向けて吊り下げられて、粗粒子2や空気の移動を防止している。
【0229】
エプロン25内の流動層で吹き上げられた一部の粗粒子2がエプロン25から落下することがあるため、本実施形態では、ハウジング20の底部に例えば断面V字状などの斜面164を設け、落下した粗粒子2をその斜面164を利用して収集し、底部内に配置したロータリーフィーダ165などの排出手段でハウジング20から排出する構成になっている。
【0230】
第1の風箱35aの上を通過するエプロン25に投入される粗粒子2は多量の微粒子を含むことがあり、そのため第1の独立フード161aで吸引した空気をそのまま下流側の送風機15b〜15dに送ると、送風機15のファンなどを損傷する危険性がある。
【0231】
これを回避するため、第1の独立フード161aで吸引した空気をサイクロンセパレータなどの除塵装置に通して微粒子の捕集を行い、微粒子をほとんど含まない空気を下流側の送風機15bに送る構成にするとよい。
【0232】
次に本実施形態に係る乾燥コンベア装置の熱効率について説明する。
(第2の乾燥コンベア装置の熱効率)
本実施形態に係る乾燥コンベア装置は空気(排ガス)の温度はやや高くなるものの、流通する空気量が少ないので、空気が持ち去る熱量、つまり熱損失が少なく、熱効率が向上して省エネとなる。
【0233】
この様子について
図22を用いて説明する。熱効率は、[乾燥に費やした熱量(水分の蒸発熱量)]/[加熱熱量]で定義した。同図は、乾燥の回数すなわち風箱35(独立フード161)の分割数の違いによる排ガス(空気)の温度、空気流量ならびに熱効率を示している。
【0234】
図22に示すように、1回の乾燥では熱効率は82.6%であるが、4回の乾燥を繰り返すと熱効率は89.6%、10回の乾燥を繰り返すと熱効率は93.5%と高く、分割数(乾燥の繰り返し回数)を多くするほど熱効率が向上することが分かる。
【0235】
なお、本例は粗粒子(褐炭)の水分を全て蒸発させるのではなく、約1/2に乾燥させる条件で行った。一般に褐炭の水分含有率が非常に高いので、全ての水分を蒸発させようとすると装置も熱量も莫大となる。そこで、費用対効果が最大となる半乾きの状態に適用したものである。
【0236】
また、本発明において風箱を複数に分割したのは、下記の理由によるものである。
すなわち、粗粒子が乾燥すると水分が減少した分だけ軽くなり、乾燥用空気が粗粒子の間を通過する際の通気抵抗が低下する。この結果、分割しない共通の風箱にした場合、乾燥初期の上流側の空気量が減り、乾燥が進んだ下流側の空気量が増えて軽くなった粗粒子を飛散させてしまう。風箱を分割すれば独立に空気流量の制御が可能となり、粗粒子の飛散を抑制できる。
【0237】
次に本発明の第3実施形態に係る乾燥コンベア装置の概略構成について
図23を用いて説明する。
(第3の乾燥コンベア装置の構成)
この第3実施形態に係る乾燥コンベア装置では、エプロンコンベア21の搬送方向Xの上流側の乾燥室で発生した蒸気を利用して更に空気量を減らしたものである。
図18に示す第2実施形態では下流側に行くほど空気中の含有水分量が増し、体積流量が増加する。風箱35の大きさを一律にしておくと、下流側の風箱35ほど空気の噴出流速が増し、粗粒子2が風箱35から飛散する可能性が高い。
【0238】
本実施形態は、この課題を解決するためになされたものである。
図23に示すように、エプロンコンベア21の搬送方向Xに沿って風箱35a〜35eが並設されているが、上流側から下流側に行くに従って風箱35の大きさが徐々に大きくなっている。
【0239】
この風箱35の大きさの調整は前述した体積流量の増加を見込んだ調整であり、これにより各風箱35a〜35e内での空気の噴出流速がほぼ均等になり、下流側での粗粒子2の飛散が抑制される。
【0240】
図23に示すように、風箱35a〜35eの大きさの変化に応じて、それに対応するように独立フード161a〜161eの大きさも変化させる必要がある。
【0241】
本実施形態では各風箱35a〜35eの大きさを順次大きくしたが、下流側での粗粒子2の飛散が抑制できる程度に風箱35の大きさを段階的に大きくしても構わない。
【0242】
前記第2、3実施形態において、
図18ならびに
図23に示すように、各風箱35ならびに各独立フード161の搬送方向Xの長さは、1個のエプロン25の搬送方向Xの長さ、あるいは複数個集合したエプロン25の搬送方向Xのトータル長さとほぼ同寸に設計されている。
【0243】
本発明の実施形態では、乾燥コンベア装置としてエプロンコンベアを使用したが、バケットコンベアなど他の構成のコンベアを使用することもできる。
搬送部材は、被搬送物の搬送中に個々の搬送部材上で流動層が形成できるようになっていればよく、その構造は限定されない。
また、搬送方向に周回移動させるための乾燥コンベア装置の構成や搬送部材の支持などの構造も例示したものには限定されない。
【0244】
本発明の実施形態では、乾燥用気体として加熱した乾燥空気を使用したが、加熱した排ガスなどを使用することもできる。
【0245】
本発明の実施形態では、例えば石炭などの固体燃料を火力発電プラントに供給する例を示したが、その他に固体燃料をセメントプラントや化学プラントなどの燃焼設備に供給する技術分野にも本発明を適用することができる。
【0246】
また、本発明の実施形態では石炭を乾燥、除湿する場合を説明したが、石炭の他に例えば汚泥、食材、木片、都市ごみなどの粒子、粉体、チップあるいは小片などの乾燥、除湿にも本発明を適用することができる。
【0247】
次に本発明の請求項毎の効果を述べれば、下記の通りである。
(請求項毎の効果)
請求項1の構成によれば、流動層の形成により
被搬送物の乾燥が効率的に、かつ、均等にできる。
請求項2の構成によれば、搬送部材内での流動停滞域の発生が防止でき、圧力損失の増大も抑制できる。
請求項
3の構成によれば、被搬送物の乾燥状態に応じて適切な乾燥ができる。
請求項
4の構成によれば、各風箱毎で適切な乾燥ができる。
【0248】
請求項
5の構成によれば、移動する
搬送部材の軽量化が図れる。
請求項
6の構成によれば、風箱内で落下粒子が溜まることなく排出できる。
請求項
7の構成によれば、被搬送物の計量と乾燥が一つの乾燥コンベア装置で行われ、コストの低減と、設置スペースの縮小化が図れる。
請求項
8の構成によれば、被搬送物の飛散粒子の捕集により、作業環境が改善されるとともに、被搬送物の損失が防止できる。
【0249】
請求項
9の構成によれば、乾燥用気体のリサイクルが可能となる。
請求項10の構成によれば、再湿性を有する被搬送物でも乾燥状態を適切に維持することができる。
請求項11の構成によれば、被搬送物を搬送部材内に投入したときに
、搬送部材の気体噴出部からコンベア内部に落下することが防止できる。
【0250】
請求項12の構成によれば、乾燥の終了した被搬送物が搬送部材の気体噴出部からコンベア内部に落下することが防止できる。
請求項13の構成によれば、ハウジングの内側底面上に被搬送物が溜まることなく、ハウジング内を綺麗に保つことができる。
請求項14の構成によれば、ハウジング内での石炭の自然発火を有効に防止することができる。
【0251】
請求項15の構成によれば、装置のトリップ時の対応が適切にできる。
請求項16の構成によれば、ハウジング内での石炭の自然発火を有効に防止することができる。
請求項17の構成によれば、飛散粒子捕集手段ならびに乾燥後ホッパ内での石炭の自然発火などのトラブルが防止できる。
請求項18の構成によれば、乾燥前ホッパ内での石炭の自然発火を有効に防止することができる。
【0252】
請求項19の構成によれば、乾燥コンベア装置の熱効率の向上、乾燥時間の短縮ならびにコンパクト化が図れる。
請求項20の構成によれば、同じ量の乾燥用気体を使用した場合には乾燥能力が大きく、一方、乾燥能力を同じにした場合には乾燥用気体の使用量が少なくて済み、装置のコンパクト化、省スペース化などが図れる。
【0253】
請求項21の構成によれば、独立フード間での搬送物ならびに乾燥用気体の移動が抑制され、独立フード設置の効果が十分に発揮される。
請求項22の構成によれば、乾燥前ホッパ内での石炭の自然発火を有効に防止することができる。
請求項23の構成によれば、褐炭の乾燥などを効率よく、かつ適切に行なうことができる。
【0254】
請求項24の構成によれば、火力発電プラントにおいて、蒸気タービンからの熱を石炭の乾燥に有効に利用することができる。また、石炭焚きボイラ装置に投入される石炭の水分の減少により、生成・排出される燃焼排ガス量も少なくなり、当該石炭焚きボイラ装置及びその後流側に設置した燃焼排ガス処理設備のコンパクト化が可能となる。
請求項25の構成によれば、火力発電プラントにおいて、石炭焚きボイラ装置からの排ガスの熱を石炭の乾燥に有効に利用することができる。また請求項24の構成と同様に、石炭焚きボイラ装置及びその後流側に設置した燃焼排ガス処理設備のコンパクト化が可能となる。
請求項26の構成によれば、石炭焚きボイラ装置のコンパクト化が可能となる。
請求項27の構成によれば、火力発電プラントにおいて、褐炭の乾燥などを効率よく、かつ適切に行なうことができる。