(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記データ処理部は、直前の転送車両の位置から送信先の位置までの前記中継点を経由した第1距離と、自車両の位置から送信先の位置までの前記中継点を経由した第2距離とを算出し、前記第1距離よりも前記第2距離が長い場合には前記送信するための処理を停止させる、請求項1記載の車両。
前記送受信部は、前記転送データを送信するための処理の待機中に当該転送データに含まれる前記転送の目的とするデータと同一のデータを含む別の転送データを受信した場合には、前記送信するための処理を停止する、請求項2記載の車両。
前記データ処理部は、更に、前記自車両の位置の情報を含む自車両情報を生成し、前記受信した転送データにおける前記直前の転送車両の位置情報に代えて前記自車両情報を付加したデータを新たな転送データとする、請求項2記載の車両。
【発明を実施するための形態】
【0013】
1.実施の形態の概要
先ず、本願において開示される発明の代表的な実施の形態について概要を説明する。代表的な実施の形態についての概要説明で括弧を付して参照する図面中の参照符号はそれが付された構成要素の概念に含まれるものを例示するに過ぎない。
【0014】
〔1〕(中継範囲内では中継点と自車両との距離に基づいて転送待機時間を決定する。)
本発明の代表的な実施の形態に係る通信装置(100)は、車両の走行状況を示す転送データを受信し、所定の待機時間の経過後に前記転送データを送信するための処理を行う送受信部(1100)と、自車両の位置と前記受信した転送データに基づいて前記所定の待機時間を算出するための処理を行う、データ処理部(1200)とを有する。前記車両の走行状況を示す転送データは、転送の目的とするデータ(50)と、当該転送の目的とするデータの送信先の位置情報(51)と、送信先までの経路を決定する中継点の位置情報(53)と、直前の転送車両の位置情報(52)とを含む。前記データ処理部は、自車両が前記中継点に基づく所定の範囲内(CA)に位置しない場合には、直前の転送車両の位置と自車両の位置との間の距離が長いほど時間が短くなるように決定した第1時間を前記所定の待機時間とし、自車両が前記所定の範囲内に位置する場合には、自車両の位置と中継点の位置までの距離が長いほど時間が長くなるように決定した第2時間を前記所定の待機時間とする。これによれば、前記中継点に基づく所定の範囲(以下、「中継範囲」という。)内に位置する車両が転送データを受信した場合には、より中継点に近い場所に位置する車両ほど先にデータの転送を行うことができる。例えば、見通しの悪い交差点の中心を中継点に設定し、その交差点を中心とする所定の範囲を中継範囲と設定した場合、当該中継範囲は見通しが悪く、データの転送を行うことができない状況であっても、当該交差点の中心は比較的見通しがよいため、データの転送を行うことができる確率が高くなり、より効率よいデータの転送が可能となる。
【0015】
〔2〕(直前転送車両から送信先までの距離よりも自車両から送信先までの距離が長い場合には転送しない。)
項1の通信装置において、前記データ処理部は、直前の転送車両の位置から送信先の位置までの前記中継点を経由した第1距離と、自車両の位置から送信先の位置までの前記中継点を経由した第2距離とを算出し、前記第1距離よりも前記第2距離が長い場合には前記送信するための処理を停止させる。これによれば、中継点を経由した送信先までの経路に沿った転送を行うことができる確率が高くなる。
【0016】
〔3〕(中継範囲内の待機時間は中継範囲外の待機時間よりも短い。)
項2の通信装置において、前記第2時間は、前記第1時間よりも短くされる。これによれば、中継範囲内の車両の方が中継範囲外の車両よりも先に転送を行うから、データの転送を行うことができる確率がより高くなるともに、経路に沿った転送を行うことができる確率がより高くなる。
【0017】
〔4〕(転送待機中に同一車両情報を再受信したら転送しない。)
項1乃至3の何れかの通信装置において、前記送受信部は、前記転送データを送信するための処理の待機中に当該転送データに含まれる前記転送の目的とするデータと同一のデータを含む別の転送データを受信した場合には、前記送信するための処理を停止する。これによれば、同一の転送の目的とするデータの再送信を防止するから、通信量の増加を抑えることができる。
【0018】
〔5〕(自車両の位置を示す情報)
項1乃至4の何れかの通信装置において、前記データ処理部は、更に前記自車両の位置の情報を含む自車両情報を生成し、前記受信した転送データにおける前記直前の転送車両の位置情報に代えて前記自車両情報を付加したデータを新たな転送データとする。
【0019】
〔6〕(転送の目的とするデータ情報)
項1乃至5の何れかの通信装置において、前記転送の目的とするデータは、緊急車両の位置の情報、一般車両の位置情報、又は故障車両の位置の情報を含む。
【0020】
〔7〕(進行方向の情報)
項1乃至6の何れかの通信装置において、前記直前の転送車両の位置情報は、更に当該転送車両の進行方向を示す情報を含み、前記データ処理部は、前記転送車両の進行方向と自車両の進行方向とに基づいて、前記送信するための処理を実行させるか否かを決定する。これによれば、例えば、直前の転送車両の進行方向と反対方向に進んでいる車両が転送データを受信した場合であっても、当該受信車両に転送を行わせないようにすることが可能となる。
【0021】
〔8〕(通信制御方法)
本発明の代表的な実施の形態に係る車両間通信制御方法は、転送の目的とするデータと、当該転送の目的とするデータの送信先の位置情報と、送信先までの経路を決定する中継点の位置情報と、直前の転送車両の位置情報とを含む、車両の走行状況を示すデータの送受信を通信制御装置(100)を用いて行う。前記車両間通信制御方法は、他の車両が転送した前記車両の走行状況を示すデータを受信する第1処理(S401)と、前記第1処理の後に、受信したデータを転送した直前の転送車両の位置から送信先の位置までの前記中継点を経由した第1距離と、自車両の位置から送信先の位置までの前記中継点を経由した第2距離とを算出する第2処理(S404)を含む。また、前記車両間通信制御方法は、前記第2処理において算出した前記第1距離よりも前記第2距離が短い場合には、受信した車両の走行状況を示すデータを別の車両に転送するまでの待機時間を、自車両の位置と前記第1処理で受信したデータに基づいて算出する第3処理(S406、S410)と、前記第3処理で算出した前記待機時間の経過後に、前記車両の走行状況を示すデータを別の車両に転送する第4処理(S411)と、を含む。前記第3処理は、自車両が前記中継点に基づく所定の範囲内に位置しない場合には、直前の転送車両の位置と自車両の位置との間の距離が長いほど時間が短くなるように決定した第1時間を前記所定の待機時間とし(S411)、自車両が前記所定の範囲内に位置する場合には、自車両の位置と中継点の位置までの距離が長いほど時間が長くなるように決定した第2時間を前記所定の待機時間とする(S406)処理である。これによれば、項1及び2と同様の作用効果を奏する。
【0022】
〔9〕(転送待機中に同一車両情報を再受信したら転送しない。)
項8の車両間通信制御方法において、前記第4処理を行うための前記待機時間が経過する前に、前記転送すべきデータと同一の前記転送の目的とするデータを含むデータを別の車両から受信した場合には、前記第4処理を抑止する(S408)。これによれば、項4と同様の作用効果を奏する。
【0023】
〔10〕(通信システム)
本発明の代表的な実施の形態に係る車両間通信システム(10)は、車両の走行状況を示すデータの送受信を行うアンテナ部(107)と、自車両の位置を測定するセンサ部(109)と、他の車両から前記車両の走行状況を示すデータを受信したとき、前記データを送信した直前の転送車両と自車両との間の距離に反比例する時間の経過後に、前記車両の走行状況を示すデータを別の車両に送信するための処理を行う通信制御部(100)と、有する。前記通信制御部は、自車両が見通しのない範囲に位置する場合には、自車両の位置と当該見通しのない範囲の中心位置までの距離に比例した時間の経過後に車両の走行状況を示すデータを別の車両に送信するための処理を行う。これによれば、項1と同様に、より中継点に近い場所に位置する車両ほど先にデータの転送を行うことができるから、見通しの悪い交差点であってもより効率よいデータの転送が可能となる。
の作用効果を奏する。
【0024】
2.実施の形態の詳細
実施の形態について更に詳述する。
【0025】
≪実施の形態1≫
〈車両間通信システムの概要〉
図1に本発明の具体的な実施の形態に係る車両間通信システムを示す。
【0026】
図1に示される車両間通信システム10は、アンテナ部107、通信装置100、表示装置108、車載センサ装置109、及びナビゲーションシステム110を有する。前記車両間通信システム10において、前記通信装置100は、前記アンテナ部107を介して、車両の位置、移動方向、及び速度等の車両の情報(以下、「車両走行情報」とも称する。)や緊急車両の接近や事故車両の存在等を示す情報(以下、「イベント情報」とも称する。)を他の車両間通信システム10_A等から受信し、受信した情報に基づいて前記表示装置108に情報を表示し、又は受信した情報に基づいて車両制御等を行うことにより、ドライバーへの情報提供や衝突事故の回避のための処理等を行う。また、前記通信装置100は前記車載センサ装置109によって測定された自車両の位置や移動方向等の情報や前記ナビゲーションシステム110に格納された地図情報に基づいて、地図上の自車両の位置等を特定する。更に前記通信装置100は、自車両の車両走行情報やイベント情報を生成し、送信先を指定して送信する。
【0027】
前記通信装置100は、
図1に示すように、記憶装置101、CPU102、メモリ部103、入出力インターフェース104、バス105、及び無線送受信部106を有する。前記記憶装置101、前記CPU102、前記メモリ部103、及び前記入出力インターフェース104は、前記バス105に共通に接続される。
【0028】
前記記憶装置101は、HDD(Hard Disk Drive)等の記憶媒体であり、車両同士の衝突の可能性を判定するための各種の条件や、その条件にしたがって車両同士の衝突の可能性を判定するためのプログラムやパラメータ等が記憶される。前記記憶装置101が記憶する具体的な内容については後述する。
【0029】
前記CPU102は、プロセッサ等の演算装置であり、受信したパケット情報の解析、パケット情報の生成、及び通信するための統括的な制御等を行う。前記CPU102は、前記記憶装置101が記憶する種々のプログラムを読み出して、後述する前記メモリ部103にロードし、ロードしたプログラムに記載された種々の命令に従って、各種の機能を実現する。例えば、
図1において、前記CPU102と読み出されたプログラムよって実現される機能実現手段として、車両情報の送受信のための処理を実現する通信処理部1100と、取得した車両情報等に基づいて転送待機時間等を算出する処理等を実行する車両情報処理部1200を、便宜上示している。これらの詳細については後述する。
【0030】
前記メモリ部103は、RAM(Random Access Memory)等の記憶装置であり、前記CPU102がロードしたプログラムや、プログラム処理における計算結果等を一時的に記憶する。
【0031】
前記入出力インターフェース104は、前記通信装置100と、表示装置108、前記車載センサ装置109、及びナビゲーションシステム110とを接続するためのインターフェースであり、例えば、インタフェースカードである。
【0032】
前記無線送受信部106は、前記アンテナ部107と接続され、別の車両等との間で前記アンテナ部107を介した車両情報の送受信を行うための装置である。例えば、前記無線送受信部106は定期的に、周辺車両や路側通信装置から他車両の車両走行情報を受信し、また、前記車載センサ装置109によって測定された自車両の車両走行情報を他車両や路側通信装置に送信する。これにより、各車両は周辺車両の位置を認識している。
【0033】
前記アンテナ部107は送受信兼用であり、前記アンテナ部107が送信信号を出力する場合には、後述する無線送受信部106によって送信用に切り替えられ、前記アンテナ部107が受信信号を出力している場合には、前記無線送受信部106によって受信用に切り替えられる。
【0034】
前記表示装置108は、例えば、液晶ディスプレイから構成され、前記通信装置100による制御に基づいて警告情報等を表示する。
【0035】
前記車載センサ装置109は、自車両の車両走行情報を測定する。詳細は後述する。
【0036】
前記ナビゲーションシステム110は、後述する地図情報保持部1400を備え、前記地図情報保持部1400には地図情報が格納される。
【0037】
〈車両間通信システムによる通信方法〉
前記車両間通信システム10を搭載した車両間の通信方法について説明する。
【0038】
図2は、実施の形態1に係る車両間通信システム10による通信方法の概略を示す図である。
【0039】
図2に示すように、車両V0、車両V1、車両V2、車両V3、及び車両V6と、車両V4及び車両V5が、電波を通さない建築物B1及びB2が存在する見通しの悪い交差点Cに対して交差する方向で走行している。車両V0〜V6は、前記車両間通信システム10と同様の機能を有する車両間通信システム10_0〜10_6を夫々搭載している。前記車両間通信システム10_0〜10_6は、情報の送信可能範囲が決まっており、例えば、前記車両間通信システム10_0の場合は、参照符号TA0で示される範囲内の車両に対して送信が可能である。
図2では、車両V0に搭載された前記車両間通信システム10_0が、送信目的範囲DAまで送信経路DRに沿って車両情報を伝達する場合を一例として示している。
【0040】
図2において、前記車両V0は、自車両の車両走行情報とイベント情報を含む車両情報を送信目的範囲DAに向けて送信するが、送信目的範囲DAは前記車両V0の送信可能範囲TA0の範囲外であるため、マルチホップ通信により通信を行う。すなわち、前記車両V0は、前記送信可能範囲TA0内に位置する別の車両に当該車両情報を送信し、受信した車両が中継車両となって当該車両情報を転送することで送信目的範囲DAまで送信する。このとき、前記車両V0は、前記車両情報に加えて送信目的範囲DAの位置等を示す情報(以下、「送信先範囲情報」と称する)と、送信経路を指定するための中継点の位置等を示す情報(以下、「中継点情報」と称する。)を併せた情報をパケット形式に変換し、パケット情報として送信する。パケット情報を受信した中継車両は、受信したパケット情報に基づいて転送を行うか否かを決定し、転送を行う場合には、所定の時間経過後、パケット情報の転送を開始する。
【0041】
パケット情報を受信した車両が転送を行うか否かの判断は、以下の方法で行う。
【0042】
パケット情報を受信した中継車両は、自車両の位置から送信目的範囲DAまでの中継点Pを経由した距離
(以下、「自車両からの距離」と称する。)と、当該パケット情報を送信した直前の転送車両の位置から送信可能範囲DAまでの中継点Pを経由した距離(以下、「直前の転送車両からの距離」と称する。)を比較し、自車両の距離の方が短い場合には転送を行い、長い場合には転送を行わない。例えば、
図2の場合、車両V0が送信したパケット情報を受信した車両が、V1、V2、V3、及びV6であった場合、前記車両V6は、自らの位置から中継点Pを経由した送信可能範囲DAまでの距離が転送元の前記車両V0の中継点Pを経由した送信可能範囲DAまでの距離よりも長いため、転送は行わない。これにより、受信したすべての車両が転送を行うことを防止し、全体的な通信量を減らすことが可能となる。また、前記車両V6のように送信目的範囲DAに対して転送元の車両よりも離れた場所に存在する車両は、指定された経路DRから外れた場所に位置している場合が多いため、このような車両が転送を行わないことにより、経路に沿った転送が実現される確率が高くなり、効率的な情報の伝達が可能となる。
【0043】
次に転送を行うと判断した車両が転送を行う際の転送ルールは以下である。
【0044】
前述のようにパケット情報を受信した車両は、所定の時間経過後転送を開始する。このパケット情報を受信してから転送を行うまで待機する時間(以下、「転送待機時間」と称する。)は、受信した車両の位置に基づいて決定される。転送待機時間の決定方法は、中継車両が中継点に基づく中継範囲内に位置するか否かによって2つの方法に分けられる。ここでは、
図2において、中継点を交差点Cの中心点Pとし、中継範囲を参照符号CAで示される範囲とする。以下、転送待機時間の決定方法について詳細に説明する。
【0045】
図3は、中継車両が中継範囲CA外に存在する場合の転送待機時間の決定方法の一例を示す説明図である。
【0046】
中継車両が中継範囲CA外に存在する場合、転送待機時間は夫々の中継車両の転送元からの距離に応じて決定される(以下、「転送待機時間決定プロセス1」と称する。)。
【0047】
図3の参照符号(A)に示される図は、パケット情報の送信元である車両VR0が、送信可能範囲TA内に位置するVR1〜VR3に対してパケット情報を送信し、受信したVR1〜VR3がパケット情報を転送する場合が示されている。前記車両VR1〜VR3は夫々、パケット情報の送信元である車両VR0から距離LR1、LR2、LR3離れた場所に位置している。なお、距離LRMAXは、前記車両VR0の送信可能な最大の距離を表している。
【0048】
図3の参照符号(B)に示される図は、転送待機時間と転送元からの距離の関係の一例を示した図である。参照符号(B)に示されるように、各中継車両VR1〜VR3の転送待機時間TR1〜TR3は、夫々の中継車両の転送元VR0からの距離に応じて決定され、当該距離が長いほど待機時間が短くなるように決定される。これにより、参照符号(A)に示される場合には、転送元車両VR0からパケット情報を受信した車両のうち車両VR3が最初に転送を開始することになる。このようにすることで、転送元からより遠くに位置する車両から転送を開始するから、より少ない転送回数で車両情報を送信先範囲まで伝達することができる。すなわち、送信先範囲まで短い時間での車両情報を伝達が可能となる。
【0049】
一方、中継車両が中継範囲CA内に存在する場合の転送待機時間の決定方法は以下である。
【0050】
図4は、中継車両が中継範囲CA内に存在する場合の転送待機時間の決定方法の一例を示した説明図である。
【0051】
中継車両が中継範囲CA内に存在する場合、転送待機時間は中継車両の中継点からの距離に応じて決定される(以下、「転送待機時間決定プロセス2」と称する。)。
【0052】
図4の参照符号(A)に示される図は、中継範囲CA内に中継車両VR1〜VR3が存在する場合が示されている。前記車両VR1〜VR3は夫々、中継範囲CAの中心点Pから距離LC1、LC2、LC3離れた場所に位置している。なお、距離LCMAXは、中継範囲CAの最大範囲となる距離を表している。
【0053】
図4の参照符号(B)に示される図は、転送待機時間と中心点Pからの距離の関係の一例を示した図である。参照符号(B)に示されるように、各中継車両VR1〜VR3の転送待機時間は、夫々の中継車両の中継範囲CAの中心点Pからの距離に応じて決定され、当該距離が長いほど待機時間が長くなるように決定される。また、転送待機時間決定プロセス2で決定される転送待機時間は、転送待機時間決定プロセス1で決定される転送待機時間よりも短く設定される。すなわち、中継範囲CAの最大範囲を示す距離LCMAXにおける転送待機時間TCMAXは、前記車両VR0の送信可能な最大の距離LRMAXにおける転送待機時間TRMINよりも短くされる。これにより、中継点Pにより近くに位置する車両から転送を開始することになる。すなわち、見通しの悪い交差点付近であってもその中で比較的見通しのよい、交差点の中心に存在する車両から転送を開始することが可能となるから、転送が成功する可能性が高くなる。
【0054】
上記の何れかの方法で転送待機時間が決定されると、中継車両は当該時間の経過後、転送を開始するが、その待機中に同一のパケット情報を再度受信した場合、転送を行うための処理を停止する。例えば、
図3の参照符号(A)において、車両VR0が送信したパケット情報を車両VR3が車両VR1、VR2、及びVR4に転送した場合、前記車両VR1及びVR2は、転送するための処理を停止する。これは、前記車両VR3が車両VR0から受信したパケット情報を先に転送したことにより、前記車両VR1及びVR2が同一のパケット情報を転送する必要性が低くなることを考慮したものである。このように転送待機中に同一のパケット情報を受信したら転送を中止するので、通信量の増加を防止することができる。
【0055】
図2において、上記転送ルールによるパケット情報の転送は以下のようになる。
【0056】
まず、送信元となる車両V0が、パケット情報を送信可能範囲TA0に位置する別の車両に対して送信を行う。
図2において、車両V4は車両V0の送信可能範囲TA0内に位置するが、車両V0と車両V4の間に電波を通さない建築物B1があるため、パケットの送受信ができない可能性が高い。ここでは車両V0の送信したパケット情報は、車両V4以外の車両V1、V2、V3、及びV6に送信されたとする。
【0057】
次に、前記車両V1、V2、V3、及びV6は、受信したパケット情報を転送するか否かを判定する。例えば、前記車両V6は、前述したように送信元の車両V0よりも送信目的範囲DAまでの中継点Pを経由した距離が長いので転送は行わない。そのため、待機時間を決定して転送するための処理を行う車両は、車両V1、V2、及びV3となる。
【0058】
次に、前記車両V1、V2、及びV3は転送待機時間を決定する。
【0059】
前記車両V1及びV2は中継範囲CA内に位置するため、前記転送待機時間決定プロセス2により転送待機時間を決定する。一方、前記車両V3は中継範囲CA外に位置するため、前記転送待機時間決定プロセス1により転送待機時間を決定する。そして、前述のように、前記転送待機時間決定プロセス2で決定される転送待機時間は、前記転送待機時間決定プロセス1で決定される転送待機時間よりも短く設定されることから、前記車両V3よりも前記車両V1及びV2が先に転送を開始する。更に、前記車両V1と車両V2の位置を比較すると、前記車両V2の方が中継点Pの近くに存在するため、前記車両V2の方が転送待機時間は短く設定される。したがって、前記車両V1、V2、及びV3のうち、前記車両V2が先にパケット情報の転送を開始する。
【0060】
前記車両V2が転送を行うことにより、前記車両V2の送信可能範囲TA2内に存在する前記車両V1、V3、及びV4がパケット情報を受信する。ここで、前記車両V1及び車両V3は、すでに同一のパケット情報を受信しているので、待機中であった転送するための処理を停止する。一方、前記車両V4は前記車両V0からパケット情報を受けっておらず、且つ送信元の車両V2よりも送信目的範囲DAまでの距離が短いので、転送するための処理を開始する。このとき前記車両V4は中継範囲CA外に位置するので、転送待機時間決定プロセス1により転送待機時間が決定され、当該転送待機時間経過後に転送を実行し、送信目的範囲内DAにいる車両V5にパケット情報を転送する。
【0061】
これによれば、交差点C付近に位置する車両のうち、見通しの悪い交差点付近において比較的見通しのよい中心付近に存在する車両V2が先に転送を行うから、転送が成功する可能性がより高くなり、且つより短時間に送信目的範囲まで転送を行うことが可能となる。
【0062】
〈前記通信装置100による詳細動作〉
上記の通信は、前記通信装置100が車両センサ装置109及びナビゲーションシステム110の情報等に基づいて制御、実行することにより実現される。
【0063】
以下、前記車両センサ装置109、前記ナビゲーションシステム110、及び前記通信装置100の詳細について説明する。
【0064】
図5は、前記通信装置100とそれに接続される前記表示装置108等の機能的な構成を示すブロック図である。
【0065】
図5において、前記車両センサ装置109は、自車両の位置を検出する自車両位置検出部1301と、自車両の走行速度を検出する自車両走行速度検出部1302と、自車両の進行方向を検出する自車両進行方向検出部1303を有する。前記自車両位置検出部1301は、例えば、全地球測位システム(GPS:Global Positioning System)であり、図示されないタイマから現在の時刻を読み取って自車両の緯度および経度を測定する。前記自車両走行速度検出部1302は、例えば、スピードセンサ又はジャイロスコープであり、ジャイロスコープは自車両の加速度や角度を測定し、スピードセンサは自車両の速度を測定する。前記自車両進行方向検出部1303は、例えば、コンパス、又はジャイロコンパスであり、自車両の移動方向を測定する。
【0066】
前記ナビゲーションシステム110は、地図情報を保持する地図情報保持部1400を有する。
【0067】
図6は、前記地図情報保持部1400に格納される地図情報のフォーマットの一例を示す説明図である。
【0068】
図6に示すように前記地図情報保持部1400は、中継する交差点やカーブを示す結点を示す結点の情報を有する。前記結点の情報は、例えば、交差点やカーブを示す結点を一意に特定するための結点ID(Identifier)と、結点の位置の緯度を示す結点緯度情報1と、結点緯度情報1が北緯又は南緯の何れであるかを示す結点緯度情報2と、結点の位置の経度を示す結点経度情報1と、結点経度情報1が東経または西経の何れであるかを示す結点経度情報2とを含む。更に、前記結点の情報は、当該結点と繋がる別の結点の結点IDと、当該結点に繋がる夫々の結点との距離を示す結点間の距離情報と、当該結点の大きさの情報を含んでいる。
図6に示す内容の意味は以下である。結点IDが「1」として登録されている半径5mの大きさの結点が、「4807.038247」(北緯)、「01131.324523」(東経)に位置している。そして、当該結点1は、結点2、結点3、及び結点4と繋がっており、結点2との距離は30mであり、結点4との距離は40mであることを示している。このように、前記地図情報保持部1400に格納された地図情報においては、道路は2つの結点を結ぶ線分として定義される。
【0069】
図5に示される、前記通信装置100における通信処理部1100と車両情報処理部1200は、前述したように前記CPU102が前記記憶装置101から読み出したプログラムを実行することによって実現される機能実現手段である。
【0070】
前記通信処理部1100は、無線送受信処理部1101と、車両情報送信処理部1102と、車両走行情報受信処理部1103を有する。
【0071】
前記無線送受信処理部1101は、前記無線送受信部106がアンテナ部107を介して受信したパケット情報を、前記車両情報受信処理部1103に出力する。
【0072】
前記車両情報受信処理部1103は、取得したパケット情報に係る車両情報を、前記車両情報処理部1200が読み取り可能な形式に変換し、変換した車両情報を前記車両情報処理部1200に対して出力する。
【0073】
前記車両情報送信処理部1102は、前記車両情報処理部1200から与えられた車両情報をパケット形式に変換する。そして、前記車両情報処理部1200によって転送待機時間が設定されると転送待機時間をカウントし、当該時間の経過後、変換した車両情報に係るパケット情報を前記無線送受信処理部1101に出力する。パケット情報を受け取った前記無線送受信処理部1101は、前記無線送受信部106に当該パケット情報を与え、送信する処理を実行させる。
【0074】
ここで、車両情報に係るパケット情報のフォーマットについて説明する。
【0075】
図7は、車両情報のパケット形式のフォーマットの一例を示す説明図である。
【0076】
図7に示されるように、車両情報には、例えば、当該車両情報の送信目的となる情報である送信元の車両情報50と、送信先を指定する送信先範囲情報51と、直前に転送した車両の転送車両走行情報52と、中継点をあらわす情報である中継点情報53が含まれる。これらの情報の詳細は以下である。
【0077】
前記送信元の車両情報50には、車両情報を送信した車両を一意に特定するための送信元車両ID(Identifier)と、前記イベント情報として提供するサービスの種別を表す情報(サービス種別ID)と、送信元車両の車両走行情報が含まれる。前記サービス種別IDは、例えば、当該送信元の車両が、緊急車両等であることを示す識別IDである。
【0078】
図8は、前記サービス種別IDの一例を示す説明図である。
【0079】
図8において、サービス種別ID“1”は緊急車両の位置情報を提供することを表わし、サービス種別ID“2”は一般車両の位置情報を提供することを表わし、サービス種別ID“3”は事故車両の位置情報を提供することを表わしている。
【0080】
また、前記送信元の車両情報50に含まれる前記送信元車両の車両走行情報としては、例えば、
図5に示されるような情報を含む。すなわち、前記送信元車両の車両走行情報は、送信元車両が位置する緯度を示す送信元車両緯度情報1と、送信元車両緯度情報1が北緯(N)又は南緯(S)の何れであるかを示す送信元車両緯度情報2を含む。また、前記送信元車両の車両走行情報は、送信元車両が位置する経度を示す送信元車両経度情報1と、送信元車両経度情報1が東経(E)又は西経(W)の何れであるかを示す送信元車両経度情報2を含む。更に、前記送信元車両の車両走行情報は、送信元車両の移動方向、走行速度、及び、送信元車両が位置情報を測定した時間を含む。
【0081】
前記送信先範囲情報51には、例えば、送信先範囲の中心点の緯度を示す送信範囲緯度情報1と、送信範囲緯度情報1が北緯または南緯の何れであるかを示す送信緯度情報2と、前記送信先範囲の中心点の経度を示す送信範囲経度情報1と、送信範囲経度情報1が東経または西経の何れであるかを示す送信範囲経度情報2とが含まれる。また、前記送信先範囲情報51には、送信先範囲の大きさと送信先範囲の形状を示す送信範囲の図形が含まれる。例えば、
図7に示される場合、前記送信先範囲は、送信先範囲の形状は円形で表わされ、送信先範囲の広さは、送信先範囲の中心からの大きさで決定される。
【0082】
前記転送車両走行情報52には、例えば、車両情報を直前に転送した車両を一意に特定するための転送車両IDと、転送車両が位置する緯度を示す転送車両緯度情報1と、転送車両が北緯または南緯の何れであるかを示す転送車両緯度情報2と、転送車両が位置する経度を示す転送車両経度情報1と、転送車両が東経または西経のいずれであるかを示す転送車両経度情報2と、が含まれる。
【0083】
前記中継点情報53は、車両情報を転送する経路を決定するための中継点を表わす情報が、中継点毎に格納される。例えば、中継点とする交差点やカーブを示す位置情報が中継点の数Nだけ格納される。中継点の位置情報は、中継点の中心点の緯度を表わす中継点緯度情報1と、中継点緯度情報1が北緯または南緯の何れであるかを示す中継点緯度情報2と、中継点の中心点の経度を表わす中継点緯度情報1と、中継点緯度情報1が北緯または南緯の何れであるかを示す中継点緯度情報2を含む。また、中継点の大きさと中継範囲の形状を示す図形が含まれる。
【0084】
図7に示すパケット情報が示す内容は以下である。車両IDが「1000」として登録されている送信元車両が、測位時間「12:35:19.00」において、「4807.038247」(北緯)、「01131.324523」(東経)の位置し、東経0度の方向から東経90度の方向(北向き)に60度の方向に、時速60kmで走行していることが示されている。また、当該送信元車両が、緊急車両の位置情報を提供するために、「4807.038250」(北緯)、「01131.3245230」(東経)を中心とした半径5mの円形の形状で定められた中継点を含むN個の中継点を指定して、「4807.038248」(北緯)、「01131.324524」(東経)を中心とした半径5mの円形の形状で定められた送信先範囲に向けて、送信したことを示している。さらに、当該情報は、車両ID「999」として登録されている転送車両が、「4807.038249」(北緯)、「01131.324525」(東経)において転送した車両情報であることを表わしている。
【0085】
前記車両情報処理部1200は、情報処理部1201、警告部1202、及び走行情報測定処理部1203を有する。
【0086】
前記警告部1202は、前記車両情報受信処理部1103から受け取った車両情報に基づいて、衝突可能性等を算出し、必要があればドライバーに警告するための情報を生成し、前記表示装置108を制御して警告情報を表示させる。例えば、
図2の場合において、車両V2が、車両V1から車両情報を受け取った場合において、車両V1との衝突可能性が高いと判断したら前記表示装置108にその旨を表示して警告する。
【0087】
前記走行情報測定処理部1203は、前記車両センサ情報処理部1300を制御し、前記自車両位置検出部1301、前記自車両走行速度検出部1302、及び前記自車両進行方向検出部1303によって測定された自車両の位置、走行速度、及び進行方向の情報等の車両走行情報を取得し、図示されないレジスタ等の記憶領域に測定結果を保持する。前記走行情報測定処理部1203は、定期的に自車両の車両走行情報を取得し保持するが、前記情報処理部1201の処理要求に基づいて、前記車両センサ情報処理部1300から自車両の車両走行情報を取得し保持してもよい。
【0088】
前記情報処理部1201は、前記車両情報受信処理部1103から車両情報を受け取ると、当該車両情報の別の車両への転送の必要性を判断し、転送必要と判断した場合には転送待機時間を算出し、算出した転送待機時間を前記車両情報送信処理部1102に設定するとともに、転送する車両情報を与える。具体的には、前記情報処理部1201は、前記車両情報測定処理部1203によって記憶された自車両の車両走行情報を参照し、自車両走行情報を読み出す。次に、前述したように受信した車両情報と自車両走行情報に基づいて、前記自車両からの距離と前記直前の転送車両からの距離を比較し、転送するか否かを判断する。転送すると判断した場合は、前記転送待機時間決定プロセス1又は前記転送待機時間決定プロセス2によって転送待機時間を算出する。そして、前記情報処理部1201は、前記車両情報送信処理部1102に対し、転送対象の走行情報を与えると共に、算出した転送待機時間を設定する。
【0089】
また前記情報処理部1201は、送信先範囲を指定して車両情報を送信するための処理を行う。具体的には、前記情報処理部1201は、前記地図情報保持部1400を参照して送信先と中継点を決定し、
図7に示したような走行情報を生成し、前記車両情報送信処理部1102に与える。
【0090】
〈車両情報の転送処理の流れ)
前記情報処理部1201による受信した車両情報の転送処理の流れについて
図9を用いて詳細に説明する。
【0091】
図9は、前記情報処理部1201による車両情報の転送処理を示す流れ図である。
【0092】
まず、前記無線送受信部106が前記アンテナ部107を介して車両情報に係るパケット情報を受信すると、受信されたパケット情報が前記無線送受信処理部1101を介して、前記車両情報受信処理部1103に与えられる(S401)。前記車両情報受信処理部1103は、受信した車両情報に係るパケット情報を、パケット形式から前記情報処理部1201が読み取り可能な形式にデータ変換し、変換した車両情報を前記情報処理部1201に与える(S402)。車両情報を受信した前記情報処理部1201は、自車両の位置が送信先範囲に位置するか否かを判定する(S403)。具体的には、前記情報処理部1201は、前記走行情報測定処理部1203によりレジスタ等に記憶された自車両の走行情報を参照し、当該自車両の走行情報と受信した車両情報を比較することにより判定を行う。例えば、
図7に示す送信先範囲の情報である送信先範囲緯度情報1、送信先範囲経度情報1、送信先範囲の大きさ、及び送信範囲の図形から決定される送信先範囲内に自車両が存在するか否かを、自車両の走行情報に含まれる車両緯度情報及び車両経度情報から判定する。ステップ403において、自車両が送信先範囲内にあると判定した場合、送信元から送信された車両情報が指定された送信先範囲まで伝達されたと判断し、転送処理を終了する(S412)。
【0093】
一方、自車両が送信先範囲内に位置しないと判定した場合、受信した車両情報を転送する必要があるか否かを判定する(S404)。具体的には、前記情報処理部1201は、自車両の走行情報と受信した車両情報に基づいて、前記自車両からの距離と前記直前の転送車両からの距離を算出し、比較を行う。例えば、前記情報処理部1201は、自車両の車両緯度情報及び車両経度情報から特定される自車両の位置と、送信先範囲緯度情報と送信先範囲経度情報から特定される送信先範囲の位置と、中継点毎の中継点緯度情報と中継点経度情報から特定されるN個の中継点の位置とを結ぶ転送経路の距離を、前記自車両からの距離として算出する。また、前記情報処理部1201は、直前の転送車両の転送車両緯度情報及び転送車両経度情報から特定される直前転送車両の位置と、前記送信先範囲の位置と、前記N個の中継点の位置とを結ぶ転送経路の距離を、前記直前の転送車両からの距離として算出する。そして、前記情報処理部1201は、夫々算出した距離を比較して、送信先範囲に対して自車両が直前車両よりも近い位置に存在するか否かを判定する。その結果、送信先範囲に対して自車両の方が直前車両よりも近い場合には、前記情報処理部1201は転送を行うと判断し、ステップ405に進む。一方、送信先範囲に対して自車両の方が直前車両よりも遠い場合には、前記情報処理部1201は転送を行わないと判断し、転送処理を終了する(S412)。
【0094】
ステップ404において、前記情報処理部1201が受信した車両情報の転送を行うと判断した場合、前記情報処理部1201は、自車両が中継点範囲内に位置するか否かを判定する(S405)。具体的には、前記情報処理部1201は、自車両の走行情報と受信した車両情報を比較することにより判定を行う。例えば、
図7に示す中継点範囲の情報である中継点緯度情報、中継点経度情報、及び中継点の大きさから特定されるN個の中継点範囲の何れかの範囲内に自車両が存在するか否かを、自車両の走行情報に含まれる車両緯度情報及び車両経度情報から判定する。その結果、自車両が何れかの中継点範囲内に存在すると判定した場合には、前記転送待機時間決定プロセス2により転送待機時間を算出する(S406)。一方、自車両が何れかの中継点範囲内に存在しないと判定した場合には、前記転送待機時間決定プロセス1により転送待機時間を算出する(S410)。
【0095】
ステップ406における前記転送待機時間決定プロセス2による転送待機時間の算出方法の一例を以下に示す。転送待機時間をTsとし、自車両が存在する中継範囲の中継範囲の中心点と自車両の位置との距離をXとしたとき、例えば、数式“Ts=αX”により算出される。ここで、αは変換定数であり、予め設定される値である。これによれば、転送待機時間Tsは距離Xが長くなるほど、長く設定される。
【0096】
ステップ410における前記転送待機時間決定プロセス1による転送待機時間の算出方法の一例を以下に示す。転送待機時間をTsとし、自車両が存在する中継範囲の中継範囲の中心点と自車両の位置との距離をYとしたとき、例えば、数式“Ts=β/Y”により算出される。ここで、βは変換定数であり、予め設定される値である。これによれば、転送待機時間Tsは距離Yが長くなるほど、短く設定される。
【0097】
前記情報処理部1201はステップ406又はステップ410において更に、受信した走行情報における直前の転送車両の転送車両走行情報52に代えて、自車両の車両IDと車両走行情報を付加した新たな走行情報を生成する。そして、前記情報処理部1201は、算出した転送待機時間を前記車両情報送信処理部1102に設定すると共に、前記生成した新たな走行情報を与える。
【0098】
前記情報処理部1201から走行情報を受け取った前記車両情報送信処理部1102は、当該車両情報をパケット形式に変換した後、設定された転送待機時間のカウントを開始して転送開始まで待機する(S407)。前記車両情報送信処理部1102は、転送待機中に、転送対象の車両情報と同一の前記送信元の車両情報50を、前記無線送受信処理部1101が受信したか否かを確認する(S408)。
【0099】
ステップ408において、前記無線送受信処理部1101が同一の前記送信元の車両情報50を受信したことが確認された場合、前記車両情報送信処理部1102は前記転送待機時間のカウントを停止してリセットすると共に、前記新たに生成された車両情報を破棄し(S409)、転送処理を終了する(S412)。
【0100】
一方、転送待機中に前記送信元の車両情報50を、前記無線送受信処理部1101が受信しなかった場合には、転送待機時間の経過後、前記新たな車両情報に係るパケット情報を前記無線送受信処理部1101に出力し、前記無線送受信部106を介して別の車両に転送を行う(S411)。そして、一連の転送処理を終了する(S412)。
【0101】
〈車両情報生成から送信までの流れ〉
次に前記通信装置100が車両情報を生成し、送信先範囲及び中継範囲を指定して送信する処理について
図10を用いて説明する。
【0102】
図10は、前記情報処理部1201による車両情報の生成処理と送信処理を示した流れ図である。
【0103】
まず、前記走行情報測定処理部1203は、前記自車両位置検出部1301、前記自車両走行速度検出部1302、及び前記自車両進行方向検出部1303により測定した自車両の位置、走行速度、進行方向の情報を取得し、受け取った情報に基づいて車両走行情報を生成しレジスタ等の記憶領域に格納する(S801)。
【0104】
前記情報処理部1201は、前記ナビゲーションシステム110の前記地図情報保持部1400に格納されている地図情報を参照して、送信先範囲の位置、大きさ、及び図形を決定し、
図7に示す前記送信先範囲情報51を生成する(S802)。
【0105】
次に前記情報処理部1201は、前記地図情報を参照して送信先範囲までの転送経路を決定し、経路に沿った中継点を決定する(S803)。具体的には、はじめに転送経路を決定し、その後決定した転送経路における中継点を決定する。例えば、前記情報処理部1201は、前記地図情報格納部1400の前記地図情報を参照して経路上にある結点の情報を読み出し、その結点を中継点とし、
図7に示す前記中継点情報53を生成する。前記転送経路は、ドライバーがナビゲーションシステム110を参照して選択した情報に基づいて決定されても良いし、前記ナビゲーションシステム110に予め設定されている自車両の到達目的地までの経路であってもよい。
【0106】
その後前記情報処理部1201は、ステップ801〜803において生成された情報に基づいて走行情報を生成し、前記車両情報送信処理部1102に与える(S804)。具体的には、前記情報処理部1201は、ステップ801において生成された車両走行情報に自車両の車両IDとサービス種別ID等を付加して、
図7に示す前記送信元の車両情報50を生成する。そして、当該生成した送信元の車両情報50とステップ802及びステップS803において作成した前記送信先範囲情報51及び前記中継点情報53と、自車両の車両走行情報から生成した前記転送車両走行情報52から、自車両の車両情報を生成し、前記車両情報送信処理部1102に与える。なお、
図7に示す前記転送車両走行情報52は、送信元の車両が送信する場合には前記送信元の車両情報50に含まれている情報と同一なので、送信を行う車両は生成しなくてもよい。
【0107】
前記車両情報送信処理部1102は、前記情報処理部1201から受け取った車両情報を
図5に示すパケット形式に変換し、変換した車両情報を前記無線送受信処理部1101に与えることで、前記無線送受信部106を介して別の車両に送信する(S905)。
【0108】
以上実施の形態1に係る車両間通信システムによれば、車両情報を別の車両が転送して送信目的地に送信する際に中継点を設定するから、中継点を経由した送信先までの経路に沿った転送を行うことができる確率が高くなる。また、車両情報を中継して転送する車両が指定された中継範囲内に位置する場合には、より中継点に近い場所に位置する車両ほど先にデータの転送を行うから、中継範囲が見通しの悪い交差点であっても、データの転送を行うことができる確率が高くなり、より効率よいデータの転送が可能となる。更に、転送の目的とする車両情報と同一の情報を受信した場合には、転送処理を停止することで車両情報の再転送を防止するから、通信量の増加を抑えることができる。
【0109】
以上本発明者によってなされた発明を実施形態に基づいて具体的に説明したが、本発明はそれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々変更可能であることは言うまでもない。
【0110】
例えば、
図9のステップ404において、受信した車両情報の転送を行うか否かの判断は、前記情報処理部1201が前記自車両からの距離と前記直前の転送車両からの距離の比較を行うことにより行ったが、これに限られない。例えば、前記情報処理部1201が、送信元の車両の位置情報、中継範囲の位置情報、及び送信先範囲の位置情報に基づいて転送経路を特定し、当該転送経路内に自車両が存在するか否かを判断する。そして、転送経路内に自車両が存在しない場合には転送を行わず、転送経路内に自車両が存在する場合には前述のステップ404を実行する。これによれば、転送経路に沿った転送が行われる可能性がより高くなる。また、
図9のステップ404において、自車両の走行方向の情報に基づいて転送を行うか否かを判断することも可能である。例えば、前記転送車両情報52に転送車両の進行方向を示す情報を格納しておくことで、受信した車両が直前の転送車両の進行方向と自車両の進行方向を比較し、進行方向が逆の場合には、転送を行わないとすることも可能である。
【0111】
また、
図7において前記転送車両情報52には、直前の転送車両の車両IDと車両走行情報が含まれるが、これに限られず、前記転送車両情報52に直前の転送車両の車両IDだけを含むことも可能である。例えば、夫々の車両は、前記車両情報とは別に、自車両の送受信可能な範囲に位置する別の車両の車両IDと位置情報について定期的にやり取りしている。そのため前記通信装置100が車両情報を受信した場合には、直前の転送元の車両IDさえわかれば、当該転送元の車両の位置情報等を特定することができる可能性が高いからである。
【0112】
実施の形態1では、車両に搭載されている通信装置100が転送を行う場合を例に説明したが、これに限られず、路上や交差点に設置された路側基地局の通信装置100が上記の転送ルールに従って転送を行ってもよい。これによれば、車両に搭載されている通信装置と同様の作用効果が得られる。
【0113】
また、前記警告部1202が受信した車両情報に基づいて表示装置108に情報を表示することで、ドライバーに対して警告を行う例を示したが、これに限られず、前記警告部1202が、スピーカ等の音声出力装置を制御して警告を発してもよいし、バイブレータ等を振動させることによってドライバーに警告してもよい。
【0114】
なお、
図6及び
図7では、GPSで用いられるNMEA−0183フォーマット形式(Global Positioning System Fix Data)によって走行情報を記載する場合を一例としているが、これに限られず、車両の走行情報を表現することが可能であれば、いずれの形式でもよい。例えば、地球を中心とする地心座標系等の座標系を用いて定義してもよい。