(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5905537
(24)【登録日】2016年3月25日
(45)【発行日】2016年4月20日
(54)【発明の名称】教示操作盤が着脱可能なロボット制御装置
(51)【国際特許分類】
B25J 13/06 20060101AFI20160407BHJP
【FI】
B25J13/06
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2014-154999(P2014-154999)
(22)【出願日】2014年7月30日
(65)【公開番号】特開2016-30324(P2016-30324A)
(43)【公開日】2016年3月7日
【審査請求日】2015年6月17日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】390008235
【氏名又は名称】ファナック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100102819
【弁理士】
【氏名又は名称】島田 哲郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100112357
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 繁樹
(74)【代理人】
【識別番号】100157211
【弁理士】
【氏名又は名称】前島 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100159684
【弁理士】
【氏名又は名称】田原 正宏
(72)【発明者】
【氏名】稲葉 豪
(72)【発明者】
【氏名】山本 知之
【審査官】
佐藤 彰洋
(56)【参考文献】
【文献】
特開2005−118967(JP,A)
【文献】
特開2003−136447(JP,A)
【文献】
特開平11−000884(JP,A)
【文献】
特開2004−341690(JP,A)
【文献】
特開2006−119995(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 1/00−21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロボットを制御するロボット制御装置であって、
前記ロボットの駆動電源を遮断するための非常停止ボタンを備え、前記ロボット制御装置の本体に対して着脱可能に構成された教示操作盤と、
前記教示操作盤を前記ロボット制御装置の本体に対して着脱する際に手動操作される着脱スイッチと、
前記教示操作盤が前記ロボット制御装置の本体に接続されていることを示す接続認識信号を生成する信号部と、
前記着脱スイッチが操作されてから第1の所定時間が経過するまでの着脱操作許可状態の間、前記接続認識信号が生成されていないときは、前記教示操作盤から非常停止信号を受信したときであっても前記ロボットの駆動電源を遮断せず、かつ、前記着脱スイッチが操作されてから前記第1の所定時間が経過した後は、前記教示操作盤から非常停止信号を受信したときに前記ロボットの駆動電源を遮断するように構成されている電源遮断部と、を具備するロボット制御装置。
【請求項2】
前記着脱操作許可状態の間に、前記接続認識信号が生成されているときに前記非常停止信号が入力された場合に、前記非常停止信号が入力されてから第2の所定時間時間が経過するまでの間に、前記接続認識信号が生成されなくなったときは、前記電源遮断部は前記ロボットの駆動電源を遮断しないように構成されている、請求項1に記載のロボット制御装置。
【請求項3】
前記非常停止信号が二重化されており、前記ロボット制御装置は二重化された非常停止信号の位相が不一致である場合は非常停止信号の異常として検出する異常検出部をさらに有し、
前記着脱操作許可状態の間は、前記異常検出部は二重化された非常停止信号の異常検出を行わないように構成されている、請求項1又は2に記載のロボット制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、着脱可能に構成された教示操作盤を備えたロボット制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ロボットの教示を行う際は、該ロボットの制御装置に接続された教示操作盤を使用することがある。一般に教示操作盤は、教示や復旧作業時に使用するものであるため、ロボットの自動運転中は不要であるが、従来のロボットでは、1台のロボット制御装置に1台の教示操作盤が接続されていたため、複数のロボットを含むシステム等ではそのコストが増大する傾向があった。
【0003】
一方、教示操作盤をロボット制御装置に対して着脱可能とする技術も周知であるが、着脱作業中にはロボットを停止しなければならないという制限がある。そこで、例えば特許文献1には、教示操作盤の非常停止回路に着脱スイッチを設け、着脱スイッチが押されている(オン)間に教示操作盤とロボット制御装置との接続が解除されたときは、非常停止手段を作動させない禁止手段を有する構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平05−042493号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の技術では、教示操作盤をロボット制御装置から取り外してもロボットの自動運転が停止しないようにすることができ、本来ロボットが非常停止すべきでないときにロボットが非常停止してしまうことを防止することができる。しかし、着脱ボタンが押されていても、操作者の安全確保等の観点から、ロボットを非常停止させる(ロボットの駆動電源を遮断する)必要がある場合もあり、特許文献1にはそのような場合に適切に対処するための実用的な手段が示されていない。
【0006】
そこで本発明は、ロボットの不要な非常停止を回避して運転コスト等の低減を図りつつも、操作者の安全確保等も図られたロボット制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本願第1の発明は、ロボットを制御するロボット制御装置であって、前記ロボットの駆動電源を遮断するための非常停止ボタンを備え、前記ロボット制御装置の本体に対して着脱可能に構成された教示操作盤と、前記教示操作盤を前記ロボット制御装置の本体に対して着脱する際に手動操作される着脱スイッチと、前記教示操作盤が前記ロボット制御装置の本体に接続されていることを示す接続認識信号を生成する信号部と、前記教示操作盤から非常停止信号を受信したとき又は前記接続認識信号が生成されたときに前記ロボットの駆動電源を遮断する電源遮断部と、を具備し、前記着脱スイッチが操作されてから第1の所定時間が経過するまでの着脱操作許可状態の間、前記接続認識信号が生成されていないときは、前記電源遮断部は前記ロボットの駆動電源を遮断しないように構成されている、ロボット制御装置を提供する。
【0008】
第2の発明は、第1の発明において、前記着脱操作許可状態の間に、前記接続認識信号が生成されているときに前記非常停止信号が入力された場合に、前記非常停止信号が入力されてから第2の所定時間時間が経過するまでの間に、前記接続認識信号が生成されなくなったときは、前記電源遮断部は前記ロボットの駆動電源を遮断しないように構成されている、ロボット制御装置を提供する。
【0009】
第3の発明は、第1又は第2の発明において、前記非常停止信号が二重化されており、前記ロボット制御装置は二重化された非常停止信号の位相が不一致である場合は非常停止信号の異常として検出する異常検出部をさらに有し、前記着脱操作許可状態の間は、前記異常検出部は二重化された非常停止信号の異常検出を行わないように構成されている、ロボット制御装置を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、着脱スイッチが操作されてから第1の所定時間が経過するまで(着脱操作許可状態)は、教示操作盤が制御装置本体に接続されていなくともロボットの駆動電源は遮断されないので、ロボットの不要な非常停止を回避し、作業効率の向上や運転コストの低減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の好適な実施形態に係るロボット制御装置を、該ロボット制御装置が制御するロボットと、該ロボット制御装置に着脱可能に接続された可搬式操作盤とともに示す概略図である。
【
図2】
図1のロボット制御装置における処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1は、本発明の好適な実施形態に係るロボット制御装置を、該ロボット制御装置が制御するロボットと、該ロボット制御装置に接続される教示操作盤とともに概略的に示す図である。ロボット制御装置(以降、単に制御装置とも称する)10は、概略図示したロボット12の動作制御や教示を行うように構成されており、ロボット12に無線又は電気ケーブル14等の有線によって通信可能に接続される制御装置本体(以降、単に本体とも称する)16と、本体16に着脱可能に構成された可搬式の教示操作盤(以降、単に操作盤とも称する)18とを有する。操作者は、操作盤18を本体16から所定の範囲内で運搬することができ、操作盤18を用いて(例えば、操作盤18の操作パネル20を操作することによって)ロボット12の操作・教示を行うことができる。
【0013】
制御装置本体16と操作盤18は、ケーブル22を介して通信可能に接続され、図示例では、操作盤18に接続されたケーブル22の先端に設けた接続プラグ24が、本体16に設けた接続コネクタ26に対して着脱可能に接続される。また本体16は、操作盤18を本体16に対して着脱する際に手動操作される着脱スイッチ28を有し、着脱スイッチは好ましくはモーメンタリ型のボタンである。
【0014】
操作盤18は、ロボット12の駆動電源を遮断する(ロボット12を非常停止させる)ための非常停止ボタン30を具備し、一方制御装置本体16は、非常停止ボタン30が押されたときに、操作盤18からケーブル22を介して非常停止信号を受信する信号部(信号回路)32と、信号部32が非常停止信号を受信したときに、所定の条件(後述)下で、ロボット12の駆動電源を遮断する電源遮断部34とを有する。
【0015】
また信号部32は、操作盤18が本体16に接続されていないときに非常停止信号を生成する機能と、操作盤18が本体16に接続されている間は接続認識信号を生成する機能も具備する。図示例では、接続コネクタ26が信号部(回路)32の一部を構成しており、接続プラグ24又はショートプラグ36が接続されていないときに非常停止信号を生成し、接続プラグ24が接続されているときに接続認識信号を生成することができる。上述の電源遮断部34は、信号部32が非常停止信号を生成した場合も、所定の条件(後述)下で、ロボット12の駆動電源を遮断する。
【0016】
なおショートプラグ36は、例えば接続プラグ24と同一形状を有するがケーブルを有さない部材であり、ショートプラグ36を接続コネクタ26に接続したときは、信号部(回路)32は閉鎖されるので非常停止信号は生成されないが、操作盤18が接続されているわけでもないので接続認識信号も生成されない。
【0017】
操作盤18を本体16から取り外すときは、操作者は、先ず着脱ボタン28を押し、着脱ボタン28を押してから所定時間(後述する第1の所定時間)の間に、本体16の接続コネクタ26から接続プラグ24を抜き、他の操作盤の接続プラグを接続コネクタ26に差し込む。着脱ボタン28を押してから所定時間が経過するまでは、非常停止信号が入力・生成されても、電源遮断部34はロボット12の駆動電源を遮断しないように構成されているため、ロボット12の動作を停止させずに操作盤18の取り外しをすることができる。以下、着脱ボタン28が押されてから第1の所定時間が経過するまでの間を、「着脱操作許可状態」と称することもある。
【0018】
また、上述のショートプラグ36を使用することで、教示操作盤18を取り外しておくことができる。この場合、操作者は、先ず着脱ボタン28を押し、着脱ボタン28を押してから所定時間(第1の所定時間)の間に、本体16の接続コネクタ26から接続プラグ24を抜き、ショートプラグ36を接続コネクタ26に差し込む。操作盤を取り付けるときは、再度着脱ボタン28を押し、着脱ボタン28を押してから所定時間(第1の所定時間)の間に、接続コネクタ26からショートプラグ36を抜き、操作盤の接続プラグを接続コネクタ26に差し込む。ショートプラグ36を接続コネクタ26に接続している間は非常停止信号が入力・生成されないので、この場合も、着脱ボタン28を押してから所定時間が経過するまではロボット12の駆動電源は遮断されず、ロボットの動作を停止させずに操作盤の取り外しと取り付けをすることができる。
【0019】
以下、制御装置10の処理を、
図2のフローチャートを参照しつつ説明する。
先ずステップS1において、制御装置本体16の着脱スイッチ28がオン状態にあるか(着脱ボタン28が操作者によって押されているか)否かを判断する。
【0020】
着脱ボタン28が押されている場合は、次のステップS2において、着脱ボタン28が押されてから第1の所定時間が経過したか否かを判断する。第1の所定時間は、操作者が操作盤18の着脱(交換)に必要と思われる時間に基づいて予め設定され、例えば10秒〜60秒の間の値に設定される。なお第1の所定時間は、本体16又は操作盤18への入力操作により操作者が設定・変更できるようにしてもよい。
【0021】
ステップS1において着脱ボタン28が押されていない場合、又はステップS2において着脱ボタン28が押されてから第1の所定時間が経過した場合(すなわち制御装置10が着脱操作許可状態にない場合)は、操作盤18の非常停止ボタン30が押されているか否かを判断する(ステップS3)。非常停止ボタン30が押されていれば、安全確保のためにロボットの駆動電源を遮断する(ステップS4)。一方、非常停止ボタン30が押されていないときは、操作盤18による通常の作業が続行されることになる。すなわち、制御装置10が着脱操作許可状態にない場合は、着脱ボタン28が押されていない状態と同様に、非常停止ボタン30が押されればロボット12の駆動電源が遮断されるため、着脱ボタン28が誤って押されたままの状態であっても安全性を確保できる。
【0022】
ステップS2において、着脱ボタン28が押されてから第1の所定時間が経過していない(制御装置10が着脱操作許可状態にある)場合は、操作盤18が本体16に接続されているか否か(上述の接続認識信号が生成されているか否か)を判断する(ステップS5)。操作盤18が本体16に接続されていない場合は、操作者が操作盤18の着脱作業を実行中であると解されるので、ロボット12の非常停止は行われない。
【0023】
一方、ステップS5において、操作盤18が本体16に接続されている場合は、次のステップS6において、操作盤18の非常停止ボタン30が第2の所定時間を超えて押し続けられているか(非常停止ボタン30が押されてから第2の所定時間経過したか)否かを判断する。非常停止ボタン30が押されてから第2の所定時間が経過しており、かつ操作盤18が本体16に接続されたままであるときは、安全確保のためにステップS4に進んでロボット12の駆動電源を遮断する。逆に言えば、着脱ボタン28を押している状態で操作盤18を取り外す場合に、非常停止信号が接続認識信号より先に遮断されたとしても、第2の所定時間経過前に接続認識信号が遮断されれば、ロボット12の駆動電源を遮断せずに、操作盤18の取り外しを行うことができる。これにより、非常停止信号と接続認識信号の遮断のタイミングが若干異なる場合でも、ロボット12の駆動電圧を遮断せずに、操作盤18の着脱を行うことができる。従って第2の所定時間は、例えば1秒程度に設定されることが好ましい。
【0024】
以上の処理を適当な制御周期で反復することにより、種々の状況に応じて適切にロボットの操作・教示を行うことができる。
【0025】
上述の実施形態において、教示操作盤18からの非常停止信号は、二重化された信号(二重化同期信号)としてもよい。この場合、制御装置本体16は、二重化された非常停止信号において(位相が)一致しているか否かを判定し、不一致である場合は非常停止信号の異常として検出する異常検出部38をさらに有する(
図1)。制御装置10の安全機能として、異常検出部38が異常を検出したときは、電源遮断部34がロボット12の駆動電源を遮断するようになっている。
【0026】
しかし、操作盤18の着脱作業においては、操作者がケーブル22(接続プラグ24)を本体16から取り外す際に、一時的に二重化された非常停止信号の一方のみが開放されることがある。このような場合にロボット12が非常停止することは好ましくないので、これを回避するために、着脱ボタン28が押されてから第1の所定時間が経過するまでの間(着脱操作許可状態)は、異常検出部38による異常検出を行わないようにすることが好ましい。これにより、操作盤18を取り外す際の不要な非常停止を防止することができる。
【符号の説明】
【0027】
10 ロボット制御装置
12 ロボット
14、22 ケーブル
16 制御装置本体
18 教示操作盤
20 操作パネル
24 接続プラグ
26 接続コネクタ
28 着脱ボタン
30 非常停止ボタン
32 信号部
34 電源遮断部
36 ショートプラグ
38 異常検出部