特許第5905482号(P5905482)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5905482ニトリルゴムを含有するトレッド副層を含む空気式タイヤ
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  • 特許5905482-ニトリルゴムを含有するトレッド副層を含む空気式タイヤ 図000006
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5905482
(24)【登録日】2016年3月25日
(45)【発行日】2016年4月20日
(54)【発明の名称】ニトリルゴムを含有するトレッド副層を含む空気式タイヤ
(51)【国際特許分類】
   C08L 9/02 20060101AFI20160407BHJP
   B60C 1/00 20060101ALI20160407BHJP
   C08K 3/04 20060101ALI20160407BHJP
   C08K 3/36 20060101ALI20160407BHJP
【FI】
   C08L9/02
   B60C1/00 A
   C08K3/04
   C08K3/36
【請求項の数】5
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2013-541318(P2013-541318)
(86)(22)【出願日】2011年11月28日
(65)【公表番号】特表2013-545847(P2013-545847A)
(43)【公表日】2013年12月26日
(86)【国際出願番号】EP2011071187
(87)【国際公開番号】WO2012072581
(87)【国際公開日】20120607
【審査請求日】2014年11月28日
(31)【優先権主張番号】1059888
(32)【優先日】2010年11月30日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】514326694
【氏名又は名称】カンパニー ジェネラレ デ エスタブリシュメンツ ミシュラン
(73)【特許権者】
【識別番号】508032479
【氏名又は名称】ミシュラン ルシェルシュ エ テクニーク ソシエテ アノニム
(74)【代理人】
【識別番号】100092093
【弁理士】
【氏名又は名称】辻居 幸一
(74)【代理人】
【識別番号】100082005
【弁理士】
【氏名又は名称】熊倉 禎男
(74)【代理人】
【識別番号】100084663
【弁理士】
【氏名又は名称】箱田 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100093300
【弁理士】
【氏名又は名称】浅井 賢治
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100168631
【弁理士】
【氏名又は名称】佐々木 康匡
(72)【発明者】
【氏名】ヴァスール ディディエ
(72)【発明者】
【氏名】ロピトー ガランス
(72)【発明者】
【氏名】小林 京子
【審査官】 藤本 保
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−067027(JP,A)
【文献】 特開2006−089552(JP,A)
【文献】 特開平11−115406(JP,A)
【文献】 特開2005−067236(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L7/00−21/02
C08K3/00−13/08
B60C1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
・タイヤが回転するときに道路と接触することを意図する少なくとも1つの半径方向外側エラストマー層(3a)を備えたトレッド(3)が搭載しているクラウン(2);
・2つの非伸張性ビード(4)、これらのビード(4)をトレッド(3)に連結している2つの側壁(5)、2つの側壁(5)を通り各ビード(4)内に固定されているカーカス補強材(6);
・前記カーカス補強材(6)とトレッド(3)の間に円周方向に配置されたクラウン補強材即ちベルト(7)によって補強されているクラウン(2);
・前記半径方向外側エラストマー層(3a)の配合と異なる配合を有する、トレッド“副層”として知られている半径方向内側エラストマー層(3b) (この副層は前記半径方向外側層(3a)と前記ベルト(7)の間に配置されている);
を含む自動車用のラジアルタイヤ(1)であって、
前記副層が、40質量%と90質量%の間のブタジエン単位含有量を有する100phrのニトリル/ブタジエンゴムと、30phrよりも多い補強用充填剤とを含むゴム組成物を含むことを特徴とする前記ラジアルタイヤ(1)。
【請求項2】
前記ニトリル/ブタジエンゴムが、ブタジエン/アクリロニトリルコポリマー(NBR)、スチレン/ブタジエン/アクリロニトリルコポリマー(SNBR)およびこれらエラストマーの混合物からなる群から選ばれる、請求項1記載のタイヤ。
【請求項3】
前記ニトリル/ブタジエンゴムが、ブタジエン/アクリロニトリルコポリマー(NBR)である、請求項2記載のタイヤ。
【請求項4】
前記補強用充填剤が、カーボンブラック、シリカまたはカーボンブラックとシリカの混合物を含む請求項1〜のいずれか1項記載のタイヤ。
【請求項5】
補強用充填剤の含有量が、30phrと100phrの間の量である、請求項記載のタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車用のタイヤ、さらに、そのようなタイヤの製造において使用することのできるゴム組成物、特に、タイヤのクラウンにおいて使用するエラストマー組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
知られている通り、タイヤは、高摩耗抵抗性、低転がり抵抗性並びに高乾燥グリップ性および高湿潤グリップ性の双方のような、多くしばしば相反する技術的要件を満たさなければならない。
諸性質のこれらの妥協点は、近年、特に乗用車を意図するエネルギー節減性の“グリーンタイヤ”に関連して、補強用と説明されている特定の無機充填剤、特に、補強力の点から、通常のタイヤ級カーボンブラックと対抗し得る“HDS”(Highly Dispersible Silica)と称する高分散性シリカによって主として補強されていることを特徴とする低ヒステリシスの新規なゴム組成物の使用によって改良し得ていた。
【0003】
従って、比較的大量の液体または固体可塑剤を、例えば、文献WO 2004/022644号、WO 2005/049724号、WO 2005/087859号およびWO 2006/061064号で説明されているように、これらタイヤトレッドのゴム組成物中に導入することができる。
しかしながら、比較的多くの割合のこれら可塑剤が、トレッドから、タイヤクラウンを構成するゴム組成物に移行する可能性があり得、そのような移行は、トレッドの硬質化をもたらす可能性があり、この硬質化は、おそらく、上記諸性質の妥協点を変化させ得る。
【発明の概要】
【0004】
研究の継続中に、本出願法人は、タイヤトレッド副層として使用して、上記の欠点を克服することを可能にする、特定のブタジエンゴムを含むゴム組成物を見出した。
【0005】
従って、本発明の第1の主題は、
・タイヤが回転するときに道路と接触することを意図する少なくとも1つの半径方向外側エラストマー層を備えたトレッドが搭載しているクラウン;
・2つの非伸張性ビード、これらのビードをトレッドに連結している2つの側壁、上記2つの側壁を通り各ビード内に固定されているカーカス補強材;
・上記カーカス補強材と上記トレッドの間に円周方向に配置されたクラウン補強材即ちベルトによって補強されている上記クラウン;
・上記半径方向外側エラストマー層の配合と異なる配合を有する、トレッド“副層”として知られている半径方向内側エラストマー層(この副層は上記半径方向外側層と上記ベルトの間に配置されている);
を含む自動車用のラジアルタイヤであり、このタイヤは、上記副層が、40質量%と90質量%の間のブタジエン単位含有量を有する30〜100phrのニトリル/ブタジエンゴムと、30phrよりも多い補強用充填剤とを少なくとも含むゴム組成物を含むことを特徴とする。
【0006】
本発明のタイヤは、特に、4×4 車両(四輪駆動を有する)およびSUV (スポーツ用多目的車)のような乗用車タイプの自動車;二輪車(特に、オートバイ);バン類および重量物運搬車両(即ち、地下鉄、バス、重量道路輸送車両(トラック、トラクターまたはトレーラーのような)、農業用車両または土木機材のような道路外車両)から選ばれる産業用車両に装着することを意図する。
【0007】
本発明およびその利点は、以下の説明および典型的な実施態様、さらにまた、これらの実施態様に関連し、本発明に従うラジアルタイヤの1つの例を、半径断面において、略図的に示す一様の図面を考慮すれば容易に理解し得るであろう。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明に従うラジアルタイヤの1つの例を、半径断面において、略図的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
I‐定義
本特許出願においては:
・“ビード”は、知られている通り、側壁に半径方向内側に隣接したタイヤの非伸長性の部分を意味し、その基部は、車両車輪のリムシート上に取付けることを意図するものと理解されたい;
・“ジエンエラストマー(または、区別することなしにゴム)”は、ジエンモノマー(1種以上) (即ち、2個の共役型または非共役型の炭素‐炭素二重結合を担持する)から少なくとも一部得られるエラストマー(即ち、ホモポリマーまたはコポリマー)を意味するものと理解されたい。
【0010】
・“側壁”は、知られている通り、一般に低い曲げ剛性を有し、クラウンとビードの間に位置するタイヤの部分を意味するものと理解されたい;
・“phr”は、知られている通り、エラストマー(複数のエラストマーが存在する場合、エラストマーの総量)の100質量部当りの質量部を意味するものと理解されたい;
・“半径方向”は、知られている通り、タイヤの回転軸を通り、この回転軸に垂直な方向を意味するものと理解されたい;この方向は、タイヤの回転軸に向わせるかまたはタイヤの外側に向わせるかによって、“半径方向内側(または内部)”または“半径方向外側(または外部)”であり得る。
【0011】
さらにまた、本説明においては、特に明確に断らない限り、示す百分率(%)は、全て質量%である;同様に、“aとbの間”なる表現によって示される値の間隔は、いずれも、aよりも大きく且つbよりも小さい値の範囲を示し(即ち、限界値aとbを除く)、一方、“a〜b”なる表現によって示される値の間隔は、いずれも、aからbまでに及ぶ値の範囲を意味する(即ち、厳格な限定値aおよびbを含む)。
【0012】
II‐使用する測定および試験法
本発明に従うタイヤにおいて使用するゴム組成物は、以下で示すように、硬化後に特性決定する。
II.1‐引張試験
これらの試験は、弾性応力および破断点諸性質を測定するのを可能にする。特に断らない限り、これらの試験は、1988年9月のフランス規格 NF T 46‐002に従って実施する。公称割線モジュラス(即ち、MPaでの見掛け応力)を、10%および100%伸び (EM10およびEM100と記す)での2回目の伸びにおいて(即ち、その測定自体において予定した伸びの度合に対しての順応サイクル後に)測定する。これらの引張測定は、全て、フランス規格NF T 40‐101 (1979年12月)に従い、温度(23±2℃)および湿度(50±5%相対湿度)の標準条件下に実施する。
【0013】
II.2‐動的特性
動的特性は、規格ASTM D 5992‐96に従い、粘度アナライザー(Metravib VA4000)において測定する。単純な交互正弦波剪断応力に10Hzの周波数にて供した加硫組成物のサンプル(4mmの厚さおよび400mm2の断面積を有する円筒状試験標本)の応答を記録する。
歪み振幅掃引を、0.1%から50%まで(外向きサイクル)、次いで、50%から1%まで(戻りサイクル)で実施する。使用する結果は、損失係数tan(δ)である。tan(δ)maxで示す、23℃において観察されたtan(δ)の最高値は、戻りサイクルにおいて示される。
当業者にとっては周知の通り、23℃におけるtan(δ)maxの値は、材料のヒステリシスを、ひいては転がり抵抗性を代表する:23℃におけるtan(δ)maxの値が低いほど、転がり抵抗性は低いことを思い起こすべきである。
【0014】
II.3‐可塑剤の移行試験
10cmの辺長および16mmの総厚を有する正方形断面を示す平行六面体の形状を有する試験標本を使用する。上記平行六面体は、厚さに沿って積み重ねられた3層のエラストマー組成物からなる:順番に、トレッドの代表組成物からなる7mmの厚さを有する第1層、次いで、トレッド副層の代表組成物からなる2mmの厚さを有する第2層およびタイヤクラウンプライ(ベルト)の代表組成物からなる7mmの厚さを有する第3層。
そのようにして作成した試験標本を、2枚の硬化用プレートの間で175℃にて約20分間硬化させる。その後、試験標本を、約75℃でおよそ3週間の促進エージングに供する。
【0015】
その後、試験標本および上記3つの層をその中央において厚さ方向に切断して、2つの等しいパーツとする。そのようにして切り取ったサンプルのスライスを、厚さに沿って分析する。第1層と第2層との界面から距離D (mmで表す)の第1層の厚さにおけるスライス上に存在する可塑剤の含有量(%で表す)を測定する。
【0016】
中赤外顕微鏡法を使用して、これらの測定を実施する。IRスペクトルの自動取得を、第1層中の反射によりサンプル片で実施する。使用する装置は、“MCT DigiTect Midband”検出器、ATR (減衰全反射、倍率:×20、分析直径 100μm)対物レンズおよびコンピューター制御可能な電動式標本台を有する“Brucker Hyperion3000”赤外線顕微鏡を備えた“Brucker Vertex70”フーリエ変換中赤外(FTIR)分光計である。各スペクトルを、ATRモードで、650cm-1と4000cm-1の間での32回のスペクトル集積において、2 cm-1の解像力によって獲得する。スペクトルを、多成分系用に一般化されたランベルト・ベールの法則に従い分析した。上記の条件下に実施した出発材料のスペクトルの獲得は、混合物(可塑剤+加硫エラストマーマトリックス)スペクトルの一方のエラストマー成分と他方の可塑剤成分中の一方のエラストマー成分と他方の可塑剤成分へのデコンボリューションを可能にする。可塑剤成分に関連する係数は、百分率で表す可塑剤の含有量に直接正比例する。
【0017】
III‐本発明の詳細な説明
本発明のタイヤは、上記のように、40質量%と90質量%の間のブタジエン単位含有量を有する30〜100phrのニトリル/ブタジエンゴムと、30phrよりも多い補強用充填剤とを少なくともを含むゴム組成物を含むトレッド副層を備えているという本質的な特徴を有する;これらの成分を、下記で詳細に説明する。
【0018】
III.1‐ニトリル/ブタジエンゴム
ニトリル/ブタジエンゴムは、定義によれば、少なくとも1種のブタジエンモノマーと、少なくとも1種のニトリルモノマー、即ち、ニトリル官能基を担持するモノマーとをベースとするコポリマーである。
【0019】
40質量%と90質量%の間のブタジエン含有量において、上記ニトリル/ブタジエンゴムは、周囲のゴム組成物と最適な接着性を示すことが判明している;40質量%よりも少ないと、接着性は、不十分であると考えられる。好ましくは、ブタジエン含有量は、50質量%と80質量%の間の量である。
【0020】
適切なブタジエンモノマーは、特に、1,3‐ブタジエン、2,3‐ジメチル‐1,3‐ブタジエン、2‐メチル‐1,3‐ブタジエン、2‐エチル‐1,3‐ブタジエン、2‐フェニル‐1,3‐ブタジエンまたはこれらジエン類の混合物である。好ましくは、これらの共役ジエンのうちでは、1,3‐ブタジエンまたは2‐メチル‐1,3‐ブタジエン、より好ましくは1,3‐ブタジエンを使用する。
ニトリルモノマーは、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、エチルアクリロニトリル、クロトノニトリル、2‐ペンテノニトリルまたはこれら化合物の混合物であり、これらのうちでは、アクリロニトリルが好ましい。
【0021】
もう1つの好ましい実施態様によれば、上記ニトリル/ブタジエンゴムは、0℃〜―60℃の範囲内、より好ましくは−5℃〜−50℃の範囲内のガラス転移温度(Tg、ASTM D3418に従い測定した)を有する。上記のTgは、特に、これらの温度範囲内で、ポリマー中に存在するスチレンおよび/またはブタジエンの量によって調整し得る。
【0022】
上記ニトリル/ブタジエンゴムは、好ましくは、ブタジエンとアクリロニトリルとのコポリマー (NBR)、スチレン、ブタジエンおよびアクリロニトリルのターポリマー (SNBR)およびこれらのコポリマーの混合物からなる群から選ばれる。
【0023】
30phrのニトリル/ブタジエンゴムより少ないと、目標とする技術効果が不十分であり、上記副層は、トレッドの可塑剤に対するその漏れ防止特性を喪失する。これらの理由においては、上記ニトリル/ブタジエンゴムの含有量は、好ましくは40〜100phrの範囲内、さらにより好ましくは50〜100phrの範囲内である。また、上記ニトリル/ブタジエンゴムは、上記副層中に存在する唯一の、結果として100phrの質量含有量のエラストマーを構成し得る。
【0024】
本発明の好ましい実施態様によれば、上記ニトリルゴムは、NBRゴムである。従って、上記NBRは、10質量%と60質量%の間、好ましくは20質量%と50質量%の間、特に25質量%と45質量%の間のニトリルモノマー含有量を有する。上記で説明したNBRは、商業的に入手可能であり、特に、Lanxess社から品名“Krynac 3370F”として販売されている;この製品は、約37質量%のアクリロニトリルを含み、且つ約−27℃のガラス転移温度を有する。
【0025】
本発明のもう1つの特定の実施態様によれば、上記ニトリル/ブタジエンゴムは、SNBRである。SNBRゴムは周知である;SNBRゴムは、特に、文献EP 0 366 915号、EP 0 537 640号またはUS 5 225 479号、EP 0 736 399号またはUS 5 859 115号において、タイヤトレッドとしてのその用途に沿って説明されている。
【0026】
使用し得るスチレンモノマーは、好ましくは、スチレン、α‐メチルスチレン、2‐メチルスチレン、3‐メチルスチレン、4‐メチルスチレン、4‐シクロヘキシルスチレン、4‐(p‐トルエン)スチレン、p‐クロロスチレン、p‐ブロモスチレン、4‐(tert‐ブチル)スチレンまたはこれらの化合物の混合物のような、分子中に8〜16個の炭素原子を含むスチレンモノマーであり、それらモノマーのうちでは、スチレンがより好ましい。
【0027】
本発明のより特定の実施態様によれば、上記SNBRは、5質量%と30質量%の間のニトリルモノマー含有量を有する。
上記のSNBRは、商業的に入手可能であり、特に、Lanxess社から品名“Krynac VP KA 8683”として販売されている;この製品は、約30質量%のスチレンおよび約10質量%のアクリロニトリルを含み、且つ約−34℃のガラス転移温度を有する。
【0028】
もう1つの特定の実施態様によれば、本発明に従うタイヤトレッドの上記副層のゴム組成物は、上記ニトリル/ブタジエンゴム以外の少なくとも1種の第2のジエンエラストマーをさらに含む;この任意構成成分としてのエラストマーは、0〜70phrの、好ましくは多くとも60phrの、より好ましくは多くとも50phrの含有量に従って存在する。
【0029】
上記第2ジエンエラストマーは、ポリブタジエン(BR)、合成ポリイソプレン(IR)、天然ゴム(NR)、ブタジエンコポリマー、イソプレンコポリマーおよびこれらのエラストマーの混合物からなる群から選ばれる。そのようなコポリマーは、より好ましくは、ブタジエン/スチレンコポリマー(SBR)、イソプレン/ブタジエンコポリマー(BIR)、イソプレン/スチレンコポリマー(SIR)、イソプレン/ブタジエン/スチレンコポリマー(SBIR)およびこれらエラストマーの混合物からなる群から選ばれる。
【0030】
より好ましくは、上記第2ジエンエラストマーは、天然ゴム、ポリブタジエンおよびこれらエラストマーの混合物からなる群から選ばれる。
これらの第2ジエンエラストマーは、例えば、ブロック、ランダム、序列または微細序列エラストマーであり得、分散液中または溶液中で調製し得る;これらのエラストマーは、カップリング剤および/または星型枝分れ化剤(star‐branching agent)或いは官能化剤によってカップリングしおよび/または星型枝分れし或いは官能化し得る。
【0031】
以下が、特に適している:特に4%と80%の間の1,2‐単位含有量(モル%)を有するポリブジエンまたは80%よりも多いシス‐1,4‐単位含有量(モル%)を有するポリブタジエン;ポリイソプレン;ブタジエン/スチレンコポリマー、特に、0℃と−70℃の間、特に−10℃と−60℃の間のTg (ガラス転移温度、ASTM D3418に従って測定)、5質量%と60質量%の間、特に20質量%と50質量%の間のスチレン含有量、4%と75%の間のブタジエン成分1,2‐結合含有量(モル%)および10%と80%の間のトランス‐1,4‐結合含有量(モル%)を有するコポリマー;ブタジエン/イソプレンコポリマー、特に、5質量%と90質量%の間のイソプレン含有量および−40℃〜−80℃のTgを有するコポリマー;または、イソプレン/スチレンコポリマー、特に、5質量%と50質量%の間のスチレン含有量および−25℃と−50℃の間のTgを有するコポリマー。
【0032】
もう1つの特定の実施態様によれば、上記第2ジエンエラストマーは、イソプレンエラストマーである。特に、イソプレンコポリマーのうちでは、イソブテン/イソプレンコポリマー(ブチルゴム;IIR)、イソプレン/スチレンコポリマー(SIR)、イソプレン/ブタジエンコポリマー(BIR)またはイソプレン/ブタジエン/スチレンコポリマー(SBIR)が挙げられる。このイソプレンエラストマーは、好ましくは、天然ゴムまたは合成シス‐1,4‐ポリイソプレンである;これらの合成ポリイソプレンのうちでは、好ましくは90%よりも多い、さらにより好ましくは98%よりも多いシス‐1,4結合含有量(モル%)を有するポリイソプレンを使用する。
【0033】
III.2‐補強用充填剤
タイヤの製造において使用することのできるゴム組成物を補強するその能力について知られている任意のタイプの補強用充填剤、例えば、カーボンブラックのような有機充填剤、シリカのような補強用無機充填剤、またはこれら2つのタイプの充填剤のブレンド、特に、カーボンブラックとシリカとのブレンドを使用することができる。
【0034】
全てのカーボンブラック、特にタイヤ級ブラック類は、カーボンブラックとして適している。さらに詳細には、後者のうちでは、例えば、N115、N134、N234、N326、N330、N339、N347、N375ブラック類のような、100、200または300シリーズの補強用カーボンブラック類(ASTM級)、或いは、目標とする用途次第では、より高級シリーズのブラック類(例えば、N660、N683またはN722ブラック類)が挙げられる。カーボンブラックは、例えば、マスターバッチの形で、イソプレンエラストマー中に既に混入させていてもよい(例えば、出願 WO 97/36724号またはWO 99/16600号を参照されたい)。
【0035】
カーボンブラック以外の有機充填剤の例としては、出願 WO‐A‐2006/069792号、WO‐A‐2006/069793号、WO‐A‐2008/003434号およびWO‐A‐2008/003435号に記載されているような官能化ポリビニル有機充填剤を挙げることができる。
【0036】
“補強用無機充填剤”とは、本特許出願においては、定義によれば、カーボンブラックに対比して“白色充填剤”、“透明充填剤”としてまたは“非黒色充填剤”としてさえも知られており、それ自体単独で、中間カップリング剤以外の手段によることなく、タイヤの製造を意図するゴム組成物を補強し得る、換言すれば、通常のタイヤ級カーボンブラックとその補強機能において置換わり得る任意の無機または鉱質充填剤(その色合およびその由来にかかわらない、天然または合成の)を意味するものと理解すべきである;そのような充填剤は、一般に、知られている通り、その表面でのヒドロキシル(‐OH)基の存在に特徴を有する。
【0037】
補強用無機充填剤を提供する物理的状態は、粉末、マイクロビーズ、顆粒、ビーズまたは任意の他の適切な高密度化形のいずれの形状であれ重要ではない。勿論、補強用無機充填剤とは、種々の補強用無機充填剤、特に、下記で説明するような高分散性シリカ質および/またはアルミナ質充填剤の混合物も意味することを理解されたい。
【0038】
シリカ質タイプの鉱質充填剤、特にシリカ(SiO2)、またはアルミナ質タイプの鉱質充填剤、特にアルミナ(Al2O3)が、補強用無機充填剤として特に適している。使用するシリカは、当業者にとって既知の任意の補強用シリカ、特に、共に450m2/g未満、好ましくは30〜400m2/gであるBET表面積とCTAB比表面積を示す任意の沈降またはヒュームドシリカであり得る。高分散性沈降シリカ(“HDS”)としては、例えば、Degussa社からのUltrasil 7000およびUltrasil 7005シリカ類;Rhodia社からのZeosil 1165MP、1135MPおよび1115MPシリカ類;PPG社からのHi‐Sil EZ150Gシリカ;Huber社からのZeopol 8715、8745または8755シリカ類;または、出願 WO 03/16837号に記載されているような高比表面積を有するシリカ類が挙げられる。
【0039】
使用する補強用無機充填剤は、特にシリカである場合、好ましくは45m2/gと400m2/gの間、より好ましくは60m2/gと300m2/gの間のBET表面積を有する。
【0040】
補強用充填剤(カーボンブラックおよび/またはシリカのような補強用無機充填剤)の総含有量は、30phrよりも多く、好ましくは30phrと100phrの間、より好ましくは35phrと85phrの間の量である。30phrよりも少ないと、上記副層の固着力が不十分であると判断されている;100phrよりも多いと、上記副層の過剰の硬化のリスクが生じる。
【0041】
補強用無機充填剤をジエンエラストマーにカップリングさせるためには、知られている通り、無機充填剤(その粒子表面)とジエンエラストマー間に化学的および/または物理的性質の十分な結合をもたらすことを意図する少なくとも二官能性であるカップリング剤(または結合剤)、特に、二官能性のオルガノシランまたはポリオルガノシロキサン類を使用する。
特に、例えば出願 WO 03/002648号(またはUS 2005/016651号)およびWO 03/002649号(またはUS 2005/016650号)に記載されているような、その特定の構造によって“対称形”または“非対称形”と称するシランポリスルフィドを使用する。
【0042】
下記の一般式(I)に相応する“対称形”シランポリスルフィドは、以下の定義に限定されることなく、特に適している:
(I) Z ‐ A ‐ Sx ‐ A ‐ Z
[式中、xは、2〜8 (好ましくは2〜5)の整数であり;
Aは、2価の炭化水素系基(好ましくはC1〜C18アルキレン基またはC6〜C12アリーレン基、特にC1〜C10、特にC1〜C4アルキレン、特にプロピレン)であり;
Zは、下記の式の1つに相応する:
【化1】

(式中、R1基、置換されていないかまたは置換されており、互いに同一または異なるものであって、C1〜C18アルキル、C5〜C18シクロアルキルまたはC6〜C18アリール基(好ましくはC1〜C6アルキル、シクロヘキシルまたはフェニル基、特にC1〜C4アルキル基、特にメチルおよび/またはエチル)を示し;
R2基は、置換されていないかまたは置換されており、互いに同一または異なるものであって、C1〜C18アルコキシルまたはC5〜C18シクロアルコキシル基(好ましくは、C1〜C8アルコキシルおよびC5〜C8シクロアルコキシルから選ばれる基、さらにより好ましくはC1〜C4アルコキシルから選ばれる基、特にメトキシルおよびエトキシル)を示す)]。
【0043】
上記式(I)に相応するアルコキシシランポリスルフィド類の混合物、特に、通常の商業的に入手可能な混合物の場合、“x”指数の平均値は、好ましくは2と5の間の、より好ましくは4に近い分数である。しかしながら、本発明は、例えば、アルコキシシランジスルフィド(x = 2)によっても有利に実施し得る。
【0044】
さらに詳細には、シランポリスルフィドの例としては、特に、例えば、ビス(3‐トリメトキシシリルプロピル)またはビス(3‐トリエトキシシリルプロピル)ポリスルフィドのような、ビス((C1〜C4)アルコキシル(C1〜C4)アルキルシリル(C1〜C4)アルキル)ポリスルフィド類(特に、ジスルフィド、トリスルフィドまたはテトラスルフィド類)が挙げられる。特に、これらの化合物のうちでは、式[(C2H5O)3Si(CH2)3S2]2を有するTESPTと略称されるビス(3‐トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、または式[(C2H5O)3Si(CH2)3S]2を有するTESPDと略称されるビス(トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィドを使用する。また、好ましい例としては、特許出願WO 02/083782号(またはUS 2004/132880号)に記載されているような、ビス(モノ(C1〜C4)アルコキシルジ(C1〜C4)アルキルシリルプロピル)ポリスルフィド類(特に、ジスルフィド、トリスルフィドまたはテトラスルフィド類)、特に、ビス(モノエトキシジメチルシリルプロピル)テトラスルフィドも挙げられる。
【0045】
アルコキシシランポリスルフィド類以外のカップリング剤としては、特に、特許出願WO 02/30939号(またはUS 6 774 255号)およびWO 02/31041号(またはUS 2004/051210号)に記載されているような、二官能性POS (ポリオルガノシロキサン)類またはヒドロキシシランポリスルフィド(上記式VIIIにおいて、R2 = OH)、或いは、例えば、特許出願WO 2006/125532号、WO 2006/125533号およびWO 2006/125534号に記載されているような、アゾジカルボニル官能基を担持するシランまたはPOS類が挙げられる。
本発明に従うゴム組成物においては、カップリング剤の含有量は、好ましくは4phrと12phrの間、より好ましくは4phrと8phrの間の量である。
【0046】
当業者であれば、この項において説明した補強用無機充填剤と等価の充填剤として、もう1つの性質、特に、有機性を有する補強用充填剤を、この補強用充填剤がシリカのような無機層で被覆されているか、或いは、充填剤とエラストマー間の結合を確立させるためにカップリング剤の使用を必要とするその表面官能部位(特にヒドロキシル部位)を含むかを条件として使用し得ることを理解されたい。
【0047】
III.3‐各種添加剤
また、上記トレッドの副層のエラストマー組成物は、例えば、化学オゾン劣化防止剤、酸化防止剤のような保護剤;少量、好ましくは20phr未満、特に10phr未満の任意構成成分としての可塑剤または増量剤オイル(後者は、芳香族性または非芳香族性のいずれか、特に、極めて僅かに芳香族系かまたは非芳香族系のオイル、例えば、高粘度または好ましくは低粘度を有するナフテン系またはパラフィン系タイプのオイル、MESオイルまたはTDAEオイルである);高Tgを有する可塑化用炭化水素樹脂;粘着付与性樹脂;補強用樹脂;メチレン受容体または供与体;イオウまたはイオウ供与体および/または過酸化物および/またはビスマレイミドのいずれかをベースとする架橋系;加硫促進剤;加硫活性化剤のような、タイヤ用のゴム組成物において一般的に使用する通常の添加剤の全部または1部も含み得る。
【0048】
また、上記トレッドの副層の組成物は、カップリング剤を使用する場合のカップリング活性化剤、無機充填剤を使用する場合の無機充填剤用の被覆剤、或いは、知られている通り、ゴムマトリックス中での充填剤の分散性を改良し組成物の粘度を低下させることによって、生状態における組成物の加工特性を改良することのできるより一般的な加工助剤も含み得る;これらの薬剤は、例えば、ヒドロキシシランまたはアルキルアルコキシシランのような加水分解性シラン;ポリオール;ポリエーテル;アミン類;或いはヒドロキシル化または加水分解性ポリオルガノシロキサン類である。
【0049】
III.4‐組成物の製造
本発明に従うトレッド副層において使用する組成物は、適切なミキサー内で、当業者にとって周知の2つの連続する製造段階、即ち、110℃と190℃の間、好ましくは130℃と180℃の間の最高温度までの高温において熱機械的に加工または混練する第1段階(“非生産”段階)、および、その後の典型的には110℃よりも低い、例えば、40℃と100℃の間の低めの温度に下げて機械的に加工する第2段階(“生産”段階)を使用して製造し得る;上記仕上げ段階において、架橋系を混入する。
【0050】
そのような組成物の調製方法は、例えば、下記の段階を含む:
・ミキサー内で、40質量%と90質量%の間のブタジエン含有量を有する少なくとも30〜100phrのニトリル/ブタジエンゴム中に、第1(“非生産”)段階において、30phrよりも多い、好ましくは30phrと100phrの間の補強用充填剤を混入し、全てを、110℃と190℃の間の最高温度に達するまで熱機械的に混練する段階(例えば、1回以上の段階において);
・混ぜ合せた混合物を100℃よりも低い温度に冷却する段階;
・その後、第2(“生産”)段階において、架橋系を混入する段階;
・全てを、110℃よりも低い最高温度まで混練する段階。
【0051】
例えば、上記非生産段階は、1回の熱機械的段階で実施する;その間に、先ず、全ての必須ベース構成成分(ニトリル/ブタジエンゴムおよび補強用充填剤)を、標準の密閉ミキサーのような適切なミキサー内に導入し、その後、引き続いて、例えば1〜2分の混錬後、架橋系を除いた他の添加剤、任意構成成分としての充填剤用のさらなる被覆剤または加工助剤を導入する。この非生産段階における総混練時間は、好ましくは1分と15分の間の時間である。
【0052】
そのようにして得られた混合物を冷却した後、架橋系を、低温(例えば、40℃と100℃の間の)に維持したオープンミルのような開放ミキサー内に導入する。その後、混ぜ合せた混合物を、数分間、例えば、2分と15分の間の時間混合する(生産段階)。
【0053】
適切な架橋系は、好ましくは、イオウと、一次加硫促進剤、特に、スルフェンアミドタイプの促進剤とをベースとする。各種既知の二次加硫促進剤または加硫活性化剤、例えば、酸化亜鉛、ステアリン酸、グアニジン誘導体(特に、ジフェニルグアニジン)等がこの加硫系に加わって来て、上記非生産第1段階および/または上記生産段階において混入する。イオウ含有量は、好ましくは、0.5phrと3.0phrの間の量であり、また、一次促進剤の含有量は、好ましくは、0.5phrと5.0phrの間の量である。
【0054】
(一次または二次)促進剤としては、イオウの存在下にジエンエラストマーの加硫促進剤として作用し得る任意の化合物、特に、チアゾールおよびその誘導体からなるタイプの促進剤、チウラムおよびジチオカルバミン酸亜鉛からなるタイプの促進剤を使用し得る。これらの促進剤は、さらに好ましくは、2‐メルカプトベンゾチアジルジスルフィド(“MBTS”と略記する)、N‐シクロヘキシル‐2‐ベンゾチアゾールスルフェンアミド(“CBS”と略記する)、N,N‐ジシクロヘキシル‐2‐ベンゾチアゾールスルフェンアミド(“DCBS”と略記する)、N‐tert‐ブチル‐2‐ベンゾチアゾールスルフェンアミド(“TBBS”と略記する)、N‐tert‐ブチル‐2‐ベンゾチアゾールスルフェンイミド(“TBSI”と略記する)、ジベンジルジチオカルバミン酸亜鉛 (“ZBEC”と略記する)およびこれらの化合物の混合物からなる群から選ばれる。好ましくは、スルフェンアミドタイプの一次促進剤を使用する。
【0055】
その後、そのようにして得られた最終組成物は、特に実験室での特性決定のための、例えば、シートまたはプラークの形にカレンダー加工するか、或いは、押出加工して、例えば、トレッド副層の製造において使用するゴム形状要素を形成させる。
本発明は、生状態(即ち、硬化前)および硬化状態(即ち、架橋または加硫後)双方の上記タイヤに関する。
【実施例】
【0056】
IV‐本発明の実施例
IV.1‐組成物の製造
以下の試験を、以下の方法で実施する:ニトリル/ブタジエンゴム、補強用充填剤および加硫系を除いた各種他の成分を、初期容器温度が約60℃である密閉ミキサー(最終充填度:約70容量%)内に連続して導入する。その後、熱機械的加工を1段階で実施する(非生産段階);この段階は、165℃の最高“落下”温度に達するまで合計で約3〜4分間続く。そのようにして得られた混合物を回収し、冷却し、その後、イオウとスルフェンアミドタイプの促進剤とを30℃のミキサー(ホモ・フィニッシャー)内で混入し、全てを適切な時間(例えば、5分と12分の間の時間)混合する(生産段階)。
【0057】
そのようにして得られた組成物を、その後、その物理的または機械的性質の測定のためのゴムのプラーク(2〜3mm厚)または薄ゴムシートの形にカレンダー加工するか、或いはトレッド副層の形に押出加工する。
【0058】
IV.2‐本発明のタイヤ
従って、上記のゴム組成物を、本発明のタイヤにおいて、タイヤのクラウンの円周方向内側であって、一方のタイヤトレッドの半径方向最外部分、即ち、走行中に道路と接触することを意図する部分と、他方の上記クラウンを補強しているベルトとの間に位置する副層として使用する。
【0059】
従って、上記副層は、下記のいずれか配置されるものと理解すべきである:
・トレッドとベルトの間のトレッドの下(即ち、このトレッドに対して半径方向内側);
・トレッド自体内;但し、この場合、タイヤの回転中に道路と接触することを意図するトレッドパターン部分の下(即ち、この部分に対して半径方向内側)。
【0060】
一様の添付図面は、ラジアルカーカス補強材を含む自動車用の空気式タイヤの本発明に従う好ましい例を、半径断面において、極めて略図的な形で示している(特に特定の縮尺に従っていない)。
この図において、略図的に示した空気式タイヤ(1)は、トレッド3(簡略化のため、極めて単純なトレッドパターンを含む)が搭載しているクラウン2、道路と接触することを意図する上記トレッドの半径方向外側部分(3a)、およびカーカス補強材(6)を固定している2つの非伸張性ビード(4)を含む。上記ビード(4)に2枚の側壁(5)によって連結されているクラウン(2)は、それ自体既知の方法で、少なくとも部分的に金属製であり且つカーカス補強材(6)に対して半径方向外側のクラウン補強材、即ち、“ベルト”(7)によって補強されている、例えば、金属ケーブルによって補強された少なくとも2枚の重ね合せ交差プライからなる。
【0061】
カーカス補強材(6)は、この場合、2本のビードワイヤー(4a、4b)の周りに巻き付けることによって各ビード(4)に固定されており、この補強材(6)の上返し(6a、6b)は、例えば、タイヤ(1)の外側に向かって位置しており、この場合、タイヤリム(9)上に取付けて示している。勿論、このタイヤ(1)は、知られている通り、タイヤの半径方向内面を構成し且つカーカスプライをタイヤの内部空間から発する空気の拡散から保護することを意図する内部ゴムまたはエラストマー層(一般に“内部ライナー”として知られる)をさらに含む。
【0062】
そのように、本発明に従うタイヤは、トレッドの半径方向外側エラストマー層(3a)の配合と異なる配合を有するトレッドの“副層”と称する半径方向内側エラストマー層(3b)を含み、この副層が上記半径方向外側層(3a)とベルト(7)の間に配置されているという特徴を有する。
【0063】
IV.3‐ゴム試験
以下の試験により、トレッドに由来する可塑剤のタイヤクラウンの内部組成物に向っての移行のリスクに関する本発明に従うトレッド副層の優れた漏れ防止特性を実証する。
このトレッドのゴム組成物は、SBRおよびNR、シリカ並びに約50phrの、2種類の可塑剤、即ち、液体可塑剤(85質量%のオレイン酸を含むヒマワリ油)と可塑化用炭化水素樹脂(ポリリモネン樹脂)の混合物をベースとする通常の組成物である。
【0064】
これらの試験の必要条件として、トレッド副層用の2通りのゴム組成物、即ち、本発明に従う組成物(以下、C.2で示す)および本発明に従わない組成物(対照組成物;以下、C.1で示す)を、上述したようにして製造した。
これら組成物の配合(phrで表す)は、下記の表1に示している。
【0065】
組成物C.1は、通常BRとNRをベースとする対照組成物であり、乗用車用の“グリーンタイヤ”のトレッド副層において使用することができる。組成物C.2は、約33質量%のアクリロニトリル単位、即ち、約67質量%のブタジエン単位を有する100phrのNBRをベースとする。硬化(加硫)後のこれら組成物の諸性質を、下記の表2に要約している。
【0066】
先ず第1に、組成物C.2は、硬化後、対照組成物の特性よりも優れている低歪み剛性(EM10)特性を示していることに注目されたい;この優れた特性は、組成物の補強性の改良の、さらにまた、増強されたドリフト推力(drift thrust)の、最後に、タイヤの改良された操作性の、当業者等とって認識可能な指標である。
【0067】
引続き、本発明に従う組成物C.2は、対照組成物C.1の値よりも僅かに高い23℃におけるtan(δ)maxの値を示していることに注目されたい;この値は、対照液剤の値よりも明らかに高いが、にもかかわらず、当業者等にとっては全く許容し得るレベルに留まっているヒステリシス(ひいては転がり抵抗性)のレベルと同義である。
【0068】
最後に、トレッドを代表する第1層中に存在する可塑剤(液体および固体)の、副層を代表する第2層との界面からの種々の距離D (第1層の中央から第2層との界面まで下がった、即ち、3.5mmから0mmまでの範囲にあるD)における総含有量の測定値を、下記の表3に列記している;これらの測定は、上記の項II‐3において説明した試験に従い実施している。
【0069】
本発明に従うタイヤの典型的なサンプル (副層として組成物C.2を使用している)における測定値は、第1層と第2層の間の界面に対しての距離D (3.5〜0mm)にかかわらず、不変(100%)であり、一方、これらの値は、対照組成物(C.1)の場合は、界面に接近すると、急速に低下する(100%から60%へ)ことに注目されたい;従って、界面(Dが0mmに等しい)においては、対照解決法のトレッド組成物は、エージング後、その初期可塑剤含有量の40%を損失していることに注目されたい。
【0070】
従って、このことは、トレッドからのタイヤクラウンの他の内部組成物に向っての移行のリスクに関連しての、本発明に従う副層の可塑剤に対するバリヤとしての有効性を明らかに例証している。
【0071】
要するに、これらの試験の結果は、本発明に従うタイヤ副層の組成物におけるニトリル/ブタジエンゴムの推奨された含有量での使用は、トレッド中に存在する可塑剤の、タイヤクラウンを構成する内部エラストマー組成物に向かっての移行リスクの問題を解決することを可能にすることを実証している。
【0072】
さらにまた、ニトリル/ブタジエンゴムをベースとする上記副層は、通常の副層(対照組成物)の低歪み剛性よりも優れており、道路挙動における改良と同義である低い歪み剛性を示すと共に、通常の副層と比較して、ヒステリシス、ひいては転がり抵抗性の許容し得るレベルを維持している。
【0073】
表1
(1) 天然解凝固ゴム;
(2) 4.3%の1,2‐、2.7%のトランス‐1,4‐、93%のシス‐1,4‐を含むBR (Tg = −106℃);
(3) NBR (Lanxess社からの“Krynac 3370F”);
(4) カーボンブラックN683 (ASTM級);
(5) N‐(1,3‐ジメチルブチル)‐N‐フェニル‐パラ‐フェニレンジアミン(Flexsys社からの“Santoflex 6‐PPD”);
(6) DPG = ジフェニルグアニジン(Flexsys社からの“Perkacit DPG”);
(7) 酸化亜鉛(工業級、Umicore社);
(8) ステアリン(Uniquema社からの“Pristerene”);
(10) N‐ジシクロヘキシル‐2‐ベンゾチアゾールスルフェンアミド (Flexsys社からの“Santocure CBS”)。
【0074】
表2
【0075】
表3
【符号の説明】
【0076】
1 空気式タイヤ
2 クラウン
3 トレッド
3a 半径方向外側エラストマー層
3b 半径方向内側エラストマー層
4 ビード
4a、4b ビードワイヤー
5 側壁
6 カーカス補強材
6a、6b カーカス補強材の上返し
7 クラウン補強材(ベルト)
9 タイヤリム
図1