【課題を解決するための手段】
【0010】
一般に、透明ペインは、電気的に加熱可能な(導電性の)透明被覆を備え、この被覆は、少なくとも、ペインのエリアのかなりの部分にわたって、特に、その視野にわたって延在している。電気的に加熱可能な被覆は、供給電圧を印加することにより、加熱電流が2つの第1の電極間に形成された加熱フィールドにわたって流れるように、電圧源の2つの端子に対する電気的な接続のために設けられた少なくとも2つの第1の電極に電気的に接続される。例えば、第1の電極は、この目的のために、加熱層に対して直流的に接続される。通常、2つの第1の電極は、加熱可能な被覆内における電流の導入および広範な分布のために、ストリップ形状のまたは帯形状の電極(集電電極または集電レールまたはバスバー)の形態において、それぞれ、実装される。例えば、第1の電極は、この目的のために、加熱可能な被覆に対して直流的に接続される。ここで、「加熱フィールド」という用語は、加熱電流を導入することができるように2つの第1の電極間に位置する電気的に加熱可能な被覆の加熱可能な部分を意味している。
【0011】
本発明によるペインの場合には、加熱フィールドは、加熱層がその内部に存在していない少なくとも1つの被覆を欠いたゾーンを含む。被覆を欠いたゾーンは、加熱可能な被覆によって少なくともいくつかのセクション内に形成されたゾーンエッジによって境界が定められている。具体的には、被覆を欠いたゾーンは、加熱可能な被覆によって(全体的に)形成された周状のゾーンエッジを有する。被覆を欠いたゾーンは、例えば、基材上への加熱層の付着の時点におけるマスキングにより、あるいは、例えば、その付着後の機械的または化学的な除去による加熱可能な被覆の除去により、製造することができる。
【0012】
本発明の提案内容によれば、透明ペインは、電圧源の一方の端子に対する電気的な接続のために設けられた少なくとも1つの第2の電極(「追加電極」)を有し、この電極は、被覆を欠いたゾーン内の特に1つのみの電極セクションを有する少なくともいくつかのセクション内に配設され、かつ、供給電圧を印加することにより、加熱電流の一部が、第2の電極または被覆を欠いたゾーンと電圧源の他方の端子に対する接続のために設けられた第1の電極との間に位置する加熱フィールドの1つの領域またはセクションにわたって流れるように、加熱可能な被覆に対して電気的に接続されているということを実質的な特徴としている。第2の電極は、被覆を欠いたゾーン内の少なくともいくつかのセクション内に配設された少なくとも1つの供給セクションと、供給セクションに接続された1つまたは複数の接続セクションとを有し、接続セクションは、被覆を欠いたゾーンから始まり、少なくともゾーンエッジのエッジセクションを超えて、それぞれ、延在しており、このエッジセクションは、被覆を欠いたゾーンと電圧源の他方の端子に対する接続のために設けられた第1の電極との間に位置する加熱フィールドの1つのセクションにより形成される。従って、被覆を欠いたゾーンおよび電圧源の他方の端子に対する接続のために設けられた第1の電極は、加熱フィールドの前記セクションの両側に位置している。通常、接続セクションがそれを超えて延在しているゾーンエッジのエッジセクションは、電圧源の他方の端子に対する接続のために設けられた第1の電極の反対側にまたはその直近に位置している。例えば、ゾーンエッジの前記エッジセクションは、電圧源の他方の端子に対する接続のために設けられた第1の電極の少なくとも略線形のセクションに対して平行に延在する少なくとも略線形のコースを有する。例えば、そのエッジが線形の第1の電極に対して平行にまたはこれに対して垂直に配設されている少なくとも略矩形の被覆を欠いたゾーン内においては、加熱電流は、この目的のために、第1の電極とは反対側のエッジセクションを介して加熱可能な被覆に導入される。このエッジセクションは、電圧源の他方の端子に対する接続のために設けられた第1の電極まで最短距離を有する。
【0013】
一般に、第2の電極は、加熱電流を加熱被覆内に(広く)分散した状態において導入することができるように実装される。この目的のために、第2の電極は、被覆を欠いたゾーンの境界を定める加熱可能な被覆のエッジを超えて延在すると共に被覆内に(広く)分散した状態で加熱電流を導入するために電気的に加熱可能な被覆に電気的に接続された1つまたは好ましくは複数の接続セクションを有する。この目的のために、接続セクションは、有利には、特に、好ましくは、電圧源の他方の端子に対する電気的な接続のために設けられた第1の電極に向かって突出する突出部の形態を有する自由端部を有するように、実装される。有利には、接続セクションは、前記エッジセクションにわたって均等に分散した状態で配設され、これにより、好ましくは、その間に等しい距離を有する互いに隣接した状態で位置している。接続セクションは、例えば、櫛の歯のように、または櫛のように、配設することができる。この対策によれば、加熱可能な被覆内への加熱電流の特に均一な導入を得ることができる。接続セクションは、具体的には、接続セクションがそれを超えて延在しているエッジセクションに対して垂直に配設することができる。
【0014】
有利には、本発明によるペインの場合には、加熱可能な被覆内の加熱電流の電流密度分布が少なくとも実質的に均一になるように、被覆を欠いたゾーン内の少なくともいくつかのセクション内に配設された第2の電極と電圧源の他方の端子に対する接続のために設けられた第1の電極との間に、電位差を確立することができる。同様に、加熱可能な被覆内における加熱出力分布の均一化を得ることも可能であり、これにより、具体的には、低減されたまたは増大した加熱出力を有するサイト(ホットスポット)を回避することができる。
【0015】
被覆を欠いたゾーン内の少なくともいくつかのセクション内に配設された第2の電極により、加熱層内の熱分布に選択的に影響を及ぼすことができる。2つの第1の電極によって供給される加熱電流が加熱層から第2の電極内に流れることができないように、第2の電極が、少なくとも1つの電極セクションが被覆を欠いたゾーン内に位置する状態において、配設されるということの結果として、特定の利点が得られる。従って、ホットスポットの形成のリスクを伴う第2の電極の望ましくない追加的な(例えば、局所的な)加熱を回避することができる。その一方で、このような効果は、通常、第2の電極が、例えば、被覆を欠いたゾーンの周りにおいて加熱層に付着される場合に、予測されることである。
【0016】
例えば、金属印刷ペーストの、例えば、ガラス基材に対する接着は、加熱可能な被覆に対する接着よりも、通常は、良好であるということの結果として、被覆を欠いたゾーン内の少なくともいくつかのセクション内に配設された第2の電極の更なる利点が得られる。これは、特に、印刷プロセスにおいて付着される銀印刷ペーストの場合に当てはまり、これにより、ガラスに対する特に良好な接着を得ることができる。この結果、第2の電極の耐久性を、特に、引っ掻き抵抗力を、大幅に改善することができる。
【0017】
被覆を欠いたゾーン内における第2の電極の加熱動作の結果として、被覆を欠いたゾーン内の少なくともいくつかのセクション内に配設された第2の電極の更なる利点が得られる。このような第2の電極の設計により、第2の電極によって放出される熱により、被覆を欠いたゾーンの領域内に氷または凝縮した水が残留することを防止することができる。上述のように、第2の電極は、電圧源の一方の端子に対する接続のために設けられており、この観点において、第2の電極が電圧源に対する別個の電気的な接続を必要としないように、第2の電極が、電圧源の端子に対する接続のために設けられた第1の電極と電気的に接続されることが有利である。しかしながら、この代わりに、第2の電極が電圧源に対する別個の接続を有することも可能であろう。特に有利には、第2の電極および電圧源の一方の端子に対する接続のために設けられた第1の電極は、この目的のために、第2の電極が第1の電極の1つの電極セクションによって形成されるように、(単一の)共通の電極の形態で実装される。この対策によれば、特に、共通のまたは1つのかつ同一のプロセスステップにより、技術的な観点において非常に簡単な方式によって本発明によるペインを製造することができる。
【0018】
本発明による透明ペインの場合には、生産技術の観点から、2つの第1の電極および/または第2の電極を、例えば、スクリーン印刷などの印刷法によって金属印刷ペーストから製造することが有利であろう。これは、特に、第2の電極が、電圧源の一方の端子に対する接続のために設けられた第1の電極と共通的に、かつ、それぞれ、2つの第1の電極と共に、実装されるケースに対して当てはまる。あるいは、この代わりに、それぞれ、2つの第1の電極および/または第2の電極を独立した電気コンポーネントとして製造すると共に、例えば、はんだ付けによって加熱被覆に電気的に接続することも可能であろう。
【0019】
第2の電極は、接続セクションに接続された少なくとも1つの供給セクションを有し、この供給セクションは、本発明の一実施形態においては、被覆を欠いたゾーンの外側に(のみ)配設された被覆部分と、被覆を欠いたゾーンの内部に(のみ)配設されたゾーン部分とから構成される。あるいは、この代わりに、供給セクションは、供給セクションが被覆を欠いたゾーン内に完全に配設されるように、ゾーン部分のみから構成することもできる。この後者の設計は、例えば、第2の電極が基材に対する特に良好な接着を有するように、第2の電極を実質的に完全にガラス基材上に付着することができるという特定の利点を有する。更に、特に有利には、供給セクションの隣接セクションの間を加熱可能な被覆を介して流れる電流を回避することができる。
【0020】
第2の電極の供給セクション、特に、被覆を欠いたゾーン内に配設されたゾーン部分は、有利には、接続セクションがそれを超えて延在しているゾーンエッジの少なくともエッジセクション(または、その外形)に沿っており、これにより、被覆を欠いたゾーンと電圧源の他方の端子に対する接続のために設けられた第1の電極との間の加熱可能な被覆のセクション内への加熱電流の特に効果的な導入を得ることができる。
【0021】
上述の加熱動作の場合には、完全なゾーンエッジの領域内において、熱を、被覆を欠いたゾーンに放出することができるように、供給セクションが、特に、ゾーン部分が、周方向においてゾーンエッジに沿っていることが、特に有利である。この観点において特に有利である一実施形態においては、供給セクション、特に、ゾーン部分は、被覆を欠いたゾーンにわたって配設された状態で分布しており、例えば、被覆を欠いたゾーンを第2の電極によって特に効果的に加熱することができるように、周状のゾーン部分に相互接続セクションが設けられる。
【0022】
本発明によるペインの場合には、第2の電極はまた、複数の供給セクションを有することも可能であり、これらの供給セクションは、それぞれ、被覆を欠いたゾーン内に配設されたゾーン部分を有し、それぞれのゾーン部分は、1つのまたは複数の接続セクションに接続されている。この対策によれば、例えば、特に大きな曲率を有するかまたは電圧源の他方の端子に対する接続のために設けられた第1の電極までの距離が非常に小さいことから、第2の電極と第1の電極との間の電流が望ましくない大きなものとなる(加熱出力分布が不均一なものとなる)場合に、例えば、特定のエッジセクションを省略することにより、供給セクションは、特に簡単な方式により、特定のエッジセクション内においてのみ、被覆を欠いたゾーンの外形に沿うことができる。
【0023】
また、透明なペインは、別個の第2の電極をそれぞれ結合することができる複数の被覆を欠いたゾーンを有することもできる。あるいは、この代わりに、複数の被覆を欠いたゾーンを単一の第2の電極と共通的に結合されることも可能であり、この結果、この単一の第2の電極は、それぞれが1つまたは複数の接続セクションを有する複数のゾーン部分を有する。
【0024】
電気的に加熱可能な被覆は、1つの電気的に加熱可能な個々の層から、あるいは、このような個々の層を含む層のシーケンスから構成することができる。一般に、本発明によるペインの場合には、加熱可能な被覆の電気抵抗は、例えば、12から24ボルトの範囲内の供給電圧を印加することにより、例えば、300から1000ワット/m
2の範囲内の実際的な付着に適した加熱出力が加熱フィールドによって放出されるように、寸法設定される。加熱可能な被覆の電気抵抗は、加熱層に使用される材料によって左右され、この目的のためには、例えば、銀(Ag)が使用される。例えば、加熱可能な被覆の電気抵抗は、0.5から4Ω/□の範囲内である。導電性被覆は、導電性材料を含み、通常は、金属または金属酸化物である。例は、銀(Ag)、銅(Cu)、金(Au)、アルミニウム(Al)、またはモリブデン(Mo)などの高導電性の金属、パラジウム(Pa)と合金化された銀(Ag)などの金属合金、ならびに、透明導電性酸化物(TCO=Transparent Coductive Oxide)である。TCOは、好ましくは、インジウムスズ酸化物、フッ化物がドーピングされたスズ二酸化物、アルミニウムがドーピングされたスズ二酸化物、ガリウムがドーピングされたスズ二酸化物、ボロンがドーピングされたスズ二酸化物、スズ亜鉛酸化物、またはアンチモンがドーピングされたスズ酸化物である。例えば、導電性被覆は、銀層などの金属層から、またはこのようなタイプの金属酸化物の誘電体材料の少なくとも2つの被覆と間に埋め込まれた銀含有金属合金から構成される。金属酸化物は、例えば、亜鉛酸化物、スズ酸化物、インジウム酸化物、チタニウム酸化物、シリコン酸化物、アルミニウム酸化物、またはこれらに類似したもの、ならびに、これらの1つまたは複数の組合せを含む。誘電体材料はまた、シリコン窒化物、シリコン炭化物、またはアルミニウム窒化物を含むこともできる。例えば、複数の金属層を有する金属層系が使用され、この場合に、個々の金属層は、誘電体材料から作られた少なくとも1つの層によって分離される。特にチタニウムまたはニオビウムを含む非常に微細な金属層を銀層の両側に設けることもできる。底部の金属層は、接合および結晶化層として機能する。最上部の金属層は、更なる加工ステップにおける銀の変質を防止するための保護層およびゲッタ層として機能する。
【0025】
導電性被覆は、好ましくは、電磁放射に対する、好ましくは、300から1300nmの波長の電磁放射に対する、特に、可視光に対する、透過性を有する透明被覆である。「透過性」という用語は、ここでは、特に、可視光における、例えば、70%超の、特に、80%超の全透過率を意味している。例えば、自動車のフロントガラスの光透過率は、約71%である。透明な導電性被覆については、例えば、独国実用新案出願公開第202008017611U1号明細書および欧州特許第0847965B1号明細書に開示されている。
【0026】
有利には、層のシーケンスは、通常は、損傷を伴うことなしにガラスペインを曲げるために必要とされる600℃を上回る温度に耐えるように、高い熱安定性を有しているが、低い熱安定性を有する層のシーケンスを設けることもできる。このような層構造は、通常は、連続した堆積工程によって得られる。導電性被覆は、例えば、直接的に気相から基材上に堆積され、この目的のためには、化学気相蒸着(CVD)または物理気相蒸着(PVD)などのそれ自体が既知である方法を使用することができる。好ましくは、導電性被覆は、スパッタリング(マグネトロンカソードスパッタリング)によって基材上に堆積される。しかしながら、まずは、導電性被覆をプラスチック薄膜上に、特に、PET薄膜(PET=PolyEthylene Terephthalate)上に付着し、次いで、これを基材に接着することを想定することもできる。
【0027】
導電性被覆の厚さは、広範に変化することが可能であり、個々のケースの要件に適合させることができる。透明で平らな電気的構造の場合には、電磁放射に対する、好ましくは、300から1300nmの波長の電磁照射に対する、特に、可視光に対する、不透過性を有するほどに、導電性被覆を厚くしてはならないという点が重要である。例えば、導電性被覆の厚さは、任意の点において、30nmから100μmの範囲内にある。TCOの場合には、層の厚さは、例えば、100nmから1.5μmの範囲内、好ましくは、150nmから1μmの範囲内、かつ、更に好ましくは、200nmから500nmの範囲内である。
【0028】
その一方で、2つの第1の電極および第2の電極は、それぞれ、加熱可能な被覆と比較した場合に、実質的に小さな電気抵抗を有する。例えば、これらの電極は、それぞれ、0.15から4オーム/メートル(Ω/m)の範囲内の電気抵抗を有しており、これにより、印加された供給電圧の加熱可能な被覆における大きな降下を実現することが可能であり、その結果、動作の際に電極がわずかにしか熱くならず、電極上における利用可能な加熱出力のうちの相対的にわずかな部分が電力散逸として放出される。例えば、加熱可能な被覆の熱出力に基づいた電極の相対的な加熱出力は、5%未満であり、特に、2%未満である。しかしながら、この代わりに、第2の電極の格段に大きな電力散逸を提供することにより、第2の電極によって被覆を欠いたゾーンを加熱するための十分な加熱出力を得ることもできる。
【0029】
例えば、特に、印刷法において使用される印刷ペーストの形態を有する銀(Ag)、銅(Cu)、アルミニウム(Al)、タングステン(W)、および亜鉛(Zn)、あるいは、金属合金などの金属を電極材料として使用することが可能であるが、このリストは、すべてを網羅したものではない。例えば、印刷ペーストは、銀粒子およびガラスフリットを含む。印刷法によって製造される、例えば、銀(Ag)から作られた電極の場合には、層の厚さは、例えば、2から25ミクロン(μm)の範囲内であり、特に、例えば、7から15μmの範囲内などのように、5から15μmの範囲内である。
【0030】
具体的には、電極は、金属印刷ペーストを導電性被覆上に印刷することによって製造することができる。あるいは、この代わりに、例えば、銅および/またはアルミニウムを含む薄い金属フォイルストリップを電極として使用することもできる。例えば、金属フォイルストリップと導電性被覆との間の電気的な接触は、熱および圧力の作用を通じたオートクレーブプロセスによって得ることができる。しかしながら、電気的接触は、はんだ付けまたは導電性接着剤による接着によって生成することもできる。
【0031】
一般に、第2の電極の電気抵抗は、個々の用途の具体的な要件に従って寸法設定することができる。本発明によれば、供給電圧を印加した際に、加熱可能な被覆内の加熱電流の電流密度分布が少なくとも略均一なものになるような、第2の電極と電圧源の他方の端子に対する接続のために設けられた第1の電極との間の電位差を生成するような抵抗を第2の電極が有することが有利である。この目的のためには、例えば、第2の電極が予め規定可能な(選択可能な)または予め規定された電気抵抗を有するように、その長さが、例えば、曲がりくねって湾曲したコースによって寸法設定される被覆を欠いたゾーンの外部の少なくともいくつかのセクション内に位置する供給セクションを第2の電極が有することが有利であろう。電気抵抗は、長さの増大と共に増大するので、第2の電極の抵抗は、供給セクションの長さの変動により、単純な方式で変化させることができる。供給セクションは、具体的には、加熱可能な被覆上に印刷することができる。加熱可能な被覆内の加熱電流の少なくとも略均一な電流密度分布との関連においては、特に、供給セクションの長さの変動を通じて、被覆を欠いたゾーンと同一のサイズの表面エリア内において加熱可能な被覆が有する電気抵抗に対応した電気抵抗を第2の電極が有することが有利であろう。この対策によれば、加熱層内の電流密度分布の特に効果的な均一化を得ることができる。上述のように、本発明によるペインの場合には、加熱フィールド内の均一な電流密度分布との関連において、被覆を欠いたゾーンの境界を定める加熱可能な被覆のエッジにわたって分散した状態で加熱電流が導入されるように、第2の電極が実装されることが有利である。第2の電極は、例えば、電圧源の他方の端子に対する接続のために設けられた第1の電極までの最短の距離、特に、最短の垂直距離を有するような加熱可能な被覆のエッジセクションに少なくともわたって分散した状態で加熱電流が導入されるように実装することができる。例えば、少なくとも略矩形の被覆を欠いたゾーンの場合には、この目的のために、例えば、いずれのエッジセクションが、電圧源の他方の端子に対する接続のために設けられた第1の電極の反対側に位置しているのかに応じて、2つの相対的に長いエッジセクションのうちの1つまたは2つの相対的に短いエッジセクションのうちの1つにわたって加熱電流を導入することができる。
【0032】
本発明によるペインの別の特に有利な実施形態においては、接続セクションに接続された供給セクションは、互いに(構造的に)分離されているが互いに電気的に接続されている少なくとも2つの供給部分から構成されている。従って、第2の電極は、供給セクションの2つの供給部分上において非連続的であり、即ち、2つの供給部分は、互いに接触する接点を有していない。
【0033】
この場合に、2つの供給部分が、それぞれ、例えば、加熱可能な被覆上における印刷によって加熱可能な被覆に電気的に接続された結合セクションを有することが非常に重要である。更には、2つの結合セクションは、加熱可能な被覆を通じて互いに直流的に接続されるように、配設される。「結合セクション」という用語は、ここでは、以下においては、一方においては、加熱可能な被覆に対して電気的に接続されると共に、他方においては、互いに直流的に結合された供給セクションの2つの供給部分の領域を意味している。しかしながら、これは、供給部分が、それぞれ、実際には、加熱可能な被覆に電気的に接続されているが、他方の供給部分とは直流的に結合されていない他のセクションを有することができることを排除するものではない。
【0034】
従って、第2の電極は、連続した構造を有しておらず、互いに分離された供給セクションの2つの供給部分と、2つの結合セクション間の電気的に加熱可能な被覆、ならびに、1つまたは複数の接続セクションにより形成されている。
【0035】
供給部分の2つの結合セクションは、直流的な結合の目的のために、互いに(直接的に)隣接したまたは当接した状態で配設されており、2つの結合セクションは、並列に配設され、かつ、互いの近傍において、または特定の距離を互いの間に有する状態で互いに対向して延在している。2つの結合セクション間の距離は、好ましくは、加熱電流が、電荷キャリアからの損失を少なくとも実質的に伴うことなしに、加熱可能な被覆を通じて1つの結合セクションから他方の結合セクションに流れることができるように選択される。例えば、結合セクションは、この目的のために、その間に1から9センチメートルの範囲内またはこれ未満の距離を有する。
【0036】
確かに、加熱電流によるエネルギー供給の際の電極の電力散逸は、相対的に小さいが、特に、供給セクションが曲がった形状を有している場合には、第2の電極の供給セクションの加熱を排除することができない。従って、恐らくは、局所的なホットサイト(ホットスポット)が供給セクションの領域内に出現する可能性がある。加熱電流が相対的に大きなエリアにわたって分散されているので、ここに提案されている互いに分離された少なくとも2つの供給部分への供給セクションの分割により、有利には、このようなホットスポットの発生を、効果的に予防することができる。
【0037】
上述のように、2つの結合セクションは、互いに隣接した状態で配設されており、これにより、これらの結合セクションは、導電性被覆を通じた特に効果的な直流的結合を得るために、それぞれ、具体的には、互いに平行な少なくとも略線形のコースを有することができる。
【0038】
具体的には、2つの結合セクションのうちの一方(「第1の結合セクション」)は、電圧源の一方の端子に対する接続のために設けられた第1の電極に接続することが可能であり、かつ、他方の結合セクション(「第2の結合セクション」)は、1つまたは複数の接続セクションに接続することができる。この対策によれば、分割された第2の電極を技術的に非常に単純に実現することができる。
【0039】
好ましくは、透明ペインの電極は、具体的には、分離されているが直流的に結合されている2つの供給部分の特に技術的に単純であって経済的であると共に信頼性の高い製造を可能にする、例えば、スクリーン印刷法などの印刷法によって製造される。
【0040】
本発明によるペインは、例えば、1つの基材のみを有するいわゆる単板安全ガラス(SPSG:Single−Plane Safety Glass)として、あるいは、通常は熱可塑性接着剤層によって互いに接合された2つの基材を有する複合ペインとして、実施することができる。基材は、例えば、フロートガラス、石英ガラス、硼珪酸ガラス、ソーダ石灰ガラス、鋳造ガラス、またはセラミックガラスなどのガラス材料から、あるいは、例えば、ポリスチレン(PS)、ポリアミド(PA)、ポリエステル(PE)、ポリビニルクロライド(PVC)、ポリカーボネート(PC)、ポリメチルメタクリレート(PMA)、またはポリエチレンテレフタレート(PET)、および/またはこれらの混合物のようなプラスチックなどの非ガラス材料から、作られる。適切なガラスの例は、例えば、欧州特許第0847965B1号明細書に見出すことができる。一般に、十分な耐化学性、適切な形状およびサイズ安定性、ならびに、任意選択により、十分な光学的透明度を有する任意の材料を使用することができる。用途に応じて、基材の厚さは広範に変化することができる。加熱可能な透明なグレージングの場合には、基材の厚さは、例えば、1から25mmの範囲内であり、通常、透明なペインの場合には、1.4から2.1mmの厚さが使用される。基材は、平坦であるか、あるいは1つまたは複数の空間方向において湾曲している。複合ペインの場合には、加熱可能な被覆は、例えば、外側ペインに対向する内側ペインの表面上および/または2つの個々のペイン間に配設された担持体の表面上などの少なくとも1つの表面上に配設される。例えば、本発明によるペインは、自動車のフロントガラスの形態において実装され、被覆を欠いたゾーンは、例えば、設置済みの状態において、フロントガラスの上部ペインエッジに隣接してまたはその近傍に配設され、これにより、例えば、黒色のスクリーン印刷されたエッジとして実装された不透明なカバー要素を使用することにより、被覆を欠いたゾーンの単純な遮蔽が可能である。
【0041】
本発明は、具体的には、上述の透明ペインを製造するための方法をも更に含む。この方法は、
少なくともペインのエリアの大きな部分にわたって延在する電気的に加熱可能な被覆を製造するステップと、
電圧源の2つの端子に対する電気的な接続のために設けられた少なくとも2つの第1の電極を形成するステップであって、これらの電極は、供給電圧を印加することにより、加熱電流が2つの第1の電極間に位置する加熱フィールドにわたって流れるように、加熱可能な被覆に電気的に接続される、ステップと、
加熱可能な被覆によって少なくともいくつかのセクション内に形成されたゾーンエッジによって境界が定められた加熱フィールド内に少なくとも1つの被覆を欠いたゾーンを生成するステップと、
電圧源の一方の端子に対する電気的な接続のために設けられた少なくとも1つの第2の電極を製造するステップであって、この電極は、被覆を欠いたゾーン内の少なくともいくつかのセクション内において延在し、かつ、加熱電流の一部分が第2の電極と電圧源の他方の端子に対する接続のために設けられた第1の電極との間に位置する加熱フィールドの1つのセクションにわたって流れるように、加熱可能な被覆に電気的に接続される、ステップと、
を備える。第2の電極は、被覆を欠いたゾーン内の少なくともいくつかのセクション内に配設された少なくとも1つの供給セクションと、1つまたは複数の接続セクションとを有するように製造され、接続セクションは、それぞれ、被覆を欠いたゾーンから始まり、ゾーンエッジのエッジセクションを超えて延在しており、エッジセクションは、被覆を欠いたゾーンと電圧源の他方の端子に対する接続のために設けられた第1の電極との間に位置する加熱フィールドの1つのセクションによって形成される。
【0042】
本発明による方法の有利な一実施形態においては、第2の電極は、供給セクションが、それぞれ、加熱可能な被覆に電気的に接続された結合セクションを有する互いに分離された少なくとも2つの供給部分から構成されるように実装され、2つの結合セクションは、加熱可能な被覆によって直流的に結合されるように、互いに対向して配設される。
【0043】
本発明による方法の別の有利な実施形態においては、第2の電極、および電圧源の一方の端子に対する電気的接続のために設けられた第1の電極は、例えば、印刷、特にスクリーン印刷により、共通的に製造される。具体的には、第2の電極はまた、2つの第1の電極と共通的に製造することもできる。
【0044】
本発明は、機能的かつ/または装飾的な個別片としての、かつ、家具、装置、および建物、ならびに、陸上、空中、または水上における移動のための搬送手段内の、特に、例えば、フロントガラス、リアウィンドウ、サイドウィンドウ、および/またはガラスルーフなどの自動車内の組込み部分としての、上述のペインの使用を更に含む。好ましくは、本発明によるペインは、自動車のフロントガラスまたは自動車のサイドウィンドウとして実装される。
【0045】
上述のおよび後述する特性は、示されている組合せにおいてのみ使用することができるだけではなく、本発明の範囲を逸脱することなしに、他の組合せにおいても、あるいは、単独でも使用することができることを理解されたい。
【0046】
以下、添付図面を参照し、例示的な実施形態を使用して本発明について詳細に説明する。添付図面は、単純化されており、かつ、その縮尺は、正確ではない。